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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  B05C
審判 一部無効 2項進歩性  H05K
管理番号 1208480
審判番号 無効2007-800283  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-12-27 
確定日 2009-11-18 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3762384号発明「少量材料分配用装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3762384号の請求項5ないし9に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯の概要
本件特許第3762384号に係る発明についての出願は、1997年7月15日(パリ条約による優先権主張外国官庁受理1996年7月17日、米国)を国際出願日とする特願平10-507367号の一部を平成15年4月28日に新たな特許出願としたものであって、平成18年1月20日に特許権の設定登録がなされたものである。
これに対し、平成19年12月27日に請求人より本件特許無効審判が請求され、平成20年5月15日に被請求人より審判事件答弁書が提出されるとともに訂正請求書及び訂正請求書に添付して訂正明細書が提出された。その後、平成20年6月30日に請求人から弁駁書が提出され、平成20年9月19日に請求人から上申書が提出され、これに対し平成20年9月30日に被請求人から審判事件上申書が提出されたものである。

第2.請求人の主張概要
1.請求人は審判請求書において、特許3762384号の請求項5ないし9に係る発明についての特許を無効とする、審判請求費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として概ね次の(1)ないし(3)のように主張するとともに、証拠方法として甲第1号証から甲第9号証、及び、参考資料1ないし参考資料15を提出した。

(1)無効理由1
本件特許の請求項5に係る発明は、本件特許の優先日前に国内及び外国で頒布された刊行物である甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明の何れかと同一であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は同法同条同項に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し無効とされるべきものである(以下、「無効理由1」という。)。

証拠方法
甲第1号証 米国特許第4066188号明細書
甲第2号証 独国特許出願公開第4013323号明細書
甲第3号証 特開平5-264412号公報
甲第4号証 独国特許出願公開第4202561号明細書

(2)無効理由2
本件特許の請求項5ないし9に係る発明は、本件特許の優先日前に国内及び外国で頒布された刊行物である甲第1号証ないし甲第9号証までに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法同条同項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し無効とされるべきものである(以下、「無効理由2」という。)。

証拠方法
甲第1号証 米国特許第4066188号明細書
甲第2号証 独国特許出願公開第4013323号明細書
甲第3号証 特開平 5-264412号公報
甲第4号証 独国特許出願公開第4202561号明細書
甲第5号証 特公昭48- 9264号公報
甲第6号証 実公平 5- 9099号公報
甲第7号証 特開平 5- 31458号公報
甲第8号証 特開昭57- 34974号公報
甲第9号証 特開昭56-133174号公報

(3)無効理由3
本件特許の請求項5ないし9に係る特許は、平成14年改正前の特許法第36条第4項並びに第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し無効とされるべきものである(以下、「無効理由3」という。)。

2.請求人は、弁駁書において、平成20年5月15日に提出された訂正請求書による訂正は、訂正の目的に違反するものであり、あるいは、実質上特許請求の範囲を変更するものであるから、認められるべきではない旨、主張すると共に、審判請求書において主張した無効理由1ないし3を再度主張すると共に、周知技術を裏付けるものとして、あらたに甲第10号証から甲第12号証までを提示するとともに、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明のシミュレーション結果として、あらたに甲第13号証ないし甲第15号証を、また、当該シミュレーションの概要を示す資料としてあらたに甲第16号証を提示した。

証拠方法
甲第10号証 特開平 7-125199号公報
甲第11号証 米国特許第5205439号明細書
甲第12号証 特開平 2-102053号公報
甲第13号証 甲第1号証についてのシミュレーション報告書
甲第14号証 甲第2号証についてのシミュレーション報告書
甲第15号証 甲第3号証についてのシミュレーション報告書
甲第16号証 シミュレーションソフト「フルーエント」についての照会資料

3.請求人は、上申書とともに、参考資料16として、東京大学名誉教授小林敏雄氏作成の鑑定意見を提出した。

第3.被請求人の主張概要
被請求人は、平成20年5月15日に提出した審判事件答弁書において、同日付け訂正請求書により訂正された後の請求項5ないし9に係る発明について、請求人主張の無効理由はないと、概ね次の(1)のように主張し、乙第1号証及び乙第2号証を提出した。

(1)無効理由1ないし3について
甲第1号証ないし甲第4号証の何れに記載のものも、本件請求項5ないし9に係る発明の備える構成要件D(バルブの第一位置から第二位置への移動により生ずる液体材料の挙動についての要件)及びE(バルブの第二位置から第三位置までの移動により生ずる液体材料の挙動についての要件)を備えるものではないため、同構成要件D及びEを備える本件特許の請求項5ないし9に係る発明は、この点について新規性を有するものであり、また当該構成要件D及びEについては、甲第5号証ないし甲第9号証の何れにも開示も示唆もないものであるから、これらの証拠に示されるような周知技術を参酌したとしても、本件特許の請求項5ないし9に係る発明は進歩性を有するものであり、特許法第29条第1項第3号または第2項の規定により特許を受けることができない発明ではなく、また、明細書の記載において請求人が主張するような不備はなく、特許法第36条第4項並びに第6項第1号及び第2号に該当するものではないので、本件特許を無効とすべき理由はない。

証拠方法
乙第1号証 米国特許第3788561号明細書
乙第2号証 米国特許第5356034号明細書

2.被請求人は平成20年9月30日に提出した審判事件上申書において、平成20年5月15日に提出した訂正請求書によりなした訂正請求は、誤記の訂正を目的とする適法なものであるから認められるべき旨主張するとともに、再度、本件請求項1ないし6に係る発明は甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明ではなく、また甲第1号証ないし甲第16号証等を前提としても進歩性を有するものである旨主張した。

第4.訂正の当否
1.訂正の内容
平成20年5月15日付けの訂正請求書による訂正は、誤記の訂正を目的として、発明の詳細な説明の第19ページ第8行の、第2ポジション”e”に関する記載について、
「バルブ座612から約0.036インチから約0.150インチより小さく」とあるのを、
「バルブ座612から約0.006インチから約0.048インチより小さく」と訂正するものである。

2.訂正の可否についての判断
上記の訂正事項について、訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲を実質的に拡張・変更するものであるかについて、以下に検討する。

(1)訂正の目的
上記の訂正前の発明の詳細な説明の記載をみると、第2ポジション”e”について、「バルブ432’は、図19に示したようにバルブ座612から距離”d”離間した第1ポジションと、図20に示したように前記第1ポジション”d”よりバルブ座612に接近して離間した第2ポジション”e”と、図21に示したようにバルブ座612と着座係合する第3ポジションと、を有する。」(公報第19ページ、第1?4行)、「第1ポジション”d”は、バルブ座612から約0.050インチの位置に配設される。」(同第19ページ第4,5行)、「第2ポジション”e”は、ノズルオリフィス622の直径の約3倍より小さい距離に、好ましくはノズルオリフィス622の直径の約1.5倍より小さい距離に配置される。即ち、第2ポジション”e”は、バルブ座612から約0.036インチから約0.150インチより小さく、好ましくはバルブ座612から約0.003インチから約0.024インチより小さい。」(同第19ページ第5?9行)と記載されており、訂正箇所の直前において「第2ポジション”e”は、ノズルオリフィス622の直径の約3倍より小さい距離に、好ましくはノズルオリフィス622の直径の約1.5倍より小さい距離に配置される。」とするものであるから、当該訂正箇所直前の記載との関連でみると、「第2ポジション”e”」について「ノズルオリフィス622の直径より約3倍より小さい距離」が「バルブ座612から約0.036インチから約0.150インチより小さく」に、また、好ましいとされる「ノズルオリフィスの直径より約1.5倍より小さい距離」が「バルブ座612から約0.003インチから約0.024インチより小さい」に対応することとなると考えられるが、「約0.036インチから約0.150インチ」なる距離と「約0.003インチから約0.024インチ」なる距離との関係は、「約3倍」と「約1.5倍」の関係になく、距離の比に関する記載、あるいはインチ表示された距離の値、の何れかに誤記が存在することは、文脈上から明らかである。
そこで、これらの記載のうち何れが誤記であるかが問題となるが、第2ポジション”e”については、「第1ポジション”d”よりバルブ座612側に接近して離間した」ものとされ、かつ第1ポジション”d”は「バルブ座612から約0.050インチの位置」に配設されているのであるから、第2ポジション”e”は第1ポジション”d”の位置である「バルブ座612から0.050インチ」の位置よりもバルブ座よりの位置にあるものと考えられ、この条件を満たさない上記「バルブ座から約0.036インチから約0.150インチ」なる記載が、誤記であると解するのが相当である。
そうすると、訂正すべき正しい内容が何であるかが問題となるが、訂正後の「約0.006インチから約0.048インチ」なる数値について、本願明細書に明示の記載があるとはいえないが、上記、誤記であることを判断した根拠として摘示した上記の記載からみて、「約1.5倍」に相当する距離が「約0.003インチから約0.024インチ」であれば、「約3倍」に相当する距離はその2倍と算出することが可能であり、しかも、そこで算出した「約0.006インチから約0.048インチ」なる値は、第1ポジションとの位置関係においても矛盾することなく位置できるものであり、明細書の記載から合理的に導き出せるものである。

したがって、上記の訂正は、特許法第134条の2第1項第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものであると解される。

なお、請求人は弁駁書において、上記「約0.036インチから約0.150インチ」なる距離と「約0.003インチから約0.024インチ」なる距離、との何れが誤記であるかについて、後半の「約0.003インチから約0.024インチ」なる距離のほうが誤記である可能性がある旨主張し、明細書には上記訂正内容と不合理な記載(第18ページ等のノズルの外径に関する記載、第20ページ17、18行、図面)があるとするが、明細書の記載中においてノズルの「外径」なる記載と「直径」なる記載は区別不能な程混同されてはおらず区別可能であり、当該「外径」が「直径」を意味するとする根拠も明らかでなく、また公報第20ページの「加速」に関する記載は、多少不明りょうさを含むものではあるが、明らかに矛盾するというほどのものではなく、先に述べた、上記のように「約0.036インチから約0.150インチ」なる距離が誤りである、という解釈を妨げるほどのものではない。

(2)新規事項の追加の有無
また、上記(1)において判断したように、訂正された後の「バルブ座612から約0.006インチから約0.048インチより小さく」なる距離についても、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載された事項から、合理的に導き出せることであるから、当初明細書又は図面に記載された範囲にない事項を追加するものではなく、特許法第134条の2第5項で準用する平成14年改正前特許法第126条第3項に規定する要件を満たすものである。

(3)特許請求の範囲の拡張・変更について
さらに、訂正前後において、特許請求の範囲の請求項5ないし9の記載は何ら変更されておらず、また、当該第2ポジション”e”の位置の上限についての数値が変更されることとなり、このことは、当該第2ポジション”e”の位置としてとりうる範囲が形式上縮小されたものであり、文言上は減縮されたこととなり、特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。加えて、当該第2ポジション”e”の位置、すなわち、特許請求の範囲に記載された「第二位置」についてその作用等何ら変更されるものではなく、訂正の前後において、その技術的意味が変更されたものでもないので、上記訂正により、特許請求の範囲について「実質的」に拡張・変更するものでもないから、上記の訂正は、特許法第134条の2第5項で準用する平成14年改正前特許法第126条第4項に規定する要件を満たすものである。

なお、請求人は、特許請求の範囲に記載された「第二位置」、即ち、第2ポジション”e”の位置について、上記訂正前は「ノズルの外径」を基準にして算定するものであったことを、訂正された後は「オリフィス622の内径」を基準にして算定することとなったので、「第二位置」を別の数値範囲にずらすこととなり、実質上特許請求の範囲を変更するものである、と主張するが、上記(1)において判断したとおり、訂正前の明細書においても、ノズルの「直径」をノズルの「外径」として使用していたものではなく、「ノズルの直径」が「オリフィスの直径」あるいは「オリフィスの内径」と同視されていたことは明らかであるから、請求人が主張するように、算定手法が変更になったということはない。

(4)むすび
以上の通り、上記の訂正は、誤記の訂正を目的とし、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないので、特許法第134条の2第1項第2号に規定することを目的とするものであり、また、同法同条第5項で準用する平成14年改正前特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものであるから、適法なものといえる。

第5.無効理由の判断
1.本件訂正発明
上記、第4.において示したように、平成20年5月15日付けの訂正請求書による訂正が認められたことにより、本件特許の請求項5ないし9に係る発明は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項5ないし9に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項5】
少量の液体材料を分配する材料分配装置であって、該材料分配装置は、
出口端および該液体材料を受ける入口端を有する第一流路と、該第一流路の該出口端の近傍に配置されるバルブ座と、往復動バルブと、を有するバルブ組立体と、
該第一流路の該出口端に接続される入口部分を有する第二流路と液体材料の流れを分配するオリフィスを有する出口部分とを備えるノズル組立体と、
該往復動バルブは、第一位置から該バルブ座の側に近い第二位置にまで急速に移動可能であって、これにより該第一流路における液体材料の大部分を該第一流路の該入り口端方向に流す一方、該第一流路における液体材料のいくらかを該出口端から該第二流路に流し込み、
該往復動バルブは、該第二位置から該バルブ座に着座する第三位置まで急速に移動可能であって、これにより該第二流路を通しての液体材料の流れが分断され、該オリフィスから分配される液体材料の流れが該第二流路の該出口部分から離れて液体材料の小滴を形成することを特徴とする材料分配装置。
【請求項6】
請求項5に記載の材料分配装置であって、該オリフィスの直径は、ほぼ0.0508ミリメートル(0.002インチ)からほぼ0.4064ミリメートル(0.016インチ)の間であることを特徴とする材料分配装置。
【請求項7】
請求項6に記載の材料分配装置であって、該オリフィスの長さ対直径の比は、少なくとも3対1であることを特徴とする材料分配装置。
【請求項8】
請求項7に記載の材料分配装置であって、該オリフィスの長さ対直径の比は、少なくとも25対1であることを特徴とする材料分配装置。
【請求項9】
請求項5に記載の材料分配装置であって、該ノズル組立体は、さらに、ほぼ0.3048ミリメートル(0.0120インチ)から1.270ミリメートル(0.050インチ)の間の外径の端部を有する細長いノズルを備えることを特徴とする材料分配装置。」
(以下、訂正明細書の請求項5ないし9に係る発明を、それぞれ「本件訂正発明5」ないし「本件訂正発明9」という。)

2.甲第1号証ないし甲第9号証に記載された発明、周知技術
(1)甲第1号証に記載された発明
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第1号証(米国特許第4066188号明細書)には、以下のことが記載されている。
a)「This invention relates to the application of liquids to surfaces and especially to equipment used to apply beads, ribbons or small unitary deposits of extruded or sprayed material in a desired pattern under high speed production conditions.」(第1欄第10?14行)
〔仮訳〕(本発明はある表面への液体の適用に関し、特に押出あるいは吹き出しされた物質をビード、リボンあるいは小サイズの単位付着物として高速の製造条件下において所望のパターンで適用するのに用いられる装置に関する。)

b)「A valve assembly 17 extends through the stepped bore 14 and is in operative communication with the nozzle assembly 13 attached to one end of the manifold block 11. The valve assembly 17 comprises a rod 18 having a ball valve element 19 attached to one end thereof and a piston 20 attached to the opposite end of the rod 18. A bellows type seal 21 is sealingly secured to one end of the rod 18 adjacent to the valve element 19. The opposite end of the bellows seal 21 is hydraulically sealed by an "O"-ring type seal 45 and is mechanically secured between the motor block 22 of motor assembly 12 and the manifold block 11 thus sealing off the upper end of the stepped bore 14.」(第2欄第24?36行)
〔仮訳〕(バルブ機構17が段状ボア14を貫いて延び、マニホールドブロック11の一端に取り付けられたノズル機構13と動作連通している。バルブ機構17は、一端に取り付けられたボールバルブエレメント19を有するロッド18と、ロッド18の他端に取り付けられたピストン20とから成る。ベロー型シール21が、バルブエレメント19に隣接する側のロッド18の一端に密封固定されている。ベロー型シール21の他端は、Oリング型シール45によって流体的に密封されると共に、モータ機構12のモータブロック22とマニホールドブロック11との間で機械的に固定され、段状ボア14を密封している。)

c)「The outlet nozzle assembly 13 comprises an end plate 25 sealingly secured to the manifold body 11 by machine screws not shown. The end plate 25 is provided with a stepped bore 26 having a valve seat 27 pressed into one end thereof. An outlet nozzle 28 is sealingly secured to the end plate 25 by a threaded retaining nut 29.」(第2欄第42?48行)
〔仮訳〕(出口ノズル機構13は、図示しない小ネジによってマニホールドブロック11に密封固定されたエンドプレート25を有する。エンドプレート25は段状ボア26を備え、段状ボア26の一端にバルブシート27が圧入されている。出口ノズル28が、ネジ切り保持ナット29によりエンドプレート25に密封固定されている。)

d)「The valve element 19 is biased to a closed position of engagement with the valve seat 27 by a compression spring 30 which reacts against a flanged portion 31 of the operating rod 18 and one end of a stepped bore 32 in the motor housing 22. The motor block 22 has an end cap 33 secured to one end thereof thus forming an operating chamber 34 in which the piston 20 is disposed. The piston 20 is secured to the operating rod 18 by lock nuts 35 and 36 which are in engagement with a threaded end portion 37 of rod 18. The motor block 22 and end cap 33 define an operating chamber 34 wherein piston 20 reciprocates axially in response to pressure of operating air. Operating air is transmitted to the chamber 34 through an inlet port 38 through a passageway 39 to the bottom side of piston 20. The upper side of piston 20 and chamber 34 is vented to atmosphere by means of a vent port 40 in one end of end cap 33. The operating air is conventional shop air under pressure and is operatively controlled by a valve means (not shown) to effect reciprocation of the piston 20 and valve assembly 17.」(第2欄第49?68行)
〔仮訳〕(バルブエレメント19は圧縮バネ30によってバルブシート27と係合する閉位置に付勢され、圧縮バネ30は作動ロッド18のフランジ部31とモータハウジング22内の段状ボア32の一端とに対して作用している。モータブロック22はその一端に固定されたエンドキャップ33を有して作動室34を形成し、作動室34内にピストン20が配設されている。ピストン20は作動ロッド18のネジ切り端部37と係合したロックナット35及び36によって作動ロッド18に固定されている。モータブロック22とエンドキャップ33が作動室34を形成し、作動室34内でピストン20が動作空気の圧力に応じて軸方向に往復移動する。動作空気は入口ポート38から通路39を介して、作動室34内でピストン20の底側に導入される。ピストン20及び作動室34の上方側は、エンドキャップ33の一端に形成された通気ポート40により大気と連通している。動作空気は通常の工場用加圧空気で、バルブ手段(図示せず)によりピストン20とバルブ機構17を往復移動させるように動作制御される。)

e)「In the operation of the preferred embodiment shown and described herein, the adhesive dispensing apparatus 10 is connected in a fluid circuit forming a part of a hot-melt adhesive heating and circulating system, and is positioned with its outlet nozzle assembly 13 adapted to apply adhesive to a translating surface at a desired location. An example of that type of system is illustrated in U.S. Pat. No. 3,788,56l, issued Jan. 29, 1974 and assigned to the Assignee of this application. As illustrated in that patent, an adjustable timing means is provided for controlling the desired frequency of operation of the adhesive dispensing apparatus and establishes the duration of the time interval which determines the size of the unitary deposits of adhesive which are dispensed from the adhesive dispensing apparatus.」(第3欄第17?31行)
〔仮訳〕(ここに図示し説明した好ましい実施例の動作時、接着剤分配装置10がホットメルト接着剤加熱循環システムの一部を形成する流体回路に接続され、その出口ノズル機構13が所望の個所で、移動する表面に接着剤を塗布するのに適するように位置決めされる。この種の加熱循環システムの一例は、1974年1月29日付けで発行され、本出願の譲受人に譲渡された米国特許第3788561号に示されている。同特許に例示されているように、接着剤分配装置の所望の動作回数を制御する調整可能なタイミング手段が設けられ、接着剤分配装置から分配される接着剤の単位付着物のサイズを決める時間間隔の持続時間を定める。)

f)「Hot-melt adhesive is pumped under pressure into the inlet port 15 of the manifold block 11 into annular passageway 24, through the parallel bores or passageway 16 to the upper end of stepped bore 14. The adhesive then flows around valve assembly 17 and downwardly through stepped bore 14, bore 46 of sleeve 23 and into bore 26 of end plate 25 and around the valve element 19 disposed in the stepped bore 47 of valve seat 27.
When the air motor assembly 12 is actuated to effect reciprocation of the valve assembly 17, the molten adhesive is dispensed through stepped bore 47 and outlet orifice 50 of nozzle 28 onto a substrate. 」(第3欄第32?43行)
〔仮訳〕(ホットメルト接着剤は、マニホールドブロック11の入口ポート15から環状通路24内へ入り、平行ボアつまり流体通路16を介し、段状ボア14の上端に至るように加圧ポンプ給送される。次いで、接着剤はバルブ機構17の周囲を流れ、段状ボア14、スリーブ23のボア46及びエンドプレート25のボア26を通って下降し、バルブシート27の段状ボア47内に配設されたバルブエレメント19の周囲に至る。
エアモータ機構が作動しバルブ機構17を往復移動させると、接着剤が段状ボア47及びノズル28の出口孔50を介して分配される。)

g)「1. An adhesive dispensing apparatus for extruding hot viscous liquid from a pressurized source onto a substrate surface, comprising:
a body having a central bore formed therethrough;
a passage means in said body connected to said central bore for conducting viscous liquid to said central bore;
a valve seat attached to one end of said central bore;
a movable valve assembly disposed in said central bore for operative engagement with said valve seat;
a passageway formed in said valve seat;
said valve assembly operatively controlling the flow of said viscous liquid through said passageway in said valve seat;
heater bores formed in said body adjacent to said central bore with heating means disposed therein; and
a plurality of parallel bores formed in said body between said heating means and said central bore, which plurality of parallel bores are concentrically disposed around said valve assembly, and wherein the parallel bores function as heat exchanger means」(第3欄第63行?第4欄第19行、請求の範囲)
〔仮訳〕(1.高温の粘性液体を加圧源から基材上に押出し吐出する接着剤分配装置において、
内部を貫いて形成された中心ボアを有する本体;
前記中心ボアに接続され、粘性液体を前記中心ボアに供給する前記本体内の通路手段;
前記中心ボアの一端に取り付けられたバルブシート;
前記中心ボア内に、前記バルブシートと動作係合するように配設された可動のバルブ機構;
前記バルブシート内に形成された通路;
前記バルブ機構が前記バルブシート内の通路を通る前記粘性流体の流れを動作制御すること;
前記本体内に前記中心ボアと隣接して形成され、加熱手段が内部に配設されたヒータボア;及び
前記本体内で前記加熱手段と前記中心ボアとの間に形成された複数の平行ボアで、前記バルブ機構と同心円状に配置され、熱交換手段として機能する複数の平行ボア;
を備えた接着剤分配装置。)

