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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1209698
審判番号 不服2008-1500  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-01-17 
確定日 2010-01-07 
事件の表示 特願2003-413579「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月18日出願公開、特開2004- 81886〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成8年12月17日に出願された特願平8-336836号の一部を特許法第44条(特許出願の分割)に基づく出願として平成15年12月11日に新たに出願したものであって、拒絶理由通知に対応して平成19年6月12日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対し、平成20年1月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年1月25日に手続補正がなされたものである。

第二.平成20年1月25日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年1月25日付の手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により補正された補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という)は次のとおりである。
「 遊技域に設けられ、複数の図柄を配列させて表示可能な表示手段と、
予め所定箇所に設置された通過センサにより遊技球の通過が検知されると、前記表示手段に表示する図柄の配列を設定し、しかも前記配列として所定確率で、予め設定された複数種類の大当たり配列の内のいずれかを設定する設定手段と、
前記表示手段に、様々な図柄を次々と表示させた後、前記設定手段によって設定された配列を表示する制御手段と、
該制御手段によって前記表示手段に表示された配列が、前記大当たり配列に一致した場合には、当該パチンコ機の遊技者に特典を付与する特典付与手段と、
前記制御手段によって前記表示手段に表示された大当たり配列が前記複数種類の中から予め設定された確変配列である場合には、前記設定手段が大当たり配列を設定する確率を、前記所定確率よりも高くし、大当たり配列が設定される確率が高められた状態において、更に大当たり配列として通常配列が前記表示手段に表示されると、前記設定手段が大当たり配列を設定する確率を、前記所定確率に戻す確率変動手段と、
を備えたパチンコ機において、
前記設定手段が、
大当たり配列の総数と同数の種類からなる乱数を発生させる大当たり乱数発生手段と、
該大当たり乱数発生手段によって発生される各乱数と対応させて、全ての大当たり配列が格納された大当たり配列格納部と、
前記大当たり配列格納部において、通常配列と対応された乱数のみを発生させる通常乱数発生手段と、
大当たり配列の設定を、前記大当たり配列格納部に格納されたものの中から選択することにより行なうものであって、連続して確変配列を設定した回数が所定回数に満たない場合には、前記大当たり乱数発生手段により発生された乱数に基づき、前記選択を行ない、一方、前記所定回数、連続して確変配列を設定した場合には、前記通常乱数発生手段により出力された乱数に基づき、前記選択を行なう乱数選択手段と、
を備えたものであることを特徴とするパチンコ機。」
(下線部は補正によって追加された箇所)

2.補正要件(目的)の検討
請求項1についての補正は、発明を特定するために必要な事項である「通常乱数発生手段」が発生する乱数について、「通常配列と対応された乱数を発生させる」を「通常配列と対応された乱数のみを発生させる」と「のみ」を新たに付加して、発生する乱数を限定するものであるから、当該補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当する。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に該当する。

