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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1207213
審判番号 不服2008-6613  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-17 
確定日 2009-11-09 
事件の表示 特願2004-111009「遊技台」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月20日出願公開、特開2005-288006〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成16年4月5日の出願であって、最後の拒絶理由通知に対応して平成19年10月19日に手続補正書が提出され、その後、平成20年2月8日付けでなされた拒絶査定に対し、平成20年3月17日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成20年4月4日に手続補正がなされたものである。
また、当審において、平成21年3月9日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、請求人から平成21年4月7日に回答書が提出されている。

第二.平成20年4月4日付の手続補正書についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成20年4月4日付の手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
平成20年4月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1(以下「本願補正発明」という。)は以下のように補正された。
「メダル投入口から投入されるメダルが通過する通路を形成すると共に、メダルの通過を検出する光学式のセンサが配設された、正規のメダルを選別するためのメダルセレクタを備えた遊技台において、
前記メダルセレクタは、当該メダルセレクタの前記遊技台に対する取付位置を調整する固定部材を介して前記遊技台に配設され、
前記メダルセレクタと前記固定部材には、それぞれ互いに係合する係合部が設けられ、
前記メダルセレクタ側の前記係合部又は前記固定部材側の前記係合部の少なくともいずれかの前記係合部を上下に離間して複数設け、互いに係合する前記メダルセレクタ側の前記係合部と前記固定部材側の前記係合部との組合せにより、当該メダルセレクタのメダルの受入部と前記メダル投入口との間の長さが選択的に変更され、
上下に離間して複数設けられる前記係合部間の間隔が、
互いに係合する前記メダルセレクタ側の前記係合部と前記固定部材側の前記係合部とのいずれかの組合せにおいて、前記メダル投入口から前記通路内に進入可能な挿入可能な基材と、該基材の先端部に配され、前記光学式のセンサにメダルの通過を誤検出させる発光素子と、を備えた器具の前記発光素子が、前記光学式のセンサと位置ずれを生じるように設定されていることを特徴とする遊技台。」

1.補正要件(目的)の検討
本件補正は、補正前(平成19年10月19日付の手続補正は却下されたので、平成19年7月25日付けの手続補正が対象となる)の請求項1に対して「上下に離間して複数設けられる前記係合部間の間隔が、
互いに係合する前記メダルセレクタ側の前記係合部と前記固定部材側の前記係合部とのいずれかの組合せにおいて、前記メダル投入口から前記通路内に進入可能な挿入可能な基材と、該基材の先端部に配され、前記光学式のセンサにメダルの通過を誤検出させる発光素子と、を備えた器具の前記発光素子が、前記光学式のセンサと位置ずれを生じるように設定されていること」という事項を付加したと認められるので、この付加した点について検討する。
なお、上記記載中には「進入可能な挿入可能な」と不明りょうな記載があるが、この記載は、「進入可能な、または、挿入可能な」の明らかな誤記として認定する。
上記「前記メダル投入口から前記通路内に進入可能な、または、挿入可能な基材と、該基材の先端部に配され、前記光学式のセンサにメダルの通過を誤検出させる発光素子と、を備えた器具」は、本願出願時の明細書及び図面を参酌すれば、図12に図示されるような不正行為に用いられる器具に相当するものと認められるが、当該器具は、発明を実施する際に必要なものでなく、しかも、不正行為に用いられる器具は、一般にスロットマシンのような遊技台に対して、使用してはならないものであるから、このような器具は、遊技台を構成するための構成要件にはならない。
よって、請求項1には、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項とは無関係なものが補正によって追加されたものと認められるから、このような補正は、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明、誤記の訂正、請求項の削除の、いずれの目的にも該当しない。
しかしながら、本願出願時の明細書に記載の発明の目的(段落【0006】)及び【発明を実施するための最良の形態】の記載から、不正器具の使用を妨げるための、メダルセレクタのメダルの受入部とメダル投入口との位置調整の説明として例を用いたものと仮定し、当該補正が、特許請求の範囲の減縮、又は、明りょうでない記載の釈明、誤記の訂正、請求項の削除のいずれかの目的に該当するものとした場合の補正の要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)を以下に検討する。

3.補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討
(1)引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2002?52119号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、

