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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1206963
審判番号 不服2006-22410  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-05 
確定日 2009-11-12 
事件の表示 特願2002-309387「半導体製造装置用セラミックスヒーター」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 5月20日出願公開、特開2004-146568〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成14年10月24日の出願であって,平成18年8月31日付けで拒絶査定がされ,これに対して,同年10月5日に審判の請求がされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成17年11月15日に提出された手続補正書の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】 セラミックス基板の表面又は内部に抵抗発熱体を有する半導体製造装置用セラミックスヒーターであって,中央にパイプ状の支持体を有し,ウエハ載置面の反り形状が非加熱時において0.001?0.7mm/300mmの凹状であることを特徴とする半導体製造装置用セラミックスヒーター。」

3 引用例の記載内容と引用発明
(1)引用例1:特開2001-342079号公報
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2001-342079号公報(以下,「引用例1」という。)には,図1?図3とともに,次の記載がある。

ア 発明の背景等
・「【0002】
【従来の技術】エッチング装置や,化学的気相成長装置等を含む半導体製造・検査装置等においては,従来,ステンレス鋼やアルミニウム合金などの金属製基材を用いたヒータや静電チャック等が用いられてきた。
【0003】ところが,このような金属製のヒータは,以下のような問題があった。まず,金属製であるため,ヒータ板の厚みは,15mm程度と厚くしなければならない。なぜなら,薄い金属板では,加熱に起因する熱膨張により,反り,歪み等が発生していまい,金属板上に載置したシリコンウエハが破損したり傾いたりしてしまうからである。しかしながら,ヒータ板の厚みを厚くすると,ヒータの重量が重くなり,また,嵩張ってしまうという問題があった。
【0004】また,抵抗発熱体に印加する電圧や電流量を変えることにより,シリコンウエハ等の被加熱物を加熱する面(以下,加熱面という)の温度を制御するのであるが,金属板が厚いために,電圧や電流量の変化に対してヒータ板の温度が迅速に追従せず,温度制御しにくいという問題もあった。
【0005】そこで,特開平4-324276号公報では,基板として,熱伝導率が高く,強度も大きい非酸化物セラミックである窒化アルミニウムを使用し,この窒化アルミニウム基板中に抵抗発熱体とタングステンからなるスルーホールとが形成され,これらに外部端子としてニクロム線がろう付けされたホットプレートが提案されている。
【0006】このようなホットプレートでは,高温においても機械的な強度の大きいセラミック基板を用いているため,セラミック基板の厚さを薄くして熱容量を小さくすることができ,その結果,電圧や電流量の変化に対してセラミック基板の温度を迅速に追従させることができる。
【0007】また,このようなホットプレートでは,特開平2000-114355号公報や特許第2783980号公報に記載のように,円筒状のセラミックと円板状のセラミックをセラミック接合層を介して接合させ,半導体製造工程に用いる反応性ガスやハロゲンガス等から外部端子97等の配線を保護する手段がとられていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところが,このような接合は,セラミック接合層を介して行われているため,セラミック焼結体を製造した後,接合時に再度焼成を行う必要があった。このため,板状のセラミック体の表面の粗度が変わってしまったり,電極が焼成時に劣化してしまったりするという問題が生じた。
【0009】本発明は,上記課題を解決するためになされたものであり,板状のセラミック体と筒状のセラミック体との接合を比較的低温で行うことができるとともに接合強度に優れ,板状のセラミック体や電極の劣化がなく,加熱面の温度の均一性に優れるセラミック接合体を実現することを目的とする。」

イ 課題を解決するための手段
・「【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は,半導体製造・検査装置に用いられるセラミック接合体であって,板状セラミック体と筒状セラミック体とが,金属層を介して一体化してなることを特徴とするものである。」

