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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1210397
審判番号 不服2006-21791  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-28 
確定日 2010-01-14 
事件の表示 特願2001-362402「画像処理システム、ジョブ処理方法、記憶媒体、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年6月6日出願公開、特開2003-162393〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成13年11月28日の出願であって,平成18年8月24日付で拒絶査定がされ,これに対し,同年9月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同年10月30日付で手続補正がなされたものである。

2.平成18年10月30日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年10月30日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により,補正前の特許請求の範囲の請求項2は,補正後の請求項1として,
「【請求項1】 所定の通信媒体を介してシート後処理装置あるいは複数の画像形成装置と所定の画像処理を伴うジョブを投入可能な情報処理装置が通信可能に接続された画像処理システムであって、
前記画像処理システム上で稼働可能な画像形成装置を検索する検索手段と、
前記検索手段によって検索された画像形成装置候補を表示する表示手段と、
生成される1つのジョブを複数の画像形成装置により分散出力させるための画像形成装置候補と、該分散出力される各ジョブ出力を1つの出力に統合するシート後処理を行うシート後処理装置候補とを前記表示手段に表示される複数の画像形成装置およびシート後処理装置中から選択する選択手段と、
前記1つのジョブに対応したパスワードを入力するパスワード設定手段と、
前記選択手段により選択された各画像形成装置に対して1つのジョブの分散ジョブを転送する転送手段とを有し、
前記パスワード設定手段へのパスワード入力は前記情報処理装置において入力し、前記選択されたシート後処理装置の操作部より前記パスワード設定手段で設定したパスワードを入力することにより、前記シート後処理装置は前記分散出力される各ジョブ出力を1つの出力に統合するシート後処理を行うことを特徴とする画像処理システム。」と補正された。
上記補正は,本件補正前の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「パスワード設定手段」について「前記パスワード設定手段へのパスワード入力は前記情報処理装置において入力し」との限定を付加するものであって,特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-112702号公報 (平成12年4月21日出願公開。以下「刊行物」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

A.「【請求項1】 ネットワークに接続されたカラー画像形成装置と白黒画像形成装置とから成る画像形成システムにおいて、
前記ネットワークに接続されたコンピュータ上から出力されるカラーページと白黒ページが混在するジョブの各ページに関しカラーページか白黒ページかを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に応じて、前記カラーページは前記カラー画像形成装置により画像形成させ、前記白黒ページは前記白黒画像形成装置により画像形成させる分割手段と、
前記判定手段の判定結果に応じて、前記カラー画像形成装置及び前記白黒画像形成装置により分割して画像形成された各シートを前記ジョブの予め決められたページ順に戻すべく混交する混交手段と、を有することを特徴とする画像形成システム。」(第2頁)

B.「【0009】
【発明の実施の形態】〔システムの概要説明〕図1に、本発明の実施の形態のシステムの概観図を示す。ネットワーク101に接続されたコンピュータ102はサーバ、コンピュータ103a及び103bはクライアントである。図示されていないがクライアントはこれらのほかにも多数接続されている。以下クライアントを代表して103と表記する。
【0010】更にネットワーク101にはMFP(Multi Function Peripheral:マルチファンクション周辺機器)104、105が接続されている。104はフルカラーでスキャン、プリントなどが可能なカラーMFPであり、105はモノクロでスキャン、プリントなどを行う白黒MFPである。また、図示していないがネットワーク101上には上記以外のMFPを初め、スキャナ、プリンタあるいは、FAXなどその他の機器も接続されている。
【0011】ここでコンピュータ103上では、いわゆるDTP(Desk Top Publishing:デスクトップパブリッシング)を実行するアプリケーションソフトウェアを動作させ、各種文書/図形が作成/編集される。コンピュータ103は作成された文書/図形をPDL言語(Page Description Language:ページ記述言語)に変換し、ネットワーク101を経由してMFP104,105に送られてプリントアウトされる。
【0012】MFP104,105はそれぞれ、コンピュータ102、103とネットワーク101を介して情報交換できる通信手段を有しており、MFP104,105の情報や状態をコンピュータ102、103側に逐次知らせる仕組みとなっている。更に、コンピュータ102、103は、その情報を受けて動作するユーティリティソフトウェアを持っており、MFP104,105はコンピュータ102、103により管理できる。
【0013】〔MFP104,105の構成〕次に、図2?図12を用いてMFP104,105の構成について説明する。但し、MFP104とMFP105の差はフルカラーとモノクロの差であり、色処理以外の部分ではフルカラー機器がモノクロ機器の構成を包含することが多いため、ここではフルカラー機器に絞って説明し、必要に応じて、随時モノクロ機器の説明を加えることとする。
【0014】MFP104,105は、画像読み取りを行うスキャナ部201とその画像データを画像処理するIP部202、ファクシミリなどに代表される電話回線を利用した画像の送受信を行うFAX部203、更に、ネットワークを利用して画像データや装置情報をやりとりするNIC(Network Interface Card:ネットワークインターフェイスカード)部分204、コンピュータ103から送られてきたページ記述言語(PDL)を画像信号に展開するPDL部205を有する。そして、MFP104,105の使い方に応じてコア部206で画像信号を一時保存したり、経路を決定する。
【0015】次に、コア部206から出力された画像データは、画像形成を行うプリンタ部208に送られる。プリンタ部208でプリントアウトされたシートはフィニッシャ部209へ送り込まれ、シートの仕分け処理やシートの仕上げ処理が行われる。」(第4頁)

