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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1207981
審判番号 不服2007-17443  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-21 
確定日 2009-12-04 
事件の表示 特願2001-370996「送風装置および空気調和機用室外機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月11日出願公開、特開2002-257381〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、平成13年12月5日(国内優先権主張、平成12年12月28日)の特許出願であって、原審において平成19年1月10日付けで拒絶理由通知がなされ、平成19年3月16日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成19年5月14日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同月22日)、これに対し、平成19年6月21日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成19年7月23日付けで手続補正がなされたものである。



第2.補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年7月23日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の請求項1に係る発明
補正後の請求項1に係る発明は、上記平成19年7月23日付けの手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 回転中心となるハブ(14)、(14′)の外周面に、複数の羽根(13),(13)・、(13′),(13′)・を形成したプロペラファン(4)、(4′)と、該プロペラファン(4)、(4′)の外周側に位置して吸込領域(X)と吹出領域(Y)とを仕切るベルマウス(5)と、前記プロペラファン(4)、(4′)の吹出側に位置するファンガード(6)とを備えた送風装置であって、前記各羽根(13)、(13′)のハブ(14)、(14′)側から翼端(P)にいたる半径方向の断面形状がそれぞれ吸込側に凸な形状とされ、かつ前記プロペラファン(4)、(4′)の回転中心を通る任意の半径方向断面において、前記羽根(13),(13′)の翼端(P)側外周部がそれぞれ吹出側に曲成傾斜せしめられていることを特徴とする送風装置。」


2.補正の目的
上記補正のうち、請求項1に関するものは、補正前の請求項1に記載されていた「半径方向」を「ハブ(14)、(14′)側から翼端(P)にいたる半径方向」と限定し、また、「傾斜せしめられている」を「曲成傾斜せしめられている」と限定するものであって、この補正は平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願の補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。


3.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物
特開昭62-282198号公報(以下「引用刊行物」という。)


4.引用刊行物に記載された発明
《記載事項》
引用刊行物には、図面と共に次のa.?k.の記載がある。
a.「特許請求の範囲
(1)羽根の半径方向の断面形状が吸込み側に凸の形状を有し、かつその断面の極大点を連ねた曲線の始点が上記羽根のボス部に、上記曲線の終点が上記羽根の翼端部にある羽根を備えたことを特徴とする軸流ファン。」(第1頁左下欄4?9行)(なお、下線は当審が付した。以下、同じ。)

b.「〔産業上の利用分野〕
この発明は空気調和機等に使用される軸流ファン、特にその低騒音化に関するものである。」(第1頁右下欄1?3行)

c.「〔従来の技術〕
第7図は特開昭・・・・・・・号公報に示された従来の軸流ファンの平面図、第8図はそのX-X断面図、第9図はY-Y断面図である。図において、(1)は軸流ファンの羽根、(1a)は羽根(1)の圧力面、(1b)は羽根(1)の負圧面、(2)は半径方向断面における極大、極小点、(3)は極大、極小点(2)を連ねた曲線、(4)は羽根(1)の外周部に形成される翼端部、(5)は羽根(1)の中心部に接続するボス、(6)は軸流ファンの回転軸、(7)は風の吸込み流れ、(7a)は外側からの風の流れ、(8)は圧力面(1a)から負圧面(1b)への風の漏れ流れである。
上記のように構成された軸流ファンにおいては、ボス(5)に取付けられた羽根(1)が矢印Zの方向に回転することにより、風の吸込み流れ(7)が発生する。このとき第8図に示す羽根(1)の前縁部(lc)に近いX-X断面では、吸込み側(9)に凸の形状をしているものの、羽根(1)の翼端部(4)が吸出し側(10)に大きく傾斜しているため、羽根(1)の負圧面(1b)上に発達する境界層は遠心力により厚くなって羽根面上で不安定化し、速度の乱れが増加する。そして前縁部(1c)付近では風の吸込み流れ(7)も外側から流入する風の流れ(7a)の量が多く、第8図のような羽根断面では羽根(1)の翼端部(4)の部分で流れが剥離し、騒音が増加する。
また第9図に示す後縁部(1d)に近いY-Y断面では、反対に吹出し側(10)に凸の形成になっているので、静圧がかかった時圧力面(1a)から負圧面(1b)への風の漏れ流れ(8)が増大し易い。そのため、静圧が多少でも増加すると翼端部(4)では急激に仕事をしなくなり、ついには吹出し側(10)から吸込み側(9)に流れが逆流する現象に陥り易く、騒音が急激に増大する性質を持つ。
これらの原因は極大、極小点(2)を連ねた曲線(3)が前縁部(1c)から始まり、後縁部(1d)で終っており、羽根(1)の翼端部(4)を通過していないからであると推定される。」(第1頁右下欄4行?第2頁左上欄最終行)

