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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1207018
審判番号 不服2007-23606  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-29 
確定日 2009-11-12 
事件の表示 特願2006- 43409「車両用複合アンテナ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 7月20日出願公開、特開2006-191671〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成15年5月27日(国内優先権主張 平成14年5月27日)に出願した特願2003-148470号の一部を平成18年2月21日に新たな特許出願としたものであって、その特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年6月21日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

(本願発明)
「GPSアンテナと、VICSアンテナと、ETCアンテナとを少なくとも備えた車両用複合アンテナ装置において、前記GPSアンテナとVICSアンテナを実装した第一のサブアッセンブリーと、前記ETCアンテナを実装した第二のサブアッセンブリーとを含み、車両のグレード又はユーザーの選択等によって車両に搭載されないケースがあり得るETCアンテナを第二のサブアッセンブリーとして、第一のサブアッセンブリーとは別に取り付けられるようになっていることを特徴とする車両用複合アンテナ装置。」


2.引用発明及び周知技術
A.原審の拒絶理由に引用された、特開平10-290110号(以下、「引用例」という。)には、「ディスプレイアンテナセンター」として図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車等の車両に搭載されるホライズンディスプレイの近傍に各種のアンテナを設置したディスプレイアンテナセンターに関する。」(2頁1欄、段落1)

ロ.「【0021】図2にカバーの詳細な構成図を示す。パネル23の前面部24には開口部27が設けられており、この開口部27内の平面部28には溝部29が設けられ、この溝部29にGPSアンテナ17が水平状態で取り付けられるようになっている。このGPSアンテナ17は図3(c)に示すように四角形状をなし受信アンテナ41を有する。
【0022】また、平面部28にはこの平面部28に対して所定の角度をなしてVICSアンテナ受け部材30及びETCアンテナ受け部材32が取り付けられている。VICSアンテナ受け部材30にはネジ穴部31a,31bが設けられ、ETCアンテナ受け部材32にはネジ穴部33a,33bが設けられている。
【0023】VICSアンテナ受け部材30には図3(b)に示すVICSアンテナ37が取り付けられるようになっている。VICSアンテナ37はビーコンから位置情報や渋滞情報等を受信するもので、ネジ穴部31a,31bに対応するネジ穴部38a,38b、発光部39、受光部40を有して構成される。
【0024】ETCアンテナ受け部材3には図3(a)に示すETCアンテナ35が取り付けられるようになっている。ETCアンテナ35は入口料金所及び出口料金所から入口料金所情報及び出口料金所情報を受信するもので、ネジ穴部33a,33bに対応するネジ穴部36a,36b、受信アンテナ36cを有する。
【0025】図4に各種のアンテナを開口部内に実装した図を示す。図4に示すように、開口部27内にGPSアンテナ17、VICSアンテナ37及びETCアンテナ35等の各種のアンテナが実装されており、この各種のアンテナは図1に示すミラー15とパネル23の前面部24との間に配置される。」(3頁3?4欄、段落21?25)

ハ.「【0037】なお、実施の形態では、各種のアンテナとして、GPSアンテナ、VICSアンテナ、ETCアンテナを取り付けたが、これらのアンテナ以外にその他のアンテナをGPSアンテナ17等を取り付けた位置付近に取り付けるようにしてもよい。」(4頁5欄、段落37)

上記引用例の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

(引用発明)
「GPSアンテナと、VICSアンテナと、ETCアンテナとを少なくとも備えた自動車等の車両に搭載されるディスプレイアンテナセンターにおいて、前記ETCアンテナとGPSアンテナとVICSアンテナとはそれぞれ別に取り付けられるようになっているディスプレイアンテナセンター。」


B.同じく原審の拒絶理由に周知例として引用された、
特開平9-139625号公報(以下、「周知例1」という。)、
又は例えば特開平10-163722号公報(以下、「周知例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(周知例1)
イ.「【請求項1】 1枚の誘電体基板上に少なくとも2種類の周波数帯の情報をそれぞれ受信し得る第1および第2のアンテナエレメントが並置して設けられ、該アンテナエレメントのそれぞれに接続された給電ピンが1本の伝送線に接続されてなる複合アンテナ。
【請求項2】 少なくとも前記第1のアンテナエレメントに接続された給電ピンと前記伝送線との間に増幅器が接続され、該第1のアンテナエレメントと異なる他のアンテナエレメントに接続される給電ピンと前記1本のケーブルとの間に前記第1のアンテナエレメントが受信する周波数帯を通さないフィルタが接続されてなる請求項1記載の複合アンテナ。
【請求項3】 前記第1のアンテナエレメントがGPS用アンテナの一部を構成し、前記第2のアンテナエレメントがVICS用アンテナの一部を構成する請求項1または2記載の複合アンテナ。」(2頁1欄、請求項1?3)

