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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て成立) A45F
管理番号 1206583
判定請求番号 判定2009-600026  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2009-12-25 
種別 判定 
判定請求日 2009-07-10 
確定日 2009-11-11 
事件の表示 上記当事者間の特許第3448750号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号写真,イ号図面並びにイ号物件の説明書に示す「飲料容器の蓋」は、特許第3448750号の請求項1に係る発明の技術的範囲に属する。 
理由 第1 判定請求人の請求の趣旨及び被請求人の答弁の趣旨
判定請求人は,請求の趣旨として,判定請求書に添付したイ号写真(1)乃至(10),イ号図面並びにイ号物件の説明書に示す「飲料容器の蓋」(以下,「イ号物件」という。)は,特許第3448750号(以下,「本件特許」という。)の請求項1に係る発明(以下,「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属する,との判定を求め,他方,被請求人は,答弁の趣旨として,イ号物件は,本件特許発明の技術的範囲に属さないとの判定を求めている。
なお,本件特許は請求人の所有する特許であり,イ号物件は被請求人が販売しているものである。

第2 本件特許発明
本件特許発明は,本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】容器本体の上部開口を覆う蓋板部を有する飲料用容器の蓋において、前記蓋板部に周壁を立設するとともに、蓋板部の一側の周壁寄りに液通孔を形成し、該液通孔を塞ぐ開閉キャップを蓋板部の上面に回動可能に設け、前記周壁の液通孔対向側に、前記開閉キャップを開いたときに退避させる切り欠き部を形成し、該切り欠き部に前記開閉キャップを係脱可能としたことを特徴とする飲料用容器の蓋。」
本件特許発明を構成要件に分説すると次のとおりである。
「A.容器本体の上部開口を覆う蓋板部を有する飲料用容器の蓋において、
B.前記蓋板部に周壁を立設するとともに、
C.蓋板部の一側の周壁寄りに液通孔を形成し、
D.該液通孔を塞ぐ開閉キャップを蓋板部の上面に回動可能に設け、
E.前記周壁の液通孔対向側に、前記開閉キャップを開いたときに退避させる切り欠き部を形成し、
F.該切り欠き部に前記開閉キャップを係脱可能とした
G.ことを特徴とする飲料用容器の蓋。」(以下,「構成要件A」等という。)

