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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1210715
審判番号 不服2008-18414  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-17 
確定日 2010-01-18 
事件の表示 特願2003-101605「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月 4日出願公開、特開2004-305363〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は平成15年4月4日に出願されたものであって,平成20年6月5日付けで拒絶の査定がされたところ,これを不服として同年7月17日付けで本件審判請求がされるとともに,同年8月18日付けで明細書についての手続補正がされたものである。


第2 補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成20年8月18日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正前後における特許請求の範囲の記載
平成20年8月18日付け手続補正(以下,「本件補正」という。)は,明細書の特許請求の範囲を補正するものであり,補正の前後における特許請求の範囲の記載は,下記のとおりである(ただし,「(補正前)」については下線を省略した。)。

(補正前)
「【請求項1】
可変表示ゲームにおいて識別情報表示部に表示される複数の識別情報の可変表示結果が所定の組み合わせであるとき遊技者にとって有利な特別遊技モードに移行し,前記特別遊技モード終了後の少なくとも所定回数分の前記可変表示ゲームについて前記識別情報が通常の場合よりも短時間で停止する時短状態となる遊技機であって,
前記特別遊技モード終了後,前記可変表示ゲームの回数制限なく前記時短状態となりかつ通常確率よりも高い確率で前記特別遊技モードが発生する時短・確変モード,または前記所定回数分の前記可変表示ゲームについて前記時短状態となりかつ通常確率で前記特別遊技モードが発生する時短・通常モードに設定するモード設定手段,および
前記特別遊技モード終了から前記所定回数分の前記可変表示ゲーム終了までに設定モードを遊技者に知らせることなく,前記特別遊技モード終了後に前記所定回数分の前記可変表示ゲームが終了したとき,設定モードが前記時短・通常モードであれば前記時短状態を終了し,一方,設定モードが前記時短・確変モードであれば前記時短状態を継続する手段を備える,遊技機。
【請求項2】
可変表示ゲームにおいて識別情報表示部に表示される複数の識別情報の可変表示結果が所定の組み合わせであるとき遊技者にとって有利な特別遊技モードに移行し,前記特別遊技モード終了後の少なくとも所定回数分の前記可変表示ゲームについて前記識別情報が通常の場合よりも短時間で停止する時短状態となる遊技機であって,
前記特別遊技モード終了後,前記可変表示ゲームの回数制限なく前記時短状態となりかつ通常確率よりも高い確率で前記特別遊技モードが発生する時短・確変モード,前記所定回数分の前記可変表示ゲームについて前記時短状態となりかつ前記所定回数分の前記可変表示ゲームについて通常確率よりも高い確率で前記特別遊技モードが発生する制限付時短・確変モード,または前記所定回数分の前記可変表示ゲームについて前記時短状態となりかつ通常確率で前記特別遊技モードが発生する時短・通常モードに設定するモード設定手段を備える,遊技機。
【請求項3】
設定モードが前記時短・確変モードのとき,その旨を表示する手段をさらに含む,請求項2に記載の遊技機。
【請求項4】
前記特別遊技モード終了後に前記所定回数分の前記可変表示ゲームが終了しかつ設定モードが前記時短・確変モードでないとき,前記時短状態を終了する手段,および
設定モードが前記制限付時短・確変モードのとき,前記時短状態が終了すると設定モードが前記制限付時短・確変モードであったことを表示する手段をさらに含む,請求項2に記載の遊技機。」

(補正後)
「【請求項1】
可変表示ゲームにおいて識別情報表示部に表示される複数の識別情報の可変表示結果が所定の組み合わせであるとき遊技者にとって有利な特別遊技モードに移行し,前記特別遊技モード終了後の少なくとも所定回数分の前記可変表示ゲームについて無条件で前記識別情報が通常の場合よりも短時間で停止する時短状態となる遊技機であって,
前記特別遊技モード終了後,前記可変表示ゲームの回数制限なく前記時短状態となりかつ通常確率よりも高い確率で前記特別遊技モードが発生する時短・確変モード,または前記所定回数分の前記可変表示ゲームについて前記時短状態となりかつ通常確率で前記特別遊技モードが発生する時短・通常モードに設定するモード設定手段,および
前記特別遊技モード終了から前記所定回数分の前記可変表示ゲーム終了までに設定モードを遊技者に知らせることなく,前記特別遊技モード終了後に前記所定回数分の前記可変表示ゲームが終了したとき,設定モードが前記時短・通常モードであれば前記時短状態を終了し,一方,設定モードが前記時短・確変モードであれば前記時短状態を継続する手段を備える,遊技機。
【請求項2】
可変表示ゲームにおいて識別情報表示部に表示される複数の識別情報の可変表示結果が所定の組み合わせであるとき遊技者にとって有利な特別遊技モードに移行し,前記特別遊技モード終了後の少なくとも所定回数分の前記可変表示ゲームについて無条件で前記識別情報が通常の場合よりも短時間で停止する時短状態となる遊技機であって,
前記特別遊技モード終了後,前記可変表示ゲームの回数制限なく前記時短状態となりかつ通常確率よりも高い確率で前記特別遊技モードが発生する時短・確変モード,前記所定回数分の前記可変表示ゲームについて前記時短状態となりかつ前記所定回数分の前記可変表示ゲームについて通常確率よりも高い確率で前記特別遊技モードが発生する制限付時短・確変モード,または前記所定回数分の前記可変表示ゲームについて前記時短状態となりかつ通常確率で前記特別遊技モードが発生する時短・通常モードに設定するモード設定手段を備える,遊技機。
【請求項3】
設定モードが前記時短・確変モードのとき,その旨を表示する手段をさらに含む,請求項2に記載の遊技機。
【請求項4】
前記特別遊技モード終了後に前記所定回数分の前記可変表示ゲームが終了しかつ設定モードが前記時短・確変モードでないとき,前記時短状態を終了する手段,および
設定モードが前記制限付時短・確変モードのとき,前記時短状態が終了すると設定モードが前記制限付時短・確変モードであったことを表示する手段をさらに含む,請求項2に記載の遊技機。」

2.補正事項及び補正目的
補正前後の請求項1及び2を比較すると,本件補正は,補正前の請求項1及び2における「時短状態」について,通常の場合よりも短時間での識別情報の停止が「無条件で」行われることを追加的に特定した点で,発明を限定したものである。そのため,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「平成18年改正前特許法」という。)17条の2第4項2号を目的とするもの,すなわち,限定的減縮を目的とするものと認めることができる。
なお,本願の願書に最初に添付された明細書及び図面(以下,「当初明細書等」という。)には,「時短状態」について,通常の場合よりも短時間での識別情報の停止を「無条件で」行うとの記載はない。そのため,本件補正により追加導入された上述の発明特定事項が,当初明細書等に記載された事項の総合に対して新たな技術事項を追加するものに該当するか否か,すなわち,審判補正が特許法17条の2第3項の規定を満たすか否かを判断するには,当初明細書等に記載された事項の総合を精査することが必要となる。しかしながら,当初明細書等には,時短状態において,特に何らかの付加的条件が成立している場合に限り,通常よりも短時間での識別情報の停止を行わせるという記載もされていない。そうであっても,仮に時短状態について,明記がなくともある条件の下では識別情報の停止までに通常状態と同じ時間をかけることが必須不可避である,といった特別な事情が存在するのであれば,「無条件」との記載のない当初明細書等に対して,「無条件に」という発明特定事項を追加することは,新規事項の追加と言うべきである。けれども,当初明細書等には「時短状態」について,そのような特別な事情の存在を伺わせる記載はない。また,一般的に時短状態において,必ず通常と同じ時間で識別情報を停止させる場合を混在させなければならないような,技術的理由が存在すると考えるべき理由もない。そこでここでは,本件補正は特許法17条の2第3項の規定に違反しないものと認めることとする。
そのため,以下では,本件補正の適否を判断するために,平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか否か,すなわち,補正後の請求項1あるいは2に係る発明が,特許出願の際に独立して特許を受けることができたか否かについて,検討することとする。


3.補正発明の認定
(1)補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「補正発明」という。)について,検討する。
補正発明は,本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲における,【請求項1】に記載された事項により特定されるべきものであり,その記載は「1.」に(補正後)【請求項1】として示したとおりである。
なお,本件補正後の【請求項1】の記載には,後述する若干の不明りょうな点がある。それらの点については,以下のとおり必要な限度において補足したうえで,補正発明の独立特許要件を検討することとする。

(2)認定についての補足1
本件補正後の【請求項1】の記載中,「前記特別遊技モード終了後,前記可変表示ゲームの回数制限なく前記時短状態となりかつ通常確率よりも高い確率で前記特別遊技モードが発生する時短・確変モード,または前記所定回数分の前記可変表示ゲームについて前記時短状態となりかつ通常確率で前記特別遊技モードが発生する時短・通常モードに設定するモード設定手段」なる記載について,補足する。

(2-1)「時短・確変モード」の「回数制限なく」について
まず,「前記可変表示ゲームの回数制限なく前記時短状態となりかつ通常確率よりも高い確率で前記特別遊技モードが発生する時短・確変モード」なる記載については,構文上は,「回数制限無く」が「時短状態となり」のみを特定するとも,「時短状態となり」及び「かつ通常確率よりも高い確率で前記特別遊技モードが発生する」の両者を特定するとも,読むことができる。
しかしながら,発明の詳細な説明の段落【0065】?【0073】の記載及び【図5】を参酌すると,「時短・確変モード」の継続中において,「確変」のみを途中で中止することは記載されていない。そのためここでは,「時短・確変モード」においては,「時短状態」及び「通常確率よりも高い確率で前記特別遊技モードが発生する」状態の,両方の状態が「回数制限なく」継続するものと解することとする。
また,上述「前記可変表示ゲームの回数制限なく前記時短状態となりかつ通常確率よりも高い確率で前記特別遊技モードが発生する時短・確変モード」なる記載のみ取り出すと,「時短・確変モード」に一度突入すると,その後は永遠に「時短・確変モード」が継続するものと読むこともできる。
しかしながら,一度時短と確変を獲得すると永久に時短と確変の利益を享受し続けられるということは,実際上現実的ではない。また,【請求項1】の記載は,「前記特別遊技モード終了後」に「時短・確変モード」または「時短・通常モード」に設定する,「モード設定手段」を有するものとなっている。その点を勘案すると,「特別遊技モード終了後」には「時短・確変モード」か「時短・通常モード」への設定がされるのであるから,「時短・確変モード」が永久に継続すると解することは妥当ではない。そのため,「時短・確変モード」についての「回数制限なく」については,次回の「特別遊技モード終了後」の設定によって,終了し得る趣旨と解することとする。