ウ 実施例
・「【0024】
【発明の実施の形態】以下,実施の形態に則して説明する。なお,本発明は,この記載に限定されない。また,本発明のセラミック接合体を半導体製造・検査装置に応用する場合は,その内部に導電体が設けられた板状セラミック体(以下,セラミック基板という)が,底板を備えた支持容器の上部に固定され,さらに,上記セラミック基板の底部には凹部が形成され,上記凹部に筒状セラミック体が嵌合され,上記筒状セラミック体に,上記導体層からの配線が格納されていることが望ましい。
【0025】本発明のセラミック接合体を構成するセラミック基板の内部に形成された導体層が抵抗発熱体および導体回路である場合には,本発明の半導体製造・検査装置は,ホットプレートとして機能する。
【0026】図1は,本発明のセラミック接合体の一例であるホットプレートを模式的に示した平面図であり,図2は,その断面図であり,図3は,図2に示した筒状セラミック体近傍の部分拡大断面図である。
【0027】このホットプレート10では,円板形状のセラミック基板11の中央付近の底面11bに,凹部16が形成されている。この凹部16には,図3に示したように,筒状セラミック体17が嵌合されており,筒状セラミック体17とセラミック基板11とは,凹部16の内部に形成された蒸着膜28およびろう材29を介して接合されている。また,筒状セラミック体17は,支持容器の底板(図示せず)に密着するように形成されているため,筒状セラミック体17の内部と外側とは完全に隔離されている。
【0028】セラミック基板11の内部には,図1に示すように,同心円形状の回路からなる抵抗発熱体12が形成されており,これら抵抗発熱体12は,互いに近い二重の同心円同士が1組の回路として,1本の線になるように接続されている。」
・「【0040】筒状セラミック体17は,セラミック基板11をしっかりと支持する働きも有しているので,セラミック基板11が高温に加熱された際にも,自重により反るのを防止することができ,その結果,シリコンウエハ等の被処理物の破損を防止するとともに,該被処理物を均一な温度になるように加熱することもできる。」
・「【0073】セラミック基板の形状は,円板形状が好ましく,その直径は,200mm以上が好ましく,250mm以上が最適である。円板形状のセラミック基板は,温度の均一性が要求されるが,直径の大きな基板ほど温度が不均一になりやすいからである。
【0074】セラミック基板の厚さは,50mm以下が好ましく,20mm以下がより好ましい。また,1?5mmが最適である。上記厚さが薄すぎると,高温で加熱する際に反りが発生しやすく,一方,厚過ぎると熱容量が大きくなりすぎて昇温降温特性が低下するからである。」

エ 発明の効果
・「【0152】
【発明の効果】以上説明したように,本発明に係るセラミック接合体を使用した半導体製造・検査装置は,接合強度が大きく,加熱面の温度の均一性等に優れる。」

上記ア?エによれば,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。
「セラミック基板11の内部に抵抗発熱体12を有する半導体製造・検査装置に用いられるセラミック接合体からなるホットプレートであって,前記ホットプレートの前記セラミック基板11の中央付近の底面に形成された凹部16に筒状セラミック体17が嵌合され,前記筒状セラミック体17と前記セラミック基板11とは,前記凹部16の内部で接合されていることを特徴とする半導体製造・検査装置に用いられるセラミック接合体からなるホットプレート。」

(2)引用例2:特開2001-168087号公報
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2001-168087号公報(以下,「引用例2」という。)には,図1?図5とともに,次の記載がある。

