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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1206536
審判番号 不服2008-24699  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-25 
確定日 2009-11-05 
事件の表示 特願2007-155067「撮像装置およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 4月17日出願公開、特開2008- 90273〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年(2007年)年6月12日(国内優先権主張 平成18年9月8日)の出願(特願2007-155067号)であって、平成20年2月4日付けで手続補正がなされ、同年4月16日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年6月20日付けで意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされ、同年8月7日付けで平成20年6月20日付けの手続補正が却下され、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年10月27日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成20年10月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定について

[補正の却下の決定の結論]
平成20年10月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
平成20年6月20日付けの手続補正は、原審において既に却下されているので、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成20年2月4日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載の、

「レンズ群とそのレンズ群を光軸方向に移動させる駆動部とを備えた撮像装置であって、
この撮像装置が有する全てのレンズ群が搭載され、上記レンズ群の光軸方向に沿って開口した第1の開口部と、上記第1の開口部とは別に、上記レンズ筐体の内部の観察を許す第2の開口部を有するレンズ筐体と、
この撮像装置が有する全ての駆動源が搭載され、上記レンズ筐体の上記第1の開口部に連通すべき駆動用開口部を有する駆動筐体と、
上記レンズ筐体の上記第2の開口部を塞ぐ着脱可能な板部材とを備え、
上記レンズ筐体と上記駆動筐体とは、上記第1の開口部と駆動用開口部とが連通した状態で互いに分離可能に組み合わされていることを特徴とする撮像装置。」が

「レンズ群とそのレンズ群を光軸方向に移動させる駆動部とを備えた撮像装置であって、
この撮像装置が有する全てのレンズ群が搭載された箱形状のレンズ筐体を備え、上記レンズ筐体は、このレンズ筐体の第1の面に形成され、上記レンズ群の光軸方向に沿って開口した第1の開口部と、上記第1の開口部が形成された上記第1の面とは別の第2の面の全域に形成され、上記レンズ筐体の内部の上記レンズ群の観察を許す第2の開口部とを有し、
この撮像装置が有する全ての駆動源が搭載され、上記レンズ筐体の上記第1の開口部に連通すべき駆動用開口部を有する駆動筐体と、
上記レンズ筐体の上記第2の開口部を密閉状態に塞ぐ着脱可能な板部材とを備え、
上記レンズ筐体と上記駆動筐体とは、上記第1の開口部と駆動用開口部とが連通した状態で、その連通した上記第1の開口部と駆動用開口部とを取り囲むように互いに分離可能に組み合わされており、上記板部材が取り外された状態では、上記第2の開口部を通して上記レンズ筐体の内部の上記レンズ群の観察が許される一方、上記板部材が取り付けられた状態では、上記レンズ筐体と上記駆動筐体と上記板部材とによって密閉構造が構成されることを特徴とする撮像装置。」と補正された。

そして、この補正は、レンズ筐体の形状、レンズ筐体と各開口部の関連構造、及び、板部材により開口部を塞ぐ程度について、それぞれ、より具体的に特定する補正事項からなるものであるから、特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮を目的とする補正である。
すなわち、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものを含む。

2 独立特許要件違反についての検討
そこで、次に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反しないか)について検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、平成20年10月27日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定されるものである。(上記「第2 平成20年10月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」の記載参照。)

(2)引用例
ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2003-222935号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面の記載とともに以下の事項が記載されている。(後述の「イ 引用例1に記載された発明」の認定において直接関係する記載に下線を付した。)