(2-2)「時短・通常モード」の「所定回数分」について
次に,「前記所定回数分の前記可変表示ゲームについて前記時短状態となりかつ通常確率で前記特別遊技モードが発生する時短・通常モード」なる記載について検討する。当該記載についても,構文上は,「前記所定回数分の前記可変表示ゲームについて」なる記載が「前記時短状態となり」のみを特定するとも,「前記時短状態となり」及び「通常確率で前記特別遊技モードが発生する」の両状態を特定するとも,読むことができる。
これについて発明の詳細な説明を参酌すると,段落【0014】には「請求項1に記載の遊技機では,特別遊技モード終了後に所定回数分の可変表示ゲームが終了しかつ設定モードが時短・通常モードであるとき,時短状態を終了する。これによって遊技者は設定モードを知ることができる。すなわち,時短・通常モードであれば,所定回数分の可変表示ゲームが終了すると時短状態が終了するが,一方,時短・確変モードであれば,所定回数分の可変表示ゲームが終了しても依然として時短状態が継続するので,時短終了の有無によって時短・確変モードか時短・通常モードかを知ることができる。かかる時短終了は,特別遊技モード終了後すぐにではなく,所定回数分の可変表示ゲーム終了後に行われるので,遊技者は設定モードを特別遊技モード終了後すぐに知るのではなく,少なくとも特別遊技モード終了後において所定回数分の可変表示ゲームが終了するまで知ることができないので,その時点まで遊技者の期待感を持続させることができ,それによって遊技者に遊技を継続させることができる。」との記載がされている。
上記段落【0014】に記載される如く,「時短終了の有無によって時短・確変モードか時短・通常モードかを知ることができる」という効果を得るうえでは,「時短・通常モード」においては「時短」のみが「所定回数分の可変表示ゲーム」で終了し,特別遊技モードを発生させる「確率」については,「所定回数分」の前後を通じて「通常確率」であると解することが合理的である。そして,そのように解することは,【請求項1】の後段部における「前記特別遊技モード終了後に前記所定回数分の前記可変表示ゲームが終了したとき,設定モードが前記時短・通常モードであれば前記時短状態を終了し」なる記載とも整合する。以下,この解釈を「解釈1」という。
その一方,発明の詳細な説明の段落【0054】?【0073】の記載及び【図5】を参酌すれば,「時短・通常モード」は当該モード自体が所定回数で終了しており,その後「通常モード」へと移行している。この実施例における具体的動作と整合する解釈に立とうとすれば,「時短・通常モード」では「時短状態」及び「通常確率」のいずれもが「所定回数分」であり,当該「モード」自体が所定回数の可変表示ゲームで終了すると解すべきこととなる。以下,この解釈を「解釈2」という。
解釈2の場合,「所定回数分」以降で選択される「モード」における確率状態及び時短の有無状態によっては,「時短状態」が終了したからといって遊技者が「通常確率」か否かを認識できないといった事態,あるいは,「所定回数」までの「時短状態」が終了しても,直ちに新たな「時短状態」が開始されることにより,「時短状態」の終了自体を遊技者が認識できないといった事態が生じ得る。すなわち,【請求項1】の後段部における「前記特別遊技モード終了後に前記所定回数分の前記可変表示ゲームが終了したとき,設定モードが前記時短・通常モードであれば前記時短状態を終了し」なる発明特定事項が付加されていても,前述段落【0014】に記載される「時短終了の有無によって時短・確変モードか時短・通常モードかを知ることができる。」という発明の効果が得られるとは限らないこととなる。
しかしながら,前述した【請求項1】後段部における「前記特別遊技モード終了後に前記所定回数分の前記可変表示ゲームが終了したとき,設定モードが前記時短・通常モードであれば前記時短状態を終了し」なる記載を,所定回数分の「時短・通常モード」終了後には,時短状態とならないモードに移行する趣旨と解すれば,解釈2においても,少なくとも遊技者にとって「時短状態」の終了が認識できることとなる。また,その場合であっても,所定回数で「時短・通常モード」が終了するとの解釈2に立つ場合には,「時短・通常モード」終了後において,特別遊技モードが発生する確率をどうするかについては,請求項1において何らの記載もないこととなる。しかしながら,前述した段落【0054】?【0073】及び【図5】における実施例の如く,所定回数の「時短・通常モード」の後に,時短なし・通常確率の「通常モード」に移行することは,解釈2の下で請求項1の発明特定事項に反することなく,発明の詳細な説明を参酌して補足的事項をも考慮した,具体的下位概念に該当する。解釈2において,ここに述べたとおりの善解を加えて前述の具体的下位概念を考慮した場合を,以下では「善解した解釈2の下位概念」という。
ここで,先に述べた解釈1と,前述の善解した解釈2の下位概念とを比較すると,両者は,「時短・通常モード」で所定回数の可変表示ゲームが終了した後,非時短状態・通常確率となるという点で,実際上相違しない。そして,このような解釈1及び善解した解釈の2下位概念の,いずれについても特許性がなければ,解釈1と解釈2のいずれであるかをさらに精査して峻別することを要さず,補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができなかったこととなる。
そのため,「時短・通常モード」の「所定回数分」及び該「所定回数分」より後の状態については,ここで述べた解釈1,及び,善解した解釈2の下位概念の,両場合をふまえて,補正発明の独立特許要件を検討することとする。

(3)認定についての補足2
本件補正後の【請求項1】の記載中,「前記特別遊技モード終了から前記所定回数分の前記可変表示ゲーム終了までに設定モードを遊技者に知らせることなく,前記特別遊技モード終了後に前記所定回数分の前記可変表示ゲームが終了したとき,設定モードが前記時短・通常モードであれば前記時短状態を終了し,一方,設定モードが前記時短・確変モードであれば前記時短状態を継続する手段を備える」なる記載について,補足する。

(3-1)「知らせることなく」の主体について
上記の記載の構文からすれば,「前記特別遊技モード終了から前記所定回数分の前記可変表示ゲーム終了までに設定モードを遊技者に知らせることなく」なる記載は,「時短状態」の「終了」または「継続」を行う「手段」についての特定と読むことが自然である。すなわち,特別遊技モード終了から所定回数分の可変表示ゲーム終了までの間に,設定モードを遊技者に知らせない主体は,「時短状態」の終了・継続を制御する「手段」である。そして,遊技機上のその他の手段であれば,当該期間中に設定モードを遊技者に知らせることは排除されないこととなる。
しかしながら,先に(2-2)でも抜記した段落【0014】の記載,とりわけ,「遊技者は設定モードを特別遊技モード終了後すぐに知るのではなく,少なくとも特別遊技モード終了後において所定回数分の可変表示ゲームが終了するまで知ることができない」という記載を参酌すれば,請求人の本来の意図は,単に「時短状態」を「終了」または「継続」する「手段」が,上述した期間中に設定モードを知らせなければ足りるというものではなく,遊技機上の全ての手段が,同期間中には遊技者に設定モードを知らせないという点にあるものと考えることができる。そして,遊技機上の全ての手段が,同期間中に遊技者に設定モードを知らせない場合には,当然に「時短状態」を終了または継続する「手段」も,同期間中には遊技者に設定モードを知らせないこととなるから,このような解釈は本件補正後の【請求項1】の記載に反するものではなく,少なくとも下位概念に相当する。
また,本件補正後の【請求項1】の記載自体に立ち戻れば,「前記特別遊技モード終了から前記所定回数分の前記可変表示ゲーム終了までに設定モードを遊技者に知らせることなく」なる記載は,先に述べたように,構文上は後続する「手段」を特定すると読むことが自然であるけれども,この記載部分のみが独立して,「遊技機」全体としての動作に言及するものと読むことも,不可能というわけではない。
そして,特別遊技モード終了から所定回数分の可変表示ゲーム終了までに,遊技機上の全ての手段が設定モードを遊技者に知らせない場合について,特許性がなければ,「設定モード」を「知らせることなく」という記載が何を特定するかについてさらに精査検討することを要さず,補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができなかったこととなる。
そのため,設定モードを「知らせることなく」の主体については,時短状態を継続あるいは終了させる「手段」である場合をふまえつつ,遊技機全体である場合も視野に入れて,補正発明の独立特許要件を検討することとする。

(3-2)「設定モードを」について
上記の記載中,遊技者に知らせないとする「設定モード」について検討する。
請求項1には「時短・通常モード」及び「時短・確変モード」の他に,「特別遊技モード」も記載されている。
また,先に(2-2)で検討したとおり,「時短・通常モード」は,「時短状態」だけが「所定回数分の可変表示ゲーム」で終了し「通常確率」はその後も継続する「モード」であるとも,「所定回数分の可変表示ゲーム」で該「モード」自体が終了するとも,解釈することができる。そして,後者の解釈であればさらに後続する別の「モード」が存在し得るとともに,発明の詳細な説明の段落【0054】?【0073】及び【図5】を参酌すれば,そこでは「時短・確変モード」から「通常モード」への移行が予定されている。
このように,「時短・確変モード」と「時短・通常モード」の他にも「モード」が存在する前提において,請求項1及び明細書の段落【0054】?【0073】等の記載に従う場合,時短状態を継続する「前記特別遊技モード終了から前記所定回数分の可変表示ゲーム終了まで」の期間については,「時短・通常モード」か「時短・確変モード」かの区別は,遊技者につかないこととなる。けれども,その期間においても,「特別遊技モード」や「通常モード」でないことは,遊技者に認識させないようにはなっていない。すなわち,「設定モードを遊技者に知らせることなく」なる記載を,モードの区別についての遊技者の認識を全く許さない意味とすれば,発明の詳細な説明に記載される実施例と整合しないのみでなく,請求項1の記載自体としても整合性がないこととなる。
そのため,ここでは「設定モードを遊技者に知らせることなく」との記載は,上記期間の間は「時短・通常モード」と「時短・確変モード」とのいずれであるかを遊技者に知らせない趣旨と善解して,補正発明の独立特許要件を検討することとする。


4.引用刊行物に記載される事項の認定
本願出願前に頒布された刊行物であり,原査定の拒絶の理由に引用された,特開2000-271297号公報(以下,「引用例1」という。)には,次の記載がされている。
なお,引用中における改行は「 / 」で代替した。また,「○」の中に「1」,「2」等の数字が記載されている箇所については,表記の都合上,「○1」,「○2」等と置き換えた。