3.補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討
(1)引用された文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平8-802号公報(以下「引用文献」という)には以下の事項が記載されている。
【0004】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した先行技術は、確率向上期間中に特別表示結果が表示されるかぎり、長期間に亘って確率向上期間が延長されることとなり、遊技場に多大な損害を与えるという欠点がある。本発明は、上記した事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、長期間に亘って確率向上期間が延長されることなく、遊技場に多大な損害を与えることのない弾球遊技機を提供することにある。
【0008】【実施例】以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。まず、図1及び第2図を参照して、実施例に係る弾球遊技機の一例としてのパチンコ遊技機の遊技盤1の構成について説明する。図1は、遊技盤1の正面図であり、図2は、遊技盤1の背面図である。図において、遊技盤1の表面には、発射された打玉を誘導するための誘導レール2がほぼ円状に植立され、該誘導レール2で区画された領域が遊技領域3を構成している。遊技領域3のほぼ中央上部には、2つの可変表示部材35、38a?38cを有する可変表示装置30が配置されている。
【0009】可変表示装置30の2つの可変表示部材35、38a?38cのうち、上部に設けられる普通図柄用可変表示器35は、1個の7セグメントLEDで構成され、後述する通過口21a,21bに打玉が通過したことに基づいて可変表示し、その表示結果が予め定めた特定表示結果となったときに、後述する電動始動入賞口6を一定時間開放するものである。また、下部に設けられる可変表示部材38a?38cは、複数(3つ)の識別情報(図柄)を表示することが可能な回転ドラム38a?38cで構成され、後述する始動口装置4の始動入賞口5又は電動始動入賞口6に打玉が入賞したことに基づいて可変表示し、その表示結果が予め定めた大当り図柄の組合せ(特定表示結果)となったときに、特定遊技状態となって、後述する可変入賞球装置10の開閉板11を所定の態様で開放駆動する。なお、可変表示装置30の詳細な構成については、後に詳述する。
【0012】上記した可変表示装置30と始動口装置4と可変入賞球装置10との関係について簡単に説明すると、発射された打玉が始動入賞口5又は電動始動入賞口6に入賞すると、可変表示装置30の回転ドラム38a?38cが可変表示を開始し、一定時間(例えば、6秒)が経過すると順次停止する。そして、回転ドラム38a?38cの停止時の識別情報の組合せが所定の大当り図柄(例えば、7のゾロ目等)となったときに、特定遊技状態となり、可変入賞球装置10の開閉板11を所定期間(例えば、30秒経過するまで、あるいは10個の入賞玉が発生するまで)開放するように設定され、その開放している間遊技領域3を落下する打玉を入賞領域内に受け入れるようになっている。そして、受け入れられた打玉が特定入賞口に設けられる特定玉検出器13をONさせると、継続権が成立して再度上記した開放状態を繰り返し、開放状態中において特定玉検出器13がONする毎に上記した開放状態を連続して最高16回繰り返すことができるように設定されている。
【0026】上記のようにして開放された電動始動入賞口6に打玉が入賞すると、回転ドラム38a?38cが回転開始するが、その動作を図9及び図10を参照して説明する。図9は、始動入賞口5及び電動始動入賞口6に打玉が入賞したときの回転ドラム38a?38cの可変表示制御を示すタイムチャートである。図10は、打玉が始動入賞口5及び電動始動入賞口6に入賞したときに決定される大当り図柄の選択方法を説明する説明図である。ただし、この図10は、前記設定スイッチ64が設けられている場合には、その設定値が「2」である場合を示している。図において、始動入賞口5及び電動始動入賞口6に打玉が入賞して始動入賞玉検出器8、9をONさせ、始動信号S1が導出されると、その始動信号S1の立ち上がり時にランダム1及びランダム2又はランダム3からそれぞれ1つの値が抽出される。ランダム1は、図10に示すように、大当り図柄か否かを決定するためのランダム数であり、後述する図16に示すように、電源投入後割り込み処理毎に「0?247」の248通りの数値が刻々と変動しており、ランダム2は、大当り図柄の配列パターンを決定するためのランダム数であり、電源投入後割り込み処理毎及びその割り込み処理の余り時間毎に「0?23」の24通りの数値が刻々と変動しており、ランダム3は、外れ図柄の表示パターンを決定するためのランダム数であり、電源投入後割り込み処理毎及びその割り込み処理の余り時間毎に「0?5831」の5832通りの数値が刻々と変動している。また、始動信号S1導出後、0.130秒経過したときにランダム1に格納された値を読み出し、更に、0.132秒経過したときに格納したランダム2及び3の値を読み出すと共にランダム6から1つの値が抽出される。このランダム6は、前記飾り図柄34に表示される図柄を決定するためのランダム数であり、直接遊技内容に関係するものではない。
【0027】しかして、ランダム1から抽出された数値が例えば、「128」であるときには、大当りと判断され、その時抽出されたランダム2の値に対応した図柄配列パターン(後述する図14及び図15に示す)が回転ドラム38a?38cに表示される。一方、ランダム1から抽出された数値が上記以外のときには、外れと判断され、その時抽出されたランダム3の値に対応する図柄配列パターンが回転ドラム38a?38cに表示される。ただし、偶然大当り図柄と一致した場合には、ランダム3に「1」を加算して、外れ図柄にして表示するようになっている。上記した大当り外れの決定は、通常の確率時(以下、低確率時という)の場合であり、後述するように、確率の変更が行われたとき(以下、高確率時という)には、ランダム1から抽出された値が「128?137」のいずれかの値であるときに、大当りと判断されるようになっている。したがって、低確率時における大当りとなる確率は、1/248であるのに対し、高確率時における大当りとなる確率は、10/248となって、10倍に変更されたことになる。なお、高確率時における倍数を前記した設定スイッチ64等(別のスイッチを設けても良い)で任意の値に変更調節できるようにしても良い。
【0028】上記したように、始動信号S1の導出時に、回転ドラム38a?38cに表示される図柄が当りか否かが決定されると共に、停止時に表示される図柄も決定され、それらの決定が終了した後(本実施例においては、始動信号S1導出後0.156秒?0.164秒経過後)、回転ドラム38a?38cの変動が僅かな時間差を置いて開始される。しかして、左回転ドラム38aの変動表示においては、基本時間(5.100秒)の間、所定の変動速度に設定されて変動し、基本時間が経過すると、1図柄分の変動時間が経過したときに停止される。同様に右回転ドラム38cの変動表示においては、上記と同じ基本時間(5.100秒)の間、所定の変動速度に設定されて変動し、基本時間が経過すると、6図柄分の変動時間が経過したときに停止される。
【0033】ところで、回転ドラム38a?38cの停止時に表示される図柄が大当り図柄の組合せとなる態様は、図15に示す3つの当りラインマル1?マル3を考慮にいれた場合には前記したように24通りあり、この24通りの組合せ態様が図14に示すように「0?23」のランダム2に対応せしめられている。そして、その大当り組合せ態様のうち、「7(CHANSE)」及び「BIG」の特別大当り図柄で特定遊技状態となった場合(どの当りラインでもよい)には、普通図柄用可変表示器35及び回転ドラム38a?38cが特定表示結果を表示する確率が向上するよう制御される。この点について図16乃至図19を参照して説明する。図16は、割り込み信号(定期リセット信号)が入力される毎(例えば、2msec)に実行されるメインルーチンを示すフロー図であり、図17は、確率変動の変動カウンタ更新サブルーチンを示すフロー図であり、図18は、確率変動の変動規制サブルーチンを示すフロー図であり、図19は、図17及び図18に示す処理の具体的な動作の一例を示すタイミングチャートである。
【0039】なお、上記した実施例では、確率向上を抑制する手段として、確率変動規制カウンタC2の値が所定の累積数に到達したときに確率変動カウンタC1を「0」にリセットして直ちに確率向上期間の延長を禁止するものを示したが、確率向上の原因となる確変図柄の出現を禁止又は抑制することにより、確率向上を抑制するようにしても良い。このような例として図20及び図21に示す処理を行えば良い。図20は、確変図柄の出現を確実に防止するためのフロー図であり、図21は、確変図柄の出現を抑制するためのフロー図である。まず、図20について説明すると、前記S80及びS110のランダム2の作成処理において、S400でランダム2に「1」ずつの加算処理が行われ、その後、S410で確率変動規制カウンタC2の値が「6以上」であるか否かが判別され、「6以上」であれば、累積計数値が予定値を超えているとして、S420でランダム2の現在の値が「18以上」か否かが判別され、ランダム2の値が「18」より小さい場合(確変図柄でない場合)には、そのままサブルーチンを終了し、ランダム2の値が「18以上」の場合(確変図柄の場合)には、S430でランダム2の値をクリアして「0」に設定してサブルーチンを終了する。したがって、累積計数値が予定値を超えている場合には、ランダム2の値が確変図柄(図14参照)に対応する数値となることはないので、確率向上期間を延長する原因となる確変図柄による大当りの発生を完全に禁止することができる。一方、前記S410で確率変動規制カウンタC2の値が「6」より小さいと判別されたときには、未だ累積計数値が予定値を超えていないので、S440でランダム2の値が「24以上」か否かが判別され、「24以上」でなければ、そのままサブルーチンを終了し、ランダム2の値が「24以上」の場合には、S450でランダム2の値をクリアして「0」に設定してサブルーチンを終了する。このように、この処理の場合には、確率変動カウンタC1の値が残存しているときには、その値が「0」にリセットされず、確変図柄以外の大当り図柄による大当り遊技状態がその後の短い期間に発生するので、図19の処理の場合と比較して遊技者の不満を和らげることができる。なお、S430のクリア処理に代えて、次に説明するS530のように確変図柄以外の図柄に対応する数値にランダム2を書き換えても良い。

