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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1206438
審判番号 不服2008-11924  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-09 
確定日 2009-11-06 
事件の表示 特願2002- 19984「バカラゲームの遊戯支援システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月 5日出願公開、特開2003-220169〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は平成14年1月29日に出願されたものであって、平成20年4月4日付けで拒絶の査定がされたところ、これを不服として同年5月9日付けで本件審判請求がされるとともに、同年6月9日付けで明細書についての手続補正がされたものである。


第2 補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成20年6月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正前後における特許請求の範囲の記載
平成20年6月9日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、明細書の特許請求の範囲を補正するものであり、補正の前後における特許請求の範囲の記載は、下記のとおりである。

(補正前)
「【請求項1】
バカラゲームの出目データを出現順と関連付けて入力するための入力装置と、出現順と関連付けて入力される一連の出目データを出目表の形態で表示する表示装置と、を含むバカラゲームの遊戯支援システム。」

(補正後)
「【請求項1】
バカラゲームの出目データを出現順と関連付けて入力するための入力装置と、出現順と関連付けて入力される一連の出目データを出目表の形態で表示する表示装置とを含み、
前記表示装置により表示される出目表は、
列と行とに整列配置された複数の表示予定位置を有し、
各表示予定位置には出目種別であるプレイヤ勝ち、バンカ勝ち、両者引き分けをそれぞれ示すシンボルが表示可能とされており、
最初の出目に相当するシンボルは、最初の列の最初の行の表示予定位置に表示され、
以後の出目に相当するシンボルは、出目が所定の連続条件を満たすときには同一列の次の行の表示予定位置に表示され、出目が所定の交替条件を満たすときには次の列の最初の行の表示予定位置に表示される、ことを特徴とするバカラゲームの遊戯支援システム。」

2.補正事項及び補正目的
補正前後の請求項1を比較すると、本件補正は、補正前の請求項1における「出目表」の具体態様を追加的に特定した点で、発明を限定したものである。そのため、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)17条の2第4項2号を目的とするもの、すなわち、限定的減縮を目的とするものと認める。
そこで、以下、本件補正が平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか否か、すなわち、補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができたか否か、について検討する。

3.補正発明の認定
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲における、【請求項1】に記載された事項により特定されるべきものであり、その記載は「1.」に(補正後)として示したとおりである。

4.引用刊行物に記載される事項の認定
本願出願前に頒布された刊行物であり、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平11-267264号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の記載がされている。なお、引用中における改行は「/」で代替した。

ア.「【0002】/【従来の技術】対人式バカラテーブルにおける従来の出目記録装置は過去の数十ゲームにおいてプレイヤー、バンカーのどちらかが勝ったか、引き分けたかの3通りについて記録するものであった。また、ゲームソフトにおいてはテレビ画面上で自動的にカードを配り、勝者を判定するプログラムが発表されている。」
イ.「【0003】/【発明が解決しようとする課題】しかしながら、対人式バカラテーブルの場合はどちらかが勝った又は引き分けたという結果だけしか記録されず、そのプロセスは装置には全く反映されていない。何対何でどちらが勝った(又は引き分けた)かの情報はプレイヤー自身で記録しなければならない。/【0004】また、ディーラーの手元にコントロールパネルを置き、出目をキーボードで入力する方法も考えられるが、入力に時間がかかり、スピーディーにゲームを進行することを妨げるおそれがある。」
ウ.「【0011】規模の小さいテーブルにおいては一人でゲームを進めるので、トレイのある側に定置式バーコードスキャナー、ボタン、ランプ、ディスプレイを集中させることが望ましい。」
エ.「【0013】ディスプレイは各プレイヤーが座る座席の前にあるテーブル周縁部分をくりぬき、埋め込むと良い。ただし、人数の少ないテーブルについてはディーラー側の横にディスプレイを立てて設置しても良い。/【0014】7人用バカラテーブルではチップトレイの部分にはめ込む形で定置式バーコードスキャナー、ボタン、ランプ、ディスプレイを集中させたチップトレイ一体装置も可能である。」
オ.「【0022】バーコード部分26の情報が演算装置14に送られ、演算装置14はあらかじめ計算式に従って入力された計算方法により演算を行い、勝負の判定を行う。」
カ.「【0025】ゲームの終了後スタートボタン4を押すことによって、ゲームの詳細なデータが演算装置14からプレイヤー用モニター13に伝達され、表示用ディスプレイ15の表示画面16に表示される。/【0026】演算装置14は数種類の統計データの表示方法を持っており、プレイヤーはチャンネル上下ボタン18及び19によって任意の1種類を選択することができる。また、電源17を切ることによって表示させないことも可能である。」
キ.「【0030】ゲームに関するデータをディスプレイにて表示するので、プレイヤーはゲームに関するデータを取る必要がない。/【0031】データ入力に関し、煩雑な処理を殆ど必要とせず、またゲームの本質を崩さずにデータを提供することができる。また、記録のための時間は殆ど必要とせず、ゲームを遅延させることはほとんどない。/【0032】演算装置の容量によっては百を越えるゲームの記録を記憶し、ディスプレイに表示することができる。」