C.「【0031】〔コア部206の構成〕図7を用いてコア部206について説明する。コア部206のバスセレクタ部701は、MFP104,105の利用における、いわば交通整理の役割を担っている。すなわち、複写機能、ネットワークスキャン、ネットワークプリント、ファクシミリ送信/受信、あるいは、ディスプレイ表示などMFP104,105における各種機能に応じてバスの切り替えを行うところである。
【0032】以下に各機能を実行するためのパスの切り替えのパターンを示す。
・複写機能:スキャナ201→コア206→プリンタ208
・ネットワークスキャン:スキャナ201→コア206→NIC部204
・ネットワークプリント:NIC部204→コア206→プリンタ208
・ファクシミリ送信機能:スキャナ201→コア206→FAX部203
・ファクシミリ受信機能:FAX部203→コア206→プリンタ208
・ディスプレイ表示機能:スキャナ201又はFAX部203又はNIC部204→コア206→ディスプレイ210
【0033】次に、バスセレクタ部701を出た画像データは、圧縮部702、ハードディスク(HDD)などの大容量メモリからなるメモリ部703及び、伸張部704を介してプリンタ部208(PWM部207)又はディスプレイ部210へ送られる。圧縮部702で用いられる圧縮方式は、JPEG,JBIG,ZIPなど一般的なものを用いればよい。圧縮された画像データは、ジョブ毎に管理され、ファイル名、作成者、作成日時、ファイルサイズなどの付加データと一緒に格納される。
【0034】更に、ジョブの番号とパスワードを設けて、それらも一緒に格納すれば、パーソナルボックス機能をサポートすることができる。これは、データの一時保存や特定の人にしかプリントアウト(HDDからの読み出し)ができない様にするための機能である。記憶されているジョブのプリントアウトの指示が行われた場合には、パスワードによる認証を行った後にメモリ部703より呼び出し、画像伸張を行ってラスターイメージに戻してプリンタ部207に送られる。」(第5頁-第6頁)

