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審決分類 |
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備 G03G 審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) G03G 審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) G03G |
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管理番号 | 1210167 |
審判番号 | 無効2009-800002 |
総通号数 | 123 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-03-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2008-12-29 |
確定日 | 2009-12-17 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3904744号発明「低硬度シリコーンゴム定着用ロール」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3904744号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3904744号に係る発明についての出願は、平成10年9月28日(国内優先権主張平成9年10月7日)に出願され、平成19年1月19日に特許の設定登録がなされたものである。 これに対して、平成20年12月29日に請求人 東レ・ダウコーニング株式会社より本件特許の請求項1に係る発明について特許無効の審判が請求され、これに対して被請求人 信越化学工業株式会社より平成21年3月27日付で答弁書及び訂正請求書が提出され、請求人より平成21年5月27日付で弁駁書が提出され、平成21年10月6日に口頭審理が行われ、同日付で請求人及び被請求人の双方より口頭審理陳述要領書が提出された。 その後、書面審理に切り換えられた。 2.請求人の主張 請求人は、本件特許の請求項1に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第10証及び参考資料1,参考資料2を提出し、以下の無効理由1.2の主張をしている。 また、請求人は、平成21年5月27日付弁駁書で、訂正後の請求項1について以下の無効理由3の主張をしている。 2-1.無効理由1 本件特許の請求項1に係る発明は、 甲第1号証に記載された発明であるか、 甲第2号証ないし甲第4号証及び甲第6号証に記載された発明を参酌して、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたか、 あるいは甲第4号証に記載された発明と甲第1号証ないし甲第3号証及び甲第6号証などにより明らかな従来周知の技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は第29条第2項の規定により特許を受けることができないもので、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 2-2.無効理由2 本件特許明細書(平成21年3月27日付訂正請求書に添付の訂正明細書)には、当業者が実施出来る程度に十分かつ明確に記載されていないので、訂正請求書に添付された訂正明細書は特許法第36条第4項に規定する要件を満たしておらず、本件特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 2-3.無効理由3 本件特許の訂正後の請求項1に係る発明は不明確であり、特許法第36条第6項第2号の規定に違反しており、かかる訂正は認められるべきでない。 【証拠方法など】 甲第1号証:特開平9-255875号公報 甲第2号証:特開平6-167900号公報 甲第3号証:特開平3-157474号公報 甲第4号証:特開平9-138606号公報 甲第5号証:特開平7-334024号公報 甲第6号証:特開平04-359059号公報 甲第7号証:特開平9-152803号公報 甲第8号証:東レ・ダウコーニング株式会社 吉田宏明による平成20年12月24日付の実験結果報告書 甲第9号証:製品紹介 甲第10号証:東レ・ダウコーニング株式会社 吉田宏明による平成20年12月24日付の実験結果報告書 参考資料1:ドイツ・バイエル社 無機事業部発行 「Color Shade Card Bayer inorganic pigments」,1984.10.1 参考資料2:東レ・ダウコーニング株式会社 吉田宏明による平成21年10月2日付の実験結果報告書 なお、甲第10号証は、「甲第9号証」として提出されたが、他の証拠の提出順などからみて、「甲第10号証」であると認める。 3.被請求人の主張 被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、証拠方法として乙第1号証ないし乙第7号証及び参考資料1ないし参考資料3を提出して、 本件特許の請求項1に係る発明は、 甲第1号証に記載された発明ではなく、 甲第2号証ないし甲第4号証及び甲第6号証に記載された発明を参酌して、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもなく、 甲第4号証に記載された発明と甲第1号証ないし甲第3号証及び甲第6号証などにより明らかな従来周知の技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもなく、 請求人の主張する明細書の記載不備もないから、請求人の主張は失当であると主張している。 【証拠方法など】 乙第1号証:信越化学工業株式会社 首藤重揮による平成21年3月14日付の実験成績証明書 乙第2号証:特開昭61-289370号公報 乙第3号証:特開平3-188164号公報 乙第4号証:特開平6-83225号公報 乙第5号証:特開平8-11243号公報 乙第6号証:特開平11-60955号公報 乙第7号証:特開2001-51538号公報 参考資料1:日本ゴム協会誌,第69巻第7号(1996), 516-517頁 参考資料2:日本ゴム協会編 「ゴム試験法<新版>」(1980),258-265頁 参考資料3:J. of Appl. Physics, vol.17(1946), 1020-1024 4.訂正の適否についての判断 4-1.訂正の内容 平成21年3月27日付の訂正請求書による訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである。(下線は、訂正箇所。当審にて付与。) (1)訂正事項1. 本件特許の請求項1について、 「円柱状又は円筒状の金属芯金の外周面に、硬化後のゴム反発弾性率(JIS K6301)が30%以下であり、100?200℃にて10?30分の一次加硫条件において硬化させた場合の最大硬度と最小硬度との差がアスカーCSR2にて10度以下のものである、下記(A)?(D)成分を必須成分とする付加反応硬化型液状シリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴムを被覆し、その外周面にフッ素樹脂又はフッ素系ラテックスからなる低表面エネルギー性の有機樹脂層を設けてなることを特徴とする低硬度シリコーンゴム定着用ロール。 (A)一分子中に珪素原子と結合する脂肪族不飽和炭化水素基を分子の側鎖のみに2個以上含有し、該脂肪族不飽和炭化水素基含有シロキサン単位ユニットが0.05?5モル%であるオルガノポリシロキサン 100重量部 (B)下記一般式(1) 【化1】 (式中、R^(1)は置換又は非置換の一価炭化水素基であり、m,nは1以上の整数である。)で表され、一分子中に少なくとも3個以上の珪素原子に直結した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン (A)成分中の珪素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基1モルに対 して(B)成分中の珪素原子に結合した水素原子が0.1?3.0モル となる量 (C)触媒量の白金及び白金系化合物 (D)充填剤 5?300重量部」 を 「円柱状又は円筒状の金属芯金の外周面に、硬化後のゴム反発弾性率(JIS K6301)が30%以下であり、100?200℃にて10?30分の一次加硫条件において硬化させた場合の最大硬度と最小硬度との差がアスカーCSR2にて10度以下のものである、下記(A)?(E)成分を必須成分とする付加反応硬化型液状シリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴムを被覆し、その外周面にフッ素樹脂又はフッ素系ラテックスからなる低表面エネルギー性の有機樹脂層を設けてなることを特徴とする低硬度シリコーンゴム定着用ロール。 (A)一分子中に珪素原子と結合する脂肪族不飽和炭化水素基を分子の側鎖のみに2個以上含有し、該脂肪族不飽和炭化水素基含有シロキサン単位ユニットが0.05?5モル%であるオルガノポリシロキサン 100重量部 (B)下記平均組成式(4) R^(1)_(b)H_(c)SiO_((4-b-c)/2) (4) (R^(1)は脂肪族不飽和結合を除く非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基、b,cはそれぞれ 0.7≦b≦2.1、0.002≦c≦1、0.8≦b+c≦3を満足する正数である。) で示されるオルガノハイドロジェンシロキサンとして、下記一般式(1) 【化2】 (式中、R^(1)は上記平均組成式(4)におけるR^(1)と同じ意味を示し、m,nは1以上の整数である。) で表され、一分子中に少なくとも3個以上の珪素原子に直結した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンのみからなる成分 (A)成分中の珪素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基1モルに対 して(B)成分中の珪素原子に結合した水素原子が0.1?3.0モル となる量 (C)触媒量の白金及び白金系化合物 (D)充填剤 5?300重量部 (E)耐熱向上剤として酸化鉄」 と訂正する。 (2)訂正事項2. 