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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1207195
審判番号 不服2007-14087  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-16 
確定日 2009-11-09 
事件の表示 特願2001-397531「ゴルフクラブヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月 8日出願公開、特開2003-190338〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は平成13年12月27日の出願であって、平成18年11月16日付けで拒絶理由が通知され、同年12月28日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成19年4月6日付けで拒絶査定がなされたため、これを不服として同年5月16日に本件審判請求がされるとともに、同年6月12日付けで明細書について手続補正がなされたものである。


第2 補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成19年6月12日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、平成18年12月28日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲についての

「【請求項1】
クラウン部側のクラウン開口部と前側のフェース開口部とを有し、かつソール部をなすソール壁部にトウ側からヒール側を連ねるサイド壁部とホーゼル部とを鋳造により一体に形成したヘッド主部に、
前記クラウン開口部に取り付けられることによりクラウン部を形成するクラウン部材、
及び
前記フェース開口部に取り付けられることによりフェース部を形成するフェース部材を一体に溶着することにより形成され、
かつ前記フェース部材と前記クラウン部材とは、鍛造又はプレス加工により形成された塑性加工品からなり、
しかも前記フェース部材は、前記ホーゼル部と接合される部分を除いてかつフェース面の各縁部で折れ曲がりヘッド後方にのびる折曲げ部を有するお椀状をなし、
前記各折曲げ部は、前記フェース面の各縁部からヘッドの後方への各折曲げ部表面に沿って測定される最小長さLを5?30mmとするとともに、
前記フェース部材の折曲げ部と、前記クラウン部材又は前記ヘッド主部とが溶着される突き合わせ部に、互いに噛み合うことにより両部材の位置ずれを防ぐ位置ずれ防止部を設けたことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記位置ずれ防止部は、前記折曲げ部の後縁に設けた波状後縁部と、前記クラウン部材又は前記ヘッド主部の前縁に設けられかつ前記波状後縁部に噛み合う波状前縁部とからなることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記波状後縁部は、少なくともクラウン部側に設けたクラウン部側の折曲げ部とサイド部側に設けたサイド部側の折曲げ部の各後縁をなすことを特徴とする請求項2記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記フェース部材は、β型チタン合金からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。」

の記載を、

「【請求項1】
クラウン部側のクラウン開口部と前側のフェース開口部とを有し、かつソール部をなすソール壁部にトウ側からヒール側を連ねるサイド壁部とホーゼル部とを鋳造により一体に形成したヘッド主部に、
前記クラウン開口部に取り付けられることによりクラウン部を形成するクラウン部材、
及び
前記フェース開口部に取り付けられることによりフェース部を形成するフェース部材を一体に溶着することにより形成され、
かつ前記フェース部材と前記クラウン部材とは、鍛造又はプレス加工により形成された塑性加工品からなり、
しかも前記フェース部材は、前記ホーゼル部と接合される部分を除いてかつフェース面の各縁部で折れ曲がりヘッド後方にのびる連続した折曲げ部を有し、
前記各折曲げ部は、前記フェース面の各縁部から前記折曲げ部の後端までの、前記縁部からヘッドの後方への各折曲げ部表面に沿って測定される最小長さLを5?30mmとするとともに、
前記フェース部材の折曲げ部と、前記クラウン部材又は前記ヘッド主部とが溶着される突き合わせ部に、互いに噛み合うことにより両部材の位置ずれを防ぐ位置ずれ防止部を設け、
かつ前記位置ずれ防止部は、前記折曲げ部の後縁に設けた波状後縁部と、前記クラウン部材又は前記ヘッド主部の前縁に設けられかつ前記波状後縁部に噛み合う波状前縁部とからなり、
しかも前記波状後縁部9Aと波状前縁部9Bとは連続して接し密に噛み合う密に噛み合うか、波の山と谷とが互いに当接し当接部Xを形成するとともに、この当接部X、X間に波状後縁部9Aと波状前縁部9Bとが離間する離間部Yを形成するか、又は波の山と谷とが離間することにより離間部Yを形成するとともに、これらの離間部Y,Y間に当接部Xを形成するかの何れかであることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記波状後縁部は、少なくともクラウン部側に設けたクラウン部側の折曲げ部とサイド部側に設けたサイド部側の折曲げ部の各後縁をなすことを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
クラウン部側のクラウン開口部と前側のフェース開口部とを有し、かつソール部をなすソール壁部にトウ側からヒール側を連ねるサイド壁部とホーゼル部とを鋳造により一体に形成したヘッド主部に、
前記クラウン開口部に取り付けられることによりクラウン部を形成するクラウン部材、
及び
前記フェース開口部に取り付けられることによりフェース部を形成するフェース部材を一体に溶着することにより形成され、
かつ前記フェース部材と前記クラウン部材とは、鍛造又はプレス加工により形成された塑性加工品からなり、
しかも前記フェース部材は、前記ホーゼル部と接合される部分を除いてかつフェース面の各縁部で折れ曲がりヘッド後方にのびる連続した折曲げ部を有し、
前記各折曲げ部は、前記フェース面の各縁部から前記折曲げ部の後端までの、前記縁部からヘッドの後方への各折曲げ部表面に沿って測定される最小長さLを5?30mmとするとともに、
前記フェース部材の折曲げ部と、前記クラウン部材又は前記ヘッド主部とが溶着される突き合わせ部に、互いに噛み合うことにより両部材の位置ずれを防ぐ位置ずれ防止部を設けるとともに、
前記ヘッド主部のサイド壁部は、ヘッドのサイド部とクラウン部との間の稜線Eをクラウン部側に小巾で超える周縁部を有し、
かつこの周縁部は、前記クラウン部の一部を形成するとともに、
周縁部には、前記クラウン部材を載置し、クラウン部の仮組み状態に保持しうる載置片を複数個隔設したことを特徴とするクラブヘッド。
【請求項4】
前記フェース部材は、β型チタン合金からなることを特徴とする請求項1?3の何れかに記載のゴルフクラブヘッド。」