ロ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、2以上の周波数帯域を受信できるように誘電体基板上に平板状のアンテナエレメントが複数個設けられた複合アンテナに関する。さらに詳しくは、2以上の周波数帯の信号、たとえばカーナビゲーション用の衛星からの車の位置などの情報を受け取るGPS用アンテナの信号と地上の交通情報を受け取るVICS用アンテナの信号とを合成し、一系統の信号として処理し得る複合アンテナに関する。」(2頁1欄、段落1)

(周知例2)
イ.「【請求項1】 電波ビーコン情報受信手段の受信部(1)と、光ビーコン情報受光用光電気変換手段の受光部(2)と、光ビーコン情報発光用光電気変換手段の発光部(3)を、絶縁基板(5)の一方の面に備えたVICS用アンテナ装置において、電波ビーコン情報受信手段の受信部(1)が、上記絶縁基板(5)の表面に直接金属膜を付与して形成されていることを特徴とするVICS用アンテナ装置。」(2頁1欄、請求項1)

ロ.「【請求項4】 絶縁基板(5)の表面に直接金属膜を付与して形成されたGPS情報受信手段の受信部(4)をも、絶縁基板(5)の上記一方の面に備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のVICS用アンテナ装置。」(2頁1欄、請求項4)

上記周知例1、2に開示されているように、
「GPS用アンテナとVICS用アンテナを1枚の基板上に配置した車載用複合アンテナ」は周知である。


C.同じく原審の拒絶理由に周知例として引用された、
特開2001-297347号(以下、「周知例3」という。)、
又は例えば特開2001-229420号公報(以下、「周知例4」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

(周知例3)
イ.「【0002】
【従来の技術】一般に、ETCなどに用いられるDSRC車載器(以下、単に「車載器」ともいう)において、送受信用のアンテナは、路上機アンテナとの間で通信を効果的に行うために、フロントガラスおよびダッシュボードの付近に設置(載置または埋設)されている。
【0003】図5および図6は従来のDSRC車載器の設置状態を示す側面図および車内から見た正面図であり、車両購入後に装着される車載器の場合を示している。・・・(中略)・・・
【0006】車載器1は、図示されたように、カー用品販売店で購入されてダッシュボード2上に取り付けられる場合もあるが、車両販売時に標準装備されている場合もあり、オプション購入によりダッシュボード2内に埋設される場合もある。」(2頁2欄?3頁3欄、段落2?6)

ロ.「【0022】また、この発明の請求項9に係るDSRC車載器は、車両の走行路上に設置された路上機との間で通信を行うためのアンテナおよび制御部を備え、車両のダッシュボードの付近に設置されたDSRC車載器において、アンテナは、ダッシュボードに埋設され、ダッシュボードは、アンテナの埋設位置に対応した上面に突起部材を有するものである。」(3頁4欄、段落22)

(周知例4)
イ.「【0009】本発明は、次に、車載アンテナは、ETC地上アンテナで所要の信号レベルが選られる方位になるよう取付け面に対して角度を微調整可能なように傾斜して固定し、計器盤上側の表面下に沿って水平面を基準に取り付けるとともに、ケーブルは計器盤内を這わせてETC車載器まで配線するようにする。車載アンテナ部をユニット化してカーメーカーオプション・ディーラーオプション・パーツショップでの後付けのいずれにも容易に対応可能な装着性を実現するETC車載装置を提供する。」(2頁2欄、段落9)

ロ.「【0013】本発明は、計器盤上側の表面下にアンテナ部を取り付けられるように、予め取付け窓を切り落とし容易にするため薄肉溝で切り落とし部を縁取りするか、予め切り落とした窓にめくら蓋をしてメーカーオプション組み立て作業を容易化したETC車載装置を提供する。」(3頁3欄、段落13)

上記周知例3、4に開示されているように、
「車載アンテナにおいて、ETC用のアンテナはオプションであり、後付用のスペースを確保しておく」ことは周知である。


3.対比
本願発明と引用発明を対比すると、
引用発明の「自動車等の車両に搭載されるディスプレイアンテナセンター」は、車両用の各種のアンテナを複合して設置したアンテナ装置であるから、本願発明の「車両用複合アンテナ装置」に相当する。
また、引用発明の「前記ETCアンテナとGPSアンテナとVICSアンテナとはそれぞれ別に取り付けられるようになっている」という構成と、本願発明の「前記GPSアンテナとVICSアンテナを実装した第一のサブアッセンブリーと、前記ETCアンテナを実装した第二のサブアッセンブリーとを含み、車両のグレード又はユーザーの選択等によって車両に搭載されないケースがあり得るETCアンテナを第二のサブアッセンブリーとして、第一のサブアッセンブリーとは別に取り付けられる」という構成は、いずれも「前記ETCアンテナを、前記GPSアンテナとVICSアンテナとは別に取り付けられるようになっている」という構成の点で一致している。
したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違している。

