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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) G08G
管理番号 1208134
判定請求番号 判定2009-600040  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2010-01-29 
種別 判定 
判定請求日 2009-10-05 
確定日 2009-11-25 
事件の表示 上記当事者間の特許第3497025号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びイ号説明書に示す「ナビゲーション装置」は、特許第3497025号の請求項5に係る発明の技術的範囲に属しない。 
理由 1.請求の趣旨
イ号図面及びイ号説明書に示すナビゲーション装置(以下「イ号物件」という。)は、特許第3497025号の請求項5に係る発明(以下「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求める。

2.本件特許発明
本件特許発明は、訂正された明細書及び図面(訂正2006-39165号事件、平成18年11月20日訂正認容審決確定)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項5に記載されたとおりのものであり、その構成を符号を付して分説して記載すると次のとおりである。
「A ナビゲーション装置において、
B GPS受信情報に基づき現在地を特定する現在地特定手段と、
C ユーザの指示する目的地の位置を受け付ける入力手段と、
D 前記現在地の所定範囲内に存在する複数の交通機関の利用開始地点、前記目的地の所定範囲内に存在する複数の交通機関の利用終了地点、および、現在地から目的地までの移動経路および移動時間を検索する経路検索手段と、
E (E-1)前記複数の利用開始地点、前記複数の利用終了地点、前記移動経路とともに、
(E-2)少なくとも前記現在地から利用開始地点まで移動する時間が識別できるように前記移動時間を画面表示し、
(E-3)且つ現時刻において次に乗車できる時刻を表示する表示手段と
F を備えることを特徴とするナビゲーション装置。」

3.イ号物件の特定
判定請求書に添付されたイ号説明書の記載事項及びイ号図面の図示内容を総合すると、イ号物件は次のとおり特定されるものと認めることができる。
「a ナビゲーション装置において、
b GPS受信情報に基づき現在地を特定するGPS受信部と、
c ユーザの指示する目的地の位置を受け付ける入力部と、
d 前記現在地の徒歩圏内にある複数の駅、前記目的地の徒歩圏内にある複数の駅、現在地から目的地までの経路、及び、現在地から目的地までに要する移動時間を検索する経路検索部と、
e (e-1)前記現在地の徒歩圏内にある複数の駅、前記目的地の徒歩圏内にある複数の駅、現在地から目的地までの経路とともに、
(e-2)現在地の出発時刻、前記現在地の徒歩圏内にある駅への到着時刻、及び、前記現在地から目的地までの移動時間を画面表示し、
(e-3)且つ現時刻において検索された、前記現在地の徒歩圏内にある駅で次に乗車できる電車の出発時刻を表示する表示部と
f を備えるナビゲーション装置。」

4.対比・判断
イ号物件の各構成が、本件特許発明の各構成要件を充足するか否かについて以下検討する。

(1)構成要件A及びFについて
イ号物件は、ナビゲーション装置であるから、イ号物件の構成a及びfは、本件特許発明の構成要件A及びFを充足する。

(2)構成要件Bについて
イ号物件の構成bの「GPS受信部」は、本件特許発明の「現在地特定手段」に相当する。
そうすると、イ号物件の「GPS受信情報に基づき現在地を特定するGPS受信部」は、本件特許発明の「GPS受信情報に基づき現在地を特定する現在地特定手段」を充足する。

(3)構成要件Cについて
イ号物件の「入力部」は、本件特許発明の「入力手段」に相当する。
そうすると、イ号物件の「ユーザの指示する目的地の位置を受け付ける入力部」は、本件特許発明の「ユーザの指示する目的地の位置を受け付ける入力手段」を充足する。

(4)構成要件Dについて
本件特許発明の経路検索手段において検索する「移動時間」は、その文言の一般的な意味から、時刻ではなく、移動に要する時の長さと解することが相当である。また、構成要件Eにおける「少なくとも現在地から利用開始地点まで移動する時間が識別できるように前記移動時間を画面表示し」という記載から、「移動時間」は、少なくとも現在地から利用開始地点までの移動に要する時間を含むものと解すべきである。
一方、イ号物件の経路検索部において検索する「移動時間」は、「現在地から目的地までに要する移動時間」のみである。
そうすると、少なくとも、本件特許発明の経路検索手段で検索される「移動時間」と、イ号物件の経路検索部で検索される「現在地から目的地までに要する移動時間」とは、その内容に相違があるというべきである。
したがって、イ号物件の「前記現在地の徒歩圏内にある複数の駅、前記目的地の徒歩圏内にある複数の駅、現在地から目的地までの経路、及び、現在地から目的地までに要する移動時間を検索する経路検索部」は、本件特許発明の「現在地の所定範囲内に存在する複数の交通機関の利用開始地点、目的地の所定範囲内に存在する複数の交通機関の利用終了地点、および、現在地から目的地までの移動経路および移動時間を検索する経路検索手段」を充足するとはいえない。