摘記した上記の記載や図面等によれば、引用文献には以下の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。
なお、引用文献の記載では「値」と「数値」の語が混在しているので、以下では、ランダム1、2及び3については「数値」を用い、確率変動規制カウンタC2については「値」を用いることとする。
「 遊技領域3に配置され、複数の図柄を表示することが可能な可変表示部材38a?38cを有する可変表示装置30と、
始動入賞口5又は電動始動入賞口6に打玉が入賞して始動入賞玉検出器8、9をONさせ、始動信号S1が導出されると、ランダム1から抽出された数値により前記可変表示部材38a?38cに表示される図柄が大当りか否かが決定されると共に、その時抽出されたランダム2又はランダム3の数値に対応して停止時に表示される図柄も決定され、低確率時における大当りとなる確率は1/248、高確率時における大当りとなる確率は10/248であり、
前記可変表示部材38a?38cが可変表示を開始し、一定時間が経過すると順次停止し、
その表示結果が予め定めた大当り図柄の組合せとなったときに、特定遊技状態となって、可変入賞球装置10の開閉板11を所定の態様で開放駆動し、
前記大当り図柄の組合せ態様のうち、7及びBIGの特別大当り図柄で特定遊技状態となった場合には、前記高確率時となるよう制御される
パチンコ遊技機において、
前記大当り図柄の組合せとなる態様は24通りあり、確率変動規制カウンタC2の値が6より小さいと判別されたときには、ランダム2は0?23の24通りの数値が刻々と変動しており、
24通りの前記大当り図柄の組合せとなる態様が0?23のランダム2に対応せしめられ、
前記確率変動規制カウンタC2の値が6以上であれば、ランダム2の数値が確変図柄に対応する数値となることはなく、
抽出されたランダム2の数値に対応した大当り図柄の組合せとなる態様が前記可変表示部材38a?38cに表示されるものであって、前記確率変動規制カウンタC2の値が6より小さいと判別されたときには、0?23の24通りの数値から抽出されたランダム2の数値に対応した大当り図柄の組合せとなる態様が決定され、前記確率変動規制カウンタC2の値が6以上であれば、ランダム2の数値が確変図柄に対応する数値となることはないので、確変図柄による大当りの発生を完全に禁止することができる
パチンコ遊技機。」