第3 イ号物件の特定
1.イ号写真,イ号図面及びイ号物件の説明書の記載事項
請求書に添付された「イ号写真(1)?(10)」,「イ号図面」及び「イ号物件の説明書」には,以下の事項が記載されている。
(1a)イ号写真(1)は,容器本体(2)の上部に蓋(3)を装着した状態の全体写真である。蓋(3)の上面は開閉キャップ(13)が嵌入される所定幅の溝部,及び,その両側の台状隆起部(9a)からなる蓋板部(9)により構成されており,該蓋板部(9)の外周には容器本体(2)に装着する胴部が形成され,また,周壁(10)が立設されている。周壁(10)は,溝部の液通孔対向側の端部には形成されておらず,溝部の一方の端部は開放されている。
(1b)イ号写真(2)は,容器本体(2)から蓋(3)を取り外した状態の全体写真である。
(1c)イ号写真(3)は,容器本体(2)から蓋(3)を取り外した状態の下方からの全体写真である。
(1d)イ号写真(4)は,容器本体(2)の上部に蓋(3)を装着した状態の蓋(3)の液通孔(12)側からの写真である。蓋板部(9)の上面が開閉キャップ(13)を受け入れる溝部と該溝部の両側の台状隆起部(9a)とから形成されていることがみてとれる。
(1e)イ号写真(5)は,容器本体(2)の上部に蓋(3)を装着した状態の蓋(3)の液通孔対向側からの写真である。蓋板部(9)の溝部の液通孔対向側は,周壁(10)により閉鎖されておらず,開閉キャップ(13)を開いたときに受け入れるための開放凹部が形成されていることがみてとれる。また,開閉キャップ(13)は,閉じた状態で周壁(10)に沿って立ち上がるL形片を有している。そして,蓋(3)の胴部の液通孔対向側には係止凸部(17a)が形成され,開閉キャップ(13)のL形片には係止凹部が形成されている。
(1f)イ号写真(6)は,蓋(3)のみの下方からの写真である。蓋(3)の液通孔(12)を開閉キャップ(13)の栓部(13a)が塞いでいることがみてとれる。
(1g)イ号写真(7)は,蓋(3)の開閉キャップ(13)をほぼ垂直に開放した状態の写真である。開閉キャップ(13)の一端は,蓋板部(9)の溝部のほぼ中央に軸支されて回動されることがみてとれる。
(1h)イ号写真(8)は,蓋(3)の開閉キャップ(13)を完全に開放して,液通孔対向側に回動させた写真である。回動された開閉キャップ(13)は,蓋板部(9)の溝部に嵌入され,溝部の液通孔対向側の端部の開放凹部に受け入れられ,開閉キャップ(13)の栓部(13a)は,周壁(10)より上方に突出している。蓋板部(9)の溝部の液通孔側の端部は,周壁(10)により閉鎖されていることがみてとれる。
(1i)イ号写真(9)は,蓋(3)の開閉キャップ(13)を開放して,液通孔対向側に回動させた写真である。
(1j)イ号写真(10)は,蓋(3)の開閉キャップ(13)を開放して,液通孔対向側に回動させた状態の開閉キャップ(13)の拡大写真である。
開閉キャップ(13)を開放して,開放凹部に開閉キャップ(13)を受け入れた状態において,開閉キャップのL形片に設けられた係止凹部が蓋(3)の胴部外周面に設けられた係止凸部(17a)に係脱可能に係合することによって,受け入れ状態が保持されることがみてとれる。
(1k)イ号図面は,蓋(3)の断面図である。
(1l)イ号物件の説明書には,「さらに,係止凸部(17a)が切り欠き部(16)の下方に設けられた構成では、該開閉キャップ(13)は、閉じた際に前記蓋板部(9)に係合し、開いた際に係止凸部(17a)に係合するので、開閉キャップ(13)の係止がより確実となる。」(2頁17?20行)と記載されている。

2.イ号物件の特定
当審は,以上の記載事項から,イ号物件を次のように特定する。
(イ号物件)
「a.容器本体の上部開口を覆う蓋板部を有する飲料容器の蓋において,
b.蓋板部に周壁を立設するとともに,蓋板部の上面は,開閉キャップを受け入れる溝部と該溝部の両側の台状隆起部とから形成されており,
c.溝部の底部の周壁寄りに液通孔を形成し,
d.該液通孔を塞ぐ栓部を有する開閉キャップを,その一端を溝部に嵌入して軸支して回動可能に設け,
e.開閉キャップを開いたときに栓部が周壁の上端より上方に突出された状態で受け入れることができるように,蓋板部の溝部の液通孔対向側の端部は周壁により閉鎖されないことによって開放凹部が形成され,
f.開放凹部に開閉キャップを受け入れた状態で開閉キャップに設けられた係止凹部が蓋の胴部外周面に設けられた係止凸部に係脱可能に係合することによって,開閉キャップの受け入れ状態が保持される,
g.飲料容器の蓋」(以下,「構成a」等という。)

3.被請求人のイ号物件の特定について
(1)答弁書に添付されたイ号説明書の構成(b2)について
被請求人は「蓋板部(9)には、開閉キャップ(13)を受け入れる溝部(9b)を凹設し、該溝部(9b)の両側から周壁(10)に至る台状隆起部(9a)を設け」と特定している。
この特定は,蓋板部(9)の具体的な形状を特定したものであるが,台状隆起部(9a)及び溝部(9b)は蓋板部に設けられた別部材ではなく,上記構成aのごとく「蓋板部(9)の上面は,開閉キャップを受け入れる溝部と該溝部の両側の台状隆起部(9a)とから形成されて」いることが,イ号写真(1),(4)等からみてとれる。

