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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01H
管理番号 1208681
審判番号 不服2007-42  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-04 
確定日 2009-12-28 
事件の表示 特願2001-320809「両面キーボード」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月12日出願公開、特開2002-197939〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年10月18日(パリ条約による優先権主張2000年10月31日、米国)の出願であって、平成18年9月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年1月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成18年4月10日にした手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】 電子装置に情報を入力するための両面キーボードであって、
第1の面および対向する第2の面を有する回路基板と、
前記第1の面に配置された複数の第1のキーを有する第1のキーマットと、
前記第2の面に配置された複数の第2のキーを有する第2のキーマットと、
少なくとも1つのキーを押すことにより第1および第2のキーマットが回路基板を作動させることを許すように、前記第1のキーマットと回路基板とのあいだに配置された複数の導電性部分を有しており、少なくとも1つの導電性部分を、電子装置内部の使用のための情報を示す信号を提供するための回路基板に操作可能に付ける作動マットとからなる両面キーボード。」(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

3.引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、特開平1-176615号公報(以下、「引用例」という。)には、つぎのとおり記載されている。
a「一つのメンブレンスイッチの両側にケースを設け、このケースには孔を設け、この孔を介して直接、または操作体を介して前記メンブレンスイッチのスイッチングを行う構成とした両面入力スイッチ。」(1頁左欄5乃至9行)
b「本発明は、TV,VTR,オーディオ,電話機等に使用する両面入力スイッチに関するものである。」(同頁同欄12乃至14行)
c「発明が解決しようとする問題点
・・・従来の両面入力スイッチでは、表と裏のスイッチ1,2が基板3を共用しながら独立しているため、表側スイッチ1と裏側スイッチ2が別々に必要であり、材料及び工数が片面スイッチの約2倍かかり、大変高価であった。
本発明はこのような従来の問題を解決するものであり、安価な両面入力スイッチを提供することを目的とするものである。」(1頁右欄16行乃至2頁左上欄4行)
c「第1図は本発明の一実施例の構成を示すものである。第1図において、25,29は表側接点及び裏側接点で、それぞれ表面FPC26,裏面FPC30上に配設され、スペーサ33により対向するよう保持され、これによりメンブレンスイッチを構成している。このメンブレンスイッチの両側に表面化粧パネル27及び裏面化粧パネル31を配置し、これらを剛体又は半剛体の表のケース28及び裏のケース32の間にはさみ込むことにより両面入力スイッチが構成されている。図中A部のスイッチは、表裏のどちらからでもスイッチングが可能で、・・・ある。図中B部のスイッチは、表面からのスイッチングのみ可能で、メンブレンスイッチはケース32により保持されている。図中C部のスイッチは、裏面からのスイッチングのみ可能で、メンブレンスイッチはケース28により保持されている。
このように上記実施例によれば、同じメンブレンスイッチを表及び裏側よりスイッチングさせることができ、部品点数及び工数が削減できるという効果を有する。」(2頁左上欄18行乃至右上欄20行)
d「第3図は前記第1図のメンブレンスイッチの両側に、ボタン押圧部38を有した表側,裏側操作体39及び40とボタンラバー41及び42の一体化物を配置したものである。」(2頁左下欄10乃至13行)

(2)第1図及び第3図の記載からみて、つぎの構造が伺える。
a 複数の表側操作体39とボタンラバー41とからなる一体化物(以下、「表側一体化物」という。)は裏面FPC30の一方の面側に、複数の裏側操作体40とボタンラバー42とからなる一体化物(以下、「裏側一体化物」という。)は裏面FPC30の他方の面側に、それぞれ配置されていること。
b 表側一体化物と裏面FPC30とのあいだに、複数の表側接点25を有する表面FPC26が配置されており、これらの複数の表側接点25は裏面FPC30上に設けられた複数の裏側接点29と対向していること。
c 表側操作体39と裏側操作体40とのいずれかが操作されると、表側接点25のうちの一つが対向する裏面FPC30上の裏側接点29と接するものであること。