と補正するものである。

2 本件補正の適否の検討
(1)目的要件についての検討
ア 本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(以下単に「特許法第17条の2第4項」という。)に規定する要件を満たすか否かを検討する。

イ(ア)特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」は、補正前後の請求項に係る発明が一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない(東京高裁平成15年(行ケ)第230号、知財高裁平成17年(行ケ)第10192号、知財高裁平成17年(行ケ)第10156号参照。)。

(イ)これを本件についてみると、本件補正後の請求項1,2,3,4は、それぞれ、本件補正前の請求項2,3,1,4と一対一の対応関係に立つものである。

a 本件補正のうち本件補正前の請求項2を本件補正後の請求項1とする補正は、(a-1)本件補正前の請求項2の「前記フェース部材は、前記ホーゼル部と接合される部分を除いてかつフェース面の各縁部で折れ曲がりヘッド後方にのびる折曲げ部を有するお椀状をなし」を、「前記フェース部材は、前記ホーゼル部と接合される部分を除いてかつフェース面の各縁部で折れ曲がりヘッド後方にのびる連続した折曲げ部を有し」と補正し、(a-2)本件補正前の請求項2の「前記各折曲げ部は、前記フェース面の各縁部からヘッドの後方への各折曲げ部表面に沿って測定される最小長さLを5?30mmとする」を、「前記各折曲げ部は、前記フェース面の各縁部から前記折曲げ部の後端までの、前記縁部からヘッドの後方への各折曲げ部表面に沿って測定される最小長さLを5?30mmとする」と補正するとともに、(a-3)「前記波状後縁部9Aと波状前縁部9Bとは連続して接し密に噛み合う密に噛み合うか、波の山と谷とが互いに当接し当接部Xを形成するとともに、この当接部X、X間に波状後縁部9Aと波状前縁部9Bとが離間する離間部Yを形成するか、又は波の山と谷とが離間することにより離間部Yを形成するとともに、これらの離間部Y,Y間に当接部Xを形成するかの何れかであること」という事項を追加する補正である。
そして、本件補正のうち上記(a-1)及び(a-2)の補正は、平成19年4月6日付けの拒絶査定において、審査官が「補正後の請求項1に記載されている、『お椀状』及び『前記各折曲げ部は、前記フェース面の各縁部からヘッドの後方への各折曲げ部表面に沿って測定される最小長さLを5?30mmとする』は、記載が明確でない。今後補正される際は留意されたい。(前者は、『お椀状』とする形状を一義的に特定することができない(フェースの打球面は、いわゆる『お椀』のように弧状に突出しているものではない。)から、記載が不明確である。後者は、『最小長さ』の始点が『フェース面の各縁部』であることは記載されているものの、終点が記載されていないから、最小長さを5?30mmとする位置を理解することができない記載である。)」という指摘を受けてなされた補正であるから、本件補正のうち上記(a-1)及び(a-2)の補正の目的は、特許法第17条の2第4項第4号に掲げる「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」に該当する。
また、本件補正のうち上記(a-3)の補正は、本件補正前の請求項2の「前記折曲げ部の後縁に設けた波状後縁部と、前記クラウン部材又は前記ヘッド主部の前縁に設けられかつ前記波状後縁部に噛み合う波状前縁部とからなる」「位置ずれ防止部」における「波状後縁部」と「波状前縁部」との「噛み合」い構造を限定する補正であるから、本件補正のうち上記(a-3)の補正の目的は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。

b 本件補正前の請求項3は本件補正前の請求項2を引用し、本件補正後の請求項2は本件補正後の請求項1を引用している。
したがって、本件補正のうち本件補正前の請求項3を本件補正後の請求項2とする補正の目的は、上記aで述べたのと同様の理由により、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同項第4号に掲げる「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」に該当する。