D.「【0052】〔ジョブの分割〕次にカラー画像と白黒画像のジョブ分割について説明する。コンピュータ103、102から1つのジョブ内にカラーページと白黒ページが混在しているジョブをプリントする場合、まず図13のようなコンピュータ102、103上で動作するソフトウエアであるドライバを用いてカラーMFP104にジョブを転送する。ここで1301はコンピュータ102、103の画面上に表示されるドライバウィンドウであり、その中の設定項目として、1302はカラープリンタ(カラーMFP104)の選択を行うカラープリンタ選択カラム、1303は白黒プリンタ(白黒MFP105)の選択を行う白黒プリンタ選択カラム、1304はジョブの中から出力ページを選択するページ設定カラム、1305は部数を指定する部数設定カラム、1306はカラー/白黒混在ジョブに対してカラー/白黒画像の分割を指示するジョブカラーモードカラム、1307は印刷を開始するOKキー、1308は印刷を取りやめるキャンセルキー、1309は更なる詳細設定を行うプロパティキーである。
【0053】ここで、ジョブカラーモードカラム1306は、自動分割、手動分割、全ページカラー、全ページ白黒の中から1つのモードを選択することが可能であり、手動分割の場合にはユーザがそれぞれのページに対して、どちらのMFPから出力するかを選択可能となる。
【0054】〔ジョブの自動分割とカラー/白黒判定〕次にジョブの自動分割に関して図14を用いて説明する。ドライバウインドウ1301においてOKキー1307が押されると、コンピュータ103上のドライバはコンピュータ(サーバ)102を介して、カラーページ及び白黒ページが混在しているジョブであることを示す情報とプリントジョブをカラーMFP104及び白黒MFP105に送る。自動分割の場合には、この時点ではどのページが白黒ページであるか判定できていないので、全ページのジョブ内容をカラーMFP104及び白黒MFP105へそれぞれ送る。カラーページと白黒ページの送る順序はカラーMFP、白黒MFPの順で時間をずらして送ってもよいし、2つのMFPに同時に送られても構わない。
【0055】尚、カラーページ及び白黒ページが混在しているジョブであることを示す情報を受けた白黒MFPは即座にプリントを開始せずに、後述するカラーページのセットを待機する。
【0056】そして、ジョブが自動分割(Auto Separation)に設定されていれば(ステップ1401)、サンプリング周期の設定内容をカラーMFP104へ送る(ステップ1402)。但し、サンプリング周期の設定はプロパティキー1309により表示される詳細設定のためのウインドウで事前に行われている。サンプリング周期に関し、100画素×100ラインに1ポイントの割合でサンプリングすれば、サンプリング時間は1/10000で済むし、400dpiの画像ならば0.25inch(=6.35mm)周期の格子単位でサンプリングすると、レターサイズ(11"x8.5")のシートで1500ポイント近くならば、カラー/白黒の何れであるかはある程度判定できる。それでも判定が困難な画像の場合には、更にサンプリング周期を細かく設定するか、ジョブカラーモードカラム1306を手動分割(Manual Separation)に設定し、詳細設定ウインドウにて各ページがカラーであるか白黒であるかを予め手動設定しておく。
【0057】次に、ジョブ及びサンプリング周期を受け取ったカラーMFP104のPDL部205は、ジョブ内のページを先頭頁から順に順次ラスタライズ展開処理(RIP)し、RIP後の画像をページ単位、色成分(CMYK)毎に半導体メモリ605に格納する。格納された画像は、そこでCPU603によりカラー/白黒判定が行われる(ステップ1403)。判定には半導体メモリ605内の各サンプルポイントに黒(K)以外の成分(CMY成分)があるか否かで行われる(ステップ1404、1405)。このとき、スピードを速めるためにページ内のサンプリングポイントの中に1ポイントでもカラー(CMY)成分があれば、そのページはカラー画像であるため、その時点でそのページにおけるカラー/白黒判定を中止し、そのページはカラーページとしてカラーMFP104内部で処理される。このとき、このジョブに対して再プリントをすることが考えられるため、そのページのページ番号情報はカラーページであることを示す情報とともにネットワーク101を経由してサーバ102へ通知する(ステップ1409)。そして、そのページはカラーMFP104にてカラープリントする(ステップ1410)。
【0058】ステップ1405において、ページ内のサンプリングポイントに1ポイントもカラー(CMY)成分が存在しない場合には、そのページは白黒ページとして白黒MFP105処理するため、そのページのページ番号情報は白黒ページであることを示す情報とともにネットワーク101を経由して、サーバ102及び白黒MFP105に通知する(ステップ1411)。
【0059】ステップ1411の通知を受けた白黒MFP105は、カラーMFP104がプリントしたカラーページがフィニッシャ209のインサータ1203にセットされるまではプリントの開始を待機する。
【0060】ステップ1403?1406、1409?1412はジョブキャンセルの割り込みが入らない限り、最終ページまで繰り返され(ステップ1413)、MFP104におけるジョブを終了する。
【0061】ステップ1401で自動分割の設定がなされていない、すなわち手動分割が設定されている場合には、コンピュータ(サーバ)102が、ドライバから各ページがカラーであるか白黒であるかの情報を受け取り、それに応じてカラーページはカラーMFP104へプリント指示し、白黒ページは白黒MFP105へプリント指示する(ステップ1407)。そして、カラーMFP104はカラーページのカラープリントを開始し、白黒MFP105はカラーMFP104がプリントしたカラーページがフィニッシャ209のインサータ1203にセットされるまではプリントの開始を待機する。
【0062】また、上記説明でラスタライズはページ毎順次行う説明をしたが、ジョブ全部を一旦大容量メモリ(HDD)604にてRIP展開し、順次半導体メモリ605にページ毎あるいは、複数ページ分を読み出して判定処理しても構わない。
【0063】このようにして、カラーページ及び白黒ページが混在したジョブを、カラーページはカラーMFP104でプリントさせ、白黒ページは白黒MFP105でプリントさせることができる。」(第7頁-第8頁)

