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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47K
管理番号 1206366
審判番号 不服2008-1777  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-01-23 
確定日 2009-10-30 
事件の表示 特願2000-320320「自在シャワー装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年5月8日出願公開,特開2002-125875〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成12年10月20日の出願であって,平成19年12月18日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成20年1月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。


第2.本願の請求項に係る発明
本願の請求項1?3に係る発明は,平成19年3月16日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであり,そのうち,請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりである。
「【請求項1】
シャワーホースとシャワー部との間のシャワー連結部内に駆動源を設け、前記シャワーホースを通じて放出される液体の放出方向を変更可能とするため、前記シャワー部を駆動させるように構成したことを特徴とするシャワー装置。」


第3.引用刊行物とその記載内容
刊行物:実公平4-22853号公報

原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された上記刊行物には,図面とともに,次のことが記載されている。
「<産業上の利用分野>
本考案は風呂場において使用するシヤワーのシヤワーヘツドとホースとの中間継手装置に関する。」(1欄11?14行)
「<考案が解決しようとする問題点>
本考案は…、その目的とするところはホースを連結した継手本体に対し、シヤワーヘツド支持球体部を介してシヤワーヘツドを360度の方向に自在に向けることができるようにしたことによつて、シヤワーヘツド掛け具にシヤワーヘツドのホース連結金具を掛けた侭で噴水、噴湯を広範囲にわたつてできると共に、既製品のホースとシヤワーヘツドもそれぞれ取付けられて使用できるようにした便利なシヤワーヘツドとホースとの中間継手装置を提供するにある。」(2欄1?12行)
「…本考案は下部の螺子8を介してホース1を連結するようにした継手本体7の上方凹部10にスプリング11と環状パツキング13を置き、該環状パツキング13に当接したシヤワーヘツド支持球体部14に嵌合した締付けナツト15を継手本体7に螺挿し、前記シヤワーヘツド支持球体部14の上部に取付けた螺子管18を介してシヤワーヘツド22を連結するようにしてなるので、即ち、シヤワーヘツド22を連結したシヤワーヘツド支持球体部14は、継手本体7に対し360度の方向に回動自在となつているため、該シヤワーヘツド22を適宜に回動すればその噴水、噴湯口21の向きはどのような方向にも変えられるものである。したがつて、第4図のようにホース1の先端のホース連結金具5をシヤワーヘツド掛け具25に掛けた侭で、前記噴水、噴湯口21の向きを自在に変えられるから、風呂場が広い場所、狭い場所において使用する場合、例えば狭い所ならシヤワーヘツドを斜下方に向けて使用する等、必要な方向にシヤワーヘツドを向けて使用できるからきわめて便利である。」(3欄28行?4欄4行)

上記記載及び図面の記載からみて,刊行物には,次の発明(以下,「刊行物記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ホース1とシヤワーヘツド22との間に中間継手装置を設け,前記シヤワーヘツド22の噴水,噴湯口21の向きをどのような方向にも変えられるように,前記シヤワーヘツド22を連結した前記中間継手装置のシヤワーヘツド支持球体部14を前記中間継手装置の継手本体7に対し360度の方向に回動自在としたシヤワー装置。」


第4.対比・判断
1.本願発明と刊行物記載の発明との対比
刊行物記載の発明の「ホース1」は,本願発明の「シャワーホース」に相当し,以下同様に,「シヤワーヘツド22」は,「シャワー部」に相当し,「中間継手装置」は,「シャワー連結部」に相当し,「シヤワー装置」は,「シャワー装置」に相当する。
また,刊行物記載の発明の「シヤワーヘツド22の噴水,噴湯口21の向きをどのような方向にも変えられるように」は,「水」や「湯」が「液体」であるから,本願発明の「シャワーホースを通じて放出される液体の放出方向を変更可能とするため」に相当する。
そして,刊行物記載の発明の「シヤワーヘツド22を連結した中間継手装置のシヤワーヘツド支持球体部14を中間継手装置の継手本体7に対し360度の方向に回動自在とした」と,本願発明の「シャワー部を駆動させるように構成した」とは,「シャワー部を回動自在に構成した」で共通する。
そうすると,両者は,
「シャワーホースとシャワー部との間にシャワー連結部を設け,前記シャワーホースを通じて放出される液体の放出方向を変更可能とするため,前記シャワー部を回動自在に構成したシャワー装置。」の点で一致し,次の点で相違する。
<相違点>
シャワー部を回動自在にする構成について,
本願発明が,「シャワー連結部内に駆動源を設け」るとともに,「シャワー部を駆動させるように構成した」ものであるのに対し,
刊行物記載の発明では,シャワー部(シヤワーヘツド)を回動自在に構成しているものの,駆動源を設けて駆動させるものではない点。

