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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1211697
審判番号 不服2008-4910  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-28 
確定日 2010-02-12 
事件の表示 特願2005-182912「プラズマエッチング装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月27日出願公開、特開2005-303329〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年12月18日に出願した特願2000-383175号の一部を平成17年6月23日に新たな特許出願としたものであって、平成19年7月12日付けの拒絶理由通知に対して、同年9月18日付けで手続補正がなされたが、平成20年1月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成20年2月28日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年3月28日付けで手続補正がされたものである。

2.平成20年3月28日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年3月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(a)本件補正は、特許請求の範囲の請求項1及び図1についてするもので、特許請求の範囲の請求項1については、補正前に、
「【請求項1】被処理体をエッチング処理する真空処理室を備えたプラズマエッチング装置であって、
前記真空処理室内に配置され、被処理体を載置する試料台と、
導電性材料からなり前記試料台に対向して前記真空処理室の上部に配置された平面状の電極と、
該平面状の電極の前記真空処理室側に設けられたガスシャワープレートと、
高周波電源から前記平面状の電極の中央付近に高周波の電磁波を導く手段と、
前記真空処理室の下部に接続され該真空処理室内を排気する排気手段とを備え、
前記平面状の電極と前記ガスシャワープレートとの間に、前記被処理体の中心を中心として中央側空間及び外側空間が同心円状に形成されており、
前記平面状の電極は、前記高周波の電磁波を導く手段よりも外側の位置で前記中央側空間及び前記外側空間に各々連通し流量比の異なるプラズマ生成用の混合ガスを導入するガス導入口を備えており、
前記ガスシャワープレートは、前記被処理体の中心部上方に相当する位置に配置され前記中央側空間に連通する複数のガス噴出口から前記真空処理室内へ前記混合ガスが噴出する第1のガス噴出領域と、
前記第1のガス噴出領域の外周側に配置され前記外側空間に連通する複数のガス噴出口から前記真空処理室内へ前記第1のガス噴出領域とは流量比の異なる前記混合ガスが噴出する第2のガス噴出領域とを備え、
前記第1のガス噴出領域と前記第2のガス噴出領域から各々、均一性を改善させたい加工特性に対応した前記流量比の異なる混合ガスを導入する
ことを特徴とするプラズマエッチング装置。」
とあったものを、
「【請求項1】被処理体をエッチング処理する真空処理室を備えたプラズマエッチング装置であって、
外壁が接地された前記真空処理室内に配置され被処理体を載置すると共に第1の高周波電源から高周波バイアスが印加される試料台と、
導電性材料からなり、前記試料台に対向して前記真空処理室の上部に配置され、前記試料台とは反対の側に位置する絶縁体を介して前記外壁に保持された平面状の電極と、
該平面状の電極の前記真空処理室側に該真空処理室に面して設けられたシリコン製のガスシャワープレートと、
第2の高周波電源から前記絶縁体を貫通して前記平面状の電極の中央付近に高周波の電磁波を導く手段と、
前記真空処理室の下部に接続され該真空処理室内を排気する排気手段とを備え、
前記平面状の電極と前記ガスシャワープレートとの間に、前記被処理の中心を中心として中央側空間及び外側空間が同心円状に形成されており、
前記平面状の電極は、前記高周波の電磁波を導く手段よりも外側の位置で前記絶縁体を貫通して設けられたガス導入路から前記中央側空間及び前記外側空間に各々流量比の異なるプラズマ生成用の混合ガスを導入する第1、第2のガス導入口を備えており、
前記ガスシャワープレートは、前記被処理体の中心部上方に相当する位置に配置され前記第1のガス導入口に連通した前記中央側空間に連通する複数のガス噴出口から前記真空処理室内へ前記混合ガスが噴出する第1のガス噴出領域と、前記第1のガス噴出領域の外周側に配置され前記第2のガス導入口に連通した前記外側空間に連通する複数のガス噴出口から前記真空処理室内へ前記第1のガス噴出領域とは流量比の異なる前記混合ガスが噴出する第2のガス噴出領域とを備え、
前記ガスシャワープレートの前記第1のガス噴出領域と前記第2のガス噴出領域から各々、均一性を改善させたい加工特性に対応した前記流量比の異なる混合ガスを導入する
ことを特徴とするプラズマエッチング装置。」
と補正しようとするものである。

