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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1207153
審判番号 不服2008-13077  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-22 
確定日 2009-11-12 
事件の表示 特願2001- 177「景品交換管理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月16日出願公開、特開2002-200310〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は平成13年1月4日に出願されたものであって、平成20年4月18日付けで拒絶の査定がされたところ、これを不服として同年5月22日付けで本件審判請求がされるとともに、同年6月23日付けで明細書についての手続補正がされたものである。


第2 補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成20年6月23日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正前後における特許請求の範囲の記載
平成20年6月23日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、明細書の特許請求の範囲の補正を含んでおり、補正の前後における特許請求の範囲の記載は、請求項1について見れば、下記のとおりである。従属請求項請求項2及び3については、本件補正の前後において記載の変更はされていないので、摘記は省略する。なお、(補正前)については下線を省略する。

(補正前)
「【請求項1】
遊技客が獲得した遊技媒体を、その個数に応じて、交換価値金額毎に異なる色に着色された複数種類の特殊景品に交換する際に利用する景品交換管理装置であって、
前記特殊景品の種類毎に、対応する特殊景品の着色と同色ないし同系色に設定された色のみを示す色表示を記憶する記憶手段と、
前記遊技媒体の個数を含むデータを入力するデータ入力手段と、
このデータ入力手段によって入力された前記遊技媒体の個数の全部または一部を各特殊景品の個数に換算する演算手段と、
この演算手段によって換算された各特殊景品の個数に応じて、当該特殊景品の種類毎に、前記記憶手段に記憶された色表示を、個数を示す文字と共に表示する表示手段と
を備え、前記色表示は矩形をなしている、ことを特徴とする景品交換管理装置。」

(補正後)
「【請求項1】
遊技客が獲得した遊技媒体を、その個数に応じて、交換価値金額毎に異なる色に着色された複数種類の特殊景品に交換する際に利用する景品交換管理装置であって、
前記特殊景品の種類毎に、対応する特殊景品の着色と同色ないし同系色に設定された色のみを示す色表示を記憶する記憶手段と、
前記遊技媒体の個数を含むデータを入力するデータ入力手段と、
このデータ入力手段によって入力された前記遊技媒体の個数の全部または一部を各特殊景品の個数に換算する演算手段と、
当該景品交換管理装置を操作する店員側に設けられ、前記演算手段によって換算された各特殊景品の個数に応じて、当該特殊景品の種類毎に、前記記憶手段に記憶された色表示を、個数を示す文字と共に表示する表示手段と
を備え、前記色表示は矩形をなしている、ことを特徴とする景品交換管理装置。」

2.補正事項及び補正目的
補正前後の請求項1を比較すると、本件補正は、補正前の請求項1における「表示手段」が、「景品交換管理装置を操作する店員側」に設けられることを特定した点で、補正前の請求項1に係る発明を限定したものである。そのため、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)17条の2第4項2号を目的とするもの、すなわち、限定的減縮を目的とするものと認める。
そこで、以下、本件補正が平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか否か、すなわち、補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができたか否か、について検討する。

3.補正発明の認定
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲における、【請求項1】に記載された事項により特定されるべきものであり、その記載は「1.」に(補正後)として示したとおりである。

4.引用刊行物に記載される事項の認定
本件出願前に頒布された刊行物であり、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平10-113445号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の記載がされている。なお、引用中における改行は「 / 」で代替した。