5.引用刊行物記載の発明の認定
記載事項ア.?キ.の全体から、引用例1には、「バカラゲーム」において、「プレイヤーはゲームに関するデータを取る必要」がなく、「データを提供する」という事項が開示されている。
データの記録については、記載事項ア.に「過去の数十ゲームにおいてプレイヤー、バンカーのどちらかが勝ったか、引き分けたかの3通りについて記録する」という出目記録装置が記載されており、記録するからには、記録する「出目」の情報を入力するための入力装置も当然に有している。記載事項イ.には、「どちらが勝った又は引き分けたという結果だけ」ではなく、「何対何でどちらが勝った(又は引き分けた)かの情報」をも含めて、「ディーラーの手元にコントロールパネルを置き、出目をキーボードで入力する」ことが記載されており、この場合の「キーボード」も、入力するための入力装置の具体例である。記載事項エ.及びオ.には、さらに改善された入力装置として、「バーコードスキャナー」が記載されている。
なお、記載事項ア.の手法は「プレイヤー、バンカーのどちらかが勝ったか、引き分けたかの3通り」しか記録されず、記載事項イ.以降は「何対何でどちらが勝った」という情報も含めて記録することが想定されているが、記載事項ア.が扱う情報のみでも「出目記録装置」と称されているから、上記したいずれの入力装置を用いる場合にも、「出目」の情報を記録することには相違ない。
また、記載事項ア.の「過去の数十ゲームにおいて」及び記載事項キ.の「百を超えるゲームの記録を記憶」によれば、先に述べたいずれの入力装置による場合でも、バカラゲームの出目の情報を、複数のゲームに渡って入力し、記録するものと言い得る。
データの提供については、記載事項ウ.乃至キ.に「ディスプレイ」を用いることが示されており、データの入力に「ディーラーの手元のキーボード」を用いる場合であっても、表示に「ディスプレイ」を用いることは記載されたに等しいと言い得る。

以上をまとめると、引用例1には
「バカラゲームの出目の情報を、複数のゲームに渡って入力して記録するための、ディーラーの手元のキーボード、あるいはバーコードスキャナーといった入力装置と、該記憶した出目の情報を表示するディスプレイとを含み、
プレイヤーはゲームに関するデータを取る必要がなく、プレイヤーにデータを提供する装置」
の発明(以下「引用発明1」という)が記載されている。