【0004】本発明は、上記実情に鑑みなされたもので、メダル投入部材とメダル検出装置の取付位置を位置決めするのが容易で、メダル投入部材とメダル検出装置の相対位置にズレが生じ難い遊技機を提供することを目的とする。
【0017】この実施の形態のパチスロ遊技機100は、遊技媒体にメダルを用いた遊技機であって、その本体枠1には、図2に示すように、前扉2が左端を軸心として片開き形式に開閉自在に取り付けられている。
【0019】前扉2は、図1及び図2に示すように、合成樹脂製の上下のベース部材60A、60Bを結合してなる前扉取付ベース部材60(図2)に、化粧パネル19、表示パネル3などの部材を組み付けて構成されている。
【0026】メダルセレクタ40は、図5に示すように、メダル投入部31から投入されたメダルをメダル投入部材30のメダル流路35から受け入れて払出装置20(図2)或いは誘導樋24(図3)へと流下案内するメダル流路45を備え、該メダル流路45を流下案内する過程で、メダル投入部材30から受け入れたメダルを正規のメダルとそれ以外のメダルとに選別可能となっている。
【0027】また、メダルセレクタ40は、図3に示すように、払出装置20に流下案内するメダルを検出可能な検出スイッチ42(例えば、光センサなど)を備え、この検出スイッチ42による検出信号を制御装置50(図2)に対して出力するようになっている。
【0031】以上のように、この実施の形態のパチスロ遊技機100によれば、金属製の共通取付部材70を介して、メダル投入部材30とメダルセレクタ40(メダル検出装置)の各々を前扉取付ベース部材60に取り付けるようにしたので、共通取付部材70により、メダル投入部材30とメダルセレクタ40の相対位置を正確に位置決めすることが可能となる。従って、メダル投入部材30とメダルセレクタ40の取付位置を位置決めするのが容易となり、メダル投入部材30とメダルセレクタ40の相対位置にズレが生じ難くなる。そのため、メダル投入部材30とメダルセレクタ40の各々に設けられる両メダル流路35、45の接続部分にズレが生じ難くなり、該ズレによるメダル詰まりを低減できる。また、例えば、メダル投入部31から不正な行為を目的とした不正部材が挿入されても、その不正部材が上記ズレから当該遊技機内に侵入するのを防止できる。また、メダル投入部材30の投入口36からメダルセレクタ40の検出スイッチ42までの距離が常に一定となり、投入口36よりメダルを投入してからそのメダルが検出スイッチ42に検出されるまでにかかる時間が、どの遊技機もほぼ一定となる。
【0032】また、メダル投入部材30とメダルセレクタ40とを別々に取り付ける構成としたので、熟練した技術がなくとも、容易にメダル投入部材30とメダルセレクタ40の取付作業を行うことができる。また、メダルセレクタ40とメダル投入部材30が、何れも縦長の貫通穴34、46を有し、該貫通穴34、46から共通取付部材70の各取付穴71a、72aに向けて止着部材を通すことにより共通取付部材70に取り付けられているので、メダルセレクタ40やメダル投入部材30の取付位置を、それぞれの貫通穴34、46の長さ方向(上下方向)に調整することが可能となる。従って、例えば、前扉取付ベース部材60に成形誤差等があっても、メダル投入部材30とメダルセレクタ40の取付位置を容易に補正することができる。
と記載されており、さらに、
図2には、パチスロ遊技機100が、本体枠1と、前扉ベース部材60を備えた前扉2とから構成されている点が図示されている。

よって、摘記した上記の記載や図面等によれば、引用文献1には、
「メダル投入部31の投入口36から投入されたメダルをメダル投入部材30のメダル流路35から受け入れて払出装置20或いは誘導樋24へと流下案内するメダル流路45を備え、前記メダル流路45を流下案内する過程で、前記メダル投入部材30から受け入れたメダルを正規のメダルとそれ以外のメダルとに選別可能となっているメダルセレクタ40を備え、前記メダルセレクタ40には、前記払出装置20に流下案内するメダルを検出可能な光センサを備えている、パチスロ遊技機100において、
パチスロ遊技機100は、本体枠1と、前扉ベース部材60を備えた前扉2とから構成され、前記メダルセレクタ40は、共通取付部材70を介して、前記前扉取付ベース部材60に取り付けられ、前記メダルセレクタ40には縦長の貫通穴46を有し、前記貫通穴46から前記共通取付部70の取付穴72aに向けて止着部材を通すことにより前記共通取付部材70に取り付けられているので、前記共通取付部材70に対する前記メダルセレクタ40の取付位置を、前記貫通穴46の長さ方向、すなわち、上下方向に貫通穴46の縦方向の長さの範囲において任意に調整され、これによって、メダル投入部材30とメダルセレクタ40の取付位置を位置決めするのが容易となり、メダル投入部材30とメダルセレクタ40の相対位置にズレが生じ難くく、メダル投入部材30の投入口36からメダルセレクタ40の光センサまでの距離をどの遊技機に対しても常に一定とする、パチスロ遊技機100。」
の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

