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審決分類 |
審判 査定不服 特37条出願の単一性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1208578 |
審判番号 | 不服2006-22973 |
総通号数 | 122 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-10-11 |
確定日 | 2009-12-10 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第257758号「SOI基板の作製方法およびSOI基板」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 3月31日出願公開、特開平10- 84101〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成8年9月6日の出願であって、平成18年8月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、その後、当審において平成21年6月29日付けで拒絶理由通知がなされ、その指定期間内の同年7月31日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1?5に係る発明は、平成21年7月31日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものであって、そのうちの、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 少なくとも第1のシリコン単結晶基板の表面に酸化膜を形成し、第2のシリコン単結晶基板と該酸化膜を介して密着させ、これに熱処理を加えて強固に結合させた後、第1のシリコン単結晶基板を薄膜化するSOI基板の作製方法において、 前記第1のシリコン単結晶基板の表面に酸化膜を形成する酸化温度は、1100℃を越える温度とし、 第1のシリコン単結晶基板の表面に酸化膜を形成する前に、該基板に1100℃を越え、1250℃未満の温度の高温熱処理を不活性ガス雰囲気で行い、前記薄膜化により厚さ1ミクロン以下(1ミクロンを除く)のSOI層を作製することを特徴とするSOI基板の作製方法。」 3.当審の拒絶理由 当審において平成21年6月29日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本願発明は、本願の出願の日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願平7-195952号(特開平9-22993号公報参照)(註:当審の拒絶理由通知において提示した当該他の出願の出願番号等は誤りであることは、請求人との応対により確認済みである。)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「先願明細書」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明は、特許法29条の2の規定により特許を受けることができない、というものである。 4.先願明細書に記載された発明 (4-1)先願明細書には、「SOIウエハ及びその製造方法」(発明の名称)に関して、図1とともに、以下の事項が記載されている。 「【0012】 次に、本発明のSOIウエハの製造工程を説明する。 図1は本発明のSOIウエハの製造フロー説明図である。前記の図3に示した従来法と比較しながら本発明を説明する。図1において、活性層用ウエハ1A及び支持用ウエハ1Bの2枚のシリコンウエハを用い、それぞれ、少なくとも片面、貼合わせる側の表面11A及び11Bを鏡面状に研磨することは、図3の従来法と同様である。しかし、従来法ではDZ熱処理して活性層用ウエハ3A表層部を無欠陥領域DZ層32としていたのに対し、本発明のSOIウエハ製造法では、活性層用ウエハ1Aをガスアニール処理してDZ層12を形成する。本発明のガスアニール処理は、通常、水素ガス及び/またはアルゴン(Ar)ガス等の不活性ガス雰囲気下、1100℃以上で、30分以上加熱して行うことができる。ガスアニール処理された活性層用ウエハ1Aの表層部12は、出発材料のウエハ1A及び1B内に存在していた図中黒点で示したBMD16が無くなる。ウエハ1Aの両方の表層部には無欠陥領域であるDZ層12、12が形成される。一方、ウエハ内部には、酸素濃度が維持され金属等不純物が酸素析出物として析出されてBMD析出層17が形成される。ガスアニール処理における加熱温度が1100℃未満であるとDZ層12の形成が不充分となり好ましくない。 本発明の上記ガスアニールにより形成されるDZ層12は、均質であり、ウエハ全域に渡り表面からの深さが均一であり、且つ、従来のDZ層熱処理によるDZ層に比して十分に厚く約1?30μmの厚さで形成される。このため、下記するようにガスアニール処理表面に酸化膜を形成し、最終的にSOIウエハとしてDZ層と反対側から研削においても、高精度に均一な厚さを保持する均質な無欠陥層の活性層を表出させることができ、前記したSOIウエハとして要求される優れた特性を有する活性層を得ることができる。