上記a)、e)、f)及びg)の記載より、甲第1号証に記載されたものは、少量の粘性液体であるホットメルト接着剤を分配するための分配装置であることがわかる。

上記d)及び図1の記載からみて、バルブシート27は、バルブエレメント19と係合する閉位置において、当該バルブエレメント19と対向接触する部位(以下、「バルブ着座部」という。)があること、および当該部位に開口(以下、「小径開口」という。)があり、当該小径開口からホットメルト接着剤が送出されることは、いずれも明らかである。

上記f)及び図1の記載からみて、バルブエレメントの往復動作に関連して、段状ボアの上端より流入したホットメルト接着剤は、段状ボア47内を流れ、バルブシート27に存在するバルブ着座部の下方の流路(以下、「バルブ着座部後流側流路」という。)、ノズル28内の大径流路(以下、「ノズル内大径流路」という。)及び、同ノズル内の先端小径流路(以下、「ノズル内小径流路」という。)を流下して、被分配個所に分配されるものであることがわかる。また、エアモータ機構によりバルブ機構が往復移動されると、バルブ機構17の先端に設けられたバルブエレメント19が、往復動の一方側の閉位置と、他方側の、バルブ弁座部から離間した位置との2つの位置をとるものであり、バルブエレメント19がバルブ着座部から離間した位置にあるとき、段状ボア47を経由してバルブ着座部後流側流路、ノズル内大径流路、ノズル内小径流路がホットメルト接着剤により満たされるようになることも、明らかである。

上記a)、d)、f)及び図1の記載からみて、甲第1号証に記載されたものは、バルブ機構17の下端のバルブエレメント19がバルブ着座部に着座してホットメルト接着剤の流れを断って、ホットメルト接着剤の小サイズの単位付着物を形成するものであるから、当該バルブエレメントの閉止により、ホットメルト接着剤の流れを分断しうる程度に「急速に」閉鎖するものであることは、明らかである。

以上のこと、及び図1の記載を総合すると、甲第1号証には次の発明が記載されているといえる。

「少量の粘性液体を押出吐出する粘性液体分配装置であって、当該分配装置は、
小径開口および該粘性液体を受ける上端部を有する段状ボア47と、該空隙の小径開口の近傍に配置されるバルブ着座部と、バルブエレメント19と、を有するバルブ機構17と、
前記段状ボア47の小径開口に接続されるノズル内大径流路と粘性液体の流れを分配するノズル内小径流路と備えるノズル28と、
該バルブエレメント19は、閉鎖位置から離間した位置から閉鎖位置側へ急速に移動可能であって、これにより前記バルブ着座部後流側流路、ノズル内大径流路及びノズル内小径流路を通過する前記粘性液体の流れが分断され、該ノズル内小径流路から分配される粘性液体の流れが該ノズル内小径流路から離れて粘性液体の小滴を形成する粘性液体分配装置。」(以下、「甲第1号証に記載された発明」という。)

(2)甲第2号証に記載された発明
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第2号証(独国特許出願公開第4013323号明細書)には、以下のことが記載されている。

a)「Die Erfindung betrifft ein Dosierventil zur Portionierung von fliessfaehigen

… … …

Stoffes auf eine Dosierbohrung verjuengt.」(第1欄第3?15行)(なお、上記の摘記箇所の記載において、ドイツ語特有の表記(アー・ウムラウト、ウー・ウムラウト、オー・ウムラウト、エスツェット)は、アルファベットで表記している(アー・ウムラウトは「ae」、ウー・ウムラウトは「ue」、オー・ウムラウトは「oe」、エスツェットは「ss」)。以下、摘記箇所は全て同様とする。)
〔仮訳〕(本発明は、分配すべき物質を供給する供給ボアと接続する貫通ボアと、ボアに軸線方向へ摺動自在に支持されたアンカおよび位置不変のストローク制限部材からなるパルス状に駆動される分配ピストンとを有しかつ支持部材に設置されたバルブ体を有し、1つまたは複数の流動性のまたは流動化可能な物質、特に、接着剤、加熱接着剤、インキ、ラッカなどを分配する分配バルブであって、貫通ボアが、分配すべき物質の出口範囲において、分配ボアに狭窄される形式のものに関する。)

b)「Mit dem erfindungsgemaessen Dosierventil sind bei geringstem konstruktiven
‥ ‥ ‥
zudem sehr enge Punkt- und/oder Strichabstaende ermoeglicht.」(第2欄第34?41行)
〔仮訳〕(本発明に係る分配バルブによって、僅かな構造経費で、最大1000点/secの高い切換周波数を達成でき、かくして、移送方向(例えば紙送り方向)に沿ってのみならず、上記方向に直角な方向へも、接着剤を塗布できる。更に、コンパクトな構造によって、狭い点間隔および/または線間隔を実現できる。)

c)「Die durchgehende Bohrung (3) verjuengt sich im Austrittsbereich aus dem
‥ ‥ ‥ ‥

befestigten elektrischen Anschlussstueck (12' ) fur dieelektromagnetische Spule (13).」(第3欄第5?17行)
〔仮訳〕(貫通ボア(3)は、分配バルブの出口範囲において、狭窄されて分配ボア(8,8’)に移行する。分配すべき物質の供給は、供給ボア(9)を介して、あるいは、別の方式として、バルブを直列に配置した場合に、例えば、非接触で横方向接着剤塗布のため、破線で示したボア(9’)を介して行われる。バルブ体(1)は、合目的的には、バルブ体に着脱自在に結合された分配ヘッド(10)と、調整ヘッド(11)とを有する。バルブ体(1)は、電磁コイル(13)の電気接続片(12’)を固定したスリーブまたはカバースリーブ(12)によって囲まれている。)

d)「Der vorzugsweise sechseckig ausgestaltete Anker (5) steht in Wirkungsverbindung
‥ ‥ ‥ ‥
Ventilsitz(14') ist mit grossem Vorteil Bestandteil der Spuleneinbettung (14).」(第3欄第18?31行)
〔仮訳〕(好ましくは六角形に構成されたアンカ(5)は、ボア(3)に同心に配置されかつ絶縁材料製スリーブまたは埋込部材(14)によって分離された電磁コイル(13)と作用的に結合する。アンカ(5)は、アンカ受容ボア(3)内に上下動自在に設けてあり、その下端に、好ましくは、プラスチックからなり密封円錐体を有することができるバルブヘッド(15)を備えている。バルブヘッド(15)は、バルブ座(14’)と作用共働して、縮小された貫通ボア(3’)を密封する。好ましくはプラスチックからなるバルブ座(14’)が、コイル埋込部材(14)の構成部分であれば極めて有利である。)

e)「Der Dosierkopf (10) besteht zur vorteilhaft einfachen Montage aus einem

‥ ‥ ‥ ‥

sind mittels Dichtring (24) gegen Austritt von Dosiermaterial gesichert.」(第3欄第51?64行)
〔仮訳〕(分配ヘッド(10)は、有利な簡単な組込のため、雄ネジによって支持部材(2)に螺着できるよう構成され、スリーブ(12)またはその閉鎖リング(12’’)を上端に支持したノズル部材(20)からなる。分配部材(20)には、ネジナット(22)によって分配部材(20)の雄ネジに固定され分配ボア(8,8’)を形成する分配スリーブ(21)が設けてある。分配スリーブ(21)は、下端に、分配媒体の出口(23)を有する。ボア(3,3’)おとび分配ボア(8,8’)またはコイル埋込部材(14)及び分配スリーブ(21)は、密封リング(24)によって、分配材料の逸出が防止されるよう構成されている。)

f)「Der pulsierende Antrieb des Ankers (5) des Dosierkolbens (4) erfolgt in den
‥ ‥ ‥ ‥
Bohrung (3) ueber die Durchgangsbohrung (3') in die Dosierbohrung (8, 8') gepumpt werden.
‥ ‥ ‥ ‥
Durch die im Traegerkoerper (2) angeordnete Zufuhrbohrung (9) gelangt Dosiermaterial in den Justierkopf (11) bzw. das Anschlussstueck (30) und weiter in die Bohrung (3).」(第3欄第65行?第4欄第14行)
〔仮訳〕(図示の実施例の場合、分配ピストン(4)のアンカ(5)のパルス状駆動は、一方では、電磁的に行い、他方では、圧縮バネ(7)によって行う。 ‥
‥ ‥
かくして、コイル(13)の順次のオンまたはオフによって、アンカ(5)ほ、永続的なパルス状運動を行い、かくして、加熱接着剤滴は、ボア(3)から貫通ボア(3’)を介して分配ボア(8,8’)に順次ポンプ方式で送られる。
‥ ‥ ‥ ‥
分配材料は、支持部材(2)に設けた供給ボア(9)を介して調整ヘッド(11)または接続片(30)に達し、更に、ボア(3)に達する。)

g)「Die erfindungsgemaessen Dosierventile koennen Bestandteil eines
‥ ‥ ‥ ‥
strichfoermig auf einen entsprechenden Gegenstand aufbringen.」(第4欄第47?58行)
〔仮訳〕(本発明に係る分配バルブは、塗布ヘッドまたは塗布バーまたは塗布フレーム(図示しない)の構成部分であってよく、この場合、場合によっては、所定のパターンにもとづき複数の同一の分配バルブを設けることもできる。このような塗布ヘッドを使用して、1つまたは複数の分配バルブの補助下で、対向する対象物上に、滴状または線状に分配された低温接着剤を塗布でき、特に加熱によって流動化した接着剤、即ち加熱接着剤、インキ、ラッカなどを、所定のパターンにもとづき、滴状または線状に塗布することもできる。)

上記g)及びb)からみて、甲第2号証に記載のものは、接着剤、インキ等の液体材料を、滴状(または線状)に分配するものであり、またその速度が高速(1000点/sec)であることに鑑み、少量の液体材料を滴状に分配するものであることがわかる。

上記d)及び図1の記載に鑑み、バルブヘッド(15)はバルブ座(14’)と共働して貫通ボア(3’)を密封するのであるから、バルブ座(14’)は、貫通ボア(3’)が密封された状態においてバルブヘッド(15)が着座する部位(以下、「バルブ着座部」という。)が存在することは明らかであり、また当該バルブ座(14’)は、分配スリーブ(21)の分配ボア(8)と接続される流出側の端部および、ボア(3)につながる流入側の端部(以下、「ボア(3)側端部」という。)が存在することも明らかである。

上記f)及び図1からみて、液体材料は、供給ボア(9)及びボア(3)を経由して貫通ボア(3’)へ供給されるものであることがわかる。

上記e)及び図1の記載からみて、ノズル出口(23)は、細径のオリフィスとなっていることがわかる。

上記b)、f)、g)及び図1の記載からみて、パルス状に運動するアンカ(5)によってバルブヘッド(15)もパルス状に往復動作するもので、一方の位置(以下、「密封位置」という。)においてバルブ着座部に係合して貫通ボア(3’)を密封し、バルブ着座部から離れた他方の位置(以下、「開放位置」という。)において貫通ボア(3’)を開放するものであり、アンカ(5)のパルス状運動によりポンプ方式で、液体材料をボア(3)方向から貫通ボア(3’)に供給するものであることがわかる。

また、当該バルブヘッド(15)が開放位置から密封位置に移動する際のボア(3)及び貫通ボア(3’)内に存在する流体の挙動を考察するに、アンカ(5)の移動(図における下方)に伴い、貫通ボア(3’)側の容積は減少するためその中の液圧は上昇するのに対し、アンカ(5)の上部側では容積が増大し液圧が減少すると考えられ、そうすると、貫通ボア(3’)内の液体材料に対し、ボア(3)内の液圧と貫通ボア(3’)内の液圧の差圧に起因する、液体材料をボア(3)側に吸引する力が生ずると考えられる。液体材料の性状、アンカ(5)とコイル埋込部材(14)との間隙の幅、長さ、ノズル側の流動抵抗等、不確定な因子は存在するものの、アンカ(5)上部側の拡大した容積は、供給ボア(9)から供給される液体材料のみならず、下方の貫通ボア(3’)側に存在した液体材料からも供給されると考えるのが相当であり、甲第2号証に記載されたものの動作の高速性(最大1000点/sec)を考慮すると、通常の液体材料であればアンカ(5)上方側の容積拡大に見合った量の液体材料がすべて供給ボア(9)より供給されるものとは考えにくく、甲第2号証に記載された分配方法においても、幾分かの液体材料の逆流は生じ得ると考えるのが妥当である。

さらに、バルブヘッド(15)がバルブ着座部に近づくにつれ、バルブ着座部とバルブヘッド先端部との間隙が順次狭くなってゆき、当該間隙部の流動抵抗は、当初少なく、バルブヘッド(15)の先端部付近から側方に流れる液体材料は相対的に多く、当該間隙が狭くなると、流動抵抗も増大するため側方へ流れる液体材料が減少し、密閉位置近傍において、下方の分配ボア(8)側への流動量が相当に大きくなる位置が存在する(以下、「密閉直前位置」という。)ことは、流体力学的に明らかである。

この側方への流量と分配ボア(8)側への流量とについて、バルブヘッドがバルブ着座部に近づいた、特定の段階までは側方への流れが比較的大きく、それ以降は分配ボア(8)側への流れが大きくなることは、甲第2号証に記載されたような分配装置において、いわば、当然に生起する程度のことにすぎず、その特定の段階に対応するバルブヘッド(15)の位置(以下、「密閉直前位置」という。)については、甲第2号証に記載のような分配装置のバルブヘッド(15)は、移動の途中において、当然経由することとなると考えられる。

なお、以上のような液体材料の挙動についての分析は、甲第14号証として提示された、甲第2号証に記載された発明についてのシミュレーション結果や、参考資料16に記載された小林敏雄氏の鑑定意見とも符合するものである。

逆に、被請求人の主張するように、液体材料の逆流が全く生じないものであるとすると、当該逆流が生じないような条件を設定することは、バルブヘッド(15)を使用した液体材料の分配を円滑に実行できなくなる可能性が大きく(逆流が生じないようバルブヘッド(15)とバルブ着座部との間の間隔を狭くしここでの流動抵抗を大きくすると、分配ボア(8)側に液体材料を供給する場合にも同様の流動抵抗を生ずることとなるので、バルブヘッドが上昇側に移動する際、分配ボア(8)内の液体材料がバルブヘッド(15)の移動に伴って上昇するものの、貫通ボア(3’)側から分配ボア(8)側への液体材料の供給に支障をきたすことが想定される。また逆流を生じないこととする手法として液体材料の背圧を大きくすることも考えられるが、甲第2号証に記載された分配装置のような高速分配を実行するものにおいて、バルブヘッド(15)付近に短期的に生ずる逆方向圧力に見合うだけの背圧を印加するには、相当大きな背圧を印加することとなることが推定されるが、そのような大きな背圧を加えることは、バルブヘッド(15)を引き上げる力の増大、バルブヘッドの応答性を低下させることにもなり、実際的なこととは言い難い。)、甲第2号証に記載された分配装置がそのような不合理なものであるとは考えにくく、この点について、被請求人が主張するように、甲第2号証に記載された発明が液体材料に加えられる背圧により、液体材料の分配(吐出)を行うものとは考え難い。

なお、甲第2号証に記載のものにおいて、バルブヘッド(15)は、ポンプ方式で液体材料をノズル側に送ることができる程度に「急速に」移動するものであり、また、当該バルブヘッド(15)の着座により液体材料の流れを分断しうる程度に「急速に」移動可能であることも、明らかである。

以上のこと及び図1の記載を考慮すると、甲第2号証には、以下の発明が記載されているといえる。

「少量の液体材料を分配する材料分配装置であって、該材料分配装置は、
出口端および該液体材料を受け入れるボア(3)側入口端を有する貫通ボア(3’)と、該貫通ボア(3’)の出口端の近くに配置されたバルブ着座部と、往復動するバルブヘッド(15)と、を有するバルブ座(14’)と、
該貫通ボア(3’)の該出口端に接続される入口端部を有する分配ボア(8)と液体材料の流れを分配するオリフィスを有するノズル出口(23)とを備える分配ヘッド(10)と、
該バルブヘッド(15)は、開放位置から該バルブ着座部の側に近い密閉直前位置にまで急速に移動可能であって、これにより該貫通ボア(3’)における液体材料の所望部分を該貫通ボア(3’)の該ボア(3)側端部方向に流す一方、該貫通ボア(3’)における液体材料のいくらかを該出口端から分配ボア(8)に流し込み、
該バルブヘッド(15)は、該密閉直前位置から該バルブ着座部に着座する密閉位置まで急速に移動可能であって、これにより該分配ボア(8)を通しての液体材料の流れが分断され、該オリフィスから分配される液体材料の流れが該分配ボア(8)の先端のノズル出口(23)から離れて液体材料の小滴を形成する材料分配装置。」(以下、「甲第2号証に記載された発明」という。)

