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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1208847
審判番号 不服2007-6470  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-02 
確定日 2009-12-17 
事件の表示 特願2002-195682「スロットマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 2月 5日出願公開、特開2004- 33523〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成14年7月4日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成18年11月24日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対して、平成19年3月2日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに同日付けで手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第二.本件補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年3月2日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により補正された本願の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は次のとおりである。
「 表示状態が変化可能な複数の変動表示部により変動表示ゲームを行う変動表示手段と、前記変動表示の停止操作を行う停止操作手段とを有し、
前記複数の変動表示部の結果態様が予め定められた表示結果態様となった場合に所定の入賞役が成立するスロットマシンにおいて、
前記停止操作の手順を報知することで所定の入賞役の成立を補助する特定遊技状態を発生する特定遊技状態発生手段を備え、
この特定遊技状態発生手段は、
所定の抽選用役が成立した場合、若しくは該所定の抽選用役に対応するフラグが成立した場合に、所定の当選割合に応じて前記特定遊技状態の発生を決定する特定遊技状態決定手段と、
電源投入後の所定期間の変動表示ゲームの実行に関連して、前記特定遊技状態の当選割合を通常の当選割合よりも高めた状態である高当選率状態を発生させる高当選率状態発生手段と、を備え、
前記高当選率状態発生手段は、
電源投入から前記所定期間の変動表示ゲームにおいて、特定の入賞役が成立した場合、若しくは該特定の入賞役に対応するフラグが成立した場合に、予め設定した特定期間にわたって前記高当選率状態を継続して発生させ、
前記特定遊技状態決定手段は、
前記高当選率状態発生手段により前記高当選率状態が継続される前記特定期間内に、前記所定の抽選用役が成立した場合、若しくは該所定の抽選用役に対応するフラグが成立した場合に、前記特定遊技状態を発生するか否かを決定するための抽選を、前記高当選率状態で行うことを特徴とするスロットマシン。」(下線部は補正によって変更又は追加された箇所。)

2.補正要件(目的)の検討
請求項1についての補正は、発明を特定するために必要な事項である、「特定遊技状態発生手段」について、停止操作の手順を報知する旨の構成を付加し、「特定遊技状態決定手段」について、該手段が決定を行う時の条件を所定の抽選用役が成立した場合、若しくは該所定の抽選用役に対応するフラグが成立した場合とし、いずれかの場合に特定遊技状態を発生するか否かを決定するための抽選を行う旨の構成を付加し、さらに、「高当選率状態発生手段」について、その継続期間を限定する構成を付加するものである。
してみると、当該各補正は発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当する。
また、他の請求項についての補正も、請求項に発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に該当する。