「【0016】
【発明の実施の形態】(一実施形態)図1に示すように、電子カメラ本体1の内部には、入射光軸を011とする撮影光学系105を有する撮影レンズユニット100と、ファインダ光学系205を有する光学ファインダユニット200とが、両者間に若干の間隙をもった状態で且つ一体的に結合されて収容されている。図示の如く、上記撮影レンズユニット100と光学ファインダユニット200とは、カメラ正面から見てカメラ本体1の右側に配置されている。
【0017】図2および図3に示すように、撮影レンズユニット100は、メイン機構Aの上にズーム機構Bを一体的に取付けたものとなっている。メイン機構Aは、光軸折り曲げ機構110と、この光軸折り曲げ機構110に光入射端側を連結させたレンズ鏡筒120とを有している。
【0018】図4の(a)(b)、及び図5に示すように、光軸折り曲げ機構110は、撮影レンズ111およびプリズム112を保持部材113で保持したものとなっている。この保持部材113の光導出側開口端はレンズ鏡筒120と連結している。かくして上記光軸折り曲げ機構110による折り曲げ光学系1PXが、撮影光学系105の一部を構成する。換言すれば撮影光学系105は、上記折り曲げ光学系1PXを含んでいる。
【0019】上記折り曲げ光学系1PXは、第一の光軸(入射光軸)011に沿って被写体から入射した光を、反射部材としてのプリズム112により上記第一の光軸011に対して略直角な第二の光軸012に沿って反射させる。第一の光軸011に沿った折り曲げ光学系を折り曲げ前光学系1PAと呼び、第二の光軸012に沿った折り曲げ光学系を折り曲げ後光学系1PBと呼ぶことにする。
【0020】レンズ鏡筒120の内部には、光入射端から入射した光に基づいて被写体像を結像可能な如く設けられた1群レンズ121、2群レンズ122(撮影用ズームレンズ)、3群レンズ123(フォーカス用レンズ)を含む撮影レンズ群が収容されている。これらの撮影レンズ群(1群レンズ121?3群レンズ123)により結像された被写体像は、レンズ鏡筒120の光軸終端部に配置された撮像素子126により光電変換される。この撮像素子126には入出力端子列173(173a,173b)が付設されている。上記撮像素子126の受光面前方における光軸012上には、4群レンズ124,ローパスフィルター125からなる光学部材130が配置されている。
【0021】このように、撮影レンズ群(1群レンズ121?3群レンズ123),光学部材130(4群レンズ124,ローパスフィルター125),撮像素子126等は、すべて前記第二の光軸012に沿って形成された折り曲げ後光学系1PB内に配設されている。
【0022】本実施例の撮影光学系105は、上記折り曲げ光学系1PXを有し、第二の光軸012の終端に撮像素子126を備えたデジタルカメラ用光学系を構成している。
【0023】前記1群レンズ121?3群レンズ123は、各群レンズ保持枠131?133によってそれぞれ保持されている。また4群レンズ124,ローパスフィルター125からなる光学部材130は保持枠134で保持されている。これら保持枠のうち、2群レンズ保持枠132及び3群レンズ保持枠133は、一対のガイド軸171,172(図2、図3参照)に案内されて、前記光軸012に沿った方向へ移動可能に設けられている。上記2群レンズ保持枠132の前面にはシャッタユニット160が搭載されている。また3群レンズ保持枠133の後面には当該3群レンズ保持枠133を駆動するための駆動源、すなわちアクチュエータとしてAF(オートフォーカス)モータ140が搭載されている。