ア.「【0002】 / 【従来の技術】従来の可変表示装置を備えた遊技機としては,パチンコ遊技機,アレンジボール遊技機,雀球遊技機,スロットマシン等がある。このような遊技機で用いられる可変表示装置は,複数の識別情報を可変表示可能な構成であり,例えば始動条件の成立に基づき可変表示装置における例えば3桁の表示部で数字や図柄等の複数の識別情報を可変表示させて,その可変表示が停止したときの停止態様が所定の態様(例えば「7」,「7」,「7」等のいわゆるゾロ目)であった場合に大当り状態として遊技球の獲得しやすい状態が発生している。 / 【0003】また,可変表示装置に表示する複数の識別情報(例えば16図柄)のうち,所定数(例えば,3図柄)を特定図柄に設定して,その特定図柄がゾロ目で停止した場合には,大当り終了後に次の大当りが発生するまで,大当りの発生率(ゾロ目の停止の発生率)を高確率状態にする確率変動状態(確変モードともいう)を発生可能にした遊技機がある。ここで,確率変動(以下,適宜,単に確変ということがある)とは,大当り終了後に次の大当りが発生するまでの間において,大当りの発生確率を通常(通常モードともいう)とは異なる高い確率にすることをいう。 / 【0004】確率変動遊技を発生可能な従来の遊技機では,確変突入が決定された場合に限って,大当り終了の時点で確変に突入し,次回の大当り確率がアップする。そして,確変に突入しているときは,大当り確率が高確率になって遊技者に有利な状態である旨を,単にランプ等で知らせていたに過ぎなかった。そのため,例えばランプの点灯/消灯により確変突入/非突入を2値的に明確に遊技者に知らせることになっていた。すなわち,ランプ点灯=確変,ランプ非点灯=非確変という図式が成立っていた。この場合,確変モード時の遊技は遊技者にとって有利なので遊技の意欲がわくが,通常モードの遊技ではそれほど遊技の意欲がわかないのが普通である。」
イ.「【0005】 / 【発明が解決しようとする課題】ところで,確率変動遊技を発生可能な従来の遊技機にあっては,以下のような問題点があった。 / (イ)従来の遊技機において,確変突入時に遊技者にそれを報知するということは,報知が無い場合には必然的に通常モードということであり,そのため,遊技者は折角大当りを獲得しても,その終了後に通常モードへ移行すると,遊技意欲を無くしてしまう欠点があった。具体的に説明すると,従来の遊技機ではランプの点灯/消灯により確変突入/非突入を明確に遊技者に知らせる構成であったため,例えば確変突入が明確化されるということは,確変突入は「次が当たることを保証する」という意味合いを遊技者に知らしめていることになるので,やる気がでる。しかし,その反面,非突入は「次の当たりまで苦労する」という情報を遊技者に教えることになってしまう。すなわち,大当り終了後に,次の当たりを獲得しようとする「通常の遊技(普段遊技のこと:通常モードではない)」が始まったとたんに,「次の当たりは苦労する」と遊技機側から示唆されたものと同じであり,遊技者がやる気をなくしてしまうことが多いという問題点があった。 / 【0006】したがって,遊技者がやる気をなくすことにより,遊技を止めてしまい,その結果として,遊技機の稼働が上がらない欠点があった。すなわち,大当りの終了を待って確変に突入しないと判明した場合には,遊技をやめてしまう遊技者が多く,そうすると,遊技店にとっては台(遊技機)の稼働率が下がってしまうという問題点があった。特に,閉店間近ではそれが顕著であった。それは,閉店間近で確変突入の報知を行った場合,遊技者の受け止め方として「これから苦労する」ということを認識し,閉店間近で時間がないのに無駄なことはしたくないから,遊技を継続する意志がなくなり,結局,遊技をやめてしまうので,稼働があがらないという図式が成立つからである。 / 【0007】(ロ)このように,確変突入を大当り終了の直後に報知してしまうと,稼働があがらないおそれがあり,確変突入に対する報知の工夫が望まれていた。そこで,本発明者は大当りを終了しても,確変への突入をすぐに報知しなければ,面白くなるのではないか,つまり確変突入か否かという遊技者が一番知りたい情報が明らかになるまでの複雑なプロセスが用意されていれば,遊技を面白くできるという点に着目した。 / 【0008】そこで本発明は,確変モードへの突入が認識できるまで遊技を自主的に継続させて,遊技機の稼働を上げることのできる遊技機を提供することを目的としている。」
ウ.「【0014】 / 【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態をパチンコ遊技機に適用した例として図面を参照して説明する。 / A.遊技盤の構成 / 図1はパチンコ遊技を行う遊技機の遊技盤を示す正面図である。図1において,1は遊技盤であり,前面の略円形領域がガイドレール2で囲まれることにより遊技領域3が形成されている。この遊技領域3には,複数の識別情報を画像遊技表示領域4a(表示領域)に変動表示する特別図柄可変表示装置4(可変表示装置)と,開閉扉により開閉される大入賞口5aを有する特別変動入賞装置5と,左右一対の開閉部材を有し特図始動口として機能する普通変動入賞装置6(いわゆる普電と呼ばれるもの)と,後述する普通図柄(以下,普図という)を表示する普通図柄可変表示装置7と,スルーチャッカー形式の普通図柄始動口8と,一般入賞口9?11と,風車と呼ばれる打球方向変換部材12(図面では煩雑になるので,1つのみ符号を付けている)と,サイドランプ13,14と,アウト穴15などが備えられている。ここでの複数の識別情報には,特図ゲームを行うための識別情報(以下,特別図柄あるいは特図という)が含まれる。なお,確変モードに突入するかどうかを決定するのは,あくまでも乱数を使用して遊技制御装置100の内部で行うだけであり,例えば特別図柄可変表示装置4に確変突入ゲームの内容が画面として表示されることはない。したがって,遊技者には確変突入の乱数抽選や確変モードに突入したかどうかは分からないようになっている。」
エ.「【0025】ここで,遊技制御装置100および表示制御装置200は全体として確率変動発生手段,報知手段,報知遅延制御手段,ランダム報知遅延制御手段および始動条件記憶手段を構成する。特別図柄可変表示装置4(可変表示装置)の表示領域における可変表示ゲーム(例えば,特図ゲーム)に関連した所定の遊技価値には,特別遊技状態(例えば,大当り,以下同様)が含まれる。確率変動発生手段は,確率変動状態に突入するかどうかを決定する抽選を行うとともに,該抽選結果に基づいて特別遊技状態の終了後に確率変動状態を発生させる。報知手段は,確率変動発生手段によって確率変動状態が発生した場合に,その旨を報知し,報知遅延制御手段は,特別遊技状態の終了後に少なくとも1回以上の特別図柄可変表示装置4(可変表示装置)による識別情報の可変表示が開始された後に,確率変動状態が発生した旨(あるいは確率変動状態が発生しない旨)を報知する。また,始動条件記憶手段は,特別図柄可変表示装置4(可変表示装置)の表示領域によって特別遊技状態に移行するかどうかを決定する可変表示ゲームの始動条件の成立を所定数記憶可能であるとともに,報知遅延制御手段は始動条件記憶手段との関係では,特別遊技状態の終了後に,始動条件記憶手段に記憶されている始動条件の成立している回数を超えて特別図柄可変表示装置4(可変表示装置)の可変表示ゲームが開始された後に,確率変動状態が発生した旨(あるいは確率変動状態が発生しない旨)の報知を行う。本実施の形態では,確率変動発生手段は確変獲得決定乱数を用いて遊技制御装置100の内部で確率変動状態に突入するかどうかを決定する抽選を行う。その抽選のプロセスは外部に表示されず,遊技者には分からない。 / 【0026】大当り(特別遊技状態)に移行するかどうかを決定するゲームは,後述する本実施の形態のように,大当り判定フラグの値に対応する特図(識別情報)の組合わせを特別図柄可変表示装置4(可変表示装置)の表示領域に停止表示させて,表面上,あたかも抽選しているかのような表示を行う演出のことであるが(すなわち,大当り判定フラグによって大当り(特別遊技状態)への移行の決定が既に成されていて,後から結果を知らせるような表示を行うだけであるが),このような例に限らず,例えば予め結果を決定せずに特図(識別情報)をランダムなタイミングで停止させることにより,後発的に結果が決定されるものであってもよい。」
オ.「【0028】さらに,確率変動状態は,別な概念でいうと特定の遊技状態と称することもあり,それは,特別遊技状態および特殊の遊技状態とは別に遊技者にとって有利な状態(特別遊技状態の発生が容易な状態)をいい,その形態として,例えば,第1種のパチンコ遊技機においては,特図の可変表示遊技の確率変動状態がある。ただし,本実施の形態では,始動口(始動ゲート)への入賞率を高めるような普図の確率変動状態は含めていない。それは,確率変動状態に普図の当たり確率がアップするものまで含めてしまうと,普通変動入賞装置6が頻繁に開放してしまって遊技者は確変突入を認識可能になり,また,普通変動入賞装置6が頻繁に開放しなければ,間接的に通常モードと分かってしまってがっかりしてしまうので,確率変動状態に普図の当たり確率アップを含めていないからである。なお,第2種や第3種のパチンコ遊技機における確率変動状態には,例えば,V誘導装置を備え,その動作によりV入賞口(特別入賞口)への入賞率を高めた状態も含まれる。」
カ.「【0029】C.遊技の概要 / 次に,遊技制御装置100の制御フローを説明する前に,本実施の形態の遊技機で行われる遊技の概要について説明する。ガイドレール2を介して遊技領域中に打込まれた遊技球が,特別図柄始動口を兼ねた普通変動入賞装置6に入賞すると,特別図柄可変表示装置4の変動表示部4aの複数の領域において多数の識別図柄(数字,文字,記号,図柄等よりなるもの)が移動(スクロール)する表示(いわゆる変動表示)が行われて,変動表示ゲーム(特図ゲーム)が行われる。そして,この変動表示ゲーム結果としての停止表示態様が所定の態様(例えば,「7,7,7」などのゾロ目の特定表示結果)であれば,大当りと呼ばれる特別遊技状態が発生する。 / 【0030】この特別遊技状態(大当り)が発生すると,特別変動入賞装置5の開閉扉が,例えば30秒程度(或いは,例えば最大で10個入賞までの期間)開放される特別遊技が行われる。この特別遊技のサイクルは,各サイクル中,大入賞口5a内の継続入賞領域を遊技球が通過することを条件に,例えば,最大で16サイクルまで継続して行われる。ここで,本実施の形態では,確変獲得決定乱数を用いて遊技制御装置100の内部で確率変動状態に突入するかどうかを決定する抽選が行われる。また,確変獲得抽選のプロセスは外部に表示されず,遊技者には見えない。 / 【0031】そして,確率変動状態に突入するかどうかを決定する抽選の結果,少なくとも1回以上特別図柄可変表示装置4による特図の可変表示が開始された後に,確率変動状態が発生したか否かのモード情報が報知される。報知は,例えば確変モード,あるいは通常モードというようなモード情報により,モードを知らせて行い,例えば確変モードになった場合には,大当り確率を高めて次回の大当りを当りやすくする遊技(確率変動遊技)を行い,所定期間だけその後の大当りの確率のみが通常よりも高確率とする(普図確率はアップしない)。さらに,上記特図の変動表示ゲーム中又は特別遊技中に,普通変動入賞装置6にさらに遊技球が入賞したときには,特図始動記憶表示器25が点灯して例えば4個まで記憶され,特図の変動表示ゲーム又は特別遊技の終了後に,その記憶に基づいて上記特図の変動表示ゲームが繰返される。」
キ.「【0033】大当り確率を高めて次回の大当りを当りやすくする遊技(確率変動遊技)と,普図の変動表示ゲームの他には,さらに所定の特殊遊技が行われたりする。その他の特殊遊技は,例えば特図の変動表示ゲームが50回行われるまでの期間だけ普図の変動表示ゲームの変動時間を短縮するなどの,いわゆる普図時短制御又は普図即止め制御(或いは両者の併用)による遊技状態がある。なおここで,普図時短制御とは,普図の変動表示ゲームの変動時間が通常は,例えば60秒程度であるところを6秒程度に短縮する制御であり,また普図即止め制御とは,始動記憶に基づいて普図の変動表示ゲームを行う際に,始動記憶の発生から所定時間(例えば6秒)経過したものに対しては,変動時間を短縮(例えば2秒)して即時に普図を停止させる制御である。 / 【0034】また,この特殊遊技中には,普図当りの際の普通変動入賞装置6の開放時間を例えば3秒程度に増やす処理や,普図当りの際の普通変動入賞装置6の開放回数を通常の1回から3回に増やす等の処理が行われることもある。なお,このような特殊遊技を行うことにより,単位時間当りの普図のゲーム回数が増えて,普図の当る回数が増える(通常普図の当り確率は1/4程度であるため)。このため,結果的に特図の変動回数が増えて有利な状態になる。またさらに,通常この特殊遊技状態中には,特図の変動についても即止め制御が行われ,さらに有利となる。」