ア.「【0020】景品交換カウンタにはカードリーダ6を備えたPOS7(本発明の端末機に相当)が設置されている。このPOS7は、カードリーダ6が会員カードを読取った状態でパチンコ玉が投入されたときは、景品管理装置1からの会員データに基づいて遊技客がそれまでに獲得したパチンコ玉数と交換可能な景品を表示すると共に、端数(余り玉)を表示する。また、POS7は、景品管理装置1を通じて台管理装置2に記憶された各パチンコゲーム機3の稼働情報を入手して表示すると共に、外部操作に応じて所定のパチンコゲーム機3の打止及び開放を行う機能が付加されている。 / 【0021】図4及び図5はPOS7の外観を示している。これらの図4及び図5において、POS7にはキーボード8、タッチパネル9を備えた店側表示部10、プリンタ11、電源スイッチ12、及びハンドスキャナー13が設けられていると共に、背面側には客側表示部14が設けられている。ここで、店側表示部10は所定角度範囲内で任意の角度に調整可能であると共に、角度調整ロック機構15によりその角度を固定できるようになっている。 / 【0022】図6はPOS7の電気的構成を示している。この図6において、POS7はCPU16を主体として構成されており、CPU16は、ROM17に記憶されたプログラムに従って動作すると共に、バックアップ機能を有するRAM18にデータを適宜記憶するようになっている。 / 【0023】CPU16は、時計部19から現在日時を入力すると共に、キーボード8、タッチパネル9、ハンドスキャナ13、カードリーダ4,6からデータを入力する。また、CPU16は、店側表示部10及び客側表示部14に各種データを表示すると共に、プリンタ11により預り券を印刷し、さらに送受信部20を通じて景品管理装置1と送受信を行うようになっている。」
イ.「【0028】図9は店側表示部10の初期画面を示している。この図9において、初期画面としては、次の操作或いはデータが入力するまで待機していることを示す「待機中」というメッセージを表示すると共に、総玉数、特殊景品数、景品名、単価、個数、交換可能玉数、端数、並びに一般景品名を表示する。また、「台操作」、「設定」が可能なことを表示する。この場合、「台操作」及び「設定」はオペレータ設定により非表示状態に切替えることができる。 / 【0029】図10は客側表示部14の初期画面を示している。この図10において、客側表示部10には、総玉数、「大」の特殊景品数、「中」の特殊景品数、「小」の特殊景品数、特殊景品との交換可能玉数、端数が夫々表示されるようになっている。 / 【0030】尚、「大」の特殊景品数はパチンコ玉が2000玉(1つのパチンコ玉の交換レートが2円50銭に設定されているときは5000円分に相当)と交換可能であることを示し、「中」の特殊景品数は400玉(1000円分に相当)と交換可能であることを示し、「小」の特殊景品数は80玉(200円分に相当)と交換可能であることを示している。」
ウ.「【0049】一方、会員カードを携帯していない人は、計数機5による計数により預り券を入手することができるので、景品との交換を希望するときは、預り券を景品交換カウンタに提出する。 / 【0050】ここで、担当従業員は、預り券に印刷されたバーコードをハンドスキャナー13で読取る。この場合、預り券として数値のみが記載されているタイプのもの、或いはハンドスキャナー13によるバーコードの読取りが困難なときは、キーボード8から玉数を入力する。」
エ.「【0051】すると、POS7は、ハンドスキャナー13或いはキーボード8から玉数が入力したときは、上述した会員データの入力時と同様に、店側表示部10に総玉数、特殊景品数、交換可能玉数及び端数を表示部に表示すると共に(A8?A10)、それらの情報を客先表示部14にも表示する(A11)。 / 【0052】図13は店側表示部10の表示の一例を示している。この図13において、店側表示部10には、総玉数が「2450玉」、交換可能な「大」の特殊景品数が「1」、「中」の特殊景品数が「1」、そのときの特殊景品との交換可能玉数が「2400玉」、端数が「50玉」であることを表示している。」
オ.「【0053】また、店側表示部10の下部には各種煙草の銘柄が表示されており、その表示部をタッチ操作することにより遊技客が希望する煙草を選択できるようになっている。この場合、他の煙草の銘柄及び煙草の個数、或いは他の一般景品の銘柄はPOS7のキーボード8に対する操作、或いはハンドスキャナー13による所定のバーコードの読取りにより入力する。 / 【0054】図14は一般景品の入力が終了した表示例を示している。この図14において、店側表示部10は、総玉数が2450玉のときに遊技客がマイルドセブンを10個希望した例を示しており、そのときの「中」の特殊景品との交換可能数が「4」、「小」の特殊景品との交換可能数が「3」であることを示すると共に、特殊景品との交換可能数が「1840玉」、端数が「60玉」であることを表示している。」
カ.「【0055】さて、POS7に予め設定した設定内容を変更する場合は、店側表示部10に表示されている「設定」表示部をタッチ操作する。すると、POS7は、「設定表示部」がタッチ操作されたときは(A21:YES)、設定処理を実行する(A22)。この設定処理としては、オペレータ設定、景品設定、キーボード設定、タッチパネル設定がある。この場合、オペレータ設定によりオペレータと操作条件とを設定できる。また、景品設定により景品と交換玉数との関係を設定することができる。また、キーボード設定によりキーボード8のキー機能を設定することができる。さらに、タッチパネル設定によりタッチパネル9と表示内容との関係を設定することができる。」

