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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A41B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A41B
管理番号 1208930
審判番号 不服2007-6072  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-28 
確定日 2009-12-14 
事件の表示 特願2000-314188「パンツ型の使い捨て着用物品」拒絶査定不服審判事件〔平成14年4月23日出願公開、特開2002-119537〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成12年10月13日の出願であって、平成19年1月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年2月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成19年3月29日に明細書を対象とする手続補正がなされたものである。

2 平成19年3月29日にした明細書を対象とする手続補正(以下、「本件手続補正」という。)についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
本件手続補正を却下する。
〔理由〕
(1)補正後の本願発明
本件手続補正により、明細書の特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 透液性表面シートと、不透液性裏面シートと、それらシートの間に介在する吸液性コアとから構成され、互いに対向する前胴周り域および後胴周り域と、前記前後胴周り域の間に位置する股下域とを有し、前記前後胴周り域の縦方向両側縁部が固着されて胴周り開口と一対の脚周り開口とが画成され、前記前後胴周り域の少なくとも一方が、胴周り方向へ弾性的な伸縮性を有するパンツ型の使い捨て着用物品において、
前記前後胴周り域の前記少なくとも一方が、前記少なくとも一方の胴周り域の縦方向両側縁部から前記コアの縦方向両側縁部近傍まで前記胴周り方向へ延びる第1伸縮域と、前記コアの前記縦方向両側縁部近傍の間において前記胴周り方向へ延びる第2伸縮域とを有し、前記第1及び第2伸縮域を含む前記胴周り開口縁部には前記胴周り方向へ延びる胴周り用弾性部材が伸長状態で取り付けられており、前記胴周り用弾性部材と前記脚周り開口縁部との間には、前記物品の縦方向へ所与寸法離間して前記第1伸縮域と前記第2伸縮域とにおいて前記胴周り方向へ延びる複数条の第1補助弾性部材と、前記第1伸縮域のみにおける前記第1補助弾性部材のそれぞれを前記縦方向に挟んで前記胴周り方向へ延びる複数条の第2補助弾性部材とが、それぞれ伸長状態で取り付けられ、前記第1伸縮域の最大伸長時における伸長応力が、0.2?2.0N/25mmの範囲にあり、前記第2伸縮域の最大伸長時における伸長応力が、0.1?0.6N/25mmの範囲にあり、かつ、前記第1補助弾性部材と前記第2補助弾性部材との伸長応力が、第1補助弾性部材≦第2補助弾性部材の関係にあることを特徴とする前記物品。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定する事項である「第1伸縮域」と「第2伸縮域」とについて限定する「前記第1伸縮域の最大伸長時における伸長応力が、0.2?2.0N/25mmの範囲にあり、前記第2伸縮域の最大伸長時における伸長応力が、0.1?0.6N/25mmの範囲にあり」との事項を付加し、同請求項1に記載された発明を特定する事項である「第1補助弾性部材」と「第2補助弾性部材」とについて限定する「前記第1補助弾性部材と前記第2補助弾性部材との伸長応力が、第1補助弾性部材≦第2補助弾性部材の関係にある」との事項を付加するものである。
これらの限定した事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されており、しかも、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではない。
したがって、上記補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件手続補正後の上記請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-99006号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の記載がある。
「【0007】…本発明の目的は、一層のずれ落ち防止効果を有すると共に、着用者が活発に運動しても十分に追従できる程度にフィット性に優れた使い捨てパンツ型おむつを提供するものである。」