(2)引用発明と本願補正発明との対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「遊技領域3に配置され」は、本願発明の「遊技域に設けられ」に相当し、以下同様に、
「複数の図柄を表示することが可能な」は「複数の図柄を配列させて表示可能な」に、
「可変表示部材38a?38c」及び「可変表示装置30」は「表示手段」に、
「打玉」は「遊技球」に、
「始動入賞玉検出器8、9」は「予め所定箇所に設置された通過センサ」に、
「パチンコ遊技機」は「パチンコ機」に、それぞれ相当する。
さらに、引用文献の記載等からみて、以下のことが言える。

a.引用発明において「始動入賞口5又は電動始動入賞口6に打玉が入賞して始動入賞玉検出器8、9をONさせ、始動信号S1が導出される」ということは、始動入賞玉検出器8、9により入賞した打玉の通過が検知されていることにほかならないから、本願補正発明の「予め所定箇所に設置された通過センサにより遊技球の通過が検知される」ことに相当する。
また、引用発明において「可変表示部材38a?38cに表示される図柄が大当りか否かが決定されると共に、」「停止時に表示される図柄も決定され」ることは、可変表示部材38a?38cの停止時に表示される図柄の配列が設定されることにほかならないから、引用発明は、本願補正発明の「表示手段に表示する図柄の配列を設定」する「設定手段」に相当する構成を備えるものであるといえる。
さらに、引用文献の段落【0026】に、ランダム2が大当り図柄の配列パターンを決定するためのランダム数である旨記載されていることからみて、引用発明においても大当り図柄の配列パターンは複数種類あることが分かり、加えて、引用発明において「低確率時における大当りとなる確率は1/248、高確率時における大当りとなる確率は10/248」であることは、上記大当り図柄の配列パターンのいずれかが所定確率で設定されることにほかならないので、引用発明は、本願補正発明の「所定確率で、予め設定された複数種類の大当たり配列の内のいずれかを設定する設定手段」に相当する構成を備えるものであるといえる。

b.引用発明において「可変表示部材38a?38cが可変表示を開始し、一定時間が経過すると順次停止」することは、可変表示部材38a?38cの複数の図柄を次々と表示させた後、停止表示することにほかならず、停止時に表示される図柄は事前に決定されているから、引用発明は、本願補正発明の「表示手段に、様々な図柄を次々と表示させた後、前記設定手段によって設定された配列を表示する制御手段」に相当する構成を備えるものであるといえる。