3.補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討
(1)引用された文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2001-286602号公報(以下「引用文献」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
【請求項1】 特定絵柄を含む複数種類の絵柄を施したリールを複数列備え、メダルまたは玉等の遊技媒体を投入し、ゲームの開始操作により前記複数列のリールをリール絵柄表示窓上で移動を開始させると同時に、制御部の内部抽選により所定の入賞役の当否を確定し、各リールに対応した停止操作に対してハズレを含む前記内部抽選の結果に基づいた入賞役の絵柄の組合せが前記リール絵柄表示窓上に表示されるように前記各リールを制御して停止させ、停止した前記リール絵柄表示窓上の前記絵柄の組合せが所定の入賞役である場合、前記所定の入賞役に対応する所定の数の遊技媒体を配当として払出す遊技台であって、・・・
【0130】参照番号503はゲーム回数Xが所定の条件(51≦X≦999)を満たしたときであって、遊技台の制御部は、BBゲーム中で当選した入賞の報知割合を0?100%の間にセットし、このセットされた所定の報知割合に従って、当選した入賞役の種類、または狙う絵柄等をLCDに表示や上述の他の報知方法ですることで遊技者に報知する。・・・
【0131】但し、この条件では報知割合を高確率で低い値に選択されるように予め設定されていることが望ましい。
【0147】また、本発明では図7のM600の「BBゲーム中の一般ゲーム」において、抽選によりグループ1又はグループ2のどちらかの入賞役に内部当選した場合、上述の条件により決定した報知割合(報知するか否かの割合)に従って小役が内部当選しているか否かの有無を遊技者に報知するものである。
【0148】また、その報知方法としては、例えば図8に示すLCD111に遊技者が狙う絵柄が何であるかを例えば「77を狙え!!」等のように表示を行うとか、あるいは図9に示すように、ゲームの入賞判定に使用するリール装置とは別に オッズパネル130の所に設けた報知用のリール装置800に例えば「BAR-BAR」を表示することによって遊技者の知らせることができる。
【0160】ステップS603:(ゲーム回数+1)
前回のゲーム回数に対するインクリメント処理を実行することにより、電源投入時からBBゲームに当選するまでのゲーム回数、および後述するBBゲームが終了してから次のBBゲームに当選するまでのゲーム回数のカウントを実施する。勿論、RAMに格納されている前回のゲーム回数の更新処理も同時に行われることになる。
【0161】ステップS604:(BBゲーム当選?)
ここでは、ステップS602の乱数抽選の結果に基づいて、ビックボーナスに内部当選しているか否かの判定処理を実行する。もしも、BBゲームに内部当選している場合には、ステップS605の処理を実行し、それ以外の場合はステップS609の処理を実行する。
【0162】ステップS605:(BBフラグON)
ステップS603の判定処理の結果、BBゲームに内部当選した場合の処理であって、RAM上のBBフラグをONにセットする。・・・
【0163】ステップS606:(ゲーム回数≦50)
現在にゲーム回数が50回以下であるか否かの判定処理を実行し、現在のゲーム回数が50以下であると判断された場合には、ステップS608の処理を実行し、それ以外はステップS607の処理を実行する。・・・
【0164】ステップS607:(報知割合セット)
後述するBBゲーム中の小役当選の結果を、遊技者にどの位の割合で報知するのかを制御部が設定する。・・・
【0165】ステップS608:(報知100%)後述するBBゲーム中の小役当選の結果を、遊技者に100%の割合で報知するように制御部が設定する。これにより、遊技者は、この報知情報を基づいた所定の絵柄を狙い撃ちすることで所定の絵柄を入賞させ獲得枚数を増やすことができる。
【0169】ステップS612:(BB入賞?)
前のステップS611の判定結果に伴い入賞有りと判断された場合であって、リール絵柄表示窓115?117上の有効ライン上にBB絵柄または小役絵柄が揃っているか否かの判定処理を実行する。BBゲーム入賞有りと判断された場合には、ステップS613の処理を実行し、それ以外はステップS614の処理を実行する。
【0170】ステップS613:(BBゲーム)
ステップS612の判定結果からBBゲームに入賞していると判断された場合には、以降のゲームからBBゲームが開始されるような準備およびBBゲームに入賞したことを遊技者に知らせるためにBBゲーム入賞時用のファンファーレ等を音孔127より発音する。また、BBゲームの準備としては、例えば、BBゲーム中に遊技可能な一般ゲームの(通常ゲームに比べて小役当選確率が高確率な遊技状態)遊技回数30回、SRB入賞回数3セット、更にSRBゲーム回数を12回、SRBゲームでのボーナス入賞回数8回等の設定を行うことになる。・・・
【0172】<BBゲーム中のゲームの制御>図10のステップS613のBBゲーム中のゲームの制御(ゲーム性)について示すフローチャートが図11であって、以下図11を用いてBBゲーム中のゲームの制御処理について説明する。
【0177】ステップ704:(報知有り?)
ステップS608の処理により、小役当選の報知が100%に報知されているいるか否かの判定、および小役当選の報知が100%にセットされていない場合には、ステップS702の乱数抽選の結果によりステップS607の処理における報知割合に応じて小役当選の報知を行うか否かの判定を行う。これらの判定結果によって小役当選の報知有りと判断された場合には、ステップS705の処理を実行し、それ以外は、ステップS706の処理を実行する。