また、このDZ層の表面は原子的レベルで平坦化され、その表面に形成される酸化膜の性状も優れたものとすることができる。 【0013】 本発明において、上記ガスアニール処理され、表層部に無欠陥領域のDZ層12が形成された活性層用ウエハ1Aの表面に、更に、酸化膜13を形成する。酸化膜は、従来公知の方法と同様でよく酸素雰囲気中に、温度約800?1100℃で約0.1?3.0時間保持して熱処理することにより形成することができる。上記の通り、ガスアニール処理されたウエハ表層部は、欠陥がなく均質であり原子的平坦面を有する均一な表面となっているため、その表層部に形成される酸化膜も極めて均質であり、且つ、全体的に均一な厚さで形成され、例えばピンホールなど、従来のSOIウエハに用いられた酸化膜層に存在した不均一性が無く、電気絶縁耐圧が10MV/cm以上となる。酸化膜の厚さは、保持時間に応じて変化し、通常0.05?1.0μmである。 上記のように酸化膜13が形成された活性層用ウエハ1Aは、次いで、その酸化膜13形成側と支持体用ウエハ1Bの研磨鏡面11Bとを重ね合わせ加熱処理して接着貼合わせ一体化される。それにより活性層用ウエハ1Aに形成された酸化膜面13と、支持体用ウエハ1Bの鏡面11Bとの間に接着面14を有し、支持体用ウエハ1Bに支持されたSOIウエハの基本構造の一体化ウエハ1Cが得られる。SOIウエハにおいて要求されるシリコン活性層の厚みは1μm前後であり、所定の活性層とするため、形成された一体化ウエハ1Cは、更に研削加工される。これら接着貼合わせ処理、及び、それ以降の処理活性層15を表出させSOIウエハ10を構成させるための研削加工、並びに、最終工程のエッジ部の研削、研磨処理、洗浄等の仕上げ加工等は、従来のものと同様にして行うことができる。」 (4-2)上記記載からみて、先願明細書には、以下の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。 「活性層用ウエハ1Aの表面に酸化膜13を形成し、 酸化膜13が形成された前記活性層用ウエハ1Aの前記酸化膜13形成側と支持体用ウエハ1Bの研磨鏡面11Bとを重ね合わせ、 加熱処理して接着貼合わせ一体化した後、 一体化ウエハ1Cを研削加工するSOIウエハ製造法において、 前記活性層用ウエハ1Aの表面に前記酸化膜13を温度約800?1100℃で熱処理することにより形成し、 前記活性層用ウエハ1Aをアルゴン(Ar)ガス等の不活性ガス雰囲気下、1100℃以上で加熱し、 シリコン活性層の厚みを1μm前後に研削加工するSOIウエハ製造法。」 5.対比・判断 (5-1)先願発明における「活性層用ウエハ1A」、「支持用ウエハ1B」は、本願発明の「第1のシリコン単結晶基板」、「第2のシリコン単結晶基板」にそれぞれ相当する。 (5-2)先願発明の「一体化ウエハ1Cを研削加工」する工程では、「シリコン活性層」となる「活性層用ウエハ1A」を「研削加工」することは明らかであるから、先願発明における「一体化ウエハ1Cを研削加工」することは、本願発明における「第1のシリコン単結晶基板を薄膜化する」ことに相当する。 (5-3)先願発明において、「活性層用ウエハ1A」と「支持用ウエハ1B」を「酸化膜13」を介して密着させ、これに熱処理を加えていることは明らかであり、接着貼合わせ一体化した「活性層用ウエハ1A」と「支持用ウエハ1B」は強固に結合されていることも明らかである。 (5-4)先願発明において、「活性層用ウエハ1Aをアルゴン(Ar)ガス等の不活性ガス雰囲気下、1100℃以上で加熱」することは、高温熱処理であることは明らかである。 (5-5)すると、本願発明と先願発明とは、「少なくとも第1のシリコン単結晶基板の表面に酸化膜を形成し、第2のシリコン単結晶基板と該酸化膜を介して密着させ、これに熱処理を加えて強固に結合させた後、第1のシリコン単結晶基板を薄膜化するSOI基板の作製方法において、 第1のシリコン単結晶基板の表面に酸化膜を形成する前に、該基板に1100℃を越える温度の高温熱処理を不活性ガス雰囲気で行い、前記薄膜化によりSOI層を作製することを特徴とするSOI基板の作製方法。」の点で一致し、次の3点で一応相違する。 (相違点1)本願発明の「第1のシリコン単結晶基板の表面に酸化膜を形成する酸化温度は、1100℃を越える温度」であるのに対して、先願発明では、「前記活性層用ウエハ1Aの表面に前記酸化膜13を温度約800?1100℃で熱処理することにより形成」している点。 (相違点2) 本願発明の高温熱処理は、「1250℃未満の温度」であるのに対して、先願発明では、「前記活性層用ウエハ1Aをアルゴン(Ar)ガス等の不活性ガス雰囲気下」で「加熱」する際の温度の上限が特定されていない点。 (相違点3) 本願発明の「SOI層」は、「厚さ1ミクロン以下(1ミクロンを除く)」であるのに対して、先願発明の「シリコン活性層の厚み」は、「1μm前後」と特定されている点。 (5-6)上記形式上の相違点1ないし3について、以下、検討する。 (相違点1について) 先願明細書には、「【0013】 ・・・活性層用ウエハ1Aの表面に、更に、酸化膜13を形成する。酸化膜は、従来公知の方法と同様でよく酸素雰囲気中に、温度約800?1100℃で約0.1?3.0時間保持して熱処理することにより形成することができる。・・・」と記載されており、本願発明の「第1のシリコン単結晶基板の表面に酸化膜を形成する酸化温度」を、「1100℃を超える温度」とは、その境界の温度において一致している。