「【0014】図1及び図2に示す本形態の使い捨てパンツ型おむつ1は、液透過性のトップシート11と、液不透過性のバックシート12と、両シート間に介在されて排泄物を収容保持する吸収体13とを有する本体10を備え、該本体10は着用時に着用者の腹側に位置する腹側部2と、背側に位置する背側部3と、該腹側部2及び該背側部3間に位置する股下部4とに区分されており、該腹側部2及び該背側部3各々の左右両側縁部2a,2b及び3a,3bとをそれぞれ接合固定してウエスト開口部5および一対のレッグ開口部6が形成されており、該ウエスト開口部5および一対の該レッグ開口部6には、それぞれその周縁部全周にわたって実質的に連続したギャザーを形成するウエスト弾性部材14及びレッグ弾性部材15が配されており、また、着用時に着用者の胴回りに位置する胴周り部7の腹側部2に複数本の胴回り弾性部材30が配されて胴回りギャザーが形成されている。」
「【0025】……上記胴回り弾性部材30a?30eは、それぞれが交差することなく且つ並列に配されている。上記胴回り弾性部材30a?30eは、それぞれ、上記腹側部2における一側縁2aから他側縁2bにかけて連続して張設されている。
【0026】また、上記胴回り弾性部材30は、図2に示すように、上記トップシート11と上記バックシート12との間に配されているが、吸収体13と重なる部位においては吸収体13とバックシート12との間に配置されている。……
【0027】また、上記胴回り弾性部材30が吸収体13と重なる部分においては、胴回り弾性部材30の伸長率を、吸収体13と重ならない部分の伸長率に対して低くして使い捨てパンツ型おむつを構成したり…などして、上記胴回り弾性部材30の伸縮力が吸収体13に伝わらないようにするのが好ましい。このように構成することにより、吸収体13にゴムの収縮作用が伝わらないために、吸収体13がしわになりにくく、ヨレを少なくすることができる。
【0028】また、上記胴回り弾性部材30は、更に背側部3にも配されており、該背側部3において4本配置されている。」
「【0039】本発明の使い捨てパンツ型おむつによれば、上述の如く配された胴回り弾性部材30を有しているので、該胴回り弾性部材30により形成される胴回りギャザーが、使い捨てパンツ型おむつのずれ落ちを抑えて引き上げる方向に働いて、ずれ落ちを効果的に防止するとともに、フィット性、着用中の見栄えをよくすることができる。また、レッグ開口部6およびウエスト開口部5が弾性化されているので、着用者との間に隙間を生じさせることなく、排泄物の漏れを確実に防止することができる。また、複数本の胴回り弾性部材30を配しているので、締め付け力が局所的に集中しないため、装着感が極めて好適である。……」
そして、図2には、ウエスト弾性部材14とレッグ開口部6の周縁部との間に設けられ、おむつの縦方向へ離間して胴回り方向へ延びる胴回り弾性部材30a?30iが図示されている。
以上の記載並びに図1及び図2によれば、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる。
「液透過性のトップシート11と、液不透過性のバックシート12と、両シート間に介在する吸収体13とから構成され、互いに対向する腹側部2と背側部3と、腹側部2と背側部3との間に位置する股下部4とを有し、腹側部2と背側部3の各々の左右両側縁部2a,2b及び3a,3bが接合固定されてウエスト開口部5と一対のレッグ開口部6が形成され、腹側部2及び背側部3の胴周り部7に胴回りギャザーが形成されている使い捨てパンツ型おむつにおいて、
ウエスト開口部5の周縁部全周にわたって実質的に連続したギャザーを形成するウエスト弾性部材14が取り付けられ、ウエスト弾性部材14とレッグ開口部6の周縁部との間には、おむつの縦方向へ離間して胴回り方向へ延び胴回りギャザーを形成する複数本の胴回り弾性部材30が、腹側部2における一側縁2aから他側縁2bにかけて連続して取り付けられ、胴回り弾性部材30が吸収体13と重なる部分においては、胴回り弾性部材30の伸長率を、吸収体13と重ならない部分の伸長率に対して低くした、使い捨てパンツ型おむつ。」

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特表平10-508519号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の記載がある。
a「1.前方部分(1)、後方部分(2)及び中間股部分(3)を含むパンツ型衛生ナプキン又は女性用失禁ガードであって、前記前方部分及び後方部分の対向側部(それぞれ15、18及び16、17)が共に接合され、更に前方及び後方ナプキン部分の自由端縁の回りで周囲方向に延びた弾性伸張可能ウエスト縁取部又は縁(4、5)をも含むパンツ型衛生ナプキン又は女性用失禁ガードに於て、ナプキンに負荷がかけられていないとき、弾性化されたウエスト縁取部はその側部に位置する部分(15-18)の伸張抵抗が残余部分の伸張抵抗よりも大きいことを特徴とするパンツ型衛生ナプキン又は女性用失禁ガード。」(2頁2ないし9行)