(2)答弁書に添付されたイ号説明書の構成(d)について
被請求人は「液通孔(12)を塞ぐ栓部(13a)を有する開閉キャップ(13)を溝部(9b)に嵌入した状態で回動可能に設け」と特定している。しかしながら,イ号写真(5)からみて,開閉キャップ(13)は液通孔(12)を塞いでいる状態においては蓋板部(9)の溝部に嵌入しているものの,回動している状態において開閉キャップ(13)が溝部に嵌入した状態であるとすることはできない。回動している状態においては,開閉キャップ(13)の一端のみが溝部に嵌入されて軸支されることが,イ号写真(7)からみてとれる。

(3)答弁書に添付されたイ号説明書の構成(e1)について
被請求人は「前記溝部(9b)の液通孔(12)対向側に、前記開閉キャップ(13)を開いたときに受け入れる溝部(9b)の開放部(16a)を備え、該開放部(16a)の両側に向けて下降傾斜させた周壁(10)の終端(10a)を配置することにより通路(16)を形成し」と特定している。
イ号写真(8)には,蓋板部(9)の溝部の液通孔(12)側の端部は周壁(10)により閉鎖されていることが明らかであり,他方,イ号写真(5)には,上記構成eの一部である「蓋板部(9)の溝部の液通孔対向側の端部は周壁(10)により閉鎖されないことによって開放凹部が形成され」ていることが明らかであり,被請求人の特定する「(溝部(9b)の開放部(16a)の両側に向けて下降傾斜させた周壁(10)の終端(10a)を配置することにより形成した)通路(16)」は,上記「開放凹部」に相当している。

(4)答弁書に添付されたイ号説明書の構成(e2)について
被請求人は「前記通路(16)は、開閉キャップ(13)を受け入れた状態で栓部(13a)を上方に突出させる深さ(d)に形成され」と特定している。
イ号写真(8),(10)から,「開閉キャップを開いたときに栓部が周壁の上端より上方に突出された状態で受け入れることができるように開放凹部が形成されている」構成がみてとれ,上記被請求人の特定は、該構成に相当している。

(5)答弁書に添付されたイ号説明書の構成(f)について
被請求人は「該通路(16)に前記開閉キャップ(13)を受け入れ可能とした」と特定している。しかしながら,開放凹部(通路(16))に開閉キャップ(13)を受け入れた状態において,開閉キャップのL形片に設けられた係止凹部が蓋(3)の胴部外周面に設けられた係止凸部(17a)に係脱可能に係合することによって,受け入れ状態が保持されることは,イ号写真(10)等から明らかである。

第4 属否の検討
1.本件特許発明の構成要件A,B及びGについて
イ号物件の構成a,b及びgは,本件特許発明の構成要件A,B及びGをそれぞれ充足していることは明らかである。

2.本件特許発明の構成要件Cについて
イ号物件の構成cの「溝部」が,「蓋板部」の一部であることは明らかであるから,イ号物件の「溝部の底部の周壁寄り」は本件特許発明の構成要件Cの「蓋板部の一側の周壁寄り」に相当している。
したがって,イ号物件の構成cは,本件特許発明の構成要件Cを充足している。

3.本件特許発明の構成要件Dについて
イ号物件の構成dの開閉キャップの一端が嵌入して軸支された「溝部」が,「蓋板部」の上面を構成する一部であることは明らかであるから,イ号物件の「開閉キャップを,その一端を溝部に嵌入して軸支して回動可能に設け」は,本件特許発明の構成要件Dの「開閉キャップを蓋板部の上面に回動可能に設け」に相当している。
したがって,イ号物件の構成dは,本件特許発明の構成要件Dを充足している。

