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審決分類 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1210884
審判番号 不服2007-1297  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-15 
確定日 2010-01-27 
事件の表示 特願2004-270971「電子画像装置における機能を動的に更新するシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月14日出願公開、特開2005-100396〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件の出願は、1998年2月26日を国際出願日とする出願である特願2000-534000号(以下「先の出願」と記す。)の一部を新たな特許出願として、平成16年9月17日に出願(パリ条約による優先権主張1998年2月26日,アメリカ合衆国)されたものであり、
平成17年6月22日付けで審査請求がなされると共に、
同日付けで手続補正書が提出され、
平成18年2月15日付けで拒絶理由通知(発送日:平成18年2月21日)がなされ、
同年7月5日付けで意見書が提出されると共に、同日付けで手続補正書が提出され、
同年9月26日付けで拒絶査定(発送日:平成18年10月17日)がなされ、
平成19年1月15日付けで審判請求がされると共に、
同年2月7日付けで手続補正書が提出されたものである。
なお、平成19年3月15日付けで特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、平成21年3月5日付けで当該報告に対する意見を求める旨の審尋(発送日:平成21年3月10日)がなされ、これに対して同年6月10日付けで回答書が提出されている。



第2.平成19年2月7日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年2月7日付けの手続補正(受付番号:50700240437)を却下する。


[理由]
1.本件補正の内容
平成19年2月7日付けの手続補正(以下「本件補正」と記す。)は、特許請求の範囲について、下記の<補正前の特許請求の範囲>に示すものから、下記<補正後の特許請求の範囲>に示すものに補正しようとするものである。

<補正前の特許請求の範囲>
「【請求項1】
新しいソフトウェア機能が記憶されている着脱式メモリデバイスを挿入可能な電子画像装置が、動作中にソフトウェア機能を更新するシステムであって、
使用中にメニューを編成できる機能を有するプロセッサと、
前記着脱式メモリデバイスに記憶されている新しいソフトウェア機能を検出することによって、使用中にメニューを編成できる機能が作動してソフトウェア機能を更新するメニュー編成プログラムと、
前記着脱式メモリデバイスから得られた機能情報を前記編成プログラムに提供するホットマウント/アンマウントコードと、を備え、
前記電子画像装置が、新しいソフトウェア機能を記憶するためのメニューを表示している場合は、同メニューは、 使用中にメニューを編成できる機能が作動して再表示されて、同メニューに新しいソフトウェア機能が付加される、システム。
【請求項2】
前記使用中にメニューを編成できる機能がメニュー位置情報保存領域およびプログラム位置情報保存領域を有する請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記着脱式メモリデバイスが前記電子画像装置に挿入されるかあるいは前記電子画像装置から取り出された場合に前記ホットマウント/アンマウントコードに信号を送る、ディスクドライバをさらに備える請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
機能情報の提供が、電子画像装置のプロセッサが着脱式メモリ中に記憶されている機能項目をホットマウント/アンマウントコードによってリスト形式にした、ディスクファイルリストの作成を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記使用中にメニューを編成できる機能に列挙されたメニュー項目を表示するためのメニュー・ダイアログ管理プログラムをさらに備える請求項2に記載のシステム
【請求項6】
前記メニュー・ダイアログ管理プログラムが前記ソフトウェア機能を開始する請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記使用中にメニューを編成できる機能がデフォルトなメニューを編成できる機能により最初にロードされる請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記電子画像装置がデジタルカメラである請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
着脱式メモリデバイスを挿入可能な電子画像装置において、動作中にソフトウェア機能を更新する方法であって、
前記電子画像装置中のプロセッサ中の、使用中にメニューを編成できる機能に、該着脱式メモリデバイスのソフトウェアの機能に関連する情報を編成する工程と、
該着脱式メモリデバイスによって供給される、新しいソフトウェア機能を有するメニューを編成できる機能により、プロセッサ中の前記使用中にメニューを編成できる機能を更新する工程と、
該着脱式メモリデバイスから得られた機能情報をホットマウント/アンマウントコードによって前記編成プログラムに提供する工程と、
前記電子画像装置が、新しいソフトウェア機能を含むためのメニューを表示している場合は、同メニューは、更新された使用中にメニューを編成できる機能に沿って再表示されて、同メニューに該新しいソフトウェア機能を付加する工程と、から成る方法。
【請求項10】
前記使用中にメニューを編成できる機能がメニュー位置情報保存領域およびコード位置情報保存領域を有する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ホットマウント/アンマウントコードを利用することによって、前記着脱式メモリデバイス中に記憶された機能情報を前記メニュー構成コードに供給する工程をさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記着脱式メモリデバイス前記電子画像装置に挿入されるかあるいは前記電子画像機器から取り出された場合に前記ホットマウント/アンマウントコードに信号を送る工程をさらに含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
機能情報を提供する工程が、電子画像装置のコンピュータが着脱式メモリ上中に記憶された機能項目をホットマウント/アンマウントコードによってリスト形式にした、ディスクファイルリストを作成する工程を含む請求項11に記載の方法。
【請求項14】
メニュー・ダイアログ管理プログラムを使用して、前記使用中にメニューを編成できる機能に列挙されたメニュー項目を表示する工程をさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記メニュー・ダイアログ管理プログラムが前記ソフトウェアの機能を開始する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
着脱式メモリデバイスを挿入可能な電子画像装置において、動作中にソフトウェア機能を更新するためのプログラム命令を有するコンピュータ読み取り可能な媒体であって、
前記電子画像装置に接続された使用中にメニューを編成できる機能内に、ソフトウェア機能に関連する情報を編成する工程と、
前記着脱式メモリデバイス中に記憶された新しいソフトウェア機能を有するメニュー編成プログラムにより前記使用中にメニューを編成できる機能を更新する工程と、
前記着脱式メモリデバイスから得られた機能情報をホットマウント/アンマウントコードによって前記編成プログラムに提供する工程と、
前記電子画像装置が、新しいソフトウェア機能を含むためのメニューを表示している場合は、同メニューは、更新された使用中にメニューを編成できる機能に沿って再表示されて、同メニューに該新しいソフトウェア機能を付加する工程と、を実行することにより前記ソフトウェア機能を動作中に更新する記録媒体。
【請求項17】
着脱式メモリデバイスを挿入可能な電子画像装置において、ソフトウェア機能を動作中に更新するシステムであって、
該着脱式メモリデバイスを該電子画像装置に接続して、使用中にメニューを編成できる機能中にソフトウェア機能に関する情報を編成する手段と、
該着脱式メモリデバイスによって供給される新しいソフトウェア機能を有するメニュー編成プログラムにより前記使用中にメニューを編成できる機能を更新する手段と、
該着脱式メモリデバイスから得られた機能情報をホットマウント/アンマウントコードによって前記編成プログラムに提供する手段と、
前記電子画像装置が、新しいソフトウェア機能を含むためのメニューを表示している場合は、同メニューは、更新された使用中にメニューを編成できる機能に沿って再表示されて、同メニューに該新しいソフトウェア機能を付加する手段と、からなるシステム。」