b「6.ウエスト弾性体(4、5)は複数個の弾性糸を含み、前記弾性糸は予め伸張された状態で前方及び後方ナプキン部分(1、2)の自由縁へ取り付けられ、また前方及び後方ナプキン部分の側部(15-18)はウエスト弾性体の残余部よりも多くの数の糸を有することを特徴とする請求の範囲第1項記載のナプキン。」(2頁下から4行ないし3頁1行)
c「ウエスト弾性体4、5は弾性度又は弾性強度がその部分によって異なる。これは図1の実施例に於て弾性ウエストバンド4、5にその中央部分19、20に於けるよりも前記弾性体の側部15-18に於て予伸張弾性糸をより多く設けることにより達成される。結果として、前記側部はウエスト弾性体の残りの部分よりも伸張抵抗が大きい。」(9頁7ないし11行)
そして、図1には、ウエスト弾性体4、5において、全体に渡って複数の第1の弾性糸を離間して配置し、側部にのみ第1の弾性糸を挟むように第2の弾性糸を配置したウエスト弾性体4、5が図示されている。
以上の記載並びに図1及び図2によれば、引用例2には、次の発明が記載されていると認められる。
「異なる伸長抵抗を有するウエスト弾性体を備えたパンツ型衛生ナプキンであって、ウエスト弾性体の全体に渡って複数の第1の弾性糸を離間して配置し、大きい伸長抵抗を有する側部の部分のみに第1の弾性糸を挟むように第2の弾性糸を配置した、パンツ型衛生ナプキン。」

(3)対比
本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「液透過性のトップシート11」、「液不透過性のバックシート12」、「吸収体13」、「腹側部2」、「背側部3」、「股下部4」、「左右両側縁部」、「接合固定」、「ウエスト開口部5」、「レッグ開口部6」、「使い捨てパンツ型おむつ」及び「ウエスト弾性部材14」は、それぞれ本願補正発明の「透液性表面シート」、「不透液性裏面シート」、「吸液性コア」、「前胴周り域」、「後胴周り域」、「股下域」、「縦方向両側縁部」、「固着」、「胴周り開口」、「脚周り開口」、「パンツ型の使い捨て着用物品」及び「胴周り用弾性部材」に相当する。
また、引用例1記載の発明の「腹側部2及び背側部3の胴周り部7に胴回りギャザーが形成されている」は、複数本の胴回り弾性部材30が取り付けられて胴回りギャザーが形成されるから、本願補正発明の「前後胴周り域の少なくとも一方が、胴周り方向へ弾性的な伸縮性を有する」に相当する。
さらに、引用例1記載の発明は、ウエスト弾性部材14とレッグ開口部6の周縁部との間に、おむつの縦方向へ離間して胴回り方向へ延び胴回りギャザーを形成する複数本の胴回り弾性部材30が、腹側部2における一側縁2aから他側縁2bにかけて連続して取り付けられており、図1及び図2を参照すれば、本願補正発明の「前記少なくとも一方の胴周り域の縦方向両側縁部から前記コアの縦方向両側縁部近傍まで前記胴周り方向へ延びる第1伸縮域」及び「前記コアの前記縦方向両側縁部近傍の間において前記胴周り方向へ延びる第2伸縮域」を備えることは明らかであり、そして、引用例1記載の発明の「胴回り弾性部材30」は、本願補正発明の「補助弾性部材」に相当する。
また、引用例1記載の発明は、ウエスト開口部5の周縁部全周にわたって実質的に連続したギャザーを形成するウエスト弾性部材14が取り付けられており、本願補正発明の「前記第1及び第2伸縮域を含む前記胴周り開口縁部には前記胴周り方向へ延びる胴周り用弾性部材が伸長状態で取り付けられており」との事項を備えることも明らかである。
そうすると、両者は、
「透液性表面シートと、不透液性裏面シートと、それらシートの間に介在する吸液性コアとから構成され、互いに対向する前胴周り域および後胴周り域と、前記前後胴周り域の間に位置する股下域とを有し、前記前後胴周り域の縦方向両側縁部が固着されて胴周り開口と一対の脚周り開口とが画成され、前記前後胴周り域の少なくとも一方が、胴周り方向へ弾性的な伸縮性を有するパンツ型の使い捨て着用物品において、
前記前後胴周り域の前記少なくとも一方が、前記少なくとも一方の胴周り域の縦方向両側縁部から前記コアの縦方向両側縁部近傍まで前記胴周り方向へ延びる第1伸縮域と、前記コアの前記縦方向両側縁部近傍の間において前記胴周り方向へ延びる第2伸縮域とを有し、前記第1及び第2伸縮域を含む前記胴周り開口縁部には前記胴周り方向へ延びる胴周り用弾性部材が伸長状態で取り付けられている、前記物品」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点