c.引用発明の「その表示結果が予め定めた大当り図柄の組合せとなったとき」は、本願補正発明の「前記表示手段に表示された配列が、前記大当たり配列に一致した場合」に相当し、しかも、引用発明の「特定遊技状態となって、可変入賞球装置10の開閉板11を所定の態様で開放駆動」することは、遊技者に特典を付与することにほかならならず、引用発明が可変表示部材38a?38cを停止させた時の表示結果を制御する手段を備えていることも明らかであるから、引用発明は、本願補正発明の「制御手段によって前記表示手段に表示された配列が、前記大当たり配列に一致した場合には、当該パチンコ機の遊技者に特典を付与する特典付与手段」に相当する構成を備えるものであるといえる。

d.引用発明において「大当り図柄の組合せ態様のうち、7及びBIGの特別大当り図柄で特定遊技状態となった場合」は、本願補正発明において「表示手段に表示された大当たり配列が前記複数種類の中から予め設定された確変配列である場合」に相当し、また、引用発明において「高確率時となるよう制御される」ことは、本願補正発明において「設定手段が大当たり配列を設定する確率を、前記所定確率よりも高く」することに相当するから、引用発明は、本願補正発明の「前記制御手段によって前記表示手段に表示された大当たり配列が前記複数種類の中から予め設定された確変配列である場合には、前記設定手段が大当たり配列を設定する確率を、前記所定確率よりも高く」する「確率変動手段」に相当する構成を備えているということができる。

e.引用発明においては、大当り図柄の組合せとなる態様はランダム2が取り得る数値0?23の24通りあり、この「24」が本願補正発明の「大当たり配列の総数」に相当するといえる。
そして、引用発明の「ランダム2」は、確率変動規制カウンタC2の値が6より小さいと判別されたときには、0?23の24通りの数値が刻々と変動しており、その中から1つの数値が抽出されるのであるから、24種類の乱数を発生させるものといえる。
そうしてみると、引用発明の、確率変動規制カウンタC2の値が6より小さいと判別されたときにおける「ランダム2」は、本願補正発明の「前記大当たり乱数発生手段により発生された乱数」に相当するものということができる。
よって、引用発明は、本願補正発明の「大当たり配列の総数と同数の種類からなる乱数を発生させる大当たり乱数発生手段」に相当する構成を備えたものであるといえる。

f.引用発明において、大当り図柄の組合せとなる態様は全部で24通りあり、ランダム2から抽出される0?23の各数値にその24通りの大当り図柄の組合せとなる態様が対応せしめられているのであるから、引用発明は、本願補正発明の「大当たり乱数発生手段によって発生される各乱数と対応させて、全ての大当たり配列が格納された大当たり配列格納部」に相当する構成を備えるものであるといえる。

g.引用発明の「ランダム2」は、確率変動規制カウンタC2の値が6以上であれば、その値が確変図柄に対応する数値となることがないものであるが、それは裏を返せば、その値が確変図柄以外に対応する数値のみであるということである。このことは、図20においてC2≧6のときにランダム2≧18ならばランダム2クリア処理を行い0に設定してサブルーチンを終了していること、及び図20におけるS400処理後のランダム2が1から24のいずれかの数値をとること(摘記した段落【0026】の記載から分かる)から、C2≧6のとき図20の処理後にランダム2の取り得る数値は0?17の18通りであり、図14に記載されるようにランダム2の0?17に対応する大当り図柄が7及びBIG以外となっていることからみても明らかである。
そして、引用発明において、確変図柄以外というのは、本願補正発明の「通常配列」に相当するものといえるから、引用発明の、確率変動規制カウンタC2の値が6以上であるときにおける「ランダム2」は、本願補正発明の「前記通常乱数発生手段により出力された乱数」に相当するものということができる。
よって、引用発明は、本願補正発明の「大当たり配列格納部において、通常配列と対応された乱数のみを発生させる通常乱数発生手段」に相当する構成を備えたものであるといえる。