【0024】上記AFモータ140やシャッタユニット160の駆動系に対して電力を供給するためのフレキシブルプリント基板150(151,152)が、レンズ鏡筒120の外部からレンズ鏡筒120の内部へ導入されている。このフレキシブルプリント基板150(151,152)は、厚み方向に屈曲可能な帯状をなしている。レンズ鏡筒120の内部へ導入された各フレキシブルプリント基板151,152の先端部位は、略同一部位で同方向にU字状に屈曲されたのち、2群レンズ保持枠132,3群レンズ保持枠133にそれぞれ固定されている。そして上記プリント基板151の先端151aは、シャッタユニット160の駆動機構(不図示)に電気的に接続され、上記プリント基板152の先端152aは、AFモータ140に電気的に接続されている。
【0025】図4の(a)(b)に示すように、前記光学部材130(4群レンズ124,ローパスフィルター125)を保持している保持枠134の一方側(図中上方側)の外面と、前記レンズ鏡筒120の内面との間には、前記AFモータ140を収容可能な空間SA1が形成されている。また上記保持枠134の他方側(図中下方側)の外面と前記レンズ鏡筒120の内面との間には、前記フレキシブルプリント基板151,152の屈曲により生じた撓み部151b,152bを収容可能な第二の空間SA2が形成されている。なおフレキシブルプリント基板151,152は屈曲により生じた撓み部151b,152bが、前記第二の空間SA2に対して重なり合った状態で収容されるものとなっている。
【0026】前記第一の空間SA1および第二の空間SA2は、前記第一の光軸011と前記第二の光軸012とを含む平面を境として一方(図中上方)に存在する第一の領域E1および他方(図中下方)に存在する第二の領域E2にそれぞれ形成されている。
【0027】レンズ保持枠133の一部には規制部材155が設けられている。この規制部材155は、上記レンズ保持枠133の動きに伴う上記フレキシブルプリント基板151,152の撓み部151b,152bの変動範囲を規制するための部材である。
【0028】図3に説明を戻す。ズーム機構Bは、メイン機構Aに対して着脱自在に結合可能なユニットとして別設されている。このズーム機構Bは第一のズームレンズ移動機構(180?184,191)及びファインダ駆動機構(192,193ほか)を備えている。
【0029】上記第一のズームレンズ移動機構(180?184,191)は、取付けフレーム181に装着された駆動源すなわちアクチュエータとしてのズームモータ180と、このズームモータ180の動力で回転動作するリードスクリュー182と、このリードスクリュー182により駆動され、光軸012と平行に設けられたガイド軸183に沿って摺動し、前記ズームレンズ122を駆動操作するための駆動部材191とを備えている。
【0030】ファインダ駆動機構(192,193ほか)は、前記駆動部材191の移動に伴い前記ガイド軸183に沿って摺動するように設けられた摺動部材192と、この摺動部材192の上に突設された駆動力伝達子としての駆動ピン193とを備えている。摺動部材192は後述するようにスプリング184を介して2群レンズ保持枠132に連結される。このファインダ駆動機構(192,193ほか)に関しては、後で詳しく説明する。
【0031】前記駆動部材191と、摺動部材192と、駆動ピン193とは、変位伝達用スライダー190を構成している。
【0032】ズーム機構Bは、取付けフレーム181に設けてある取付孔185a,185bを介してメイン機構Aのねじ穴127a,127bに対してねじ止めすることにより、メイン機構Aと一体化される。
【0033】裏蓋Cは、板状部材128に設けてある取付孔128bを通して、取り付けねじ128aをメイン機構Aのねじ穴127cにねじ止めすることにより、メイン機構Aと一体化される。
【0034】メイン機構Aに対し、ズーム機構Bが一体化された状態になると、前記ズームモータ180は、前記AFモータ140と共に前記第一の領域E1内に配置される。そして上記ズームモータ180は、前記レンズ鏡筒120の前部外方であって、且つ前記第一の領域E1内に存在する前記プリズム112に近接して配置される。上記AFモータ140とズームモータ180との間には、前記撮影レンズ群(1群レンズ121?3群レンズ123)のうちの少なくとも一つのレンズが配置されている。」

