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審決分類 審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1210424
審判番号 不服2007-16062  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-07 
確定日 2010-01-14 
事件の表示 特願2000-284578「データ解析装置およびデータ解析方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月 2日出願公開、特開2001-306999〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年9月20日(国内優先権主張 平成12年2月18日)の出願であって、平成19年2月2日付けで拒絶理由が通知され、同年4月6日付けで手続補正がなされたが、同年4月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月7日に審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年4月6日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。(便宜上各段落に(ア)ないし(キ)の符号を付した。)
「(ア)複数のオリジナルデータが格納されたデータベースよりなるオリジナルデータ群と、
(イ)前記オリジナルデータ群から任意の処理対象データを抽出する第1のデータ処理手段と、
(ウ)前記第1のデータ処理手段によって抽出された処理対象データ間に存在するルールを抽出し、抽出されたルールの信頼度をあらわす信頼度情報を付加した信頼度情報付きルールファイルを作成する第2のデータ処理手段と、
(エ)前記第2のデータ処理手段によって作成された信頼度情報付きルールファイルの内容を出力する出力手段と、
を備え、
(オ)前記オリジナルデータには、複数の属性を示す説明変数と、当該説明変数により影響を受ける目的変数とを含み、
(カ)前記ルールには、前記各属性の属性値に基づいて、前記オリジナルデータよりなる集合の2分割を繰り返し、当該分割の際、分割前の目的変数の平方和をS0、分割後の2つの集合の目的変数の平方和をそれぞれS1およびS2としたときの、ΔS=S0(S1+S2)の式のであらわされるΔSが最大となるように分割するレコードの属性とその属性値を含み、
(キ)前記信頼度情報には、前記オリジナルデータよりなる集合を2分割する際の分割の明確度をあらわす集合分割評価値を含むことを特徴とするデータ解析装置。」

3.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、平成19年2月2日付けの拒絶理由通知に記載された次のとおりのものである。
『この出願の下記の請求項に係る発明は、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。

・請求項1?9
・備考
請求項1?9には、装置について、外見上の動作により発明の特徴部である手段を特定するもの(概括的な機能のみを特定するブラックボックス)であって、そのように外見上動作するために、コンピュータの内部にどのような内容のデータをどのように関係付けて予め格納又は入力により記憶し、当該データをどのようなタイミング、アルゴリズムにより取り出し、加工し、出力するかについて特定するものではないから、当該装置の動作がコンピュータのハードウェア資源を用いて具体的に実現されたソフトウェアによる情報処理であると把握できる程度に具体的に記載されておらず、これらの請求項に係る発明は自然法則を利用した技術的思想の創作である発明には該当しない。
・請求項10
・備考
請求項10に係る発明は、ビジネス方法を記載したものであり、コンピュータ等のハードウェア資源を具体的に利用するソフトウェアによる情報処理を記載したものではないから、人為的な取決めを記載したものにすぎず、自然法則を利用した技術的思想の創作である発明には該当しない。』
そして、原査定の備考において、次の旨を指摘している。
『この出願については、平成19年2月2日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものである。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討したが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせない。
備考
依然としてソフトウェアによる具体的な情報処理を記載したものとなっていない。』

4.審判請求人の主張
審判請求人は、平成19年6月7日付け審判請求書の請求の理由を補正する平成19年7月9日付け手続補正書の第3頁27行目?33行目において、以下のとおり主張している。
『平成19年4月6日提出の意見書でも述べたように、当該装置の動作がコンピュータのハードウェア資源を用いて具体的に実現されたソフトウェアによる情報処理であると把握できる程度に具体的に記載してありますので、これらの請求項に係る発明は自然法則を利用した技術的思想の創作であると思量します。また、請求項10も、同様に、コンピュータ等のハードウェア資源を具体的に利用するソフトウェアによる情報処理を記載したものですので、人為的な取決めを記載したものではなく、自然法則を利用した技術的思想の創作であると思量します。』
また、平成19年4月6日付け意見書の第3頁30行目?35行目において、以下のとおり主張している。
『このように、当該装置の動作がコンピュータのハードウェア資源を用いて具体的に実現されたソフトウェアによる情報処理であると把握できる程度に具体的に記載しましたので、これらの請求項に係る発明は自然法則を利用した技術的思想の創作であると思量します。また、請求項10も、同様に、コンピュータ等のハードウェア資源を具体的に利用するソフトウェアによる情報処理を記載したものですので、人為的な取決めを記載したものではなく、自然法則を利用した技術的思想の創作であると思量します。』

