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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) G10H
管理番号 1208136
判定請求番号 判定2009-600035  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2010-01-29 
種別 判定 
判定請求日 2009-09-09 
確定日 2009-12-16 
事件の表示 上記当事者間の特許第3794805号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面並びにその説明書に示すゲーム機「Wii」およびソフト「WiiMusic」の組み合わせは、特許第3794805号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定請求人である廣瀬峰太郎は、判定請求書のイ号図面並びにその説明書に示すゲーム機「Wii」およびソフト「WiiMusic」の組み合わせ(以下、「イ号物件」という。)が、特許第3794805号発明の技術的範囲に属するとの判定を求めるものである。

第2 本件特許発明
本件特許第3794805号の発明(以下、「本件特許発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、これを構成要件に分説すると次のとおりである。

(A)音楽演奏情報に従って音源を制御し、音源から発生する音響信号を用いて音楽を演奏する音楽演奏装置において、
(B)予め作成される音楽演奏情報を記憶する記憶手段と、
(C)音の強弱が連続的に変化する部分を含む信号をリアルタイムに入力可能な入力手段と、
(D)入力手段に入力される信号の音の強弱が連続的に変化する部分からリズム情報を検出し、検出されるリズム情報に基づいて、記憶手段に記憶されている音楽演奏情報をリアルタイムで読出し、記憶されている音楽演奏情報中でリズム情報に対応する音の強弱の時間変化を修正し、修正された音楽演奏情報に従って音源を制御して音楽演奏を行う演奏手段とを含むことを特徴とする音楽演奏装置。

第3 イ号物件の構成
請求人が提出した判定請求書中の「本件特許発明と、イ号との技術的対比」には、イ号物件は次の構成を備えている旨、記載されている。

a)ゲーム装置、コントローラおよびヌンチャクを含み、光ディスクに記録されている音楽演奏情報に基づき、音楽を演奏することが可能なゲームシステム
b)音楽演奏情報が予め作成されて記憶されている光ディスク
c)音楽の演奏情報を入力するコントローラおよびヌンチャク
d)コントローラおよびヌンチャクへの操作に従って、音楽を演奏するゲーム装置

ここで、本件特許発明の「入力手段」は、演奏のための信号を発する手段ではなく、「音楽演奏装置」本体の構成の一部であって信号が入力される手段であるから、そのような本件特許発明の構成に照らせば、上記構成c)については、「コントローラおよびヌンチャク」という“操作手段”と認定するよりも、信号が入力される「入力手段」として認定することが適当である。

なお、請求人は、被請求人による特許出願の公開公報である甲第2号証及び甲第3号証を用いてイ号物件の説明を行っているが、甲第2号証及び甲第3号証はイ号物件を直接に説明する証拠ではなく、また、甲第2号証及び甲第3号証に記載の事項がイ号物件に採用されているものとする証明もなされていないので、イ号物件の特定のために甲第2号証及び甲第3号証を用いることはできない。

被請求人は、答弁書の中で、判定請求書においてイ号の構成が十分に立証・特定されておらず、特許発明と対比すべきイ号の構成が著しく不明確である旨、主張している。

しかし、イ号物件の構成が詳細においては不明であるとしても、イ号物件は、以下の構成に示す範囲において、判定請求書のイ号図面並びにその説明書によって特定できるものであるから、当審は、イ号物件を以下の構成を備えるものと認定して、本件特許発明の構成要件を充足するか否かを判断する。

(a)ゲーム装置、コントローラおよびヌンチャクを含み、光ディスクに記録されている音楽演奏情報に基づき、音楽を演奏することが可能なゲームシステム
(b)音楽演奏情報が予め作成されて記憶されている光ディスク
(c)コントローラおよびヌンチャクにより音楽の演奏情報を入力する入力手段
(d)コントローラおよびヌンチャクへの操作に従って、音楽を演奏するゲーム装置

第4 対比・判断
(1)構成要件(C)の充足性について
イ号物件における、入力手段に入力されるコントローラおよびヌンチャクによる演奏情報が、本件特許発明の構成要件(C)中の「音の強弱が連続的に変化する部分を含む信号」であるか否かについて、検討する。