5.引用刊行物記載の発明の認定
記載事項ア.から、引用例1には、「景品交換カウンタ」に設けられる「POS7」と、該「POS7」と通信して協働する「景品管理装置1」とが記載されている。該「POS7」及び「景品管理装置1」は、「パチンコ玉」を「景品」と交換する際に利用されるものである。そして、該「POS7」は、「店側表示部10」、「ハンドスキャナー13」、「CPU16」、及び、データを適宜記憶する「RAM18」を有している。
記載事項イ.によれば、パチンコ玉と交換される景品には、5000円分、1000円分、200円分の交換価値を持ち、それぞれパチンコ玉2000玉、400玉、80玉と交換される「特殊景品」が含まれており、上記「POS7」及び「景品管理装置1」は、「パチンコ玉」をこれら「特殊景品」と交換する際にも利用される。そして、同記載事項中で言及される【図9】の図示も参照すれば、「店側表示部10」には、各「特殊景品」の交換可能数が、それぞれ「大」、「中」、「小」の表記と共に数字で表示されており、当該「大」、「中」、「小」の表記は店側表示部10上で各特殊景品を示すものであることが明らかである。
記載事項ウ.によれば、前記「POS7」の有する「ハンドスキャナー13」は、パチンコ玉の「玉数」を示す「預り券」の「バーコード」を読み取る。
そして、記載事項エ.によれば、前述入力された「玉数」が「2450玉」である場合、交換可能な「大」の特殊景品数が「1」、「中」の特殊景品数が「1」、端数が「50玉」であることが、「店側表示部10」に表示される。記載事項エ.中で言及される【図13】によれば、このとき特殊景品については、「大」の表記と「1」、「中」の表記と「1」、「小」の表記と「0」とが表示される。
さらに、記載事項オ.及び同記載事項中で言及される【図14】によれば、該「2450玉」の一部を「一般景品」の煙草10個に用いれば、「店側表示部10」には、特殊景品について、「大」の表記と「0」、「中」の表記と「4」、「小」の表記と「3」とが表示され、端数が「60玉」と表示される。
記載事項カ.によれば、「POS7」からは「景品設定」が可能である。

以上をまとめると、引用例1には
「景品交換カウンタに設けられるPOS7と、該POS7と通信して協働する景品管理装置1とを含み、パチンコ玉を景品と交換する際に利用される装置であって、
景品には、5000円分、1000円分、200円分の交換価値を持ち、それぞれパチンコ玉2000玉、400玉、80玉と交換される特殊景品が含まれ、
POS7は店側表示部10、ハンドスキャナー13、CPU16、及びデータを適宜記憶するRAM18を有し、POS7からは景品設定が可能であり、
ハンドスキャナー13は、パチンコ玉の玉数を示す預り券のバーコードを読み取り、
店側表示部10には、読み取ったパチンコ玉の玉数と交換可能な特殊景品の数が、5000円分の特殊景品、1000円分の特殊景品、200円分の特殊景品の各特殊景品毎に、各特殊景品を店側表示部10上で示す「大」「中」「小」の表記と共に数字で表示され、
読み取ったパチンコ玉の玉数が2450玉である場合には、店側表示部10には、特殊景品について、「大」の表記と「1」、「中」の表記と「1」、「小」の表記と「0」とが表示され、端数が「50玉」と表示され、
該2450玉の一部を一般景品の煙草10個に用いれば、店側表示部10には、特殊景品について、「大」の表記と「0」、「中」の表記と「4」、「小」の表記と「3」とが表示され、端数が「60玉」と表示される、
パチンコ玉を景品と交換する際に利用される装置。」
の発明(以下「引用発明1」という)が記載されている。