ク.「【0047】ここで,本実施の形態ではステップS23の図柄変動停止処理で,後述の図柄変動開始処理のサブルーチンにおいて設定された確変報知開始許可フラグの値と,確変状態フラグの値に基づいて後述の図8(a)?(c)に示すように,大当りの終了後に少なくとも1回以上の特図変動が開始された後に,現在のモード(確変モードあるいは通常モード:つまり確率変動状態が発生したか否かの情報)を報知(表示)する処理を行う。すなわち,確変報知開始許可フラグがセットされた状態になると,確変状態フラグを参照して確変モードか通常モードかを示す表示を行う。ただし,この表示は確変報知開始許可フラグがセットされた状態になるまで,遅延され,セットされないと表示を行わない(図8(a)参照)ようになっている。なお,大当りの終了後に少なくとも1回以上の特図変動が開始された後に,現在のモードを報知する(現在のモードを遅延させて報知する)処理は,ステップS23の図柄変動停止処理で行ってもよいが,例えばステップS24の大当り判定処理で行うようにしてもよい。大当り判定処理で行うと,特図が完全に停止してから,現在のモード(確変モードあるいは通常モード)が表示されて遊技者に報知される。 / 【0048】次いで,全図柄が停止すると,ステップS24で大当り判定処理を行い,後述するステップS38若しくはステップS44で設定された大当り判定フラグの値を基に当たり/外れを判定する。そして,外れのときはステップS22に戻ってループを繰り返す。一方,当たりのときは確変状態フラグをクリアしてステップS25に進み,大当り遊技制御処理を行う。大当り遊技制御処理は大当りゲームを行うもので,例えば大当り報知画面を3秒間表示した後,画面には表示しないが,確変獲得決定乱数を用いて確変を獲得できるかどうかの判定を行い(あくまで内部処理),次いで,大当りのラウンドを開始して特別変動入賞装置5の大入賞口5aを開放し,継続SW(継続スイッチ23)で球を検出することを条件に16ラウンドまで大当り遊技を行う。」
ケ.「【0052】ステップS35あるいはステップS36を経ると,ステップS37に進み,判定結果は大当りか否かを判別する。 / ○1大当りのとき / 判定結果が大当りのときはステップS38に進み,大当り判定フラグに「55H」を設定する。次いで,ステップS39で特図の停止図柄に大当り図柄を設定する。このとき,前述した遊技制御シーケンスのステップS12にて生成(更新)した特図の停止図柄を決定するための乱数が使用されて,大当り時の停止図柄が決定される。次いで,ステップS40で確変獲得の判定処理を行う。確変獲得の判定処理は確変に移行するかどうかの判定を行うもので,変動対象記憶に格納されている確変獲得決定乱数カウンタの値(0?11の何れかの値)と,「0?5」あるいは「6?11」との一致を判定する。この場合,「0?5」は通常状態,「6?11」は確変になる乱数である。確率は共に6/12=1/2である。 / 【0053】次いで,ステップS41で判定結果は確変獲得か否かを判別し,確変獲得のときはステップS42に進んで確変獲得判定フラグに「AAH」を設定する。一方,ステップS41の判定結果で確変獲得でないときには,ステップS43に分岐して確変獲得判定フラグに「00H」を設定する。ステップS42あるいはステップS43を経ると,ステップS46に進み,特図の変動パターン情報を設定する。特図の変動パターンとしては,例えばリーチの発生/リーチ発生無し,リーチの種類等の特図が変動する各種状態があり,何れかの変動パターンをこのステップで決定する。 / ○2外れのとき / ステップS37の判定結果が外れのときはステップS44に分岐し,大当り判定フラグに「00H」を設定する。次いで,ステップS45で外れ(図面では,”はずれ”)図柄設定処理を行う。外れ図柄設定処理は,外れとなるように特図の停止図柄を決定するものである。なお,特図が外れのときは,確変獲得決定乱数の判定はない。次いで,ステップS43に進み,その後,ステップS46に進む。 / 【0054】ステップS46を経ると,次いで,ステップS47で確変報知遅延カウンタが「0」より大きいか否かを判別する。ここで,本実施の形態では後述の大当り終了処理のサブルーチンにおいて確変報知遅延カウンタ=nが設定される。これは,確率変動状態に突入するかどうかを決定する抽選結果に基づき,大当りの終了後の特図変動が所定の実行回数(例えば,n回(nは1を超える数))に到達したことを条件として確率変動状態が発生したか否かの報知を行うとともに,当該実行回数をランダムに決定するために,確変報知遅延カウンタ=nを設定するものである。ステップS47で確変報知遅延カウンタが「0」より大きいときは,ステップS48に進んで確変報知遅延カウンタを「-1」だけ更新(デクリメント)し,特図の可変表示回数をカウントアップする。次いで,ステップS49で確変報知遅延カウンタ=0であるか否かを判別し,確変報知遅延カウンタ=0でなければステップS50に進んで全図柄の変動を開始して特図ゲームの進行処理に戻る。以後,本ルーチンを繰り返すことにより,ステップS49の判別結果がYES(確変報知遅延カウンタ=0)になると,ステップS49からステップS51に分岐して確変報知開始許可フラグをセットし,その後,ステップS50を経て特図ゲームの進行処理に戻る。確変報知開始許可フラグがセットされると,特図ゲームの進行処理では前述したようにステップS23の図柄変動停止処理で確変報知開始許可フラグの値と,確変状態フラグの値に基づいて後述の図8(a)?(c)に示すように現在のモード(確変モードあるいは通常モード)を表示する処理が行われて遊技者に報知されることになる。 / 【0055】(d)大当り終了処理 / 図7は,特図ゲームの進行処理における大当り終了処理のサブルーチンを示すフローチャートである。このサブルーチンが開始されると,まずステップS61で大当りの終了を知らせる画面(大当り終了画面)を一定期間,例えば15秒間表示させた後,ステップS62で確変獲得判定フラグを読み出し,確変獲得判定フラグ=「AAH」であるか否かを判別る。確変獲得判定フラグには前述したステップS42で「AAH」とデータが設定されているか,あるいはステップS43で「00H」というデータが設定されているかのどちらかであり,何れかのステップS42又は43で確変獲得判定フラグのデータを格納した後は,このステップS62に至るまでの途中の実行ステップでは当該データの読み出し/書き込みは一切行われていない。 / 【0056】確変獲得判定フラグ=「AAH」であるときは通常モードから確変モードへ変ったと判断してステップS63に進み,確変状態フラグをセットする。これにより,確変モードに移行する(ただし,その報知は遅延して表示される)。次いで,ステップS64で確変獲得判定フラグに「00H」を設定する。確変獲得判定フラグに「00H」を設定するのは,今回のルーチンで確変獲得判定フラグを判定して,モードを変更したので,確変獲得判定フラグの参照が終了したことから確変獲得判定フラグをクリアしておくためである。次いで,ステップS65で確変報知遅延カウンタを設定する。ここでは,確変報知遅延カウンタ=n(n=1以上)に設定し,nはランダムに決定する。ランダムに決定する際には,例えば簡単な乱数生成カウンタを用いてもよい。nは,特図の可変表示が開始された後に,確率変動状態に突入するか否かの情報を遅延して報知するための特図の停止回数に相当する。」
コ.「【0058】なお,確変報知遅延カウンタに設定するnの値は,固定値にしてもよい。ただし,できれば始動記憶メモリ数(4個)より大きい値が好ましい。そうすると,大当り終了後にメモリが全て自動的に消化されても,その時点では確変変動状態への突入の報知が行われないので,報知結果が知りたい遊技者に対して遊技を続行するよう促すことができる。その結果,遊技機1の稼働を上げることができる。ところで,確変報知遅延カウンタにランダムに設定される値は,確変モードの場合と通常モードの場合とで,その期待値を異ならせて設定するようにしてもよい。この場合,好ましくは,通常モードの場合に設定される値の期待値が,確変モードの場合に設定される値の期待値よりも大きくなるように設定するのが適切である。例えば,確変モード突入決定の場合はn=5?44から選択し,通常モード突入決定の場合はn=15?54から選択するようにする。このような構成にすると,遊技者にとって喜ばしい確変モード突入の報知を早めることになり,確変モード突入の報知よりも先に大当りが発生してしまって遊技者に確変モード突入の感動を与える機会をなくしてしまうというケースをなるべくなくすことができる。すなわち,確変モード突入という感動をなるべく早く多くの遊技者に与えることが可能になる。一方,遊技者にとって好ましくない通常モード突入は,その報知を遅らせることができるので,通常モード突入による遊技者の脱力感を遊技時間の経過に伴って弱めることができる。すなわち,通常モード突入の場合には,大当り直後にそれが分からなくても,遊技を続けていくうちに大当りが当たらない状態が継続すれば通常モードであることの疑念が増してくるので,遊技時間が十分に経過していれば,通常モード突入の報知が行われたときの脱力感を非常に弱めることができる。例えば,遊技者が感じるニュアンスとしては,「やっぱりな」という感じで脱力感を弱めることができる。したがって,通常モード突入が判明したときの遊技者の脱力感を払拭すると同時に,確変モード突入判明時の感動を強く遊技者に与えれるという2つの効果を同時に奏することができる。」
サ.「【0062】○4確変報知遅延カウンタを少なくともn=5(つまり,メモリ数よりも大きい数)以上に設定することにより,以下の効果がある。すなわち,少なくとも大当り終了後に自動的に消化される始動入賞のメモリ数(4個)を超える回数の特図変動が開始された後に,確変モード突入に関する情報を報知し,大当り終了後に自動的に消化される保留メモリによる図柄変動の最中には,確変モード突入の報知ができない。したがって,新たに図柄変動をさせるように遊技者を動機付けさせることができ,大当り終了後の保留メモリによる図柄変動以後も遊技を継続させることができる。言い換えれば,新たに図柄変動をさせるべく,遊技者は遊技球を発射することとなり,その結果,遊技機の稼働を高めることができる。 / 【0063】なお,本実施の形態では遊技機1に,確変突入時に遊技者にそれを直接的に報知するランプを設けていない(すなわち,直接的に報知していない)構成になっている。ただし,直接的に報知してない構成は報知ランプを設けないのが典型的な例であるが,遊技者に直接的には認識できないような報知を行っている場合でも,「確変を報知しない」(すなおに,そのまま報知しないという意味)構成であると看做している。例えば,遊技店側のみが確変を把握できるように,目に見えない電気的な信号(遊技機への外部情報など)により従業員だけに報知している構成や,遊技機の目立たない位置でランプを点灯(例えば,確変のランプか,装飾のランプの点灯かが分からないような場合)している報知している場合,確変と通常との報知が紛らわしくて識別できないようなものなどは,報知しているとは看做さないものとする。そのような場合には,本実施の形態の効果が有効に発揮される。」
シ.「【0064】次に,本発明の他の実施の形態について説明する。 / 「第2の実施の形態」図8(d),(e)は本発明の第2の実施の形態を説明する図である。第2の実施の形態では,遊技制御装置100および表示制御装置200は全体として報知遅延制御手段を構成し,報知遅延制御手段は確率変動発生手段によって確率変動状態が発生した場合にはその旨を報知し,確率変動状態が発生しない場合にはその旨を報知しない構成になっている。つまり,通常モードの場合には図8(d)に示すように特図の図柄変動中であっても,いつまでたっても確変モード/通常モードの表示を行わない。一方,確変モードの場合には図8(e)に示すように,大当り終了から所定のタイミングにて「ただいま確変中!」という表示を特図の図柄変動中に行う。このように第2の実施の形態では,通常モードの場合にはその報知を行わず,確変モードのときのみモードを報知する構成であるので,通常モード突入の報知により遊技を止めてしまう遊技者に対して,遊技の中止を抑制させる効果がある。したがって,より一層遊技機の稼働を高めることができる。 / 【0065】「第3の実施の形態」本発明の第3の実施の形態は,第1の実施の形態の構成と組み合わせたものとし,大当り終了処理(図6に示すもの)のステップS61において,例えば図9(a)に示すように大当り終了画面で「大当り終了です」,「確変に25%の確率で突入します」というようなメッセージを表示する演出を行い,確変突入の可能性を割合で「曖昧な報知」として表示する設定にする。ここでの設定は,図9(b)に示す確変獲得決定乱数カウンタと突入可能性表示との関係を示す図のように行われる。すなわち,変動対象記憶の確変獲得決定乱数カウンタの値が0?5の通常モードの場合には,確変突入を0%?75%の区分で6段階に分けるとともに,かつそれに対応した画面をBからEまで4種類を用意しておいて対応付けるようにする。この場合には,確変突入25%の表示割合が多く,遊技者にあまり期待できないことを示唆する。因みに,図9(a)の例は画面Dを表示した例に相当している。 / 【0066】一方,確変獲得決定乱数カウンタの値が6?11の確変モードの場合には,確変突入を25%?100%の区分で6段階に分けるとともに,かつそれに対応した画面をAからDまで4種類を用意しておいて対応付けるようにする。この場合には,確変突入75%の表示割合が多く,遊技者にかなり期待できることを示唆する。そして,確変報知遅延カウンタ=0になると,確変モードあるいは通常モードかが明確に表示される。」