<補正後の特許請求の範囲>
「【請求項1】
新しいソフトウェアが記憶されている着脱式メモリデバイスを挿入可能なデジタルカメラが、動作中にソフトウェアを更新して新しいメニューを表示するシステムであって、
使用中にメニューを再編成できる機能を有するプロセッサと、
前記着脱式メモリデバイスに記憶されている新しいソフトウェアを検出することによって、使用中にメニューを再編成できる機能が作動してソフトウェアを更新するメニュー編成プログラムと、を備え、
前記着脱式メモリデバイスから得られた機能情報を前記編成プログラムに提供するホットマウント/アンマウントコードをさらに備え、
前記デジタルカメラがメニューを表示している場合は、同メニューに新しいソフトウェアが付加されて表示される、システム。
【請求項2】
前記使用中にメニューを再編成できる機能がメニュー位置情報保存領域およびプログラム位置情報保存領域を有する請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記着脱式メモリデバイスが前記デジタルカメラに挿入されるかあるいはデジタルカメラから取り出された場合に前記ホットマウント/アンマウントコードに信号を送る、ディスクドライバをさらに備える請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
機能情報の提供が、デジタルカメラのプロセッサが着脱式メモリ中に記憶されている機能項目をホットマウント/アンマウントコードによってリスト形式にした、ディスクファイルリストの作成を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記使用中にメニューを再編成できる機能に列挙されたメニュー項目を表示するためのメニュー・ダイアログ管理プログラムをさらに備える請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記メニュー・ダイアログ管理プログラムが前記ソフトウェアを開始する請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記使用中にメニューを再編成できる機能がデフォルトなメニューを編成できる機能により最初にロードされる請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
着脱式メモリデバイスを挿入可能なデジタルカメラにおいて、動作中にソフトウェアを更新する方法であって、
前記デジタルカメラ中のプロセッサが、該着脱式メモリデバイス中に格納されているプログラム命令のセットを読み出すことによって、使用中に、ソフトウェアに関連する情報を再編成する工程と、
該着脱式メモリデバイスによって供給される、新しいソフトウェアを有するメニューを再編成できる機能により、プロセッサ中の前記使用中にメニューを再編成できる機能を更新する工程と、
前記デジタルカメラが、新しいソフトウェアを含むためのメニューを表示している場合は、同メニューは、更新された使用中にメニューを再編成できる機能に沿って再表示されて、同メニューに新しいソフトウェアを付加する工程と、から成る方法。
【請求項9】
前記使用中にメニューを再編成できる機能がメニュー位置情報保存領域およびコード位置情報保存領域を有する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ホットマウント/アンマウントコードを利用することによって、前記着脱式メモリデバイス中に記憶された機能情報を前記メニュー構成コードに供給する工程をさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記着脱式メモリデバイス前記デジタルカメラに挿入されるかあるいは前記デジタルカメラから取り出された場合に前記ホットマウント/アンマウントコードに信号を送る工程をさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
機能情報を提供する工程が、デジタルカメラのコンピュータが着脱式メモリ中に記憶された機能項目をホットマウント/アンマウントコードによってリスト形式にした、ディスクファイルリストを作成する工程を含む請求項10に記載の方法。
【請求項13】
メニュー・ダイアログ管理プログラムを使用して、前記使用中に、再編成されたメニュー項目を表示する工程をさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記メニュー・ダイアログ管理プログラムが前記ソフトウェアの機能を開始する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
着脱式メモリデバイスを挿入可能なデジタルカメラにおいて、動作中にソフトウェアを更新するためのプログラム命令を有するコンピュータ読み取り可能な媒体であって、
前記デジタルカメラに接続された、使用中にメニューを再編成できる機能内に、ソフトウェアに関連する情報を編成する工程と、
前記着脱式メモリデバイス中に記憶された新しいソフトウェアを有するメニュー編成プログラムにより前記使用中にメニューを再編成できる機能を更新する工程と、
前記デジタルカメラ中のプロセッサが、同メニューに新しいソフトウェアを付加してメニューを表示する工程と、を実行することにより前記ソフトウェアを動作中に更新する記録媒体。
【請求項16】
着脱式メモリデバイスを挿入可能なデジタルカメラにおいて、ソフトウェア機能を動作中に更新するシステムであって、
該着脱式メモリデバイスを該デジタルカメラに接続して、使用中にメニューを再編成できる機能中にソフトウェアに関する情報を編成する手段と、
該着脱式メモリデバイスによって供給される新しいソフトウェアを有するメニュー編成プログラムにより前記使用中にメニューを再編成できる機能を更新する手段と、
前記デジタルカメラが、同メニューに該新しいソフトウェアを付加してメニューを表示する手段と、からなるシステム。」


2.本件補正の目的についての検討
(1)本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1に対応するものであると認められ、本件補正は、補正前の請求項1の「同メニューは、 使用中にメニューを編成できる機能が作動して再表示されて、同メニューに新しいソフトウェア機能が付加される」を「同メニューに新しいソフトウェアが付加されて表示される」に補正しようとする補正事項を含むものである。
該補正事項について検討するに、本件補正前の請求項1に係る発明は「同メニュー」の表示が「使用中にメニューを編成できる機能が作動して再表示され」るものに限定されていたのに対し、本件補正後の求項1に係る発明は当該限定がなされていないものとなっているのであるから、特許請求の範囲を拡張または変更するものであり、「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。
また、補正前の「使用中にメニューを編成できる機能が作動して再表示され」なる限定が、明りょうで無い記載で有るとも認められず、しかも、原審において、これが明りょうで無い記載で有る旨の拒絶理由通知がなされたわけでもない。従って、上記補正事項は明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)を目的とするものにも該当しない。
さらに、上記補正事項は、請求項の削除を目的とするものにも、誤記の訂正を目的とするものにも該当しない。

(2)本件補正後の請求項8、15は、それぞれ本件補正前の請求項9、16に対応するものであると認められ、本件補正は、補正前の請求項9、16に係る発明を特定するための事項であった「該着脱式メモリデバイスから得られた機能情報をホットマウント/アンマウントコードによって前記編成プログラムに提供する工程」を削除しようとする補正事項を含むものである。
当該補正事項は、発明を特定するための事項を削除するものであるから、特許請求の範囲を拡張または変更するものであり、「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。
そして、上記補正事項は、発明を特定するための事項を削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)を目的とするものにも該当しない。(なお、原審の拒絶査定においては「(D)理由4について・・・<中略>・・・(D-3)請求項9の「ホットマウント/アンマウントコードによって・・・提供する」という記載(なお、「ホットマウント/アンマウントコード」というのはソフトウェアであるから、「ハードウェア資源」ではない)。請求項10?16についても同様。」との指摘がなされているが、これは、特許法第29条柱書きの「発明」に該当しない旨を説明する記載であって、明りょうで無い旨を指摘するものでなないので、この意味からも当該補正事項は明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)を目的とするものに該当しない。)
さらに、上記補正事項は、請求項の削除を目的とするものにも、誤記の訂正を目的とするものにも該当しない。