【図2】【図3】から、レンズ鏡筒120の上側の面に開口部が形成され、また、裏側の面(裏蓋Cを取り付ける面)の内部観察に必要な全域に開口部が形成されていることが見て取れる。
また、上記のレンズ鏡筒120の上側の面の開口部には、ズーム機構Bを取り付けた取付けフレーム181が取り付けられ、取付けフレーム181はレンズ鏡筒120の内部側(群レンズが配置されている側)に向かって解放されていることが見て取れる。
さらに、裏蓋Cによりレンズ鏡筒120裏側の面の開口部がふさがれることが見て取れる。
【図2】?【図5】を合わせてみると、上記のレンズ鏡筒120の上側の面の開口部は、第1?第4の群レンズ121?124の光軸方向に沿って開口していること、及び、第1?4の群レンズが全て鏡筒120内に配置されていることが見て取れる。

イ 引用例に記載された発明の認定
上記記載事項から、引用例には、カメラに関し、
「レンズ鏡筒120を有するメイン機構Aの上に、ズームレンズ移動機構(180?184,191)及びファインダ駆動機構(192,193ほか)を備えるズーム機構Bを着脱自在に一体的に取付けたものとなっている撮影レンズユニット100を収容した電子カメラ本体1であって、
レンズ鏡筒120の内部には、光入射端から入射した光に基づいて被写体像を結像可能な如く設けられた1群レンズ121、2群レンズ122(撮影用ズームレンズ)、3群レンズ123(フォーカス用レンズ)を含む撮影レンズ群及び光学部材を形成する第4群レンズ124の全ての群レンズが配置され、
レンズ鏡筒120の上側の面に開口部が形成され、また、裏側の面(裏蓋Cを取り付ける面)の内部観察に必要な全域に開口部が形成され、
レンズ鏡筒120の上側の面の開口部は、第1?第4の群レンズ121?124の光軸方向に沿って開口しており、
裏蓋Cは、板状部材128に設けてある取付孔128bを通して、取り付けねじ128aをメイン機構Aのねじ穴127cにねじ止めすることにより、メイン機構Aと一体化され、
裏蓋Cによりレンズ鏡筒120裏側の面の開口部がふさがれ、
レンズ鏡筒120の上側の面の開口部には、ズームレンズ移動機構(180?184,191)及びファインダ駆動機構(192,193ほか)を備えるズーム機構Bを取り付けた取付けフレーム181が取り付けられ、取付けフレーム181はレンズ鏡筒120の内部側(群レンズが配置されている側)に向かって解放されている電子カメラ本体1を備えたカメラ。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

ウ 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平6-3573号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面の記載とともに以下の事項が記載されている。

「【0068】次に、ズーム用モータ141 のユニットとAF用モータ161 のユニットとを、蓋部材201 に取り付ける。ズーム用、AF用ともに、バネ146 、164 の作用により、出力軸142 、162 の先端が蓋部材201 に取り付けられた平面受け部206 、207 に突き当たった状態になる。この方法により、出力軸の光軸方向の位置は固定される。また、回転時の摩擦を極力少なくするために、出力軸142 、162 の先端は球状に加工されている。
【0069】これでズームレンズ鏡胴101 の基体である函体103 の内部に組み込むべき各ユニットに対する事前の準備作業は終了した。この後は、函体103 の開口部より、各部品を順次組み込んで行くだけで、従来のズームレンズ鏡胴に比して格段に簡潔な組み立てを行うことができる。即ち、まず、函体103 に付設されたガイド棒支持部111 、113 にガイド棒121 を、ガイド棒支持部112 、114 にガイド棒122 をそれぞれ、函体103 の開口104 から装入して嵌装させる。次に、第1可動保持枠123 、固定保持枠124 、第2可動保持枠125 を、同様に、函体103 の開口104 よりガイド棒121 、122 に直交する方向から装入して、2本のガイド棒121 、122 に嵌装する。即ち、保持枠123と一体成形されているブッシュ123aを上側ガイド棒121 に、U字溝123bを下側ガイド棒122 にそれぞれ嵌入し、保持枠124 と一体成形されているブッシュ124aを下側ガイド棒122 に、U字溝124bを上側ガイド棒121 にそれぞれ嵌入する。そして、前述のように、ブッシュ124aを板バネ124cにより左向きに付勢して固定する。また、保持枠125 も同様に、一体成形されているブッシュ125aを下側ガイド棒122 に、U字溝125bを上側ガイド棒121 にそれぞれ嵌入する。
【0070】次に、ズーム用モータ141 とAF用モータ161 が取り付けられた蓋部材201 が、同様に、函体103 の開口104 から、該開口104 を塞ぐように取り付けられる。この状態で、蓋部材201 に形成された軸抑え202 、203 、204 、205 の各端面202a,203a,204a,205a が函体103 の各ガイド棒支持部111 ?114 に接し、上側ガイド棒121 と下側ガイド棒122 の浮き上がりが防止される。この後、保持枠123 とナット143 、保持枠124 とナット163 を連結するために、弾性部材123d、125dを、それぞれセットする。」