ア 発明の背景等
・「【0003】図4は,従来のプラズマアッシング装置の概略構成を示す説明図である。図4に示すように,プラズマアッシング装置1は,アッシング対象のウェハWが載置されるステージ2を備えた,石英管からなるチャンバ3を有している。チャンバ3には,ステージ2の上方に位置して高周波(radio frequency:RF)印加部4が設けられ,高周波印加部4には,チャンバ3の外表面に高周波電力を印加する高周波電源5が接続されている。」
・「【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,プラズマによるアッシング処理が行われる際にウェハWはチャージアップダメージを受けてしまうことから,このチャージアップダメージによるゲート破壊が発生し,その結果,歩留まりの低下を招く。
【0007】これは,ステージ2が高温環境で使用されることにより熱変形し易く,熱変形により,ウェハWが載置される載置面が上方に盛り上がって載置面の平坦度が悪くなり(図4参照),載置面とウェハWとの接触にバラツキが生じるためである。載置面とウェハWとの接触にバラツキが生じることで,ウェハW表面のチャージアップ分布も悪くなり,ウェハW表面内の電位差からゲート破壊が生じてしまう。
【0008】このように,載置面が上方に盛り上がってしまうのは,ステージ2が,上端に載置面を有する下向きカップ状に形成され,下端には開口を密閉する断熱部材がボルト等で固定された構成を有するため,熱による変形が載置面に集中するからである。
【0009】図5は,図4のプラズマアッシング装置を用いた場合にウェハが受けるチャージアップの分布結果を示し,(a)は立体的な説明図,(b)は平面的な説明図,(c)は全範囲における分布状態を表にした説明図である。ここでは,単位面積当たりの電荷量[q/cm^(2) ]の分布が示されており,処理条件は,RF電源パワー:1400W,ガス圧力:146.6Pa,O_(2) 流量:3500sccm,ステージ温度:240℃,RFパワー通電時間:60secである。
【0010】図5に示すように,電荷量の分布は,必ず,ウェハWと載置面が接触していない周辺部の方が高く,ウェハWと載置面が接触している中央部の方が低くなる((a)参照)ことから,高低差のある周辺部の方は破壊され易いが,中央部はそれ程ダメージを受けない。つまり,接触していない周辺部((b)参照)は,ウェハW上で帯電が起こって接触している中央部((b)参照)に比べ蓄電し易くなるため,中央部と周辺部の電荷量の差((c)参照)によってゲート破壊が進んでしまうことになり,高低差の大きい周辺部の方が中央部より破壊され易くなる。」
・「【0012】この発明の目的は,プラズマ処理対象表面のチャージアップ分布を均一化してゲート破壊を少なくすることができるプラズマ処理装置およびプラズマ処理装置のステージ製造方法を提供することである。」