c 本件補正のうち本件補正前の請求項1を本件補正後の請求項3とする補正は、(c-1)本件補正前の請求項1の「前記フェース部材は、前記ホーゼル部と接合される部分を除いてかつフェース面の各縁部で折れ曲がりヘッド後方にのびる折曲げ部を有するお椀状をなし」を、「前記フェース部材は、前記ホーゼル部と接合される部分を除いてかつフェース面の各縁部で折れ曲がりヘッド後方にのびる連続した折曲げ部を有し」と補正し、(c-2)本件補正前の請求項1の「前記各折曲げ部は、前記フェース面の各縁部からヘッドの後方への各折曲げ部表面に沿って測定される最小長さLを5?30mmとする」を、「前記各折曲げ部は、前記フェース面の各縁部から前記折曲げ部の後端までの、前記縁部からヘッドの後方への各折曲げ部表面に沿って測定される最小長さLを5?30mmとする」と補正するとともに、(c-3)「前記ヘッド主部のサイド壁部は、ヘッドのサイド部とクラウン部との間の稜線Eをクラウン部側に小巾で超える周縁部を有し」、「かつこの周縁部は、前記クラウン部の一部を形成するとともに」、「周縁部には、前記クラウン部材を載置し、クラウン部の仮組み状態に保持しうる載置片を複数個隔設した」という事項を追加する補正である。
そして、本件補正のうち上記(c-1)及び(c-2)の補正は、平成19年4月6日付けの拒絶査定において、審査官が「補正後の請求項1に記載されている、『お椀状』及び『前記各折曲げ部は、前記フェース面の各縁部からヘッドの後方への各折曲げ部表面に沿って測定される最小長さLを5?30mmとする』は、記載が明確でない。今後補正される際は留意されたい。(前者は、『お椀状』とする形状を一義的に特定することができない(フェースの打球面は、いわゆる『お椀』のように弧状に突出しているものではない。)から、記載が不明確である。後者は、『最小長さ』の始点が『フェース面の各縁部』であることは記載されているものの、終点が記載されていないから、最小長さを5?30mmとする位置を理解することができない記載である。)」という指摘を受けてなされた補正であるから、本件補正のうち上記(c-1)及び(c-2)の補正の目的は、特許法第17条の2第4項第4号に掲げる「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」に該当する。
また、本件補正のうち上記(c-3)の補正は、本件補正前の請求項1の「ヘッド主部」の「サイド壁部」の「クラウン部」と接合される部分の構造を限定する補正であるから、本件補正のうち上記(c-3)の補正の目的は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。

d 本件補正前の請求項4は本件補正前の請求項1?3を引用し、本件補正後の請求項4は本件補正後の請求項1?3を引用している。
したがって、本件補正のうち本件補正前の請求項4を本件補正後の請求項4とする補正の目的は、上記a?cと同様の理由により、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同項第4号に掲げる「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」に該当する。

ウ 以上検討したとおりであるから、本件補正は、同法第17条の2第4項の規定に適合する。

(2)独立特許要件についての検討
上記(1)で検討したとおり、本件補正のうち本件補正前の請求項2を本件補正後の請求項1とする補正の目的には、同項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」が含まれる。
そこで、本件補正が平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項(以下、単に「特許法第17条の2第5項」という。)において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか否か、すなわち、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かを検討する。

ア 本件補正発明の認定
本件補正発明には「前記波状後縁部9A」が記載されているが、前記記載よりも前に「波状後縁部9A」という記載が存在しないから、本件補正発明の「波状後縁部9A」が何を指しているのか不明である。しかし、本件補正により補正された明細書の記載に照らせば、本件補正発明の「前記波状後縁部9A」は本件補正発明の「波状後縁部」を意味することは明らかであるから、本件補正発明の「前記波状後縁部9A」、「波状後縁部9A」はいずれも「前記波状後縁部」の誤記と認める。
また、同様に、本件補正発明の「波状前縁部9B」は、「前記波状前縁部」の誤記と認める。
さらに、平成21年6月1日付けの回答書において、請求人は、本件補正発明について「密に噛み合うが二重に記載されている誤記があります」と主張しているから、本件補正発明の「密に噛み合う密に噛み合う」は、「密に噛み合う」の誤記と認める。
したがって、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載からみて、本件補正発明は次のとおりのものと認める。

「クラウン部側のクラウン開口部と前側のフェース開口部とを有し、かつソール部をなすソール壁部にトウ側からヒール側を連ねるサイド壁部とホーゼル部とを鋳造により一体に形成したヘッド主部に、
前記クラウン開口部に取り付けられることによりクラウン部を形成するクラウン部材、
及び
前記フェース開口部に取り付けられることによりフェース部を形成するフェース部材を一体に溶着することにより形成され、
かつ前記フェース部材と前記クラウン部材とは、鍛造又はプレス加工により形成された塑性加工品からなり、
しかも前記フェース部材は、前記ホーゼル部と接合される部分を除いてかつフェース面の各縁部で折れ曲がりヘッド後方にのびる連続した折曲げ部を有し、
前記各折曲げ部は、前記フェース面の各縁部から前記折曲げ部の後端までの、前記縁部からヘッドの後方への各折曲げ部表面に沿って測定される最小長さLを5?30mmとするとともに、
前記フェース部材の折曲げ部と、前記クラウン部材又は前記ヘッド主部とが溶着される突き合わせ部に、互いに噛み合うことにより両部材の位置ずれを防ぐ位置ずれ防止部を設け、
かつ前記位置ずれ防止部は、前記折曲げ部の後縁に設けた波状後縁部と、前記クラウン部材又は前記ヘッド主部の前縁に設けられかつ前記波状後縁部に噛み合う波状前縁部とからなり、
しかも前記波状後縁部と前記波状前縁部とは連続して接し密に噛み合うか、波の山と谷とが互いに当接し当接部Xを形成するとともに、この当接部X、X間に前記波状後縁部と前記波状前縁部とが離間する離間部Yを形成するか、又は波の山と谷とが離間することにより離間部Yを形成するとともに、これらの離間部Y,Y間に当接部Xを形成するかの何れかであることを特徴とするゴルフクラブヘッド。」

イ 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶理由に引用され、本件出願前に頒布された刊行物である特開2001-129130号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の(a)ないし(e)の記載が図面とともにある。