h.引用発明において「抽出されたランダム2の数値に対応した大当り図柄の組合せとなる態様が可変表示部材38a?38cに表示される」ということは、24通りある「大当り図柄の組合せとなる態様」の中から「抽出されたランダム2の数値」に応じた態様のものを選択して「大当り図柄の組合せ」の設定を行うことと言い換えることができるから、引用発明は、本願補正発明の「大当たり配列の設定を、前記大当たり配列格納部に格納されたものの中から選択することにより行なうもの」である点で一致しているといえる。
また、引用発明の「確率変動規制カウンタC2」は“高確率時となった回数”をカウントするものであって、“高確率時となった回数”は、本願補正発明の「確変配列を設定した回数」に相当し、引用発明における「確率変動規制カウンタC2の値が6より小さいと判別されたとき」及び「確率変動規制カウンタC2の値が6以上であれば」は、それぞれ本願補正発明における「確変配列を設定した回数が所定回数に満たない場合」及び「所定回数、確変配列を設定した場合」に対応させることができる。
そして、引用発明において「0?23の24通りの数値から抽出されたランダム2の数値に対応した大当り図柄の組合せとなる態様が決定され」ること、及び「ランダム2の数値が確変図柄に対応する数値となることはないので、確変図柄による大当りの発生を完全に禁止することができる」ことは、上記gで述べたことを考え合わせると、それぞれ本願補正発明における「大当たり乱数発生手段により発生された乱数に基づき、前記選択を行な」うこと及び「通常乱数発生手段により出力された乱数に基づき、前記選択を行なう」ことに相当するものということができる。
そうしてみると、引用発明と本願補正発明は「大当たり配列の設定を、前記大当たり配列格納部に格納されたものの中から選択することにより行なうものであって、確変配列を設定した回数が所定回数に満たない場合には、前記大当たり乱数発生手段により発生された乱数に基づき、前記選択を行ない、一方、前記所定回数、確変配列を設定した場合には、前記通常乱数発生手段により出力された乱数に基づき、前記選択を行なう大当たり配列設定手段」を備える点では共通しているといえる。

以上を総合すると、両者は、
「 遊技域に設けられ、複数の図柄を配列させて表示可能な表示手段と、
予め所定箇所に設置された通過センサにより遊技球の通過が検知されると、前記表示手段に表示する図柄の配列を設定し、しかも前記配列として所定確率で、予め設定された複数種類の大当たり配列の内のいずれかを設定する設定手段と、
前記表示手段に、様々な図柄を次々と表示させた後、前記設定手段によって設定された配列を表示する制御手段と、
該制御手段によって前記表示手段に表示された配列が、前記大当たり配列に一致した場合には、当該パチンコ機の遊技者に特典を付与する特典付与手段と、
前記制御手段によって前記表示手段に表示された大当たり配列が前記複数種類の中から予め設定された確変配列である場合には、前記設定手段が大当たり配列を設定する確率を、前記所定確率よりも高くする確率変動手段と、
を備えたパチンコ機において、
前記設定手段が、
大当たり配列の総数と同数の種類からなる乱数を発生させる大当たり乱数発生手段と、
該大当たり乱数発生手段によって発生される各乱数と対応させて、全ての大当たり配列が格納された大当たり配列格納部と、
前記大当たり配列格納部において、通常配列と対応された乱数のみを発生させる通常乱数発生手段と、
大当たり配列の設定を、前記大当たり配列格納部に格納されたものの中から選択することにより行なうものであって、確変配列を設定した回数が所定回数に満たない場合には、前記大当たり乱数発生手段により発生された乱数に基づき、前記選択を行ない、一方、前記所定回数、確変配列を設定した場合には、前記通常乱数発生手段により出力された乱数に基づき、前記選択を行なう大当たり配列設定手段と、
を備えたパチンコ機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本願補正発明は、「確率変動手段」が「大当たり配列が設定される確率が高められた状態において、更に大当たり配列として通常配列が前記表示手段に表示されると、前記設定手段が大当たり配列を設定する確率を、前記所定確率に戻す」ものであるのに対し、引用発明では「高確率時」において、大当り図柄の組合せが7でもBIGでもないとき必ずしも「低確率時」に戻らない点(【図19】(A)に示されるように、大当り図柄の組合せが7で高確率になった場合には、次の大当り図柄の組合せが7及びBIG以外であっても、高確率となっている)。

[相違点2]「大当たり配列設定手段」に関して、本願補正発明は「連続して確変配列を設定した回数が所定回数に満たない場合」及び「所定回数、連続して確変配列を設定した場合」という条件で「大当たり配列」選択の行ない方を変えているのに対し、引用発明は「確率変動規制カウンタC2の値が6より小さいと判別されたとき」及び「確率変動規制カウンタC2の値が6以上であれば」という条件で「大当り図柄の組合せとなる態様」決定の行ない方を変えている点、すなわち、引用発明の「確率変動規制カウンタC2の値」が、本願補正発明の「確変配列を設定した回数」に相当する“高確率時となった回数”を“連続して”カウントしたものであるのか否か不明である点。