6.補正発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
引用発明1において、「POS7」及びこれと協働する「景品管理装置1」とを含み、「パチンコ玉を景品と交換する際に利用される装置」は、補正発明における「景品交換管理装置」に相当する。また、引用発明1において景品と交換する「パチンコ玉」は、補正発明における「遊技客が獲得した遊技媒体」に相当し、引用発明1においても補正発明と同様、「その個数に応じて」交換を行うことが明らかである。そして、引用発明1における「5000円分、1000円分、200円分の交換価値を持ち、それぞれパチンコ玉2000玉、400玉、80玉と交換される特殊景品」は、後の換金の際に区別可能であるためには種類毎に異なっていることが明らかであるから、「色」が異なるかはひとまず措くとして、「交換価値金額毎に異なる複数種類の特殊景品」である点で、補正発明における「交換価値金額毎に異なる色に着色された複数種類の特殊景品」と一致する。
すなわち、「遊技客が獲得した遊技媒体を、その個数に応じて、交換価値金額毎に異なる複数種類の特殊景品に交換する際に利用する景品交換管理装置」であることは、引用発明1と補正発明との一致点である。
引用発明1において、それぞれ5000円分、1000円分、200円分の交換価値を持つ「特殊景品」を「店側表示部10」上で示す「大」、「中」、「小」の表記は、「特殊景品の種類毎に、対応する特殊景品を示す表示」である点で、補正発明における「前記特殊景品の種類毎に、対応する特殊景品の着色と同色ないし同系色に設定された色のみを示す色表示」と一致する。また、引用発明1において、「大」「中」「小」の表記が「店側表示部10」上で各特殊景品を示すものとして表示されるからには、「店側表示部10」を有する「POS7」、あるいは景品交換に関して該「POS7」と協働する「景品管理装置1」のいずれかに、「RAM18」またはこれに類似する記憶手段が存在し、該「大」「中」「小」の表示用表記を特殊景品の種類と対応づけて記憶していることは明らかである。当該記憶している記憶手段は、補正発明における「記憶する記憶手段」に相当する。
引用発明1における「パチンコ玉の玉数を示す預り券のバーコード」は、補正発明における「前記遊技媒体の個数を含むデータ」に相当し、引用発明1における「ハンドスキャナー13」は、補正発明における「入力するデータ入力手段」に相当する。
引用発明1における「店側表示部10」は、補正発明における「表示手段」に相当する。また、該「店側表示部10」は「店側」の表示部であるから、補正発明と同様に「景品交換管理装置を操作する店員側に設けられ」ていることは明らかであり、その点も引用発明1と補正発明との一致点である。そして、引用発明1において、「読み取ったパチンコ玉の玉数」の「2450玉」に対して、対応する特殊景品の種類と数が「大1、中1、小0」と表示され、また、「2450玉」の一部を一般景品に用いれば、残りの一部の玉数に対応する特殊景品の種類と数が「大0、中4、小3」と表示されるからには、「読み取ったパチンコ玉の玉数」の全部または一部を各特殊景品の個数に換算する演算手段は、引用発明1にも当然に備わっている。なお、端数が出るかどうかはその時の「玉数」次第であるから、「2450玉」の場合に「端数」が生じていることをもって、引用発明1が「玉数」の全部を特殊景品の個数に換算しないということはできない。すなわち、引用発明1と補正発明とは、「このデータ入力手段によって入力された前記遊技媒体の個数の全部または一部を各特殊景品の個数に換算する演算手段と、当該景品交換管理装置を操作する店員側に設けられ、前記演算手段によって換算された各特殊景品の個数に応じて、当該特殊景品の種類毎に、前記記憶手段に記憶された表示を、個数を示す文字と共に表示する表示手段」を有する点でも一致する。

以上をまとめると、補正発明と引用発明1は、
「遊技客が獲得した遊技媒体を、その個数に応じて、交換価値金額毎に異なる複数種類の特殊景品に交換する際に利用する景品交換管理装置であって、
前記特殊景品の種類毎に、対応する特殊景品を示す表示を記憶する記憶手段と、
前記遊技媒体の個数を含むデータを入力するデータ入力手段と、
このデータ入力手段によって入力された前記遊技媒体の個数の全部または一部を各特殊景品の個数に換算する演算手段と、
当該景品交換管理装置を操作する店員側に設けられ、前記演算手段によって換算された各特殊景品の個数に応じて、当該特殊景品の種類毎に、前記記憶手段に記憶された表示を、個数を示す文字と共に表示する表示手段と
を備える、景品交換管理装置。」
である点で一致し、次の各点で相違する。

<相違点1>
補正発明においては、交換価値金額毎に異なる複数種類の特殊景品が、それぞれ「異なる色に着色」されているのに対して、引用発明1では異なる色に着色されているか否かは不明である点。
<相違点2>
補正発明においては、表示手段上で特殊景品の種類毎に対応する特殊景品を示す表示が、「対応する特殊景品の着色と同色ないし同系色に設定された色のみを示す色表示」であり、かつ、該「色表示は矩形をなしている」のに対して、引用発明1では「大」「中」「小」の表示である点。
なお、補正発明が「色のみを示す色表示」としながら「色表示は矩形をなしている」とする点は、厳密にいえば整合性を欠く。しかしこの点については、
・解釈1; 「色のみを示す色表示」という語は「矩形」という形があることを排除せず、矩形の色表示が記憶され、かつ表示されるという趣旨、
・解釈2; 「色表示」が記憶され「前記色表示」が表示されるという記載であるが、「記憶手段に記憶」されているのは各特殊景品と「色のみ」との対応関係であって、表示の際には「矩形」で表示されるという趣旨、
のいずれかと善解し、これら両方の解釈について検討を行うこととする。