また、酸化膜13を形成する温度を1100℃を越える温度することは、当該技術分野において通常行われる温度範囲である。 さらに、本願明細書には、「【0025】 次にSOI基板の埋め込み酸化膜となる酸化膜3を上記ボンドウェーハ表面に形成する(図1(c))。この際、ボンドウェーハは既に高温熱処理により、その表面近傍にはCOPが低減した領域2が形成されているので、酸化膜3を形成する熱処理条件は特に限定されないが、後述のように好ましくは1100℃を越える温度で酸化するか、または、形成される酸化膜厚を200nm以下にすることによって、いっそうSOI層中のCOP密度の低減を図ることができる。 【0026】 またさらには、ボンドウェーハの酸化条件をこのように1100℃を越える温度とするか、形成する酸化膜厚を200nm以下にすることによって、前記酸化前に行う基板の高温熱処理を省略することも可能である。 これらを図2を用いて以下に説明する。」、 「【0033】 図2で示されるように1050℃という酸化温度ではCOP密度が酸化膜厚の増加とともに増加するはずであるが、図3の結果を見ると、ボンドウェーハに水素雰囲気で高温熱処理を加えた後は、酸化膜厚に依存せず、低いCOP密度が維持されており、COPが増加しないことがわかる。したがって、ボンドウェーハに高温熱処理を加えることは有効であり、酸化膜を形成する前に高温熱処理を加えておけば、酸化温度を1100℃を越える温度とすること、形成する酸化膜厚を200nm以下にすることは必ずしも必要ではないことがわかる。」と記載されており、本願発明のように、酸化膜を形成する前にボンドウェーハに高温熱処理を加えておいた場合には、酸化膜を形成する温度を1100℃超える温度にすることに、格別の技術的な意義を認めることはできない。 したがって、相違点1は、課題解決のための具体化手段における微差にすぎず、実質的なものではない。 (相違点2について) 本願明細書には、高温熱処理の温度の上限値について、「【0022】 この場合、熱処理温度は ・・・ 上限温度はシリコン基板の融点(約1420℃)未満であればよいが、熱処理炉の耐熱温度との関係上、通常は1250℃未満とされる。・・・」と記載されているが、高温熱処理の温度を1250℃未満とすることは、当該技術分野において通常行われる温度範囲であり、周知技術、慣用技術の付加にすぎず、しかも新たな効果を奏するものではないから、課題解決のための具体化手段における微差にすぎない。 よって、相違点2は、実質的なものではない。 (相違点3について) 先願発明の「シリコン活性層の厚みを1μm前後に研削加工する」という構成における「1μm前後」とは、「1μm」を中心として「1μm」よりも若干小さい値から若干大きい値までの範囲に含まれる値を意味するものと解されるから、先願発明の「1μm前後」は、本願発明の「1ミクロン以下」(1ミクロンを除く)と技術的範囲が重なるものと認められる。加えて、SOI層の厚さを1ミクロン以下にすることは、下記周知例1及び周知例2に記載されているように、当該技術分野において通常設定される膜厚であり、周知技術、慣用技術の付加にすぎず、しかも新たな効果を奏するものではないから、課題解決のための具体化手段における微差にすぎない。 よって、相違点3は、実質的なものではない。 (周知例1) 「【0010】次に図3(c)に示すように、重ね合わせた基板(加圧された基板)10を電気炉12内に配置してシリコンを溶かす900?1100℃の温度に加熱し、電気炉アニールによるシリコン基板1と石英基板5の接着を行う。その後、図3(d)に示すように機械的ポリッシングあるいは化学的エッチングによりSi基板を約0.1μm以下の厚さに削り薄膜化して薄膜化Si基板1aを得る。」 (周知例2) 「【0004】次に、CVDSiO2膜33の露出面を研磨して平坦化し、LOCOS SiO2膜32の突出による影響を少なくする。そして、その研磨面を支持用ウェハ34に張り合わせ、ついで、素子形成用ウェハ31のシリコン面を研削・研磨する。この場合、LOCOS SiO2膜32の研磨速度は小さいので、これを終点検出として研磨を停止させると、そのシリコン面は平坦になり、しかも研磨後の素子形成用ウェハ31の膜厚を0.1μm以下にすることが可能になる。」 したがって、本願発明は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明は、特許法29条の2の規定により特許を受けることができない。 6.むすび 以上、検討したとおり、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-10-05 |
結審通知日 | 2009-10-06 |
審決日 | 2009-10-20 |
出願番号 | 特願平8-257758 |
審決分類 |
P
1
8・
64-
WZ
(H01L)
P 1 8・ 536- WZ (H01L) P 1 8・ 16- WZ (H01L) P 1 8・ 113- WZ (H01L) P 1 8・ 121- WZ (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 萩原 周治 |
特許庁審判長 |
北島 健次 |
特許庁審判官 |
廣瀬 文雄 小野田 誠 |
発明の名称 | SOI基板の作製方法およびSOI基板 |
代理人 | 好宮 幹夫 |