d.「〔発明が解決しようとする問題点〕
以上のように従来の軸流ファンは、羽根(1)の前縁部(1c)では境界層が発達し易いため乱流に遷移し易く、翼端部(4)では流れが剥離し易いため、騒音レベルが高く、また後縁部(1d)では静圧の上昇に伴い翼端失速になり易くて、高負荷に耐えることができず、騒音が急激に増大するなどの問題点があった。
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、軸流ファンから発生する騒音を低減させるとともに高静圧まで翼端失速を起こさず、かつ低騒音の有効動作領域が広い軸流ファンを得ることを目的とする。」(第2頁右上欄1?13行)

e.「〔発明の実施例〕
以下、この発明の一実施例を図について説明する。第1図はこの発明の一実施例による軸流ファンの平面図、第2図はその羽根の半径方向のA?V断面を重ね合わせた断面図であり、図において、第7図ないし第9図と同一符号は同一または相当部分を示す。(11)は羽根(1)の吸込み側(9)に凸の形状となる半径方向断面の極大点、(12)は半径方向断面の極大点を連ねた曲線、(12a)は第2図において各断面の極大点(11)を連ねた曲線、αは曲線(12a)の回転軸(6)に対する平均的な角度、θsは翼長が最大となる半径位置における翼長の軸に対する角度、θtは羽根(1)間の軸に対するピッチ角度である。
羽根(1)は任意の半径方向の断面形状が吸込み側(9)に凸の形状を有し、かつその断面の極大点(11)を連ねた曲線(12)の始点がボス(5)部に、終点が翼端部(4)にある形状を有している。」(第2頁左下欄10行?右下欄7行)

f.「上記のように構成された軸流ファンにおいては、羽根(1)は半径方向の断面形状が吸込み側(9)に凸の形状であり、羽根(1)の翼端部(4)から、ボス(5)部まですべての半径の所で半径方向断面に極大点(11)が存在しているので、羽根(1)は曲線(12)を境に、羽根面が吸込み側(9)に傾斜している部分(1e)と、逆に吹出し側(10)に傾斜している部分(1f)とに分けられる。羽根面が吸込み側(9)に傾斜している部分(1e)は、羽根(1)の前線部(1c)から羽根(1)のほぼ中央部まで存在している。一般に薄板構造の羽根(1)の場合、羽根の前縁部(1c)で流れは層流から乱流に遷移し易い。そこで、前縁部(1c)付近の羽根面に吸込み側(9)の方向への傾斜を与えることにより、遠心力の作用で境界層を圧縮して、境界層の層流から乱流への遷移を遅らせることができ、羽根面上の流れの乱れを抑制することができる。
しかし、羽根(1)の全体が吸込み側(9)に傾斜していると、静圧の上昇に伴い急激に騒音が増大する。すなわち、羽根(1)の吹出し側(10)の圧力は高く、吸込み側(9)は圧力が低いという羽根(1)の2面性により、圧力面(1a)と負圧面(1b)とが非常に近い距離で存在する羽根(1)では、翼端部(4)において、圧力面(1a)から負圧面(1b)へと漏れ流れ(8)が発生する。この漏れ流れ(8)により、羽根(1)の翼端部(4)は空気に対して仕事をしなくなり、ついには吹出し側(10)から吸込み側(9)に逆流が発生し急激に騒音が増大する。羽根面が吸込み側(9)へ傾斜すればするぼど、圧力面(1a)から負圧面(1b)への漏れ流れ(8)が発生し易く、静圧上昇に伴い騒音が急激に増加しやすい。
そこで本発明では、圧力面(1a)から負圧面(1b)への漏れが多くなる羽根の中央部から後縁部(1d)にかけては、羽根面が吹出し側(10)に傾斜している部分(1f)によって羽根(1)を構成している。特に羽根(1)の後縁部(1d)に近い翼端部(4)では吹出し側(10)への傾斜角が大きく、圧力面(1a)から負圧面(1b)への漏れ流れ(8)が発生し難くなっている。その結果、多少静圧が上昇しても騒音は急激に増大しない。」(第2頁右下欄8行?第3頁右上欄7行)