(2)引用発明と本願補正発明との対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、
引用発明の「投入口36」は、本願補正発明の「メダル投入口」に相当し、以下同様に、
「メダル流路45」は「通路」に、
「光センサ」は「光学式のセンサ」に、
「メダル投入部材30から受け入れたメダルを正規のメダルとそれ以外のメダルとに選別可能となっている」は「正規のメダルを選別するための」に、
「メダルセレクタ40」は「メダルセレクタ」に、
「パチスロ遊技機100」は「遊技台」に
「共通取付部材70」は「固定部材」に、
「調整され」は「変更され」に、各々相当する。
さらに、引用文献1の記載等からみて、以下のことが言える。

a.引用発明の「前記メダルセレクタ40は、共通取付部材70を介して、前記前扉取付ベース部材60に取り付けられ、前記メダルセレクタ40には縦長の貫通穴46を有し、前記貫通穴46から前記共通取付部70の取付穴72aに向けて止着部材を通すことにより前記共通取付部材70に取り付けられているので、前記共通取付部材70に対する前記メダルセレクタ40の取付位置を、前記貫通穴46の長さ方向、すなわち、上下方向に貫通穴46の縦方向の長さの範囲において任意に調整され」について、この記載から、「メダルセレクタ40」は、「共通取付部材70」に対して、上下方向に取付位置を調整されるものであり、「メダルセレクタ40」は、「共通取付部材70」を介して、「前扉取付ベース部60」に取り付けられているので、引用発明の「メダルセレクタ40」は、「メダルセレクタ40」の「前扉取付ベース部60」に対する取付位置を調整する「共通取付部材70」を介して「前扉取付ベース部60」に配設しているものと認められる。
また、本願補正発明における、「前記メダルセレクタ側の前記係合部又は前記固定部材側の前記係合部の少なくともいずれかの前記係合部を上下に離間して複数設け、互いに係合する前記メダルセレクタ側の前記係合部と前記固定部材側の前記係合部との組合せにより、当該メダルセレクタのメダルの受入部と前記メダル投入口との間の長さが選択的に変更され」との記載から、本願補正発明の「メダルセレクタ」、及び、「固定部材」のそれぞれの「係合部」によって、「メダルセレクタ」の遊技台に対する取付位置を上下方向に調整するものであり、さらに、引用発明の「前扉取付ベース部60」は「パチスロ遊技機100」を構成する「前枠2」の構成の一部である点を勘案すると、引用発明と、本願補正発明とは、「前記メダルセレクタは、当該メダルセレクタの前記遊技台に対する取付位置を上下方向に調整する固定部材を介して前記遊技台に配設され」る点で共通する。
b.引用発明の「前記共通取付部材70に対する前記メダルセレクタ40の取付位置を、前記貫通穴46の長さ方向、すなわち、上下方向に貫通穴46の縦方向の長さの範囲において任意に調整され」について、「メダルセレクタ40」の取付位置が「縦長の貫通穴46」、「止着部材」によって上下方向に移動し、「メダルセレクタ40」と「共通取付部材70」との上下方向の相対的位置が変更された場合には、「メダルセレクタ40」のメダルの受入部と「メダル投入部31」との間の長さも変更される。また、本願補正発明の「前記メダルセレクタ側の前記係合部又は前記固定部材側の前記係合部の少なくともいずれかの前記係合部を上下に離間して複数設け、互いに係合する前記メダルセレクタ側の前記係合部と前記固定部材側の前記係合部との組合せにより、当該メダルセレクタのメダルの受入部と前記メダル投入口との間の長さが選択的に変更され」について、互いに係合する前記メダルセレクタ側の前記係合部と前記固定部材側の前記係合部との組合せにより、メダルセレクタと固定部材との上下方向の相対的位置が変更されるものと認められるから、引用発明と本願補正発明とは、本願補正発明の「係合部」、及び、「選択的」は別として、「前記メダルセレクタと前記固定部材の相対的位置により、当該メダルセレクタの受入部と前記メダル投入口との間の長さが変更され」る点で共通する。