E.「【0079】〔別の形態〕上述した形態では白黒MFP105もしくはカラーMFP104に接続されたフィニッシャにより混交を行う構成について説明したが、いずれのMFPにも接続されないフィニッシャにより、それぞれカラーMFP104、白黒MFP105でプリントされたシート束を混交するようにすれば、カラーMFP104と白黒MFP105を同時に動作させることが可能になるので、ジョブがMFPを占有する時間を短くすることができる。
【0080】図18のようにフィニッシャ1807、1808を制御するコンピュータ1801がネットワーク101に接続されている。サーバコンピュータ102はクライアントコンピュータ103からカラーページ及び白黒ページが混在したジョブを受けたときには前述したようにMFP104およびMFP105へジョブを送る。そして、MFP104はカラーページをプリントするとともに、コンピュータ1801へカラーページのページ番号情報を送る。また、MFP105は白黒ページをプリントするとともに、コンピュータ1801へ白黒ページのページ番号情報を送る。コンピュータ1801はこの情報に基づいて、フィニッシャ1807及び1808のそれぞれにどのMFPがプリントしたシートをセットするのかを決定し、画面に表示する。そして、ユーザはその画面にしたがって、出力されたプリントをそれぞれのフィニッシャのインサータにセットする。図18はコンピュータ1801がカラーMFP104から出力されたシートをフィニッシャ1807のインサータ1809にセットし、白黒MFP105から出力されたシートをフィニッシャ1808のインサータ1810にセットするよう決定したときの様子を示す。コンピュータ1801はそれぞれのMFPから受け取ったカラーページであるか白黒ページであるかの情報に基づいたタイミングでそれぞれのインサータから給紙させる。その結果、スタッカ1806には混交されたシート1805が排出される。」(第9頁-第10頁)

図13において,カラープリンタ選択カラム1302及び白黒プリンタ選択カラム1303の右端には,「▼」を表示したボタンが記載されている。技術常識をかんがみれば,それぞれの当該ボタンをクリックすることにより,カラーMPF104の選択候補又は白黒MFP105の選択候補がそれぞれ表示され,その選択候補からカラーMPF104又は白黒MFP105が選択されることは明らかであるから,刊行物には,カラーMPF104の選択候補又は白黒MFP105の選択候補がそれぞれ表示され,その選択候補からカラーMPF104又は白黒MFP105が選択されることが含まれている。

さらに,前記E.【0080】及び図18の記載をかんがみると,スタッカ1806がフィニッシャ1807,1808と接続されていることは明らかであるから,刊行物には,スタッカ1806が接続されたフィニッシャ1807,1808が含まれている。
以上の記載によれば,刊行物には,次の発明(以下「刊行物記載発明」という。)が記載されている。