4.本件特許発明の構成要件Eについて
まず,本件特許発明の構成要件Eの「開閉キャップを開いたときに退避」の意味について検討する。
「広辞苑」(岩波新書)によれば,「退避」とは「しりぞいて危険を避けること」の意味である。そして,本件特許の【図1】を見ると,開いた状態の開閉キャップが1点鎖線で描かれており,その上端部は周壁10の上端部よりも上方に位置していることがみてとれる。
してみると,本件特許発明の構成要件Eにおける「開閉キャップを開いたときに退避させる」とは,開閉キャップを開いたときに開閉キャップ(13)の全てが周壁上方に大きく突出することを避けるために開閉キャップ(13)をある程度退避させることができるものを含むものであって,開閉キャップ(13)を周壁(10)の上方空間から完全に退かせるものだけを意味するものではない。
そうすると,イ号物件の構成eの「開閉キャップを開いたときに栓部が周壁の上方に突出された状態で受け入れることができる」は,本件特許発明の構成要件Eにおける「開閉キャップを開いたときに退避させる」に相当している。
そして,イ号物件の構成eの「開放凹部」は,溝部の液通孔対向側の端部を周壁(10)で閉鎖しないことによって形成されたものであって,本件特許発明の構成要件Eの「(周壁の)切り欠き部」に相当している。
したがって,イ号物件の構成eは,本件特許発明の構成要件Eを充足している。

