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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1209484
審判番号 不服2008-14318  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-06 
確定日 2010-01-04 
事件の表示 特願2003- 1423「中空ゴルフクラブヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月29日出願公開、特開2004-209091〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は平成15年1月7日の出願であって、平成20年1月21日付けで拒絶理由が通知され、同年3月27日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年4月30日付けで拒絶査定がなされたため、これを不服として同年6月6日に本件審判請求がなされたものである。

第2 本件発明の認定
本件出願の請求項4に係る発明(以下「本件発明」という。)は、平成20年3月27日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項4に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。

「【請求項4】
ボールを打撃するフェース面を有するフェース部材と、シャフトを連結するためのネック部を含むヘッド本体と、前記フェース部材と前記ヘッド本体との接合部分に沿って施された溶接部と、を備えている中空ゴルフクラブヘッドにおいて、
前記溶接部の内側を外部から目視可能な位置に配置された1つの目視用孔と、前記溶接部の内側を照らす光源を挿入すべく前記目視用孔とは別個に形成された1つの光源用孔と、それらの各孔をその用済み後に閉塞する閉塞部と、を備え、
前記ネック部が、前記ヘッド本体内部にまで連通するホーゼル孔を有し、
前記光源用孔が、前記ホーゼル孔によって構成されていることを特徴とする中空ゴルフクラブヘッド。」

第3 当審の判断
1 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶理由に引用され、本件出願前に頒布された刊行物である登録実用新案第3032692号公報(以下「引用例」という。)には、以下のaないしhの記載が図面とともにある。

a 「【請求項1】 フェース面と一体に形成されたネック部と側周部を有するフェース部と、前記フェース部の側周部に嵌合できる側周部を有する上面部と、一側に覗き孔を有し、フェース部のフェース面の下端縁の延出部に結合できる端縁を有するソール部とを、一体に接合してなることを特徴とするゴルフクラブヘッド。」

b 「【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、ゴルフクラブヘッドに関し、特に、それぞれ側周部と延出部を有するフェース部と、上面部と、ソール部とを、鍛造によって作成し、溶接により接合してなるゴルフクラブヘッドに関するものである。」

c 「【0003】
また、上記の課題を解決するために、チタン製のフェース部と上面部とソール部とをそれぞれ鍛造により作成してから、溶接により接合し合うものがある。その物は、材料がチタンなので、充分の強度を提供できると共に、ゴルフクラブの重量もできるかぎり減少できる。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の三部材を接合してなるゴルフクラブヘッドでは、下記のような問題点がある。
(1)従来のフェース部は、フェース面の上縁と下縁が、直接に上面部とソール部に溶接するので、フェース面の溶接加工部に近接する部分が、溶接変形による強度の不均一を招き、フェース部の完全性に悪影響がある。
(2)溶接する時、ゴルフクラブヘッド内の状況を考察できないため、製品の強度やバランスや溶接部の状況を管理できないので、好ましくない。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本考案は、上記の課題を解決するためになされたものであり、フェース部の完全性と強度に影響を及ぼさないと共に、内部の状況を考察できるゴルフクラブヘッドを提供することをその目的とする。」

d 「【0006】
本考案は、フェース面と一体に形成されたネック部と側周部を有するフェース部と、前記フェース部の側周部に嵌合できる側周部を有する上面部と、一側に覗き孔を有し、フェース部のフェース面の下端縁の延出部に結合できる端縁を有するソール部とを、一体に接合してなることを特徴とするゴルフクラブヘッドである。
【0007】
本考案では、フェース部に延出する側周部と延出部を有するので、溶接する時、溶接作業が打撃に使用されるフェース面に影響を及ぼさないと共に、フェース面の完全性と強度を確保でき、よりよい打撃効果を提供することができる。
【0008】
また、本考案では、ソール部に覗き孔が形成されているので、中空状ゴルフクラブヘッドの内部を考察でき、品質管理では、良い製品を出品できる。」