「ネットワーク101に接続された複数のカラーMFP104,複数の白黒MFP105,サーバ102,複数のクライアント103及びスタッカ1806が接続されたフィニッシャ1807,1808を制御するコンピュータ1801とから成る画像形成システムにおいて,
カラーMFP104及び白黒MFP105は,クライアント103から送られてきたページ記述言語(PDL)を画像信号に展開し,カラーMFP104及び白黒MFP105の使い方に応じてコア部206で画像信号を一時保存したり,経路を決定し,コア部206から出力された画像データは,画像形成を行うプリンタ部208に送られ,プリンタ部208でプリントアウトされたシートはフィニッシャ部209へ送り込まれ,シートの仕分け処理やシートの仕上げ処理が行われ,
コア部は,圧縮された画像データをジョブ毎に管理し,ファイル名,作成者,作成日時,ファイルサイズなどの付加データと一緒に格納し,更に,ジョブの番号とパスワードを設けて,それらも一緒に格納し,記憶されているジョブのプリントアウトの指示が行われた場合には,パスワードによる認証を行った後に,画像伸張を行ってラスターイメージに戻してプリンタ部207に送り,
カラーMFP104の選択を行うカラープリンタ選択カラム1302,白黒MFP105の選択を行う白黒プリンタ選択カラム1303,ジョブの中から出力ページを選択するページ設定カラム1304,部数を指定する部数設定カラム1305,カラー/白黒混在ジョブに対してカラー/白黒画像の分割を指示するジョブカラーモードカラム1306,印刷を開始するOKキー1307,印刷を取りやめるキャンセルキー1308,更なる詳細設定を行うプロパティキー1309を有するドライバウィンドウ1301がサーバ102及びクライアント103の画面上に表示され,
カラープリンタ選択カラム1302又は白黒プリンタ選択カラム1303の右端の「▼」を表示したボタンがクリックされることにより,カラーMPF104の選択候補又は白黒MFP105の選択候補がそれぞれ表示され,その選択候補からカラーMPF104又は白黒MFP105が選択され,
自動分割のモードが選択され,ドライバウインドウ1301においてOKキー1307が押されると,クライアント103上のドライバはサーバ102を介して,カラーページ及び白黒ページが混在しているジョブであることを示す情報と全ページのジョブ内容であるプリントジョブをカラーMFP104及び白黒MFP105へそれぞれ送り,
カラーMFP104はカラーページをプリントするとともに,コンピュータ1801へカラーページのページ番号情報を送り,
白黒MFP105は白黒ページをプリントするとともに,コンピュータ1801へ白黒ページのページ番号情報を送り,
コンピュータ1801はこの情報に基づいて,フィニッシャ1807及び1807のそれぞれにどのMFPがプリントしたシートをセットするのかを決定し,画面に表示し,
ユーザはその画面にしたがって,出力されたプリントをそれぞれのフィニッシャのインサータにセットし,
コンピュータ1801はそれぞれのMFPから受け取ったカラーページであるか白黒ページであるかの情報に基づいたタイミングでそれぞれのインサータから給紙させ,スタッカ1806には混交されたシート1805が排出されることを特徴とする画像形成システム。」