5.本件特許発明の構成要件Fについて
本件特許発明の「切り欠き部に前記開閉キャップを係脱可能とした」構成について,本件特許の明細書には,以下の記載がある。
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】このため、容器内の飲料水を飲む場合には、その都度蓋を取外していた。
【0004】そこで本発明は、蓋を取外すことなく容器内の飲料水を飲むことのできる飲料用容器の蓋を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するため、本発明は、容器本体の上部開口を覆う蓋板部を有する飲料用容器の蓋において、前記蓋板部に周壁を立設するとともに、蓋板部の一側の周壁寄りに液通孔を形成し、該液通孔を塞ぐ開閉キャップを蓋板部の上面に回動可能に設け、前記周壁の液通孔対向側に、前記開閉キャップを開いたときに退避させる切り欠き部を形成し、該切り欠き部に前記開閉キャップを係脱可能としたことを特徴としている。また、前記蓋板部を傾斜して設け、該蓋板部の低い側に液通孔を形成すること、前記開閉キャップの両側に、該開閉キャップを閉じた際に前記蓋板部に係合し、該開閉キャップを開いた際に前記切り欠き部両側の周壁側面に係合する係止突起を設けることもできる。
【0006】
【作 用】上記構成によれば、本発明は、開閉キャップを開いて切り欠き部に退避させて係合し、液通孔側の周壁に口をつけて容器を傾ければ、液通孔から容器内の飲料水を飲むことができる。また、液通孔にストローを差込んで飲むこともできる。そして、開閉キャップを閉じれば容器内を閉塞できる。
【0007】また、前記蓋板部を傾斜して設け、該蓋板部の低い側に液通孔を形成する構成では、液通孔側の周壁に口をつけて容器を傾ければ、液通孔から容器内の飲料水を飲むことができ、飲み終わって容器を直立させれば、蓋板部上の飲料水は、蓋板部が傾斜しており、かつ、蓋板部の低い側に液通孔が形成されているので、液通孔から容器内に落下し、蓋板部上面に飲料水が残ることがない。さらに、前記開閉キャップの両側に係止突起を設けた構成では、該開閉キャップは、閉じた際に前記蓋板部に係合し、開いた際に前記切り欠き部両側の周壁側面に係合するので、開閉キャップの係止がより確実となる。」
「【0013】周壁10には、液通孔12の対向側に、開閉キャップ13を開いたときに退避させる切り欠き部16が形成され、該切り欠き部16に前記開閉キャップ13を開いた状態に保持する係止突起17が設けられている。尚、係止突起17は、開閉キャップ13または開閉キャップ13と切り欠き部16の両方に設けてもよい。
【0014】このように構成することにより、開閉キャップ13を閉じた状態では、閉塞部14が液通孔12の係止突起15に係合して液通孔12が閉塞されている。そして、開閉キャップ13を開いて切り欠き部16に退避させて、開閉キャップ13を係止突起17により係止して切り欠き部16に係合し、液通孔12側の周壁10に口をつけて飲料用容器1を傾ければ、液通孔12から飲料用容器1内の飲料水を飲むことができる。また、液通孔12にストローを差込んで飲むこともできる。」
「【0016】図4及び図5は、開閉キャップ20の両側に係止突起21,21を設け、開閉キャップ20を閉じた際には係止突起21,21を蓋板部9に係合し、開閉キャップ20を開いた際には係止突起21,21を切り欠き部16両側の周壁10側面に係合する本発明の第2実施例を示すものである。」
「【0019】【発明の効果】以上説明したように、本発明の飲料用容器の蓋は、第1の手段では、容器本体の上部開口を覆う蓋板部に周壁を立設するとともに、蓋板部の一側の周壁寄りに液通孔を形成し、該液通孔を塞ぐ開閉キャップを蓋板部の上面に回動可能に設け、前記周壁の液通孔対向側に、前記開閉キャップを開いたときに退避させる切り欠き部を形成し、該切り欠き部に前記開閉キャップをを係脱可能としたので、開閉キャップを開いて切り欠き部に退避させて係止すれば、開閉キャップが邪魔にならずに液通孔側の周壁に口をつけて容器を傾けて液通孔から容器内の飲料水を飲むことができる。また、液通孔にストローを差込んで飲むこともできる。そして、開閉キャップを閉じれば容器内を閉塞できる。」
上記段落【0003】には,本件特許発明の【発明が解決しようとする課題】が記載されており,段落【0005】にはそれを解決する手段として,本件特許発明が記載されている。さらに,段落【0019】には,本件特許発明の効果が記載されている。
そして,上記段落【0013】?【0014】及び【0016】には,本件特許発明の第1実施例及び第2実施例がそれぞれ記載されており,第1実施例においては,切り欠き部16に開閉キャップ13を係止して開閉キャップ13を開いた状態に保持する係止突起17が,第2実施例においては,開閉キャップ20に切り欠き部16に係合して開閉キャップ20を開いた状態に保持する係止突起21が設けられている。
ここで,上記本件特許発明の効果である「開閉キャップを開いて切り欠き部に退避させて係止すれば、開閉キャップが邪魔にならずに液通孔側の周壁に口をつけて容器を傾けて液通孔から容器内の飲料水を飲むことができる。」について検討すると,該効果は,開閉キャップが切り欠き部に退避された状態で保持されていれば達成できる効果であるから,上記第1,2実施例において採用されている係脱手段(係止突起17,21を備えたもの)のものに限定されないのは明らかである。
そうすると,上記第1,2実施例における係脱手段は,係脱手段の一つの例を記載したにとどまるものであって,本件特許発明における「切り欠き部に前記開閉キャップを係脱可能とした」という構成要件Fは,「切り欠き部に開閉キャップを(退避された状態で)保持することができ,また,該保持を開放できる」ようにしたものであると解釈するのが相当である。
してみると,イ号物件の構成fの「開放凹部に開閉キャップを受け入れた状態で開閉キャップに設けられた係止凹部が蓋の胴部外周面に設けられた係止凸部に係脱可能に係合することによって,開閉キャップの受け入れ状態が保持される」は,本件特許発明の構成要件Fの「切り欠き部に前記開閉キャップを係脱可能とした」に相当している。
したがって,イ号物件の構成fは,本件特許発明の構成要件Fを充足している。

6.まとめ
以上より,イ号物件は,本件特許発明の構成要件A?Gをすべて充足するものである。

第5 むすび
以上のとおりであるから,イ号写真(1)乃至(10),イ号図面並びにイ号物件の説明書に示す「イ号物件」は,本件特許の請求項1に係る発明の技術的範囲に属する。
よって,結論のとおり判定する。
 