(3)本件補正後の請求項16は、本件補正前の請求項17に対応するものであると認められ、本件補正は、補正前の請求項17に係る発明を特定するための事項であった「該着脱式メモリデバイスから得られた機能情報をホットマウント/アンマウントコードによって前記編成プログラムに提供する手段」を削除しようとする補正事項を含むものである。
当該補正事項は、発明を特定するための事項を削除するものであるから、特許請求の範囲を拡張または変更するものであり、「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。
そして、上記補正事項は、発明を特定するための事項を削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)を目的とするものにも該当しない。(なお、原審の拒絶査定においては「(D)理由4について・・・<中略>・・・(D-3)請求項9の「ホットマウント/アンマウントコードによって・・・提供する」という記載(なお、「ホットマウント/アンマウントコード」というのはソフトウェアであるから、「ハードウェア資源」ではない)。請求項10?16についても同様。」との指摘がなされているが、これは、請求項17の上記発明特定事項が明りょうでない旨を指摘するものではないので、この意味からも当該補正事項は明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)を目的とするものに該当しない。)
さらに、上記補正事項は、請求項の削除を目的とするものにも、誤記の訂正を目的とするものにも該当しない。

(4)してみると、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号の「請求項の削除」、同法同条同項第2号の「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」、同法同条同項第3号の「誤記の訂正」、同法同条同項第4号の「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」のいずれの目的にも該当しない補正である。

従って、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反する。


3.小結
以上の通りであるので、本件補正は特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下しなければならないものである。

よって、上記補正却下の決定の結論の通り決定する。



第3.本願発明の新規性進歩性について

1.手続きの経緯・本願発明の認定
本願の手続きの経緯の概略は上記第1.記載の通りのものであり、また、平成19年2月7日付けの手続補正は上記第2.のとおり却下された。
従って、本願の請求項1?17に係る発明は、平成18年7月5日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?17に記載された通りのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」と言う。)は、上記第2.1.に補正前の特許請求の範囲の【請求項1】として記載した次の通りのものである。

「新しいソフトウェア機能が記憶されている着脱式メモリデバイスを挿入可能な電子画像装置が、動作中にソフトウェア機能を更新するシステムであって、
使用中にメニューを編成できる機能を有するプロセッサと、
前記着脱式メモリデバイスに記憶されている新しいソフトウェア機能を検出することによって、使用中にメニューを編成できる機能が作動してソフトウェア機能を更新するメニュー編成プログラムと、
前記着脱式メモリデバイスから得られた機能情報を前記編成プログラムに提供するホットマウント/アンマウントコードと、を備え、
前記電子画像装置が、新しいソフトウェア機能を記憶するためのメニューを表示している場合は、同メニューは、 使用中にメニューを編成できる機能が作動して再表示されて、同メニューに新しいソフトウェア機能が付加される、システム。」


2.引用文献の記載内容
原審の拒絶の査定の理由である、平成18年2月15日付け拒絶理由通知書において通知された特許法第29条第2項違反の理由の根拠となった特開平5-289838公報(平成5年11月5日出願公開。以下「引用文献」と記す。)には、下記引用文献記載事項が記載されている。

<引用文献記載事項1>
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 インターフェース画面と、携帯メモリ装置に選択的に記憶されている機能対話に対する使用可能手段とを備えた制御部を設けた画像処理装置のオペレータに所定の機能対話を提示する技法であって、次の段階を含む方法:携帯メモリ装置を装置に挿入して機械制御部で読み取り、
機能対話使用可能手段を明示する対話枠をインターフェース画面に表示し、
1つの使用可能手段を選択するようにオペレータに指示し、そして使用可能手段を画面デスクトップへ移動して、選択された使用可能手段を装置内で定着できるように制御部を自動的に設定する。」

<引用文献記載事項2>
「【0009】要約すると、本発明は、画像処理装置の携帯メモリ装置に選択的に記憶されている装置の所定の機能に関する画面対話をオペレータに提示する技法に関するものであり、携帯メモリ装置に所定の機能に関する画面対話を付与する段階と、オペレータが前記携帯メモリ装置を装置に挿入して装置制御部で読み取る段階と、装置制御部に応答して特定の対話枠をインターフェース画面に表示する段階と、選択された画面対話の導入を確認するようにオペレータに指示する段階と、選択された画面対話を装置内で定着できるように制御部NVMを自動的に設定する段階とを有している。さらなる特徴は、画面対話を別の装置に導入することを禁止できるように携帯メモリ装置のデータを自動的に変更することである。」

<引用文献記載事項3>
「【0035】作用を説明すると、どの特定の機能を使用可能にするかを識別してこれらの特定の機能を画面51に表示し始めるため、制御部にフラッグインジケータのメモリ構成表が設けられている。スペース101で示されているようにいずれの編集機能も使用可能になっていない時で、選択組の編集機能を導入したい場合、メモリカード102をメモリカードスロット104に挿入する。メモリカードには、ユーザインターフェース及び装置制御部が読み取って、画面デスクトップ51Aへの特定の編集機能対話の導入を開始させるコード化データが含まれている。導入とは、機能識別がおそらくは持久性であるメモリの構成表に付け加えられて、装置の始動時に走査されてデスクトップ上で使用可能になることを意味している。」

<引用文献記載事項4>
「【0036】メモリカード102を挿入すると、装置制御部がカードを検出して、図6に示されているポップアップウィンドウまたは枠105を与える。図6に示されている上記目的のポップアップ枠105には、マーカ編集機能106、手書き編集108及び創造的編集機能110だけが含まれており、また機能を導入するためにボタンを押してくださいという適当なテキストメッセージが含まれている。これらは、カード102で画面51のデスクトップ51Aへ移すことができるようになる機能である。カード102は1つまたは幾つかの機能の導入に用いることができ、1つのカードにいくつの機能を設けることができるようにするかは選択の問題であることに注意されたい。」

<引用文献記載事項5>
「【0037】図示の実施例において、カード102をスロット104に入れると、オペレータはマーカ、手書き及び創造的の3つの編集機能を選択してデスクトップに導入することができるようになる。ある特定の編集機能ボタンを押すと、その特定機能がディスプレイ51のデスクトップ51Aへ移動する。」

<引用文献記載事項6>
「【0038】例えば、図7は、オペレータがマーカ編集ボタン106を押してマーカ編集機能106Aを画面のディスクトップへ移動させたところを示している。その結果、制御部は、装置がマーカ編集機能を含んでいることを持久メモリの構成表に書き込む。これによって、装置の始動時に、オペレータはデスクトップ51Aでマーカ編集機能を使用することができるようになる。同時に、その機能がメモリカードから抜き取られたという印がメモリカードに付けられる。これは、同じカードが別の装置のデスクトップに機能対話を導入するために使用されないようにする好適な方法である。この安全保護及び制御方法は、個別の位置での機能の使用状態を監視することができる。メモリカードの識別及び使用及び特定の装置での機能対話の監査に関して本発明の範囲内で様々な変更例を考えることができることに注意されたい。」