(3)甲第3号証、又は、甲第4号証に記載された発明
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第3号証(特開平5-264412号公報)には、以下のことが記載されている。

a)「【請求項1】 液体がノズル放出口(3)を通してノズル(2)から少量、パルス方式でターゲット(5)へ放出される分析液体(7)のターゲットへの供給装置であって、分析液体が加圧下に保持される圧力チャンバー(1)からなり、圧力チャンバー(1)からノズル放出口(3)までの液体の流路にバルブ口(23)と、バルブ口(23)の開閉のための位置決め素子(12)によって動く閉鎖素子(13)とを有するバルブユニット(11)が備えられ、および、バルブ口が閉鎖するあいだ、閉鎖素子(13)の動きによって液体の放出が維持されるようにバルブユニット(11)が組み立てられていることを特徴とする装置。」(第1欄第2?13行、【請求項1】)

b)「【産業上の利用分野】本発明は、液体(fluid) がノズル放出口を通してノズルから少量、パルス方式でターゲットへ放出される、分析液体のターゲットへの調整供給(proportionedfeeding)装置に関する。」(第2欄第6?9行、段落【0001】)

c)「【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、前記の不都合を避け、分析液体のために現在まで通常に使用される“ドロップ オン デマンド”法のばあいよりも実質的に多い、しかし一方では、希釈器やディスペンサーで現在まで成し遂げられる最少量よりも少ない、厳密に決められた量の、分析液体の特定量を生じ(generate)させうるような、分析液体のターゲットへの供給装置を提供することである。」(第3欄第23?30行、段落【0008】)

d)「【作用】本発明のばあい、前記の“ドロップ オン デマンド”微調整のための装置とは対照的に、ノズル区画(これはノズル放出口のすぐうしろに位置する)が特定量の液体が放出されるべきときに圧縮されるわけではない。そのかわり、ノズル放出口は、中の分析液体が(たとえば0.1 から5bar の)永続的な圧力を受けている圧力チャンバーと、流体的に連結している(hydraulically connected) 。特定量の分析液体の放出は、圧力チャンバーとノズル放出口の間の液圧連結(hydraulic connection)を短時間開口し再び閉鎖するバルブユニットの閉鎖素子によって、制御される。」(第4欄第27?37行、段落【0012】)

e)「図1に示される分析液体の微調整のための装置は、分析液体のための圧力チャンバー1および、ノズル放出口3とノズルプレ-チャンバー4を有しそれを通って分析液体が少量、ターゲット5(簡単に図で示される)へ放出されうるノズル2からなる。分析液体7は圧力チャンバー1中で加圧下に保持される。分析液体は、圧力発生デバイス9により、接続しているブランチ6aを経由して貯蔵容器6から供給される。」(第5欄第24?31行、段落【0017】)

f)「【0018】圧力チャンバー1とノズル放出口3の間の液圧連結はバルブユニット11により開口および閉鎖されうる。バルブユニット11(図1ではバルブが開口位置にある状態を示し、また以下、単にバルブともいう)は、位置決め素子12によって動かされる閉鎖素子13からなり、バルブユニット11が閉鎖位置にある状態では、前記閉鎖素子13の環状のシーリングリム(sealing rim)15 は、同じく環状のシーリングシート(sealing seat)17に板封じ方式で押しつけられている。シーリングリム15に囲まれた領域は閉鎖領域19を意味する。
【0019】ノズル放出口3の方向においてシーリングシート17の前に、ノズルプレ-チャンバー4が配されている。これは、バルブ放出口とバルブ口23(バルブ開口時)を除いてふさがっている。」(第5欄第36?49行、段落【0018】、【0019】)

g)「【0021】閉鎖領域19はノズル放出口3より広い。これは閉鎖素子13が閉鎖する間“液圧加速(hydraulic gearing up)”あるいは“液圧伝動(hydraulic transmission)”を引きおこす、言い換えれば、閉鎖素子13が閉鎖する間、閉鎖素子13がノズル放出口3の方向へ動くよりもかなり速く、液体がノズル放出口3を通って移動する。それによって、閉鎖素子13の比較的ゆっくりした動きによってバルブ11が閉鎖する間、液体の放出がとくによく維持され促進される。
【0022】本発明においてとくに重要な点は、液圧加速にある。インクジェット技術(いわゆる“ジェッティング(jetting) ”)において、要求される液体の放出を確実にするためには、ノズル内での流速が少なくとも1m/sでなければならない。本発明において、液体の流れの正確な中断を達成するためにはバルブの閉鎖する間も同様に高速度が要求されることが見出された。」(第6欄第4?19行、段落【0021】、【0022】)

h)「【0023】ノズルプレ-チャンバー4の壁4aはシーリングシート17からノズル放出口3まで、少なくともある断面において好ましくは円錐形である。液圧加速を確実にするために、閉鎖素子は合致した円錐をさらに備える必要はなく、かわりに、閉鎖領域19は、おおむね(示したように)水平であるか、わずかに内にわん曲しているか、もしくはノズル放出口3の方へわん曲しているならば少なくともノズルプレ-チャンバー4の円錐形の壁4aよりは有意に平らであることが望ましい。相互にかみ合い合致したシーリング面を有する円錐形のシールは、多くの場合シーリングに有利であるとみなされるが、それにもかかわらず、本発明においては目的とする液圧加速のために不都合である。
【0024】液圧加速が有効であるためには、バルブ11のバルブ口23、これはシーリングリム15とシーリングシート17との間の環状のすきまによって形成されるが、その開口横断面(opening cross-section) が閉鎖領域19よりも小さい方が有利である。他方、バルブ口23の開口横断面はノズル放出口3の横断面より大きくなければならない。それによって、バルブ開口時の分析液体の流速がバルブの流体抵抗ではなくおもに放出口3の流体抵抗によって決定されるということが保証される。」(第6欄第27?48行、段落【0023】、【0024】)

上記c)からみて、甲第3号証に記載のものは「希釈器やディスペンサーで現在まで成し遂げられる最少量よりも少ない、厳密に決められた量の、分析液体の特定量を生じ(generate)させうるような、分析液体のターゲットへの供給装置を提供する」ものであるから、比較的少量の液体を「ターゲット」へ供給するものであり、液体が滴状となり得る供給装置であることがわかる。

上記e)より、圧力チャンバー1は、貯蔵容器6からブランチ6aを経由して分析液体を供給されるものであることがわかる。

上記e)、f)、g)及び図1からみて、甲第3号証に記載のものは、圧力チャンバー1は、側壁、上壁、及び、ノズルプレ-チャンバー4とノズル放出口3とを備えた下方部材(以下、「ノズル部材」という。)により形成されているもの(以下、「圧力チャンバー筐体」という。)であることがわかる。

上記f)、g)、h)及び図1の記載からみて、当該ノズル部材は、円錐状のノズルプレ-チャンバー4、オリフィス状の小径の流路(以下、「小径流路」という。)、及びノズル放出口3を備えているものであることもわかる。

上記g)、h)及び図1の記載からみて、甲第3号証に記載のものにおいて、閉鎖素子13が位置決め素子12により開口位置と閉鎖位置との間で動かされ、閉鎖領域にある分析液体は「液圧加速」若しくは「液圧伝動」が生起されるものであるから、当該閉鎖素子13は位置決め素子12により加速されるもので、当該閉鎖素子13により押圧力を受けた液体がノズル放出口3側に移動するものであることがわかる(この点について、上記d)に「圧力チャンバー1」内における分析液体の圧力は「0.1から5bar」とされているように、分析液体に印加されている圧力は決して高いものではないので、甲第3号証に記載されたものについて被請求人が主張するように「流体圧により分析液体が放出される」ものとは考えにくい)。この時、下降する閉鎖素子13の下方に生ずる圧力は、液体の性質からみて、ノズル側下方のみならず側方等にも伝搬するものと考えられ、また、閉鎖素子13の上方では閉鎖素子13の下降に伴い容積の増大が生じ、これにより圧力減少が生起すると考えられ、下方の圧力上昇と上方の圧力減少、および、閉鎖素子13の下降動作の進行に伴いバルブ口23の隙間が小さくなったことにより生ずる流動抵抗の増大、等、を参酌すると、閉鎖素子13の周辺の部分即ちバルブ口23付近では、閉鎖素子の下降動作の初期においては、分析液体の、閉鎖素子13の下方から側方への液体流が相対的に多く、閉鎖素子13がシーリングシート17に近づき、閉鎖直前の位置(以下、「閉鎖直前位置」という。)に達すると、閉鎖素子13のシーリングリム15とシーリングシート17の隙間が小さくなることにより当該隙間における液体の流動抵抗が増大する結果、側方への分析液体の流れは相対的に少なくなり、ノズル側への液体流が増大するものと考えられる。この時期、特に閉鎖素子13の下降動作の前段(加速時)において、上記の圧力差によりノズル側から位置決め素子側への逆流が生じていることが推定される。

なお、以上のような分析液体の挙動についての分析は、甲第15号証として提示された、甲第3号証に記載された発明についてのシミュレーション結果、及び、参考資料15に記載された小林敏雄氏の鑑定意見、とも符合するものである。

さらに、閉鎖素子13は、開口位置から閉鎖位置への移動の際、分析液体をノズル方向に加速できる程度に「急速に」移動可能なものであり、また、バルブ閉鎖位置においてバルブユニット11が閉鎖される際、分析液体の放出を終了するものであるから、分析液体のノズルからの流れを分断できる程度に「急速に」閉鎖するものであることもわかる。

なお、甲第3号証に記載された装置について、被請求人の主張するように「逆流」が生じないものと解することが不合理である点は、甲第2号証に記載された発明について検討したと同様であるが、さらに、甲第3号証に記載された装置の場合、「圧力チャンバー1」内の圧力が比較的低いことからも、一層「逆流」の生ずる蓋然性が大きいと考えられる。

以上の記載及び図1の記載からみて、甲第3号証には、次の発明が記載されているといえる。

「少量の分析液体を供給する分析液体供給装置であって、該液体供給装置は、
バルブ口23および該分析液体を受けるブランチ接続部6aを有する圧力チャンバー1と、該圧力チャンバー1のバルブ口23の近傍に配置されるシーリングシート17と、閉鎖素子13と、を有する、圧力チャンバー筐体と、
該圧力チャンバー1のバルブ口23に接続されるノズルプレ-チャンバー4と、該分析液体の流れを放出するオリフィス状の小径流路及びノズル出口3、を備えるノズル部材と、
該閉鎖素子13は、開口位置から該シーリングシート17の側に近い閉鎖直前位置にまで急速に移動可能であり、これにより該圧力チャンバー1における分析液体の所定部分を該圧力チャンバー1の上方側(該ブランチ接続部6a側)方向に移動可能であって、これにより該圧力チャンバー1にある該分析液体の一部を該圧力チャンバー1のブランチ接続部6a方向に流す一方、該圧力チャンバー1における分析液体のいくらかをバルブ口23からノズルプレ-チャンバー4に流し込み、
該閉鎖素子13は、該閉鎖直前位置から該シーリングシート17に着座する閉鎖位置まで急速に移動可能であって、これにより該ノズルプレ-チャンバー4を通しての分析液体の流れが分断され、該オリフィス状の小径流路から放出される分析液体の流れが該ノズルプレ-チャンバー4及びオリフィス状の小径流路のノズル出口3から離れて分析液体の滴を形成する分析液体供給装置。」(以下、「甲第3号証に記載された発明」という。)

また、甲第4号証は、独国の特許公開公報であり、甲第3号証と同様の内容を開示するものである。

(4)甲第5号証に記載された技術
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第5号証(特公昭48-9264号公報)には、以下のことが記載されている。

a)「本発明は、容器内に材料を入れ、容器の底にある少くとも1個のノズルを介して前記材料を固型化するためほぼ水平方向に動いている冷却面に前記材料を流す方法において、先ず前記材料をノズルの出口領域の加圧領域に流入せしめ、該加圧領域における該材料の圧力を一方では溶融材の所定分量のノズルからの流出を分離をもつて他方では溶融材をノズル内の針に沿つて逆流させ前記容器内に戻すことによつて逃がすこと、該針が該ノズル内に沿つて鉛直方向に往復動するようになつていることを特徴とする溶融材から粒子を作る方法を提供する。」(第2欄第15?26行)

b)「第1と2図に示されるようにひしやく1の底に少くとも1個のノズル2が備えられるが、お互いに隣接するように複数個のノズル2を設けてもよい。本発明に依ればノズル孔10の出口端11に縮小領域6があつて、小径通路3と前記孔10から該小径通路へ直径が小さくなる遷移部分14とから作られる。ノズル2の全体はしたがつて3つの領域からなるものと考えられる。つまり溶材12の流入と吸引のための領域4、加圧領域を形成するための領域5並びに粒子13に必要な量の材流を流出するための縮小領域6がある。
領域4と5及び流出領域における孔10の直径は粒子にされる製品の粘性により異なる。同じことは領域4,5,6の長さについても云え、領域4と5内を垂直に往復する針7の直径の函数として与えられる。又行程8及び領域5内の針の下端面とノズルの縮小領域6との間の間隔は粒子化される製品の粘度で決められる。」(第3欄第5?22行)

c)「本発明に基づく縮小領域6は又ピストンが僅かな隙間でノズル内に取付けられ溶融材を流滴の形で放出するため上下に動くような装置にも使用し得る。」(第4欄第21?24行)

d)「溶融材を容器に入れ、該容器の底に設けられた少なくとも1個のノズルを通して該溶融材を移動する冷却表面上に滴下させてこれを固形化する溶融材から粒子を製造する方法において、前記ノズル内で該ノズルの出口端部の上方で針を上下往復動させること、前記針の往復動及び前記ノズルの下端面に設けられた流出制限通路とにより該ノズル内の領域で溶融材を加圧すること、前記加圧領域内に生じた比較的高い圧力を一方では所定量の溶融材を該加圧領域から前記出口端部の制限通路を通して放出しこれを分離させることにより又他方では溶融材を該加圧領域から前記針に沿つて前記容器内へ逆流させることによつて低減させることを特徴とする溶融材から粒子を製造する方法。」(第4欄第35行?第5欄第4行、特許請求の範囲)

甲第5号証の記載によれば、針7がノズル孔10内で上下動する行程8は、行程8の上部側(領域4)は「溶材12の流入と吸引のための領域4」に属し、同行程8の下部側(領域5)は「加圧領域を形成するための領域5」に属するものとされているので、行程8の上部側においては針7の動作が溶材12の滴下にほとんど寄与しない領域、すなわち、大部分の溶材12が針7の下端面部から側方乃至は上方に「逆流」する領域であり、また同行程8の下部側においては、「溶材12の一部にノズル2から該溶材12を放出しようとする余分の力が与えられる」、すなわち、針7の下端部の押圧により、溶材12の一部がノズル2から滴下するとともに、残余の溶材12が、ノズル孔10内で針7に沿って逆流する領域であることが、わかる。
なお、当該行程8の上部側における移動であっても、針7が下降する以上、僅かな量であるにしろ、小径通路3側に流れる溶材が存在することも明らかであり、領域4と領域5とは、厳密にその作用が区別されるものではなく、主として何れの役割が大きいかで区別される、という程度のものであることは、流体力学的に明らかである。

これらのこと、及び図面の記載からみて、甲第5号証には次の技術が記載されているといえる。

「溶(融)材12から粒滴を滴下する装置であって、該装置は
遷移部分14につながる下端部および溶材を受け入れる上端部を有するノズル孔10と、上下に往復動する針7と、
該ノズル孔10の下端部に接続される遷移領域14と溶材12の流れを滴下する小径通路3を有する縮小領域6とを備えるノズル2と、
該針7は、行程8の上昇位置からノズル端部の側に近い領域4の下端部位置まで急速に移動可能であり、これにより該ノズル孔10における該溶材12の大部分を該ノズル孔10の上端部方向に流す一方、該ノズル孔10における溶材のいくらかを領域6に流し込み、
該針7は、該領域4の下端部位置から行程8の下端位置まで急速に移動可能であって、これにより領域6を通しての溶材の流れが分断され、該小径通路3から滴下される溶材の流れが小径通路3の出口部分から離れて溶材の小滴を形成する、溶材滴下装置。」(以下、「甲第5号証に記載された技術」という。)

(5)甲第6号証に記載された技術
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第6号証(実公平5-9099号公報)には、「加圧されたシリンジ1内の液体を、バルブステム11の往復動による開閉によりノズル10から吐出させる微量吐出装置。」が記載されている。

(6)甲第7号証に記載された技術
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第7号証(特開平5-31458号公報)には、「少量の接着剤を放出させる装置であって、電磁コイル24により往復動される弁体20の開閉により、接着剤の液滴を放出する放出装置。」が記載されている。

(7)甲第8号証に記載された技術
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第8号証(特開昭57-34974号公報)には、「インク小滴を噴射させる噴射装置であって、往復動するホーン9による噴射口3の瞬間的開閉により、インク小滴を噴射する噴射装置。」が記載されている。

(8)甲第9号証に記載された技術
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第9号証(特開昭56-133174号公報)には、「インク液滴を噴射する装置であって、往復動するニードル4によるノズルオリフィス3の開閉によって、インク液滴を噴射する噴射装置。」が記載されている。

(9)甲第10号に記載された技術
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第10号証(特開平7-125199号公報)には、「インク液滴を噴出する装置において、プランジャ16先端の平坦部によりインクを押し出す、インク液滴噴射装置。」が記載されている。

(10)甲第11号証に記載された技術
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第11号証(米国特許第5205439号明細書)には、「ディスペンサからの粘性物質の分配装置において、ディスペンサ内の粘性物質に作用する圧力は、バルブニードル(30)が上昇位置にあるとき粘性物質がノズル(54)から流出しない程度の圧力であり、バルブニードル(30)の下方のバルブ当たり面(32)への押動動作により粘性物質を押し下げ、ノズル(54)から粘性物質が押し出されるようにした、粘性物質の分配装置。」が記載されている。

(11)甲第12号証に記載された技術
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第12号証(特開平2-102053号公報)には、「インクジェットのインク滴を吐出させるインクジェット記録装置において、インク内にある圧力発生部材13の往復動により、インクを押圧し、ノズル12からインクを吐出させるインクジェット記録装置。」が記載されている。

(12)甲第13号証について
甲第13号証には、甲第1号証に記載された発明についてのシミュレーション結果を記載するものであり、図7等において、甲第1号証に記載された発明の備えるバルブエレメント19がその閉鎖位置に向かって移動しホットメルト接着剤を分配する過程において、以下のプロセスを経ることが示されている。

「バルブエレメント19は離間位置から閉位置側へより近づいたバルブの閉位置の直前の位置(以下、「閉直前位置」という。)まで急速に移動され、これにより段状ボア47内にある粘性液体の大部分をバルブ機構側端部方向に流す一方、段付きボア47における粘性液体のいくらかをバルブ着座部付近の開口からノズル内大径流路及びノズル内小径流路へ流し込み、
バルブエレメント19は、該閉直前位置から、バルブ着座部に着座する閉位置まで高速に移動され、これにより、ノズル内大径流路及びノズル内小径流路を通しての粘性液体の流れが分断され、該オリフィスから分配される粘性液体の流れが、該ノズル内大径流路及びノズル内小径流路に連なるノズル出口部から離れて粘性液体の単位付着物(小滴)を形成すること。」

(13)甲第14号証について
甲第14号証には、甲第2号証に記載された発明についてのシミュレーション結果を記載するものであり、図6等において、甲第2号証に記載された発明の備えるバルブヘッド(15)がバルブ座(14’)端部のバルブ着座部方向に移動し、少量の液体材料を分配する過程において、以下のプロセスを経ることが示されている。

「バルブヘッド(15)は開放位置よりバルブ着座部の側に近い密閉直前位置にまで急速に移動され、これにより、該貫通ボア(3’)内における液体材料の大部分を貫通ボア(3’)のボア(3)側端部方向に流す一方、該貫通ボア(3’)における液体材料のいくらかをバルブ着座部から分配ボア(8)に流し込み、
バルブヘッド(15)は、該密閉直前位置からバルブ着座部に着座する密閉位置まで急速に移動されて、これにより該分配ボア(8)を通しての液体材料の流れが分断され、該ノズル出口(23)から分配される液体材料の流れが該分配ボア(8)に連なるノズル出口(23)から離れて液体材料の小滴を形成すること。」