6.補正発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
引用発明1における「出目の情報」は補正発明における「出目データ」に相当する。また引用発明1において、「ディーラーの手元のキーボード」あるいは「バーコードスキャナ-」のいずれを用いるとしても、複数のゲームに渡っての出目の情報は、実際上出現順と関連づけて入力されることとなる。そして、引用発明1の「入力装置」は、補正発明における「入力装置」と一致する。したがって、補正発明が「バカラゲームの出目データを出現順と関連付けて入力するための入力装置」を有する点は、引用発明1との一致点である。
引用発明1における「ディスプレイ」は、補正発明における「表示装置」に相当する。また、引用発明1において「ディスプレイ」に表示する「記憶した出目の情報」は、前述のように入力された「複数のゲームに渡っての出目の情報」であるから、補正発明にいう「出現順と関連付けて入力される一連の出目データ」に相当する。すなわち、「出現順と関連付けて入力される一連の出目データを表示する表示装置」を有することは、引用発明1と補正発明との一致点である。
そして、上述の入力装置及びディスプレイを有する引用発明1が、「プレイヤーはゲームに関するデータを取る必要がなく、プレイヤーにデータを提供する装置」であることは、補正発明にいう「バカラゲームの遊戯支援システム」であることに相当する。

以上をまとめると、補正発明と引用発明1は、
「バカラゲームの出目データを出現順と関連付けて入力するための入力装置と、出現順と関連付けて入力される一連の出目データを表示する表示装置と、を含む、
バカラゲームの遊戯支援システム。」
である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
補正発明においては、表示装置による表示が「出目表の形態」であるとともに、該「出目表」が、「列と行とに整列配置された複数の表示予定位置を有し、各表示予定位置には出目種別であるプレイヤ勝ち、バンカ勝ち、両者引き分けをそれぞれ示すシンボルが表示可能とされており、最初の出目に相当するシンボルは、最初の列の最初の行の表示予定位置に表示され、以後の出目に相当するシンボルは、出目が所定の連続条件を満たすときには同一列の次の行の表示予定位置に表示され、出目が所定の交替条件を満たすときには次の列の最初の行の表示予定位置に表示される」という具体的態様であるのに対して、引用発明1では「出目の情報」を「ディスプレイ」に表示する際、どのような「形態」で表示しているのか不明である点。

7.相違点の判断及び補正発明の独立特許要件の判断
(1)相違点について
引用例1には、記載事項カ.に「数種類の統計データの表示方法」を用いることが示されており、複数のゲームに渡る出目の情報を、その傾向が直感的にわかりやすい態様で遊技中のプレイヤーに提供することは、もともと意図されている。そうであれば、複数のゲームに渡る記憶した出目の情報を、各ゲームでプレイヤー、バンカーのどちらが勝ったか、引き分けたかという傾向が直感的にわかりやすい表にまとめて出目の表とし、ゲーム毎に逐次更新して表示することは、バカラゲームに関して通常程度の知識を有する者(以下、「当業者」という。)であれば、適宜設計し得た程度の事項と言わざるを得ない。
また、本願出願前に頒布された刊行物である米国特許第6217447号明細書(以下、「引用例2」という。)には、バカラゲームにおける複数ゲームの出目をまとめた表として、第4図及び第6欄42行?62行に、縦横に配列された複数のグリッド48を有し、最初の出目の結果は勝者を示す「B」又は「P」のシンボルで左上角部のグリッドに表示し、以後の出目の結果は、勝ちの傾向が続く間は縦方向下側に隣接するグリッドにシンボルを表示し、勝ちの傾向が途切れた場合は右側列の先頭にシンボルを表示することが、開示されている(以下、この引用例2が開示する表を「引用発明2」という。)。
ここにおいて、バカラゲームにおける複数ゲームの出目の傾向を示す表の具体例として、引用発明2に接した当業者であれば、上記引用発明1を出発点として、先に述べたように、複数ゲームに渡る各ゲームでプレイヤー、バンカーのどちらが勝ったか、引き分けたかという傾向が直感的にわかりやすい出目の表を表示形式とするに際して、具体的には引用発明2の表形式を採用するとともに、「引き分け」を示すシンボルも追加することは、想到容易と言わざるを得ない。
すなわち、相違点に係る補正発明の構成を得ることは想到容易である。