摘記した上記の記載や図面等によれば、引用文献には以下の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。
「 特定絵柄を含む複数種類の絵柄を施したリールを複数列備え、遊技媒体を投入し、ゲームの開始操作により前記複数列のリールをリール絵柄表示窓上で移動を開始させると同時に、制御部の内部抽選により所定の入賞役の当否を確定し、各リールに対応したストップボタンの停止操作に対してハズレを含む前記内部抽選の結果に基づいた入賞役の絵柄の組合せが前記リール絵柄表示窓上に表示されるように前記各リールを制御して停止させ、停止した前記リール絵柄表示窓上の前記絵柄の組合せが所定の入賞役である場合、前記所定の入賞役に対応する所定の数の遊技媒体を配当として払出す遊技台であって、
BBゲーム中の一般ゲームにおいて、決定した報知割合に従って小役が内部当選しているか否かの有無をLCD111に遊技者が狙う絵柄が何であるかの表示を行って遊技者に報知するものであり、
前記制御部は、BBゲームに内部当選した場合、報知割合を設定し、BBゲーム入賞有りと判断された場合には、乱数抽選の結果により設定した報知割合に応じて前記表示を行うか否かの判定を行い、
電源投入時からのゲーム回数が50以下であると判断された場合には、前記報知割合を100%に設定し、
電源投入時からのゲーム回数が50以下であると判断され、BBゲーム入賞有りと判断された場合には、BBゲーム中の一般ゲームにおいて小役当選の報知有りと判断される遊技台。」

(2)引用発明と本願補正発明との対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「遊技台」は、本願補正発明の「スロットマシン」に相当し、以下同様に、
「リール」は「変動表示部」に、
「停止した前記リール絵柄表示窓上の前記絵柄の組合せが所定の入賞役である場合」は「前記複数の変動表示部の結果態様が予め定められた表示結果態様となった場合」に、
「所定の入賞役に対応する所定の数の遊技媒体を配当として払出す」は「所定の入賞役が成立する」に、
「BBゲームに内部当選した場合」は「所定の抽選用役に対応するフラグが成立した場合」に、
「BBゲーム入賞有りと判断された場合」は「所定の抽選用役が成立した場合」に、
「設定した報知割合に応じて」は「所定の当選割合に応じて」に、
「BBゲーム入賞有りと判断された場合」は「特定の入賞役が成立した場合」に、それぞれ相当する。
さらに、引用文献の記載等からみて、以下のことが言える。

a.引用発明は「特定絵柄を含む複数種類の絵柄を施したリールを複数列備え、ゲームの開始操作により前記複数列のリールをリール絵柄表示窓上で移動を開始させ」るものであるから、本願補正発明の「表示状態が変化可能な複数の変動表示部により変動表示ゲームを行う変動表示手段」に相当する構成を有するものであるということができる。
また、引用発明は「各リールに対応した停止操作に対してハズレを含む前記内部抽選の結果に基づいた入賞役の絵柄の組合せが前記リール絵柄表示窓上に表示されるように前記各リールを制御して停止させ」るものであるから、本願補正発明の「変動表示の停止操作を行う停止操作手段」に相当する構成を有するものであるといえる。

b.引用発明において「小役が内部当選しているか否かの有無をLCD111に遊技者が狙う絵柄が何であるかを表示して遊技者に報知する」について検討すると、「LCD111に遊技者が狙う絵柄が何であるかを表示」することと本願補正発明の「前記停止操作の手順を報知すること」とは、「変動表示部の停止操作に係わる報知をすること」で共通しているといえる。
また、「LCD111に遊技者が狙う絵柄が何であるかを表示する」際に内部当選している小役は、本願補正発明の「所定の入賞役」に相当し、その表示によって小役を入賞させ易くなることも明らかであるから、引用発明は本願補正発明における「所定の入賞役の成立を補助する特定遊技状態を発生する特定遊技状態発生手段」に相当する手段を備えるものであるということができる。

c.引用発明は、BBゲームに内部当選した場合、報知割合を設定し、BBゲーム入賞有りと判断された場合に、判定を行っており、本願補正発明の「当選割合」に相当する「報知割合」の設定と、その「報知割合」に応じた判定を異なるタイミングで行っているが、結果的には本願補正発明の「所定の抽選用役が成立した場合」に相当する「BBゲーム入賞有りと判断された場合」に、設定した報知割合に応じた判定がされるものであるということができる。
また、引用発明における「前記表示」は、「LCD111に遊技者が狙う絵柄が何であるかの表示」であり、上記bで述べたことから、その表示を行う状態が本願補正発明の「特定遊技状態」に相当するものであることが分かる。
そうしてみると、引用発明において「前記表示を行うか否かの判定を行」うことは、本願補正発明において「前記特定遊技状態の発生を決定する」ことに相当するから、引用発明は本願補正発明の「所定の抽選用役が成立した場合に、所定の当選割合に応じて前記特定遊技状態の発生を決定する特定遊技状態決定手段」に相当する構成を有するものであるといえる。