(14)甲第15号証について
甲第15号証には、甲第3号証又は甲第4号証に記載された発明についてのシミュレーション結果を記載するものであり、図6等において、甲第3号証若しくは甲第4号証に記載された閉鎖素子13がシーリングシート17側へ移動し、少量の分析液体を放出する過程において、以下のプロセスを経ることが示されている。
「閉鎖素子13は、シーリングシート17へより近づいた、閉鎖直前位置まで移動され、これにより、圧力チャンバー1における分析液体の大部分を圧力チャンバー1の上方向(ブランチ接続部(6a)側方向)に流すとともに、該圧力チャンバー1における分析液体のいくらかをバルブ口23からノズルプレ-チャンバー4に流し込み、
閉鎖素子13は、該閉鎖直前位置からシーリングシート17に着座する閉鎖位置まで急速に移動され、これにより、該ノズルプレ-チャンバー4を通しての該分析液体の流れが分断され、ノズル部材の小径流路から放出される分析液体の流れが該ノズルプレ-チャンバー4及び小径流路の連なるノズル出口3から離れて分析液体の小滴を形成すること。」

3.対比
3-1.本件訂正発明5について
(1)甲第2号証に記載された発明との対比、判断
本件訂正発明5と甲第2号証に記載された発明とを比較すると、甲第2号証に記載された発明における「ボア(3)側端部」、「貫通ボア(3’)」、「バルブ着座部」、「バルブヘッド(15)」、「バルブ座(14’)」、「分配ボア(8)」、「ノズル出口(23)」、「分配ヘッド(10)」、「開放位置」、「密閉直前位置」及び「密閉位置」は、各々、それぞれの有する機能に照らして、本件訂正発明5における「入口端部」、「第一流路」、「バルブ座」、「(往復動)バルブ」、「バルブ組立体」、「入口部分」、「出口部分」、「ノズル組立体」、「第一位置」、「第二位置」及び「第三位置」に相当し、また甲第2号証に記載された発明における「分配ヘッド(10)」に設けられた「分配ボア(8)」及び「ノズル出口(23)」は、それらの配置位置、構造、及び機能からみて、本件訂正発明5における「ノズル組立体」に設けられた「入口部分」と「出口部分」とを有する「第二流路」に相当するものといえる。
加えて、甲第2号証に記載された発明における「該貫通ボア(3’)における液体材料の所望部分を該貫通ボア(3’)のボア(3)側端部方向に流す」なる点は、「ボア(3)側端部方向に流す」液体材料について「大部分」であるかどうかは明らかでないが、なにがしかの量(所定量)の液体材料が入口側に流れる点において、本件訂正発明5における「第一流路における液体材料の大部分を第一流路の入り口端方向に流す」なることと共通する。

したがって、両者は、「少量の液体材料を分配する材料分配装置であって、該材料分配装置は、
出口端および該液体材料を受ける入口端を有する第一流路と、該第一流路の該出口端の近傍に配置されるバルブ座と、往復動バルブと、を有するバルブ組立体と、
該第一流路の該出口端に接続される入口部分を有する第二流路と液体材料の流れを分配するオリフィスを有する出口部分とを備えるノズル組立体と、
該往復動バルブは、第一位置から該バルブ座の側に近い第二位置にまで急速に移動可能であって、これにより該第一流路における液体材料の所定量を該第一流路の該入り口端方向に流す一方、該第一流路における液体材料のいくらかを該出口端から該第二流路に流し込み、
該往復動バルブは、該第二位置から該バルブ座に着座する第三位置まで急速に移動可能であって、これにより該第二流路を通しての液体材料の流れが分断され、該オリフィスから分配される液体材料の流れが該第二流路の該出口部分から離れて液体材料の小滴を形成する材料分配装置。」である点、一致し、以下の点で相違する。

〔相違点〕
本件訂正発明5は、「往復動バルブ」が「第一位置から該バルブ座の側に近い第二位置にまで急速に移動可能」であるとき、「第一流路における液体材料の大部分を該第一流路の該入り口端方向に流す一方、該第一流路における液体材料のいくらかを該出口端から該第二流路に流し込」むものであるのに対し、甲第2号証に記載された発明は、「バルブヘッド(15)」が「開放位置から、該バルブ着座部の側に近い密閉直前位置にまで急速に移動可能」であるとき、「該貫通ボア(3’)における液体材料の所望部分を該貫通ボア(3’)の該ボア(3)側端部方向に流す一方、該貫通ボア(3’)における液体材料のいくらかを該出口端から分配ボア(8)に流し込」むものであり、入口側に戻す液体材料が「大部分」であるかどうか明らかでない点(以下、「相違点1」という。)。

以下、相違点1について検討する。

本件訂正発明5において、バルブの往復動作中での第一位置、第二位置及び第三位置の技術的意味を考察するに、本件特許の明細書、段落【0017】及び【0021】には、これら三つの位置についての目的、作用が、又本件特許の明細書、段落【0050】?段落【0055】には、当該3つの位置を移動するバルブを備えた実施例が、それぞれ記載されているが、ノズルからの流れが壊れて若しくは切れて、即ち、分断されて、滴が形成される、というのみで、これらの位置及び位置間における液体の挙動については、請求項5に記載されていることと同程度のことが記載されているのみであり、上記のように「大部分」の液体材料を液体入口側に流れるようにしたことについて、技術的な意味について特段の説明はない。
このようなバルブの往復動により発生する液体材料内の現象について、従前の液滴分配装置における技術常識を参酌すると、バルブの初期位置においては、分配すべき液体をノズル部分へ円滑に受け入れる必要からある程度の隙間が必要であり(この点、甲第5号証に記載された技術からも窺われる)、当該液体の受入を円滑になされることを主眼とした上方のストローク部分においては、上記のような「逆流」は、程度の差こそあれ必然的に生ずることであり、当該ストロークを大きくとればそれだけ「逆流」の比率が大きくなる部分が増大することも当然である。してみると、液体の受入れが円滑なされるために必要であっても、ノズルからの液体分配の観点からは無駄ともいえるストロークについて、どの程度の量とするかは、液体材料を供給する際の円滑性、バルブの往復動としてとり得る行程距離、速度、ノズル内のオリフィスにおける液体の流動抵抗、ノズル先端側からの戻り液体材料量、及びこれらの因子を考慮した上で設定される液滴サイズ等を考慮し、設計上適宜に決定する程度のことであり、その結果、上記「逆流」の量についてもおのずから定まるものである。
してみると、上記相違点における本件訂正発明5のように「大部分」とすることは、当業者にとり上記のような因子を考慮の上、設計上適宜に決定する程度のことにすぎず、また、本件特許明細書の記載及び答弁書の記載を参酌したとしても、上記相違点にあるように「大部分」としたことにより、特段の効果が生じたものとも解されない。
なお、甲第14号証に示される、甲第2号証に記載された発明のシミュレーション結果でも、「バルブヘッド(15)」が「開放位置」から「密閉直前位置」まで移動する間において、多くの「液体材料」が「逆流」している様子を示していることも、上の流体力学的分析を裏付けるものであり、また、参考資料16に記載された小林敏雄氏の鑑定意見とも符合するものである。

したがって、本件訂正発明5は、甲第2号証に記載された発明及び液滴分配装置における技術常識(以下、「周知技術」という。)に基づいて、当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(2)甲第3号証に記載された発明との対比、判断
本件訂正発明5と甲第3号証に記載された発明とを比較すると、甲第3号証に記載された発明における「分析液体」、「バルブ口23」、「ブランチ接続部6a」、「圧力チャンバー1」、「シーリングシート17」、「閉鎖素子13」、「圧力チャンバー筐体」、「ノズルプレ-チャンバー4」、「小径流路」、「ノズル部材」、「開口位置」、「閉鎖直前位置」および「閉鎖位置」は、各々、それぞれの有する機能に照らして、本件訂正発明5における「液体材料」、「出口端」、「入口端」、「第一流路」、「バルブ座」、「往復動バルブ」、「バルブ組立体」、「入口部分」、「オリフィスを有する出口部分」、「ノズル組立体」、「第一位置」、「第二位置」および「第三位置」に相当し、また甲第3号証に記載された発明における「供給」及び「放出」は、その機能からみて、いずれも本件訂正発明5における「分配」に相当し、甲第3号証に記載された発明における、「ノズル部材」に設けられた「ノズルプレ-チャンバー4」、「小径流路」及び「ノズル放出口3」は、それらの配置位置、構造、及び機能からみて、本件訂正発明1における「ノズル組立体」に設けられた「入口部分」及び「オリフィスを有する出口部分」からなる「第二流路」に相当するものといえる。
さらに、甲第3号証に記載された発明における「圧力チャンバー1にある該分析液体の一部を該圧力チャンバー1のブランチ接続部6a方向に流す」なる点は、「圧力チャンバー1のブランチ接続部6a方向に流す」分析液体が「大部分」であるかどうかは明らかでないが、なにがしかの量(所定量)の液体材料を入口側に流す点において、本件訂正発明5における「第一流路における液体材料の大部分を該第一流路の該入り口端方向に流す」なることと共通するものである。

したがって、両者は、「少量の液体材料を分配する材料分配装置であって、該材料分配装置は、
出口端および該液体材料を受ける入口端を有する第一流路と、該第一流路の該出口端の近傍に配置されるバルブ座と、往復動バルブと、を有するバルブ組立体と、
該第一流路の該出口端に接続される入口部分を有する第二流路と液体材料の流れを分配するオリフィスを有する出口部分とを備えるノズル組立体と、
該往復動バルブは、第一位置から該バルブ座の側に近い第二位置にまで急速に移動可能であって、これにより該第一流路における液体材料の所定量を該第一流路の該入り口端方向に流す一方、該第一流路における液体材料のいくらかを該出口端から該第二流路に流し込み、
該往復動バルブは、該第二位置から該バルブ座に着座する第三位置まで急速に移動可能であって、これにより該第二流路を通しての液体材料の流れが分断され、該オリフィスから分配される液体材料の流れが該第二流路の該出口部分から離れて液体材料の小滴を形成する材料分配装置。」である点、一致し、以下の点で相違する。

〔相違点〕
本件訂正発明5は、「往復動バルブ」が「第一位置から該バルブ座の側に近い第二位置にまで急速に移動可能」であるとき、「第一流路における液体材料の大部分を該第一流路の該入り口端方向に流す一方、該第一流路における液体材料のいくらかを該出口端から該第二流路に流し込」むものであるのに対し、甲第3号証に記載された発明は、「閉鎖素子13」が「開口位置から該シーリングシート17の側に近い閉鎖直前位置にまで急速に移動可能」であるとき、「圧力チャンバー1にある該分析液体の一部を該圧力チャンバー1のブランチ接続部6a方向に流す一方、該圧力チャンバー1における分析液体のいくらかをバルブ口23からノズルプレーチャンバー4に流し込」むものであり、入口側に戻す液体材料が「大部分」であるかどうか明らかでない点(以下、「相違点1’」という。)。

上記相違点1’について以下に検討する。
このようなバルブの往復動により発生する液体材料内の現象について、従前の液滴分配装置における技術常識を参酌すると、先に、上記(1)において甲第2号証に記載された発明との対比・判断において分析したように、バルブの初期位置においては、分配すべき液体をノズル部分へ円滑に受け入れる必要からある程度の隙間が必要であり(この点、甲第5号証に記載された技術からも窺われる)、当該液体の受入を円滑になされることを主眼とした上方のストローク部分においては、上記のような「逆流」は、程度の差こそあれ必然的に生ずることであり、当該ストロークを大きくとればそれだけ「逆流」の比率が大きくなる部分が増大することも当然である。してみると、液体の受入れが円滑なされるために必要であっても、ノズルからの液体分配の観点からは無駄ともいえるストロークについて、どの程度の量とするかは、液体材料を供給する際の円滑性、バルブの往復動としてとり得る行程距離、速度、ノズル内のオリフィスにおける液体の流動抵抗、ノズル先端側からの戻り液体材料量、及びこれらの因子を考慮した上で設定される液滴サイズ等を考慮し、設計上適宜に決定する程度のことであり、その結果、上記「逆流」の量についてもおのずから定まるものである。してみると、甲第3号証に記載された発明において、相違点1’における本件訂正発明5のように「大部分」とすることは、当業者にとり上記のような分配方法における因子を考慮の上、設計上適宜に決定する程度のことにすぎず、また、相違点1’係る本件訂正発明5のようにしたことにより、特段の効果が生じたものとも解されない。
なお、甲第15号証に示される、甲第3号証に記載された発明のシミュレーション結果でも、「閉鎖素子13」が「開口位置」から「閉鎖直前位置」まで移動する間において、多くの「分析液体」が「逆流」している様子を示していることも、上の流体力学的分析を裏付けるものであり、また参考資料16に記載された小林敏雄氏の鑑定意見とも符合するものである。

したがって、本件訂正発明5は、甲第3号証に記載された発明及び液滴分配装置における技術常識(以下、「周知技術」という。)に基づいて、当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-2.本件訂正発明6について
本件訂正発明6は、本件訂正発明5について、さらに「オリフィスの直径は、ほぼ0.0508ミリメートル(0.002インチ)からほぼ0.4064ミリメートル(0.016インチ)の間である」と限定するものであるから、本件訂正発明6と、甲第2号証に記載された発明又は甲第3号証に記載された発明と、を比較すると、両者は、上記3-1.(1)又は(2)に記載した一致点・相違点を有しているとともに、加えて、本件訂正発明6の備える「オリフィス」の径が「ほぼ0.0508ミリメートル(0.002インチ)からほぼ0.4064ミリメートル(0.016インチ)の間」とされているのに対し、甲第2号証に記載された発明における「ノズル出口23」に設けられた「オリフィス」又は甲第3号証に記載された発明における「小径流路」については、何れもその径が明らかでない点で相違する(以下、「相違点2」という。)。
相違点2について検討するに、オリフィスの径について、本件訂正発明6に規定するような値に特定することに、特に技術的意味があるとも認められず、当該オリフィスの径については、分配装置を具体化するにあたり、液体材料の性質、バルブの寸法、行程距離、速度、ノズル内のオリフィスにおける液体の流動抵抗、液滴サイズ等、その他の考慮すべき各因子とあわせて設計上適宜に決定する程度のことにすぎないので、甲第2号証に記載された発明における「ノズル出口23」の「オリフィス」の径、又は甲第3号証に記載された発明における「小径流路」の径、について相違点2における本件訂正発明6のような値とすることは、当業者にとり通常の創作力の範囲で、設計上適宜決定する程度のことにすぎない。

その余の点(相違点1、1’)については、本件訂正発明5について上記3-1.(1)又は(2)において判断したと同様である。

したがって、本件訂正発明6は、甲第2号証に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-3.本件訂正発明7について
本件訂正発明7は、本件訂正発明6について、さらに「オリフィスの長さ対直径の比は、少なくとも3対1である」と限定するものであるから、
本件訂正発明7と、甲第2号証に記載された発明又は甲第3号証に記載された発明、とを比較すると、両者は、上記3-1.(1)又は(2)、及び3-2.に記載した一致点・相違点を有するとともに、さらに、本件訂正発明6は「オリフィスの長さ対直径の比は、少なくとも3対1である」と規定ものであるのに対し、甲第2号証に記載された発明におけるノズル出口(23)に設けられた「オリフィス」、又は甲第3号証に記載されたノズル部材に設けられた「小径流路」、については、何れも、その長さ、径等、明らかではない点で相違する(以下、「相違点3」という。)。
相違点3について検討するに、オリフィスの長さ・径等の寸法については、分配装置を具体化するにあたり、液体材料の性質、バルブの寸法、行程距離、速度、ノズル内のオリフィスにおける液体の流動抵抗、液滴サイズ等、その他の考慮すべき各因子とあわせて設計上適宜に決定する程度のことにすぎず、また、本件訂正発明7に規定するような値に特定したことにより、特に技術的意味が生じたものとも認められないので、甲第2号証に記載された発明又は甲第3号証に記載された発明において、ノズル出口部分に設けられたオリフィスの寸法について相違点3における本件訂正発明7のようにすることは、当業者にとり通常の創作力の範囲で設計上適宜決定する程度のことにすぎない。

その余の点(相違点1、1’、2)については、本件訂正発明5及び6について上記3-1.(1)又は(2)及び3-2.において判断したと同様である。

したがって、本件訂正発明7は、甲第2号証に記載された発明又は甲第3号証に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4.本件訂正発明8について
本件訂正発明8は、本件訂正発明7について、「オリフィスの長さ対直径の比」を、「少なくとも25対1である」と異なる値として限定するものであるから、
本件訂正発明8と、甲第2号証に記載された発明又は甲第3号証に記載された発明と、を比較すると、両者は、上記3-1.(1)又は(2)、及び3-2.に記載した一致点・相違点を有するとともに、加えて、本件訂正発明8は「オリフィスの長さ対直径の比は、少なくとも25対1である」ものであるのに対し、甲第2号証に記載された発明の備えるノズル出口(23)に設けられた「オリフィス」、又は甲第3号証に記載された発明の備えるノズル部材の「小径流路」、は、何れも、その長さ、径等明らかではない点で相違する(以下、「相違点4」という。)。
相違点4について検討するに、上記3-3.において相違点3について指摘したと同様に、オリフィスの長さ・径等の寸法については、分配装置を具体化するにあたり、液体材料の性質、バルブの寸法、行程距離、速度、ノズル内のオリフィスにおける液体の流動抵抗、液滴サイズ等、その他の考慮すべき各因子とあわせて設計上適宜に決定する程度のことにすぎず、また、本件訂正発明8に規定するような値に特定したことにより、特に技術的意味が生じたものとも認められないので、甲第2号証に記載された発明又は甲第3号証に記載された発明において、オリフィス部の寸法について相違点4における本件訂正発明8のようにすることは、当業者にとり通常の創作力の範囲でなしうる程度のことにすぎない。

その余の点(相違点1、1’、2)については、本件訂正発明5及び本件訂正発明6について上記3-1.(1)又は(2)、及び3-2.において判断したと同様である。

したがって、本件訂正発明8は、甲第2号証に記載された発明又は甲第3号証に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-5.本件訂正発明9について
本件訂正発明9は、本件訂正発明5について、さらに「ノズル組立体は、さらに、ほぼ0.3048ミリメートル(0.0120インチ)から1.270ミリメートル(0.050インチ)の間の外径の端部を有する細長いノズルを備える」と限定するものであるから、本件訂正発明9と、甲第2号証に記載された発明又は甲第3号証に記載された発明とを比較すると、両者は、上記3-1.(1)又は(2)に記載した一致点・相違点を有するとともに、加えて、本件訂正発明9は「ノズル組立体は、さらに、ほぼ0.3048ミリメートル(0.0120インチ)から1.270ミリメートル(0.050インチ)の間の外径の端部を有する細長いノズルを備える」ものであるのに対し、甲第2号証に記載された発明又は甲第3号証に記載された発明は、何れもそのような寸法のノズルを備えるものかどうか明らかではない点で相違する(以下、「相違点5」という。)。
以下、相違点5について検討するに、この種の液体分配装置において、オリフィス等を有するノズル端部の形状、外径寸法をどのようにするかは、分配装置を具体化するにあたり、液体材料の性質、目的とする液滴の寸法、装置全体の寸法等の要請により適宜に定める程度のことであり、また、ノズルの寸法について本件訂正発明9に規定するような値に特定したことにより、特に技術的意味が生じたものとも認められないので、甲第2号証に記載された発明又は甲第3号証に記載された発明において、そのノズル部分について、上記相違点5における本件訂正発明9のような寸法とすることは、当業者にとり通常の創作力の範囲で適宜決定する程度のことにすぎない。