本願補正発明では、前記胴周り用弾性部材と前記脚周り開口縁部との間には、前記物品の縦方向へ所与寸法離間して前記第1伸縮域と前記第2伸縮域とにおいて前記胴周り方向へ延びる複数条の第1補助弾性部材と、前記第1伸縮域のみにおける前記第1補助弾性部材のそれぞれを前記縦方向に挟んで前記胴周り方向へ延びる複数条の第2補助弾性部材とが、それぞれ伸長状態で取り付けられ、前記第1伸縮域の最大伸長時における伸長応力が、0.2?2.0N/25mmの範囲にあり、前記第2伸縮域の最大伸長時における伸長応力が、0.1?0.6N/25mmの範囲にあり、かつ、前記第1補助弾性部材と前記第2補助弾性部材との伸長応力が、第1補助弾性部材≦第2補助弾性部材の関係にあるのに対して、引用例1記載の発明では、胴周り用弾性部材と脚周り開口縁部との間には、物品の縦方向へ所与寸法離間して第1伸縮域と第2伸縮域とにおいて胴周り方向へ延びる複数条の補助弾性部材が伸長状態で取り付けられ、補助弾性部材が吸収性コアと重なる部分においては、補助弾性部材の伸長率を、吸収性コアと重ならない部分の伸長率に対して低くした点。

(4)相違点の検討
そこで、上記相違点について検討する。
本願明細書には、「【0033】おむつ1Bでは、第1補助弾性部材8cと第2補助弾性部材8dとの伸長応力とが等しいとしても、第1伸縮域E1に第1補助弾性部材8cと第2補助弾性部材8dとが延びているので、第1補助弾性部材8cだけが延びる第2伸縮域E2と比較し、第1伸縮域E1の伸長応力が第2伸縮域E2のそれよりも高くなる。ゆえに、おむつ1Bでは、第1伸縮域E1と第2伸縮域E2との伸長応力が第1伸縮域E1>第2伸縮域E2の関係にある。」、「【0036】おむつ1Bでは、それを着用したときに、第1伸縮域E1が第2伸縮域E2よりも着用者の胴周りを強く締め付ける。しかし、おむつ1Bでは、第1伸縮域E1と第2伸縮域E2とが協働して着用者の胴周りを締め付けておむつ1Bのずれ落ちを防ぐので、第1伸縮域E1の伸長応力を上記範囲にとどめることができる。」、「【0037】おむつ1Bの第2伸縮域E2では、第1補助弾性部材8cがその伸長応力によってコア4を着用者の肌に押し付けるので、コア4の排泄物吸収機能を妨げることはない。おむつ1Bでは、第2伸縮域E2の伸縮応力が上記範囲にあるので、第2伸縮域E2が収縮したとしても、コア4の剛性が勝り、コア4に皺が寄ることはない。」との記載がある。
上記記載に照らすと、本願補正発明が、相違点に係る事項を採用したのは、胴周り域における第1伸縮域の伸長応力を第2伸縮域の伸長応力よりも高くし、おむつを着用したときに第1伸縮域と第2伸縮域とが協働して着用者の胴周りを締め付けておむつのずれ落ちを防ぎ、第2伸縮域の第1補助弾性部材によってコアを着用者の肌に押し付けてコアの排泄物吸収機能を妨げないようにするとともに、コアに皺が寄ることがないようにするためである。
一方、引用例1記載の発明も、胴周り域における第1伸縮域と第2伸縮域とに胴周り方向へ延びる複数条の補助弾性部材が伸長状態で取り付けられ、補助弾性部材が吸収性コアと重なる部分においては、補助弾性部材の伸長率を、吸収性コアと重ならない部分の伸長率に対して低くしたものであって、本願補正発明と同様に、胴周り域における第1伸縮域の伸長応力を第2伸縮域の伸長応力よりも高くしたものであり、そうすることにより使い捨てパンツ型おむつのずれ落ちを効果的に防止し、締め付け力を局所的に集中させず(上記【0039】の記載参照。)、吸収性コアがしわになりにくく(上記【0027】の記載参照。)したものである。
ただ、引用例1には、第1伸縮域の伸長応力を第2伸縮域の伸長応力よりも高くする構成として、「物品の縦方向へ所与寸法離間して前記第1伸縮域と前記第2伸縮域とにおいて前記胴周り方向へ延びる複数条の第1補助弾性部材と、前記第1伸縮域のみにおける前記第1補助弾性部材のそれぞれを前記縦方向に挟んで前記胴周り方向へ延びる複数条の第2補助弾性部材とが、それぞれ伸長状態で取り付けられ、前記第1伸縮域の最大伸長時における伸長応力が、0.2?2.0N/25mmの範囲にあり、前記第2伸縮域の最大伸長時における伸長応力が、0.1?0.6N/25mmの範囲にあり、かつ、前記第1補助弾性部材と前記第2補助弾性部材との伸長応力が、第1補助弾性部材≦第2補助弾性部材の関係にある」とする事項は記載されていない。
しかし、引用例2には、異なる伸長抵抗を有する弾性体を構成するために、全体に渡って複数の第1の弾性糸を離間して配置し、大きい伸長抵抗を有する部分のみに第1の弾性糸を挟むように第2の弾性糸を配置することが記載されており、引用例1記載の発明と引用例2記載の発明は、共に、パンツ型の衛生用品という技術分野に属することから、引用例1記載の発明において、補助弾性部材を用いた第1伸縮域と第2伸縮域の構成に関して、引用例2に記載の上記事項を採用することは、当業者であれば容易に着想し得ることである。
そして、第1伸縮域の最大伸長時における伸長応力を、0.2?2.0N/25mmの範囲に、第2伸縮域の最大伸長時における伸長応力を、0.1?0.6N/25mmの範囲に設定したことにより格別の効果を奏するものとは認められず、上記のように設定することは、おむつのずれ落ちを防止し、吸収性コアがしわになりにくくすることを勘案して、当業者が適宜決め得る設計的事項といえる。