g.「第3図に極大点(11)を連ねた曲線(12)の始点がボス(5)部で、終点となる翼端部(4)の位置が前縁から1/15弦長の所に位置する羽根I、前縁から1/3弦長の所に位置する羽根II、前縁から14/15弦長の所に位置する羽根IIIについて、最小比騒音レベルKsの値を示す。第3図より、極大点(11)を連ねた曲線(12)によって羽根面が2分割され、しかも始点がボス(5)部、終点が翼端部(4)になるようにすれば、従来の軸流ファンと比べ充分比騒音レベルが低い軸流ファンを得ることができることがわかる。」(第3頁右上欄8?18行)

h.「次に第2図の各方位角方向の半径方向断面を重ね合わせた断面図において、極大点(11)を連ねた曲線(12a)の回転軸(6)に対する平均的な角度αは、上記実施例では57°であるが、この曲線(12a)を直線で近似し、平均的な角度αの違いによる空力騒音特性の影響を調べた結果が第4図に示されている。第4図より、αが57°のとき最も比騒音レベルが低下するが、比騒音レベルの増加分を、聴感的に許容できる音響エネルギが2倍になる3dBまで容認すれば、αの範囲を47?65°としても充分比騒音レベルが低い軸流ファンを得ることができる。
なお、第2図では羽根(1)の断面形状を線分で表現しているが、実際の羽根(1)の断面形状はこの線分を中心線として、上下方向に厚みをもった形状になる。」(第3頁右上欄19行?左下欄14行)

i.「次に軸流ファンに静圧を印加すると、前述のように、翼端部(4)において圧力面(1a)から負圧面(1b)への漏れ流れ(8)が発生するが、この流れは第5図に示すように翼端部(4)で剥離し、翼端渦(13)となって翼間から吐出側へ流れ去る。この翼端渦(13)は羽根と羽根の間に存在するため、静圧が増加すると増々発達し、実質的な羽根(1)間の流路幅(14)をより狭くする。このため隣接する羽根(1)の翼端部(4)近くの流れは実質的に羽根(1)に対する迎え角が増加したことになる。その結果羽根(1)の圧力面(1a)と負圧面(1b)の圧力差が更に増大し、翼端渦(13)より増強することになる。このような連鎖反応により羽根(1)は翼端失速に陥り、騒音が急激に増大する。」(第3頁左下欄15行?右下欄8行)

j.「〔発明の効果〕
以上のように、この発明によれば、羽根の半径方向の断面形状を吸込み側に凸の形状とし、その断面の極大点を連ねた曲線の始点を羽根のボス部に、曲線の終点を羽根の翼端部にしたため、騒音が低く、しかも静圧がかかった状態においても騒音が増加し難いという効果がある。また羽根断面が吸込み側に凸の形状をしているため、羽根の曲げ強度が増加し、その分だけ羽根厚みを薄くでき、コストを低減できる効果がある。
さらに従来の平板構造の羽根と異なり、羽根断面が吸込み側に凸の形状になっているので、羽根のプレス成形時において、スプリング・バックが大幅に減少し、成形精度の高い羽根を短時間で成形することが可能になるなどの効果がある。」(第4頁左上欄11行?右上欄5行)

k.第1図および第2図には、3枚の羽根(1)がボス(5)の外周に設けられ、軸流ファンの回転軸(6)がボス(5)の中心部に設けられている様子が図示されており、また第1図には、半径方向断面の極大点(11)を連ねた曲線(12)と、翼端部(4)および後縁部(1d)との間に、羽根面が吹出し側(10)に傾斜している部分(1f)が設けられていることが図示されている。

《発明の認定》
したがって、引用刊行物には、
「薄板構造の3枚の羽根(1)がそれらの中心部となるボス(5)の外周に取付けられ、ボス(5)の中心部に設けられている回転軸(6)を中心として回転する空気調和機等に使用される軸流ファンであって、
前記羽根(1)の任意の半径方向の断面形状が吸込み側(9)に凸の形状を有し、かつ半径方向の断面の極大点(11)を連ねた曲線(12)の始点が上記羽根(1)の上記ボス(5)部にあり、上記曲線(12)の終点が上記羽根(1)の翼端部(4)にあり、上記曲線(12)と、上記翼端部(4)および後縁部(1d)との間に、羽根面が吹出し側(10)に傾斜している部分(1f)が設けられている羽根(1)を備えた軸流ファン。」
なる発明が記載されている。