2.相違点についての検討・判断
先ず,本願発明の「駆動源」及び「駆動させる」の構成について,本願出願当初の明細書及び図面の記載をみると,
同明細書には,段落【0004】に,「例えば、バネのような駆動源を連結部・被連結部によりシャワー部と連結し、駆動源によりシャワー部を動かすことができる。」と記載され,段落【0005】に,「次に、図5において駆動部5を更に説明すると、カバー部材8の内側の回転用バネ6を駆動部5に取り付ける。さらに、図6,7において詳しく説明すると回転用バネ6の6aを回転部30のバネ固定穴7aに取り付け固定し、回転用バネ6の6bを固定部31のバネ固定穴7bに取り付け固定する。引きひも12を引いて停止位置にある回転用バネ6を取り付けた駆動部5は、バネを内蔵した下方ガイド溝10に位置したクランプタイプガイド板9が停止位置ヅメ11aと咬み合い停止位置にある。また、引きひも12を引いて円周方向で90度振られた駆動位置にある回転用バネ6を取り付けた駆動部5は、クランプタイプガイド板9が駆動位置ヅメ11bと咬み合い駆動位置にある。このように駆動させる際、…」と記載されている。
そうすると,本願発明の「駆動源」は,「バネのような」ものであって,「引きひも」を引くことにより「シャワー部」を「駆動させる」ことができるものであり,これにより,「シャワー部を楽に動かすことができる」(段落【0003】)ようにしたものであることが解る。
(但し,以下に説示しているように,本願発明に係る請求項1には,「駆動源」や「駆動させる」の構成に関して,「引きひも」や「バネのような」ものを用いることは,一切記載されていない。)

ところで,一般的に,動かされるように構成された部材にバネや引きひも等を作用させて当該部材を楽に動かすように構成することは,駆動手段としてごく普通に用いられていることであり,また,手により直に動かしていたものを駆動源を用いて動かすようにすることは,駆動手段を用いることによる一般的な作用にすぎないものということができるから,このような駆動手段をシャワー装置に用いることは,当業者であれば容易に想到できることである。

してみると,刊行物記載の発明のシャワー部(シヤワーヘツド)を回動自在にする構成について,何等かの駆動源を用いて,これにより駆動させるように構成することは,当業者が格別の技術的困難性を要することなしに,容易に想到しえたものといわざるをえない。

結局,本願発明は,刊行物記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,また,このようにしたことによる格別の作用効果も認められない。


ところで,請求人は,審判請求書「4.」において,「液体の放出方向を引きひもを使用することで左右に90°駆動し、液体の吐出しを止めることなく、液体の吐出量を駆動する…ことの理由により特許されるべきである。」と主張し,また,平成19年3月16日付け意見書においても,「本願発明のシャワー装置は、シャワー部の駆動ユニットの可動部を設け、その駆動源に引きひもを設けることにより、引きひもを使用することで左右90°に駆動することができるものである。」と主張している。
しかしながら,本願発明に係る請求項1には,「駆動源」や「駆動する」との構成に関して,上述したように,「引きひも」を用いることは勿論のこと,「駆動ユニット」,「可動部」等を用いることも,一切記載されていないから,このような請求人の主張は,特許請求の範囲の記載に基づかないものであり,採用することはできない。


第5.むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-19 
結審通知日 2009-08-25 
審決日 2009-09-10 
出願番号 特願2000-320320(P2000-320320)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河本 明彦  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 山本 忠博
宮崎 恭
発明の名称 自在シャワー装置  

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