e 「【0010】
図中、本考案によるゴルフクラブヘッド10は、上面部11と、ソール部12と、フェース部13とからなるものである。フェース部13は、ネック部131と、フェース面134と、該フェース面134の上端縁より延出する側周部132と、該フェース面134の下端縁より延出する延出部133を包含する。この実施の形態では、前記フェース面134の上端縁の側周部132の端縁132aは、凸状であると共に、上面部11のこの凸状端縁132aに接合される側周部11aは、前記凸状端縁132aに嵌合できる凹状に形成されている。ここでは、上面部11の側周部11aとフェース部13の側周部132aとを接合すると共に、ソール部12の端縁12aを前記フェース部13の下側の延出部133の端縁133aに接合してから、溶接加工して一つのゴルフクラブヘッドを作成する。
【0011】
こうすると、フェース面134が接合部より離れるので、その完全性を保持できると共に、そのフェース面の強度にも悪影響を与えない。
【0012】
また、このゴルフクラブヘッド10の中空部に適当に補強部14を設けて、ゴルフクラブヘッドの強度と重量バランスを調整してもよい。
【0013】
また、ソール部12に覗き孔15を設け、加工途中に該ゴルフクラブヘッドの中空部を観察してもよい。
【0014】
また、ゴルフクラブヘッド10ができてから、前記覗き孔15に栓16を詰めてもよい。」

f 「【0016】
【考案の効果】
本考案では、フェース部に延出する側周部と延出部を有するので、溶接する時、溶接作業が打撃に使用されるフェース面に影響を及ぼさないと共にフェース面の完全性と強度を確保でき、よりよい打撃効果を提供することができる。また、ソール部に覗き孔が形成されているので、中空状ゴルフクラブヘッドの内部を考察でき、品質管理では、良い製品を出品できる。」

g 図2?4から、ソール部12には覗き孔15が1つ設けられていると認めることができる。

h 図2?4から、ネック部131からゴルフクラブヘッドの中空部に円筒状の部材が1つ形成されていると認めることができる。

2 引用例記載の発明の認定
引用例の段落【0004】(上記記載事項c)、段落【0008】(上記記載事項d)、段落【0013】(上記記載事項e)、段落【0016】(上記記載事項f)の各記載を併せ考慮すると、覗き孔15は、溶接加工途中にゴルフクラブヘッドの中空部を観察して溶接部の状況を管理するために設けられたものであると認めることができる。
したがって、引用例の上記記載事項a?hから、引用例には次の発明が記載されていると認めることができる。

「フェース面と一体に形成されたネック部と前記フェース面の上端縁より延出する側周部と前記フェース面の下端縁より延出する延出部を有するフェース部と、前記フェース部の側周部に嵌合できる側周部を有する上面部と、覗き孔を有し、前記フェース部の下端縁の延出部に結合できる端縁を有するソール部とを、溶接により一体に接合してなる中空状ゴルフクラブヘッドにおいて、
前記ネック部から前記ゴルフクラブヘッドの中空部に円筒状の部材が1つ形成され、
前記覗き孔は、溶接加工途中に前記ゴルフクラブヘッドの中空部を観察して溶接部の状況を管理するために1つ設けられ、
前記ゴルフクラブヘッドができてから、前記覗き孔に栓を詰めた、
中空状ゴルフクラブヘッド。」(以下「引用発明」という。)

3 本件発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
(1)引用発明の「フェース面」「を有するフェース部」は、本件発明の「ボールを打撃するフェース面を有するフェース部材」に相当する。

(2)引用発明の「上面部」及び「ソール部」と、本件発明の「シャフトを連結するためのネック部を含むヘッド本体」とは、「ヘッド本体」である点で一致する。

(3)引用発明の「フェース部と、」「上面部と、」「ソール部とを、溶接により一体に接合してなる」ことは、本件発明の「前記フェース部材と前記ヘッド本体との接合部分に沿って施された溶接部」「を備えている」ことに相当する。

(4)引用発明の「中空状ゴルフクラブヘッド」は、本件発明の「中空ゴルフクラブヘッド」に相当する。

(5)引用発明の「覗き孔」は「溶接加工途中に前記ゴルフクラブヘッドの中空部を観察して溶接部の状況を管理するために」「設けられ」たものであるから、引用発明の「覗き孔」は「溶接部」の内側を外部から目視可能な位置に配置されていると認めることができる。したがって、引用発明の「溶接加工途中に前記ゴルフクラブヘッドの中空部を観察して溶接部の状況を管理するために1つ設けられ」た「覗き孔」は、本件発明の「前記溶接部の内側を外部から目視可能な位置に配置された1つの目視用孔」に相当する。
また、引用発明の「前記ゴルフクラブヘッドができてから、前記覗き孔に」「詰め」られる「栓」は、本件発明の「1つの目視用孔」「をその用済み後に閉塞する閉塞部」に相当する。