エ 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前である2006年6月15日に頒布された刊行物である特開2006-154433号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面の記載とともに以下の事項が記載されている。

「【0034】
図3は、上記駆動ユニット23を上記開口部側から見た外観図を示す。ギアケース34内には、フォーカス用モータ35と、フォーカス用リードスクリュー36と、フォーカス用モータ35の動力をフォーカス用リードスクリュー36に伝達するフォーカス用伝達ギア37,38,39(図7参照)とが(以上の3パーツを総称してフォーカス駆動部と言う)、光軸K1に沿って矢印X1および矢印X2の方向に配置されている。同様に、ズーム用モータ40と、ズーム用リードスクリュー41と、ズーム用モータ40の動力をズーム用リードスクリュー41に伝達するズーム用伝達ギア42,43,44(図7参照)とが(以上の3パーツを総称してズーム駆動部と言う)、軸受部34aを介して、上記フォーカス駆動部に直列に且つ図3において左右対称に配置されている。
【0035】
尚、図3においては、上記フォーカス用リードスクリュー36およびズーム用リードスクリュー41に関しては、スクリュー部分を省略して簡略化して画いている。他の図においても同様である。」

オ 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2004-133054号公報(以下、「引用例4」という。)には、図面の記載とともに以下の事項が記載されている。

「【0081】
上記レンズ鏡筒10においては、レンズ群,ステップモータ等の各構成部材の組み込みを行う場合、上記固定枠32の背面側に設けられる開口部32gを通して上記レンズ群,ステップモータ等が挿入され、組み付けが行われる。組み込み終了後、上記開口部32gには金属板の固定蓋89が装着され、ビスをビス挿通穴89d,89eに挿通させ、固定枠側ネジ穴32d,32eに螺着させて固定枠32を密閉状態とする(図3)。」

(3)本願補正発明と引用発明との対比
ア 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「1群レンズ121、2群レンズ122(撮影用ズームレンズ)、3群レンズ123(フォーカス用レンズ)を含む撮影レンズ群及び光学部材を形成する第4群レンズ」「ズームレンズ移動機構(180?184,191)」「カメラ」及び「レンズ鏡筒120」が、それぞれ、本願補正発明の「レンズ群」「レンズ群を光軸方向に移動させる駆動部」「撮像装置」及び「箱形状のレンズ筐体」に相当する。

引用発明の「レンズ鏡筒120の内部には、光入射端から入射した光に基づいて被写体像を結像可能な如く設けられた1群レンズ121、2群レンズ122(撮影用ズームレンズ)、3群レンズ123(フォーカス用レンズ)を含む撮影レンズ群及び光学部材を形成する第4群レンズ124の全ての群レンズが配置され」ることが、本願補正発明の「箱形のレンズ筐体」に「この撮像装置が有する全てのレンズ群が搭載され」ることに相当する。

引用発明の「レンズ鏡筒120の上側の面に開口部が形成され」ること、及び、「レンズ鏡筒120の上側の面の開口部は、第1?第4の群レンズ121?124の光軸方向に沿って開口して」いることが、本願補正発明の「レンズ筐体の第1の面に」「上記レンズ群の光軸方向に沿って開口した第1の開口部」が形成されることに相当する。

引用発明の(レンズ鏡筒120の上側の面に形成された開口部とともに)「裏側の面(裏蓋Cを取り付ける面)の内部観察に必要な全域に開口部が形成され」ることが、本願補正発明の「上記第1の開口部が形成された上記第1の面とは別の第2の面の全域に形成され、上記レンズ筐体の内部の上記レンズ群の観察を許す第2の開口部とを有」することに相当する。