詳細な説明に記載された【0005】において、 「【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】 本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、円柱状又は円筒状の金属芯金の外周面をシリコーンゴム層で被覆し、更にその外周面に低表面エネルギー性の有機樹脂層を設けてなる定着用ロールにおいて、上記シリコーンゴム層として、硬化後のゴム反発弾性率(JIS K6301)が30%以下であり、好ましくは硬化条件(一次加硫条件)における硬度変化、即ち、100?200℃にて10?30分の一次加硫条件において硬化させた場合の最大硬度と最小硬度との差がアスカーCSR2にて10度以下である付加反応硬化型の液状シリコーンゴム組成物の硬化物にて形成することにより、定着用ロールの肉厚が薄くても、低いニップ圧によって適度なニップ幅が得られることを知見した。また、この場合、この液状シリコーンゴム組成物としては、特に (A)一分子中に珪素原子と結合する脂肪族不飽和炭化水素基を分子の側鎖のみに2個以上含有し、該脂肪族不飽和炭化水素基含有シロキサン単位ユニットが0.05?5モル%であるオルガノポリシロキサン 100重量部 (B)下記一般式(1)で表され、一分子中に少なくとも3個以上の珪素原子に直結した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン (A)成分中の珪素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基1モルに対 して(B)成分中の珪素原子に結合した水素原子が0.1?3.0モル となる量 (C)触媒量の白金及び白金系化合物 (D)充填剤 5?300重量部」 を 「【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】 本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、円柱状又は円筒状の金属芯金の外周面をシリコーンゴム層で被覆し、更にその外周面に低表面エネルギー性の有機樹脂層を設けてなる定着用ロールにおいて、上記シリコーンゴム層として、硬化後のゴム反発弾性率(JIS K6301)が30%以下であり、好ましくは硬化条件(一次加硫条件)における硬度変化、即ち、100?200℃にて10?30分の一次加硫条件において硬化させた場合の最大硬度と最小硬度との差がアスカーCSR2にて10度以下である付加反応硬化型の液状シリコーンゴム組成物の硬化物にて形成することにより、定着用ロールの肉厚が薄くても、低いニップ圧によって適度なニップ幅が得られることを知見した。また、この場合、この液状シリコーンゴム組成物としては、特に (A)一分子中に珪素原子と結合する脂肪族不飽和炭化水素基を分子の側鎖のみに2個以上含有し、該脂肪族不飽和炭化水素基含有シロキサン単位ユニットが0.05?5モル%であるオルガノポリシロキサン 100重量部 (B)下記平均組成式(4) R^(1)_(b)H_(c)SiO_((4-b-c)/2) (4) (R^(1)は脂肪族不飽和結合を除く非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基、b,cはそれぞれ 0.7≦b≦2.1、0.002≦c≦1、0.8≦b+c≦3を満足する正数である。) で示されるオルガノハイドロジェンシロキサンとして、下記一般式(1)で表され、一分子中に少なくとも3個以上の珪素原子に直結した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンのみからなる成分 (A)成分中の珪素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基1モルに対 して(B)成分中の珪素原子に結合した水素原子が0.1?3.0モル となる量 (C)触媒量の白金及び白金系化合物 (D)充填剤 5?300重量部 (E)耐熱向上剤として酸化鉄」 と訂正する。 (3)訂正事項3. 詳細な説明に記載された【0006】において、 「【化1】 (式中、R^(1)は置換又は非置換の一価炭化水素基であり、m,nは1以上の整数である。)」 を 「【化3】 (式中、R^(1)は上記平均組成式(4)におけるR^(1)と同じ意味を示し、m,nは1以上の整数である。)」 と訂正する。 (4)訂正事項4. 詳細な説明に記載された【0011】において、 「 このようなシリコーンゴム層を形成させる付加反応硬化型液状シリコーンゴム組成物としては、 (A)一分子中に少なくとも2個の珪素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基を有するオルガノポリシロキサン 100重量部 (B)一分子中に少なくとも2個以上の珪素原子に直結した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン (A)成分中の珪素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基1モルに対 して(B)成分中の珪素原子に結合した水素原子が0.1?3.0モル となる量 (C)触媒量の白金及び白金系化合物 (D)充填剤 5?300重量部 であるものが好ましい。」 を 「このようなシリコーンゴム層を形成させる付加反応硬化型液状シリコーンゴム組成物としては、 (A)一分子中に少なくとも2個の珪素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基を有するオルガノポリシロキサン 100重量部 (B)一分子中に少なくとも2個以上の珪素原子に直結した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン (A)成分中の珪素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基1モルに対 して(B)成分中の珪素原子に結合した水素原子が0.1?3.0モル となる量 (C)触媒量の白金及び白金系化合物 (D)充填剤 5?300重量部 (E)耐熱向上剤として酸化鉄 であるものを用いる。」 と訂正する。 (5)訂正事項5. 詳細な説明に記載された【0012】において、 「ここで、(A)成分の脂肪族不飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンは、通常、付加反応硬化型液状シリコーンゴム組成物の主原料として使用されている公知のオルガノポリシロキサンであり、常温(25℃)で100?100,000cpの粘度を有し、下記平均組成式(2) R_(a)SiO_((4-a)/2 ) (2) (式中、Rは非置換又は置換一価炭化水素基、aは1.9?2.4の正数である。) で示されるものを使用することができる。」 を 「ここで、(A)成分の脂肪族不飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンは、常温(25℃)で100?100,000cpの粘度を有するものを使用することができる。」 と訂正する。 (6)訂正事項6. 詳細な説明に記載された【0013】において、 「【0013】 式(2)において、Rは好ましくは炭素数1?12、より好ましくは1?8の非置換又は置換一価炭化水素基であるが、全Rのうち少なくとも2個はアルケニル基等の脂肪族不飽和炭化水素基である。なお、この非置換又は置換一価炭化水素基の具体例は後述する。」 を削除する。 (7)訂正事項7. 詳細な説明に記載された【0014】において、 「【0014】 この脂肪族不飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンとしては、下記のものを例示することができるが、このオルガノポリシロキサンは直鎖状のものに限られず、RSiO_(3/2)単位やSiO_(4/2)単位を含んだ分岐状のものであってもよい。」 を削除する。 (8)訂正事項8. 詳細な説明に記載された【0015】において、 「【0015】 【化2】 (Rは上記と同様の意味を示すが、好ましくは脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換一価炭化水素基を示す。p,qは正の整数を示す。)」 を削除する。 (9)訂正事項9. 詳細な説明に記載された【0017】において、 「このようなオルガノポリシロキサンとしては、下記平均分子式(3)で示されるものを好適に使用することができる。」 を 「このようなオルガノポリシロキサンとしては、下記平均分子式(3)で示されるものを使用する。」 と訂正する。 (10)訂正事項10. 詳細な説明に記載された【0023】において、 「次に、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分と反応し、架橋剤として作用するものであり、その分子構造に特に制限はなく、従来製造されている例えば線状、環状、分岐状構造や三次元網状構造等各種のものが使用可能であるが、一分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上の珪素原子に直接結合した水素原子(SiH基)を含むものとする必要がある。この化合物の水素以外の珪素原子に結合する置換基は(A)成分のオルガノポリシロキサンにおける置換基と同様である。」 を 「次に、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分と反応し、架橋剤として作用するものであり、一分子中に3個以上の珪素原子に直接結合した水素原子(SiH基)を含むものとする必要がある。この化合物の水素以外の珪素原子に結合する置換基は(A)成分のオルガノポリシロキサンにおける置換基と同様である。」 と訂正する。 (11)訂正事項11. 詳細な説明に記載された【0024】において、 「この(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(4)で示されるものが好適に使用される。」 を 「この(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(4)で示されるものが使用される。」 と訂正する。 (12)訂正事項12. 