(5)構成要件Eについて
本件特許発明の表示手段において「少なくとも現在地から利用開始地点まで移動する時間が識別できるように前記移動時間を画面表示」する態様の「移動時間」は、上記(4)のとおり、時刻ではなく、移動に要する時の長さと解することが相当である。
そして、この構成において「前記」が何を示すのか必ずしも明りょうとはいえないが、訂正された特許明細書の「【0004】……そのため,旅行者は,現在地から目的地までの経路,運賃,時間等は地図,時刻表,運賃表をもとに経路を求め,所要時間,運賃を計算するしか方法がなかった。【0005】本発明は,GPS装置を利用して,旅行者が現在地から次の目的地までの経路を自動的に求め,所要時間,運賃等を自動的に演算して表示する携帯型ナビゲーション装置を提供することを目的とする。」、「【0011】7は経路情報作成部であって,現在地から目的地までの経路を求め,所要時間,運賃等を計算するものである。8は表示部であって,地図,経路,所要時間,運賃等を表示するものである。」、「【0013】21は移動時間計算部であって,交通機関情報保持部5の保持する時刻表等をもとに,求められた経路により目的地に至るまでの所要時間を計算するものである。」、及び、図2の表示画面の例の「○駅まで ○○分、○→(当審注:図面では白抜きの矢印)△ ○○分」等の記載を参酌すれば、「前記移動時間」は、現在地から利用開始地点までの移動に要する所要時間であって、出発時刻や到着時刻とは異なる情報が含まれているというべきである。
一方、イ号物件の表示部は、「現在地の出発時刻及び前記現在地の徒歩圏内にある駅への到着時刻、および、現在地から目的地までに要する移動時間」を画面表示するものである。
そうすると、イ号物件の表示部で表示する「現在地の出発時刻及び前記現在地の徒歩圏内にある駅への到着時刻」は、上記のとおり、その情報の内容が、本件特許発明の「移動時間」と明らかに相違し、また、同じくイ号物件の表示部で表示する「現在地から目的地までに要する移動時間」は、「移動時間」ではあるものの、本件特許発明の「移動時間」が有する「少なくとも現在地から利用開始地点まで移動する時間が識別できるように」という機能を有するものとはいえないから、少なくとも、イ号物件の表示部において「現在地の出発時刻及び前記現在地の徒歩圏内にある駅への到着時刻、および、現在地から目的地までに要する移動時間を表示」する態様と、本件特許発明の表示手段において「少なくとも現在地から利用開始地点まで移動する時間が識別できるように移動時間を表示」する態様とは、相違するというべきである。
したがって、イ号物件の「(e-1)前記現在地の徒歩圏内にある複数の駅、前記目的地の徒歩圏内にある複数の駅、現在地から目的地までの経路とともに、
(e-2)現在地の出発時刻、前記現在地の徒歩圏内にある駅への到着時刻、及び、前記現在地から目的地までの移動時間を画面表示し、
(e-3)且つ現時刻において検索された、前記現在地の徒歩圏内にある駅で次に乗車できる電車の出発時刻を表示する表示部」のうち、(e-1)が本件特許発明の「複数の利用開始地点、複数の利用終了地点、移動経路」を充足し、(e-3)が本件特許発明の「現時刻において次に乗車できる時刻を表示する表示手段」を充足するものであっても、(e-2)が、本件特許発明の「少なくとも現在地から利用開始地点まで移動する時間が識別できるように移動時間を画面表示し」を充足するとはいえない。

なお、請求人が判定請求書の(6.2)で述べるように、イ号装置は移動時間を間接的に表示しているということはできるが、あくまでも間接的なものであって、本件特許発明のように移動時間を画面表示しているものではないことは上記のとおりである。
また、判定請求書の(5.5)で、移動時間を直接的に表示しても間接的に表示しても作用効果上の実質的な差異はない旨主張しているが、本件特許発明の直接的な時間の表示は,直感的に駅まで(徒歩で)何分かかるのかを知ることができるのに対し、イ号物件の間接的な時刻の表示は現在地をいつ出発すればよいのかを知ることができる(イ号物件では現在地出発時刻を異ならせて表示している。)という容易に考え得る効果の相違があり、効果に実質的な差異がないとまでいうことはできない。
さらに、本件特許発明は、特許明細書の【0004】及び【0005】(上記抜粋参照)の記載によれば、次の目的地までの所要時間を、時刻表をもとに計算することなく、「自動的に演算して表示する」ことがその課題の一つであり、所要時間の表示が主要部であるといえるので、現在地から利用開始地点までの「移動時間」に関し、旅行者が時刻表をもとに計算することができるだけであるイ号物件は、本件特許発明の構成要件Eにおける「少なくとも現在地から利用開始地点まで移動する時間が識別できるように前記移動時間を画面表示」するという(E-2)の構成を均等論により充足するものということはできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2009-11-12 
出願番号 特願平7-258555
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (G08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 芳枝  
特許庁審判長 田良島 潔
特許庁審判官 神山 茂樹
大河原 裕
登録日 2003-11-28 
登録番号 特許第3497025号(P3497025)
発明の名称 ナビゲーション表示方法,および,装置  
代理人 山本 雅久  
代理人 真田 有  

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