(b)すると、本件補正における、特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、補正前の「真空処理室内に配置され、被処理体を載置する試料台」を、「外壁が接地された前記真空処理室内に配置され被処理体を載置すると共に第1の高周波電源から高周波バイアスが印加される試料台」と補正し、補正前の請求項1に記載された事項によって特定される「プラズマエッチング装置」に対して、新たに「試料台とは反対の側に位置する絶縁体」という部材を付加する補正事項を含む補正であるといえる。

(c)一方、本願明細書、審判請求書には、以下の事項が記載されている。
(あ)「しかし、従来のプラズマ装置のように、被処理体周辺部よりのみ排気を行うだけでは、図8に示すように、シャワープレート中心部から噴出するガスと周辺部から噴出するガスにおいて、シャワープレートと被処理体間における滞在時間に差が生じ、活性種の濃度分布が被処理体の処理面全体にわたり均一にならない。同様に、被処理体表面や前記平面アンテナ表面で生じる副生成ガスも均一な分布とならない。加えて、平面アンテナ2と処理台19の間隔が被処理体の長さに比べ小さく、かつ、ガス流量が大きい場合、被処理体中心部と周辺部でガスの圧力に差が生じる場合もある。以上より、好ましい処理条件を達成することが困難であった。」(明細書の【0010】)

(い)「このように、本発明は、先に述べた活性種濃度分布や副生成ガス濃度分布を、異なる流量や流量比からなる複数の混合ガスを導入することで均一化し、均一なプラズマ処理を行うことが可能となる。」(明細書の【0016】)

(う)「被処理体8は、処理台9に設けられた、静電チャックにより処理台9に固定される。処理台9は、高周波電源15から整合器16を通して導入される高周波、たとえば800kHzにより被処理体8に高周波バイアスを印加させることが可能となっている。」(明細書の【0023】)

(え)「本願発明では、電極の中央付近に高周波の電磁波を導く手段と、中央側空間及び外側空間に混合ガスを導入するためのガス導入路が、絶縁体を貫通して別個に設けられており、電極の上下いずれの側にも異常放電が発生する空間は存在しません。」(平成20年3月28日提出の、審判請求書の手続補正書の第8頁第14-16行)

(d)そこで、上記補正事項を含む本件補正が、特許法第17条の2第4項の各号に規定する、いずれかの事項を目的とした補正に該当するものといえるかについて検討する。

(e)特許法第17条の2第4項第2号は、補正の要件として「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」と定めている。
そうすると、同号の事項を目的とする補正とは、単に「特許請求の範囲」を減縮するものであるだけでは十分ではなく、特に「発明を特定するために必要な事項」を限定するものであることを要するといえる。
そして、前記「発明を特定するために必要な事項」とは、特許法「第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項」とあることから、特許法第第三十6条第5項の「各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。」との規定により請求項に記載した事項の「すべて」のうちの「個々」の事項を意味するものと解される。
そうすると、結局、「発明を特定するために必要な事項」を限定するものといえるためには、補正前の請求項における「発明を特定するために必要な事項」の一つ以上を、概念的により下位の「発明を特定するために必要な事項」とする補正であることを要すると解される。
また、同号の事項を目的とする補正であるといえるためには、更に、補正前と補正後の対応する請求項に記載された発明の「産業上の利用分野及び解決しようとする課題」が同一であることを要するものである。