(6)ア 中空のゴルフクラブヘッドにおいて、ネック部からゴルフクラブヘッドの中空部に延在する円筒状の部材が、ネック部に備えられるとともにシャフトが挿入されるホーゼル孔であることは、本件出願時における技術常識である(例えば、特開平11-169490号公報(段落【0002】、図4)、実願昭63-65967号(実開平1-170270号)のマイクロフィルム(特に、明細書第7頁第4?11行、第8頁第3?7行、第1図)、特開平9-70454号公報(特に、段落【0008】?【0009】、【0012】、図1?3)、特開2001-62000号公報(特に、段落【0010】?【0013】、図1?2)を参照。)。かかる技術常識に照らすと、引用発明の「ネック部から前記ゴルフクラブヘッドの中空部に」「形成され」た「円筒状の部材」は、「ネック部」が備えるとともにシャフトが挿入されるホーゼル孔であると認めることができる。
したがって、引用発明の「前記ネック部から前記ゴルフクラブヘッドの中空部に」「形成され」ている「円筒状の部材」を「ネック部」が備えることは、本件発明の「前記ネック部が、前記ヘッド本体内部にまで連通するホーゼル孔を有」することに相当する。

イ 引用発明の「覗き孔」は「ソール部」に設けられているのに対し、引用発明の「円筒状の部材」は「ネック部」に設けられているから、引用発明の「円筒状の部材」は「覗き孔」と別個に形成されたものであると認めることができる。
したがって、引用発明の「中空状ゴルフクラブヘッドにおいて、」「前記ネック部から前記ゴルフクラブヘッドの中空部に円筒状の部材が」「覗き孔」と別個に「1つ形成され」ていることと、本件発明の「中空ゴルフクラブヘッド」が「前記溶接部の内側を照らす光源を挿入すべく前記目視用孔とは別個に形成された1つの光源用孔」「を備え、」「前記光源用孔が、前記ホーゼル孔によって構成されている」こととは、「中空ゴルフクラブヘッド」が「前記目視用孔とは別個に形成された」「1つのホーゼル孔」「を備え」る点で一致する。

(7)中空のゴルフクラブヘッドにおいて、ヘッドの外殻体を組み立てた後にホーゼル孔がシャフトその他の部材で閉塞されることは、本件出願時における技術常識である(例えば、特開平11-169490号公報(段落【0002】、図4)、実願昭63-65967号(実開平1-170270号)のマイクロフィルム(特に、明細書第7頁第4?11行、第8頁第3?7行、第1図)、特開平9-70454号公報(特に、段落【0008】?【0009】、【0012】、図1?3)、特開2001-62000号公報(特に、段落【0010】?【0013】、図1?2)を参照。)。そして、上記(6)アにおいて検討したとおり、引用発明の「ネック部から前記ゴルフクラブヘッドの中空部に」「形成され」た「円筒状の部材」は、シャフトが挿入されるホーゼル孔である。すると、引用発明の「ネック部から前記ゴルフクラブヘッドの中空部に」「形成され」た「円筒状の部材」は、シャフトその他の部材で閉塞されると認めることができる。
したがって、引用発明の「円筒状の部材」を閉塞するシャフトその他の部材と、本件発明の「光源用孔」「が、前記ホーゼル孔によって構成され」、「そ」「の」「孔をその用済み後に閉塞する閉塞部」とは、「前記ホーゼル孔」を「閉塞する閉塞部」である点で一致する。

(8)以上から、本件発明と引用発明とは、

「ボールを打撃するフェース面を有するフェース部材と、ヘッド本体と、前記フェース部材と前記ヘッド本体との接合部分に沿って施された溶接部と、を備えている中空ゴルフクラブヘッドにおいて、
前記溶接部の内側を外部から目視可能な位置に配置された1つの目視用孔と、前記目視用孔とは別個に形成された1つのホーゼル孔と、前記目視用孔をその用済み後に閉塞する閉塞部と、前記ホーゼル孔を閉塞する閉塞部と、を備え、
前記ネック部が、前記ヘッド本体内部にまで連通する前記ホーゼル孔を有する中空ゴルフクラブヘッド。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