以上を総合すると、両者は、
「メダル投入口から投入されるメダルが通過する通路を形成すると共に、メダルの通過を検出する光学式のセンサが配設された、正規のメダルを選別するためのメダルセレクタを備えた遊技台において、
前記メダルセレクタは、当該メダルセレクタの前記遊技台に対する取付位置を上下方向に調整する固定部材を介して前記遊技台に配設され、前記メダルセレクタと前記固定部材の相対的位置により、当該メダルセレクタのメダルの受入部と前記メダル投入口との間の長さが変更される、遊技台。」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
「メダルセレクタ」と「固定部材」との固着手段として、本願補正発明は、「前記メダルセレクタと前記固定部材には、それぞれ互いに係合する係合部が設けられ、前記メダルセレクタ側の前記係合部又は前記固定部材側の前記係合部の少なくともいずれかの前記係合部を上下に離間して複数設け」ているのに対し、引用発明における「メダルセレクタ」と「共通取付部材70」との固着を、「メダルセレクタ40」の「縦長の貫通穴46」から「共通取付部材70」の「取付穴72a」に向けて止着部材を通すことによって行われる点で相違し、この相違点によって、「当該メダルセレクタのメダルの受入部と前記メダル投入口との間の長さ」を本願補正発明では、「互いに係合する前記メダルセレクタ側の前記係合部と前記固定部材側の前記係合部との組合せにより」、「選択的に変更され」るのに対し、引用発明では、「貫通穴46の縦方向の長さの範囲において」、「任意に調整される」点で相違する。
[相違点2]
本願補正発明の「上下に離間して複数設けられる前記係合部間の間隔が、
互いに係合する前記メダルセレクタ側の前記係合部と前記固定部材側の前記係合部とのいずれかの組合せにおいて、前記メダル投入口から前記通路内に進入可能な、または、挿入可能な基材と、該基材の先端部に配され、前記光学式のセンサにメダルの通過を誤検出させる発光素子と、を備えた器具の前記発光素子が、前記光学式のセンサと位置ずれを生じるように設定されている」点について、記載の内容は著しく不明瞭であるが、本願当初明細書及び図面を参酌すると,上記記載の意図は、
係合する係合部同士の組合せを変えることによって、メダル投入口から光学式のセンサまでの距離を変化させ、これによって、不正行為に用いられる、「挿入可能な基材と、該基材の先端部に配され、前記光学式のセンサにメダルの通過を誤検出させる発光素子と、を備えた器具」の発光素子が、メダルセレクタの光学式のセンサと位置ずれを生じさせることで、不正行為に用いる当該器具を使用できないようにすること、を説明したものと認められる。 すなわち、本願補正発明では、本願補正発明の「メダル投入口から光学式のセンサまでの距離を変化させ」る目的が、不正を行うのに用いられる当該器具を使用できないようにすることである。これに対し、引用発明では、メダル投入部31から光センサまでの距離を変化させる目的が、メダル投入部材30とメダルセレクタ40の相対位置にズレが生じ難くく、メダル投入部材30の投入口36からメダルセレクタ40の検出スイッチ42までの距離をどの遊技機に対しても常に一定とさせるものであるから、本願補正発明と引用発明とは、「メダル投入口から光学式のセンサまでの距離を変化させ」る目的が、相反する点で相違する。