7.相違点の判断及び補正発明の独立特許要件の判断
(1)相違点1について
たとえば、本件出願前に頒布され、原査定の理由に引用された登録実用新案第3016708号公報(以下、「引用例2」という。)には、「景品Kは、プラスチック製で、縦85mm×横55mm×厚さ3mmのカード状に形成されている。そして、長手方向に沿った両縁付近には、景品識別用のバーコードBが印刷されている。バーコードBには、景品Kの金額情報が示されており、本実施例では、1000円,2000円,5000円の3種類のいずれかである。また、景品Kは、この金額情報に応じて夫々異なる色(例えば、赤、青、黄)に着色されている。」(段落【0017】)と記載されており、また、同じく本件出願前に頒布され、原査定の理由に引用された登録実用新案第3029887号公報(以下、「引用例3」という。)には、「景品カードKには、例えば磁気カードが使用され、その磁気記録部に予め暗証番号、金額等が磁気記録されている。また、景品カードKの表面には、金額に応じた所定の色の着色部が印刷され、その着色部の色がカラーセンサ4により検知される。そのカラーセンサ4は、カードリーダ3の後方に配設される。」(段落【0013】)と記載されているように、パチンコ機等を扱う遊技店において、交換価値金額に応じて異なる色の着色がされたカード状の複数種類の特殊景品を用いることは、周知技術であり、しかも、遊技店を訪れる遊技客にも広く知られた事項と言わざるを得ない。その一方、引用発明1では特殊景品の交換価値に着目して「大」「中」「小」と表示をしているのか、それともサイズの異なる特殊景品を想定して、特殊景品の外観サイズに対応して「大」「中」「小」の表示をしているのかも不明であるが、いずれにしても、特殊景品として、交換価値に応じて着色の異なるカード状の特殊景品が上述のように周知である以上、該周知の特殊景品を採用することは想到容易な事項と言わざるを得ない。
すなわち、相違点1に係る補正発明の構成を得ることは想到容易である。