5.引用刊行物記載の発明の認定
(1)課題と目的
記載事項ア.によれば,引用例1では,大当り状態を有する遊技機が,発明の前提とされている。また,大当り終了後に次の大当りが発生するまでの,大当りの発生率として,通常の状態(通常モード)と,通常とは異なる高い確率の状態(確変モード)があることが,発明の前提とされている。
記載事項イ.によれば,引用例1における課題は,大当り終了後に確変突入を明確に知らしめると,遊技者はやる気が出る反面,大当り終了後に確変非突入を明確に知らしめると,遊技者は大当り終了後の遊技が始まったとたんにやる気をなくし,遊技をやめてしまうことが多いことだとされている。そして,大当りを終了しても,確変突入か否かという遊技者が一番知りたい情報をすぐに報知しないことにより,該情報を認識できるまで遊技を自主的に継続させて,遊技機の稼働を上げることが,目的とされている。このような目的からすれば,引用例1においては,確変に突入したことの認識を遅らせるよりは,どちらかといえば,確変に突入しなかったことの認識を遅らせることが,重要視されていると言い得る。
ひとまず,引用例1に示される課題と目的とについて,上述のように整理したうえで,以下,引用例1に開示される事項をみることとする。

(2)基礎となる遊技機,及び該遊技機が有する遊技状態
上述した課題及び目的の下に,引用例1が開示するのは,記載事項ウ.によると「パチンコ遊技機」である。そして,「複数の識別情報」である「特別図柄」を変動表示する,「特別図柄可変表示装置4」を有している。
記載事項エ.によると,上記「特別図柄」の変動表示は「可変表示ゲーム」である。そして,該「可変表示ゲーム」において,「大当り判定フラグの値に対応する特図(識別情報)の組合わせ」が「停止表示」されることで,大当りの「特別遊技状態」に移行する。また,同記載事項エ.によると,「パチンコ遊技機」は「確率変動状態」も有している。ここでの「確率変動状態」は,記載事項オ.によれば,「特図の可変表示遊技の確率変動状態」である。
ここで,「パチンコ遊技機」が有するその他の遊技状態についてみると,前述「特図の可変表示の確率変動状態」が存在する以上,特図の可変表示について大当り発生率が「確率変動状態」ではなく,通常の確率である状態も,当然有している。
また,記載事項オ.にあるように,「普図の確率変動状態」は含まれていないものの,記載事項キ.によれば,「特図の変動」について「即止め制御」が行われる遊技状態を有することが想定されている。同記載事項キ.には,「普図」(当審注,「普通図柄」の省略)に関して,「普図時短制御とは,普図の変動表示ゲームの変動時間が通常は,例えば60秒程度であるところを6秒程度に短縮する制御であり,また普図即止め制御とは,始動記憶に基づいて普図の変動表示ゲームを行う際に,始動記憶の発生から所定時間(例えば6秒)経過したものに対しては,変動時間を短縮(例えば2秒)して即時に普図を停止させる制御である。」との記載がされている。この記載からすれば,「特図」についても,「即止め制御」とは,少なくとも条件により変動時間を通常よりも短縮する制御と言い得る。
そして,当該「特図」の「即止め制御」が行われる遊技状態は,「特殊遊技状態」と称されており,これと対比される通常の状態として,特別図柄の変動時間が通常より短縮されない状態も有することは,明らかである。
ここまでを小括すると,引用例1には,
「複数の識別情報である特別図柄を変動表示して,可変表示ゲームを行う,特別図柄可変表示装置4を有し,
可変表示ゲームにおいて,大当り判定フラグの値に対応する特図(識別情報)の組合わせが停止表示されることで,大当りの特別遊技状態へと移行する,パチンコ遊技機であって,
特図の可変表示における大当りの発生率について,通常の確率である状態と,通常より高い確率である確率変動状態とを有し,
特図の変動時間について,通常より短縮されない状態と,少なくとも条件により通常の場合よりも短縮される即止め制御が行われる状態とを有する」
という発明事項が開示されている。

(3)各遊技状態の遷移
次に,各遊技状態の遷移について,引用例1の開示をみることとする。「特別遊技状態」への移行は,先にみたとおりであるので繰り返さない。
特別図柄の可変表示における大当り発生率が,「確率変動状態」となるか,そうでない通常状態となるかについてみると,記載事項カ.によれば,「確率変動状態に突入するかどうかを決定する抽選」は「大当り」の場合に行われる。記載事項ク.によれば,「確変状態フラグ」の「クリア」も「大当り」の場合に行われる。記載事項ケ.によれば,確変獲得と判定された場合には,「特別遊技状態」の終了後に,「確変状態フラグ」がセットされ,これにより「確変モード」に移行する。そして,確変獲得と判定されない場合には,クリアされた「確変状態フラグ」はセットされず,その結果「通常モード」へ移行する。
特別図柄の変動時間について,「即止め制御」がされる状態となるか,通常の状態となるかについてみると,記載事項キ.に「例えば特図の変動表示ゲームが50回行われるまでの期間だけ」との記載があるのみである。「即止め制御」がされる状態の始期については,引用例1に記載がない。また,「即止め制御」がされる状態の終期についても,前述「例えば・・・50回行われるまで」という例示があるのみで,明確な基準が示されていない。そのため,特図の「即止め制御」がされる状態については,その始期と終期とがあることを除き,ここで認定することは控えることとする。
すなわち,(2)での認定との重複を省いて小括すると,引用例1には,
「特別図柄の可変表示における大当り発生率の状態遷移については,
大当りのときに,確変状態フラグのクリア,及び,確率変動状態に突入するかどうかを決定する抽選を行うとともに,
確変獲得と判定された場合には,特別遊技状態の終了後に,確変状態フラグをセットすることで,通常より高確率の確率変動状態である,確変モードに移行し,
確変獲得と判定されない場合には,特別遊技状態の終了後に,クリアされた確変状態フラグをセットしないことで,通常の確率状態である,通常モードに移行し,
特図の即止め制御がされる状態については,その始期と終期とを有する」
という発明事項が開示されている。

(4)確率変動状態か否かの報知
次に,確率変動状態であるか否かの報知について,引用例1の開示をみることとする。先に(1)でみたとおり,引用例1では,特別遊技状態の終了直後に,大当りとなる確率が通常より高い状態であるか否かを遊技者が認識すること,とりわけ,大当りとなる確率が通常より高い確率でないことを遊技者が認識することで,遊技者の遊技継続意欲が削がれ,遊技機の稼働率が低下することを,防止することを目的としている。
そのために,記載事項ウ.によれば,確変モードに突入するか否かの決定時には,遊技者には該決定結果を知らせないようにしている。また,記載事項エ.によれば,「確率変動状態が発生した旨(あるいは確率変動状態が発生しない旨)」の報知は,「報知遅延制御手段」を備えることで,遅らせている。
報知をいつまで遅らせるかについては,記載事項ケ.に「大当りの終了後の特図変動が所定の実行回数(例えば,n回(nは1を超える数))に到達したことを条件として」及び「当該実行回数をランダムに決定する」との記載があり,記載事項コ.に「確変報知遅延カウンタに設定するnの値は,固定値にしてもよい。ただし,できれば始動記憶メモリ数(4個)より大きい値が好ましい。」との記載がある。また,記載事項サ.には,「確変報知遅延カウンタを少なくともn=5(つまり,メモリ数よりも大きい数)以上に設定することにより,以下の効果がある」とも記載されている。ここでは,記載事項ケ.の表現を用いつつ,記載事項サ.にいう「n=5以上」とする選択を採用し,「大当りの終了後の特図変動が,固定あるいはランダムに決定される,5以上の所定の実行回数になるまで」遅らせる場合を採る。
上述のように遅らせた報知として,具体的にどのような報知の態様をとるかについては,記載事項ク.に「現在のモード」を「表示」することが記載されている。
その他に,大当りとなる確率を遊技者に認識させるか否かという事項について,引用例1の開示をみると,記載事項ク.に「ただし,この表示は確変報知開始許可フラグがセットされた状態になるまで,遅延され,セットされないと表示を行わない」と記載がある。すなわち,上述の遅らせた報知の実施タイミングまでは,現在のモードの表示は行わないことが開示されている。また,記載事項オ.によれば,「特図」の「確率変動状態」に「普図」の「確率変動状態」を伴わせることは,「普通変動入賞装置6」の頻繁な解放の有無から,間接的に遊技者に「特図」の「確率変動状態」か否かが認識されるものとして,避けている。さらに,記載事項サ.によれば,確変突入時に遊技者にそれを直接的に報知するような手段は排除されているとともに,確変状態か通常状態かを遊技者以外に報知する手段,遊技者に識別できないような手段であれば,必ずしも排除されていない。
小括すると,引用例1には,
「特別図柄の確率変動状態であるか否かの報知については,報知遅延制御手段を備え,
大当りの終了後の特図変動回数が,固定あるいはランダムに決定される,5以上の所定の実行回数になるまで,特図の確率変動状態が発生した旨,あるいは特図の確率変動状態が発生しない旨の報知を遅らせ,
上述遅らせた報知は,現在のモードを表示することで行い,当該遅らせた報知の実行タイミングまでは,当該現在のモードの表示は行わず,
上述遅らせた報知以外の報知については,
特図の確率変動状態に普図の確率変動状態を伴わせることは,普通変動入賞装置6の頻繁な解放の有無から間接的に遊技者に特図の確率変動状態か否かが認識されることから,これを避けるとともに,
確変状態か通常状態かを遊技者以外に報知する手段,あるいは,遊技者には識別できないような報知を行う手段を設けることは排除しないが,確変突入時に遊技者にそのことを直接的に報知するような手段は設けない」
という発明事項が開示されている。

(5)まとめ
以上をまとめ,「特図」「普図」と略記した点を略記前に戻すと,引用例1には
「複数の識別情報である特別図柄を変動表示して,可変表示ゲームを行う,特別図柄可変表示装置4を有し,
可変表示ゲームにおいて,大当り判定フラグの値に対応する特別図柄(識別情報)の組合わせが停止表示されることで,大当りの特別遊技状態へと移行する,パチンコ遊技機であって,
特別図柄の可変表示における大当りの発生率について,通常の確率である状態と,通常より高い確率である確率変動状態とを有し,
特別図柄の変動時間について,通常より短縮されない状態と,少なくとも条件により通常の場合よりも短縮される即止め制御が行われる状態とを有し,
特別図柄の可変表示における大当り発生率の状態遷移については,
大当りのときに,確変状態フラグのクリア,及び,確率変動状態に突入するかどうかを決定する抽選を行うとともに,
確変獲得と判定された場合には,特別遊技状態の終了後に,確変状態フラグをセットすることで,通常より高確率の確率変動状態である,確変モードに移行し,
確変獲得と判定されない場合には,特別遊技状態の終了後に,クリアされた確変状態フラグをセットしないことで,通常の確率状態である,通常モードに移行し,
特別図柄の即止め制御がされる状態については,その始期と終期とを有し,
特別図柄の確率変動状態であるか否かの報知については,報知遅延制御手段を備え,
大当りの終了後の特別図柄変動回数が,固定あるいはランダムに決定される,5以上の所定の実行回数になるまで,特別図柄の確率変動状態が発生した旨,あるいは特別図柄の確率変動状態が発生しない旨の報知を遅らせ,
上述遅らせた報知は,現在のモードを表示することで行い,当該遅らせた報知の実行タイミングまでは,当該現在のモードの表示は行わず,
上述遅らせた報知以外の報知については,
特別図柄の確率変動状態に普通図柄の確率変動状態を伴わせることは,普通変動入賞装置6の頻繁な解放の有無から間接的に遊技者に特別図柄の確率変動状態か否かが認識されることから,これを避けるとともに,
確変状態か通常状態かを遊技者以外に報知する手段,あるいは,遊技者には識別できないような報知を行う手段を設けることは排除しないが,確変突入時に遊技者にそのことを直接的に報知するような手段は設けない,
パチンコ遊技機」
の発明(以下「引用発明1」という)が記載されている。