<引用文献記載事項7>
「【0039】図8に示されている例では、オペレータがマーカ編集106、手書き編集108及び創造的編集110のそれぞれの機能対話をマーカ編集106A、手書き編集108A及び創造的編集110Aで示されているように画面51のデスクトップ51Aへ移動している。装置の設置場所によってはすべての編集機能対話ではなく、その設置場所に必要なものだけをカード102から移動させる必要があることに注意されたい。スロット104からメモリカード102を取り出すと、ポップアップ枠またはウィンドウが消えて、図9に示されているように、移動した機能が永久的にデスクトップ51Aで使用可能となる。カード102は監査センタまたは複写センタへ戻して、利用できる装置設置場所での使用可能な装置機能を記録して記録を保持するようにする。」

<引用文献記載事項8>
装置機能のデスクトップへの移動を説明するタッチモニター画面の前面図であって、複数のボタンが表示されているデスクトップ上に、マーカ編集機能、フリーハンド編集及び創造的作業と記載されたボタンと、「メモリカード 応用組込 -応用コピ- を組み込むためにボタンを押してください」というテキストメッセージが含まれているポップアップ枠が表示されているタッチモニター画面の前面図。(【図6】)


3.引用発明の認定

(1)引用文献は上記引用文献記載事項1、2記載のように「携帯メモリ装置」を「挿入」して「画像処理装置」の「制御部」の「設定」をする「技法」を説明するものであるところ、当該「携帯メモリ装置」と「画像処理装置」とで、「画像処理装置」の「制御部」の「設定」をする「方式」が構成されていると言えるものであり、引用文献には「携帯メモリ装置を挿入可能な画像処理装置の制御部の設定をする方式」が記載されていると言える。

(2)そして、上記引用文献記載事項3の「スペース101で示されているようにいずれの編集機能も使用可能になっていない時で、選択組の編集機能を導入したい場合、メモリカード102をメモリカードスロット104に挿入する。」との記載から見て、上記携帯メモリ装置の挿入は、「いずれの編集機能も使用可能になっていない時で、選択組の編集機能を導入したい場合」になされるものである。

(3)そして、上記引用文献記載事項3の「メモリカードには、ユーザインターフェース及び装置制御部が読み取って、画面デスクトップ51Aへの特定の編集機能対話の導入を開始させるコード化データが含まれている。」との記載からみて、上記「上記携帯メモリ装置」は「ユーザインターフェース及び装置制御部が読み取って、画面デスクトップへの特定の編集機能対話の導入を開始させるコード化データ」が記憶されているものである。

(4)また、上記引用文献記載事項3の「メモリカードには、ユーザインターフェース及び装置制御部が読み取って、画面デスクトップ51Aへの特定の編集機能対話の導入を開始させるコード化データが含まれている。」との記載、上記引用文献記載事項4の「メモリカード102を挿入すると、装置制御部がカードを検出して、図6に示されているポップアップウィンドウまたは枠105を与える。図6に示されている上記目的のポップアップ枠105には、マーカ編集機能106、手書き編集108及び創造的編集機能110だけが含まれており、また機能を導入するためにボタンを押してくださいという適当なテキストメッセージが含まれている。これらは、カード102で画面51のデスクトップ51Aへ移すことができるようになる機能である。」との記載、及び、引用文献記載事項8などから見て、上記「方式」は、「上記携帯メモリ装置を、装置に挿入すると、装置制御部が携帯メモリ装置を検出し、上記コードデータを読み出し、複数のボタンが表示されているデスクトップ上に、該携帯メモリ装置でデスクトップへ移すことができるようになる機能を導入するためのボタンを含むポップアップウインドウを表示する手段」を有するとも言えるものである。

(5)また、上記引用文献記載事項5の「図示の実施例において、カード102をスロット104に入れると、オペレータはマーカ、手書き及び創造的の3つの編集機能を選択してデスクトップに導入することができるようになる。ある特定の編集機能ボタンを押すと、その特定機能がディスプレイ51のデスクトップ51Aへ移動する。」との記載等から見て、上記「方式」は、「オペレータが上記ポップアップウインドウ内のある特定の編集機能ボタンを押すと、その特定機能をディスプレイのデスクトップへ移動させる手段」を有するものである。

(6)また、上記引用文献記載事項6の「例えば、図7は、オペレータがマーカ編集ボタン106を押してマーカ編集機能106Aを画面のディスクトップへ移動させたところを示している。その結果、制御部は、装置がマーカ編集機能を含んでいることを持久メモリの構成表に書き込む。」との記載等から見て、上記「方式」は、「制御部によって、装置が該特定機能を含んでいることを持久メモリの構成表に書き込む手段」を有するものである。

(7)そして、上記引用文献記載事項7の「スロットからメモリカードを取り出すと、ポップアップ枠またはウィンドウが消えて、図9に示されているように、移動した機能が永久的にデスクトップ51Aで使用可能となる」との記載等から見て、上記「方式」は、「スロットからメモリカードを取り出すと、上記ポップアップウインドウを消して、移動した機能を永久的にデスクトップで使用可能とする手段」を有するものである。

以上の(1)?(7)より、引用文献には下記引用発明が記載されていると認められる。

<引用発明>
「携帯メモリ装置を挿入可能な画像処理装置の制御部の設定をする方式であって、
(上記(1)より)
上記携帯メモリ装置の挿入は、いずれの編集機能も使用可能になっていない時で、選択組の編集機能を導入したい場合になされるものであり、(上記(2)より)
上記携帯メモリ装置はユーザインターフェース及び装置制御部が読み取って、画面デスクトップへの特定の編集機能対話の導入を開始させるコード化データが記憶されているものであり、(上記(3)より)
上記携帯メモリ装置を、装置に挿入すると、装置制御部が携帯メモリ装置を検出し、上記コードデータを読み出し、複数のボタンが表示されているデスクトップ上に、該携帯メモリ装置でデスクトップへ移すことができるようになる機能を導入するためのボタンを含むポップアップウインドウを表示する手段と、(上記(4)より)
オペレータが上記ポップアップウインドウ内のある特定の編集機能ボタンを押すと、その特定機能をがディスプレイのデスクトップへ移動させる手段と、(上記(5)より)
制御部によって、装置が該特定機能を含んでいることを持久メモリの構成表に書き込む手段と、(上記(6)より)
スロットからメモリカードを取り出すと、ポップアップウインドウを消して、移動した機能を永久的にデスクトップで使用可能とする手段とを(上記(7)より)
有している方式」


4.対比
以下、本願発明と引用発明とを比較する。

(1)引用発明における「携帯メモリ装置」は本願発明における「着脱式メモリデバイス」に対応付けられるものであって、「ユーザインターフェース及び装置制御部が読み取って、画面デスクトップへの特定の編集機能対話の導入を開始させるコード化データが記憶されているもの」である。
そして、該携帯メモリ装置の挿入は「いずれの編集機能も使用可能になっていない時で、選択組の編集機能を導入したい場合になされるもの」であるから、記憶される「コード化データ」は「使用可能になっていない」機能でしかも「導入したい」機能、すなわち、「新しい機能」に対応するものを含むことは明らかである。
従って、引用発明における「携帯メモリ装置」と本願発明における「着脱式メモリデバイス」とは「新しい」「機能が記憶されている着脱式メモリデバイス」と言える点で共通する。すなわち、引用発明と本願発明における「電子画像装置」とは該「新しい」「機能が記憶されている着脱式メモリデバイスを挿入可能な電子画像装置」である点で共通する。