イ 実施例
・「【0017】図1は,この発明の実施の形態に係るプラズマアッシング装置の概略構成を示す説明図である。このプラズマアッシング装置10は,配線幅が0.24?0.40μmのロジック系のIC(integrated circuit)を処理対象とする枚葉型のプラズマ処理装置である。
【0018】図1に示すように,プラズマアッシング装置10は,プラズマアッシング処理対象のウェハWが載置されるステージ11を備えた,石英管からなるチャンバ12を有している。チャンバ12には,ステージ11の上方に位置して高周波印加部13が設けられ,高周波印加部13には,チャンバ12の外表面に高周波電力を印加する高周波電源14が接続されている。」
・「【0020】図2は,図1に示すステージの拡大断面図である。図2に示すように,ステージ11は,上端に載置面11aを有する下向きカップ状に形成されており,下端開口周縁の外向きフランジ11bに,下端開口を密閉する断熱部材20及び押さえ部材21が例えばボルト22で固定された構成を有している。
【0021】このステージ11は,チャンバ12内を自在に昇降することができ,チャンバ12内上部には,アッシング時に上昇したステージ11のほぼ全体が収納される円環状のアッシング室23が設けられている。アッシング室23の上部には,排気用通路を形成する排気リング23aが備えられる。
【0022】このステージ11は,例えば,アルミニウム(Al)からなり,装置使用温度ではない常温では,載置面11aが擂り鉢状に凹んだ形状(図1点線参照)を有している。即ち,ステージ11が,プラズマアッシング装置10の使用温度帯である約240±10℃の高温度において熱膨張し,載置面11aが上方に盛り上がるように反って変形した場合,載置面11aの平坦度が,最大で100μm以下,望ましくは50μm以下になるように,高温度での変形時に平坦度を確保することができる常温で凹んだ形状に,予め形成されている。
【0023】ここで示す,最大で100μm以下,望ましくは50μm以下となる平坦度は,装置使用温度である約240±10℃で,ステージ11が変形した後の載置面11a最頂部とステージ11が変形する前の載置面11a表面部の高低差を言い,8インチサイズのウェハW(口径が最大220mm)に対応する外径約220mmのステージ11の場合である。同様に,6インチサイズのウェハWの場合,載置面11aの平坦度は約30μm以下になることが望ましく,12インチサイズのウェハWの場合,載置面11aの平坦度は約100μm以下になることが望ましい。
【0024】更に,プラズマアッシング装置10の使用温度帯についても,約240±10℃の高温度に限らず,約140±10℃の高温度を含む,約130℃?約250℃の範囲の高温度に対応することができる。この際,装置使用温度に対応して,載置面11aの平坦度が,最大で100μm以下,望ましくは50μm以下となるように,高温度での変形時に平坦面を確保することができる常温で凹んだ形状に,予め凹む度合いを調整して形成すればよい。」
・「【0027】ステージ11の載置面11a裏側には,ヒータ27が配置され,このヒータ27により,載置面11aを介して載置面11a上のウェハW(図1参照)が加熱される。」
・「【0031】このアッシング処理に用いたプラズマアッシング装置10は,枚葉式に対応したステージ形状を有しており,プラズマアッシング装置10の使用温度帯(約130℃?約250℃)におけるステージ11の載置面11aの平坦度が,最大で100μm以下,望ましくは50μm以下とされているため,載置面11aと載置されたウェハWとの面内接触バラツキが抑えられる。
【0032】図3は,図1のプラズマアッシング装置を用いた場合にウェハが受けるチャージアップの分布結果を示し,(a)は立体的な説明図,(b)は平面的な説明図,(c)は全範囲における分布状態を表にした説明図である。ここでは,単位面積当たりの電荷量[q/cm^(2) ]の分布が示されており,処理条件は,RF電源パワー:1400W,ガス圧力:146.6Pa,O_(2) 流量:3500sccm,ステージ温度:240℃,RFパワー通電時間:60secである。
【0033】図3に示すように,電荷量の分布は,必ず,ウェハWと載置面が接触していない周辺部の方が高く,ウェハWと載置面が接触している中央部の方が低くなる((a)参照)ことから,高低差のある周辺部の方は破壊され易いが,中央部はそれ程ダメージを受けない。つまり,接触していない周辺部((b)参照)は,ウェハW上で帯電が起こって接触している中央部((b)参照)に比べ蓄電し易くなる。
【0034】即ち,ウェハが受けるチャージアップは,図3においても図5と同様な傾向を示すが,この発明に係る図1のプラズマアッシング装置を用いた場合(図3参照)は,従来のプラズマアッシング装置を用いた場合(図5参照)に比べ,電荷量がほぼ全域で減少し全体的に少なくなっていると同時に,高低差も少なくなっていることが認められる(1.11?4.34の範囲から1.02?3.37の範囲に変化している。図3及び図5の(c)参照)。この結果,プラズマによるウェハWへのチャージアップ分布が均一になってゲート破壊が少なくなる。」
・「【0037】また,プラズマアッシング装置10のステージ11は,常温で載置面11aが擂り鉢状に凹んだ形状を有するように,例えばアルミニウム(Al)を加工して製造される。つまり,プラズマアッシング装置10の使用温度帯である約130℃?約250℃の高温度におけるステージ11の変形を想定し,装置使用温度においても載置面11aの平坦度を確保することができるように,擂り鉢状に凹んだ形状に予め削り取る常温での加工を行う。
【0038】ステージ11を,予め擂り鉢状に凹んだ形状となるように常温で加工して製造することにより,ステージ11が,プラズマアッシング装置10の使用温度帯である約130℃?約250℃の高温度において熱膨張し,載置面11aが上方に盛り上がるように反って変形した場合でも,載置面11aの平坦度を,最大で100μm以下,望ましくは50μm以下に確保することができる。
【0039】また,上記構造を有するプラズマアッシング装置10は,ウェハWのレジストのプラズマ剥離に用いられるが,アッシング装置に限ることなく,プラズマCVD(chemical vapor deposition)に用いられるプラズマCVD装置等,上記構造を有するプラズマ処理装置とすることもできる。
【0040】なお,ステージ11の材質は,アルミニウム(Al)に限るものではなく,同様の加工が可能であって,装置使用温度でのステージ11変形時に載置面11aの平坦度を確保することができるものであればよい。また,ステージ11は,肉厚がより厚い方が温度の影響を受け難く変形し難い。
【0041】このように,この発明によれば,ステージ11が,プラズマアッシング装置10の使用温度帯である約130℃?約250℃の高温度において熱膨張し,載置面11aが上方に盛り上がるように反って変形した場合でも,載置面11aの平坦度を,最大で100μm以下,望ましくは50μm以下に確保することができる。このため,載置面11aと載置面11a上のウェハWとの接触にバラツキを生じ難くし,ウェハW表面のチャージアップ分布を均一化して,ウェハWにおけるゲート破壊を少なくすることができる。」