6.補正発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
引用発明1と補正発明とを対比する。
まず,引用発明1が「パチンコ遊技機」である点は,補正発明が「遊技機」である点に相当する。引用発明1における「複数の識別情報である特別図柄」及び「特別図柄」は,引用発明1における「複数の識別情報」及び「識別情報」に相当する。引用発明1の「可変表示ゲーム」は補正発明の「可変表示ゲーム」と一致し,引用発明1における「特別図柄可変表示装置4」は補正発明における「識別情報表示部」に相当する。引用発明1において「大当り判定フラグの値に対応する特別図柄(識別情報)の組合わせが停止表示される」ことは,補正発明において「可変表示結果が所定の組み合わせである」ことに相当する。引用発明1における「大当りの特別遊技状態」は,遊技者にとって有利なものであることが明らかであるとともに,「状態」を「モード」と称することもできるので,補正発明における「遊技者にとって有利な特別遊技モード」に相当する。
小括すると,引用発明1と補正発明とは,「可変表示ゲームにおいて識別情報表示部に表示される複数の識別情報の可変表示結果が所定の組み合わせであるとき遊技者にとって有利な特別遊技モードに移行する,遊技機」である点で一致する。

次に,引用発明1は「特別図柄の変動時間について,通常より短縮されない状態と,少なくとも条件により通常の場合よりも短縮される即止め制御が行われる状態と」を有している。この点を,補正発明の遊技機が「前記特別遊技モード終了後の少なくとも所定回数分の前記可変表示ゲームについて無条件で前記識別情報が通常の場合よりも短時間で停止する時短状態となる」点と比較する。
引用発明1における「特別図柄の変動時間」は,補正発明における「識別情報」が「停止」するまでの時間に相当する。また,引用発明1における前述「即止め制御が行われる状態」は,「無条件」か否かは別として,特別図柄が通常の場合よりも短時間で停止する制御を含む状態であり,補正発明における「時短状態」も,識別情報を通常の場合よりも短時間で停止する以上,当該短時間で停止させる制御を含んでいる。
そのため,引用発明1と補正発明とは,「可変表示ゲームについて前記識別情報が通常の場合よりも短時間で停止する制御を含む状態を有する」という点で,一致すると言い得る。

また,引用発明1は上述の「即止め制御が行われる状態」について,その始期と終期とを有している。そうである以上,上述の「即止め制御が行われる状態」について,その終期では当該状態を終了し,終期でないときには同状態を継続する手段を,当然に有している。そして,先に述べたとおり,引用発明1における「即止め制御が行われる状態」と補正発明における「時短状態」とは,「可変表示ゲームについて前記識別情報が通常の場合よりも短時間で停止する制御を含む状態」という点で一致する。
これらのことからすれば,引用発明1において「即止め制御が行われる状態」を終了または継続する上述した手段と,補正発明における「前記特別遊技モード終了後に前記所定回数分の前記可変表示ゲームが終了したとき,設定モードが前記時短・通常モードであれば前記時短状態を終了し,一方,設定モードが前記時短・確変モードであれば前記時短状態を継続する手段」とは,「可変表示ゲームについて前記識別情報が通常の場合よりも短時間で停止する制御を含む状態を,終了または継続する手段」である点で一致する。

次に,引用発明1における,「特別図柄の可変表示における大当りの発生率」についての「通常の確率である状態」及び「通常より高い確率である確率変動状態」,ならびに,当該2つの状態の設定について検討する。
引用発明1において,「大当り」が発生すれば「特別遊技状態」となり,また,引用発明1における「特別遊技状態」は,先に述べたとおり,補正発明における「特別遊技モード」に相当する。そのため,引用発明1における上記「通常の確率である状態」は,補正発明における「通常確率で前記特別遊技モードが発生する」状態に相当し,引用発明1における上記「通常より高い確率である確率変動状態」は,補正発明における「通常確率よりも高い確率で前記特別遊技モードが発生する」状態に相当する。また,引用発明1におけるこれらの状態は,「モード」とも称されているから,補正発明における「時短・確変モード」及び「時短・通常モード」と比較した場合,それぞれ「通常確率よりも高い確率で前記特別遊技モードが発生する状態のモード」及び「通常確率で前記特別遊技モードが発生する状態のモード」である点で,一致すると言うことができる。
さらに,引用発明1における大当り発生率の状態遷移は,「大当り」のときにそれまでの状態を示す「確変状態フラグ」がクリアされるとともに,新たな確率変動状態を得るか否かの抽選が実施され,該大当りの「特別遊技状態の終了後」に,前述抽選に基づく「確変状態フラグ」の設定により,「通常の確率である状態」か「通常より高い確率である確率変動状態」であるかが選ばれるものである。そうであれば,引用発明1は,「特別遊技状態終了後」に,「モード」とも称することができる前述2つの状態のいずれかを設定する手段を,当然に有している。そして当該手段は,補正発明において「特別遊技モード終了後」に2つのモードのいずれかを設定する「モード設定手段」に相当する。
また,引用発明1における上述「通常より高い確率である確率変動状態」は,大当りの特別遊技状態終了後の状態設定を別として,「可変表示ゲーム」の回数によって終了しないから,補正発明において「前記可変表示ゲームの回数制限なく」とある点は,引用発明1と補正発明との一致点である。そして,引用発明1における上述「通常の確率である状態」は,「特別図柄の可変表示」についてのものであるから,補正発明において「前記可変表示ゲームについて」とある点も,引用発明1と補正発明との一致点である。
すなわち,引用発明1と補正発明とは,「前記特別遊技モード終了後,前記可変表示ゲームの回数制限なく通常確率よりも高い確率で前記特別遊技モードが発生する状態のモード,または前記可変表示ゲームについて通常確率で前記特別遊技モードが発生する状態のモードに設定するモード設定手段」を有する点で,一致している。

以上をまとめると,補正発明と引用発明1は,
「可変表示ゲームにおいて識別情報表示部に表示される複数の識別情報の可変表示結果が所定の組み合わせであるとき遊技者にとって有利な特別遊技モードに移行し,
可変表示ゲームについて前記識別情報が通常の場合よりも短時間で停止する制御を含む状態を有する遊技機であって,
前記特別遊技モード終了後,前記可変表示ゲームの回数制限なく通常確率よりも高い確率で前記特別遊技モードが発生する状態のモード,または前記可変表示ゲームについて通常確率で前記特別遊技モードが発生する状態のモードに設定するモード設定手段,および
可変表示ゲームについて前記識別情報が通常の場合よりも短時間で停止する制御を含む状態を,終了または継続する手段を備える,遊技機。」
である点で一致し,次の点で相違する。

<相違点1>
補正発明においては「時短状態」を用いるとともに,該「時短状態」は,通常の場合よりも短時間での識別情報の停止が「無条件で」行われるものであるのに対し,引用発明1では「即止め制御が行われる状態」を用いている点。
なお,引用発明1の「即止め制御が行われる状態」は,通常の場合よりも短時間での識別情報の停止を許容し,かつ予定するものである点からすれば,広義の意味においては”時短状態”の一種とも言い得る。しかしながら,補正発明における「時短状態」が無条件で通常より短時間となるものと特定されていることも含め,相違点として検討する。

<相違点2>
補正発明においては,「特別遊技モード終了後の少なくとも所定回数分」の可変表示ゲームについては,「時短状態」となるのに対して,引用発明1ではそうなっていない点。

<相違点3>
補正発明においては,「特別遊技モード終了後」に設定される,可変表示ゲームの回数制限がない,「通常確率よりも高い確率で前記特別遊技モードが発生する」状態が,「時短状態」も併せ持つ「時短・確変モード」であるのに対し,引用発明1ではそうなっていない点。

<相違点4>
補正発明においては,「特別遊技モード終了後」に設定される「通常確率で前記特別遊技モードが発生する」状態が,
1)「時短状態」のみ「前記所定回数分の可変表示について」であり「通常確率」は無限定の「時短・通常モード」,
2)「時短状態」及び「通常確率」の両者が「前記所定回数分の可変表示について」である「時短・通常モード」
のいずれかであるのに対して,引用発明1ではそうなっていない点。

<相違点5>
補正発明においては,「時短状態」を終了あるいは継続する手段が,「前記特別遊技モード終了後に前記所定回数分の前記可変表示ゲームが終了したとき」に,「設定モードが前記時短・通常モード」である場合には「時短状態」を終了する一方,「設定モードが前記時短・確変モード」である場合には「時短状態」を継続するようになっているのに対して,引用発明1ではそうなっていない点。

<相違点6>
補正発明では,
1)少なくとも<相違点5>における「時短状態」を継続あるいは終了する手段が,
2)あるいは,「遊技機」全体として,
「前記特別遊技モード終了から前記所定回数分の前記可変表示ゲーム終了まで」の期間については,「設定モード」を「遊技者」には知らせず,当該期間中は時短・確変モードであるか時短・通常モードであるかを遊技者に区別させないようになっているのに対して,引用発明1ではそうしているか否かが不明である点。