イ号物件における構成c)に関して、被請求人は、答弁書の中で、音楽の演奏情報を入力するコントローラおよびヌンチャクについて、乙第1号証に記載されているように、「コントローラは、モーションセンサ(加速度センサ)を備え(乙第1号証の1頁「操作部」の欄参照)、加速度センサの検出結果として、コントローラに加えられる加速度を出力する。」、「ヌンチャクは、コントローラと同様のモーションセンサ(加速度センサ)を備え(乙第1号証の2頁「ヌンチャク」の「操作部」の欄参照)、ヌンチャクに加えられる加速度をコントローラへ出力する。コントローラは、ヌンチャクから出力された加速度の情報を出力する。」と説明し、さらに、コントローラのポインティング情報やボタンの押下状態を示すボタン情報が出力されること、ヌンチャクのボタンの押下状態を示すボタン情報やヌンチャクのコントロールスティックの傾倒状態の情報を出力することを説明している。

請求人も、イ号物件のコントローラには加速度センサが内蔵され、音楽演奏操作が加速度の変化に対応する電気信号として出力されるものと認識しており、イ号のコントローラが加速度センサで検出する加速度をゲーム装置に入力していることについては、請求人と被請求人とに認識の相違はない。

そのような加速度を表す信号が、結果としてゲーム装置において音楽演奏に用いられることになるとしても、「加速度」を表す信号が「音の強弱を連続的に変化する部分を含む信号」であるとすることはできない。
すなわち、「加速度」を表す信号は、コントローラおよびヌンチャクが動かされた際の該コントローラおよびヌンチャクに加わる加速度を表すものであり、ゲーム装置のソフトウエア次第で多様な用い方がなされるものであって、「加速度」を表す信号それ自体は何ら「音」との関連がない信号である。
それゆえ、「加速度」を表す信号がゲーム装置の入力手段に入力され、該入力された「加速度」を表す信号に基づいて音楽演奏がなされるとしても、ゲーム装置の入力手段に入力される「加速度」を表す信号が「音の強弱を連続的に変化する部分を含む信号」であるとすることはできない。

したがって、イ号物件の構成(c)は、本件特許発明の構成要件(C)を充足しない。

なお、この点に関して、請求人は、「(C)の入力手段は、「音の強弱が連続的に変化する部分を含む信号をリアルタイムに入力可能」なものであるけれども、入力信号が実際に音を発生するとは限らない。たとえば、甲第1号証の図4には、実施の第1形態として、電気楽器9を入力手段としている例が示されているけれども、電気楽器9自体から音を出すことはない。電気楽器9の演奏操作は、リズム情報をリアルタイムに抽出して、その結果に応じて音源を制御し、音楽を演奏するために行う。電気楽器9自体から音が出てしまうと、演奏する音楽と音程などが合わず、音楽の演奏に支障を生じてしまう。」と主張している。
しかし、本件特許発明の構成要件である入力信号は、実際に(空間に)音が発生されるか否かを問わないものであり、本件特許出願に係る明細書の段落【0033】に、「電気楽器9では、たとえば弦などの振動要素を演奏動作で物理的に振動させ、振動を電気的に検出して増幅し、音響出力に変換する」と記載されているように、弦などの振動による音響信号が、電気信号として入力手段に入力されるものであって、該入力される信号が実際に空間に音を発したものである必要はないとはいえ、該入力される信号は「音」の信号である必要がある。しかるに、「加速度」を表す信号が結果として「音」に変換されることがあっても、「加速度」を表す信号それ自体が「音」の信号であるとすることはできない。
それゆえ、上記請求人の主張は採用することができない。

(2)構成要件(A)、(B)、(D)の充足性について
本件特許発明において、構成要件(C)を備え、構成要件(D)における「入力手段に入力される信号の音の強弱が連続的に変化する部分からリズム情報を検出し、検出されるリズム情報に基づいて、記憶手段に記憶されている音楽演奏情報をリアルタイムで読出」すことが、審査過程において引用された先行技術との相違点であるので、本件特許発明の構成要件(C)は、本件特許発明に欠くべからざる構成要件である。
上記「第4 (1)」で述べたように、イ号物件の構成(c)は、そのような本件特許発明の構成要件(C)を充足しないので、本件特許発明の他の構成要件(A)、(B)、(D)について検討するまでもなく、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。

第5 むすび
以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
 
別掲
 
判定日 2009-12-04 
出願番号 特願平9-317799
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (G10H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 板橋 通孝  
特許庁審判長 吉村 博之
特許庁審判官 千葉 輝久
加藤 恵一
登録日 2006-04-21 
登録番号 特許第3794805号(P3794805)
発明の名称 音楽演奏装置  
代理人 高山 嘉成  
代理人 小沢 昌弘  

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