ウ 発明の効果
・「【0042】
【発明の効果】以上説明したように,この発明によれば,プラズマ処理装置に備えられたステージのプラズマ処理対象が載置される載置面は,プラズマ処理時の装置使用温度でステージが変形した後とステージが変形する前の高低差が100μm以下の平坦度を有するので,載置面と載置面上のプラズマ処理対象との接触にバラツキを生じ難くし,プラズマ処理対象表面のチャージアップ分布を均一化して,プラズマ処理対象におけるゲート破壊を少なくすることができる。」

4 対比
(1)次に,本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「セラミック基板11」,「抵抗発熱体12」,「セラミック接合体からなるホットプレート」は,それぞれ,本願発明の「セラミックス基板」,「抵抗発熱体」,「セラミックスヒーター」に相当し,引用発明の「半導体製造・検査装置に用いられる」ことは,「半導体製造」「装置に用いられる」ことを含有することが,明らかであるので,本願発明の「半導体製造装置用」に相当し,また,本願発明の「セラミックス基板の表面又は内部に抵抗発熱体を有する」ことは,「セラミックス基板の表面」「に抵抗発熱体を有する」ことと「セラミックス基板の」「内部に抵抗発熱体を有する」ことの択一的な記載であるから,「セラミックス基板の表面」「に抵抗発熱体を有する」ことと「セラミックス基板の」「内部に抵抗発熱体を有する」ことのいずれか一つを選択すれば足りるので,引用発明の「セラミック基板11の内部に抵抗発熱体12を有する半導体製造・検査装置に用いられるセラミック接合体からなるホットプレート」は,本願発明の「セラミックス基板の表面又は内部に抵抗発熱体を有する半導体製造装置用セラミックスヒーター」に相当する。
イ 引用発明の「筒状セラミック体17」は,本願発明の「パイプ状の支持体」に相当し,また,引用発明の「筒状セラミック体17」は,「前記ホットプレートの前記セラミック基板11の中央付近の底面に形成された凹部16に」「嵌合され」ており,引用発明の「前記筒状セラミック体17と前記セラミック基板11とは,前記凹部16の内部で接合されている」ので,引用発明の「前記ホットプレートの前記セラミック基板11の中央付近の底面に形成された凹部16に筒状セラミック体17が嵌合され,前記筒状セラミック体17と前記セラミック基板11とは,前記凹部16の内部で接合されていること」は,本願発明の「中央にパイプ状の支持体を有」することに相当する。

(2)そうすると,本願発明と引用発明の一致点と相違点は,次のとおりとなる。

《一致点》
「セラミックス基板の表面又は内部に抵抗発熱体を有する半導体製造装置用セラミックスヒーターであって,中央にパイプ状の支持体を有することを特徴とする半導体製造装置用セラミックスヒーター。」

《相違点》
本願発明は,「ウエハ載置面の反り形状が非加熱時において0.001?0.7mm/300mmの凹状である」のに対して,引用発明は,そのような構成を備えていない点。