(f)そこで、最初に、前記補正事項を含む本件補正が、特許法第17条の2第4項第2号に規定する事項を目的とした補正に該当するものといえるかについて検討すると、補正前の請求項1には、「第1の高周波電源」及び「試料台とは反対の側に位置する絶縁体」について全く記載されていない。
してみると、補正前の「真空処理室内に配置され、被処理体を載置する試料台」を、「外壁が接地された前記真空処理室内に配置され被処理体を載置すると共に第1の高周波電源から高周波バイアスが印加される試料台」と補正し、補正前の請求項1に記載された発明である「プラズマエッチング装置」に、「試料台とは反対の側に位置する絶縁体」という部材を新たに付加する前記補正事項を含む本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明の「発明を特定するために必要な事項」の一つ以上を、概念的により下位の「発明を特定するために必要な事項」とする補正であるとはいうことはできない。したがって、前記補正事項を含む本件補正は、発明を特定するために必要な事項を限定するものに該当しない。
したがって、これ以外の補正事項について検討するまでもなく、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とする補正であるとは認められない。

(g)更に、特許法第17条の2第4項第2号の事項を目的とする補正とは、補正前と補正後の対応する請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることを要するところ、補正前の請求項1に係る発明の解決しようとする課題が「シャワープレート中心部から噴出するガスと周辺部から噴出するガスにおいて、シャワープレートと被処理体間における滞在時間に差が生じ、活性種の濃度分布が被処理体の処理面全体にわたり均一にならない。」ことであるのに対して、これに対応する補正後の請求項1に係る発明の解決しようとする課題は「被処理体8に高周波バイアスを印加させること」、及び、「異常放電が発生する空間をなくすこと」という課題をも含むものといえるから、補正前の請求項1に係る発明の解決しようとする課題と、補正後の請求項1に係る発明の解決しようとする課題とが、同一であると認めることはできない。
そうすると、本件補正は「その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。」という要件をも満たしていないといえる。
したがって、この点においても、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とする補正であるとは認められない。

(h)また、本件補正事項を含む本件補正が、特許法第17条の2第4項において規定する他のいずれの事項を目的とした補正であると認めることもできない。

(i)したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成20年3月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-2に係る発明は、平成19年9月18日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】被処理体をエッチング処理する真空処理室を備えたプラズマエッチング装置であって、
前記真空処理室内に配置され、被処理体を載置する試料台と、
導電性材料からなり前記試料台に対向して前記真空処理室の上部に配置された平面状の電極と、
該平面状の電極の前記真空処理室側に設けられたガスシャワープレートと、
高周波電源から前記平面状の電極の中央付近に高周波の電磁波を導く手段と、
前記真空処理室の下部に接続され該真空処理室内を排気する排気手段とを備え、
前記平面状の電極と前記ガスシャワープレートとの間に、前記被処理体の中心を中心として中央側空間及び外側空間が同心円状に形成されており、
前記平面状の電極は、前記高周波の電磁波を導く手段よりも外側の位置で前記中央側空間及び前記外側空間に各々連通し流量比の異なるプラズマ生成用の混合ガスを導入するガス導入口を備えており、
前記ガスシャワープレートは、前記被処理体の中心部上方に相当する位置に配置され前記中央側空間に連通する複数のガス噴出口から前記真空処理室内へ前記混合ガスが噴出する第1のガス噴出領域と、
前記第1のガス噴出領域の外周側に配置され前記外側空間に連通する複数のガス噴出口から前記真空処理室内へ前記第1のガス噴出領域とは流量比の異なる前記混合ガスが噴出する第2のガス噴出領域とを備え、
前記第1のガス噴出領域と前記第2のガス噴出領域から各々、均一性を改善させたい加工特性に対応した前記流量比の異なる混合ガスを導入する
ことを特徴とするプラズマエッチング装置。」

(3-1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特表平09-501272号公報(以下、「引用例4」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。