詳細な説明に記載された【0025】において、 「 R^(1)_(b)H_(c)SiO_((4-b-c)/2) (4) (R^(1)は炭素数1?12、好ましくは脂肪族不飽和結合を除く炭素数1?8の非置換又は置換の一価炭化水素基、b,cはそれぞれ0.7≦b≦2.1、好ましくは1≦b≦2、0.002≦c≦1、好ましくは0.01≦c≦0.6、0.8≦b+c≦3、好ましくは1.5≦b+c≦2.6を満足する正数である。)」 を 「 R^(1)_(b)H_(c)SiO_((4-b-c)/2) (4) (R^(1)は脂肪族不飽和結合を除く炭素数1?8の非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基、b,cはそれぞれ0.7≦b≦2.1、好ましくは1≦b≦2、0.002≦c≦1、好ましくは0.01≦c≦0.6、0.8≦b+c≦3、好ましくは1.5≦b+c≦2.6を満足する正数である。)」 と訂正する。 (13)訂正事項13. 詳細な説明に記載された【0026】において、 「このオルガノハイドロジェンポリシロキサンにおいて、水素原子以外の珪素原子に結合する置換基R^(1)は(A)成分のオルガノポリシロキサンにおける平均分子式(3)の置換基R^(2)として例示したものと同様の炭素数1?12、好ましくは脂肪族不飽和結合を除く炭素数1?8の非置換又は置換の一価炭化水素基である。」 を 「このオルガノハイドロジェンポリシロキサンにおいて、水素原子以外の珪素原子に結合する置換基R^(1)は(A)成分のオルガノポリシロキサンにおける平均分子式(3)の置換基R^(2)として例示したものと同様の脂肪族不飽和結合を除く炭素数1?8の非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基である。」 と訂正する。 (14)訂正事項14. 詳細な説明に記載された【0037】において、 「更にこれらの材料を実用に供するため、その他の成分を必要に応じて添加することができる。」 を 「更にこれらの材料を実用に供するため、酸化鉄が添加され、その他の成分を必要に応じて添加することができる。」 と訂正する。 (15)訂正事項15. 詳細な説明に記載された【0038】において、 「具体的には、炭酸カルシウムのような充填剤、補強剤となるシリコーン系レジン、カーボンブラック、導電性亜鉛華、銀、銅、ニッケルなどの金属粉の導電性付与剤、酸化鉄、酸化セリウムのような耐熱向上剤、硬化時間の調製を行う必要がある場合には、制御剤(付加反応抑制剤)としてテトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサンのようなビニル基含有オルガノポリシロキサン、トリアリルイソシアヌレート、アルキルマレエート、アセチレンアルコール類及びそのシラン、シロキサン変性物、ハイドロパーオキサイド、テロラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール及びそれらの混合物からなる群から選ばれる化合物などを使用しても差し支えない。」 を 「具体的には、炭酸カルシウムのような充填剤、補強剤となるシリコーン系レジン、カーボンブラック、導電性亜鉛華、銀、銅、ニッケルなどの金属粉の導電性付与剤、酸化セリウムのような耐熱向上剤、硬化時間の調製を行う必要がある場合には、制御剤(付加反応抑制剤)としてテトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサンのようなビニル基含有オルガノポリシロキサン、トリアリルイソシアヌレート、アルキルマレエート、アセチレンアルコール類及びそのシラン、シロキサン変性物、ハイドロパーオキサイド、テロラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール及びそれらの混合物からなる群から選ばれる化合物などを使用しても差し支えない。」 と訂正する。 4-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項1のうち、特許請求の範囲の成分(B)に係る訂正は、本件特許の特許査定時の請求項1において、成分(B)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを、通常のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを示す式(4)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして式(1)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンのみからなる成分を用いる旨訂正したものであるから、成分(B)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを限定するものである。そして、この訂正の根拠は、本件特許明細書の実施例がオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして式(1)のもののみを使用し、比較例4(調整例5)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが式(1)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンと式(1)以外のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを併用していることからも認められる。 また、上記訂正事項1のうち、成分(B)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの式(4)のR^(1)の定義において「置換」を「ハロゲン置換」に訂正するものであるから、成分(B)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを限定するものであって、特許査定時の明細書の段落【0026】及び【0019】の記載に基づくものであると認められる。 また、上記訂正事項1のうち、特許請求の範囲の(E)に係るものは、必須成分を限定するものであって、【0038】の「・・・酸化鉄、酸化セリウムのような耐熱向上剤・・・」の記載に基づくものであると認められる。 訂正事項2?15の詳細な説明に係るものは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、訂正事項1に伴って発明の詳細な説明を訂正するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるといえる。 したがって、上記訂正事項は、特許法第134条の2第1項但し書き第1号及び第3号に規定する特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、また願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 4-3.結び 以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法第134条の2第1項但し書きに適合し、第134条の2第5項で準用する第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。 よって、本件訂正請求のとおりの訂正を認める。 5.請求人の主張に対する当審の判断 5-1.無効理由2 (1)請求項の記載 訂正後の本件特許の請求項1の記載は、以下のとおりである。 「円柱状又は円筒状の金属芯金の外周面に、硬化後のゴム反発弾性率(JIS K6301)が30%以下であり、100?200℃にて10?30分の一次加硫条件において硬化させた場合の最大硬度と最小硬度との差がアスカーCSR2にて10度以下のものである、下記(A)?(E)成分を必須成分とする付加反応硬化型液状シリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴムを被覆し、その外周面にフッ素樹脂又はフッ素系ラテックスからなる低表面エネルギー性の有機樹脂層を設けてなることを特徴とする低硬度シリコーンゴム定着用ロール。 (A)一分子中に珪素原子と結合する脂肪族不飽和炭化水素基を分子の側鎖のみに2個以上含有し、該脂肪族不飽和炭化水素基含有シロキサン単位ユニットが0.05?5モル%であるオルガノポリシロキサン 100重量部 (B)下記平均組成式(4) R^(1)_(b)H_(c)SiO_((4-b-c)/2) (4) (R^(1)は脂肪族不飽和結合を除く非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基、b,cはそれぞれ 0.7≦b≦2.1、0.002≦c≦1、0.8≦b+c≦3を満足する正数である。) で示されるオルガノハイドロジェンシロキサンとして、下記一般式(1) 【化2】 (式中、R^(1)は上記平均組成式(4)におけるR^(1)と同じ意味を示し、m,nは1以上の整数である。) で表され、一分子中に少なくとも3個以上の珪素原子に直結した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンのみからなる成分 (A)成分中の珪素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基1モルに対 して(B)成分中の珪素原子に結合した水素原子が0.1?3.0モル となる量 (C)触媒量の白金及び白金系化合物 (D)充填剤 5?300重量部 (E)耐熱向上剤として酸化鉄」 (2)請求人の主張 請求人は、以下のように主張している。 本件特許明細書におけるどの調製例ひいてはどの実施例にも用いられている「分子鎖途中のケイ素原子に結合したビニル基[-Si(CH=CH_(2))(CH_(3))O-]単位を5モル%含有する粘度1000センチポイズのビニルメチルポリシロキサン」は、末端にビニル基を有することもあり得るので本件(A)成分に該当しない。そして、該ビニルメチルポリシロキサンはビニル基含有量が多いので、各調製例ひいては各実施例において、本件(A)成分中の珪素原子に結合したビニル基1モルに対して(B)成分中の珪素原子に結合した水素原子が何モルであるかが不明となり、それによって硬化物の特性が影響され、ひいては各実施例で使用されている液状シリコーンゴム組成物が本件特許の請求項1で規定する液状シリコーンゴム組成物に該当するのか不明となる。 したがって、本件特許の請求項1に係る発明は本件特許明細書の発明の詳細な説明において当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。