また、第1補助弾性部材(第1の弾性糸)と第2補助弾性部材(第2の弾性糸)との伸長応力の大小関係を如何にするかは、当業者が必要に応じ適宜決め得る設計的事項にすぎない。
そうしてみると、引用例1記載の発明おいて、補助弾性部材を用いた第1伸縮域と第2伸縮域の構成に関して、引用例2に記載の上記事項を採用し相違点に係る本願補正発明の事項とすることは、当業者が格別の困難性を伴うことなく容易になし得たことといえる。
しかも、本願補正発明が奏する効果も、引用例1及び引用例2記載の発明から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用例1及び引用例2記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)まとめ
以上のとおり、本件手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3 本願発明について
(1)本願発明
上記のとおり、本件手続補正は却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成17年7月11日にした手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1は次のとおり記載されている。
「【請求項1】 透液性表面シートと、不透液性裏面シートと、それらシートの間に介在する吸液性コアとから構成され、互いに対向する前胴周り域および後胴周り域と、前記前後胴周り域の間に位置する股下域とを有し、前記前後胴周り域の縦方向両側縁部が固着されて胴周り開口と一対の脚周り開口とが画成され、前記前後胴周り域の少なくとも一方が、胴周り方向へ弾性的な伸縮性を有するパンツ型の使い捨て着用物品において、
前記前後胴周り域の前記少なくとも一方が、前記少なくとも一方の胴周り域の縦方向両側縁部から前記コアの縦方向両側縁部近傍まで前記胴周り方向へ延びる第1伸縮域と、前記コアの前記縦方向両側縁部近傍の間において前記胴周り方向へ延びる第2伸縮域とを有し、前記第1及び第2伸縮域を含む前記胴周り開口縁部には前記胴周り方向へ延びる胴周り用弾性部材が伸長状態で取り付けられており、前記胴周り用弾性部材と前記脚周り開口縁部との間には、前記物品の縦方向へ所与寸法離間して前記第1伸縮域と前記第2伸縮域とにおいて前記胴周り方向へ延びる複数条の第1補助弾性部材と、前記第1伸縮域のみにおける前記第1補助弾性部材のそれぞれを前記縦方向に挟んで前記胴周り方向へ延びる複数条の第2補助弾性部材とが、それぞれ伸長状態で取り付けられていることを特徴とする前記物品。」
(以下、請求項1に係る発明を、「本願発明1」という。)

(2)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記2(2)に記載したとおりである。

(3)対比・検討
本願発明1は、上記2(1)で検討した本願補正発明から、「第1伸縮域」と「第2伸縮域」とについて限定する「前記第1伸縮域の最大伸長時における伸長応力が、0.2?2.0N/25mmの範囲にあり、前記第2伸縮域の最大伸長時における伸長応力が、0.1?0.6N/25mmの範囲にあり」との事項を省き、同請求項1に記載された発明を特定する事項である「第1補助弾性部材」と「第2補助弾性部材」とについて限定する「前記第1補助弾性部材と前記第2補助弾性部材との伸長応力が、第1補助弾性部材≦第2補助弾性部材の関係にある」との事項を省いたものである。
そうすると、本願発明1を特定する事項を全て含み、さらに他の特定する事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2(4)に記載したとおり、引用例1及び引用例2記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用例1及び引用例2記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-22 
結審通知日 2009-01-27 
審決日 2009-02-09 
出願番号 特願2000-314188(P2000-314188)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A41B)
P 1 8・ 575- Z (A41B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 浩二ッ谷 裕子  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 村山 禎恒
熊倉 強
発明の名称 パンツ型の使い捨て着用物品  
代理人 白浜 吉治  
代理人 白浜 秀二  

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