その余の点(相違点1、1’)については、本件訂正発明5について上記3-1.(1)又は(2)において判断したと同様である。

したがって、本件訂正発明9は、甲第2号証に記載された発明又は甲第3号証に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第6.むすび
以上のように、本件訂正発明5ないし9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、特許法第123条第1項第2号の規定に該当し無効とすべきものである。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
少量材料分配用装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少量の液体材料を分配する材料分配装置であって、該材料分配装置は、
バルブ組立体であって、該バルブ組立体の内部に延在する第一流路と該バルブ組立体の中に配置される往復動バルブとを有するバルブ組立体と、
環状形状部材とバルブ座と複数の細長いガイドとを有する環状受座組立体であって、該環状形状部材は該第一流路と流体的に連通する入口端と出口端と第二流路とを有し、該第二流路は、該環状形状部材を通って延在し、第一の直径を有する上部内腔壁と、該第一の直径よりも小さい第二の直径を有する下部内腔壁とを含んでいる段付軸方向内腔であり、該バルブ座は該出口端部に隣接し該上部内腔壁と該下部内腔壁とが交わる所に配置されていて、該複数の細長いガイドは該上部内腔壁と一体で形成され、該第二流路内へ内方に突出し、該第二流路内で該往復動バルブが往復する際に該往復動バルブを支持するように該上部内腔壁に延在する環状受座組立体と、
薄肉円筒チューブノズルと、該第二流路の出口端に接続される入口および出口オリフィスとを有するノズル組立体であって、該薄肉円筒チューブノズルが該薄肉円筒チューブノズルを通って延在する第三流路を有するノズル組立体とを備え、
前記往復動バルブは可動であって、前記往復動バルブは前記バルブ座を急速に閉鎖し、それによって、前記第三流路を通過する前記液体材料の流れを止め、前記薄肉円筒チューブノズルから分配される前記液体材料の流れを前記出口オリフィスで分断して小滴にすることを特徴とする材料分配装置。
【請求項2】
請求項1に記載の材料分配装置であって、
該出口オリフィスは約0.0508mm(約0.002インチ)から約0.4064mm(約0.016インチ)の範囲の径を有することを特徴とする材料分配装置。
【請求項3】
請求項2に記載の材料分配装置であって、
該出口オリフィスの長さ対直径の比は少なくとも約25対1であることを特徴とする材料分配装置。
【請求項4】
請求項3に記載の材料分配装置であって、
該薄肉円筒チューブノズルの外径は約0.3048mm(約0.012インチ)から約1.270mm(約0.050インチ)の範囲であることを特徴とする材料分配装置。
【請求項5】
少量の液体材料を分配する材料分配装置であって、該材料分配装置は、
出口端および該液体材料を受ける入口端を有する第一流路と、該第一流路の該出口端の近傍に配置されるバルブ座と、往復動バルブと、を有するバルブ組立体と、
該第一流路の該出口端に接続される入口部分を有する第二流路と液体材料の流れを分配するオリフィスを有する出口部分とを備えるノズル組立体と、
該往復動バルブは、第一位置から該バルブ座の側に近い第二位置にまで急速に移動可能であって、これにより該第一流路における液体材料の大部分を該第一流路の該入り口端方向に流す一方、該第一流路における液体材料のいくらかを該出口端から該第二流路に流し込み、
該往復動バルブは、該第二位置から該バルブ座に着座する第三位置まで急速に移動可能であって、これにより該第二流路を通しての液体材料の流れが分断され、該オリフィスから分配される液体材料の流れが該第二流路の該出口部分から離れて液体材料の小滴を形成することを特徴とする材料分配装置。
【請求項6】
請求項5に記載の材料分配装置であって、該オリフィスの直径は、ほぼ0.0508ミリメートル(0.002インチ)からほぼ0.4064ミリメートル(0.016インチ)の間であることを特徴とする材料分配装置。
【請求項7】
請求項6に記載の材料分配装置であって、該オリフィスの長さ対直径の比は、少なくとも3対1であることを特徴とする材料分配装置。
【請求項8】
請求項7に記載の材料分配装置であって、該オリフィスの長さ対直径の比は、少なくとも25対1であることを特徴とする材料分配装置。
【請求項9】
請求項5に記載の材料分配装置であって、該ノズル組立体は、さらに、ほぼ0.3048ミリメートル(0.0120インチ)から1.270ミリメートル(0.050インチ)の間の外径の端部を有する細長いノズルを備えることを特徴とする材料分配装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本願は、米国特許出願第08/607,126号(1996年2月26日提出)の一部継続出願である米国特許出願第08/559,332号(1995年11月16日提出)の一部継続出願である。
本発明は、液体材料の分配の分野に関し、より詳しくは電子部品やプリント回路基板の組立てにおける微量の粘性接着剤、半田フラックス、又はその他の液体材料を迅速に分配するための方法ならびに装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明は、電子工業でプリント回路基盤などの表面上に液体材料を分配するための方法及び装置に関係する。しかし、本発明がさらに広い適用範囲を有し、他の産業においても有利に使用できることは理解されよう。
プリント回路を組立てるための基材表面を限定するプリント回路(PC)基盤の製造では、3種類の一般的な基盤が用いられることが多い。第1の基盤は、表面実装部品だけが使用され表面実装基盤と呼ばれている。この部品をプリント回路基盤の上に置くことができ、このプリント回路基盤の上には部品を固定するための接着剤が載せてある。次いで、基盤を接着した部品と共にオーブンの中に入れ、接着剤を硬化させ、部品を所定の位置に保持することができる。次に、基盤及び部品をウェーブ半田付け機に通過させて、電気接続を完成させることができる。これらの部品を基盤に固定させる別の方法は、半田ペーストを基盤の上に載せてから表面実装部品を所望に応じて配置する、リフロー半田付けと呼ばれるものである。基盤を加熱して半田を再流動させると、半田ペーストは硬化し、電気的接続は完了する。その後、基盤を洗浄する。
【0003】
第2の基盤は、スルーホール部品を使用するものである。この名称が意味する様に、これらの電気部品は、基盤中のスルーホール又は開口部を通って伸びるリード線を有する。これらのリード線を半田付けして電気的接続を完了する。
混合技術基盤では、表面実装部品とスルーホール部品の組合せを使用する。表面実装部品を、上記の様に組み立て半田付けする。表面実装部品を基盤の第1の側に固定した後、スルーホール部品を基盤上に配置し、部品のリード線を基盤の開口部を通して伸ばし、次の工程で半田付けする。両側組立てを行う場合、基盤を裏返し、第2の表面に表面実装部品を付ける。
【0004】
いずれの場合でも、基盤の一方の表面に、一般的には下側表面に半田付け作業を行う必要がある。多くの一般的な半田付け方法がある。半田付けの全工程は、実際には単一機械の中で通常行われる3つの個別の不可欠な工程を含む。これらの工程には、(i)フラックス塗布、(ii)基盤の予備加熱、及び(iii)半田付けがある。半田付け用フラックスは、一般的に「ベース金属及び半田から酸化物又はその他の表面被膜を除去することによって溶融半田による金属表面の濡れを促進する化学的及び物理的に活性な組成物。フラックスはまた、半田付け中に表面を再酸化から保護し、溶融半田及びベース金属の表面張力を変化させる。」と定義される。基盤の半田付け準備を効果的に行い、部品に適切な濡れを与えるために、プリント回路基盤をフラックスで清浄しなければならない。
4つの一般的な種類のフラックスが商業的に使用されている。そのうちロジン系フラックスが最も広く使用されているが、この場合は通常、基盤上のロジン系フラックス残留物を除去するための清掃作業後で必要となる。この残留物は、続くプリント回路基盤の試験に悪影響を及ぼすことがある。
【0005】
別の主要な区分のフラックスには、名称が示唆する様な、水溶液の中で洗浄される様にした水溶性フラックスがある。しかし、様々な理由からこの技術はまだ広く受け入れられていない。
同様に、第三の区分は、多くの理由から需要が低下している活性化されたフラックスである。例えば、環境上の問題を引き起こすクロロフルオロカーボン(CFC)系のクリーナーで残留物を除去しなければならない。
【0006】
環境上の問題に照らしてさらに大きな関心が寄せられている第4の種類のフラックスは、ローソリッドフラックスと呼ばれるものである。ローソリッドフラックスは少量の、例えば5重量%以下の固形分を含む。ローソリッドフラックスは、半田付け終了後の基盤上の残留物の量を、次に続く洗浄作業を省くことができるほど抑えるために使用される。
上記の様に、商業的な洗浄作業ではCFCを採用するのが一般的である。CFCの使用は地球の成層圏のオゾンを破壊するか、又は不都合なことにこの破壊を助長することが、調査によって現在分かっている。したがって、続くプリント回路基盤の洗浄作業を省くことは、次いで、半田付け清浄化工程後に関連するオゾン減少という環境上の問題に取り組むことになる。
【0007】
一般的に言えば、フラックスは一般に、溶剤、媒体、活性剤、界面活性剤、及び酸化防止剤を含む。溶剤はフラックス成分の液体キャリヤである。溶剤として、イソプロパノール又は同様の種類のアルコールを使用することが多い。フラックスの媒体成分は、次に続く半田付け作業中の高温溶剤として使用される。他方、活性剤は酸化物などの汚染物を除去して、半田付け作業のための濡れ易い表面をもたらす。界面活性剤は半田の濡れ性を促進し、また酸化防止剤は部品リード線の再酸化を抑制する。
プリント回路基盤の製造では、微量の又は小滴の半田フラックス及び粘性材料、すなわち50センチポアーズ以上の粘度を有する材料を含めた液体材料を、回路基盤に塗布させることがしばしば必要である。これらの液体材料と粘性材料には、半田フラックスの他に、接着剤、半田ペースト、半田マスク、グリース、オイル、カプセル材料、ポッティングコンパウンド、インク、及びシリコーンが含まれる。
【0008】
フラックスをプリント回路基盤に塗布するための公知の構造及び方法には、米国特許第5,328,085号に記載されている様に、リキッドウエーブ、発泡、ブラシ塗り、パッド印刷、又はスプレーがあるが、フラックス塗布の一様性、選択性、及び効率の目標のすべてを達成するには、いずれの方法でも不十分であると思われる。
回路基盤などの基材のための好ましい塗布法は、シリンジ又はバルブから粘性材料を分配することである。シリンジ又はバルブによる分配は広く使用されており、空気圧機構又は容積型バルブによって達成される。シリンジ分配装置によって毎秒4ドットを超える粘性材料の分配を行うことは困難である。
【0009】
一般的に、米国特許第5,320,250号に記載されている様に、シリンジ分配装置は通常、分配装置のシリンジ先端を基材の極めて近くに、すなわち小さな滴では0.005インチの距離に、また大きな滴では0.060インチの距離に置く。粘性材料はシリンジ先端から押し出されて基材に接触するが、粘性材料はなおもシリンジ先端につながっている。粘性材料の基材との接触が失敗した場合には、基材に接着せず、滴とはならない。粘性材料と基材の接触を「濡れ」と呼ぶ。粘性材料が基材の表面に接触した後に、シリンジ先端は引き戻され、その結果生ずる糸は切られて滴が形成される。
従来の技術による方式に伴う一つの問題は、液体材料のビードがノズルに糸を引く、又は粘着することで、これは、正確な数量の液体材料を分配するという送出機構の能力に悪影響を与える。糸引きは低圧において、例えばシリンジの中の圧力が乱高下している時に最も発生し易い。この理由から、糸引きはまた、分配時間が短くなるとさらに頻繁に発生する。分配の最終段階におけるノズル先端からの液体材料の糸引きを、シリンジの内圧を負にすることによって、ある程度回避することができる。しかし、分配を再び開始すると、ノズル先端における液体の蓄積がほぼ必ず発生し、こうして次に続く押出しの安定性に悪影響を与える。
【0010】
シリンジから流体を分配する別の方策が米国特許第5,320,250号に開示されており、この場合には、分配装置は、粘性材料用貯蔵部又はシリンジを有し、貯蔵部又はシリンジは、この貯蔵部から粘性材料を連続的に受け取るための室と連絡している。この室は、その外壁を形成する可撓性の弾性ダイヤフラムを有する。衝撃機構が所定の運動量をダイヤフラムに加えて、所定の微量の粘性材料を室からノズルを通じて高速で推進する。この微量の粘性材料は、粘性材料の非常に小さな噴射の形態をなす。停止手段によってこの衝撃エネルギが除去されると、室圧力と噴流の前方運動量との突然の低下が噴射を「締め付け」、滴を形成する。多くの粘性材料に対して室を加熱して材料の粘度を調整する。貯蔵部を気体で加圧して、室の中に粘性材料を押し込むことが好ましい。この種の設計に伴う一つの問題は、粘性材料の噴射を形成するために加えられる高速によって、噴流の末尾がさらに小さな滴に分裂して、衛星(サテライト)を形成することである。
従来の技術による装置の諸問題の幾つかを解決するために、粘性材料がシリンジの中に、その粘度に応じて約4psi?約12psiの一定空気圧の下で存在し、この圧力が回転容積型ポンプの室中への材料の安定した流れを確保するという、2段階送出システムを使用する。ポンプは、高密度プリント回路(PC)基盤の上に毎時25,000ドットもの粘性流体を分配する。粘性材料はシリンジ先端から押し出され、先端にまだ連結されている間に基材と接触するので、シリンジからの送出に関する前述と同じ問題が存在する。
【0011】
従来の技術は、液体や接着粘性材料の滴をPC基盤などの加工品の上に塗布することに関する問題の多くを克服したが、迅速な塗布を必要とするときの液体や粘性材料のノズルへの糸引きの問題は、分配装置を搭載したロボットを滴毎に強制的に上下動させることになる。この運動は滴を塗布できる速度を低下させる。ローソリッドフラックスの分配に関する別の一つの問題は、フリップチップ及びボールグリッドアレイ(BGA)機構の製造における半田フラックスのキャリアへの選択的付着に関する問題である。フリップチップ機構では、フラックスはマザーボード(母板)とも呼ばれるチップキャリアの相互接続区域に塗布される。それから、チップの片側上の数百の接続点の各々に一般的に直径が約0.003インチ?約0.005インチ(約3?約5ミル)の半田ボールを有するシリコンダイまたはチップをマザーボードの上に載せる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
半田を流動させるために、マザーボードを加熱すると、フラックスと接触する半田ボールはチップとマザーボードとの間に半田付けされた接続を形成する。
一般的には樹脂系フラックスであるローソリッドを塗布する従来の技術に伴う一つの問題は、必要以上にフラックスを塗布することである。これは結果的に、清浄時間の延長、材料の無駄、加工時間の延長をもたらす。さらにまた、マザーボードに添付するフラックスの厚さが大き過ぎるとき、すなわち半田ボールボールの直径よりも厚い場合には、チップは半田ボールが溶融すると「浮く」傾向を有し、この結果、チップとマザーボードとの間が整列せず、かつ/または相互接続が悪くなる。
半田フラックスの塗布に関する別の一つの問題は、スルーホール部品を有する他の基盤に関するものである。この場合には、基盤は全体にわたってスルーホールまたは開口部を有し、電気部品のリード線はこれらのホールに挿入されている。ホール内部のリード線の半田付けはフラックスの塗布を必要とするので、リード線を挿入すべきスルーホールの区域だけにフラックスを塗布できることが非常に有利である。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、従来の技術の方法及び装置の問題及び制約を解決するために、プリント回路基盤の上に間隔を置いて配置されたノズルオリフィスから少量の液体又は粘性材料を高温で分配するための方法及び装置を提供することである。本発明の別の目的は、少量の液体又は粘性材料を高温に加熱することによって、少量の液体又は粘性材料を分配するための糸引きを少なくし、衛星の形成を最少に抑える方法及び装置を提供することである。
【0014】
さらに別の目的は、材料が分配されているノズルの末端から材料が離れ、下方に向かって基材上に推進され、基盤上に液体又は粘性材料の微小な滴を形成する様にし、バルブをバルブ座に対して急速に閉鎖し、材料に運動エネルギを与えることによって、加熱されたノズルの細長いオリフィスを通して液体又は粘性材料の小滴を分配するための方法及び装置を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、多数の滴の内の少なくとも2個が同じ箇所に落下して一つになり、所望の形状の基材上に最終的な滴を形成する様に、ノズルの細長いオリフィスを通して変化する個数の液体又は粘性材料の滴を基材上に分配するための方法を提供することである。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、ノズルヒータの温度を調整することにより、滴を分配する基材の表面上の液体又は粘性材料の上表面の高さを変えるための方法を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、フラックスの厚さが半田ボールの直直径よりも小さくなる様に、各相互接続点に半田ボールを有するフリップチップを取り付けるべきマザーボードの表面に半田フラックスを塗布するための方法を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、半田フラックスの滴が一緒に流動し、所望の厚さの一様な被膜を形成する様に、PC基盤などの基材の表面上に半田フラックスの複数の滴を選択的に塗布するための方法を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、加熱延長要素を清掃するためにヒータ機構を容易に取り外せる様に、分配装置ハウジングの加熱延長要素の周りに配置されたヒータ機構を含む、液体又は粘性材料の小滴を分配するための装置を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、ノズルが薄壁チューブで構成され、プラスチックで被覆することができる、液体又は粘性材料の小滴を分配するための装置を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、バルブがバルブ座に対して3つの位置を有し、第1位置で材料の大部分が供給源ならびにノズルに逆流する液体又は粘性材料の小滴を分配するための方法を提供することである。第2位置では、供給源への流れが減少し、残りがノズルに流れ、ノズルから材料の糸を分配する。最後に、バルブがシートに対して座っている場合に、供給源からの流れが停止し、ノズルから分配されている流れが壊れて、滴を形成する。
【0018】
本発明によって、フラックス又は表面実装接着剤などの少量の液体又は粘性材料を分配するための方法を提供する。この方法は下記の工程を含む。加圧された液体又は粘性材料が分配装置からバルブ機構に分配される。加圧された液体又は粘性材料は、バルブ機構の中で約22□?約75□に加圧され、バルブ機構に取り付けたノズルの細長いオリフィスを通る流れとして分配される。加熱され、加圧された液体又は粘性材料の流れは、バルブ機構を急速に閉鎖することによってノズルから放出され、滴を形成する。滴は下方に向けてプリント回路基盤の上に推進され、回路基盤上に液体又は粘性材料の微小な滴を形成する。さらに本発明によって、少量の液体又は粘性材料を分配するための分配装置を提供する。分配装置は、加圧された液体又は粘性材料のシリンジ及び加圧された液体又は粘性材料がそこを通って分配される出口チューブに接続されたハウジング機構を含む。バルブ座機構は出口チューブの開放末端に取り付けられている。バルブ座機構は、その中を通り末端にバルブ座を有する流路を有し、通路の反対側の末端にノズルを有する。バルブシャフトがハウジング機構を通って伸び、出口チューブから外に突き出ており、バルブシャフトは、直角に配置されてバルブ座と係合した一端を有し、流路を閉鎖する。制御機構がバルブシャフトを、バルブ座と係合密封する位置、及び開放する位置に往復運動させる。バルブ座機構内の液体又は粘性材料を加熱するために、バルブ座機構の近くに加熱要素が配置されている。
【0019】
また本発明によって、多数の滴の少なくとも2個が同じ箇所に落ちて一緒になり、所望の形状を有する基材の上に最終的な滴を形成する様に、分配装置のノズルの細長いオリフィスを通して基材の上に分配される液体又は粘性材料の滴の個数を変化させる方法も開示する。
本発明のさらに別の実施形態は、分配装置のバルブ座機構の近くに配置された加熱要素の温度を設定することによって前記滴が分配される基材の表面上の、液体又は粘性材料の1個または複数の滴の上表面の高さを変化させる方法に関する。
【0020】