(審判請求書37?38頁7.3.4、弁駁書8頁8.3.5?9頁8.3.6、口頭審理陳述要領書9頁8.3.5?10頁8.3.6) (3)被請求人の主張 これに対して、被請求人は、以下のように主張している。 調製例の前記「分子鎖途中のケイ素原子に結合したビニル基[-Si(CH=CH_(2))(CH_(3))O-]単位を5モル%含有する粘度1000センチポイズのビニルメチルポリシロキサン」は、粘度が1000センチポイズであるから、重合度が平均で約350程度である。かかる重合度のオルガノポリシロキサンは環状ではなく技術常識から鎖状であると認められ、また、ビニル基の末端は『ビニル基[-Si(CH=CH_(2))(CH_(3))O-単位]を5モル%含有する』と記載され、それ以外にビニル基の含有については記載がないものであるから、分子鎖末端基にはビニル基が存在せずトリオルガノシロキシ基であることを、当業者ならば容易に理解する。(答弁書16頁4-1?18頁4-2、口頭審理陳述要領書10頁(5)?12頁(6)) (4)無効理由2に対する当審の判断 しかしながら、一般のオルガノポリシロキサンにおいて、特別の記載がないオルガノポリシロキサンの末端基がすべてトリオルガノシロキシ基であると理解できるわけではない。例えば、被請求人が提出した乙第3号証特開平3-188164号公報5頁右上欄の式(a)として例示されるビニル基含有オルガノポリシロキサンや、被請求人が出願人である特開平4-359059号公報の【0015】で【化2】として例示されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンのほか、甲第2号証特開平6-167900号公報の【0011】で【化1】として例示されるオルガノポリシロキサンには、特別の断りがないが末端基にビニル基が存在している。 特に、口頭審理において被請求人は、「分子鎖途中のケイ素原子に結合したビニル基[-Si(CH=CH_(2))(CH_(3))O-]単位を5モル%含有する粘度1000センチポイズのビニルメチルポリシロキサン」に関連する「ビニルメチルポリシロキサン」について、「弊社のゴムの組成物を組むときに、例えばポリマーの分子構造の同じような、末端に官能基がなくて側鎖だけに官能性基を持った成分を、例えば重合度を変えて併用したりすることが普通である。」旨の発言をしているにもかかわらず、被請求人が出願人である特開平4-359059号公報の【0015】で【化2】として例示されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンには、特別の断りがないが末端基にビニル基が存在している。 してみると、「ビニル基の末端は『分子鎖途中のケイ素原子に結合したビニル基[-Si(CH=CH_(2))(CH_(3))O-単位]を5モル%含有する』と記載され、それ以外にビニル基の含有については記載がないものであるから、分子鎖末端基にはビニル基が存在せずトリオルガノシロキシ基であることを、当業者ならば容易に理解する。」とする被請求人の主張を、そのまま認めることはできない。 したがって、『分子鎖途中のケイ素原子に結合したビニル基[-Si(CH=CH_(2))(CH_(3))O-]単位を5モル%含有する粘度1000センチポイズのビニルメチルポリシロキサン』が、末端にビニル基を有することもあり得るので、本件(A)成分に該当しないか、又は該当するかどうか不明であるといわざるを得ない。そして、該ビニルメチルポリシロキサンにはビニル基含有量が多いために、各調製例ひいては各実施例において、本件(A)成分中の珪素原子に結合したビニル基1モルに対して(B)成分中の珪素原子に結合した水素原子が何モルであるかが不明となり、実施例で使用されている液状シリコーンゴム組成物が本件特許の請求項1で規定する液状シリコーンゴム組成物に該当するか不明となる。 また、『分子鎖途中のケイ素原子に結合したビニル基[-Si(CH=CH_(2))(CH_(3))O-]単位を5モル%含有する粘度1000センチポイズのビニルメチルポリシロキサン』が、末端にビニル基を有することは、実施例における硬化物の特性にも影響することは、あきらかである。したがって、発明の詳細な説明において、(A)?(E)成分に加えて「分子鎖途中のケイ素原子に結合したビニル基[-Si(CH=CH_(2))(CH_(3))O-]単位を5モル%含有する粘度1000センチポイズのビニルメチルポリシロキサン」を必須成分として有するものについて作用効果が確認されているものの、(A)?(E)成分を有し、「分子鎖途中のケイ素原子に結合したビニル基[-Si(CH=CH_(2))(CH_(3))O-]単位を5モル%含有する粘度1000センチポイズのビニルメチルポリシロキサン」を有しない訂正後の本件特許の請求項1に係る発明の作用効果は、確認することができない。 とすると、「分子鎖途中のケイ素原子に結合したビニル基[-Si(CH=CH_(2))(CH_(3))O-]単位を5モル%含有する粘度1000センチポイズのビニルメチルポリシロキサン」を必須成分としない訂正後の本件特許の請求項1に係る発明を実施するに当たって、「硬化後のゴム反発弾性率(JIS K6301)が30%以下であり、100?200℃にて10?30分の一次加硫条件において硬化させた場合の最大硬度と最小硬度との差がアスカーCSR2にて10度以下のもの」を得るために、当業者に過度な試行錯誤を強制することは明らかである。 (5)まとめ 以上のとおりであるから、本件特許の請求項1に係る発明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、特許法第36条第4項に違反しているから、無効理由2には理由がある。 5-2.無効理由3 請求人は、平成21年5月27日付弁駁書で、訂正は認められるべきではないと主張しているので、以下に検討する。 (1)訂正後の請求項1に係る発明に対する請求人の主張 本件特許の請求項1に、「耐熱向上剤として酸化鉄」が追加されたが、配合量が記載されていない。他の成分はすべて配合量が特定されているのに、「耐熱向上剤として酸化鉄」のみが配合量不特定である。乙第2号証?乙第7号証における酸化鉄の配合量はまちまちである。乙第2号証?乙第7号証の記載事項をもって、「耐熱向上剤として酸化鉄」の配合量を特定できるものではない。・・・組成に特徴のある発明は各成分の配合量範囲を特定して初めて発明が明確になる。したがって本件特許の訂正後の請求項1に係る発明は不明確であり、特許法第36条第6項第2号の規定に違反しており、かかる訂正は認められるべきでない。(弁駁書3頁8.1.2) この主張は、本件無効審判の請求の要旨を変更するものであるが、当該補正は審理を不当に遅延させるおそれがないことが明らかなものであり、当該特許無効審判において特許法第134条の2第1項の訂正の請求があり、その訂正の請求により請求の理由を補正する必要が生じたことによって、請求の理由を補正する得必要が生じたためである。したがって、この請求の理由(以下、「無効理由3」という。)の補正を認める。 (2)被請求人の反論 被請求人は、以下のように反論している。 上記訂正における耐熱向上剤としての酸化鉄は、本件特許明細書【0038】に記載したように電子写真式定着装置における定着ロールに適用されるシリコーンゴム組成物の技術分野において、必要に応じて添加される任意成分としてそれ自身周知の成分であり、酸化鉄の配合量についても、耐熱性向上効果を発現させる上で、例えばシリコーンゴム組成物中0.1?30重量%となる程度、少なくともベースポリマー成分100重量部あたり0.2?30重量部程度配合すればよいものであることが当該技術分野に関わる当業者であれば容易に理解しうるものである。(答弁書10頁) (3)無効理由3に対する当審の判断 本件特許の請求項1においては、確かに「耐熱向上剤として酸化鉄」のみが配合量不特定である。また、乙第2号証?乙第7号証における酸化鉄の配合量はまちまちであるから、乙第2号証?乙第7号証の記載事項をもって、「耐熱向上剤として酸化鉄」の配合量を、直ちに特定できるものではない。 ところで、実施例1?実施例3に用いられる「調製例1」ならびに「調製例6」において、以下のように酸化鉄の配合量が例示されている。 「【0045】 〔調製例1〕 分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、メチルビニルシロキサン単位として側鎖ビニル基を平均約5個含有する直鎖状ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン共重合体(重合度約700)100部、平均粒径5μmの結晶性シリカ25部、酸化鉄2部を均一に混合した後、これに下記式(i)で表される常温での粘度25℃(以下同様)が約10センチポイズであるハイドロジェンメチルポリシロキサンを1.5部、珪素原子に直結したビニル基〔-Si(CH_(3))(CH=CH_(2))O-〕を5モル%含有する常温での粘度が1,000センチポイズであるビニルメチルポリシロキサンを4部、反応制御剤として1-エチニル-1-シクロヘキサノール0.1部、白金ビニルシロキサン錯体を白金原子として50ppm添加し、均一になるまでよく混合した。」 「【0055】 〔調製例6〕 調製例1で使用した両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサンメチルビニルシロキサン共重合体100部、結晶性シリカ(平均粒径5μm)25部、酸化鉄2部を均一に混合した後、これに上記式(i)で表される常温での粘度が約10センチポイズであるハイドロジェンメチルポリシロキサンを1.7部、珪素原子に直結したビニル基〔-Si(CH_(3))(CH=CH_(2))O-〕を5モル%含有する常温での粘度が1,000センチポイズであるビニルメチルポリシロキサンを4部、反応制御剤として1-エチニル-1-シクロヘキサノール0.1部、白金ビニルシロキサン錯体を白金原子として50ppm添加し、均一になるまでよく混合した。これを液状組成物6とした。」 また、乙第2号証?乙第7号証における酸化鉄の配合量はまちまちであるものの、被請求人の指摘するように、耐熱性向上効果を発現させる上で、例えばシリコーンゴム組成物中0.1?30重量%となる程度、少なくともベースポリマー成分100重量部あたり0.2?30重量部程度配合すればよいものであることが認められる。 そして、本件特許の請求項1において、耐熱向上効果を発現させるために酸化鉄が配合されていることからすると、「耐熱向上剤として酸化鉄」の必要とされる配合量範囲は、耐熱性向上効果を発現させるに十分な量であればよいと認められる。 (4)まとめ したがって、本件特許の訂正後の請求項1に係る発明は明確であり、特許法第36条第6項第2号の規定に違反していないから、無効理由3には理由がない。 6.むすび 以上のことから、無効理由3には理由がないものの、無効理由2には理由があり、無効理由1について検討するまでもなく、本件特許の請求項1に係る発明の特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第123条第1項第4号に該当する。 また、審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定により準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 低硬度シリコーンゴム定着用ロール (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】円柱状又は円筒状の金属芯金の外周面に、硬化後のゴム反発弾性率(JIS K6301)が30%以下であり、100?200℃にて10?30分の一次加硫条件において硬化させた場合の最大硬度と最小硬度との差がアスカーCSR2にて10度以下のものである、下記(A)?(E)成分を必須成分とする付加反応硬化型液状シリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴムを被覆し、その外周面にフッ素樹脂又はフッ素系ラテックスからなる低表面エネルギー性の有機樹脂層を設けてなることを特徴とする低硬度シリコーンゴム定着用ロール。 (A)一分子中に珪素原子と結合する脂肪族不飽和炭化水素基を分子の側鎖のみに2個以上含有し、該脂肪族不飽和炭化水素基含有シロキサン単位ユニットが0.05?5モル%であるオルガノポリシロキサン 100重量部 (B)下記平均組成式(4) R^(1)_(b)H_(c)SiO_((4-b-c)/2) (4) (R^(1)は脂肪族不飽和結合を除く非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基、b,cはそれぞれ0.7≦b≦2.1、0.002≦c≦1、0.8≦b+c≦3を満足する正数である。) で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、下記一般式(1) 【化2】 (式中、R^(1)は上記平均組成式(4)におけるR^(1)と同じ意味を示し、m,nは1以上の整数である。) で表され、一分子中に少なくとも3個以上の珪素原子に直結した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンのみからなる成分 (A)成分中の珪素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基1モルに対して (B)成分中の珪素原子に結合した水素原子が0.1?3.0モルとなる量 (C)触媒量の白金及び白金系化合物 (D)充填剤 5?300重量部 (E)耐熱向上剤として酸化鉄 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、複写機、レーザービームプリンター、FAXなどに使用する熱定着用ロールに関し、更に詳しくは、ロール軸の外周にシリコーンゴム層を介して低表面エネルギー性の有機樹脂層を設けてなる低硬度シリコーンゴム定着用ロールに関する。 【0002】 【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】 従来、金属製の芯金の外周面にシリコーンゴム層を介してフッ素系樹脂層やフッ素系ラテックス層を設けてなる定着用ロールは、トナーの離型性が優れていることから、複写機、レーザービームプリンター、FAXなどの機器定着用ロールとして使用されている。最近、複写機、レーザービームプリンター、FAXなどの機器の高速化に伴い、定着装置において、定着に要する時間を増加させるため、定着幅(ニップ幅)を確保する目的で、ゴム材料のJIS硬度計にて測定困難な低硬度化が進んでいるが、ゴムの反発弾性率が高いため、定着用ロールの肉厚を薄くするにも拘らず、低いニップ圧によっても適度なニップ幅を得ることができないという問題点があった。 【0003】 一方、JIS硬度計にて測定困難な低硬度ロールにおいては、硬化条件(一次加硫条件)におけるシリコーンゴムの硬度変化が大きいと、例えば、シリコーンゴムの外周面に被覆するフッ素樹脂との接着耐久性が悪くなるという問題点があった。 【0004】 従って、本発明の目的は、定着用ロールの肉厚を薄くした場合においても、低いニップ圧によっても適度なニップ幅を得ることができ、シリコーンゴムとその外周面に被覆するフッ素樹脂層との間の接着耐久性に優れた低硬度の定着用ロール、即ち定着ロール又は加圧ロール(バックアップロール)を提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】 本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、円柱状又は円筒状の金属芯金の外周面をシリコーンゴム層で被覆し、更にその外周面にフッ素樹脂又はフッ素系ラテックスからなる低表面エネルギー性の有機樹脂層を設けてなる定着用ロールにおいて、上記シリコーンゴム層として、硬化後のゴム反発弾性率(JIS K6301)が30%以下であり、硬化条件(一次加硫条件)における硬度変化、即ち、100?200℃にて10?30分の一次加硫条件において硬化させた場合の最大硬度と最小硬度との差がアスカーCSR2にて10度以下である付加反応硬化型の液状シリコーンゴム組成物の硬化物にて形成することにより、定着用ロールの肉厚が薄くても、低いニップ圧によって適度なニップ幅が得られることを知見した。また、この場合、この液状シリコーンゴム組成物としては、特に (A)一分子中に珪素原子と結合する脂肪族不飽和炭化水素基を分子の側鎖のみに2個以上含有し、該脂肪族不飽和炭化水素基含有シロキサン単位ユニットが0.05?5モル%であるオルガノポリシロキサン 100重量部 (B)下記平均組成式(4) R^(1)_(b)H_(c)SiO_((4-b-c)/2) (4) (R^(1)は脂肪族不飽和結合を除く非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基、b,cはそれぞれ0.7≦b≦2.1、0.002≦c≦1、0.8≦b+c≦3を満足する正数である。) で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、下記一般式(1)で表され、一分子中に少なくとも3個以上の珪素原子に直結した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンのみからなる成分 (A)成分中の珪素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基1モルに対して (B)成分中の珪素原子に結合した水素原子が0.1?3.0モルとなる量 (C)触媒量の白金及び白金系化合物 (D)充填剤 5?300重量部 (E)耐熱向上剤として酸化鉄 を必須成分とするものが好適であることを知見し、本発明をなすに至ったものである。 【0006】 【化3】 (式中、R^(1)は上記平均組成式(4)におけるR^(1)と同じ意味を示し、m,nは1以上の整数である。) 【0007】 以下、本発明につき更に詳しく説明すると、本発明の低硬度シリコーンゴム定着用ロールは、円柱状又は円筒状の金属芯金の外周面に、硬化後のゴム反発弾性率(JIS K6301)が30%以下である付加反応硬化型液状シリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴムを被覆し、その外周面に低表面エネルギー性の有機樹脂層を設けてなることを特徴とする。 【0008】 ここで、本発明に用いられる定着用ロールの金属芯金は、鉄、アルミニウム、ステンレスなどのいずれの材質のものでもよい。また、プライマー処理をした金属芯金を使用してもよい。 【0009】 上記金属芯金の外周面に被覆、形成するシリコーンゴム層は、上述したように、硬化後のゴム反発弾性率(JIS K6301)が30%以下、好ましくは5?25%、特に好ましくは10?20%の付加反応硬化型液状シリコーンゴム組成物を硬化させて得られるシリコーンゴムにて形成するものである。上記ゴム反発弾性率30%より大きい付加反応硬化型液状シリコーンゴム組成物を使用した場合は、低いニップ圧によっても十分なニップ幅を得ることができず、高速な定着装置におけるロールの特性上好ましくない。なお、このゴム反発弾性率が5%未満の場合には、ニップ圧により変形したロールの形状回復速度が遅いため、高速な定着装置においては、定着画像にむらが生じる場合がある。 【0010】 なお、JIS硬度計にて測定困難な低硬度ロールの硬度を管理するには、日本ゴム協会誌、第6巻第7号(1996)516頁にて、公開されたアスカーCSR2硬度計(高分子計器株式会社)にて測定することが好ましいが、本発明においては、液状シリコーンゴム組成物として、更に硬化条件(一次加硫条件)における硬度変化がアスカーCSR2にて±5度以下、即ち、100?200℃にて10?30分の一次加硫条件において硬化させた場合の最大硬度と最小硬度との差がアスカーCSR2にて10度以下のものを使用することが好ましい。10度より大きい場合は、所定の硬度が得られず、またフッ素樹脂、フッ素ラテックス等の低表面エネルギー性の有機樹脂層との接着耐久性が低下するおそれがある。 【0011】 このようなシリコーンゴム層を形成させる付加反応硬化型液状シリコーンゴム組成物としては、 (A)一分子中に少なくとも2個の珪素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基を有するオルガノポリシロキサン 100重量部 (B)一分子中に少なくとも2個以上の珪素原子に直結した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン (A)成分中の珪素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基1モルに対して (B)成分中の珪素原子に結合した水素原子が0.1?3.0モルとなる量 (C)触媒量の白金及び白金系化合物 (D)充填剤 5?300重量部 (E)耐熱向上剤として酸化鉄 であるものを用いる。 