(2)引用発明は、「上記携帯メモリ装置を、装置に挿入すると、装置制御部が携帯メモリ装置を検出し、上記コードデータを読み出し、複数のボタンが表示されているデスクトップ上に、該携帯メモリ装置でデスクトップへ移すことができるようになる機能を導入するためのボタンを含むポップアップウインドウを表示する手段」と「オペレータが上記ポップアップウインドウ内のある特定の編集機能ボタンを押すと、その特定機能がディスプレイのデスクトップへ移動させる手段」と「制御部によって、装置が該特定機能を含んでいることを持久メモリの構成表に書き込む手段」と「スロットからメモリカードを取り出すと、ポップアップウインドウを消して、移動した機能を永久的にデスクトップで使用可能とする手段」とを有しているのであるから、本願発明と同様に「電子画像装置が動作中に機能を更新するシステム」とも言えるものである。

(3)してみると、引用発明と本願発明とは「新しい」「機能が記憶されている着脱式メモリデバイスを挿入可能な電子画像装置が、動作中に」「機能を更新するシステム」と言えるものである点で共通する。

(4)引用発明における「制御部」は本願発明における「プロセッサ」に対応付けられるものであるところ、該「制御部」は「装置が該特定機能を含んでいることを持久メモリの構成表に書き込む」のであるから、本願発明の「プロセッサ」と同様に「使用中にメニューを編成できる機能を有するプロセッサ」と言えるものである。
なお、通常「プロセッサ」と称される「CPU」は技術常識からみて「使用中にメニューを編成できる機能を有する」ものとはなり得ないものであるから、本願発明における「プロセッサ」は、本願発明の詳細な説明に記載の「CPU344」には対応付けることができないものであり、本件においては本願発明の詳細な説明記載の「コンピュータ118」が当該「プロセッサ」に対応付けられるものであると解釈するのが妥当である。

(5)引用発明は、「オペレータが上記ポップアップウインドウ内のある特定の編集機能ボタンを押すと、その特定機能がディスプレイのデスクトップへ移動させる手段」及び「制御部によって、装置が該特定機能を含んでいることを持久メモリの構成表に書き込む手段」は、本願発明における「メニュー編成プログラム」に対応付けられるものであるところ、「使用中にメニューを編成できる機能が作動して」「機能を更新するメニュー編成」「手段」と言えるものである。
そして、当該「メニュー編成手段」が用いる「上記ポップアップウインドウ」は「上記携帯メモリ装置を、装置に挿入すると、装置制御部が携帯メモリ装置を検出し、上記コードデータを読み出し、複数のボタンが表示されているデスクトップ上に、該携帯メモリ装置でデスクトップへ移すことができるようになる機能を導入するためのボタンを含むポップアップウインドウを表示する手段」によって表示されるものに他ならないのであるから、該「メニュー編成手段」は「前記着脱式メモリデバイスに記憶されている新しい機能を検出することによって」作動すると言える。
なお、本願特許請求の範囲における「検出することによって」「作動する」なる表現はその意味が必ずしも明確ではないところ、発明の詳細な説明を参酌すると、「検出することによって」「作動する」なる記載は見いだせないものの、図8におけるステップ812からステップ818への処理の流れ、あるいは、図10におけるステップ1012からステップ1018への処理の流れが、これに相当するものであるから、「検出することによって」「作動する」は、単に「検出」の後に「作動」すると言う処理の流れを意味すると解するのが妥当である。
従って、引用発明と本願発明とは、該「前記着脱式メモリデバイスに記憶されている新しい」「機能を検出することによって、使用中にメニューを編成できる機能が作動して」「機能を更新するメニュー編成」「手段」を有している点で共通すると言える。

(6)引用発明の「上記携帯メモリ装置を、装置に挿入すると、装置制御部が携帯メモリ装置を検出し、上記コードデータを読み出し、複数のボタンが表示されているデスクトップ上に、該携帯メモリ装置でデスクトップへ移すことができるようになる機能を導入するためのボタンを含むポップアップウインドウを表示する手段」は上記「書き込む手段」で移動書き込みの対象となる機能に関する情報である「ボタン」を提供するものであるから、「前記着脱式メモリデバイスから得られた機能情報を前記編成」「手段に提供する」「マウント」「手段」とも言えるものであり、また、引用発明の「スロットからメモリカードを取り出すと、ポップアップウインドウを消して、移動した機能を永久的にデスクトップで使用可能とする手段」は「アンマウント手段」とも言えるものである。
してみると引用発明と本願発明とは「前記着脱式メモリデバイスから得られた機能情報を前記編成」「手段に提供する」「マウント/アンマウント」「手段」を有するものである点で共通すると言える。

(7)引用発明は、「複数のボタンが表示されているデスクトップ上に」、「ポップアップウインドウを表示」し、「オペレータが上記ポップアップウインドウ内のある特定の編集機能ボタンを押すと、その特定機能がディスプレイのデスクトップへ移動」し、「制御部によって、装置が該特定機能を含んでいることを持久メモリの構成表に書き込」み、「スロットからメモリカードを取り出すと、上記ポップアップウインドウを消して、移動した機能を永久的にデスクトップで使用可能とする」のであるから、引用発明と本願発明とは、
「前記電子画像装置が、新しい」「機能を記憶するためのメニューを表示している場合は、同メニューは、 使用中にメニューを編成できる機能が作動して再表示されて、同メニューに新しい」「機能が付加される」ものである点で共通すると言える。
なお、本願発明における「新しいソフトウェア機能を記憶するためのメニュー」はその意味するところが明確でなく、発明の詳細な説明を参酌しても「新しいソフトウェア機能を記憶するためのメニュー」なる記載はないものの、本願の【図8】【図10】においてステップ820、1020に「現在、メニューは表示されているか?」との記載があり、本願発明の「新しいソフトウェア機能を記憶するためのメニュー」とは、ステップ820、1020の「メニュー」すなわち、「現在表示されているメニュー」であると解するのが妥当である。

よって、本願発明と引用発明とは下記一致点で一致し、下記相違点で相違する。

<一致点>
「新しい」「機能が記憶されている着脱式メモリデバイスを挿入可能な電子画像装置が、動作中に」「機能を更新するシステムであって、
使用中にメニューを編成できる機能を有するプロセッサと、
前記着脱式メモリデバイスに記憶されている新しい」「機能を検出することによって、使用中にメニューを編成できる機能が作動して」「機能を更新するメニュー編成」「手段と、
前記着脱式メモリデバイスから得られた機能情報を前記編成」「手段に提供する」「マウント/アンマウント」「手段と、を備え、
前記電子画像装置が、新しい」「機能を記憶するためのメニューを表示している場合は、同メニューは、 使用中にメニューを編成できる機能が作動して再表示されて、同メニューに新しい」「機能が付加される、システム。」