〈相違点1〉
「シャフトを連結するためのネック部」が、本件発明では「ヘッド本体」に「含」まれるのに対し、引用発明では「フェース部」に含まれる点。

〈相違点2〉
本件発明の「ホーゼル孔」は「前記溶接部の内側を照らす光源を挿入すべく」「形成された光源用孔」として用いられるのに対し、引用発明の「円筒状の部材」にはこのような限定がない点。

〈相違点3〉
本件発明の「ホーゼル孔によって構成されている」「1つの光源用孔」は「その用済み後に」「閉塞部」によって「閉塞」されるのに対し、引用発明の「ネック部から前記ゴルフクラブヘッドの中空部に」「1つ形成され」た「円筒状の部材」はシャフトによって閉塞される点。

4 相違点についての判断
(1)相違点1について
シャフトを連結するためのネック部を、フェース部以外の本体部に設けることは、本件出願時において周知の技術であるから(例えば、原査定の拒絶理由に引用された特開2002-85601号公報(段落【0031】?【0038】、図7?10)、特開2002-233594号公報(段落【0016】?【0038】、図1?10)、特開2002-233596号公報(段落【0011】?【0016】、図1?4)、特開2002-17913号公報(段落【0020】?【0022】、図7?8)、特開2001-112896号公報(段落【0008】?【0010】、【0020】、図1,4(b))を参照。)、引用発明の「ネック部」を「上面部」及び「ソール部」からなる本体部に設けることは、当業者にとって容易に想到し得る。
したがって、引用発明に上記相違点1に係る本件発明の発明特定事項を採用することは当業者にとって想到容易である。

(2)相違点2,3について
内部が暗くて内部の状態を目視で確認することが困難な場合に、目視するための孔とは別に形成された孔から内部に光源を挿入して内部を照らすようにすることは、本件出願時において周知慣用手段である(一例として、原査定の拒絶理由に引用された特開平5-311733号公報(図3等)を参照。)。
そして、引用発明において「フェース部」と「上面部」と「ソール部」とを「溶接により一体に接合」するに当たり、「フェース部」と「上面部」と「ソール部」とを隙間なく組み合わせた後に溶接することは明らかであるから、引用発明において「フェース部」と「上面部」と「ソール部」とを「溶接により一体に接合」する際、「溶接部の状況を管理するために」「ゴルフクラブヘッドの中空部」を「覗き孔」から「観察」しようとすると、「ゴルフクラブヘッドの中空部」が暗くて見にくい状態にあることは明らかである。
すると、引用発明に上記周知慣用手段を適用して、上記3(6)イで検討したように「覗き孔」とは別個に形成された引用発明の「円筒状の部材」に、「ゴルフクラブヘッドの中空部」を照らす光源を挿入することは、当業者にとって想到容易である。
また、上記3(7)で検討したとおり引用発明の「円筒状の部材」はシャフトで閉塞されるから、上記のように引用発明に上記周知慣用手段を適用すると、引用発明の「溶接」が終了して「覗き孔」から「溶接加工途中に前記ゴルフクラブヘッドの中空部を観察して溶接部の状況を管理」し終わった後に、「円筒状の部材」から「ゴルフクラブヘッドの中空部」に挿入された光源を「円筒状の部材」から引き抜いて、「円筒状の部材」をシャフトで閉塞することになることは自明である。
したがって、引用発明に上記相違点2,3に係る本件発明の発明特定事項を採用することは当業者にとって想到容易である。

(3)本件発明の進歩性の判断
以上検討したとおり、引用発明に上記相違点1?3に係る本件発明の発明特定事項を採用することは当業者にとって想到容易である。
また、本件発明の効果も、引用例に記載された発明、周知技術、及び、周知慣用手段から当業者が予測し得る程度のものである。
したがって、本件発明は引用例に記載された発明、周知技術、及び、周知慣用手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本件発明は引用例に記載された発明、周知技術、及び、周知慣用手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本件発明が特許を受けることができない以上、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-30 
結審通知日 2009-11-04 
審決日 2009-11-17 
出願番号 特願2003-1423(P2003-1423)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 村田 尚英
日夏 貴史
発明の名称 中空ゴルフクラブヘッド  
代理人 特許業務法人サンクレスト国際特許事務所  

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