【0012】 ここで、(A)成分の脂肪族不飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンは、常温(25℃)で100?100,000cpの粘度を有するものを使用することができる。 【0013】 【0014】 【0015】 【0016】 上記オルガノポリシロキサンとしては、特にゴムの低硬度化の点から、一分子中に珪素原子と結合する脂肪族不飽和炭化水素基を分子の側鎖のみ(即ち、ジオルガノシロキサン単位の珪素原子に結合した置換基としてのみ)に2個以上含有し、該脂肪族不飽和炭化水素基含有シロキサン単位ユニットが0.05?5モル%であるオルガノポリシロキサンを使用する。 【0017】 このようなオルガノポリシロキサンとしては、下記平均分子式(3)で示されるものを使用する。 【0018】 【化5】 (但し、R^(2)は、脂肪族不飽和炭化水素基以外の置換又は非置換の一価炭化水素基、R^(3)は一価の脂肪族不飽和炭化水素基であり、x、yはそれぞれx≧38、y≧2、40≦x+y≦20,000、好ましくは100≦x+y≦10,000、0.05≦〔y/(x+y)〕×100≦5、好ましくは0.1≦〔y/(x+y)〕×100≦3を満たす整数である。) 【0019】 上記式(3)において、R^(2)は好ましくは炭素数1?12のもの、より好ましくは1?8のものであり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、これらの基の水素原子の一部又は全部を塩素、臭素、フッ素などのハロゲン原子やシアノ基で置換したクロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3-トリフロロプロピル基、シアノエチル基などが挙げられるが、特にメチル基、フェニル基、3,3,3-トリフロロプロピル基が好ましい。R^(3)はビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ヘキセニル基等の炭素数2?6、特に2?4のアルケニル基などの脂肪族不飽和炭化水素基であり、特にビニル基が好ましい。 【0020】 上記式(3)において、各置換基は異なっていても同一であってもよいが、このオルガノポリシロキサンは、分子中の側鎖のみ(即ち、R^(2)R^(3)SiO_(2/2)で示されるジオルガノシロキサン単位の珪素原子に結合した置換基R^(3)としてのみ)に2個以上の脂肪族不飽和炭化水素基を含有し、かつ脂肪族不飽和炭化水素基を含有するシロキサン単位の量が0.05?5モル%、好ましくは0.1?3モル%であることが必要である。なお、この脂肪族不飽和炭化水素基を含有するシロキサン単位の量(モル%)は、オルガノポリシロキサンの主鎖を構成するジオルガノシロキサン単位(即ち、R^(2)_(2)SiO_(2/2)単位とR^(2)R^(3)SiO_(2/2)単位の合計)に対する脂肪族不飽和炭化水素基含有シロキサン単位(即ち、R^(2)R^(3)SiO_(2/2)単位)の割合を意味するものである。上記脂肪族不飽和炭化水素基の含有量が0.05モル%に満たないと機械的強度などのゴムとしての物性を保つことが困難となり、また5モル%を超えると低硬度の硬化物を得ることが非常に困難となる。 【0021】 なお、このオルガノポリシロキサンは、一般的には主鎖部分が基本的にジオルガノシロキサン単位(即ち、R^(2)_(2)SiO_(2/2)単位及びR^(2)R^(3)SiO_(2/2)単位)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基(即ち、R^(2)_(3)SiO_(1/2)単位)で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンであるが、部分的にR^(2)SiO_(3/2)単位、R^(3)SiO_(3/2)単位又はSiO_(4/2)単位を含んだ分岐状や環状であってもよい。 【0022】 また、上記式(3)のオルガノポリシロキサンの重合度(あるいは分子中の珪素原子の数)は50?20,000、特に100?15,000、とりわけ500?10,000程度が好適である。 【0023】 次に、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分と反応し、架橋剤として作用するものであり、一分子中に3個以上の珪素原子に直接結合した水素原子(SiH基)を含むものとする必要がある。この化合物の水素以外の珪素原子に結合する置換基は(A)成分のオルガノポリシロキサンにおける置換基と同様である。 【0024】 この(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(4)で示されるものが使用される。 【0025】 R^(1)_(b)H_(c)SiO_((4-b-c)/2) (4) (R^(1)は脂肪族不飽和結合を除く炭素数1?8の非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基、b,cはそれぞれ0.7≦b≦2.1、好ましくは1≦b≦2、0.002≦c≦1、好ましくは0.01≦c≦0.6、0.8≦b+c≦3、好ましくは1.5≦b+c≦2.6を満足する正数である。) 【0026】 このオルガノハイドロジェンポリシロキサンにおいて、水素原子以外の珪素原子に結合する置換基R^(1)は(A)成分のオルガノポリシロキサンにおける平均分子式(3)の置換基R^(2)として例示したものと同様の脂肪族不飽和結合を除く炭素数1?8の非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基である。 【0027】 このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、メチルハイドロジェン環状ポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH_(3))_(2)HSiO_(1/2)単位とSiO_(4/2)単位とからなる共重合体、(CH_(3))_(2)HSiO_(1/2)単位と(CH_(3))_(3)SiO_(1/2)単位とSiO_(4/2)単位とからなる共重合体、(CH_(3))_(2)HSiO_(1/2)単位とSiO_(4/2)単位と(C_(6)H_(5))SiO_(3/2)単位とからなる共重合体などを挙げることができる。 【0028】 この(B)成分の添加量は、(A)成分中の珪素原子と結合する脂肪族不飽和炭化水素基1モルに対し、この(B)成分中の珪素原子に結合した水素原子(SiH基)が0.1?3.0モル、特に0.3?2.0モルの範囲となる割合が好適であり、上記範囲外の場合、硬化が不十分であったり、圧縮永久歪の特性が悪くなったりする場合がある。 【0029】 このものは当業者にとって公知の製造方法によって得ることが可能である。ごく一般的な製造方法を挙げると、オクタメチルシクロテトラシロキサン及び/又はテトラメチルシクロテトラシロキサンと末端基となり得るヘキサメチルジシロキサン或いは1,1’-ジハイドロ-2,2’,3,3’-テトラメチルジシロキサン単位を含む化合物とを硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸等の触媒の存在下に-10℃?+40℃程度の温度で平衡化させることによって容易に得ることができる。 【0030】 このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンの中では、上述したゴム反発弾性率(JIS K6301で30%以下)の点、更には硬化条件(一次加硫条件)における硬度変化(アスカーCSR2にて±5度以下)の点から、下記一般式(1)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用する。 【0031】 【化6】 (式中、R^(1)は上記平均組成式(4)におけるR^(1)と同じ意味を示し、m,nは1以上の整数である。) 【0032】 ここで、R^(1)としては、R^(2)と同様の炭素数1?12、より好ましくは1?8、更に好ましくは1?4の非置換又は置換一価炭化水素基を挙げることができ、特にはメチル基、フェニル基、3,3,3-トリフロロプロピル基が好ましい。 【0033】 なお、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの常温(25℃)における粘度は0.2?1,000cp、特に1?700cpであることが好ましく、分子中の珪素原子数は200個以下、より好ましくは2?150個、特には4?50個程度であることが好ましい。 【0034】 本発明に使用される(C)成分の白金及び白金系化合物は、前記した(A)成分と(B)成分との硬化付加反応(ハイドロサイレーション)を促進させるための触媒として使用されるものであるが、これは当業者において公知とされるものでよい。従って、これには白金ブラック、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン又はアセチレンアルコール類等との錯体などが例示される。なお、この添加量は希望する硬化速度に応じて適宜増減すればよいが、通常は(A)成分に対して白金量で0.1?1,000ppm、好ましくは1?200ppmの範囲とすればよい。 【0035】 (D)成分の充填剤は、付加反応硬化型液状シリコーンゴム組成物に所定の硬度及び引っ張り強さなどの物理的強度を付与するものである。用いる充填剤としては、従来よりシリコーンゴム組成物に通常使用されるものでよい。具体的には、例えばヒュームドシリカ、結晶性シリカ(石英粉末)、沈降性シリカ、疎水化処理したシリカなどのシリカ系充填剤が挙げられ、これらは1種単独でも2種以上を組み合わせてもよい。このような材料の例示としては、親水性のシリカとしてAerosil 130,200,300(日本アエロジル社、Degussa社製)、Cabosil MS-5,MS-7(Cabot社製),Rheorosil QS-102,103(徳山曹達社製),Nipsil LP(日本シリカ社製)等が、疎水性のシリカとしてAerosil R-812,R-812S,R-972,R-974(Degussa社製)、Rheorosil MT-10(徳山曹達社製),Nipsil SSシリーズ(日本シリカ社製)、結晶性シリカ(石英粉末)としてクリスタライト((株)龍森社製)、Minusil(ペンシルバニア・ガラス・サンド社製),Imisil(イリノイミネラル社製)が挙げられる。 