(3)以上の記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「TV,VTR,オーディオ,電話機等に使用する両面入力スイッチであって、
一方の面および対向する他方の面を有する裏面FPC30と、
前記一方の面側に配置された複数の表側操作体39を有する表側一体化物と、
前記他方の面側に配置された複数の裏側操作体40を有する裏側一体化物と、
これら表側操作体39と裏側操作体40のいずれかを押すことにより表側一体化物および裏側一体化物が裏面FPC30を作動させることを許すように、前記表側一体化物と裏面FPC30とのあいだに配置された複数の表側接点25を有しており、少なくとも1つの表側接点25を、裏面FPC30に操作可能に付ける表面FPC26とからなる両面入力スイッチ。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の両面入力スイッチはTV,VTR,オーディオ,電話機等に情報を入力するために用いられるものであり、一方、TV,VTR,オーディオ,電話機等は電子装置であるから、引用発明の「TV,VTR,オーディオ,電話機等に使用する両面入力スイッチ」は、本願発明の「電子装置に情報を入力するための両面キーボード」に相当する。
(2)引用発明の「一方の面」「他方の面」「裏面FPC30」は、それぞれ本願発明の「第1の面」「第2の面」「回路基板」に相当する。
(3)引用発明の「表側操作体39」「表側一体化物」「裏側操作体40」「裏側一体化物」は、それぞれ本願発明の「第1のキー」「第1のキーマット」「第2のキー」「第2のキーマット」に相当する。
(4)引用発明の「表側接点25」「表面FPC26」は、それぞれ本願発明の「導電性部分」「作動マット」に相当する。
(5)したがって、本願発明と引用発明とは、
「電子装置に情報を入力するための両面キーボードであって、
第1の面および対向する第2の面を有する回路基板と、
前記第1の面に配置された複数の第1のキーを有する第1のキーマットと、
前記第2の面に配置された複数の第2のキーを有する第2のキーマットと、
少なくとも1つのキーを押すことにより第1および第2のキーマットが回路基板を作動させることを許すように、前記第1のキーマットと回路基板とのあいだに配置された複数の導電性部分を有しており、少なくとも1つの導電性部分を、回路基板に操作可能に付ける作動マットとからなる両面キーボード。」である点で一致し、つぎの点で一応相違する。

回路基板に関し、本願発明は「電子装置内部の使用のための情報を示す信号を提供するための回路基板」であるのに対し、引用発明は回路基板の具体的な構造が不明である点。

5.相違点の検討
つぎに上記相違点について検討する。
引用発明の両面キーボードは、キーを操作することにより電子装置を操作するためのものであるから、「電子装置内部の使用のための情報を示す信号を提供するための回路」を有していることは明らかであり、しかも、その操作は回路の表面FPC26に設けられた表側接点25と裏面FPC30に設けられた裏側接点29とのスイッチング操作によりなされるものである。
したがって、引用発明の回路基板は、本願発明と同様の、電子装置内部の使用のための情報を示す信号を提供する回路基板といえるものである。

この点について、請求人は、【請求の理由】において、「引用文献1は、図1?3の表面および裏面を有するフレキシブルプリント回路と、図4のこのような回路とを開示しているのみであります。図1に示されるように、フレキシブルプリント回路(26,30)は表側の電気的接点25および裏側の電気的接点29を有し、プリント回路が折り曲げられた際に各々の電気接点25が電気接点29に対向するのであります。電気接点25を対向する電気接点から電気的に分離するためには、電気接点の両側にスペーサ33が配設されなければならず、さらに、プリント回路30は可撓性を有し、一定の方向に折り曲げられなければならないのであります。
これに対して、本願発明では回路基板50および作動マット40を別々に製造することができるのであります。」と主張している。
しかしながら、【請求項1】には、回路基板と作動マットに関し、
「第1の面および対向する第2の面を有する回路基板」、「少なくとも1つのキーを押すことにより第1および第2のキーマットが回路基板を作動させることを許すように、前記第1のキーマットと回路基板とのあいだに配置された複数の導電性部分を有しており、少なくとも1つの導電性部分を、電子装置内部の使用のための情報を示す信号を提供するための回路基板に操作可能に付ける作動マット」と記載されているにすぎないから、回路基板50と作動マット40とが別々に作られるものに限られるものではなく、また、【発明の詳細な説明】の記載をみても、回路基板50と作動マット40とが別々に作られるものに限られるとする記載も示唆も見あたらない。
したがって、本願発明の回路基板と作動マットは、引用発明のごとき構造を含むものであって、請求人の当該主張は理由がない。

6.まとめ
本願発明は、引用例に記載された発明であるから特許法29条1項3号の発明に該当し、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-22 
結審通知日 2008-10-28 
審決日 2008-11-12 
出願番号 特願2001-320809(P2001-320809)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 善邦  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 植前 津子
高木 彰
発明の名称 両面キーボード  
代理人 朝日奈 宗太  

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