5 相違点についての判断
ア 引用例1の【0074】段落には,「セラミック基板の厚さは,50mm以下が好ましく,20mm以下がより好ましい。また,1?5mmが最適である。上記厚さが薄すぎると,高温で加熱する際に反りが発生しやすく,一方,厚過ぎると熱容量が大きくなりすぎて昇温降温特性が低下するからである。」と,記載されている。
イ 上記アの記載によると,セラミック基板の厚さが薄すぎると,高温で加熱する際に反りが発生しやすいという課題が知られていたということであり,引用例1に係る引用発明において,セラミック基板11は,セラミック基板11と接合された筒状セラミック体17を有しているから,セラミック基板11を加熱すると,筒状セラミック体17を介して熱が逃げるので,シリコンウエハを載置する面に比べて筒状セラミック体17側の熱膨張が小さくなり,シリコンウエハを載置する面が,凸状に反ることは,当業者が容易に推測できる。
ウ また,引用例2には,「ステージ2が高温環境で使用されることにより熱変形し易く,熱変形により,ウェハWが載置される載置面が上方に盛り上がって載置面の平坦度が悪くなり(図4参照),載置面とウェハWとの接触にバラツキが生じるためである。」(【0007】段落)という課題があったことが,記載されており,ここで,「熱変形により,ウェハWが載置される載置面が上方に盛り上が」ることは,上記イに記載の,シリコンウエハを載置する面が,凸状に反ることに対応する。
エ そして,上記ウに記載の課題を解決するために,引用例2には,「このステージ11は,例えば,アルミニウム(Al)からなり,装置使用温度ではない常温では,載置面11aが擂り鉢状に凹んだ形状(図1点線参照)を有している。即ち,ステージ11が,プラズマアッシング装置10の使用温度帯である約240±10℃の高温度において熱膨張し,載置面11aが上方に盛り上がるように反って変形した場合,載置面11aの平坦度が,最大で100μm以下,望ましくは50μm以下になるように,高温度での変形時に平坦度を確保することができる常温で凹んだ形状に,予め形成されている。」(【0022】段落)と,記載されている。
ここで,引用例2に記載の「このステージ11は,」「装置使用温度ではない常温では,載置面11aが擂り鉢状に凹んだ形状」「を有して」おり,「高温度での変形時に平坦度を確保することができる常温で凹んだ形状に,予め形成されている」ことにおける,「常温」,「凹んだ形状」は,それぞれ,本願発明の「非加熱時」,「凹状」に相当するので,引用例2に記載の「このステージ11は,」「装置使用温度ではない常温では,載置面11aが擂り鉢状に凹んだ形状」「を有して」おり,「高温度での変形時に平坦度を確保することができる常温で凹んだ形状に,予め形成されている」ことは,本願発明の「ウエハ載置面の反り形状が非加熱時において」「凹状であること」に相当する。
オ そうすると,上記イのように,引用例1に記載されている,「セラミック基板の」「厚さが薄すぎると,高温で加熱する際に反りが発生しやすい」という課題に対処するために,上記エのように,引用例2に記載の「このステージ11は,」「装置使用温度ではない常温では,載置面11aが擂り鉢状に凹んだ形状」「を有して」おり,「高温度での変形時に平坦度を確保することができる常温で凹んだ形状に,予め形成されている」という技術思想を適用して,引用発明において,本願発明のように,「ウエハ載置面の反り形状が非加熱時において」「凹状である」ように構成することは,当業者が,適宜なし得たことである。
カ また,本願発明の「ウエハ載置面の反り形状が非加熱時において0.001?0.7mm/300mmの凹状であること」における,「0.001?0.7mm/300mm」の数値限定については,この数値範囲は,本来,使用する「セラミックス基板」の材料や加熱温度などによって様々な値となることが予想されるところ,本願発明はこれらの前提となる条件についての規定がないから,単に,ある条件の下で目安となる数値を示したという以上の技術的意義を認めることができない。
キ したがって,引用発明において,本願発明のように,「ウエハ載置面の反り形状が非加熱時において0.001?0.7mm/300mmの凹状である」ように構成することは,当業者が容易に想到できたものである。

6 結言
以上のとおり,本願発明は,引用例1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-02 
結審通知日 2009-09-08 
審決日 2009-09-25 
出願番号 特願2002-309387(P2002-309387)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安田 雅彦  
特許庁審判長 橋本 武
特許庁審判官 廣瀬 文雄
相田 義明
発明の名称 半導体製造装置用セラミックスヒーター  
代理人 山本 正緒  

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