さらに本発明によって、フラックスの滴が一緒に流れ、所望の大きさまたは厚さの一様な被膜又は被覆を形成する様に、PC基盤などの基材の表面上に半田フラックスの複数の滴を選択的に塗布する方法を開示する。
また本発明によって、細長い加熱された延長要素を有する分配装置ハウジングを含み、加熱延長要素を通って延びる流動穴の下側末端にバルブ座機構が取り付けられている、分配装置の第2実施形態を開示する。ノズルで溝が加熱延長要素の下端に取り付けられ、加熱機構が細長い加熱延長要素の周りに取外し可能に配設されている。
【0021】
本発明によって、少量の液体を分配する方法を開示する。この方法は、バルブ機構を通って延びる第1流路の入口末端に液体燃料を供給する工程を含み、バルブ機構は、第1流路の出口末端の近くに配置されたバルブ座及び第1流路の中に配置された往復運動バルブを有する。バルブヘッドがバルブ座から間隔をおいた第1位置にある時、ノズル機構を通って延びる第2流路は液体材料で満たされている。第2流路は、第1流路の出口末端から液体材料を受け取る入口部分、及び液体材料を分配する延長ノズルを通って延びるオリフィスを備えた出口部分を有する。バルブは第1位置からバルブ座の近くに間隔をおいて配置された第2位置に加速され、これによって第1流路中の液体材料の大部分の一部が第1流路の入口末端に向かって流れ、第1流路中の残りの液体材料は出口末端から第2流路の中に流れ、延長ノズルの出口から液体材料の流れとして分配される。バルブは第2位置からバルブ座と係合する第3位置に向かって移動し続け、これによって第1流路の入口末端に向かう液体材料の流れが減少し、第2流路を通る液体材料の流れが急速に増加する。最後に、バルブは第3位置に移動してバルブ座に座り、これによって第1流路の入口末端に向かう液体材料の流れは切られて、延長ノズルの出口から分配される液体材料の流れはノズルオリフィスの出口末端から切れて、滴を形成する。
また本発明によれば、少量の液体材料を分配するための装置は、薄壁チューブで構成された延長ノズルを有するノズル機構を含む。ノズルの出口末端及びオリフィスはプラスチックで被覆することができる。
本発明の現在好ましい実施形態の構造、操作、及び利点は、添付の図面を参照して行う以下の説明を考察することによって、さらに明らかになろう。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1及び2は、標準的な市販されている液体又は粘性材料を充填したシリンジ12から、プリント回路(PC)基盤などの基材14の上に少量の液体又は粘性材料を分配するための分配装置10を示す。装置10の分配装置ハウジング20は入口18と有し、その中にシリンジ12の出口16が取り付けられている。入口18は、穴22によって、流路25を形成する流動穴24の入口開口部23に接続されている。流動穴24の出口26は出口チューブ30を通って伸び、流路31を形成する穴35の第1末端28に接続されており、その通路から加圧された液体又は粘性材料が分配される。バルブ座機構32が、出口チューブ30の第2開放末端34に取り付けられている。バルブ座機構32は、その中を通って伸びる流路36を有し、その中にバルブ座38が配置されている。流路36の入口末端は、出口チューブ30の流路31と流動連絡され、通路36の反対側出口末端にはノズル40が取り付けられている。
【0023】
バルブシャフト42が、ハウジング機構20の流動穴24と出口チューブ30の穴35を通って伸び、バルブ座機構32の流路36の中に入っている。バルブシャフト42は、バルブ座38と係合密封して通路36を閉鎖するように適合した下端44を有する。シャフト42の反対側上端46は、分配装置10の制御機構48と係合している。制御機構48はバルブシャフト42を、バルブ座38と係合密封する位置、及び開放する位置に往復運動させる。また本発明によって、後で詳しく説明するように、バルブ座機構内の極めて少量の液体又は粘性材料を加熱するために、バルブ座機構32の近くに加熱要素50が配置されている。
分配装置ハウジング20は、入口18を垂直に配置された流路24に接続する一般に水平の穴22を含み、流路24を通ってバルブシャフト42が往復運動して受け入れられる。シールリング52がシャフト42の周りに密封関係で配置され、流露24の入口23の上に位置して、確実に、穴22を通過して流路24の中に入る粘性流体がバルブシャフト42を通り過ぎて制御機構48の中に漏洩しないようにする。シールリング52は、制御機構48のハウジングブロック56の下表面によって正しい位置に保持されたリング54によって、正しい位置に固定されている。
【0024】
図1に示す様に、出口チューブ30は、流路24の出口26が出口チューブ30を通って伸びる穴35の入口開口60と整列するように、例えば取付けプレート58などの従来の手段によって分配装置ハウジング20に固定された第1末端を有する。出口チューブ30は、ねじ切りされた接続部(図示せず)などの従来の手段によってバルブ座機構32が固定されている第2末端34を有する。
バルブ座機構32(図2を参照)は、一般に円筒状の取付け体70を含み、これを通って軸方向段付き穴72が伸びている。軸方向段付き穴72は、ねじ切りされた接続部(図示せず)などのいずれかの従来の手段によって出口チューブ30を取り巻いて取付け確保された上端部74を有する。軸方向段付き穴72は、上端部74と交差して、これより直径が小さい中間部76を含む。出口チューブ30の下端34は、中間部76と上端部74との交差部に形成されたショルダ77に座っている。カップ形状のバルブ座部品78が中間部76の内部にある。段付き穴72は、中間部76より直径が小さくて中間部76と交差する下端部80を有し、カップ形状のバルブ座部品78の下端が座っているショルダ82を形成する。
【0025】
図2でよく分かる様に、カップ形状のバルブ座部品78は、これを通って伸びる中央段付き穴84を通る流路36を有する。段付き穴84は、中心軸87の周りの出口チューブ30の穴35と実質的に同軸である細長い上端部86を有する。中央段付き穴84の下端部88は、上端部86よりも小さな直径を有する。バルブ座38は、上端部86と下端部88の間の中間テーパー部90によって形成されている。カップ形状のバルブ座部品78は、実装本体70によって出口チューブ30の下端34において穴ぐり62内部の穴35の中に取付け固定されている。穴ぐり62と穴35の交差部における溝93に中にあるシールリング92が、バルブ座部品78の上端95を密封し、バルブ座部品78と実装本体70との間の液体又は粘性材料の漏洩を防止する。バルブシャフト42の下端44には、一般に球形のバルブヘッド92があり、これはバルブ座38に座っている。球形のバルブヘッドを開示するが、所望に応じて別の形状のバルブヘッドを使用することも本発明の範囲内である。
【0026】
本発明の主な特徴は、ろう付け接続などの従来の手段によってバルブ座部品78の下端部88の中に固定されたノズル機構40に関する。ノズル機構40は、これを通って伸びる流路96を含む。流路96は、下端部88を通って伸びる流路36と流動連絡された入口部98を有する。流路96はまた延長ノズルオリフィス100を含み、ノズルオリフィス100の上端は、入口部98と整列してこれと交差し、ノズルオリフィス100の出口端101から液体又は粘性材料の流れが分配される。延長ノズルオリフィス100の長さ/直径比は、少なくとも約3/1?約5/1である。延長ノズルは、一般的には約0.016?約0.080インチの長さと約0.003?約0.016インチの直径とを有する。オリフィス100の長さが長過ぎる場合には、バルブヘッド92がバルブ座38に接して閉じると、液体又は粘性材料がノズル40の端から切れないので、オリフィス100の長さは重要である。代わりに、オリフィス100の長さが短過ぎる場合には、液体又は粘性材料は糸を形成せず、または、滴が塗布される基材14に滴が直線経路で分配されないことはさらに重大である。
図2でよく分かる様に、加熱要素50が、バルブ座機構32の区域とバルブ座機構32の近くで、実装本体70の周りに配置され、これに固定され、カップ形状のバルブ座部品78の内部の極めて少量の加圧された液体又は粘性材料を加熱するが、これについては後で詳しく説明する。加熱要素50は、ミネソタ州ミネアポリスのMinco Products Company製のKaptonを裏当てしたサーモフォイル抵抗加熱器で構成され、リード線104、106によって温度制御装置102に接続されている。
【0027】
本発明の別の重要な特徴は、バルブ座38から間隔を置いた第1位置(図示せず)とバルブ座38と係合した(図2に示す様な)第2位置との間でバルブヘッド92を往復運動させるための制御機構48に関する。第2位置は、後述の様に、液体又は粘性材料がバルブ座部品78の上端部86に集まって、温度制御装置102によって事前設定された温度にまで加熱されるので、省略時位置である。図1に示す様に、制御機構48はハウジングブロック56を含む。中央に配置された長手方向の穴110は、ハウジングブロック56を通って伸び、軸87の周りに同軸に形成されている。バルブシャフト42は穴110通って伸び、穴110の上端から空気室ブロック113の段付き穴室112の中に突き出ており、空気室ブロック113は上部穴116と交差する下部穴114を有し、上部穴116は下部穴114よりも大きな直径を有する。円筒状シール要素118が支持構造120の上に載せられ、支持構造120は中央穴122を有し、中央穴122を通ってバルブシャフト42が伸び、円筒状シール要素118が支持構造120の上に固定されている。空気入口124が、チューブ126によって圧縮空気源(図示せず)に接続されている。チューブ126と入口124との間に位置する空気ソレノイド128が、下部穴114の中のシール118の下に形成された室への空気流を制御する。シャフト42の周りの空気シールリング119が、穴110と穴室112の間の穴ぐり121の中にあって、穴110への空気の漏洩を防止する。
【0028】
ばねハウジング130が空気室ブロック113の上表面に対して取付けられ、中央穴132によって形成されている。ばね保持器134がバルブシャフト42の上端の上に確保され、支持構造120と突合せになっている。カップ形状のばね調節部品136が、ばねハウジング130にねじ込み可能に固定されており、一端では開いて他端では貫通して伸びる穴141を持ったベース139によって閉じられた細長い穴138と、穴141の周りの内部底表面140とを有する。ばね保持器134とばね調節部品136の底表綿140との間に、圧縮ばね142が伸びている。ばね調節部品136には、ロックナット144ががねじによってねじ込み可能に確保され、こうして部品136をばね保持器134に近づけた位置で、又はばね保持器134から離してロックすることができる。ばね142の圧縮は、ばね調節部品136がばね保持器134の方に移動すると増加し、ばね調節部品136がばね保持器134から離れる方向に移動すると減少する。
本発明の重要な一つの特徴は、ばね保持器134の上の圧縮ばね142によって、最終的にはバルブシャフト42のバルブヘッド92によって行使される閉止力に関する。圧縮ばね142は、約1インチの高さ及び約13?約17ポンドの閉止力をあらかじめ有することが好ましい。ばね142の圧縮を、前述の様にばね調節部品136を位置付けることによって調節することができる。
【0029】
制御機構48の別の一つの特徴は、穴141の中でねじ込み可能に固定されるロッド148に取り付けられ、圧縮ばね142を通過してばね保持器134の上に伸びるバルブシャフト44の上端を圧迫するノブ146である。ロッド148を上下動させることによって、バルブシャフト42のストロークをバルブ座38に対して調節することができる。
本発明の利点をさらに理解するために、操作の説明を行う。第一に、一般的には約50,000?約250,000センチポアーズの粘度を有する液体又は粘性材料のシリンジ12を、分配装置ハウジング20の入口開口18に取り付ける。圧力調整装置152と低圧空気源(図示せず)とに接続された空気チューブ150を、シリンジ12の入口に結合して、バルブシャフト42の周りの穴22と流路24の中に、約4psi?約30psiの一定の圧力で液体又は粘性材料を押し込む。図1と2に示す様な省略時位置では、バルブヘッド92はバルブ座38に座っている間、カップ形状のばね調節部品78は少量の液体又は粘性材料によって満たされる。実装本体70は、例えば真鍮などの熱伝導材料から形成され、実装本体70の周りに配置されこれに固定された加熱要素50から、一般的には炭化タングステンによって作られたバルブ座部品78に熱を伝達して、バルブシャフト42を取り囲むバルブ座部品78の中の液体又は粘性材料を加熱する。
【0030】
この作業工程において、接着剤などの液体又は粘性材料は、約22□?約75□、また好ましくは約40□?約65□の(材料に応じた)温度範囲に加熱される。この温度範囲で、粘性係数は比較的一定に保たれるが、弾性係数は温度の上昇と共に上昇する。粘性材料の弾性係数の上昇は、材料はより固くなっているが、同時にほぼ一定の粘性係数に基づいて流体の様な品質を表すことを示すものである。粒子、ろう状の固体触媒、及び樹脂のマトリックスである、粘性材料の性質は、ホットメルトとは異なり、高温でさらに流動的となる他の高分子流体である。したがって、バルブ座部品78の中にある粘性材料は短時間で加熱される。この短時間の加熱中に、粘性係数の弾性係数に対する比は低下する。バルブヘッド92がシート90から上昇した後、粘性材料は細い流れとなってオリフィス100の出口101を通ってこれから押し出される。次いで、バルブヘッド92がバルブ座90に突き当たってこれを閉鎖した後、流動する材料の突然の減速は接着剤の降伏応力に勝って流れを切る。加熱された粘性材料の固体の性質によって、粘性材料は糸となって流れるのではなく、オリフィス100の出口101から切り離される。接着剤を短時間だけ選ばれた温度範囲に維持し、触媒が溶融して材料の最終硬化が起る温度を超えないことが重要である。この理由で、バルブ座部品78のみを加熱し、分配装置10の残りの部分を加熱しない。
【0031】
バルブを開くために、バルブシャフト42が引っ込んでバルブ座38からバルブヘッド92を引っ込める。この工程は、空気ソレノイド128から空気入口124に、次いでダイヤフラムシール118の下の空気室に圧縮空気を導入することによって行われる。空気はシール118と作用し合い、バルブシャフト42をバルブ座38から離れる方向に、圧縮ばね142の方へ動かす。この作動期間中に、加熱された粘性材料はバルブヘッド92とバルブ座38の間を流れ、ノズルオリフィス100の中に流入する。同時に、バルブ座部品78の中にあって、バルブシャフト42、バルブヘッド92、及びバルブ座38を取り囲む粘性材料は、加熱要素50によって所望の温度にまで加熱される。結果として生ずる加熱され加圧された粘性材料の流れは、オリフィス100の出口端101につながった糸となって流動する細い流れとして、ノズル40のオリフィス100の出口101を通って分配される。
【0032】
本発明の重要な態様は、粘着液又は粘性材料を、材料が非常に短い時間に個体として作用し、次いでオリフィス100の出口端101から切り離された時には、より流体状態に戻る様に、高周波で変形させることである。オリフィス100から液体又は粘性材料の糸を切るために、空気ソレノイド128を止め、ばね142がバルブ92をバルブ座38に押しつけ、非常に短い時間、例えば約22.6ミリ秒、好ましくは約10.3ミリ秒以下だけバルブを閉じる。ダイヤフラム118の下の空気室112中の空気は、空気ソレノイド128の中の排出通路(図示せず)を通じて排出される。同時に、圧縮ばね142はバルブヘッド92を、バルブ座38に対して座った位置に急速に移動させる。これは、加熱された液体又は粘性材料をオリフィス100の出口端101から押し出す容積移送型工程である。バルブ座38に対するバルブ92の閉鎖の衝撃力は、液体又は粘性材料を通じて衝撃波を発生させ、この衝撃波は、流動中の材料の流れの急激な減速とあいまって液体又は粘性材料の降伏応力に勝って、ノズル40の出口端101から分配される液体又は粘性材料の流れを切り、材料の滴を形成する。オリフィス100の出口端101において形成された液体又は粘性材料の糸が細いほど、降伏応力にうち勝つことにより容易である。バルブ92の閉鎖によって発生する衝撃波を消散させることのできる液体又は粘性材料の量を最少に抑えるために、バルブヘッド92の底表面をノズルオリフィス100のテーパー入口98の近くになる様に、ノズル40がバルブヘッド92に対して位置付けられていることに注目されたい。
【0033】
ノズル40からの液体又は粘性材料の滴は、毎時200,000滴まで、一般的には毎時70,000滴までの速度で分配可能である。滴は、プリント回路基盤などの基材14の表面上に塗布されるので、表面張力及び回路基盤上への衝撃が最終滴形状に寄与する。最終滴形状に制御における別の要素としては、熱の付加、単一の大きな滴を形成するための複数の小滴の使用、及び回路基盤の上からのノズルオリフィス100の出口端101の高さがある。最終分配工程はバルブ座38に対するバルブヘッド92の容積移送によって起るので、各滴の容積量の精度を入念に制御することができる。
粒子、ろう状の固体触媒、及び樹脂のマトリックスである、粘性材料の性質は、材料が固体触媒の溶融開始温度に達すると、架橋反応が起って材料が固体の塊になることである。本発明では、バルブ座部品78にある粘性材料は、触媒の融点のわずか下の温度範囲にまで加熱され、架橋反応を回避する。加熱中に、粘性係数の弾性係数に対する比は低下する。
【0034】
ノズルから、すなわち材料を圧力下で流路36の中に押し込み、バルブ座38に対してバルブ92を閉鎖することにより流路36から材料を放出させて、液体又は粘性材料の滴を分配するための第1実施形態の方法は、単一の滴を分配するためには効果的であるが、より大きなサイズの滴の形成は、各滴のサイズは一般的に、バルブヘッド92がバルブ座38から引っ込む時間長を変化させることによって制御されるので、時間がかかる。本発明の第2実施形態によれば、より大きなサイズの滴を形成するための時間は、複数の滴が合併されてより大きなサイズと所望の形状を有する単一の滴を形成する様に、基材の表面上の単一箇所に同じサイズの複数の滴を分配することによって短縮される。図3に示す様に、前述の様な液体又は粘性材料の第1滴200Aが、基材14の上表面202の上に第1形状で分配される。次いで第2滴200Bが、第1滴200Aの上に落ちてこれと合併して、一般的には第1滴200A自体よりも大きな直径を有する第2形状の最終滴204を形成する様に、同じ箇所に分配される。2つの滴について説明したが、3、4、またはそれ以上の個数の滴を同じ箇所に分配することも本発明の範囲内である。
【0035】
複数の連続する滴200A、200Bを単一箇所に塗布して所望のサイズと形状の一つの最終滴204を形成するための方法は、比較的長時間バルブヘッド92を単に開けたままにして、すなわちバルブ座38から引っ込めたままにして一つの同様なサイズの滴を形成する方法と比較すれば、所要時間の大幅な短縮になるので有利である。例えば、所定のサイズの単一滴200Aをバルブ座機構32から15ミリ秒(msec)で分配する場合には、4倍の大きさの滴は、シリンジ内に圧力すなわち約10ポンドで分配されるために200msecを必要とする。他方、4個の単一滴200Aを同じ箇所に分配する場合には、各滴は15msecで分配され、単一滴の4倍の大きさの一滴を分配するには全体で60msecとなる。したがって、図3に示す装置10を、複数個の滴すなわち2、3、または4個の滴を、装置10を定常位置に保持したまま、バルブヘッド92をバルブ座38に対して急速に引っ込め、次いで閉鎖することによって分配する様にプログラミングすることができる。次いで装置10を、別の選択された箇所に複数の滴を塗布するために、装置が取り付けられているロボット装置(図示せず)などの従来の手段によって別の箇所に移動させることができる。結果は、所望の構成の基材上のどの箇所にも様々な形状の滴を急速に分配するために装置10をプログラミングする能力である。
【0036】
本発明の別の態様は、滴が分配される基材14の表面202上における液体又は粘性材料の滴200Aの上表面206の高さ「c」を変化させることに関する。
図4に示す様に、左から右への液体又は粘性材料の滴は、それぞれ左隣の滴と比較して約2□の分配温度の上昇を示すものである。温度が高くなると、基材14の上表面202の上に分配される材料滴の高さ「c」は小さくなる。また滴の温度が高くなると、滴の輪郭が変化し、すなわち分配される材料滴は一般に大きな直径を有し、すなわち滴の上表面はより平坦になって、基材14の上表面202により近く位置する。多数の滴を分配する前に、分配される材料の温度を、実験的な方法で決められる様に、所望の高さが得られる様に設定する。上述の様に、温度を温度制御装置102及び加熱要素50によって制御することができる。次いで、所望の温度にある材料滴を、滴の上表面206が基材の上表面から所望の高さ「c」にある様に、基材14の上表面202の上に分配する。
【0037】
2個の滴が落ちて互いに重なり、基材14の上表面202上の単一箇所で合併され、単一滴の高さよりも大きな基材上表面上の第2高さを有する最終滴を形成する様に、所定の温度にある液体又は粘性材料の少なくとも2個の滴を分配することも、本発明の範囲内である。最終滴の高さと輪郭は、材料の粘度及び材料が分配される温度によって決まる。前述の様に、液体又は粘性材料の追加の複数の滴を同じ箇所に分配して合併させ、所望通りに、より大きな高さを有する最終滴を形成することができる。