(3)相違点の検討及び判断
[相違点1について]
2つの部材を固定するために、部材同士に、それぞれ互いに係合する係合部を設け、一方の部材の係合部を上下に離間して複数設け、互いに係合する部材同士の係合部の組み合せにより、部材同士の係合位置を選択的に変更可能とする技術は、特開平6?142307号公報(特に、段落【0023】、図5参照)、実願昭58-101096号(実開昭60-10688号)のマイクロフィルム(特に第2図参照)に記載されているように周知の技術(以下「周知技術」という。)であって、引用発明の「メダルセレクタ40」を「共通取付部材70」に取り付ける構成に上記周知技術を適用し、「メダルセレクタ40」と「共通取付部材70」との係合位置を上下方向に対して選択的に変更可能とすることで、「メダルセレクタ40」のメダル受入部とメダル投入口との間の長さを選択的に変更される構成にすることは、当業者にとって格別な困難性はない。
[相違点2について]
引用文献1には、「メダル投入部材30とメダルセレクタ40の相対位置にズレが生じ難くなる。・・・また、例えば、メダル投入部31から不正な行為を目的とした不正部材が挿入されても、その不正部材が上記ズレから当該遊技機内に侵入するのを防止できる。」(段落【0031】)との記載があり、この記載の「ズレ」によって、メダル投入口から光学式のセンサまでの距離が変化するものであり、この記載から、本願補正発明の、不正行為に用いられる器具を使用できないようにする点で、本願補正発明と一部共通する目的が記載されているものと認められるものの、当該器具を使用できないようにするための具体策として、本願補正発明では、当該器具の発光素子が、メダルセレクタの光学式のセンサと位置ずれを生じさせるのに対し、引用文献1の上記記載のものは、不正部材を当該遊技機内に侵入するのを防止する点で文言上相違する。しかしながら、仮に、本願補正発明の当該「器具」が、引用発明における「メダル投入部材30とメダルセレクタ40の相対位置にズレ」がない状態で、引用発明の「パチスロ遊技機100」に対して設計された場合では、「メダル投入部材30とメダルセレクタ40の相対位置にズレ」が生じた「パチスロ遊技機100」に対しては、引用文献1の記載のとおり、「上記ズレから当該遊技機内に侵入するのを防止できる」か、もしくは、当該器具の基材が、可撓性などの部材で構成されて、遊技機内に侵入できた場合においては、上記ズレによって、引用発明の「光センサ」と、上記器具の発光素子とが位置ずれを生じることは、当業者であれば自明な事項である。
よって、引用発明の「パチスロ遊技機100」に上記「ズレ」を設けた場合に、引用発明においても本願補正発明の相違点2における、不正行為に用いる器具の発光素子が、メダルセレクタの光学式のセンサと位置ずれを生じさせる作用を有することは、当業者にとって自明なものであるから、引用発明に本願補正発明の上記相違点1における周知技術としての「係合部」を適用して、引用発明における「メダルセレクタ40」と「共通取付部材70」との上下方向の間に設計上のズレが生じるような、互いに係合するメダルセレクタ40側の係合部と共通取付部材70側の係合部との組合せにより、本願補正発明の相違点2の上記作用を生じることは、当業者にとって容易になし得ることである。

さらに、本願補正発明の作用効果も、引用発明、周知技術に基づき、当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第三.本願発明について
1.本願発明
平成20年4月4日付の手続補正書は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年7月25日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される。以下のとおりのものである。
「メダル投入口から投入されるメダルが通過する通路を形成すると共に、メダルの通過を検出する検出手段が配設された、正規のメダルを選別するためのメダルセレクタを備えた遊技台において、
前記メダルセレクタは、当該メダルセレクタの前記遊技台に対する取付位置を調整する固定部材を介して前記遊技台に配設され、
前記メダルセレクタと前記固定部材には、それぞれ互いに係合する係合部が設けられ、
前記メダルセレクタ側の前記係合部又は前記固定部材側の前記係合部の少なくともいずれかの前記係合部は、当該メダルセレクタのメダルの受入部と前記メダル投入口との間の長さが選択的に変更されるように、複数設けられていることを特徴とする遊技台。」

2.特許法第29条第2項の検討
(1)引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及び記載事項は、前記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。

(2)引用発明と本願発明との対比
本願発明の「前記メダルセレクタ側の前記係合部又は前記固定部材側の前記係合部の少なくともいずれかの前記係合部は、当該メダルセレクタのメダルの受入部と前記メダル投入口との間の長さが選択的に変更されるように、複数設けられていること」は、本願補正発明の「前記メダルセレクタ側の前記係合部又は前記固定部材側の前記係合部の少なくともいずれかの前記係合部を上下に離間して複数設け、互いに係合する前記メダルセレクタ側の前記係合部と前記固定部材側の前記係合部との組合せにより、当該メダルセレクタのメダルの受入部と前記メダル投入口との間の長さが選択的に変更され」を上位概念化し、さらに、本願発明は、本願補正発明の「上下に離間して複数設けられる前記係合部間の間隔が、
互いに係合する前記メダルセレクタ側の前記係合部と前記固定部材側の前記係合部とのいずれかの組合せにおいて、前記メダル投入口から前記通路内に進入可能な、または、挿入可能な基材と、該基材の先端部に配され、前記光学式のセンサにメダルの通過を誤検出させる発光素子と、を備えた器具の前記発光素子が、前記光学式のセンサと位置ずれを生じるように設定されていること」を削除するものである。
そうすると、本願補正発明が、前記「第二.3.(3)」に記載したとおり、引用発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3.むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-28 
結審通知日 2009-08-31 
審決日 2009-09-28 
出願番号 特願2004-111009(P2004-111009)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中澤 真吾  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 井上 昌宏
森 雅之
発明の名称 遊技台  
代理人 大塚 康弘  
代理人 大塚 康徳  
代理人 高柳 司郎  
代理人 木村 秀二  

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