(a)「【請求項1】 金属製外殻を有する中空ゴルフクラブヘッドにおいて、
少なくともフェース部を鍛造材もしくは圧延材を用い、鍛造もしくはプレスにて成形し、
ソール部、サイド部及びホーゼル部を含む又はソール部及びサイド部からなるヘッド本体部を鋳造により成形すると共に、
クラウン部を別体にて作成し、
前記フェース部、ヘッド本体部、クラウン部をそれぞれ固着して構成されてなることを特徴とするゴルフクラブヘッド。」

(b)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、金属製外殻を有する中空のゴルフクラブヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の金属製外殻を有する中空ゴルフクラブヘッドは、図7に示すように、プレス等の鍛造によって、フェース面部20とシャフト25を取付けるためのパイプ部21が後から固着されるホーゼル部22とを一体成形し、同様の鍛造成形により後側上半分部23と後側下半分部24とを成形し、これらを夫々固着一体化してヘッドを製造していた。この従来例は、精密鋳造法、すなわちロストワックス法により製作されたヘッドにピンホール、ラック等が生じ易いことに鑑み、鍛造法により複数のパーツに分けて製作し、夫々のパーツを溶接等により固着することで、ロストワックス法による欠点を解消したものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の後側下半分部24にはヘッドのソール部分も含まれ、この部分には低重心化を図ったり、地面との接触時においてヘッドの抜けの良さ等を図る上でいろいろ細工を施すことが多い。しかしながら、鍛造によりこの部分を製作すると複雑なデザインや凹凸の成形が困難ないし不可能であった。また、ホーゼル部22についても、重心位置の設定やシャフトの固着の確実性等を図る上では、鋳造品に比べて鍛造で製作されたものは不利であった。さらに、ヘッド内部にウェート部材を設けたりするのにも、鍛造品ではその固定、位置、大きさ、材質等に制限があった。
【0004】そこで、この発明は、少なくともソール部を含んだヘッド本体部のデザインの自由化を図り、凹凸の形成も容易で、重心位置の設計を容易にし、地面に接するソールの抜けを良くするためのデザインが自由に行えるゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するため、この発明は、金属製外殻を有する中空ゴルフクラブヘッドにおいて、少なくともフェース部を鍛造材もしくは圧延材を用い、鍛造もしくはプレスにて成形し、ソール部、サイド部及びホーゼル部を含む又はソール部及びサイド部からなるヘッド本体部を鋳造により成形すると共に、クラウン部を別体にて作成し、前記フェース部、ヘッド本体部、クラウン部をそれぞれ固着して構成されてなるものである。」

(c)「【0006】
【発明の実施の形態】以下に、この発明の好適な実施例を図面を参照にして説明する。
【0007】図1に示す実施例では、金属製外殻を有する中空ゴルフクラブヘッドが、フェース部1、ヘッド本体部2、クラウン部3、ホーゼル部4の4つのパーツから構成されている。フェース部1は鍛造材もしくは圧延材を用い、鍛造もしくはプレスにて成形してある。ヘッド本体部2は、ソール部2Aとサイド部2Bを有する。このヘッド本体部2は精密鋳造法(ロストワックス法)により成形する。クラウン部3は鍛造材もしくは圧延材を用い、鍛造もしくはプレスにて成形してある。また、ホーゼル部4も鍛造材もしくは圧延材を用い、鍛造もしくはプレスにて成形してある。このホーゼル部4はソール部2Aとサイド部2Bに溶接などで固着される。ソール部2Aには内側から見てV字状の突条5と筒状凸部6を形成してある。
【0008】図2は図1に示す4つのパーツを夫々固着した状態の断面を示し、筒状凸部6の下面側に形成される凹部6Aにはウェート部材7を設けてある。また突条5の下面側は溝5Aに形成され、ヘッドの抜けを良くしている。
【0009】図1及び図2に示す実施例では、フェース部1及びクラウン部3にチタニウム合金であるSP700の圧延材を用いて、所望の大きさに打ち抜きプレス成形にて所望の形状に仕上げた。フェース部1の厚さは3.0mm、クラウン部3の厚さは0.8mmとした。ホーゼル部4は、15-3-3-3のβチタニウム合金を鍛造で成形し、ホーゼル孔加工を後で加工した。ヘッド本体部2は、15-3-3-3のβチタニウム合金を鋳造で成形し、ソール部2Aにフェース側からバック側に向かって下面に溝5Aが広がるようなデザインを施し、ヘッド本体部2のこのV字型のデザインで囲まれたバック側の位置に凹部6Aが形成される筒状凸部6を形成し、この凹部6Aに銅合金を圧入し、加締めて固定した。また、各パーツの固着方法は、アルゴンガス雰囲気中にヘッドを入れて、アーク溶接により固着した。このように夫々のパーツを固着して出来上がったゴルフクラブヘッドの体積は300ccで重量は194gであった。」

(d)「【0011】図3に示す別の実施例では、ソール部2A、サイド部2Bのみならずホーゼル部4も鋳造により一体成形したものを示す。このヘッド本体部2のソール部2Aには先の実施例と同様の突条5を形成し、筒状凸部6の替わりに筒体部61を形成してある。この筒体部61の中空部内にはウェート部材7を嵌め込んで固定する。
【0012】図4は図3に示す実施例の下面側から見た図であり、この図4のX-X線に沿った断面を図5に示す。筒体部61の中空部内周面には雌ねじを形成しておき、ウェート部材7の外周面にはこの雌ねじに螺合する雄ねじを形成しておくことにより、ウェート部材7をねじ込んで筒体部61の中空部内に固定することができる。
【0013】この発明におけるゴルフクラブヘッドは、3ピースもしくは4ピース以上のパーツに分割して夫々別体で成形した後、夫々のパーツを固着することによってゴルフクラブヘッドを製造する。夫々のパーツの固着方法としては、溶接による方法が好ましく、TIG溶接やMIG溶接といったようなアーク溶接が好適に採用でき、特にチタニウムやその合金等の酸化し易い金属では、アルゴンガス等の不活性ガスの雰囲気中で溶接することが好ましい。」