(2)相違点2について
相違点1に検討した如く、特殊景品として、交換価値に応じて異なる色に着色された複数種類のカード状のものを用いる場合、たとえば引用例2の場合のようにカードにバーコードが付加されていたり、あるいは引用例3の場合のようにカードに磁気データが付加されていたとしても、バーコードや磁気データは店員や遊技客にとって視認識別性の良いものではないから、該カード状の特殊景品に着色された色が、店員や遊技客が特殊景品の種類を視認識別するうえで、重要な要素となることが明らかである。そうであれば、引用発明1を出発点としても、相違点1に検討したとおり、特殊景品として交換価値毎に異なる色が着色されたカードを採用する場合には、当該採用した特殊景品の種類を視認識別するうえでの重要な要素となる色を、店側表示部10上で各特殊景品の種類を示す表示として、「大」「中」「小」の表記に代えて用いることは、想到容易というほかはない。その際、カードの着色と完全に同じ色を表示画面上で用いずとも、種類の区別がつけば十分であるから、対応する特殊景品と同色ないし同系色の色を、表示部での表示のために設定することは、設計事項である。
ここで、引用発明1において採用していた「大」「中」「小」の表記自体が、各特殊景品の種類の相違を1つの文字に単純化して示すものであったように、単純化した表示を用いることはきわめて一般的な配慮事項であるところ、色によって特殊景品の種類の区別が示されるようにした以上は、主として色のみを用いて特殊景品の種類を示す表示を行うことは、単純化した表示を用いるという前述した一般的な配慮事項として、表示画面のデザインを検討する当業者であれば適宜なし得る程度の事項である。加えて、主として色のみを用いるといっても、画面全体を複数種類の特殊景品の対応色で埋め尽くしてしまっては情報の判別が困難になることは明白であるから、各特殊景品を示す色を表示する領域は、それぞれ表示部画面上の一部分に設定する必要があることが明らかである。そして、たとえば特開2000-304601号公報の【図12】における「表示色をお選び下さい」の欄で各色が矩形領域内に示され、あるいはたとえば特開平9-253310号公報の【図3】における「色選択」の欄で色が円形領域に示されているように、矩形や円形といった単純な形状は、取り立てて形状を問題とする必要がない場合に、色を表示する領域を設定するうえで適宜汎用される代表的な形状に過ぎない。そうであれば、引用発明1において、「大」「中」「小」の表記に代えて各特殊景品の色を示すに際して、各色の表示領域を矩形とすることは、汎用される代表的な領域形状としての矩形を単に選択することにより、適宜なし得た事項と言わざるを得ない。
また、「矩形」についてさらに付言すれば、引用発明1を出発点として、先に引用例2または引用例3に示した周知技術の如く、着色区別されたカード状の特殊景品を用いる際に、カードとして代表的な形状は矩形である。そして、たとえば特開2000-334150号公報あるいは特開平10-15204号公報にも示される如く(端的にはいずれも要約欄を参照)、パチンコの景品交換においても、景品を示すのに外観イメージを表示することは周知技術である。そうであれば、着色区別されたカード状の特殊景品に対応する色表示の領域形状を選定するに際して、汎用される代表的な領域形状であるとともにカードの代表的外形とも整合する「矩形」を選ぶことは、外観イメージの表示という周知技術を勘案した選択としても、当業者にとって何らの困難性もなかった事項と言うべきである。
なお、相違点の認定においても述べたように、補正発明が「色のみを示す色表示」と記載しつつ「前記色表示は矩形をなしている」と記載する点は、整合性を欠く。しかしながら、複数種類の特殊景品を矩形の色表示で表示部上に示すに際しては、矩形の色表示を形状も含めたマークとして記憶手段に記憶するか、それとも、記憶手段への記憶は特殊景品の種類と色のみとの対応関係として、該色の表示領域を表示の際に矩形とするかは、いずれも適宜選択できる事項である。そのため、補正発明の上記記載については、「色のみを示す色表示」の語は矩形形状であることを含み、矩形の色表示が記憶されて表示されるという趣旨(解釈1)、及び、「記憶手段に記憶」されているのは各特殊景品と「色のみ」との対応関係であり、表示の際に「矩形」で表示されるという趣旨(解釈2)の、いずれと善解しても、設計事項と言わざるを得ない。
よって、相違点2に係る補正発明の構成を得ることは、想到容易である。

(3)補正発明の独立特許要件の判断
相違点1乃至2に係る補正発明の構成を得ることは、いずれも上述のとおり想到容易であり、そうしたことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、補正発明は、引用発明1及び上述の各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
すなわち、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反している。


[補正の却下の決定のむすび]

以上述べたとおり、本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反しているので、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により、却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件審判請求についての判断

1.本願発明の認定
平成20年6月23日付け手続補正は当審において却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年1月15日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲における、【請求項1】に記載された事項によって特定されるべきものとなる。その記載は、「第2 補正の却下の決定」の「1.補正内容」において、(補正前)【請求項1】として示したとおりである。

2.引用刊行物記載の発明の認定、本願発明との対比、及び相違点の判断
本願出願前に頒布された刊行物である、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1には、「第2 補正の却下の決定」の「5.引用刊行物記載の発明の認定」において認定したとおりの引用発明1が記載されている。
本願発明は、「第2 補正の却下の決定」の「2.補正事項及び補正目的」で述べたとおり、「表示手段」が「店員側」に設けられるという、補正発明における限定を有さないものである。そのため、本願発明と引用発明との一致点は、「表示手段」が「店員側」に設けられるという点を除き、「第2 補正の却下の決定」の「6.」で認定したと同様となり、両者の相違点は同「6.」で認定したとおりとなる。そして、当該相違点については、「第2 補正の却下の決定」の「7.」で検討したとおりである。
すなわち、本願発明は引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。


第4 むすび

本件補正が却下されなければならず、本願発明が原査定の理由のとおり特許を受けることができない以上、本願は拒絶せざるを得ない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-09 
結審通知日 2009-09-11 
審決日 2009-09-30 
出願番号 特願2001-177(P2001-177)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 有賀 綾子  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 有家 秀郎
吉村 尚
発明の名称 景品交換管理装置  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 宮腰 健介  
代理人 永井 浩之  
代理人 岡田 淳平  
代理人 吉武 賢次  

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