5.対比
本願補正発明と、引用刊行物に記載された発明とを対比する。
《用語の対応》
引用刊行物に記載された発明の、「羽根(1)」は本願補正発明の「羽根(13),(13)・、(13′),(13′)・」に相当し、以下同様に
「ボス(5)」は「ハブ(14)、(14′)」に、
「軸流ファン」は「プロペラファン(4)、(4′)」に、
「吸込み側(9)」は「吸込側」に、
「翼端部(4)」は「翼端(P)」に、
「吹出し側(10)」は「吹出側」に、
それぞれ相当する。

《吸込側に凸な形状とされ、について》
本願補正発明では「各羽根(13)、(13′)のハブ(14)、(14′)側から翼端(P)にいたる半径方向の断面形状がそれぞれ吸込側に凸な形状とされ、」となっている。これに対し、引用刊行物に記載された発明では、「羽根(1)の任意の半径方向の断面形状が吸込み側(9)に凸の形状を有し、」ている。
このように、引用刊行物に記載された発明では、ボス(5)側から翼端部(4)にいたる半径方向の断面形状において凸となっていると明記されてはいない。しかし、同発明では、任意の半径方向の断面形状において凸なのだから、この任意のものには、引用刊行物第2図に示される半径方向のA?O断面のようなボス(5)側から翼端部(4)にいたるものも含まれるのは明らかである。
したがって、引用刊行物に記載された発明では、ボス(5)側から翼端部(4)にいたる半径方向の断面形状において凸となっている。

《吹出側に曲成傾斜せしめられ、について》
本願補正発明では「プロペラファンの回転中心を通る任意の半径方向断面において、前記羽根の翼端側外周部がそれぞれ吹出側に曲成傾斜せしめられている」とされている。これに対し、引用刊行物に記載された発明では「半径方向の断面の極大点(11)を連ねた曲線(12)の始点が上記羽根(1)の上記ボス(5)部にあり、上記曲線(12)の終点が上記羽根(1)の翼端部(4)にあり、上記曲線(12)と、上記翼端部(4)および後縁部(1d)との間に、羽根面が吹出し側(10)に傾斜している部分(1f)が設けられている」とされている。
このように、引用刊行物に記載された発明では、回転中心を通る任意の半径方向断面において、・・・外周部がそれぞれ吹出側に曲成傾斜せしめられと明記されてはいない。しかし、引用刊行物の上記引用箇所4.g.および第1,3図には、極大点(11)を連ねた曲線(12)の終点となる翼端部(4)の位置が前縁から1/3弦長の所(第1図に示されたE断面の位置)に位置する羽根IIにおいて最小の比騒音レベルKsの値を示すが、このベストモードの位置に限らず、始点がボス(5)部、終点が翼端部(4)になるようにすれば、従来の軸流ファンと比べ充分比騒音レベルが低い軸流ファンを得ることができる旨の記載がある。
そうすると、引用刊行物に記載された発明における「曲線(12)の終点が上記羽根(1)の翼端部(4)にあり・・・」とは、この終点が翼端部(4)のあらゆる場所に位置することが可能である・・・との意味である。そこで、曲線(12)の終点が翼端部(4)の前縁近辺にある場合について検討する。
この、終点が翼端部(4)の前縁近辺にある場合とは、同刊行物の第1図において、曲線(12)の終点が翼端部(4)のE断面付近からA断面付近に移動するということであり、この移動により同図の「羽根面が吹出し側(10)に傾斜している部分(1f)」の領域は拡大し、羽根(1)を通るすべての半径方向断面において前記傾斜している部分(1f)が存在するようになる。
しかも、「曲成」については、引用刊行物の上記引用箇所4.h.後半に「第2図では羽根(1)の断面形状を線分で表現している・・・」と記載されており、薄板構造の羽根(1)を第2図のような凸の断面形状とすれば、「曲成」形状となるのは自明である。
したがって、引用刊行物に記載された発明において、回転中心を通る任意の半径方向断面において、前記羽根(1)の翼端部(4)側外周部がそれぞれ吹出し側(10)に曲成傾斜せしめられていることは明らかである。