(e)「【0017】図6はホーゼル部4もソール部2A及びサイド部2Bと共に鋳造で一体成形したものの横断面を示すものである。
【0018】各パーツを形成する材料としては、チタニウムやその合金の他にステンレスやマルエージング鋼、ジュラルミン、FRM等も使用することが出来る。また、この発明のヘッドは、ドライバーやフェアウェイウッドなどのウッド型のゴルフクラブヘッドに好適であるが、所謂ユーティリティークラブなどのヘッドにも適用することが出来る。
【0019】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば、金属製外殻を有する中空ゴルフクラブヘッドにおいて、少なくともフェース部を鍛造材もしくは圧延材を用い、鍛造もしくはプレスにて成形し、ソール部、サイド部及びホーゼル部を含む又はソール部及びサイド部からなるヘッド本体部を鋳造により成形すると共に、クラウン部を別体にて作成し、フェース部、ヘッド本体部、クラウン部をそれぞれ固着して構成したので、低重心化を図ったり、ヘッドの抜けを良くしたり、地面に対する滑りを良くしたりするなどのデザインを施すことが鋳造によるヘッド本体部に簡単に施すことができる。(以下略)」

また、原査定の拒絶理由に引用され、本件出願前に頒布された刊行物である登録実用新案第3027660号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の(f)ないし(h)の記載が図面とともにある。

(f)「【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は一種の鍛造式ゴルフクラブヘッドに関し、特に、各部材の位置決めが正確になされ構造に偏斜を発生せず製造されるものに関する。
【0002】
【従来の技術】
軽く、角度が正確であることが現在ゴルフクラブヘッドに求められる実用効果であり、このため中空型のゴルフクラブヘッドが生まれた。現在の中空型のゴルフクラブヘッドの製造方式では、通常は煩雑な工程により達成され、相対的に時間が浪費されコストが上がり、経済的でなく量産ができなかった。ゆえに、業界では、鍛造方式によるゴルフクラブヘッド(図1)が売り出された。それは上蓋A1と下蓋A2及びフェイスA3を鍛造方式でヘッドの角度形態となし、続いて組み立てて溶接することで、一つの中空のゴルフクラブヘッドとするものであった。このゴルフクラブヘッドは市場で相当の競争力を有するものであったが、構造上改善すべき点があった。
【0003】
その点の一つは、このような鍛造式ゴルフクラブヘッドは鍛造により完成した各片体を組み合わせて順に溶接してなるが、各片体の曲線や直線を溶接時に揃えて固定できないと、組合せ上、滑動を生じて正確に位置決めできず、ゴルフクラブヘッドの角度に偏差が発生し、ゴルフクラブヘッドの大きさの不一致を招いたことである。
【0004】
次に、従来の鍛造式ゴルフクラブヘッドは組合わせ上の不明確さにより、フェイスの角度偏移を発生し、打撃効果に影響を及ぼした。
【0005】
さらに、従来の鍛造式ゴルフクラブヘッドは、組合せて必要なヘッド角度を得ているが、このため組合せプロセスに専業の人員が必要となり、角度の偏移を減らすために製造工程の複雑さが増した。
【0006】
さらにまた、従来の鍛造式ゴルフクラブヘッドは、溶接工程では通常、わずかに外周の接合部分が溶接されるため、接合部分の強度不足を招き、ゴルフクラブヘッドの使用寿命が減少した。
【0007】
また、外周溶接方式により組み合わされるため、表面上では溶接の厚さの多少が観察しにくく、大体平均の厚さとしても、補助的に厚さを平均とするための方法がないため、ゴルフクラブヘッドの構造に影響を与えた。
【0008】
【考案が解決しようとする課題】
上述の欠点は、構造上で観察することができる欠点であり、実際に存在する弊害はさらに多く、また現在の中空の鍛造式ゴルフクラブヘッドは改良すべきところがあった。ゆえに、本考案では、連続的な製造プロセスにより製造され、良好な品質或いは強度を有し、さらにヘッド角度を保持でき、偏移状況を発生しないように、位置決めして組合せられた一種の鍛造式ゴルフクラブヘッドを提供することを課題とする。」