<相違点1>
本願発明においては更新される「機能」は「ソフトウェア機能」であるのに対し、引用文献における「機能」が「ソフトウェア機能」である旨の明示は無い点。

<相違点2>
本願発明においては上記「ニュー編成手段」が、「プログラム」であり、「マウント/アンマウント手段」が「コード」であるのに対し、引用文献には「移動する手段」、「構成表に書き込む手段」、「ポップアップウインドウを表示する手段」、「ポップアップウインドウを消して」「使用可能とする手段」等が「プログラム」や「コード」である旨の明示は無い点。

<相違点3>
本願発明においては「マウント/アンマウント」が「ホットマウント/アンマウント」であるのに対し、引用文献には「携帯メモリ装置」の「挿入」及び「取り出」しを、電源が入れられた状態で可能とする旨の明示は無い点。


5.判断
以下、上記相違点について検討する。

<相違点1について>
着脱式メモリデバイスを用いて機能を更新可能なものとするものにおいて、ソフトウェアを用いて当該機能を実現することは、証拠を挙げるまでも無く(必要があれば、特開昭63-108459号公報(昭和63年5月13出願公開。以下「先行技術文献1」と記す。)、特開平8-339297号公報(平成8年12月24日出願公開。以下「先行技術文献2」と記す。)、特開平7-6028号公報(平成7年1月10日出願公開。以下「先行技術文献3」と記す。)、特開平8-161252号公報(平成8年6月21日出願公開。以下「先行技術文献4」と記す。)、特開平6-22189号公報(平成6年1月28日出願公開。以下「先行技術文献5」と記す。)、特開平7-274060号公報(平成7年10月20日出願公開。以下「先行技術文献6」と記す。)、特開平3-268583号公報(平成3年11月29日出願公開。以下「先行技術文献7」と記す。)等参照)、古くから常套の技術常識に過ぎないものである。
従って、引用発明における「機能」を「ソフトウェア機能」とすることは、当業者であれば、当然の如く採用する技術常識的事項に過ぎない。

<相違点2について>
装置における処理をプログラムを用いることによって実現することも、常套の技術常識に過ぎないものである(必要があれば、上記記先行技術文献1(特に第2頁下右欄第10行?第12行の「前記CPU11はROM12に格納されている基本的なプログラムデータに基いて第6図に示す画面表示処理を行なうようになっている。」等の記載)や上記先行技術文献2(特に段落【0013】の「CPU6内でプログラム処理として実行されるメニュー追加部」等の記載)等参照)から、引用発明における「移動する手段」や「構成表に書き込む手段」「ポップアップウインドウを表示する手段」や「ポップアップウインドウを消して」「使用可能とする手段」等を「プログラム」すなわちプログラム「コード」を用いて実現することも、当業者であれば当然に採用する技術常識的事項に過ぎない。

<相違点3について>
電源が入れられた状態で外部装置をマウント/アンマウント可能とすることも、従来から必要に応じて適宜に採用されている慣用技術であり(必要があれば上記先行技術文献3(特に段落【0019】の「本発明によれば、メモリカードに対するリード/ライトを行うためのリーダライタを有する電子機器において、アプリケーションプログラムが実行されているときに、メモリカード装着完了を検出することにより、メモリカード内部に格納されているプログラムを自動的に実行する。」等の記載。)、上記先行技術文献4(特に段落【0008】の「ところで、最近、情報処理装置用の拡張ボードについて、その設定を自動的に行なえるようにするプラグ・アンド・プレイと呼ばれる標準仕様が検討されている(NIKKEI ELECTRTNICS 1994.1.31(no.600)pp96-101)。しかし、この仕様は、ユーザが簡単に拡張ボードを設定できるようにすること、パーソナルコンピュータの動作時でも拡張ボードの抜き差しを可能にする活線挿抜機能などの追加、メーカが行なうユーザへの支援に伴う負担を軽減すること、を目的としている(同書96頁第3欄10行-97頁第1欄2行)。」等の記載。)等参照)、引用発明における「携帯メモリ装置」の「挿入」及び「取り出」しを電源が入れられた状態で可能とすること、すなわち、「ポップアップウインドウを表示する手段」、「ポップアップウインドウを消して」「使用可能とする手段」を「マウント/アンマウントコード」とすることも当業者であれば、必要に応じて適宜に採用し得た事項に過ぎないものと認められる。

してみると、本願発明の構成は引用文献記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、当該構成の採用によって奏される作用効果も、当業者であれば容易に予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。
よって、本願発明は、引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。


6.小結
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本願は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



第4.記載要件(特許法第36条)について

1.原審の拒絶理由の概要
本願の拒絶の査定の理由である平成18年2月15日付けの拒絶理由通知の理由の概要は以下の通りである。

「 理 由
理由1:この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(1)請求項1にはメモリデバイスがソフトウェア機能を含む旨の記載があるが、この記載は日本語として意味不明である(メモリデバイスにソフトウェアが記憶されているというのであれば理解できるが、請求項1の前記記載は意味不明)。同様の記載を有するその他の請求項についても、同様の記載不備がある。
(2)請求項1の「ソフトウェア機能を動的に更新する」という記載は日本語として意味不明。同様の記載を有するその他の請求項についても、同様の記載不備がある。
(3)請求項1にはデータプロセッサが動的メニュー編成データ構造を有する旨の記載があるが、この記載は日本語として意味不明である。そもそも「データプロセッサ」とは通常のプロセッサ(CPU、MPU)とどのように違うのかが不明であるから、用語の定義が不明。さらに、技術常識に従えば、プロセッサというのはメモリに格納されているプログラムを実行してメモリに格納されているデータを処理するためのハードウェア構造しか有していないから、プロセッサが「データ構造」を「有する」とは如何なる意味であるのか理解不能。同様の記載を有するその他の請求項についても、同様の記載不備がある。
(4)請求項1の「新しいソフトウェア機能を含むためのメニュー」という記載の意味するところが不明である(通常のメニューとは、どう違うのか?)。同様の記載を有するその他の請求項についても、同様の記載不備がある。
(5)請求項10には「電子装置」に「データ構造」を「接続」する旨の記載があるが、この記載は日本語として意味不明。同様の記載を有するその他の請求項についても、同様の記載不備がある。 (以上、理由1)

理由2:この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(1)請求項1にはデータプロセッサが動的メニュー編成データ構造を有する旨の記載があるが、この記載は発明の詳細な説明の記載のとの対応関係が不明である。発明の詳細な説明では、プロセッサはメモリに格納されているプログラムを実行してメモリに格納されているデータを処理しているだけであり、「プロセッサ」が「データ構造」を「有する」というものは開示されていない。同様の記載を有するその他の請求項についても、同様の記載不備がある。
(2)請求項1の「新しいソフトウェア機能を含むためのメニュー」という記載は発明の詳細な説明の記載との対応関係が不明である(発明の詳細な説明では、通常のメニューを表示中に着脱式デバイスが取り付け/取り外しされると、それに応じて前記表示中のメニューを再描画するだけであり、「新しいソフトウェア機能を含むためのメニュー」などという特別なメニューが存在するわけではない)。同様の記載を有するその他の請求項についても、同様の記載不備がある。
(3)請求項1の「新しいソフトウェア機能を検出」という記載は、発明の詳細な説明の記載と対応が取れていない(発明の詳細な説明では、取り付けられた着脱式メモリデバイスの中に以前から格納されているソフトウェアの種類を検出しているだけである)。同様の記載を有するその他の請求項についても、同様の記載不備がある。
(4)請求項18には「編成する手段」が「電子装置」とは別個に存在する旨の記載があるが、この記載は発明の詳細な説明の記載との対応関係が不明である。
(5)請求項18には「編成する手段」が「電子装置」に接続される旨の記載があるが、この記載は発明の詳細な説明の記載との対応関係が不明である。
(6)請求項1の「ソフトウェア機能を動的に更新する」という記載は、発明の詳細な説明の記載との対応関係が不明である(発明の詳細な説明では、着脱式メモリデバイスの取り付け/取り外しに対応してメニューの表示を動的に更新することは記載されているが、ソフトウェア機能を動的に更新することは記載されていない)。同様の記載を有するその他の請求項についても、同様の記載不備がある。