別掲
イ号物件の説明書
イ号写真及びイ号図面に示すように、イ号物件の構成は、以下のとおり。尚、イ号写真(1)は全体の斜視状態写真、イ号写真(2)は全体の分解状態の上方からの斜視状態写真、イ号写真(3)は全体の分解状態の下方からの斜視状態写真、イ号写真(4)は開閉キャップを閉じた状態の前方上方からの斜視状態写真、イ号写真(5)は閉じた状態の後方上方からの斜視状態写真、イ号写真(6)は蓋の下方からの斜視状態写真、イ号写真(7)は開閉キャップを立てた状態の上方からの斜視状態写真、イ号写真(8)は開閉キャップを開けた状態の後方上方からの斜視状態写真、イ号写真(9)は開閉キャップを開けた状態の前方上方からの斜視状態写真、イ号写真(10)は開閉キャップを開けた状態の要部の斜視状態写真、イ号図面は断面図である。
a.容器本体(2)の上部開口を覆う蓋板部(9)を有する飲料用容器(1)の蓋(3)において、
b.前記蓋板部(9)に周壁(10)を立設するとともに、蓋板部(9)には、開閉キャップ(13)の両側から周壁(10)に至る台状隆起部(9a)を設け、
c.蓋板部(9)の一側の周壁(10)寄りに液通孔(12)を形成し、
d.該液通孔(12)を塞ぐ開閉キャップ(13)を蓋板部(9)の上面に回動可能に設け、
e.前記周壁(10)の液通孔(12)対向側に、前記開閉キャップ(13)を開いたときに退避させる切り欠き部(16)を形成し、
f.該切り欠き部(16)に前記開閉キャップ(13)を係脱可能とした
g.飲料用容器の蓋。
h.さらに、前記蓋板部(9)を傾斜して設け、該蓋板部(9)の低い側に液通孔(12)を形成した飲料用容器の蓋。
i.また、開閉キャップ(13)を開いた状態に保持するため、係止凸部(17a)が切り欠き部(16)の下方に設けられている飲料用容器の蓋。
尚、開閉キャップ(13)には、液通孔(12)に嵌合可能な栓部(13a)が突設している。
イ号物件の作用は、以下のとおり。
栓部(13a)が液通孔(12)に嵌合している閉じている状態から開閉キャップ(13)を開いて切り欠き部(16)に退避させて係合し、液通孔(12)側の周壁(10)に口をつけて容器(1)を傾ければ、液通孔(12)から容器(1)内の飲料水を飲むことができる。また、液通孔(12)にストローを差込んで飲むこともできる。そして、開閉キャップ(13)を閉じれば容器(1)内を閉塞できる。
また、前記蓋板部(9)を傾斜して設け、該蓋板部(9)の低い側に液通孔(12)を形成する構成では、液通孔(12)側の周壁(10)に口をつけて容器(1)を傾ければ、液通孔(12)から容器(1)内の飲料水を飲むことができ、飲み終わって容器(1)を直立させれば、蓋板部(9)上の飲料水は、蓋板部(9)が傾斜しており、かつ、蓋板部(9)の低い側に液通孔(12)が形成されているので、液通孔(12)から容器(1)内に落下し、蓋板部(9)上面に飲料水が残ることがない。
さらに、係止凸部(17a)が切り欠き部(16)の下方に設けられた構成では、該開閉キャップ(13)は、閉じた際に前記蓋板部(9)に係合し、開いた際に係止凸部(17a)に係合するので、開閉キャップ(13)の係止がより確実となる。
 
判定日 2009-10-30 
出願番号 特願平5-242961
審決分類 P 1 2・ 1- YA (A45F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 長谷部 善太郎萩田 裕介  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 宮崎 恭
関根 裕
登録日 2003-07-11 
登録番号 特許第3448750号(P3448750)
発明の名称 飲料用容器の蓋  
代理人 牛木 護  
代理人 中野 収二  
代理人 外山 邦昭  
代理人 高橋 知之  

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