(g)「【0012】
【考案の実施の形態】
本考案の特徴は、フェイスと底板と上蓋板の各端部の接合面に対応する雄雌接合構造を形成し、各板面の組合せを位置決めして溶接を進行することで、ゴルフクラブヘッドの溶接角度を保持して偏斜を形成せず、並びにフェイス上端縁の内面の接合部分に一つの連接片を溶接し、これによりフェイスを内外から溶接する強固な形態を現出し、ゴルフクラブヘッドの打撃効果と使用寿命を伸ばしたことにある。ゆえに、本考案は、市場での競走力並びに国際間での販売における競争力を有する。
【0013】
【実施例】
図2に示されるように、本考案のゴルフクラブヘッドはフェイス1、底板2、上蓋板3及び連接片4を組み合わせてなり、その中、フェイス1の周囲には凸片10が設けられ、また底板2と連接片4の周辺には凹弧20、40が設けられ、フェイス1の凸片10と底板2と連接片4の凹弧20、40が先に溶接され、上蓋板3の凸片30と組み合わされる。ゆえに、該ゴルフクラブヘッドを組み合わせる時には、さきに、フェイス1と底板2、連接片4を組み合わせて溶接し、いまだ上蓋板3を嵌め込んでない空間を利用して内外から溶接し、その後、上蓋板3を嵌め込み、並びに上蓋板3の周辺の各凸片30と底板2と連接片4の凹弧20、40を相互に嵌合し、さらに外側から溶接し(図3、4参照)、こうして強化された、且つ速やかに製造されるゴルフクラブヘッドを完成する。」

(h)「【0016】
【考案の効果】
本考案の効果は以下のとおりである。
まず、フェイスと底板と上蓋板の各端の接合面に設けられた対応する雄雌接合構造により各板面の組合せを位置決めしてから溶接が進行されるため、ゴルフクラブヘッドの溶接角度が保持されて偏斜を形成しない。
次に、フェイス上端縁の内面の接合部分に予め一つの連接片が溶接されることで、フェイスが内外から溶接されて強化された形態とされる。
第3に、本考案はゴルフクラブヘッドの打撃効果と使用寿命を延長する。
さらに、本考案では速やかに位置決め組合せが行え、且つ高い強度を有するゴルフクラブヘッドを提供し、生産速度を高めることができる。」

ウ 引用例1記載の発明の認定
引用例1の上記記載事項(a)ないし(e)から、引用例1には次の発明が記載されていると認めることができる。

「フェース部、ヘッド本体部、クラウン部から構成される金属製外殻を有する中空ゴルフクラブヘッドにおいて、
前記フェース部及び前記クラウン部は、鍛造材もしくは圧延材を用い、鍛造もしくはプレスにて成形してあり、
ソール部、サイド部及びホーゼル部を含む前記ヘッド本体部は、鋳造により一体成形したものであり、
前記フェース部、前記ヘッド本体部、前記クラウン部をそれぞれ溶接により固着して構成されたゴルフクラブヘッド。」(以下「引用発明」という。)

エ 本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
(ア)引用発明の「ゴルフクラブヘッド」は、「フェース部、ヘッド本体部、クラウン部から構成される金属製外殻を有する中空ゴルフクラブヘッド」であって、かつ、「前記フェース部、前記ヘッド本体部、前記クラウン部をそれぞれ溶接により固着して構成され」るものであるから、引用発明の「ヘッド本体部」が、「クラウン部」側及び「フェース部」側に開口部を有することは明らかである。
したがって、引用発明の「鋳造により一体成形した」「ソール部、サイド部及びホーゼル部を含む」「ヘッド本体部」は、本件補正発明の「クラウン部側のクラウン開口部と前側のフェース開口部とを有し、かつソール部をなすソール壁部にトウ側からヒール側を連ねるサイド壁部とホーゼル部とを鋳造により一体に形成したヘッド主部」に相当する。

(イ)上記(ア)で述べたとおり、引用発明の「ヘッド本体部」は「クラウン部」側に開口部を有し、また、引用発明の「ゴルフクラブヘッド」は「前記ヘッド本体部、前記クラウン部をそれぞれ溶接により固着して構成された」ものであるから、引用発明の「クラウン部」は、「ヘッド本体部」の「クラウン部」側の開口部に「溶接により固着」されることは明らかである。
したがって、引用発明の「ヘッド本体部」に「溶接により固着」された「クラウン部」は、本件補正発明の「前記クラウン開口部に取り付けられることによりクラウン部を形成するクラウン部材」に相当し、引用発明の「前記ヘッド本体部、前記クラウン部をそれぞれ溶接により固着」することは、本件補正発明の「ヘッド主部に」「クラウン部材」「を一体に溶着する」ことに相当する。

(ウ)上記(ア)で述べたとおり、引用発明の「ヘッド本体部」は「フェース部」側に開口部を有し、また、引用発明の「ゴルフクラブヘッド」は「前記フェース、前記ヘッド本体部」「をそれぞれ溶接により固着して構成された」ものであるから、引用発明の「フェース部」は、「ヘッド本体部」の「フェース部」側の開口部に「溶接により固着」されることは明らかである。
したがって、引用発明の「ヘッド本体部」に「溶接により固着」された「フェース部」は、本件補正発明の「前記フェース開口部に取り付けられることによりフェース部を形成するフェース部材」に相当し、引用発明の「前記フェース部、前記ヘッド本体部」「をそれぞれ溶接により固着」することは、本件補正発明の「ヘッド主部に」「フェース部材を一体に溶着する」ことに相当する。

(エ)引用発明の「前記フェース部及び前記クラウン部は、鍛造材もしくは圧延材を用い、鍛造もしくはプレスにて成形してあ」ることは、本件補正発明の「前記フェース部材と前記クラウン部材とは、鍛造又はプレス加工により形成された塑性加工品からな」ることに相当する。

(オ)以上から、本件補正発明と引用発明とは、

「クラウン部側のクラウン開口部と前側のフェース開口部とを有し、かつソール部をなすソール壁部にトウ側からヒール側を連ねるサイド壁部とホーゼル部とを鋳造により一体に形成したヘッド主部に、
前記クラウン開口部に取り付けられることによりクラウン部を形成するクラウン部材、
及び
前記フェース開口部に取り付けられることによりフェース部を形成するフェース部材を一体に溶着することにより形成され、
かつ前記フェース部材と前記クラウン部材とは、鍛造又はプレス加工により形成された塑性加工品からなるゴルフクラブヘッド。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