・・・<中略>・・・
(以上、理由2)

理由3:この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

(1)請求項1(同様の記載を有するその他の請求項についても、同様の記載不備がある)の「新しいソフトウェア機能を含むためのメニュー」という記載の具体的な実現手法が、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明において開示されていない。
(2)発明の詳細な説明では、着脱式デバイスの取り付け/取り外しに対応してメニューの表示を書き換えることは開示されているが、請求項1?18に記載されているような、「新しいソフトウェア機能」の検出とメニューの書き換えを行う手法は開示されていない。したがって、請求項1?18の実現手法が不明である(審査基準第I部第1章(明細書及び特許請求の範囲の記載要件)の3.2.2.2(1)参照)。

よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1?18に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
(以上、理由3)

理由4:この出願の下記の請求項に係る発明は、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。
・・・<中略>・・・
理由5:この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
・・・<中略>・・・
理由6:この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・・・<中略>・・・
理由7:この出願は、下記の点で特許法第37条に規定する要件を満たしていない。
・・・<後略>・・・」


2.手続補正・意見書の内容
これに対する、上記平成18年7月5日付けの手続補正書の内容は、
【特許請求の範囲】を上記第2.1.の<補正前の特許請求の範囲>
と補正するものであり、同日付けの意見書においては、以下の通り意見が述べられている。
「【意見の内容】
(1) この意見書と同日付の手続補正書により、本願特許の請求項の内容を明確化するために、文言補正をしました。更に、独立請求項1と請求項3を組合せて補正請求項1とし、独立請求項10、17及び18にも請求項3の内容を付加しました。 従って、請求項4乃至18は補正請求項3乃至17になりました。
(2a)理由1:特許法第36条第6項第2号
・ 「電子装置」を明細書に合わせて、「電子画像装置」と限定しました。
・ 「ソフトウェア機能を含む」を「ソフトウェア機能が記憶されている」と補正しました。
・ 「データプロセッサが動的メニュー編成データ構造を有する」の意味を明確にするために、「使用中にメニュー編成できる機能を有する」と補正しました。
・ 「新しいソフトウェア機能を含むためのメニュー」を「新しいソフトウェア機能を記憶するためのメニュー」と補正しました。
・ 「電子装置に接続された動的メニュー編成データ構造」を「電子画像装置中のプロセッサの、使用中にメニューを編成できる機能」に補正しました。
(2b)理由2:特許法第36条第6項第1号
理由1での補正によって解決されたと思料します。
(2c)理由3:特許法第36条第4項
理由1での補正によって解決されたと思料します。
(2d)理由4:特許法第29条第1項柱書
請求項10の各工程に、使用されるハードウェアを付加しました。
3.理由5,6:特許法第29条第1項と第2項
・・・<中略>・・・
(3)以上の説明により、本願発明に対する拒絶理由は解消されたと思料しますので、速やかに特許すべき旨の査定を賜りたく存じます。」


3.拒絶査定の概要
原審の拒絶の査定の概要は次の通りのものである。
「この出願については、平成18年2月15日付け拒絶理由通知書に記載した理由1?7によって、拒絶をすべきものである。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討したが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせない。

備考 (A)理由1について
(A-1)理由1の(1)として指摘した記載不備が、依然として解消されていない。メモリデバイスに「ソフトウェア」が記憶されているというのであれば理解できるが、補正後の請求項1にはメモリデバイスに「ソフトウェア機能」が記憶されている旨の記載になっており、この記載は依然として日本語として意味不明である。同様の記載を有するその他の請求項についても、同様の記載不備がある。
(A-2)理由1の(2)として指摘した記載不備が、依然として解消されていない。補正後の請求項1の「ソフトウェア機能を更新する」という記載は、依然として意味するところが不明である。同様の記載を有するその他の請求項についても、同様の記載不備がある。 (以上、理由1について)

(B)理由2について
(B-1)理由2の(2)として指摘した記載不備が依然として解消されていない。発明の詳細な説明では、通常のメニューを表示中に着脱式デバイスが取り付け/取り外しされると、それに応じて前記表示中のメニューを再描画するだけであり、請求項1に記載されているような「新しいソフトウェア機能を記憶するためのメニュー」などという特別なメニューが存在するわけではない。したがって、請求項1の記載は、依然として発明の詳細な説明の記載と対応が取れていない。同様の記載を有するその他の請求項についても、同様の記載不備がある。
(B-2)理由2の(3)として指摘した記載不備も、依然として解消されていない。発明の詳細な説明では、着脱式メモリデバイスの装着を検出し、該着脱式メモリデバイスに以前から格納されているソフトウェアの種類を読み出しているだけであり、請求項1に記載されているような「新しいソフトウェア機能を検出」などという処理は行われていない。したがって、請求項1の記載は、依然として発明の詳細な説明の記載と対応が取れていない。同様の記載を有するその他の請求項についても、同様の記載不備がある。
(B-3)理由2の(6)として指摘した記載不備も、依然として解消されていない。発明の詳細な説明では、着脱式メモリデバイスの取り付け/取り外しに対応してメニューの表示を動作中に更新することは記載されているが、ソフトウェア機能を動作中に更新することは記載されていない。したがって、請求項1の記載は、依然として発明の詳細な説明の記載と対応が取れていない。同様の記載を有するその他の請求項についても、同様の記載不備がある。
(以上、理由2について)

(C)理由3について
(C-1)理由3の(1)として指摘した記載不備が、依然として解消されていない。請求項1の「新しいソフトウェア機能を記憶するためのメニュー」という記載の具体的な実現手法が、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明において開示されていない。したがって、請求項1記載の発明は実施できない。同様の記載を有するその他の請求項に記載されている発明も、同様に実施できない。
(C-2)理由3の(2)として指摘した記載不備も、依然として解消されていない。指摘した記載と同様の記載は依然として請求項1?17の中に残っており、意見書においては具体的な説明は何も行われていない。
(以上、理由3について)

(D)理由4について
・・・<中略>・・・
(E)理由5について
・・・<中略>・・・
(F)理由6について
・・・<中略>・・・
(G)理由7について
・・・<後略>・・・」