【0036】 (D)成分の充填剤の配合量は、(A)成分100重量部に対して5?300重量部が好ましく、より好ましくは20?200重量部である。硬化後のゴム反発弾性率の点からは結晶性シリカを使用することが好ましい。 【0037】 更にこれらの材料を実用に供するため、酸化鉄が添加され、その他の成分を必要に応じて添加することができる。 【0038】 具体的には、炭酸カルシウムのような充填剤、補強剤となるシリコーン系レジン、カーボンブラック、導電性亜鉛華、銀、銅、ニッケルなどの金属粉の導電性付与剤、酸化セリウムのような耐熱向上剤、硬化時間の調製を行う必要がある場合には、制御剤(付加反応抑制剤)としてテトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサンのようなビニル基含有オルガノポリシロキサン、トリアリルイソシアヌレート、アルキルマレエート、アセチレンアルコール類及びそのシラン、シロキサン変性物、ハイドロパーオキサイド、テロラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール及びそれらの混合物からなる群から選ばれる化合物などを使用しても差し支えない。 【0039】 なお、上記液状シリコーンゴム組成物は、これを硬化させる場合、各成分を混合した後、恒温槽における熱風(オープン)加硫、プレス機、射出成形機等に型を設置した型(加熱)加硫などの手法により、一次加硫としては100?200℃で10?30分程度処理した後、好ましくは二次加硫として150?200℃で2?4時間程度処理するという条件を採用することができる。 【0040】 本発明の定着用ロールにおいて、上記シリコーンゴム層を被覆する表層の低表面エネルギー性の有機樹脂層としては、フッ素樹脂とフッ素系ラテックスを使用することができる。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、フッ化エチレンポリプロピレン共重合体樹脂(FEP)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリフッ化ビニル樹脂(PVF)などが挙げられる。特にフッ素樹脂はテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)が好ましく、シリコーンゴムとの接着面はコロナ放電処理、ナトリウムナフタレン法、スパッタエッチング法、液体アンモニア法などにより、シリコーンゴムとの接着を有利にすることが好ましい。更に接着耐久性を向上させるためにプライマー処理を行ってもよい。 【0041】 フッ素系ラテックスとしては、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)ラテックスやダイエルラテックス(ダイキン工業社製フッ素系ラテックス)などが挙げられる。 【0042】 このフッ素樹脂及びフッ素系ラテックスの厚さとしては、0.1mm以下であることが好ましく、特に0.1?30μmの範囲であることが好ましい。なお、シリコーンゴム層の厚さとしては、1?30mmであることが好ましい。 【0043】 本発明の定着用ロールは以下の工程により製造することができる。 まず、プレス成形又は液状射出成形により、プライマー処理をした金属芯金の外周面へ、硬化後のゴム反発弾性率(JIS K6301)が30%以下、好ましくは5?25%である付加反応硬化型液状シリコーンゴム組成物の被覆層を形成する。更にそのゴム被覆層表面に例えばフッ素系ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ラテックスコーティング剤をスプレー塗布し、高温にてコーティング剤層を焼結させる。また、別の製造方法として、予めテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)チューブ内面にプライマー処理を行い、次にプライマー処理をした金属芯金とテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)チューブの間に、未硬化液状シリコーンゴム組成物を注入と同時に加熱硬化させてロールを成形させる方法を採用することができるが、勿論これらに限定されるものではない。 【0044】 【実施例】 以下、調製例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下の例において部はいずれも重量部である。また、平均粒径の値は、レーザー光回折法による粒度分布測定装置を用いた重量平均値(メジアン径)である。 【0045】 〔調製例1〕 分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、メチルビニルシロキサン単位として側鎖ビニル基を平均約5個含有する直鎖状ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン共重合体(重合度約700)100部、平均粒径5μmの結晶性シリカ25部、酸化鉄2部を均一に混合した後、これに下記式(i)で表される常温での粘度25℃(以下同様)が約10センチポイズであるハイドロジェンメチルポリシロキサンを1.5部、珪素原子に直結したビニル基〔-Si(CH_(3))(CH=CH_(2))O-〕を5モル%含有する常温での粘度が1,000センチポイズであるビニルメチルポリシロキサンを4部、反応制御剤として1-エチニル-1-シクロヘキサノール0.1部、白金ビニルシロキサン錯体を白金原子として50ppm添加し、均一になるまでよく混合した。これを液状組成物1とした。 【0046】 【化7】 【0047】 〔調製例2〕 調製例1で使用した両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサンメチルビニルシロキサン共重合体100部、結晶性シリカ(平均粒径5μm)25部、酸化鉄2部を均一に混合した後、これに下記式(ii)で表される常温での粘度が約38センチポイズであるハイドロジェンメチルポリシロキサンを1.5部、珪素原子に直結したビニル基〔-Si(CH_(3))(CH=CH_(2))O-〕を5モル%含有する常温での粘度が1,000センチポイズであるビニルメチルポリシロキサンを4部、反応制御剤として1-エチニル-1-シクロヘキサノール0.1部、白金ビニルシロキサン錯体を白金原子として50ppm添加し、均一になるまでよく混合した。これを液状組成物2とした。 【0048】 【化8】 【0049】 〔調製例3〕 調製例1で使用した両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサンメチルビニルシロキサン共重合体100部、結晶性シリカ(平均粒径5μm)25部、酸化鉄2部を均一に混合した後、これに下記式(iii)で表される常温での粘度が約10センチポイズであるハイドロジェンメチルポリシロキサンを1.5部、珪素原子に直結したビニル基〔-Si(CH_(3))(CH=CH_(2))O-〕を5モル%含有する常温での粘度が1,000センチポイズであるビニルメチルポリシロキサンを4部、反応制御剤として1-エチニル-1-シクロヘキサノール0.1部、白金ビニルシロキサン錯体を白金原子として50ppm添加し、均一になるまでよく混合した。これを液状組成物3とした。 【0050】 【化9】 【0051】 〔調製例4〕 調製例1で使用した両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサンメチルビニルシロキサン共重合体100部、結晶性シリカ(平均粒径5μm)25部、酸化鉄2部を均一に混合した後、これに上記式(iii)で表される常温での粘度が約10センチポイズであるハイドロジェンメチルポリシロキサンを1.0部、下記式(iv)で表される常温での粘度が約30センチポイズであるハイドロジェンメチルポリシロキサンを0.5部、珪素原子に直結したビニル基〔-Si(CH_(3))(CH=CH_(2))O-〕を5モル%含有する常温での粘度が1,000センチポイズであるビニルメチルポリシロキサンを4部、反応制御剤として1-エチニル-1-シクロヘキサノール0.1部、白金ビニルシロキサン錯体を白金原子として50ppm添加し、均一になるまでよく混合した。これを液状組成物4とした。 【0052】 【化10】 【0053】 〔調製例5〕 調製例1で使用した両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサンメチルビニルシロキサン共重合体100部、結晶性シリカ(平均粒径5μm)25部、酸化鉄2部を均一に混合した後、これに上記式(i)で表される常温での粘度が約10センチポイズであるハイドロジェンメチルポリシロキサンを1.0部、下記式(v)で表される常温での粘度が約20センチポイズであるハイドロジェンメチルポリシロキサンを0.5部、珪素原子に直結したビニル基〔-Si(CH_(3))(CH=CH_(2))O-〕を5モル%含有する常温での粘度が1,000センチポイズであるビニルメチルポリシロキサンを4部、反応制御剤として1-エチニル-1-シクロヘキサノール0.1部、白金ビニルシロキサン錯体を白金原子として50ppm添加し、均一になるまでよく混合した。これを液状組成物5とした。 【0054】 【化11】 【0055】 〔調製例6〕 調製例1で使用した両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサンメチルビニルシロキサン共重合体100部、結晶性シリカ(平均粒径5μm)25部、酸化鉄2部を均一に混合した後、これに上記式(i)で表される常温での粘度が約10センチポイズであるハイドロジェンメチルポリシロキサンを1.7部、珪素原子に直結したビニル基〔-Si(CH_(3))(CH=CH_(2))O-〕を5モル%含有する常温での粘度が1,000センチポイズであるビニルメチルポリシロキサンを4部、反応制御剤として1-エチニル-1-シクロヘキサノール0.1部、白金ビニルシロキサン錯体を白金原子として50ppm添加し、均一になるまでよく混合した。これを液状組成物6とした。 【0056】 〔実施例1〕 液状組成物1を厚み6mmの型に入れ、120℃,140℃,200℃で10分及び30分プレス加硫した。テストピースを型から取り出した後、室温まで冷却し、アスカーCSR2の硬度計でゴム硬度を測定した。次にJIS K6301に準拠し、反発弾性率を測定した。