(3)対比
本願発明と刊行物記載発明を対比する。
刊行物記載発明の「ネットワーク101」は,本願発明の「所定の通信媒体」に相当する。刊行物記載発明の「カラーMFP104」及び「白黒MFP105」は共に,本願発明の「画像形成装置」に相当する。刊行物記載発明の「スタッカ1806が接続されたフィニッシャ1807,1808」は,本願発明の「シート後処理装置」に相当する。刊行物記載発明の「プリントジョブ」は,本願発明の「所定の画像処理を伴うジョブ」に相当するから,刊行物記載発明の「プリントジョブを送信するクライアント103」は,本願発明の「所定の画像処理を伴うジョブを投入可能な情報処理装置」に相当する。刊行物記載発明の「画像形成システム」は,本願発明の「画像処理システム」に相当する。また,刊行物記載発明において,複数の「カラーMFP104」,複数の「白黒MFP105」及び「クライアント103」はネットワークに接続していることから,それぞれの構成と通信可能であることは明らかである。したがって,刊行物記載発明におけるネットワーク101に接続された複数の「カラーMFP104」,複数の「白黒MFP105」及び「クライアント103」とから成る「画像形成システム」は,本願発明の「所定の通信媒体を介してシート後処理装置あるいは複数の画像形成装置と所定の画像処理を伴うジョブを投入可能な情報処理装置が通信可能に接続された画像処理システム」に相当する。
刊行物記載発明におけるカラーMPF104の選択候補又は白黒MFP105の選択候補は,本願発明の「画像形成装置候補」に相当するから,刊行物記載発明においてカラーMPF104の選択候補又は白黒MFP105の選択候補を表示する構成は,「画像形成装置候補を表示する表示手段」に相当する。
刊行物記載発明において,プリントジョブをカラーMFP104及び白黒MFP105へそれぞれ送り,カラーMFP104は,あるページがカラー画像である場合,そのページをカラープリントし,白黒MFP105は,白黒ページであれば,白黒ページのプリント処理を行うことから,刊行物記載発明のカラーMFP104の選択候補及び白黒MFP105の選択候補は,本願発明の「生成される1つのジョブを複数の画像形成装置により分散出力させるための画像形成装置候補」に相当する。そうすると,刊行物記載発明における,カラーMPF104の選択候補又は白黒MFP105の選択候補がそれぞれ表示され,その選択候補からカラーMPF104又は白黒MFP105が選択される構成は,本願発明の「生成される1つのジョブを複数の画像形成装置により分散出力させるための画像形成装置候補を前記表示手段に表示される複数の画像形成装置中から選択する選択手段」に相当する。
刊行物記載発明において,カラーMFP104がプリントしたカラーページ又は白黒MFP105がプリントした白黒ページである出力されたプリントを,それぞれのフィニッシャ1807,1808のインサータから給紙し,スタッカ1806に混交されたシート1805を排出することは,本願発明の「前記シート後処理装置は前記分散出力される各ジョブ出力を1つの出力に統合するシート後処理を行うこと」に相当し,刊行物記載発明において,前記処理を行うスタッカ1806が接続されたフィニッシャ1807,1808は,本願発明の「該分散出力される各ジョブ出力を1つの出力に統合するシート後処理を行うシート後処理装置」に相当する。
刊行物記載発明におけるプリントジョブをカラーMFP104及び白黒MFP105へそれぞれ送る構成は,本願発明の「前記選択手段により選択された各画像形成装置に対して1つのジョブの分散ジョブを転送する転送手段」に相当する。

すると,本願発明と刊行物記載発明とは,次の点で一致する。
<一致点>
「所定の通信媒体を介してシート後処理装置あるいは複数の画像形成装置と所定の画像処理を伴うジョブを投入可能な情報処理装置が通信可能に接続された画像処理システムであって,
画像形成装置候補を表示する表示手段と,
生成される1つのジョブを複数の画像形成装置により分散出力させるための画像形成装置候補を前記表示手段に表示される複数の画像形成装置中から選択する選択手段と,
前記選択手段により選択された各画像形成装置に対して1つのジョブの分散ジョブを転送する転送手段とを有し,
前記シート後処理装置は前記分散出力される各ジョブ出力を1つの出力に統合するシート後処理を行うことを特徴とする画像処理システム。」

一方,両者は次の点で相違する。
<相違点1>
本願発明では,画像処理システム上で稼働可能な画像形成装置を検索する検索手段を有し,表示手段によって表示される画像形成装置候補が前記検索手段によって検索されたものであるのに対し,刊行物記載発明では,検索手段を有しているのか明確でなく,また,画像形成装置候補が前記検索手段によって検索されたものであるのか明確でない点。
<相違点2>
本願発明では,シート後処理装置候補を表示手段に表示される複数のシート後処理装置中から選択する選択手段を有しているのに対し,刊行物記載発明では,そのような構成を有していない点。
<相違点3>
本願発明では,1つのジョブに対応したパスワードを入力するパスワード設定手段を有し,パスワード設定手段へのパスワード入力は情報処理装置において入力し,選択されたシート後処理装置の操作部よりパスワード設定手段で設定したパスワードを入力することにより,シート後処理装置は分散出力される各ジョブ出力を1つの出力に統合するシート後処理を行うのに対し,刊行物記載発明では,ジョブの番号とパスワードを設けて,ジョブのプリントアウトの指示が行われた場合には,パスワードによる認証を行った後に,プリンタ部207に送る構成を有しているが,1つのジョブに対応したパスワードを入力するパスワード設定手段を有し,パスワード設定手段へのパスワード入力は情報処理装置において入力し,選択されたシート後処理装置の操作部よりパスワード設定手段で設定したパスワードを入力することにより,シート後処理装置は分散出力される各ジョブ出力を1つの出力に統合するシート後処理を行うのか明確でない点。