〈相違点1〉
本件補正発明では「フェース部材は、前記ホーゼル部と接合される部分を除いてかつフェース面の各縁部で折れ曲がりヘッド後方にのびる連続した折曲げ部を有し」、「前記各折曲げ部は、前記フェース面の各縁部から前記折曲げ部の後端までの、前記縁部からヘッドの後方への各折曲げ部表面に沿って測定される最小長さLを5?30mmとする」のに対し、引用発明にはこのような限定がない点。

〈相違点2〉
本件補正発明では、「前記フェース部材の折曲げ部と、前記クラウン部材又は前記ヘッド主部とが溶着される突き合わせ部に、互いに噛み合うことにより両部材の位置ずれを防ぐ位置ずれ防止部を設け」、「かつ前記位置ずれ防止部は、前記折曲げ部の後縁に設けた波状後縁部と、前記クラウン部材又は前記ヘッド主部の前縁に設けられかつ前記波状後縁部に噛み合う波状前縁部とからなり」、「しかも前記波状後縁部と前記波状前縁部とは連続して接し密に噛み合うか、波の山と谷とが互いに当接し当接部Xを形成するとともに、この当接部X、X間に前記波状後縁部と前記波状前縁部とが離間する離間部Yを形成するか、又は波の山と谷とが離間することにより離間部Yを形成するとともに、これらの離間部Y,Y間に当接部Xを形成するかの何れかである」のに対し、引用発明にはこのような限定がない点。

オ 相違点についての判断
(ア)引用例2に記載された「鍛造式の中空型のゴルフクラブヘッド」が金属製の中空型のゴルフクラブヘッドであることは、本件出願時の技術常識に照らし明らかである。また、引用例2の「上蓋板3」及び「連接片4」は「ゴルフクラブヘッド」のクラウン部を構成すること、及び、引用例2の「連接片4」の「フェイス1」と組み合わされる側の辺は、「ゴルフクラブヘッド」のクラウン部のフェース部と接合される側の辺であることも、本件出願時の技術常識に照らし明らかである。さらに、引用例2の図2?4から、「底板2」がソール部及びサイド部を一体的に構成する部材であることも、本件出願時の技術常識に照らし明らかである。すると、引用例2の上記記載事項(f)ないし(h)及び本件出願時の技術常識から、引用例2には、ソール部及びサイド部を一体的に構成する部材、フェース部材及びクラウン部材を組み合わせてそれぞれの部材を溶接することによって製造された金属製の中空型のゴルフクラブヘッドにおいて、前記溶接の前に前記各部材を組み合わる際に前記各部材を正確に位置決めできないことによって生ずるゴルフクラブヘッドの角度の偏差の問題等の諸問題を解決するために、前記各部材が他の部材と組み合わされる辺に凹部及び凸部を設け、前記凹部と前記凸部を噛み合わせる旨の技術的事項が記載されていると認めることができる。
そして、引用発明の「ゴルフクラブヘッド」と引用例2に記載された「ゴルフクラブヘッド」とは、複数の部材を組み合わせて溶接することによって形成された金属製の中空ゴルフクラブヘッドである点で共通する。
したがって、引用発明の「ゴルフクラブヘッド」において、「フェース部」、「ヘッド本体部」及び「クラウン部」を組み合わる際に前記各部材を正確に位置決めできないことによって生ずるゴルフクラブヘッドの角度の偏差の問題等の諸問題を解決するために、引用例2に記載された上記技術的事項を適用して、引用発明の「フェース部」、「ヘッド本体部」及び「クラウン部」が他の部材と組み合わされる辺に凹部及び凸部を設け、前記凹部と前記凸部を噛み合わせるようにすることは、当業者にとって容易に想到し得る。そして、引用発明の「フェース部」、「ヘッド本体部」及び「クラウン部」間の噛み合わせ構造として、前記凹部及び前記凸部に代えて、波状後縁部と波状前縁部とが連続して接し密に噛み合う構造とすることは、当業者が適宜なし得る設計変更である。

(イ)また、ゴルフクラブヘッドの技術分野において、クラウン部、ソール部及びサイド部を含む部材とフェース部材とを溶接してゴルフクラブヘッドを構成する際、前記溶接部が前記フェース部材のフェース面の周縁に位置することによって生ずる前記溶接部に応力が加わって前記溶接部が破損するという問題等の諸問題を解決するために、前記フェース部材のフェース面の各縁部から後方にのびる連続した折り曲げ部を設けることは、本件出願時において当業者に周知の技術である(例えば、原査定に引用された特開平4-292178号公報(特に、請求項1、段落【0007】?【0009】、【0016】?【0017】、図1?2等)、特開平5-317466号公報(特に、請求項1、段落【0005】?【0006】、【0017】?【0020】、図1?4等)、国際公開第01/83049号(特に、第49頁第26行?第53頁第16行、図95?図106等)を参照。)。
そして、引用発明の「ゴルフクラブヘッド」も、「前記フェース部、前記ヘッド本体部、前記クラウン部をそれぞれ溶接により固着して構成された」ものである。
すると、引用発明の「ゴルフクラブヘッド」において、「溶接」部が「フェース部」のフェース面の周縁に位置することによって生ずる前記「溶接」部に応力が加わって前記「溶接」部が破損するという問題等の諸問題を解決するために、上記周知技術を適用して、引用発明の「フェース部」にフェース面の各縁部から後方にのびる連続した折り曲げ部を設けることは、当業者にとって容易に想到し得る。そして、前記折り曲げ部の表面に沿って測定される最小長さを5?30mmとすることは、前記課題を解決することを考慮して当業者が適宜設定し得る設計的事項である。