引用発明の「ズームレンズ移動機構(180?184,191)及びファインダ駆動機構(192,193ほか)を備えるズーム機構Bを取り付けた取付けフレーム181」と、本願補正発明の「この撮像装置が有する全ての駆動源が搭載され」た「駆動筐体」とは、「ズームレンズの駆動源が搭載された駆動機構支持体」である点で一致する。

引用発明の「レンズ鏡筒120の上側の面の開口部には、ズームレンズ移動機構(180?184,191)及びファインダ駆動機構(192,193ほか)を備えるズーム機構Bを取り付けた取付けフレーム181が取り付けられ、取付けフレーム181はレンズ鏡筒120の内部側(群レンズが配置されている側)に向かって解放されている」ことは、本願補正発明の駆動機構支持体(「駆動筐体」)が「上記レンズ筐体の上記第1の開口部に連通すべき駆動用開口部を有する」ことに相当する。

引用発明の「裏蓋Cは、板状部材128に設けてある取付孔128bを通して、取り付けねじ128aをメイン機構Aのねじ穴127cにねじ止めすることにより、メイン機構Aと一体化され、 裏蓋Cによりレンズ鏡筒120裏側の面の開口部がふさがれ」ることと、本願補正発明の「上記レンズ筐体の上記第2の開口部を密閉状態に塞ぐ着脱可能な板部材とを備え」ることとは、「上記レンズ筐体の上記第2の開口部を塞ぐ着脱可能な板部材とを備え」ることで一致する。

引用発明の「レンズ鏡筒120を有するメイン機構Aの上に、ズームレンズ移動機構(180?184,191)及びファインダ駆動機構(192,193ほか)を備えるズーム機構Bを着脱自在に一体的に取付けたものとなっている」こと、及び、「レンズ鏡筒120の上側の面の開口部には、ズームレンズ移動機構(180?184,191)及びファインダ駆動機構(192,193ほか)を備えるズーム機構Bを取り付けた取付けフレーム181が取り付けられ、取付けフレーム181はレンズ鏡筒120の内部側(群レンズが配置されている側)に向かって解放されている」ことが、本願補正発明の「上記レンズ筐体と上記駆動筐体とは、上記第1の開口部と駆動用開口部とが連通した状態で、その連通した上記第1の開口部と駆動用開口部とを取り囲むように互いに分離可能に組み合わされて」いることに相当する。

引用発明の「(レンズ鏡筒120の)裏側の面(裏蓋Cを取り付ける面)の内部観察に必要な全域に開口部が形成され」ていることが、本願補正発明の「上記板部材が取り外された状態では、上記第2の開口部を通して上記レンズ筐体の内部の上記レンズ群の観察が許される」ことに相当する。

引用発明の「裏蓋Cによりレンズ鏡筒120裏側の面の開口部がふさがれ」ることと、本願補正発明の「上記板部材が取り付けられた状態では、上記レンズ筐体と上記駆動筐体と上記板部材とによって密閉構造が構成される」こととは、「上記板部材が取り付けられた状態では、上記レンズ筐体と上記駆動筐体と上記板部材とによって塞がれた空間が構成される」ことで一致する。

イ 一致点
よって、本願補正発明と引用発明は、
「レンズ群とそのレンズ群を光軸方向に移動させる駆動部とを備えた撮像装置であって、
この撮像装置が有する全てのレンズ群が搭載された箱形状のレンズ筐体を備え、上記レンズ筐体は、このレンズ筐体の第1の面に形成され、上記レンズ群の光軸方向に沿って開口した第1の開口部と、上記第1の開口部が形成された上記第1の面とは別の第2の面の全域に形成され、上記レンズ筐体の内部の上記レンズ群の観察を許す第2の開口部とを有し、
この撮像装置が有するズームレンズの駆動源が搭載され、上記レンズ筐体の上記第1の開口部に連通すべき駆動用開口部を有する駆動機構支持体と、
上記レンズ筐体の上記第2の開口部を塞ぐ着脱可能な板部材とを備え、
上記レンズ筐体と上記駆動筐体とは、上記第1の開口部と駆動用開口部とが連通した状態で、その連通した上記第1の開口部と駆動用開口部とを取り囲むように互いに分離可能に組み合わされており、上記板部材が取り外された状態では、上記第2の開口部を通して上記レンズ筐体の内部の上記レンズ群の観察が許される一方、上記板部材が取り付けられた状態では、上記レンズ筐体と上記駆動筐体と上記板部材とによって塞がれた空間が構成される撮像装置。」の発明である点で一致し、次の各点で相違する。