(4)当審の判断
上記相違点について検討する。
<相違点1についての検討>
画像処理システムにおいて,ディレクトリサービスを用いて画像処理システム上で稼働可能な画像形成装置を検索する技術は,特開2001-34564号公報(特に,第2頁-第3頁の【0002】及び【0003】参照。)及び特開2001-142665号公報(特に,第14頁-第15頁の【0076】参照。)に記載されているように,本出願前周知である。したがって,刊行物記載発明において,画像処理システム上で稼働可能な画像形成装置を検索する検索手段を設け,表示手段によって表示される画像形成装置候補を検索手段によって検索されたものとして構成することは,当業者が容易に適宜なし得ることである。

<相違点2についての検討>
刊行物記載発明にも複数の画像形成装置から1つの画像形成装置を選択することが記載されているように,同等の機能を有する機器を複数設け,それらの複数の機器を表示して選択することは技術常識である。したがって,刊行物記載発明において,シート後処理装置を複数設け,シート後処理装置候補を表示手段に表示される複数のシート後処理装置中から選択するように構成することは,当業者が適宜なし得ることである。

<相違点3についての検討>
画像処理システムにおいて,情報処理装置においてジョブに対応したパスワードを設定し,そのジョブ出力が実際に行われる画像処理装置の操作部において,設定したパスワードを入力することによりジョブ出力を行う技術は,特開2001-318779号公報(特に,第4頁-第6頁の【0017】-【0035】,図5及び図9参照。)及び特開平8-244315号公報(特に,第3頁の【0021】及び第3頁-第4頁の【0029】-【0035】参照。)に記載されているように,本出願前周知である。したがって,シート後処理装置が分散出力されたジョブ出力を1つの出力に統合する刊行物記載発明において,1つのジョブに対応したパスワードを入力するパスワード設定手段を設け,パスワード設定手段へのパスワード入力は情報処理装置において入力し,ジョブ出力が実際に行われる選択されたシート後処理装置の操作部よりパスワード設定手段で設定したパスワードを入力することにより,シート後処理装置が分散出力される各ジョブ出力を1つの出力に統合するシート後処理を行うように構成することは,当業者が容易に想到し得ることである。

また,本願発明の構成によって生じる効果も,当業者が予測できるものである。
したがって,本願補正発明は,刊行物記載発明,周知技術及び技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成18年10月30日付の手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項2に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,同年7月24日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「【請求項2】 所定の通信媒体を介してシート後処理装置あるいは複数の画像形成装置と所定の画像処理を伴うジョブを投入可能な情報処理装置が通信可能に接続された画像処理システムであって、
前記画像処理システム上で稼働可能な画像形成装置を検索する検索手段と、
前記検索手段によって検索された画像形成装置候補を表示する表示手段と、
生成される1つのジョブを複数の画像形成装置により分散出力させるための画像形成装置候補と、該分散出力される各ジョブ出力を1つの出力に統合するシート後処理を行うシート後処理装置候補とを前記表示手段に表示される複数の画像形成装置およびシート後処理装置中から選択する選択手段と、
前記1つのジョブに対応したパスワードを入力するパスワード設定手段と、
前記選択手段により選択された各画像形成装置に対して1つのジョブの分散ジョブを転送する転送手段とを有し、
前記選択されたシート後処理装置の操作部より前記パスワード設定手段で設定したパスワードを入力することにより、前記シート後処理装置は前記分散出力される各ジョブ出力を1つの出力に統合するシート後処理を行うことを特徴とする画像処理システム。」

(1)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は,前記2.(2)に記載したとおりである。

(2)当審の判断
本願発明は,前記2.で検討した本願補正発明から「パスワード設定手段」の限定事項である「前記パスワード設定手段へのパスワード入力は前記情報処理装置において入力し」との構成を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記2.(4)に記載したとおり,刊行物記載発明,周知技術及び技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,刊行物記載発明,周知技術及び技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物記載発明,周知技術及び技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-06 
結審通知日 2009-11-17 
審決日 2009-11-30 
出願番号 特願2001-362402(P2001-362402)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 正和  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 中野 裕二
近藤 聡
発明の名称 画像処理システム、ジョブ処理方法、記憶媒体、プログラム  
代理人 水垣 親房  

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