本発明の他の実施例は、PC基盤上に間隔をあけた半田フラックス滴を選択的に塗布し、該滴をまとめて流すことで均一なコーティングまたはフィルムにする方法に関する。図5には、マザーボードとして知られたPC基盤300が示されており、PC基盤300は、その上部表面304上に示した複数の相互接続部302を備えている。相互接続部は薄く、均一または膜状のフラックス材料がその上に塗布される基盤の領域に対応した周囲線306で囲まれている。後で詳細に述べるように、フラックス材料塗布後は、半田310の小球に互いに取り付けられた多数の相互接続店を備えたフリップチップ308が基板300に半田付けされる。フリップチップ308はPC基盤300に隣接配置されているので、チップ308の底部表面312は基盤300の表面304と同じ方向で上方に面している。その後、自動制御を用いて、チップ308を上で移動させると、チップ308の底部表面312は基板300の上部表面304に対して位置することになり、半田球310のそれぞれが基盤300の上部表面304上の相互接続部302の一つに対して係合する。
【0038】
オハイオ州、ウエスト レイクのノードソン・コーポレーションから入手できる搬送式選択塗装システム等の半田フラックス滴を塗布する典型的なシステムを図11に示している。それぞれパレット314に担持されたPC基盤300が隣接する一連のコンベヤ316、318、320に向けて下方に移動される。各パレット314及び基盤300は、最初コンベヤ316上の予備加熱ゾーン323を通過するので、基盤300は、代表的には華氏約100度と華氏約200度との間、好ましくは華氏約120度と華氏約130度との間で所望の予備加熱温度まで加熱される。その後、基盤を有するパレット314は、後述する分配装置10の弁座組立体32を介して一連の滴としてフラックスが塗布される隣接する下流側のコンベヤ318上に移動する。
半田フラックスの滴322は、その各滴の大きさ及び滴間の間隔を選択された状態で、選択された位置に選択的に塗布されるので、滴はまとまって流れ、均一なコーティングまたはフィルムとなる。例えば、図5及び6に示すように、滴322は、図6に示すように分散して基盤300上の領域Aに塗布されるので、滴はまとまって流れ、図7に示すようにほぼ均一なコーティングまたはフィルムとなる。滴がまとまって流れ均一なフィルムになることを保証する各滴の正確な大きさ及び間隔は、半田フラックスの組成及び粘度;半田フラックスの塗布温度;及びPC基板300の温度などを含むファクターによって決まる。滴の量、滴の大きさ、滴の間隔及び滴列の数などは、適用範囲の所望の領域及び厚さを達成するために調節することができる。
【0039】
PC基盤に半田フラックスを塗布するにあたり、本発明の重要な態様では半田フラックスは約0.125インチの直径で様々な大きさを有する滴として塗布されるので、精密に分散した滴はまとまって流れ、優れたエッジ画成性を有する半田フラックスの均一なフィルムを生じる。本発明の塗布方法によれば、約0.2ミルと約5.0ミル間の塗布厚さを得ることが可能である。その上でシリコンチップ312が半田付けされるPC基盤300に滴を塗布する代表例では、フラックス層の厚さは約2.5ミルから約3.5ミルの間である。半田球は典型的には約5ミルの直径を有するので、フラックス層は、約2.5ミルから約3.5ミルに選択され、その結果約2ミルの空気の間隙が、基盤300の表面304とチップ308の底部表面312との間に延在する。空気の間隙の間隔のおかげで、半田球310とその対応する相互接続部302との間の接続を干渉するチップ308の底部表面312に対して配置されるフラックス支持面を生じることが防止される。
各基盤300が半田フラックスの滴で被覆された後、基盤は隣接する下流側の出口コンベヤ320上を通過しチップ配置装置(不図示)に移動する。本発明を実施するに際して使用される半田フラックスは、代表的には少ない固体であり、例えば5重量%以下の少量の固体を含有する半田フラックス及び残部は、イソプロピルアルコールまたは同種のアルコールなどの溶剤、ビヒクル、活性剤、界面活性剤及び酸化防止剤などである。半田フラックスの非霧化塗布は、マスキングや上塗りを必要としないので特に有利である。また、塗布がPC基盤に接触しないので、PC基盤に損傷を与えることもない。更に、自動化システムによれはより高速になり、従来の手動塗布またはそのたの自動塗布に比べてより高い品質の塗布を供する。
【0040】
コンベヤ316、318及び320は、分配ヘッド32の下でプリント回路基板308及びパレット314を移動させる簡単な、一定速度のコンベヤでよい。分配ヘッド32の下方に位置するとすぐに、分配ヘッド32がフラックス塗布作業を介して進行する間、PC基盤300の更なる移動は停止され、好ましくはヘッドの移動はマイクロプロセッサーコントローラ(不図示)で制御される。例えば、分配ヘッド32は、X、Y、Zの3軸移動まで操作可能なロボット上に載置されているので、分配ヘッドは基盤の構造及び塗布すべき半田フラックのフィルム形状に基づいてプログラムされたパターンでPC基盤の周りを移動される。典型的には、コントローラ(不図示)は、コンベヤラインにほぼ平行な第1の軸(X)に沿って固定PC基盤308上で分配ヘッド32を漸増するように移動する。その後、アクチュエータが第2の軸(Y)に沿ってPC基盤上を横方向に分配ヘッドを移動させる。Z軸の動きにより分配ヘッド32はプリント回路基板に対して位置決めできるようになる。基盤308横方向に横断しながら分配ヘッドと連動した高い速度比のため、全分配操作は、許容されたPC基盤スループット速度比(1時間につき1500PC基盤を越える)内で依然として行われ、商業的に許容される速度比と両立できる。分配ヘッド32の横方向の行程が完了するとすぐに、分配ヘッドはPC基板の他の選択されたワークパス上に分配ヘッドを位置するように第1の軸に沿って漸増するように前進させられる。この工程は、フラックスの滴が基盤の所望の部分上に分配されるまで続けられる。本発明に使用するには、単純で一定速度のコンベヤで十分であるが、フラックスステーションを介してPC基盤を漸増して搬送できるより高度なコンベヤも本発明の範疇に入ることは言うまでもない。例えば、PC基盤及びパレットは斬増して移動されるので、固定かつマルチパス式の分配ヘッドは基盤の選択された表面上に半田フラックスの滴列を分配する。基盤と分配ヘッドとの間の(第1の軸に沿った)相対移動がより複雑で高度なコンベヤシステムにより提供されるので、この変形配置された分配ヘッドは、(第2の軸に沿った)横方向に始動されるだけでよい。
【0041】
図7に示すように、フラックスのフィルム326を適切に塗布した後、図5に示すように半田のボールを有するフリップチップ308をボード300上に置く。即ちチップ308ははPCボード300上にロボット動作の機構(不図示)により置かれ、チップの底面312はボードの上面304に面して置かれ、半田ボールの各々はボード300の上面304の選定された接合点302に係合する。ここで両者を、リフローオーブン(reflow oven)内で加熱し、半田は軟化溶融し、チップをボードに接続する。フラックスが半田とキャリア表面を浄化して、酸化を排除し、かつチップとボード間の適切な接続と導通を確保する。
ここで半田フラックスのフィルムをフリップチップ取り付けのためにプリント基板に塗布することに関して本発明を説明しているが、図8に示すように、通孔を有する回路基板の特定の領域にフラックスを塗布することも本発明に含まれる。フラックスを図8および9に示す領域Bのように特定の領域に塗布することができる。これは選択した孔のみがそれを通して延在する半田付けされる電気導線を有するようにできるので好都合である。
【0042】
プリント回路基板に半田フラックスあるいは接着材を塗布することに関連して発明を説明してきたが、フリップチップのPCボードへの取り付けのごとき電子部品の製造において、フラックスや面取り付け接着材の点あるいは小滴を塗布することも本発明の範囲内にある。分配装置10の第1実施例は少量の液体あるいは粘性材料を分配するのに有効に作動するが、図13および14に示す第2実施例は以下に述べるような更なる改良点を含む。分配装置400は少量の液体あるいは粘性物質、例えば標準的で商業的に入手可能な液体や粘性物質を満たした注入器からのフラックスまたは面取り付け接着材のごときものを、上に説明したようなプリント回路基板のごとき基板上に分配することに用いられる。分配装置400はボア(内孔)406により入口室408に接続された入口404を有する分配ハウジング402を有する。入口室408は流路412を形成する流れボア410の上方に位置する。流路412の下端414内には管状のバルブ座組立体416が配置されている。該バアルブ座組立体416は圧入や半田付等により出口区画414内に固定されている。管状のバルブ座組立体416はその中に延在する流路418を有し、バルブ座420が管状バルブ座組立体416の下部閉鎖端を貫く出口開口422まわりに配置されている。流路418の入口端は流れボア410の流路412と流体的に連通しており、反対側の出口開口422はノズル424と流体的に連通している。該ノズル424は、分配ハウジング402の下部をなす細長い被加熱延長要素428の下端に固定されている。
【0043】
バルブシャフト430は入口室408、流れボア410を貫いて、バルブ座組立体416の流路418へと延在する。バルブシャフト430はバルブ座420と密閉的に係合して出口開口422を閉鎖する下端432を有する。バルブシャフトの上部は分配ハウジング402上に取り付けられた制御機構内に位置する。制御機構436はバルブシャフトがバルブ座と着脱するように往復運動させる。また本発明によれば、被加熱延長要素428のまわりに加熱組立体438が取り外し可能に装着され、以下により詳細に論ずるように流路412内の液体または粘性物質を加熱する。
【0044】
分配ハウジング402は概して水平なボア406を有し、入口404を入口室408に接続する。入口室内にはバルブシャフト430が往復運動可能に受容されている。通常のUカップスプリングシールのようなシール装置440がシャフト430と密閉関係をなして室408の上方に配置され、室408を通り流れボア410に至る粘性体あるいは液体がシャフトまわりおよび制御機構436内に漏れ出ないようにしている。図15に示すようにバルブ座組立体420は開放された上部端と閉鎖された下部端を有する概してカップ状の形状であり、出口開口422が閉鎖下部端を貫いて延在し、そのまわりにバルブ座440を有している。バルブシャフト430の下端442には概略半球形のヘッド444があり、これはバルブ座440に適合して着座する。概略半球形のバルブヘッド444を開示したが、所望により他の形状のバルブヘッドを用いることも本発明の範囲内にある。ボールとシートのサイズを選定することにより、分配される物質の異なるサイズのドットを形成することができる。ノズル組立体424(図16参照)は典型的にはネジ切りされた真鍮あるいはステンレススティール製のノズルキャップ426と、該ノズルキャップ426の閉鎖端450を貫通するボア448内に固定された延長ノズル446とを有する。ノズル446は典型的には内径約0.04?0.16インチの管より構成される。該管はステンレススティール素材で構成することができ、ボア448内にその上端452がノズルキャップ426の内側底面と同一平面になるように取り付けられる。反対側の端部456はノズルキャップ426の外側底面458を越えて延在する。バルブヘッド444はノズル446の端部452から隔置されていることに注意されたい。ノズル446はボア448内に圧入してかつ、接着またはレーザー溶接または鑞づけすることによりボア448内の所定位置に固定する。上述したようにノズルとしてはステンレススティールの管が好適であるが、通常の真鍮ホルダーとタップを用いてはめ込むステンレススティールインサートからなるホットメルトノズル(これは部品番号No.237216として本発明の譲受人であるオハイオ州ウエストレイクのノードソン コーポレーションから入手可能である)を用いることも本発明の範囲内である。ノズルホルダー組立体424は、ノズルキャップ426の内側底面454が延長要素428の底面に押しつけられるように被加熱延長要素428の端部に装着される。これにより液体または粘性物質が被加熱延長要素428とノズルキャップ426の内側底面454との間から漏れ出ることが防止される。
【0045】
図14及び15を参照すると、加熱組立体438は、加熱延長要素428の周りに配置され、複数のネジのような不図示の一般的な方法によって固定されている。加熱組立体438は、頂部外側表面468と底部外側表面470の間に延在する段差が形成される内部ボア466を伴ったヒータハウジング464を含む。側部ボア472は、ヒータハウジング464の側壁474から段差が形成される内部ボア466まで伸びている。加熱エレメント476は、段差が形成される内部ボア466内に配置され、一般的にはアルミニュウムのような熱伝達材料から構成されるスプール478を含み、加熱延長要素428の外側表面482上に於いて摺動可能且つ移動可能に載置される通し穴480を有する。加熱ホイル型の抵抗加熱ヒータ484は、外側表面486の周りに巻かれ、ヒータ484の両側面に於いてエポキシ樹脂488によって適当な位置に固定される。プレート490は、側部ボア472の開口を閉じ、概プレートに載置されるバルクヘッド電気コネクタ492を有する。各々2本のワイヤからなる494と496の二つのセットは、抵抗加熱ヒータ484をバルクヘッド電気コネクタ492に接続し、これにより温度の制御及び抵抗加熱ヒータへの電力の供給がなされる。第一の実施例で述べたように、不図示のワイヤケーブルが、電気コネクタ492を温度コントローラに接続している。
【0046】
本発明の第一の実施例に於いて提供された図2に示される加熱エレメント50と比較した際の加熱エレメント462の構造に於ける重要な特徴は、ノズル組立体424と加熱延長要素428とをクリーニングのために取り外す場合に、加熱延長要素からの加熱組立体462の分離の容易性にある。上記取り外しは、ネジ山が切られたノズル組立体426をねじり、加熱延長要素428から外すことにより簡単に達成することができる。さらに、概加熱延長要素は、概エレメントを通り且つ分配ハウジング402の中まで伸びる不図示のネジを取り外すことにより、一般的には分散ハウジング402からネジ外すことができる。また、加熱組立体462は、第一の実施例に於いてしばしば問題となったヒータ制御のためのワイヤを伸ばすことを起こすことなく、加熱延長要素の外側表面480からスライドさせることができる。たまっているであろう液体或いは粘性材料の何れかの清掃除去のために加熱延長要素を溶剤中に漬けることを可能とする必要があり、加熱延長要素428から加熱組立体462を取り外すことは重要である。溶剤は、エポキシ樹脂を溶解し且つ抵抗加熱ヒータ484を台無しにするため、加熱エレメント476との接続をさせるべきではない。必要であれば、スプール478は、頂部表面468に於けるボア466の開口を通してヒータハウジング464から取り外すこともできる。スプール478は、ボア466及びスプール478の上端部の周りに配置されたタブ498の間にはめ込まれた僅かな出っ張りによって適当な位置に保持される。
【0047】
第一に実施例のその他の変形は、図14に示すように、バルブ座420から隔置された不図示の第一位置とバルブ座420と係止状態ではまる図14及び15に示される第二位置との間において、バルブヘッド432を往復運動させるための制御機構436に関するものである。液体或いは粘性材料が流路412に集まり且つ前述のようにヒータエレメント476によって予め設定された温度まで加熱されることから、該第二位置は適切ではない位置となる。図14に示されるように、制御機構436は、ハウジングブロック500を含む。軸方向に配置された縦のボア502は、ハウジングブロック500を通して伸び、分配ユニット400が組み立てられた際にはバルブシャフト430の周りに同軸に配置される。バルブシャフト430はボア502を通して伸びており、更に中段ボア508と交差する下段ボア506と、停止表面512を形成するために中段ボア508より大きな直径を有した上段ボア510に対して順番にこれと交差する中段ボア508とを含む段が形成されたボアチャンバーの内部にまで、バルブシャフト430はボア502の上端部から突き出している。第一の実施例に於ける円筒状シールエレメント118とほぼ同一である円筒状シールエレメント514を伴う空気作動ピストン513は、バルブシャフト430が内部に伸びる中央ボア518を順番に有する支持構造体516上に載置され、これに取り付けられる。ピストン513は、ボア510の内部を往復し、ピストン下方にボア510の空気中に大気チャンバー507を形成する。ハウジングブロック500を通って延在し且つボア502と交差する空気入口520は、不図示の加圧空気供給源と接続されている。図13に示される空気ソレノイド515は、分配装置400の前部に載置され、ボア502から空気を受け取る。ソレノイド515は、第一の実施例に於けるものとほぼ同一である空気ピストン513及び空気シール514の下方の空気流れを制御するために、空気チャンバー507への空気の流れを制御する。シール522と同一のシール522は、バルブシャフト430の周りに配置され、バルブシャフト430の移動を生じせしめる上段ボア510への空気の漏れを防止するために、ボア502と中段ボア508との間の下段ボア506の中に配置される。
【0048】
スプリングハウジング523は、ハウジングブロック500の頂部表面に接するように載置され、且つ中央ボア524を伴って形成される。スプリングリテーナ526は、バルブシャフト430の上端部に固定して載置され、支持構造体516に対して付勢される。スプリング調整コンポーネント528を形成するキャップは、スプリングハウジング522に対してネジ止めにより固定されており、これらを通って伸びる段差が形成される細長いボア530を有している。圧縮スプリング532は、スプリングリテーナ526と、異なる直径を有するボア530の二つの部分との交差部に於いて形成される表面534との間に延在している。ロックナット536は、複数のネジによってスプリング調整コンポーネント528に対してネジ止めにより固定されており、これによって概コンポーネントを、スプリングリテーナ526に対してより近接した或いはこれから隔置された位置に於いて固定することができる。スプリング532の圧縮度は、スプリングコンポーネント528がスプリングリテーナ526の向きに移動された場合には増加し、スプリングコンポーネント528がスプリングリテーナ526から離れる向きに移動された場合には減少する。
【0049】
第一の実施例に於いても述べてきたように、スプリングリテーナ526上及びバルブシャフト430を通してバルブヘッド432に対してスプリング532の圧縮によって加えられる閉鎖力は、所望の、一般的にはおよそ13?17ポンドの閉鎖力が得られるように注意深く調整されなければならない。
本実施例に於ける他の特徴は、上部ボア530の内部に載置され且つ設定ネジ540のような通常の手段によって所定の位置に固定された通常の微小調整デバイス538の包含である。微小調整デバイスは、バルブシャフト430の上端部546から垂直方向に隔置された底部表面544を有した円筒状の延長要素542を含む。延長要素542の底部表面544とバルブシャフト430の上端部との間の距離は、流体がノズル組立体424を通して分配されている時に、バルブヘッド432の位置をバルブ座420から離して制御するために重要である。
【0050】
図14及び図15に示されている実施形態の利点を更に理解すべく、図1に示されている第1実施形態との差異を強調した記載が、続く。液体又は粘稠材料(通常はフラックス又は表面装着接着剤)の加圧されるシリンジ12は、入口開口404内に配置されており、液体又は粘稠材料を、内腔406内へ押しやり、次いで、入口チャンバー408及び下方の流路412内へ流し、もって、管状受座組立体内の流路418は、弁頭部432が弁座420に着座させられている間に、少量の液体又は粘稠材料で満たされる。被加熱延長要素428が、黄銅のような熱伝導性材料で形成されており、もって、熱延長要素428の周りに配置されている加熱要素462からの熱が、流路412内の液体又は粘稠材料を加熱すべく、伝達される。温度であって、この温度まで液体又は粘稠材料が加熱・制御されるものは、分配装置400によって分配されつつある特定の材料に依存する。通常の温度範囲の例は、本明細書において前述されている。シリンジ12によって加えられる流体圧を伴う、弁座420に対する弁頭部432の開閉は、ノズル組立体424を貫通するオリフィスを通して、粘稠材料を、そのオリフィスから薄い流れとして押し出す。よし詳細に前述されているように、弁頭部432が弁座420を閉じることの影響は、流れている材料の突然の減速及び流れの制動を引き起こして液滴をもたらす。被加熱延長要素の金属本体を介する熱の伝導の結果、液体又は粘稠材料の加熱は、流路412内で且つ管状受座組立体416内で行われる。
【0051】
弁軸430及び弁頭部432を受座38から後退させることによる弁の開放は、空気ソレノイドから空気ピストン514下方の空気チャンバー内への加圧によって行われる。支持構造体516によって弁軸430に固定されている空気ピストンは、圧縮ばね532の力に抗して、マイクロ調整装置538の底面と弁軸430の上端部546との間の間隔によって設定されている距離だけ、弁座420から離れる方向に移動する。マイクロ調整装置は、その間隔が、要求されている液滴のサイズに応じて正確に制御されることを可能にする。