7.相違点の判断及び補正発明の独立特許要件の判断
(1)相違点1について
引用例1における「即止め制御」についてみると,記載事項キ.に「普図の変動表示ゲームの変動時間を短縮するなどの,いわゆる普図時短制御又は普図即止め制御(或いは両者の併用)」と記載がされており,「時短制御」と「即止め制御」,及び「両者の併用」は,いずれも「変動表示ゲームの変動時間を短縮するもの」と位置づけられている。すなわち,「変動表示ゲームの変動時間を短縮する」性質を有するこれらの処理は,広義の意味において”時短”の処理と言い得るところ,引用例1では当該広義の”時短”処理として,「即止め制御」,該「即止め制御」とは区別可能な「時短制御」,及び,「即止め制御」と「時短制御」とを併用した制御という,3種類の制御を,いずれも採用可能な制御として例示しているものである。この点からすれば,引用例1では,変動表示ゲームの変動時間を短縮する処理について,何らの設計変更の余地もない開示をしているものではない。
また,ここで抜粋した記載は「普図」(当審注,「普通図柄」の省略)についてのものであるが,引用例1はそのような説明を行ったうえで,同記載事項キ.において,「特図の変動についても即止め制御」と言及するものである。そうであれば,遊技機の分野における通常程度の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が,引用例1に接した場合,「特別図柄」について直接明記されているのが「即止め制御」だけであるからといって,これを何らの設計変更の余地もない技術事項であると把握することは到底考えられない。そうではなく,当業者であれば,引用例1における「特別図柄」の「即止め制御」を,「時短制御」や「時短制御」との併用制御等,「変動表示ゲームの変動時間を短縮する」という性質を持つ適宜の制御に置き換えることは,引用例1の記載と技術常識とに照らせば,十分に示唆された事項というほかはない。
さらに,同記載事項キ.には,「普図時短制御とは,普図の変動表示ゲームの変動時間が通常は,例えば60秒程度であるところを6秒程度に短縮する制御」と記載され,「普図即止め制御とは,始動記憶に基づいて普図の変動表示ゲームを行う際に,始動記憶の発生から所定時間(例えば6秒)経過したものに対しては,変動時間を短縮(例えば2秒)して即時に普図を停止させる制御」とも記載されている。この記載からすれば,通常の変動時間が「60秒」程度の場合に,「時短制御」ではこれを「6秒」程度に短縮すること,及び,「即止め制御」では「始動記憶の発生」から「6秒」経過したものを「2秒」の変動時間とすることが想定されている。ここで,「始動記憶の発生」とは,変動表示ゲームを開始する機会の獲得であり,先の変動表示ゲームの終了まで,後続して獲得した当該機会を保持することが「始動記憶」であることが,技術常識から明らかである。そうであれば,上述引用例1の「即止め制御」の記載は,通常の変動時間である「60秒」の変動表示ゲームを行わせつつ,「60秒」の変動表示ゲームが終了しないうちに次の始動記憶があった場合について,変動表示ゲームを「2秒」に短縮するというよりは,むしろ「時短制御」によって短縮した「6秒」の変動表示ゲームを行わせている状態において,該短縮した「6秒」の変動表示ゲームが終了する前に次の始動記憶があった場合に,変動表示ゲームの時間をさらに短縮して「2秒」にすることを示唆している。
すなわち,引用例1における「即止め制御」は,前述した「始動記憶の発生から所定時間(例えば6秒)経過したものに対しては」という記載だけを切り出せば,変動表示ゲームの時間を条件付きで短縮するような記載となっているとともに,「特別図柄」について記載される「即止め制御」を,それ自体がそのままで補正発明における「無条件」の「時短状態」と同一であると言うことはできない。けれども,「即止め制御」に関して引用例1に記載された事項の総合からすれば,変動時間を短縮することについて,「即止め制御」を該「即止め制御」のような条件記載のない「時短制御」に置き換えること,及び,条件付けのない「時短制御」を行う状態においてさらに条件付で「即止め制御」を行う併用処理に置き換えることは,単に例示された変形を採用する設計事項であるのみならず,引用例1の記載自体に強く示唆された事項と言うべきである。
したがって,引用発明1において,特別図柄の変動時間が「少なくとも場合により通常よりも短縮される即止め制御が行われる状態」を,上述のように条件付けのない「時短制御」がされる状態,あるいは,当該「時短制御」がされたうえで「即止め制御」によるさらなる短縮が併用される状態とすることで,補正発明における「無条件で前記識別情報が通常の場合よりも短時間で停止する時短状態」とし,相違点1に係る補正発明の構成を得ることは,設計事項であるとともに,想到困難性がない。

(2)相違点2について
(2-1)「特別遊技モード終了後」について
引用発明1は遊技上の状態変化として,特別図柄の変動時間が「通常よりも短縮されない状態」と,「即止め制御」が行われる状態とを有している。後者の「状態」を,変動時間が無条件で通常よりも短縮される状態とすることが,設計事項であるとともに,引用例1自体において強く示唆されていることは,先に<相違点1>について述べたとおりである。
ここで,引用例1では,上述した特別図柄の変動時間が短縮される状態の始期と終期とについて,記載事項キ.に「例えば特図の変動表示ゲームが50回行われるまでの期間だけ」という例示があるのみに任されている。
しかしながら,たとえば特開2000-245925号公報には,「【従来の技術】従来技術として,例えば第1種パチンコ機では,大当たり遊技終了後に,特別図柄と普通図柄の変動時間を短縮すること(以下「時短」という。)を行うものがある。この様なパチンコ機は,主に以下の2つのタイプに分けられる。○1時短回数を100回,50回,10回等から1つを選択して決定し,決定した時短回数を表示画面上に表示するとともに,表示した回数だけ時短させる。○2ソフトウエア上で時短回数を決定するが,決定した時短回数を報知せず,遊技者には知らせない。例えば,時短回数が常に一定であったり,特別図柄によって決まっているものは,特に時短回数を報知しない。」(段落【0002】)との記載がある。また,たとえば特開平11-319234号公報には,「(b)上記実施の形態では,大当たり図柄に応じて通常モードか時短モードかが決定されるようにしたが,そのようなモードの切替を行わないこととしてもよい。また,これに代えて,或いはこれに加えて,他のモード(確率変動モード)等を導入することとしてもよい。なお,確率変動モードにおいては,上記時短モードの事項に加え,大当たり期待値が通常モードに比べて高くなるという特典が付与される。」(段落【0085】)との記載,及び,「(d)時短モードとしては,次回の大当たり時まで継続されるようにしてもよいし,図柄17A?17H,17Kの予め定められた所定回転変動回数だけ継続され,その後通常モードに切り替えられるようにしてもよい。また,時短モードが選択された場合には,大当たり状態が2回又はそれ以上発生するまで,当該時短モードが継続されるようにしてもよい。さらに,確変モードについても上記と同様のことがいえる。」(段落【0088】)との記載がある。これらの記載からも明らかなように,大当たり遊技の終了後を時短状態の始期とすることは,従来からありふれた設定手法に過ぎない。
そして,引用発明1において,特別図柄の変動時間が短縮される状態の始期を,大当りの特別遊技が終了した後とすることは,上述した従来からありふれた設定手法を単に採用するだけの事項であり,設計事項というほかはない。
すなわち,相違点2に係る補正発明の構成のうち,「特別遊技モード終了後」を「時短状態」の始期とし,同時点から何回かの可変表示ゲームを「時短状態」の対象とする部分を得ることは,引用発明1において単なる設計事項である。

(2-2)「少なくとも所定回数分の前記可変表示ゲーム」について
引用例1のそもそもの課題は,先に「5.(1)」でみたように,大当り終了後において,次に大当りとなる確率が通常の状態であることを直ちに遊技者が認識した場合,その時点で遊技意欲を失ってしまうことである。引用例1では,そのような課題を解決するため,次に大当りとなる確率が通常の状態であるか,それとも通常とは異なる高い状態である確率変動状態であるかについての遊技者の認識を,大当り終了後の所定期間が経過するまで遅らせることが,目的とされている。そのために引用発明1では,「特別図柄の確率変動状態」に「普通図柄の確率変動状態」を伴わせることを,遊技者に視認される変化から間接的に特別図柄の確率変動状態であるか否かを認識させるものとして,避けている。
ここで,特別図柄の変動時間が短縮される状態についてみれば,特別図柄の変動表示は遊技者に視認されるのであるから,何回か変動表示を行えば,変動時間についての状態変化が生じたことは遊技者に認識されることが明らかである。そのことは,たとえば前述特開2000-245925号公報に,「実際には,時短の場合は,図柄を2,3回変動させれば時短モードになったこと自体は分かる」(段落【0003】)と記載されていることからしても,明白である(以下,「技術常識」という)。
上述した引用例1の課題,及び技術常識に照らせば,(2-1)に検討した如く,引用発明1において,特別図柄の変動時間短縮状態の始期を大当り遊技終了後とするに際して,少なくとも確率変動状態であるか否かについて遊技者の認識を許すより前の期間においては,確率変動状態と通常状態とで,視認可能な変動時間短縮状態の有無について相違を設けることができない。また引用発明1においては,確率変動状態であるか否かの認識を遊技者に許すタイミングは,固定であってもランダムであってもよいが,大当りの終了後の特別図柄変動回数が,5以上の所定の実行回数になった時点である。そうであれば,引用発明1における上述所定の実行回数となるより前の,可変表示ゲームの終了まで,すなわち,大当りの特別遊技状態終了後少なくとも4以上の所定回数の可変表示ゲームについては,確率変動状態であるか通常確率の状態であるかを問わず,一律に,特別図柄の変動時間が短縮される状態を付与することが,最も単純な選択である。
すなわち,引用発明1を出発点とする場合には,相違点2に係る補正発明の構成のうち,「少なくとも所定回数の前記可変表示ゲームについて」時短状態とする部分についても,自然な選択であり,設計事項というほかはない。

(2-3)相違点2の小括
したがって,「特別遊技モード終了後」の「少なくとも所定回数分の前記可変表示ゲーム」については,確率変動状態であるか否かを問うことなく「時短状態」とすること,すなわち,相違点2に係る補正発明の構成を得ることは,引用発明1を出発点とする場合,上述の技術常識も勘案すれば,総じて設計事項というほかはない。

(3)相違点3,4,5について
相違点3,4,5については,密接に関連するので,一連の検討を行う。ただし,相違点3,4,5の各々に係る構成部分毎に,小括する。

(3-1)引用発明1の「報知」について
まず,出発点となる引用発明1の「報知」について,引用例1の記載が示唆するところを検討する。
先に「5.(1)」でみたように,引用例1の目的は,次に大当りとなる確率が通常の状態であるか,それとも通常とは異なる高い状態である確率変動状態であるかの区別に関して,遅延された報知により,大当り終了後の所定期間遊技者の認識を遅らせることである。
引用発明1では,上述の遅延された報知について,「現在のモード」を「表示」するという手法をとっている。けれども,大当りが終了してから所定期間の遅延の後に遊技者の認識を許すという,引用例1の目的が達せられるのであれば,報知の手法が「表示」以外であってもかまわないことは明らかである。また引用例1では,記載事項コ.に「通常モード突入が判明したときの遊技者の脱力感を払拭する」との記載があり,また記載事項サ.に「通常モードの場合には・・・,いつまでたっても確変モード/通常モードの表示を行わない」との記載があるように,遅延された報知についても,当該報知による遊技者の脱力感を和らげることが記載されている。すなわち,遅延された報知について,これを婉曲的に和らげられたものとすることは,引用例1に接した当業者であれば,十分に示唆された事項というべきである。
ここで,先に(2-2)で検討したとおり,引用発明1を出発点とした場合,特別図柄の変動時間を短縮する状態の付与について,少なくとも特別遊技状態が終了してから,確率変動状態であるか否かの認識を遊技者に許すまでの所定期間は,確率変動状態であるか否かによって相違を設けることができない。しかしながら,当該所定期間が経過した後には,確率変動状態であるか否かの認識を遊技者に許して良いのであるから,そのような束縛はない。また,確率変動状態と通常確率の状態とに対して,遊技者に視認可能な状態の相違を併せ持たせることが,逆に確率変動状態であるか否かの認識を遊技者に許す機能を奏することは,引用例1でも明確に認識されている。
これらのことからすれば,(2)での検討のとおり,特別遊技状態の終了後少なくとも所定回数の可変表示ゲームが終了するまでの間,一律に変動時間を短縮する状態を付与した後において,当該期間の経過後については,確率変動状態と通常確率の状態とで,特別図柄の変動時間の短縮処理の有無について相違を設け,視認上の変動時間の相違から,婉曲的に和らげられた形で遊技者に認識を許すことは,当業者であれば想到容易である。
なお,引用発明1では,先に認定したとおり,確変状態か通常状態かを「遊技者以外に報知する手段」や「遊技者には識別できないような手段」の存在を許容する一方,遊技者にこれが間接的に認識できるような手段は設けていない。しかしながら,引用例1に記載された具体的な発明たる引用発明1が,それ自体はある特定の手段を備えていないからといって,出発点とした引用発明1に当該特定の手段を備える改変の想到容易性については,引用例1に記載される課題や目的,及び記載または暗示される示唆,並びに技術常識等に照らして,改めて検討されるべき事項である。そして,そのような検討に従えば,先に述べたとおり,少なくとも確率変動状態であるか否かの認識を遊技者に許して良い期間に限っては,引用発明1において,遊技者に当該認識を間接的に許す手段を設ける改変は想到容易である。