4.審判請求時の補正及び審判請求書における主張
これに対する、上記平成19年2月7日付けの手続補正書の内容は、【特許請求の範囲】を、上記第2.1.の<補正後の特許請求の範囲>に補正しようとするものであり、上記上記第2.のとおり、却下された。

また、審判請求書においては次の通り主張されている。
「【請求の理由】
・・・<中略>・・・
2.拒絶査定の要点
2.1 原査定の拒絶理由は、「請求項1?17に係る発明は、特許法第29条第36条、および第37規定により特許を受けることができない。」というものである。
3.本願発明の補正
3.1 36条関係
「ソフトウェア機能」を「ソフトウェア」に文言補正した。
「新しいソフトウェアを記憶するためのメニュー」を削除した。
「ソフトウェア機能を動作中に更新する」、は明細書中の段落0004に、「ソフトウェアにより駆動される機能を動的に更新する」と記載されている。
補正請求項8(原請求項9)に、「該着脱式メモリデバイス中に格納されているプログラム命令のセットを読み出すことによって、」を付加した。明細書の段落番号0005の中程に記載されている。
3.2 29条関係
・・・<中略>・・・
4.むすび
以上の補正と説明によって拒絶理由は解消されたと思料します。よって、原査定を取り消す、この出願の発明はこれを特許すべきものとする、との審決を求める。」


5.判断
そこで、本願特許請求の範囲及び明細書の記載の、上記平成18年2月15日付けの拒絶理由通知書の理由1、2、3において指摘した不備が、上記平成18年7月5日付けの手続補正によって解消されているものであるか否かについて検討する。

<理由1(1)で指摘した不備について>
上記拒絶理由通知書の理由1(1)で明確で無いと指摘された「新しいソフトウェア機能を含む着脱式メモリデバイス」との記載は、上記平成18年7月5日付けの手続補正によって、「新しいソフトウェア機能が記憶されている着脱式メモリデバイス」との記載に補正された。
しかしながら、「機能」に関連する情報や、「機能」を実現するためのプログラム等は「メモリデバイス」に「記憶」し得るものではあるものの、「機能」自体は「メモリデバイス」に「記憶」し得るものではないのから、補正後の請求項1の記載は依然として、明確なものではなく、上記拒絶理由通知書の理由1(1)で明確で無いと指摘された記載不備が解消されていないものである。
従って、請求項1に係る発明は明確でない。

<理由2(2)及び3(1)で指摘した不備について>
上記拒絶理由通知書の理由2(2)で発明の詳細な説明の記載との対応関係が不明であると指摘された「新しいソフトウェア機能を含むためのメニュー」との記載は、上記平成18年7月5日付けの手続補正によって、「新しいソフトウェア機能を記憶するためのメニュー」との記載に補正された。
しかしながら、「新しいソフトウェア機能を記憶するためのメニュー」は依然として、発明の詳細な説明に記載されてはおらず、発明の詳細な説明の記載との対応関係が不明である。
従って、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
また、このため、本願発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないものである。

<理由2(3)及び3(2)で指摘した不備について>
上記拒絶理由通知書の理由2(3)で発明の詳細な説明の記載と対応が取れていないと指摘された「新しいソフトウェア機能を検出」との記載は、上記平成18年7月5日付けの手続補正後も依然として残っている。
そして、発明の詳細な説明の補正もなされておらず、「新しいソフトウェア機能を検出」することは、依然として、発明の詳細な説明に記載されてはいないため、発明の詳細な説明の記載との対応関係が不明りょうである。
また、意見書においても、審判請求書においてもこの点に付いての釈明は何らなされていない。
従って、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
また、このため、本願発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないものである。

<理由2(6)で指摘した不備について>
上記拒絶理由通知書の理由2(6)で発明の詳細な説明の記載との対応関係が不明であると指摘された「ソフトウェア機能を動的に更新する」との記載は、上記平成18年7月5日付けの手続補正によって、「動作中にソフトウェア機能を更新する」との記載に補正された。
しかしながら、本願発明の詳細な説明には、段落【0002】に「ホットマウントとは、電源が入れられた動作中のコンピュータのバスコネクタにカードを安全に挿入し得る特性のことを指す。」との記載が、段落【0004】に「ソフトウェアにより駆動される機能を動的に更新する」との記載があるものの、「動作中にソフトウェア機能を更新する」旨の記載は依然として、発明の詳細な説明に記載されてはおらず、発明の詳細な説明の記載との対応関係が不明確である。
従って、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

以上の通りであるから、請求項1に係る発明は依然として明確でなく、しかも、発明の詳細な説明に記載したものではない。
また、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、依然として当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないものである。


6.小結
よって、この出願は、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第4項及び第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていない。



第5.回答書における補正案等について
請求人は平成21年6月10日付け回答書において、請求項8を
「着脱式メモリデバイスを挿入可能なデジタルカメラにおいて、動作中にソフトウェアを更新する方法であって、
前記デジタルカメラ中のプロセッサが、該着脱式メモリデバイス中に格納されているプログラム命令のセットを読み出すことによって、使用中に、ソフトウェアに関連する情報を再編成する工程と、
該着脱式メモリデバイスによって供給される、新しいソフトウェアを有するメニューを再編成できる機能により、プロセッサ中の前記使用中にメニューを再編成できる機能を更新する工程と、
該着脱式メモリデバイスから得られた機能情報を、プロセッサ中のホットマウント/アンマウントコードを用いて、前記編成プログラムに提供する工程と、
前記デジタルカメラが、新しいソフトウェアを含むためのメニューを表示している場合は、同メニューは、更新された使用中にメニューを再編成できる機能に沿って再表示されて、同メニューに新しいソフトウェアを付加する工程と、から成る方法。 」
とする補正案(すなわち、「該着脱式メモリデバイスから得られた機能情報を、プロセッサ中のホットマウント/アンマウントコードを用いて、前記編成プログラムに提供する工程」を追加する補正案)を提示しているが、請求項1、15、16に関しては補正案の提示は無く、当該補正案通りの補正がなされたとしても、その補正は平成19年2月7日付けの手続補正書記載の請求項8に新たな工程を追加するものであるから、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反する補正であり、却下を免れることはできない。

また、着脱式メモリデバイスの挿入によってその機能を変更するデジタルカメラは周知のものである(必要があれば上記先行技術文献5、上記先行技術文献6、上記先行技術文献7等参照)から、仮に、当該補正案に沿った補正を受け入れたと仮定しても、その補正後の発明に進歩性を認め得るものではない。

従って、回答書の補正案に沿った補正をする機会を設けたとしても、請求人に益は無く、該機会を設けることは妥当で無い。



第6.むすび
以上の通り、本願は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、また、特許法第36条第4項及び第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていないものであるから、本願は拒絶すべきものである。

よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-27 
結審通知日 2009-09-01 
審決日 2009-09-16 
出願番号 特願2004-270971(P2004-270971)
審決分類 P 1 8・ 571- Z (G06F)
P 1 8・ 536- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 572- Z (G06F)
P 1 8・ 537- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保 光宏  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 石田 信行
鈴木 匡明
発明の名称 電子画像装置における機能を動的に更新するシステムおよび方法  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  

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