(2)補正発明の独立特許要件の判断
相違点1に係る補正発明の構成を得ることは、上述のとおり想到容易であり、そうしたことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって補正発明は、引用発明1、及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
すなわち、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反している。

(3)予備的考察
なお請求人は、補正発明においてさらに、「いずれかの表示列においてシンボル連続個数がその表示列の最大表示個数に達するか又はそれを超えるときには、その表示列と関連する位置(例えば、その表示列の最後の行の表示予定位置)に実際のシンボルの連続個数を示す数値を表示する」という事項を追加すれば、特許法29条2項の規定は満たされるとも主張している(平成21年5月11日付け回答書参照)。しかしながら、補正発明は先に認定したとおりのものであるから、請求人の主張は単なる補正案に関する意見と扱うほかはない。
また、たとえそのような補正案について予備的に検討したとしても、引用例2第4図のグリッドは縦方向に6つである一方、同引用例2の第5図では7や13といった勝ちの連続があり得ることも示されているとともに、最長の勝ちの連続数を特に表示することも示されている。そうであれば、第4図の縦方向に6つのグリッドの表示を行う場合でも、グリッド数を超えて勝ちが連続することは十分予想されているとともに、勝ちが長く連続する場合には、連続勝ち数がプレイヤーの興味対象となることも予想されているから、第4図の縦方向のグリッド数以上の勝ちが連続した場合、長く続いた連続勝ち数を当該列の最下端グリッド近辺に表示して、プレイヤーに連続勝ち数を把握可能とすることは、当業者であれば容易に想到し得た事項と言わざるを得ない。すなわち、当該補正案によっても、特許法29条2項の規定が満たされると判断することはできない。

[補正の却下の決定のむすび]
以上述べたとおり、本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反しているので、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により、却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件審判請求についての判断

1.本願発明の認定
平成20年6月9日付け手続補正は当審において却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年1月28日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲における、【請求項1】に記載された事項によって特定されるべきものとなる。その記載は、「第2 補正の却下の決定」の「1.補正内容」において、(補正前)【請求項1】として示したとおりである。

2.引用刊行物記載の発明の認定
本願出願前に頒布された刊行物である、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1には、「第2 補正の却下の決定」の「5.引用刊行物記載の発明の認定」において認定したとおりの引用発明1が記載されている。

3.本願発明との対比
本願発明は、「第2 補正の却下の決定」の「2.補正事項及び補正目的」で述べたとおり、補正発明が有する「出目表」の具体形態について限定を有さないものである。そのため、本願発明と引用発明との一致点は「第2 補正の却下の決定」の「6.」検討したと同様となり、両者の相違点は次のとおりとなる。
<相違点’>
本願発明においては、表示装置による表示が「出目表の形態」であるのに対して、引用発明1では「ディスプレイ」の表示が「出目表の形態」を有するか否かが不明な点。

4.相違点の判断
上記相違点’について検討すると、「第2 補正の却下の決定」における「7.(1)」の前半部で述べたとおり、引用発明1において、表示の形態を出目の表の形態とすることは、引用例2を参照することを要さず、当業者であれば容易に想到できた事項と言わざるを得ない。すなわち、上記した相違点’に係る本願発明の構成を得ることは、当業者にとって容易である。そして、そうしたことによる格別の効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は原査定の理由のとおり、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。


第4 むすび
本件補正が却下されなければならず、本願発明が原査定の理由のとおり特許を受けることができない以上、本願は拒絶せざるを得ない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-20 
結審通知日 2009-08-26 
審決日 2009-09-24 
出願番号 特願2002-19984(P2002-19984)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 有家 秀郎
森 雅之
発明の名称 バカラゲームの遊戯支援システム  
代理人 飯塚 信市  

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