(3)相違点の検討
[相違点1について]
パチンコ機において、確変図柄以外で大当りとなった場合に高確率の状態を終了させるようにすることは、例えば、特開平7-68028号公報(特に、段落【0035】、【0036】及び図11)、特開平6-327829号公報(特に、段落【0109】及び図10)に記載されるように従来周知の技術(以下「周知技術」という。)であり、確変図柄以外で大当りとなった場合に高確率の状態を連続して発生させるようにする条件を追加するか否かは、パチンコ機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が、適宜選択し得る事項と判断されるから、引用発明において、7及びBIGの特別大当り図柄以外の図柄で特定遊技状態となった場合には必ず高確率時から低確率時に戻すようにして、相違点1に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得る。

[相違点2について]
摘記した段落【0004】に記載されているように、引用発明は、「確率向上期間中に特別表示結果が表示されるかぎり、長期間に亘って確率向上期間が延長されることとなり、遊技場に多大な損害を与える」という課題に対する解決手段としてなされたものである。
そして、「確率向上期間中に特別表示結果が表示されるかぎり、長期間に亘って確率向上期間が延長される」というのは、連続して確率向上期間の状態が続くことを意味している。
そうであるならば、引用発明の「確率変動規制カウンタC2の値」を“高確率時となった回数”を“連続して”カウントしたものとして、相違点2に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることといえる。

(4)まとめ
以上のように相違点1及び2は、いずれも当業者が容易に想到し得るものであり、本願補正発明の作用効果も、引用発明、周知技術及び引用文献に記載された事項に基いて当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本願補正発明は、引用発明、周知技術及び引用文献に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第三.本願発明について
1.本願発明
平成20年1月25日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成19年6月12日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 遊技域に設けられ、複数の図柄を配列させて表示可能な表示手段と、
予め所定箇所に設置された通過センサにより遊技球の通過が検知されると、前記表示手段に表示する図柄の配列を設定し、しかも前記配列として所定確率で、予め設定された複数種類の大当たり配列の内のいずれかを設定する設定手段と、
前記表示手段に、様々な図柄を次々と表示させた後、前記設定手段によって設定された配列を表示する制御手段と、
該制御手段によって前記表示手段に表示された配列が、前記大当たり配列に一致した場合には、当該パチンコ機の遊技者に特典を付与する特典付与手段と、
前記制御手段によって前記表示手段に表示された大当たり配列が前記複数種類の中から予め設定された確変配列である場合には、前記設定手段が大当たり配列を設定する確率を、前記所定確率よりも高くし、大当たり配列が設定される確率が高められた状態において、更に大当たり配列として通常配列が前記表示手段に表示されると、前記設定手段が大当たり配列を設定する確率を、前記所定確率に戻す確率変動手段と、
を備えたパチンコ機において、
前記設定手段が、
大当たり配列の総数と同数の種類からなる乱数を発生させる大当たり乱数発生手段と、
該大当たり乱数発生手段によって発生される各乱数と対応させて、全ての大当たり配列が格納された大当たり配列格納部と、
前記大当たり配列格納部において、通常配列と対応された乱数を発生させる通常乱数発生手段と、
大当たり配列の設定を、前記大当たり配列格納部に格納されたものの中から選択することにより行なうものであって、連続して確変配列を設定した回数が所定回数に満たない場合には、前記大当たり乱数発生手段により発生された乱数に基づき、前記選択を行ない、一方、前記所定回数、連続して確変配列を設定した場合には、前記通常乱数発生手段により出力された乱数に基づき、前記選択を行なう乱数選択手段と、
を備えたものであることを特徴とするパチンコ機。」

2.特許法第29条第2項の検討
(1)引用文献記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。

(2)引用発明と本願発明との対比
本願発明は、前記「第二」で検討した本願補正発明から「通常乱数発生手段」の限定事項である、「のみ」との構成を省いたものといえる。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.3.(3)」に記載したとおり、引用発明、周知技術及び引用文献に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、周知技術及び引用文献に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、周知技術及び引用文献に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第四.むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-04 
結審通知日 2009-11-10 
審決日 2009-11-25 
出願番号 特願2003-413579(P2003-413579)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 仁之西田 光宏一宮 誠  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 池谷 香次郎
川島 陵司
発明の名称 パチンコ機  
代理人 足立 勉  

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