《一致点》
したがって、本願補正発明と、引用刊行物に記載された発明とは、
「回転中心となるハブの外周面に、複数の羽根を形成したプロペラファンであって、前記各羽根のハブ側から翼端にいたる半径方向の断面形状がそれぞれ吸込側に凸な形状とされ、かつ前記プロペラファンの回転中心を通る任意の半径方向断面において、前記羽根の翼端側外周部がそれぞれ吹出側に曲成傾斜せしめられていることを特徴とするプロペラファン。」
で一致する。

《相違点》
そして、両発明は下記の点で相違する。
本願補正発明は、回転中心となるハブ(14)、(14′)の外周面に、複数の羽根(13),(13)・、(13′),(13′)・を形成したプロペラファン(4)、(4′)と、該プロペラファン(4)、(4′)の外周側に位置して吸込領域(X)と吹出領域(Y)とを仕切るベルマウス(5)と、前記プロペラファン(4)、(4′)の吹出側に位置するファンガード(6)とを備えた送風装置であり、この送風装置に上記一致点に記載された断面形状の羽根(13),(13′)が設けられているのに対し、引用刊行物に記載された発明では、プロペラファン(軸流ファン)以外の構成を有しておらず、上記の構成からなる送風装置ではない点。


6.判断
《相違点についての検討》
空気調和機の技術分野において、プロペラファンの外周側に位置して吸込領域と吹出領域とを仕切るベルマウスと、プロペラファンの吹出側に位置するファンガードとを備えた送風装置は周知の技術である。(周知文献が必要であれば、例えば、
*特開平10-68537号公報(図12?図15、段落【0004】前
半、段落【0006】、図1?図3、段落【0017】)
*特開平6-331177号公報(段落【0004】、【0007】)
*特開平5-106871号公報(段落【0003】)
等を参照。)
したがって、引用刊行物に記載された発明に、周知技術を組み合わせ、上記相違点における本願補正発明の構成に到達することは当業者により容易に想到された事項である。

《発明の効果についての検討》
引用刊行物の上記引用箇所4.f.末尾には、翼端部(4)の吹出し側(10)への傾斜角を大きくすることにより、漏れ流れ(8)が発生し難くなって、騒音が抑制される旨が、また、上記引用箇所4.i.前半には、漏れ流れ(8)が発生すると第5図に示すような翼端渦(13)となって吐出側へ流れ去る旨がそれぞれ記載されている。
そして、上記のように周知の技術であるファンガードと、この翼端渦(13)とが衝突して騒音の原因となると推測することに格別の困難性は認めない。
したがって、本願補正発明の効果は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術から、当業者により予測されたものである。


7.まとめ
以上のように、本願補正発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本願の補正後の請求項2ないし8に係る発明については検討するまでもなく、上記平成19年7月23日付けの手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。




第3.本願発明についての検討

1.本願発明
平成19年7月23日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成19年3月16日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 回転中心となるハブ(14)、(14′)の外周面に、複数の羽根(13),(13)・、(13′),(13′)・を形成したプロペラファン(4)、(4′)と、該プロペラファン(4)、(4′)の外周側に位置して吸込領域(X)と吹出領域(Y)とを仕切るベルマウス(5)と、前記プロペラファン(4)、(4′)の吹出側に位置するファンガード(6)とを備えた送風装置であって、前記各羽根(13)、(13′)の半径方向の断面形状がそれぞれ吸込側に凸な形状とされ、かつ前記プロペラファン(4)、(4′)の回転中心を通る任意の半径方向断面において前記各羽根(13)、(13′)の翼端(P)側外周部がそれぞれ吹出側に傾斜せしめられていることを特徴とする送風装置。」


2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物
特開昭62-282198号公報(以下「引用刊行物」という。)
この引用刊行物に記載された発明は、上記、第2.4.に記載したとおりである。


3.対比・判断
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)における「半径方向」を「ハブ(14)、(14′)側から翼端(P)にいたる半径方向」と限定し、また、「傾斜せしめられている」を「曲成傾斜せしめられている」と限定したものが、本願補正発明である。
そうすると、本願発明を限定、減縮したものに相当する本願補正発明が、上記第2.5.ないし7.に記載したとおり、上記の引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、上記の引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、上記の引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の請求項2ないし8に係る発明については検討するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-05 
結審通知日 2009-10-06 
審決日 2009-10-22 
出願番号 特願2001-370996(P2001-370996)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24F)
P 1 8・ 575- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 莊司 英史武内 俊之  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 会田 博行
長浜 義憲
発明の名称 送風装置および空気調和機用室外機  
代理人 大浜 博  

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