(3-2)相違点3について
先の(3-1)の検討に従えば,引用発明1を出発点として,特別遊技状態の終了後少なくとも所定回数の可変表示ゲームに,一律に変動時間を短縮する状態を付与した後において,当該所定期間の経過後については,確率変動状態と通常確率の状態とで,視認可能な特別図柄の変動時間の短縮処理の有無について相違を設けることは,当業者であれば想到容易である。
その際,上記所定期間の経過後において,上述の相違を設けるには,確率変動状態と通常確率の状態とのうち,一方の状態では特別図柄の変動時間の短縮処理を継続させ,他方の状態では当該短縮処理を終了させることが,最も簡単であることは明らかである。
加えて,特開2002-66033号公報(以下,「引用例2」という。)の段落【0027】に,「またさらに,この実施例の遊技機1は確率変動機能及び時間短縮機能を備えた機種であり,大当たり成立時における大当たり図柄組合せが確変及び時短図柄である‘赤1’,‘赤2’,‘赤3’,‘赤4’,‘赤5’,‘赤6’,‘赤7’の何れかのぞろ目であるときには,大当たり(特別遊技状態)の発生に加えて,大当たり終了後に確率変動及び時間短縮が生じ,すなわち次回の大当たり発生確率が平時における通常遊技状態(低確率状態,1/315.5)よりも高い確率変動状態(高確率状態,5/315.5)に移行されるとともに,特別図柄が変動開始してから確定表示されるまでの時間が通常より短くなり,該確率変動状態及び時間短縮状態は次回の大当たりまで継続するようになっている。また,大当たり成立時における大当たり図柄組合せが通常図柄である‘青1’,‘青2’,‘青3’,‘青4’,‘青5’,‘青6’,‘青7’の何れかのぞろ目であるときには,大当たり終了後は,通常遊技状態(低確率状態,1/315.5)とされ,時間短縮も行われず,該通常遊技状態は次回の大当たりまで継続するようになっている。」との記載があるように,大当り終了後,次の大当りまで継続する特別図柄の確率変動状態に対して,その全期間について,特別図柄の変動時間が短縮される状態を併せ持たせるようにすることは,変動時間短縮状態の設定例として公知のものである(以下,「引用発明2」という)。なお,引用発明2の如き変動時間短縮状態の設定例は,たとえば先に(2-1)で抜記した特開平11-319234号公報の段落【0085】及び段落【0088】の記載からも明らかなように,実際上は周知技術と言い得るほどに任意採用性の高いものである。
そうであれば,上に述べたように,引用発明1を出発点とし,(2)の検討の如く相違点2に係る補正発明の構成を得たうえで,「少なくとも所定回数分」の可変表示ゲームより後には,確率変動状態と通常確率の状態とで特別図柄の変動時間を相違させるに際して,引用発明2の如く,確率変動状態の側に対して,その全期間にわたって可変表示ゲームの回数制限なく,変動時間が短縮される状態を併せ持たせることは,当業者であれば想到容易である。
そして,そうした際には,特別遊技状態の終了後に確率変動状態を設定する場合には,確率変動状態及び変動時間短縮状態の両状態とも,次なる大当り時の再設定まで継続することとなる。そうであれば,引用発明1において,特別遊技状態終了後に状態を設定する時点で,確率変動状態を選択する際には,確率変動状態及び特別図柄の変動時間短縮状態の両者について可変表示ゲームの回数制限がない状態モードを設定することは,設計事項程度である。
すなわち,相違点3に係る補正発明の構成を得ることは,引用発明1を出発点として,引用例1の記載,技術常識,及び引用発明2に基づく場合,当業者であれば想到容易である。

(3-3)相違点4について
上の(3-2)までの検討に従えば,特別遊技状態の終了後に,通常確率の状態を選択する場合には,特別図柄の変動時間短縮を一律に付与する所定回数分の可変表示ゲームについては,通常確率かつ変動時間の短縮状態とし,それより後の可変表示ゲームについては,通常確率かつ通常の変動時間の状態とすることとなる。
そうであれば,引用発明1において特別遊技状態終了後に状態を設定する時点で,通常確率の状態を選択する際に,
1)所定回数分の可変表示ゲームについて変動時間短縮状態となるとともに,当該回数制限なく通常確率状態となる状態モードを設定させること,
あるいは,
2)総じて状態変化のない所定回数分の可変表示ゲームについて,通常確率かつ変動時間短縮状態となる状態モードを設定させること,
は,いずれも設計事項程度である。
すなわち,既に述べた(3-2)までの検討に従う場合,相違点4に係る補正発明の構成を得ることは,1),2)のいずれと解した場合にも,設計事項程度である。

(3-4)相違点5について
上の(3-3)までの検討に従えば,引用発明1において,変動時間の短縮状態を終了又は継続させる手段に,当該状態を終了させるか継続させるかの分かれ目となる時点,すなわち特別遊技状態終了後に所定回数分の可変表示ゲームが終了した時点において,変動時間短縮状態を終了すべき状態モードである場合には同変動時間短縮状態を終了させ,同状態を継続すべき状態モードである場合には継続させることは,設計事項程度である。
すなわち,既に述べた(3-3)までの検討に従えば,相違点5に係る補正発明の構成を得ることは,設計事項程度である。

(3-5)相違点3,4,5のまとめ
したがって,引用発明1を出発点とする場合,総じて相違点3,4,5に係る補正発明の構成を得ることは,引用例1の記載,技術常識,及び引用発明2に基づいて,当業者であれば想到容易である。

(4)相違点6について
引用発明1において,先に検討したとおり上記相違点2及び5の構成をとる場合,
1)変動時間の短縮状態を継続あるいは終了させる手段は,特別遊技状態の終了から所定回数分の可変表示ゲームが終了するまでの期間は,一律に同変動時間短縮状態の継続させるのみである。すなわち,当該手段がその期間中に,遊技者に対して設定モードを知らせ,確率変動と変動時間短縮の両者がなされる状態であるか,あるいは,変動時間短縮のみがされる状態であるかについて,遊技者に区別をさせることはない。
2)また,遊技機全体としてみた場合にも,引用発明1はもともと遅延された報知のための手段を除き,遊技者に対してモードを知らせる手段を有していない。加えて,遊技者でない者に対してモードを知らせる手段の追加あるいは改変は広く許容されている一方,遊技者にモードを知らせる手段の追加あるいは改変については,引用例1のそもそもの課題及び目的を損なわない範囲でなければならない。そして,これまでの検討のとおり上記相違点2?5の構成をとる場合,確率変動状態でないことを遊技者に知らせたときの脱力感を減じる観点からすれば,変動時間短縮処理の終了または継続によって婉曲的に遊技者の認識を許すより前に,直接的な表示あるいは遊技機上のその他の手段によって遊技者にモードを知らせることを避けることは,設計事項程度である。すなわち,引用発明1がもともと有するモードの直接表示については,これを維持するとしても,変動時間短縮処理の終了又は継続により間接的に遊技者の認識を許した後とすること,及び,当該変動時間短縮処理の継続あるいは終了より前に遊技者にモードを知らせる手段は,遊技機上に新たに設けないことが,自然な選択である。
したがって,相違点6に係る補正発明の構成を得ることは,いずれと解しても設計事項程度である。

(5)補正発明の独立特許要件の判断
相違点1?6に係る補正発明の構成を得ることは,上述のとおりいずれも想到容易であり,そうしたことによる作用効果も,引用例1に示される課題と目的,及びそこにおける記載と示唆からすれば,予想された範囲を超える格別なものと認めることはできない。
したがって補正発明は,引用発明1,引用発明2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。
すなわち,本件補正は,平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反している。

(6)予備的考察
なお,請求人は,補正発明においてさらに,「かつその後も設定モードを明示的に報知することなく,」という事項を追加すれば,特許法29条2項の規定は満たすとも主張しているが,補正発明は先に認定したとおりのものであり,請求人の主張は単なる補正案に関する意見と扱うほかはない。
また,たとえそのような補正案について予備的に検討したとしても,先に(4)の2)で述べたことに加えて,変動時間短縮処理の終了または継続により,婉曲的に確率変動状態であるか否かについて遊技者の認識を許した場合,引用例1が目的とした遅れた報知は,引用例1の課題を解決可能な程度に,すなわち遊技者に認識される程度に,実施されていることとなる。そうであれば,引用発明1がもともと遅れた報知のために有していた,モードの直接的な表示については,これを排することも,想到困難性があると言うことはできない。
すなわち,当該補正案によっても,特許法29条2項の規定が満たされると判断することはできない。


[補正の却下の決定のむすび]

以上述べたとおり,本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反しているので,同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により,却下されなければならない。
よって,補正の却下の決定の結論のとおり決定する。



第3 本件審判請求についての判断

1.本願発明の認定
平成20年8月18日付け手続補正は当審において却下されたから,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成20年1月21日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲における,【請求項1】に記載された事項によって特定されるべきものとなる。その記載は,「第2 補正の却下の決定」の「1.補正内容」において,(補正前)【請求項1】として示したとおりである。

2.引用刊行物記載の発明の認定,本願発明との対比及び判断
本願出願前に頒布された刊行物である,原査定の拒絶の理由に引用された引用例1には,「第2 補正の却下の決定」の「5.引用刊行物記載の発明の認定」において認定したとおりの引用発明1が記載されている。
本願発明は,「第2 補正の却下の決定」の「2.補正事項及び補正目的」で述べたとおり,補正発明が有する「時短状態」において,通常の場合よりも短時間での識別情報の停止が「無条件で」行われるとの限定を有さないものである。
そのため,本願発明と引用発明1との一致点は「第2 補正の却下の決定」の「6.」で検討したと同様となる。また,両発明の相違点も,補正発明の場合の相違点1が次の相違点1’となることを除き,「第2 補正の却下の決定」の「6.」で検討したと同様となる。

<相違点1’>
本願発明においては「時短状態」を用いるとともに,該「時短状態」は,通常の場合よりも短時間で識別情報が停止するものであるのに対し,引用発明1では「即止め制御が行われる状態」を用いている点。

しかしながら,引用発明1の「即止め制御が行われる状態」は,通常の場合よりも短時間での識別情報の停止を許容し,かつ予定するものであるから,広義の意味においては”時短状態”の一種とも言い得る。また,「第2 補正却下の決定」の「7.(1)」において,補正発明との相違点1について述べたとおり,同じく引用例1に記載される「時短状態」をこれに換えて用いることは,設計事項である。そのため,引用発明1と本願発明との上記相違点1’は,実際上の相違点ではないか,相違点としても設計事項程度を越えるものではない。
そして,その他の相違点についても,「第2 補正却下の決定」の「7.(2)」?「7.(4)」において述べたとおりである。なお,そこで言及した引用例2も,引用例1と同様,原査定の理由で引用されたものである。

すなわち,本願発明は,原査定の理由で引用された引用例1及び2に記載された,引用発明1及び引用発明2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により,特許を受けることができない。


第4 むすび

本件補正が却下されなければならず,本願発明が原査定の理由のとおり特許を受けることができない以上,本願は拒絶せざるを得ない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-18 
結審通知日 2009-11-24 
審決日 2009-12-07 
出願番号 特願2003-101605(P2003-101605)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 572- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小河 俊弥  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 川島 陵司
有家 秀郎
発明の名称 遊技機  
代理人 辰巳 忠宏  

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