硬度はアスカーCSR2で120℃-10分にて30、120℃-30分にて31、140℃-10分にて32、140℃-30分にて34、200℃-10分にて34、200℃-30分にて37であり、反発弾性率は20%であった。 【0057】 次に、直径24mm×長さ300mmのアルミニウムシャフト上に付加反応型液状シリコーンゴム用プライマーNO.101A/B(信越化学工業社製)を塗布した。更にこの上に液状組成物1を塗布し、150℃で30分加熱硬化し、更に200℃で4時間ポストキュアーした。この硬化物表面にダイエルラテックスとシリコーンゴム用プライマーGLP-103SR(ダイキン社製)を均一に塗布し、80℃/10分加熱し、更にダイエルラテックスGLS-213を均一にスプレー塗布し、300℃で1時間加熱焼成し、外径26mm×長さ250mmのダイエルラテックスコーティング低硬度シリコーンゴムロールを作製した。 【0058】 一方、直径50mm×長さ300mmのアルミニウムシャフトの表面にポリテトラフルオロエチレンのラテックスコーティングを施し、300℃で15分加熱焼成した。このロールと上記ロールを接触させ、2kgの荷重をかけ、ニップ幅を測定したところ、20mmであった。 【0059】 更に、PPC複写機の定着ロールとして組み込み、10万枚複写を行ったところ、良好な複写物が得られた。 【0060】 〔実施例2〕 直径24mm×長さ300mmのアルミニウムシャフト上に付加反応型液状シリコーンゴム用プライマーNO.101A/B(信越化学工業社製)を塗布した。内面をプライマー処理した50μmのPFAチューブとアルミニウムシャフトとの間に液状組成物1を充填し、150℃で30分加熱硬化し、更に200℃で4時間ポストキュアーし、外径26mm×長さ250mmのPFA樹脂被覆低硬度シリコーンゴムロールを作製した。 【0061】 一方、直径50mm×長さ300mmのアルミニウムシャフトの表面にポリテトラフルオロエチレンのラテックスコーティングを施し、300℃で15分加熱焼成した。このロールと上記ロールを接触させ、2kgの荷重をかけ、ニップ幅を測定したところ、20mmであった。 【0062】 更に、PPC複写機の定着ロールとして組み込み、10万枚複写を行ったところ、良好な複写物が得られた。 【0063】 〔実施例3〕 液状組成物6を厚み6mmの型に入れ、120℃,140℃,200℃で10分及び30分プレス加硫した。テストピースを型から取り出した後、室温まで冷却し、アスカーCSR2の硬度計でゴム硬度を測定した。次にJIS K6301に準拠し、反発弾性率を測定した。硬度はアスカーCSR2で120℃にて34(10分)、140℃にて36(10分)、200℃にて38(10分)及び40(30分)であり、反発弾性率は25%であった。 【0064】 次に、直径24mm×長さ300mmのアルミニウムシャフト上に付加反応型液状シリコーンゴム用プライマーNO.101A/B(信越化学工業社製)を塗布した。更にこの上に液状組成物1を塗布し、150℃で30分加熱硬化し、更に200℃で4時間ポストキュアーした。この硬化物表面にダイエルラテックスとシリコーンゴム用プライマーGLP-103SR(ダイキン社製)を均一に塗布し、80℃/10分加熱し、更にダイエルラテックスGLS-213を均一にスプレー塗布し、300℃で1時間加熱焼成し、外径26mm×長さ250mmのラテックスコーティング低硬度シリコーンゴムロールを作製した。 【0065】 一方、直径50mm×長さ300mmのアルミニウムシャフトの表面にポリテトラフルオロエチレンのラテックスコーティングを施し、300℃で15分加熱焼成した。このロールと上記ロールを接触させ、2kgの荷重をかけ、ニップ幅を測定したところ、20mmであった。 【0066】 更に、PPC複写機の定着ロールとして組み込み、10万枚複写を行ったところ、良好な複写物が得られた。 【0067】 〔比較例1〕 液状組成物2を厚み6mmの型に入れ、120℃,140℃,200℃で10分プレス加硫した。テストピースを型から取り出した後、室温まで冷却し、アスカーCSR2の硬度計でゴム硬度を測定した。次にJIS K6301に準拠し、反発弾性率を測定した。硬度はアスカーCSR2で120℃にて20、140℃にて26、200℃にて32であり、反発弾性率は33%であった。 【0068】 次に、直径24mm×長さ300mmのアルミニウムシャフト上に付加反応型液状シリコーンゴム用プライマーNO.101A/B(信越化学工業社製)を塗布した。内面をプライマー処理した50μmのPFAチューブとアルミニウムシャフトとの間に液状組成物2を充填し、150℃で30分加熱硬化し、更に200℃で4時間ポストキュアーし、外径26mm×長さ250mmのPFA樹脂被覆低硬度シリコーンゴムロールを作製した。 【0069】 一方、直径50mm×長さ300mmのアルミニウムシャフトの表面にポリテトラフルオロエチレンのラテックスコーティングを施し、300℃で15分加熱焼成した。このロールと上記ロールを接触させ、2kgの荷重をかけ、ニップ幅を測定したところ、17mmであった。 【0070】 更に、PPC複写機の定着ロールとして組み込み、5千枚複写を行ったところ、PFAチューブとシリコーンゴム層が剥離し、定着むらのある複写物が得られた。 【0071】 〔比較例2〕 液状組成物3を厚み6mmの型に入れ、120℃,140℃,200℃で10分プレス加硫した。テストピースを型から取り出した後、室温まで冷却し、アスカーCSR2の硬度計でゴム硬度を測定した。次にJIS K6301に準拠し、反発弾性率を測定した。硬度はアスカーCSR2で120℃にて30、140℃にて36、200℃にて43であり、反発弾性率は32%であった。 【0072】 次に、直径24mm×長さ300mmのアルミニウムシャフト上に付加反応型液状シリコーンゴム用プライマーNO.101A/B(信越化学工業社製)を塗布した。内面をプライマー処理した50μmのフッ素PFAチューブとアルミニウムシャフトとの間に液状組成物3を充填し、150℃で30分加熱硬化し、更に200℃で4時間ポストキュアーし、外径26mm×長さ250mmのPFA樹脂被覆低硬度シリコーンゴムロールを作製した。 【0073】 一方、直径50mm×長さ300mmのアルミニウムシャフトの表面にポリテトラフルオロエチレンのラテックスコーティングを施し、300℃で15分加熱焼成した。このロールと上記ロールを接触させ、2kgの荷重をかけ、ニップ幅を測定したところ、15mmであった。 【0074】 更に、PPC複写機の定着ロールとして組み込み、5千枚複写を行ったところ、PFAチューブとシリコーンゴム層が剥離した。 【0075】 〔比較例3〕 液状組成物4を厚み6mmの型に入れ、120℃,140℃,200℃で10分プレス加硫した。テストピースを型から取り出した後、室温まで冷却し、アスカーCSR2の硬度計でゴム硬度を測定した。次にJIS K6301に準拠し、反発弾性率を測定した。硬度はアスカーCSR2で120℃にて32、140℃にて37、200℃にて43であり、反発弾性率は35%であった。 【0076】 次に、直径24mm×長さ300mmのアルミニウムシャフト上に付加反応型液状シリコーンゴム用プライマーNO.101A/B(信越化学工業社製)を塗布した。内面をプライマー処理した50μmのPFAチューブとアルミニウムシャフトとの間に液状組成物3を充填し、150℃で30分加熱硬化し、更に200℃で4時間ポストキュアーし、外径26mm×長さ250mmのPFA樹脂被覆低硬度シリコーンゴムロールを作製した。 【0077】 一方、直径50mm×長さ300mmのアルミニウムシャフトの表面にポリテトラフルオロエチレンのラテックスコーティングを施し、300℃で15分加熱焼成した。このロールと上記ロールを接触させ、2kgの荷重をかけ、ニップ幅を測定したところ、14mmであった。 【0078】 更に、PPC複写機の定着ロールとして組み込み、5千枚複写を行ったところ、定着むらのある複写物が得られた。 【0079】 〔比較例4〕 液状組成物5を厚み6mmの型に入れ、120℃,140℃,200℃で10分プレス加硫した。テストピースを型から取り出した後、室温まで冷却し、アスカーCSR2の硬度計でゴム硬度を測定した。次にJIS K6301に準拠し、反発弾性率を測定した。硬度はアスカーCSR2で120℃にて41、140℃にて47、200℃にて54であり、反発弾性率は37%であった。 【0080】 次に、直径24mm×長さ300mmのアルミニウムシャフト上に付加反応型液状シリコーンゴム用プライマーNO.101A/B(信越化学工業社製)を塗布した。内面をプライマー処理した50μmのPFAチューブとアルミニウムシャフトとの間に液状組成物3を充填し、150℃で30分加熱硬化し、更に200℃で4時間ポストキュアーし、外径26mm×長さ250mmのPFA樹脂被覆低硬度シリコーンゴムロールを作製した。 【0081】 一方、直径50mm×長さ300mmのアルミニウムシャフトの表面にポリテトラフルオロエチレンのラテックスコーティングを施し、300℃で15分加熱焼成した。このロールと上記ロールを接触させ、2kgの荷重をかけ、ニップ幅を測定したところ、12mmであった。 【0082】 更に、PPC複写機の定着ロールとして組み込み、5千枚複写を行ったところ、定着むらのある複写物が得られた。 【0083】 【発明の効果】 本発明の低硬度シリコーンゴム定着用ロールは、そのシリコーンゴム層の肉厚を薄くした場合においても、低いニップ圧によっても適度なニップ幅を得ることができる。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2009-10-20 |
結審通知日 | 2009-10-22 |
審決日 | 2009-11-05 |
出願番号 | 特願平10-290051 |
審決分類 |
P
1
113・
536-
ZA
(G03G)
P 1 113・ 832- ZA (G03G) P 1 113・ 841- ZA (G03G) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 菅藤 政明 |
特許庁審判長 |
柏崎 康司 |
特許庁審判官 |
伊藤 裕美 木村 史郎 |
登録日 | 2007-01-19 |
登録番号 | 特許第3904744号(P3904744) |
発明の名称 | 低硬度シリコーンゴム定着用ロール |
代理人 | 石川 武史 |
代理人 | 小林 克成 |
代理人 | 重松 沙織 |
代理人 | 小島 隆司 |
代理人 | 石川 武史 |
代理人 | 小島 隆司 |
代理人 | 久保田 芳譽 |
代理人 | 重松 沙織 |
代理人 | 小林 克成 |