<一致点>
「GPSアンテナと、VICSアンテナと、ETCアンテナとを少なくとも備えた車両用複合アンテナ装置において、前記ETCアンテナを、前記GPSアンテナとVICSアンテナとは別に取り付けられるようになっている車両用複合アンテナ装置。」

<相違点>
「前記ETCアンテナを、前記GPSアンテナとVICSアンテナとは別に取り付けられるようになっている」という構成に関し、
本願発明は「前記GPSアンテナとVICSアンテナを実装した第一のサブアッセンブリーと、前記ETCアンテナを実装した第二のサブアッセンブリーとを含み、車両のグレード又はユーザーの選択等によって車両に搭載されないケースがあり得るETCアンテナを第二のサブアッセンブリーとして、第一のサブアッセンブリーとは別に取り付けられるようになっている」という構成であるのに対し、
引用発明は「前記ETCアンテナとGPSアンテナとVICSアンテナとはそれぞれ別に取り付けられるようになっている」という構成であり、「サブアッセンブリー」構造についても明記されていない点。


4.判断
そこで、上記相違点について検討するに、
そもそも引用発明の各種アンテナは、それぞれのアンテナ自体が、アンテナ導体等の複数の構成要素より組み立てられた「組立体」(assembly:アッセンブリー)と言えるものであるところ、
これらがさらに複数組み立てられて、引用発明の「車両用複合アンテナ装置」(ディスプレイアンテナセンター)の全体を構成しているのであるから、下位(sub)の「組立体」、すなわち「サブアッセンブリー」と呼ぶことができるものでもあり、この解釈は本願発明における「サブアッセンブリー」の解釈(本願明細書の段落13参照)とも整合するものである。
そして、例えば上記周知例1、2に開示されているように、「GPS用アンテナとVICS用アンテナを1枚の基板上に配置した車載用複合アンテナ」は周知であり、当該周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、当該周知技術に基づいて、引用発明の「GPSアンテナとVICSアンテナ」を1枚の基板上に配置した組立体、即ち、「第一のサブアッセンブリー」として実装すること自体は当業者であれば適宜なし得ることである。
また、例えば上記周知例3、4に開示されているように、「車載アンテナにおいて、ETC用のアンテナはオプションであり、後付用のスペースを確保しておく」ことも周知であり、当該周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因も何ら見あたらず、当該周知技術に基づいて、引用発明の「ETCアンテナ」をオプションとなして別の組立体、即ち、「第二のサブアッセンブリー」として実装し、別に取り付けられるように構成する程度のことも当業者であれば適宜のことにすぎない。
さらに、このようなオプション部品は、「車両のグレード又はユーザーの選択等によって車両に搭載されないケースがあり得る」ことも、アンテナにかぎらないことであるが、例えば高級な車種(グレード)の車両であれば標準で搭載されているカーオーディオやカーナビなどの部品が、安価な標準の車種においてはオプションとなっているのは通常のことであって、ユーザの選択によっては搭載されないこともあり得るのであるから、特段のことではない。
したがって、これらの周知技術に基づいて、
引用発明の「前記ETCアンテナとGPSアンテナとVICSアンテナとはそれぞれ別に取り付けられるようになっている」という構成を、「GPSアンテナとVICSアンテナ」を一体化された「第一のサブアッセンブリー」として実装するとともに、「ETCアンテナ」をオプションとなして「第二のサブアッセンブリー」として実装可能とすることにより、
本願発明のような「前記GPSアンテナとVICSアンテナを実装した第一のサブアッセンブリーと、前記ETCアンテナを実装した第二のサブアッセンブリーとを含み、車両のグレード又はユーザーの選択等によって車両に搭載されないケースがあり得るETCアンテナを第二のサブアッセンブリーとして、第一のサブアッセンブリーとは別に取り付けられるようになっている」という構成とする程度のことは当業者であれば容易になし得ることである。


5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-25 
結審通知日 2009-08-31 
審決日 2009-09-29 
出願番号 特願2006-43409(P2006-43409)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 賢司  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 松元 伸次
萩原 義則
発明の名称 車両用複合アンテナ装置  
代理人 若林 廣志  

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