弁頭部432による弁座420の閉鎖は、非常に短い期間、即ち、約22.6ミリ秒未満、好ましくは約10.3ミリ秒未満で起こらなければならない。空気ピストン514下方の空気チャンバー504内の空気は、排気通路(図示せず)を通って空気ソレノイド515内へ排気される。同時に、圧縮ばね532は、弁頭部432を弁座420に向けて着座位置に急速に移動させる。第1実施形態と同じ態様で、弁頭部432が弁座420を閉じることの影響力は、ノズル456から分配される液体又は粘稠材料の流れを制動して材料の液滴を形成する。
【0052】
分配装置400の第2実施形態は、少量の液体又は粘稠材料を分配することに関して効果的に作動する一方、更なる改良が、第2の装置400の管状受座組立体416とノズル組立体424とになされた。図17及び図18を参照するに、第2の装置400の管状受座組立体416に置き換えられ得る、改造された管状受座組立体600が示されている。図19、図20及び図21は、第2の装置400のノズル組立体424に置き換えられ得る、改造されたノズル組立体602を示している。
図17及び図18を参照するに、管状受座組立体600は、管の形状の要素601で構成されており、この要素は、入口端部604と、段付き軸方向内孔607とを有しており、この段付き軸方向内孔は、それを貫通している流路608を形成している。段付き軸方向内孔607は、第1の直径を有する上部内孔壁609と、第1の直径よりも小さい第2の直径を有する下部内孔壁610とを含んでいる。弁座612は、上部内孔壁609と下部内孔壁610との交わる所に配置されていると共に、入り口端部604よりも出口端部606に近接して位置させられている。複数の細長いガイド614A,614B,614Cが、管状受座組立体600の第1の内孔壁609と一体に形成されていると共に、弁頭部444’が管状受座組立体600内で往復運動する際にそれを支持すべく、流路608内へ内方に突出している。明細書全体を通して、ダッシュを付されている数字は、ダッシュを付されていない同じ数字によって表されている構成要素と実質的に同一である構成要素を表している。細長い3つのガイド614A,614B,614Cが図示されている一方、所望されているあらゆる形状の、異なる数のガイドを使用することは、本発明の表現内である。図19、図20及び図21を参照するに、管状受座組立体600は、圧入及びはんだ付けのような手段により、出口セクション414’内に組み立てられ且つ固定されているものとして示されている。流路608の入口端部604は、流れ内腔410’の流路412’と連通しており、そして、反対側の出口開口606は、ノズル組立体602と連通しており、このノズル組立体は、延長要素428’上へねじ作用で固定されているものとして示されている。
【0053】
ノズルアッセンブリ602は、図19、図20、図21に示されるように、ノズルキャップ426’を含んでおり、該ノズルキャップ426’は、一般的には、内側にネジを切られ、真鍮或いはステンレス鋼で形成される。延長ノズル616は、ノズルキャップ426’の閉塞端450’を貫通して、ボア(内径)448’内に収容固定される。前記ノズル616は、延長オリフィス622を有する円筒形管(チューブ)であり、一般的に、ステンレス鋼材料で構成され、ノズルの上端618が閉塞端450’の内側底面454’と面一になるようにノズルキャップ426’のボア(内径)448’内に取り付けられる。ノズル616の対向する下端620は、ノズルキャップ426’の外面458’を通過して伸びている。ノズル616は、ボア448’内に圧入され、ノズル616の内面、即ち延長オリフィス622が損傷されないように、例えばレーザー溶接、接着或いは鑞付けなどの方法で、ボア448’の内側に収容固定される。前記ノズル616は、一般的には、約0.912?約0.050インチの外径で、約0.020?約0.100インチの長さを持つ薄壁管(薄壁チューブ)で構成される。前記延長オリフィス622は、一般的には、約0.002?約0.016インチの間の直径を有している。前記延長オリフィス622は、約50?1までの直径に対する長さの比を有し、好ましくは、少なくとも約25?1、一層好ましくは少なくとも約3?1の直径に対する長さの比を有する。前記ノズル616の前記端620と前記端620まで開口されている前記延長オリフィス622は、好ましくは、例えばテフロン(登録商標)(Teflon)、シリコン(silicome)などのようなポリマー(polymer)、或いはセラミック(ceramic)を含む低エネルギ表面被覆剤でコーティングされる。前記低エネルギ表面被覆剤は、延長オリフィス622を通過する流体流れを改善し、端620の表面にまとわりつく流体の量を低減するように作用する。更に、前記被覆剤は、前記ノズルの端から垂れ下がっている材料によって濡れることを阻止する表面張力を有しており、それにより、糸(string)はより小さな直径となり、より小さな滴が形成される。この効果は、端620に対する磨き表面仕上げ、或いはノズル616を完全にプラスチックで構成することによっても達成可能である。ノズル616を構成するのに使用される管(チューブ)は薄壁を有する。それは、ノズルから分配される材料が下端620に付着し、ノズルから分配される材料の流れが実質的にノズルの外径と等しい直径を持つようになるからである。
【0054】
前記ノズルアッセンブリ602は、ノズルキャップ426’の内側底面454’が前記伸張要素428’の底面460’に押し付けられるように、前記伸張要素428’の端に取り付けられる。このことは、分配される液体或いは粘性材料が前記伸張要素428’とノズルキャップ426’の内側底面454’の界面間でリークするのを防止する。
再び図19、図20、図21を参照すると、バルブシャフト430’はバルブ座アッセンブリ600の流体流路608の中に延在している。図18に示した通り、前記バルブシャフト430’は、一端に、バルブ座アッセンブリ600の出口開口606を閉じるためにバルブ座612を密封係合させるバルブ(弁体)432’を備える。既述した通り、バルブシャフト430’の上側部分は、制御機構436内に配設される。制御機構436は、バルブ座612との着座非係合と着座係合との間でバルブシャフト430’とバルブ432’を往復運動させる。バルブ432’は、図19に示したようにバルブ座612から距離”d”離間した第1ポジションと、図20に示したように前記第1ポジション”d”よりバルブ座612に接近して離間した第2ポジション”e”と、図21に示したようにバルブ座612と着座係合する第3ポジションと、を有する。前記第1ポジション”d”は、バルブ座612から約0.050インチの位置に配設される。前記第2ポジション”e”は、ノズルオリフィス622の直径の約3倍より小さい距離に、好ましくはノズルオリフィス622の直径の約1.5倍より小さい距離に配置される。即ち、第2ポジション”e”は、バルブ座612から約0.006インチから約0.048インチより小さく、好ましくはバルブ座612から約0.003インチから約0.024インチより小さい。
【0055】
改良された管状のシートアッセンブリ600と、改良されたノズルアッセンブリ602と、を備える前記分配装置400の実験に基づけば、分配装置の成功した操作は、ノズル616から分配される粘性材料の流れを一つの滴(dot)に分断するという成功した結果を達成する場合と、付随体(satellites)、はね返り(splattering)、或いは霧化(atomization)に終わる複数の断片に前記流れを分断すると言う不成功な結果を達成する場合と、における精密なバランスであると考えられる。試験を通じて、液体或いは粘性材料の滴は、実際には、ノズル616の出口端620から分配される液体或いは粘性材料の糸(string)、若しくは柱(column)として形成されることが解っている。この糸は、当該糸に作用する力であって、バルブ座612に対するバルブ432’の急速な閉弁によって生成される力が、当該糸の強度を越えたときに、分断する。繊維(fibers)を作ることなく、或いは複数の場所で糸が分断されるように当該糸を粉砕することなく、ノズル612の出口端620から伸びる液体或いは粘性材料の糸を分断することは、重要である。ある場合には、前記糸は、1つの或いは2つの場所で分断されて良く、それにも拘わらず許容できる滴(dot)を形成可能である。第2の断片及び第3の断片が、第1の断片及び/或いは第2の断片と融合する程、第1の断片及び/或いは第2の断片の直後にある場合があるからである。それでも、断片が付随体(satellites)に終わるかもしれないので、このタイプの挙動は最小にすべきである。
【0056】
前記分配装置400は、ノズル616の上流側で噴出される液体或いは粘性材料のフろーに圧力をかけることによって、ノズル616から分配される流れ(stream)の中に、そのフローを加速するために働き、その後、前記流れ(stream)を減速させ、かつ前記流れ(stream)を材料の滴に分断する力を生成するために、急速に前記シート612に対して前記バルブ432’を閉じるように働く。このように、ノズルの中における剪断流れ力及び押し出された流れ(stream)の中における伸び流れ力の複雑で動的なバランスが存在する。これらの力が生成されるその比率は、如何なる有効な測定技術でも測定できない。
【0057】
滴(dot)分断を解析するために開発された基本モデルは、1つの滴(dot)を分断するためには、最小値として600m/sec^(2)と推定する。このモデルは、前記糸(string)の降伏応力(強度)と、前記減速と当該糸の質量による慣性力と、の間の単純なバランスである。前記モデルは、純粋な粘性材料にとっては事実であるが、伸び降伏応力が剪断降伏応力の3倍であるとの仮定に基づいている。前記モデルは、以下の仮定を使って開発されている。
d=滴(dot)の直径
r=滴(dot)の半径=d/2
c=糸(string)の直径
h=糸(string)の長さ h(d,c)=4r(d)^(3)/6r(c)^(2)
ρ=粘性密度 1×gm./cm^(2)
σ=粘性降伏応力=500×3Pa(パスカル)
M=糸(string)の質量 M(d,c)=ρ×n×r(c)^(2)×h(d,c)
F(c)=分断に要求される力 σ_(Y)×n×r(c)^(2)
a(d,c)=力を生成するのに要求される加速度 F(c)/M(d,c)
解析される滴(dot)の直径dが、0.02インチのとき、
c=0.006インチ
h=0.074インチ
M(d,c)=3.432×10^(-5)gm(グラム)
F(c)=2.736×10^(-5)kg m sec^(-2)
a(d,c)=797m/sec^(2)
同様の方法で、上記パラメータは、0.008インチから0.040インチまでの滴直径の範囲で計算された。その結果を図22におけるグラフに示す。
【0058】
図23は、より典型的な伸びの振る舞いを示すグラフであり、非常に低い伸び速度(0.001 1/秒)のために弾性の寄与は無視してよく、伸び粘度(粘性率)はせん断粘度の3倍となるため、結果としてより高い促進評価となる。高速においては、伸び強さ(繊維破壊点における粘度)は、3より数倍高い。
要求される加速および減速を実現するために、流れは分配装置を通る複合せん断流れが要求される。バルブ432’は、初めに、バルブ座612からもっとも遠くに離間した第1位置”d”から第2位置”e”へ下向きに加速される。この距離により、バルブ軸430’は、きわめて大量の材料がノズル616に存在する前に、必要な速度に加速されうる。バルブ432’の前速度は、バルブ432’における局部的な高圧をつくるために、少なくとも50cm/秒でなければならず、好ましくは、少なくとも80cm/秒であって、100cm/秒を超えるのがもっとも好ましい。液体もしくは粘性流体は、チューブ形状素子601の入口端604すなわち液体もしくは粘性材料供給源に向かってもどすように、または、出口端6060に向かって移動可能である。その供給源は約10psiで加圧されているが、交差する流動領域612よりはるかに大きい流動領域(バルブ軸430’と流動穴607の壁との間の環状領域)の効果により、材料の多く、すなわち約90%、が供給源に流れ戻る。例えば、コンピュータによる流体の動的シミュレーションでは、ノズル内の流体の速度が約10cm/秒の間は、供給源に流体が流れ戻る速度は約70cm/秒であることが示されている。バルブ432’が第2の位置、すなわちシート612からノズル直径の約1.5?3倍に近づくにしたがい、バルブ432’とシートとの間の流動に利用可能な領域がますます制限される。操作のこの段階では、ノズル616を通る流動速度は、約20cm/秒に増加し、シート領域の圧力低下は約70psiである。バルブ432’がシート612により近く動くにしたがい、バルブとシートとの間の流動はさらに制限される。これにより、代わりに流量が約75%に減少し、供給元に戻ることにより、ノズルからの流出速度が約20cm/秒に増加する。バルブ432’が第2位置”e”を通ってバルブ座612へ通じた後、バルブ432’とシート612との間の主要な流動制限が存在し、この制限により流動速度は100cm/秒に近づき、バルブ432’とシート612との間の圧力低下は約500psiとなる。この段階では、ノズル612の流れは、約30cm/秒に加速されている。この解析においては主に、速度はバルブ432’とバルブアクチュエータ430’の形状および速度の関数であり、材料からはほぼ独立している。圧力低下評価は、選択された流体粘度モデルに直接関係する。これらの評価は、「粘度(ポイズ)=661+3725/せん断速度」を満たすモデルに基づいている。これは、ドットガン(噴射器)に使用される多くのエポキシ材料の典型である。バルブ432’がバルブ座612にいったん着座すると、材料の置換がすぐに停止し、流路608が閉ざされて、材料が供給源からながれるのを防ぐ。ノズル616の液体もしくは粘性材料はすぐに流動を停止する。ノズル616の外側のひも状の液体もしくは粘性材料が30cm/秒で移動し、その一部が0.1ミリ秒で停止した場合は、加速度は600m/秒2を超える。これは、先に述べた基本モデルで述べた3000m/秒2という評価値よりはるかに高い。材料が1ミリ秒、0.1ミリ秒もしくは0.01ミリ秒で停止するという明確な証明はない一方で、0.1ミリ秒が合理的な評価値であることは信じられている。
【0059】
ドットの加速及び減速に影響を与える鍵となる変数、およびドットにおける力は次のとおりである:
a)形成されるドットの量、これは流体の密度とドットサイズにより設定される。
b)形成される流れの直径、これはノズル先端部のぬれた領域により設定される。
c)バルブにより発生される圧力、これはバルブの直径、速度および流体速度により設定される。
d)ノズルオリフィス(穴)における圧力低下、これはオリフィスの長さおよび直径により設定される。
e)バルブから供給源にもどる圧力低下、これは、軸とハウジングの間の環状領域の長さ、軸の直径、およびハウジングの直径により設定される。そして、f)バルブ位置の関数としてのバルブとシートの間の圧力低下、これはバルブの直径およびシートの直径により設定される。
【0060】
本発明により、目的を満たす液体もしくは粘性材料の小滴を分配する装置および方法、すでにのべた手段や利点が提供されることは明らかである。本発明により、少量の液体もしくは粘性材料またはそれらの小滴を分配する方法及び装置は、加熱されたノズルの延長オリフィスを通じて材料を分配する前に、液体もしくは粘性材料の小さな部分をまず加熱することにより達成される。それから、すぐにシートに対してバルブを閉じ、同時に所望量の液体もしくは粘性材料をオリフィスから置換し、バルブをバルブ座に対して閉じることにより、材料に分け与えられるエネルギによりオリフィスから材料の小滴を裂く。本発明の別の実施例は、少なくとも2つの小滴を互いに落とし、基板上で所望の形状の最終的な小滴を形成するように結合させることにより、ノズルの延長オリフィスを通して基板上に分配された液体もしくは粘性材料の小滴の数を変化させる方法に関する。本発明のさらに別の発明は、ノズルヒータの温度を設定することにより小滴を分配される基板の表面上に液体もしくは粘性材料の1もしくはそれ以上のもっとも上の表面の高さを変える方法に関する。本発明のさらに別の実施例は、PC基板の様な基板の表面上に複数のフラックスの小滴を選択的に与える方法に関し、これにより、フラックスの小滴は一緒に流れて、所望の大きさ、厚さの一定のフィルムを形成する。本発明のまた別の実施例は、装置の分配セクションおよびノズルを洗浄するときに容易に取り外せるように、ヒータ組立体をディスペンサのハウジングに取り外し可能に取り付けてある分配装置に関する。本発明のさらに別の発明は、バルブがバルブ座に関して3つの位置を有する改良されたシート組立体、および、ノズルが壁の薄い(肉薄)チューブからなるとともにプラスチックでコーティング可能であるところの改良されたノズル組立体に関する。
【0061】
本発明はその実施例に関連した記載されていたが、当業者にとっては上記の示唆に照らして、多くの選択肢、改良、および変形が可能であることは明らかである。したがって、本発明は、すべてのそのような選択肢、改良、および変形が添付した請求の範囲の精神および範囲内にあるように包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による、PC基盤上に配置された液体又は粘性材料の分配装置の好ましい実施形態の側方断面図である。
【図2】延長ノズルオリフィスを備えたノズルを有し、そのノズルオリフィスから液体又は粘性材料の流れを分配する、図1に示すバルブ座機構の拡大側方断面図である。
【図3】PC基盤などの基材の上に配置された、基材表面の上の単一位置の上に複数の滴を分配する液体又は粘性材料の分配装置の側方断面図である。
【図4】図4は、基材表面の上の単一位置に分配された滴に数及び温度に応じて様々な高さの滴を有する基材の側面図である。
【図5】図5は、チップキャリア、及びチップキャリアに半田付けされるべきフリップチップの分解立体図である。
【図6】図6は、半田フラックスの複数の滴が上に配置された、図5の電気コネクタ区域Aの立体図である。
【図7】図7は、図6に示すフラックス材料の滴の区域の、滴が互いの中に流れ込んでフラックスの一様な被覆を形成した後の上面図である。
【図8】図8は、スルーホールを有するプリント回路基盤の上面図である。
【図9】図9は、プリント回路基盤中のスルーホールの周りに塗布された複数の滴を示す、図8の区域Bの拡大図である。
【図10】図10は、フラックスの滴が流れて一つになり被覆を形成した後の、図9に示す区域の上面図である。
【図11】図11は、PC基盤の上に半田フラックス被覆を付着するための機構を示す図である。
【図12】図12は、本発明の液体又は粘性材料分配装置の第2実施形態の前面図である。
【図13】図13は、図12の線13-13に沿って見た側面図である。
【図14】図14は、図13の線14-14に沿って見た、本発明の液体又は粘性材料分配装置の第2実施形態を示す断面図である。
【図15】図15は、加熱機構によって取り囲まれ、ノズル機構を含む分配装置ハウジングの細長い加熱された延長要素の拡大図である。
【図16】図16は、図15に示すノズル機構の側方断面図である。
【図17】図17は、別のバルブ機構の上面図である。
【図18】図18は、図17の線18-18に沿って見た側方断面図である。
【図19】図19は、第1位置にあって細長い延長要素内に取り付けられ、その下端に固定されたノズルキャップを有するバルブを含む、図18に示す別のバルブ機構の側方断面図である。
【図20】図20は、第2位置にあって細長い延長要素内に取り付けられ、その下端に固定されたノズルキャップを有するバルブを含む、図18に示す別のバルブ機構の側方断面図である。
【図21】図21は、第3位置にあって細長い延長要素内に取り付けられ、その下端に固定されたノゾルキャップを有するバルブを含む、図18に示す別のバルブ機構の側方断面図である。
【図22】図22は、ドットを形成するためのバルブの加速を示すグラフである。
【図23】ず23は、粘性材料の代表的な伸長挙動を示すグラフである。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-09-30 
結審通知日 2008-10-08 
審決日 2008-10-21 
出願番号 特願2003-123874(P2003-123874)
審決分類 P 1 123・ 121- ZA (B05C)
P 1 123・ 121- ZA (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柳本 陽征飯野 茂  
特許庁審判長 早野 公惠
特許庁審判官 深澤 幹朗
西本 浩司
登録日 2006-01-20 
登録番号 特許第3762384号(P3762384)
発明の名称 少量材料分配用装置  
代理人 近藤 惠嗣  
代理人 近藤 惠嗣  
代理人 竹田 稔  
代理人 重入 正希  
代理人 重入 正希  
代理人 須藤 阿佐子  
代理人 森田 聡  
代理人 川田 篤  
代理人 須藤 晃伸  
代理人 森田 聡  

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