5.当審の判断
本願発明の「データ解析装置」は、発明の詳細な説明の項の記載からみて、実質的にコンピュータにより構成されるものであり、その発明の実施にプログラム等のソフトウェアを必要とするところの、いわゆるコンピュータ・ソフトウェア関連発明である。
このコンピュータ・ソフトウェア関連発明が、特許法第2条第1項で特許法での「発明」の定義としていうところの「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるのは、発明がそもそも一定の技術的課題を達成できる具体的なものになっていなければならないことから、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されている場合であり、そのためには、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置又はその動作方法が構築されていることが提示されている必要がある。
そこで、本願発明を構成する上記(ア)ないし(キ)の事項それぞれについて、「ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されたもの」であるかについて、以下に検討する。

上記(ア)に記載された「複数のオリジナルデータが格納されたデータベースよりなるオリジナルデータ群と、」との事項は、「データ解析装置」が「データベースよりなるオリジナルデータ群」を備えることを特定しているとともに、「データベースよりなるオリジナルデータ群」は「複数のオリジナルデータが格納され」ることを特定しているものである。そして、オリジナルデータを特定する事項として、上記(オ)には「前記オリジナルデータには、複数の属性を示す説明変数と、当該説明変数により影響を受ける目的変数とを含み」と記載されている。
しかしながら、ハードウェア資源である「データベースよりなるオリジナルデータ群」に関する記載は、格納される内容が「複数のオリジナルデータ」であることを特定しているにすぎないから、本願発明の他の発明特定事項をあわせみても、上記(ア)は、「データ解析装置」が「データベースよりなるオリジナルデータ群」を備えることを特定しているとともに、「データベースよりなるオリジナルデータ群」は「複数のオリジナルデータが格納され」ることを特定していることを記載するにとどまる。

また、上記(イ)に記載された「前記オリジナルデータ群から任意の処理対象データを抽出する第1のデータ処理手段と、」との事項は、「データ解析装置」が「第1のデータ処理手段」を備えることを特定しているとともに、「第1のデータ処理手段」は「前記オリジナルデータ群から任意の処理対象データを抽出する」ことを特定しているものである。そして、オリジナルデータを特定する事項として、上記(オ)には「前記オリジナルデータには、複数の属性を示す説明変数と、当該説明変数により影響を受ける目的変数とを含み」と記載されている。
しかしながら、任意の処理対象データを抽出する処理に用いるハードウェア資源として「オリジナルデータ群」が記載されているものの、「オリジナルデータ群」に関する記載は、任意の処理対象データの取得元を特定しているにすぎず、オリジナルデータ群からどのように情報処理をして任意の処理対象データを抽出するのか具体的に記載されていないから、本願発明の他の発明特定事項をあわせみても、上記(イ)の記載は、データ解析装置の第1のデータ処理手段の機能を「前記オリジナルデータ群から任意の処理対象データを抽出する」ことを特定するにとどまり、「前記オリジナルデータ群から任意の処理対象データを抽出する」ための機能を実現するための処理が、ソフトウェアと協働するハードウェア資源を用いてどのようにして実現されたかが具体的に提示されているとは認められない。