ウ 相違点
(ア)相違点1
撮像装置において、駆動機構支持体について、本願補正発明においては「全ての駆動源が搭載される」ものであるのに対し、引用発明においては、「ズームレンズ移動機構(180?184,191)及びファインダ駆動機構(192,193ほか)を備えるズーム機構」を備えるものである点。

(イ)相違点2
駆動機構支持体が、本願補正発明においては「駆動筐体」であるのに対し、引用発明においては、そのような限定がなされていない点。

(ウ)相違点3
レンズ筐体の第2の開口部を板部材で塞ぐ程度について、本願補正発明においては、「密閉状態」に塞ぎ、レンズ筐体と駆動筐体と板部材によって密閉構造が構成されているのに対し、引用発明においては、そのような限定がなされていない点。

(4)当審の判断
ア 上記各相違点について検討する。
(ア)相違点1について
撮像装置において、ズームレンズ用駆動源に加え、フォーカスレンズ用の駆動源もユニット化してレンズ駆動源を全て駆動源支持体に搭載することは、引用例2,3にも記載されているように周知の技術である。
引用発明においても、上記の周知技術を採用して、駆動機構支持体に「全てのレンズ駆動用の駆動源が搭載される」ものとすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、さらに、レンズの駆動源だけでなく、撮像装置が有する全ての駆動源を搭載するとすることも、メンテナンスの向上等の要請に応じて当業者が容易に想到し得ることである。
すなわち、引用発明に上記の周知技術を適用し、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得たことである。

(イ)相違点2について
撮像装置の駆動機構支持体の形態について、「筐体」とすることは、引用例2にも記載されているように周知の技術である。
引用発明にも、上記の周知技術を採用し、駆動支持体の形態として筐体を選択することは当業者が容易に想到し得たことである。

(ウ)相違点3について
板状の蓋部材によって撮像装置本体の開口部塞ぎ内部を密閉状態とすることは、引用例4にも記載されているように周知の技術である。すなわち、レンズ支持体と駆動機構支持体によって撮像装置本体が構成される撮像装置においては、レンズ支持体と駆動機構支持体によって構成された撮像装置本体の開口部を板状の蓋部材で塞いで内部を密封状態とすることは周知の技術であるといえる。
よって、引用発明においても、上記の周知技術を採用して、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることに格別の困難性は認められない。

イ 本願補正発明の奏する作用効果
そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明及び上記の周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 むすび
したがって、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるということができないから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成20年6月20日付けの手続補正は、原審において既に却下されており、また、平成20年10月27日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年2月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 平成20年10月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」の記載参照。)

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項及び引用発明については、上記「第2 平成20年10月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(2)引用例」に記載したとおりである。

3 対比・判断
上記「第2 平成20年10月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」に記載したように、本願発明に対して、「レンズ筐体の形状、レンズ筐体と各開口部の関連構造、及び、板部材により開口部を塞ぐ程度について、それぞれ、より具体的に特定する補正事項」を付加したものが本願補正発明である。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 平成20年10月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(3)本願補正発明と引用発明との対比」及び「(4)当審の判断」において記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-28 
結審通知日 2009-09-01 
審決日 2009-09-18 
出願番号 特願2007-155067(P2007-155067)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 辻本 寛司  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 越河 勉
森林 克郎
発明の名称 撮像装置およびその製造方法  
代理人 田中 光雄  
代理人 仲倉 幸典  
代理人 山崎 宏  

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