d.本願補正発明の「電源投入後の所定期間の変動表示ゲームの実行」には、本件補正後の請求項2?5に記載されるように、ゲーム数が関係しているから、引用発明の「電源投入時からのゲーム回数が50以下である」ことは、本願補正発明の「電源投入後の所定期間の変動表示ゲームの実行」に含まれるものということができる。
そして、引用発明においては、通常の報知割合は明らかではないが、摘記した引用文献の段落【0130】には「ゲーム回数Xが所定の条件(51≦X≦999)を満たしたとき」「報知割合を0?100%の間にセット」と記載され、同じく段落【0131】には「但し、この条件では報知割合を高確率で低い値に選択されるように予め設定されていることが望ましい。」と記載されていることを考慮すると、引用発明において「前記報知割合を100%に設定」することは、本願補正発明において「前記特定遊技状態の当選割合を通常の当選割合よりも高めた状態である高当選率状態を発生させる」ことに相当するということができる。
よって、引用発明は本願補正発明の「電源投入後の所定期間の変動表示ゲームの実行に関連して、前記特定遊技状態の当選割合を通常の当選割合よりも高めた状態である高当選率状態を発生させる高当選率状態発生手段」に相当する構成を備えるものであるということができる。

e.引用発明の「電源投入時からのゲーム回数が50以下であると判断され、BBゲーム入賞有りと判断された場合」は、本願補正発明の「電源投入から前記所定期間の変動表示ゲームにおいて、特定の入賞役が成立した場合」に相当している。
また、引用発明において、「BBゲーム中の一般ゲームにおいて小役当選の報知有りと判断され」るということは、「BBゲーム中の一般ゲーム」を本願補正発明の「予め設定した特定期間」と捉えることができ、その一般ゲーム中にわたって報知割合100%の状態が継続して発生しているということもできるから、引用発明は本願発明の「電源投入から前記所定期間の変動表示ゲームにおいて、特定の入賞役が成立した場合に、予め設定した特定期間にわたって前記高当選率状態を継続して発生させ」に相当する機能を備えているものということができる。
さらに、引用発明において「小役当選の報知有りと判断される」ことと、本願補正発明において「特定遊技状態を発生するか否かを決定するための抽選を、前記高当選率状態で行う」こととは、「特定遊技状態を発生するか否かを決定する」ことである点では共通している。

以上を総合すると、両者は、
「 表示状態が変化可能な複数の変動表示部により変動表示ゲームを行う変動表示手段と、前記変動表示の停止操作を行う停止操作手段とを有し、前記複数の変動表示部の結果態様が予め定められた表示結果態様となった場合に所定の入賞役が成立するスロットマシンにおいて、
前記変動表示部の停止操作に係わる報知をすることで所定の入賞役の成立を補助する特定遊技状態を発生する特定遊技状態発生手段を備え、
この特定遊技状態発生手段は、
所定の抽選用役が成立した場合に、所定の当選割合に応じて前記特定遊技状態の発生を決定する特定遊技状態決定手段と、
電源投入後の所定期間の変動表示ゲームの実行に関連して、前記特定遊技状態の当選割合を通常の当選割合よりも高めた状態である高当選率状態を発生させる高当選率状態発生手段と、を備え、
前記高当選率状態発生手段は、
電源投入から前記所定期間の変動表示ゲームにおいて、特定の入賞役が成立した場合、若しくは該特定の入賞役に対応するフラグが成立した場合に、予め設定した特定期間にわたって前記高当選率状態を継続して発生させ、
前記特定遊技状態決定手段は、
前記高当選率状態発生手段により前記高当選率状態が継続される前記特定期間内に、前記所定の抽選用役が成立した場合に、前記特定遊技状態を発生するか否かを決定するスロットマシン。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]「変動表示部の停止操作に係わる報知」に関して、本願補正発明は、「前記停止操作の手順を報知する」のに対し、引用発明は、「LCD111に遊技者が狙う絵柄が何であるかを表示」する点。