また、上記(ウ)に記載された「前記第1のデータ処理手段によって抽出された処理対象データ間に存在するルールを抽出し、抽出されたルールの信頼度をあらわす信頼度情報を付加した信頼度情報付きルールファイルを作成する第2のデータ処理手段と、」との事項は、「データ解析装置」が「第2のデータ処理手段」を備えることを特定しているとともに、「第2のデータ処理手段」は「前記第1のデータ処理手段によって抽出された処理対象データ間に存在するルールを抽出し、抽出されたルールの信頼度をあらわす信頼度情報を付加した信頼度情報付きルールファイルを作成する」ことを特定しているものである。そして、ルールを特定する事項として、上記(カ)には「前記ルールには、前記各属性の属性値に基づいて、前記オリジナルデータよりなる集合の2分割を繰り返し、当該分割の際、分割前の目的変数の平方和をS0、分割後の2つの集合の目的変数の平方和をそれぞれS1およびS2としたときの、ΔS=S0(S1+S2)の式のであらわされるΔSが最大となるように分割するレコードの属性とその属性値を含み」と記載され、信頼度情報を特定する事項として、上記(キ)には「前記信頼度情報には、前記オリジナルデータよりなる集合を2分割する際の分割の明確度をあらわす集合分割評価値を含む」と記載されている。
しかしながら、信頼度情報付きルールファイルを作成する処理に用いるハードウェア資源は記載されておらず、また、「第1のデータ処理手段によって抽出された処理対象データ」をどのように情報処理をして「処理対象データ間に存在するルールを抽出」し、どのようなデータをどのように情報処理をして「抽出されたルールの信頼度をあらわす信頼度情報」を生成し、どのように情報処理をして「信頼度情報を付加した信頼度情報付きルールファイルを作成する」のか具体的に記載されていないから、本願発明の他の発明特定事項をあわせみても、上記(ウ)の記載は、データ解析装置の第2のデータ処理手段の機能を「前記第1のデータ処理手段によって抽出された処理対象データ間に存在するルールを抽出し、抽出されたルールの信頼度をあらわす信頼度情報を付加した信頼度情報付きルールファイルを作成する」ことを特定するにとどまり、「前記第1のデータ処理手段によって抽出された処理対象データ間に存在するルールを抽出し、抽出されたルールの信頼度をあらわす信頼度情報を付加した信頼度情報付きルールファイルを作成する」ための機能を実現するための処理が、ソフトウェアと協働するハードウェア資源を用いてどのようにして実現されたかが具体的に提示されているとは認められない。

また、上記(エ)に記載された「前記第2のデータ処理手段によって作成された信頼度情報付きルールファイルの内容を出力する出力手段と、」との事項は、「データ解析装置」が「出力手段」を備えることを特定しているとともに、「出力手段」は「前記第2のデータ処理手段によって作成された信頼度情報付きルールファイルの内容を出力する」ことを特定しているものである。そして、信頼度情報を特定する事項として、上記(キ)には「前記信頼度情報には、前記オリジナルデータよりなる集合を2分割する際の分割の明確度をあらわす集合分割評価値を含む」と記載されている。
しかしながら、ハードウェア資源である「出力手段」に関する記載は、出力する内容を「信頼度情報付きルールファイルの内容」として特定しているにすぎないから、本願発明の他の発明特定事項をあわせみても、上記(エ)は、「データ解析装置」が「出力手段」を備えることを特定しているとともに、出力する内容を「第2のデータ処理手段によって作成された信頼度情報付きルールファイルの内容」として特定していることを記載するにとどまる。

また、上記(オ)に記載された「前記オリジナルデータには、複数の属性を示す説明変数と、当該説明変数により影響を受ける目的変数とを含み、」との事項は、「オリジナルデータ」が「複数の属性を示す説明変数と、当該説明変数により影響を受ける目的変数」とを含むこと、すなわち、「オリジナルデータ」は「説明変数」と「目的変数」を含み、「説明変数」は「複数の属性」を示し、「目的変数」は「説明変数により影響を受ける」ことを特定していることを記載するにとどまる。