(ウ)上記(イ)のように引用発明の「フェース部」にフェース面の各縁部から後方にのびる連続した折り曲げ部を設けると、「フェース部」の前記折り曲げ部が引用発明の「ヘッド本体部」及び「クラウン部」と組み合わされることになるから、前記折り曲げ部に上記(ア)で述べた波状後縁部及び波状前縁部を設けることは、当業者であれば当然になし得る設計的事項である。
また、引用例2の図4及び本件出願時の技術常識に照らすと、引用例2の図4においてフェイス1、底板2、上蓋板3及び連結片4が組み合わされた状態においてゴルフクラブヘッドに形成される開口部にはホーゼル部が接合されることは明らかであるから、引用例2の図4及び本件出願時の技術常識から、引用例2のフェース1はホーゼル部に接合されるとともに、フェース1のホーゼル部に接合される部分にホーゼル部を受け入れる凹部が形成されるという技術的事項を読み取ることができる。したがって、上記技術的事項に鑑みて、上記(イ)のように引用発明の「フェース部」にフェース面の各縁部から後方にのびる連続した折り曲げ部を設けるに当たり、引用発明の「フェース部」がホーゼル部と接合するとともに、前記ホーゼル部と接合される部分に前記折り曲げ部を設けないようにすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。

(エ)したがって、引用発明に上記相違点1ないし2に係る本件補正発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。

カ 本件補正発明の独立特許要件の判断
以上のとおり、引用発明に上記相違点1ないし2に係る本件補正発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。
また、本件補正発明の効果も、引用例1,2に記載された発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものに過ぎない。
したがって、本件補正発明は引用例1,2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(3)むすび
以上検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件審判請求についての判断
1 本件発明の認定
本件補正が却下されたから、平成18年12月28日付けの手続補正により補正された明細書及び図面に基づいて審理すると、本件出願の請求項2に係る発明は、平成18年12月28日付けの手続補正によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。

「クラウン部側のクラウン開口部と前側のフェース開口部とを有し、かつソール部をなすソール壁部にトウ側からヒール側を連ねるサイド壁部とホーゼル部とを鋳造により一体に形成したヘッド主部に、
前記クラウン開口部に取り付けられることによりクラウン部を形成するクラウン部材、
及び
前記フェース開口部に取り付けられることによりフェース部を形成するフェース部材を一体に溶着することにより形成され、
かつ前記フェース部材と前記クラウン部材とは、鍛造又はプレス加工により形成された塑性加工品からなり、
しかも前記フェース部材は、前記ホーゼル部と接合される部分を除いてかつフェース面の各縁部で折れ曲がりヘッド後方にのびる折曲げ部を有するお椀状をなし、
前記各折曲げ部は、前記フェース面の各縁部からヘッドの後方への各折曲げ部表面に沿って測定される最小長さLを5?30mmとするとともに、
前記フェース部材の折曲げ部と、前記クラウン部材又は前記ヘッド主部とが溶着される突き合わせ部に、互いに噛み合うことにより両部材の位置ずれを防ぐ位置ずれ防止部を設け、
前記位置ずれ防止部は、前記折曲げ部の後縁に設けた波状後縁部と、前記クラウン部材又は前記ヘッド主部の前縁に設けられかつ前記波状後縁部に噛み合う波状前縁部とからなることを特徴とするゴルフクラブヘッド。」(以下「本件発明」という。)

2 引用刊行物の記載事項及び引用例1記載の発明の認定
原査定の拒絶理由に引用され、本件出願前に頒布された刊行物である引用例1,2には、上記第2の2(2)イに摘記したとおりの事項が記載されており、引用例1に記載された発明は、上記第2の2(2)ウに記載したとおりである。

3 対比・判断
上記第2の2(1)(イ)aで検討したとおり、本件補正発明を本件発明とする本件補正のうち上記(a-1)及び(a-2)の補正は、「明りようでない記載の釈明」(特許法第17条2の2第4項第4号)を目的とする補正であるから、本件補正のうち上記(a-1)及び(a-2)の補正の前後で、本件発明の発明特定事項の内容と本件補正発明の発明特定事項の内容との間に実質的な違いない。すると、本件発明は、本件補正発明の発明特定事項から、上記第2の2(1)(イ)aで述べた本件補正の(a-3)の補正に係る限定事項を省いたものである。
そして、本件発明の発明特定事項をすべて含み、他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の2(2)に記載したとおり、引用例1,2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も、上記第2の2(2)で示した理由と同様の理由により、引用例1,2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本件発明は引用例1,2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本件発明が特許を受けることができない以上、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-26 
結審通知日 2009-09-01 
審決日 2009-09-14 
出願番号 特願2001-397531(P2001-397531)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63B)
P 1 8・ 575- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 英司  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 小松 徹三
日夏 貴史
発明の名称 ゴルフクラブヘッド  
代理人 住友 慎太郎  
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