[相違点2]本願補正発明は、「前記高当選率状態発生手段により前記高当選率状態が継続される前記特定期間内に、前記所定の抽選用役が成立した場合に、前記特定遊技状態を発生するか否かを決定するための抽選を、前記高当選率状態で行う」ものであるのに対し、引用発明は、本願補正発明の「当選割合」に相当する「報知割合」が100%に設定されるため、小役当選の報知を行うか否かの抽選を行わずに小役当選の報知有りと判断される点。

(3)相違点の検討及び判断
[相違点1について]
スロットマシンにおいて、停止操作の手順を報知することは、例えば、特開2001-293141号公報(特に、段落【0117】を参照)及び特開2002-159630号公報(特に、段落【0232】、【0233】を参照)にも記載されるように、従来周知の技術(以下「周知技術1」という。)であるから、引用発明において「LCD111に遊技者が狙う絵柄が何であるかを表示」するのに代えて、停止操作の手順を報知し、相違点1に係る本願補正発明のような構成とすることは、スロットマシンの分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に想到し得る。
[相違点2について]
引用文献の段落【0177】には「小役当選の報知が100%にセットされていない場合には、ステップS702の乱数抽選の結果によりステップS607の処理における報知割合に応じて小役当選の報知を行うか否かの判定を行う。」と記載されている。
そして、引用発明においては、電源投入時からのゲーム回数が50以下であると判断された場合には、報知割合を100%に設定しているが、スロットマシンにおいて、変動表示部の停止操作に係わる報知を、所定の遊技状態において必ず行うのではなく、抽選によって行うか否かを決定することも、例えば、上記特開2001-293141号公報(特に、段落【0119】を参照)、特開2002-159630号公報(特に、段落【0120】を参照)及び特開2001-161895号公報(特に、段落【0032】を参照)にも記載されるように、従来周知の技術(以下「周知技術2」という。)であるから、引用発明において「報知割合を100%に設定」するのに代えて、100%以外の通常よりも高い値に設定するとともに、その報知割合に応じて小役当選の報知を行うか否かの判定を行うようにし、相違点2に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得る。

(4)まとめ
以上のように相違点1及び2は、いずれも当業者が容易に想到し得るものであり、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術1、2に基いて当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第三.本願発明について
1.本願発明
平成19年3月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成18年11月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 表示状態が変化可能な複数の変動表示部により変動表示ゲームを行う変動表示手段と、停止操作手段とを有し、前記複数の変動表示部の結果態様が予め定められた表示結果態様となった場合に所定の入賞役が成立するスロットマシンにおいて、
所定の入賞役の成立を補助する特定遊技状態を発生する特定遊技状態発生手段を備え、
この特定遊技状態発生手段は、
予め定めた抽出条件の成立に基づいて、所定の当選割合に応じて特定遊技状態の発生を決定する特定遊技状態決定手段と、
電源投入後の所定期間の変動表示ゲームの実行に関連して、前記特定遊技状態の当選割合を通常の当選割合よりも高めた状態である高当選率状態を発生させる高当選率状態発生手段と、を備え、
前記高当選率状態発生手段は、
電源投入から前記所定期間において特定の入賞役が成立した場合、若しくは該特定の入賞役に対応するフラグが成立した場合に、前記高当選率状態を発生させることを特徴とするスロットマシン。」

2.特許法第29条第2項の検討
(1)引用文献記載事項
原査定における引用文献及びその記載事項は、前記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。

(2)引用発明と本願発明との対比
本願発明は、実質的には前記「第二」で検討した本願補正発明から、「特定遊技状態発生手段」について、停止操作の手順を報知する旨の構成を省き、「特定遊技状態決定手段」について、決定を行う時の条件を所定の抽選用役が成立した場合、若しくは該所定の抽選用役に対応するフラグが成立した場合とし、いずれかの場合に特定遊技状態を発生するか否かを決定するための抽選を行う旨の構成を省き、さらに、「高当選率状態」について、その継続期間を限定する構成を省いたものといえる。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.3.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第四.むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項(請求項2?8)について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-19 
結審通知日 2009-10-20 
審決日 2009-11-04 
出願番号 特願2002-195682(P2002-195682)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 英司  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 井上 昌宏
川島 陵司
発明の名称 スロットマシン  
代理人 後藤 政喜  

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