また、上記(カ)に記載された「前記ルールには、前記各属性の属性値に基づいて、前記オリジナルデータよりなる集合の2分割を繰り返し、当該分割の際、分割前の目的変数の平方和をS0、分割後の2つの集合の目的変数の平方和をそれぞれS1およびS2としたときの、ΔS=S0(S1+S2)の式のであらわされるΔSが最大となるように分割するレコードの属性とその属性値を含み、」との事項は、「ルール」が「前記各属性の属性値に基づいて、前記オリジナルデータよりなる集合の2分割を繰り返し、当該分割の際、分割前の目的変数の平方和をS0、分割後の2つの集合の目的変数の平方和をそれぞれS1およびS2としたときの、ΔS=S0(S1+S2)の式のであらわされるΔSが最大となるように分割するレコードの属性とその属性値」を含むこと、すなわち、「ルール」は「レコード属性とその属性値」を含み、「レコード属性とその属性値」は、「各属性の属性値に基づいて、オリジナルデータよりなる集合の2分割を繰り返し、当該分割の際、分割前の目的変数の平方和をS0、分割後の2つの集合の目的変数の平方和をそれぞれS1およびS2としたときの、ΔS=S0(S1+S2)の式のであらわされるΔSが最大となるように分割する」ものであることを特定していることを記載するにとどまる。

また、上記(キ)に記載された「前記信頼度情報には、前記オリジナルデータよりなる集合を2分割する際の分割の明確度をあらわす集合分割評価値を含む」との事項は、「信頼度情報」が「前記オリジナルデータよりなる集合を2分割する際の分割の明確度をあらわす集合分割評価値」を含むこと、すなわち、「信頼度情報」は「集合分割評価値」を含み、「集合分割評価値」は「オリジナルデータよりなる集合を2分割する際の分割の明確度をあらわす」ことを特定していることを記載するにとどまる。

以上の検討を踏まえた上で、本願発明の構成を全体として検討すると、本願発明では、ハードウェア資源は記載されているものの、格納される内容、データの取得元、出力する内容を特定するにとどまり、オリジナルデータ群からどのように情報処理をして任意の処理対象データを抽出し、また、第1のデータ処理手段によって抽出された処理対象データをどのように情報処理をして処理対象データ間に存在するルールを抽出し、どのようなデータをどのように情報処理をして抽出されたルールの信頼度をあらわす信頼度情報を生成し、どのように情報処理をして信頼度情報を付加した信頼度情報付きルールファイルを作成するのか具体的に記載されていないので、本願発明の記載はデータ解析装置の各構成手段の機能をそれぞれ特定するにとどまり、本願発明の記載では、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置又はその動作方法が構築されているとは認められない。
したがって、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置又はその動作方法が構築されているとは認められないため、本願発明の記載により特定された各機能が、データ解析装置のハードウェア資源を利用したソフトウェアによる情報処理によって、どのように実現されるのか、という点に関して、何ら具体的に提示されておらず、かつ、それぞれのソフトウェアによる処理の具体的内容が、各手段の記載から当業者にとって自明であると認められるものではない。

ここで、審判請求人の主張について検討すると、審判請求人の主張は、上記4.のとおりであるが、上記検討を踏まえれば、本願発明の記載により特定された各機能が、データ解析装置のハードウェア資源を利用したソフトウェアによる情報処理によって、どのように実現されるのか、という点に関して、何ら具体的に提示されておらず、かつ、それぞれのソフトウェアによる処理の具体的内容が、各手段の記載から当業者にとって自明であると認められるものではないから、上記主張を採用することはできない。

よって、本願発明は、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されているとはいえないから、特許法第2条第1項で定義される「自然法則を利用した技術的思想の創作」には該当しない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第2条第1項でいう「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しないので、特許法第29条第1項柱書の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-16 
結審通知日 2009-11-17 
審決日 2009-11-30 
出願番号 特願2000-284578(P2000-284578)
審決分類 P 1 8・ 1- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山下 達也  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 山本 穂積
小山 満
発明の名称 データ解析装置およびデータ解析方法  
代理人 酒井 昭徳  

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