特表平09-501272号公報(引用例4)
(1a)「1.ガス送給有孔電極に対向する支持電極の上に取付けたデバイス基板上にてプラズマ処理を行ない、反応性プラズマは前記2つの電極間の空所内に、少なくとも前記有孔電極を経て前記空所内に送給される反応性ガスの混合物から発生させ、該ガス混合物が第1供給ラインによって供給される前記空所の第1領域から前記ガス混合物を前記基板を横切る方向へと流し、且つ第2供給ラインが前記有孔電極を経て前記空所の第2領域へ前記ガス混合物を送給し、前記第2領域を前記第1領域からガス混合物が流れる方向に沿って位置させるようにして電子デバイスを製造する方法において、前記ガス混合物が、該混合物における第2反応ガスよりも速い割合でプラズマ処理にて消費される第1反応ガスを含み、且つ前記第2供給ラインが、前記第1供給ラインによって供給される一次混合物よりも第1反応ガスを多量に含む二次混合物を供給して、プラズマ処理が支持電極の領域全体にわたり均一に行われるようにすることを特徴とする電子デバイスの製造方法。」(特許請求の範囲)

(1b)「6.前記プラズマ処理が前記基板の表面から材料をエッチング除去することを伴なうことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の方法。」(特許請求の範囲)

(1c)「7.内部に支持電極がガス送給有孔電極に対向して取付けられる室と、これら電極間の空所内に、前記有孔電極を経て該空所内に送給される反応ガスの混合物から反応性プラズマを発生させるために前記両電極間に電界をかけるための手段と、前記空所へガス混合物を供給する第1及び第2供給ラインであって、第1供給ラインが前記空所の第1領域へガス混合物を送給し、該第1領域から前記ガス混合物が前記空所の第2領域へと流れ、前記第2供給ラインが前記有孔電極を経て前記第2領域へガス混合物を送給するようにした第1及び第2供給ラインと、前記ガス混合物が前記第1領域から前記基板を横切る方向へ流れるように、前記支持電極に関連して位置付けした前記室からのガス出口手段とを具えているプラズマ処理装置において、前記第1及び第2供給ラインを前記ガス混合物のそれぞれ別個の一次及び二次供給部に接続し、前記各供給部がプラズマ処理にて前記ガス混合物における第2反応ガスよりも速い割合で消費される第1反応ガスを含み、且つ前記二次供給部が前記一次供給部よりも第1反応ガスを多量に含むようにして、プラズマ処理が前記支持電極の領域全体にわたり均一に行われるようにしたことを特徴とするプラズマ処理装置。」(特許請求の範囲)

(1d)「8.前記第1供給ラインが前記有孔電極の中央領域を経て一次ガス混合物を送給し、且つ前記第2供給ラインが前記有孔電極の周辺領域を経て二次ガス混合物を送給し、前記支持電極上方のガス流の方向が前記空所の第1領域から放射状に外方へと向くようにしたことを特徴とする請求の範囲第1?6項のいずれか一項に記載の方法又は請求の範囲第7項に記載の装置。」(特許請求の範囲)

(1e)「本発明は、大面積にわたるプラズマ処理の不均一性が、特定の処理(堆積か、エッチングか、その他の処理)にてガス混合物における種々の反応ガスが異なる割合で消費されることにより生じ、且つ大面積にわたる異なる消費率の影響は、第2領域へ速い割合で消費される反応ガスを多量に含む混合物を供給することにより非常に簡単に(少なくとも部分的に)補償することができるという認識に基いて成したものである。この方法によれば、先ずプラズマ処理によるデバイスの所望される諸特性(例えば、堆積薄膜の配合及び品質)によってガスのパラメータを決定することができ、次いで別個の供給ラインの流速及びガス配合を制御することによってこれらのガスパラメータの所定値を達成することができる。」(第6頁第17-25行)

(1f)「プラズマ処理には基板の表面から材料をエッチング除去することを含めることができる。特定例では、第1反応ガスをSF_(6)とし、第2反応ガスをCHF_(3)とし、エッチング除去材料を窒化珪素又は例えば炭化珪素とすることができる。本発明による異なる一次及び二次混合物をこの状況にて利用して、大面積にわたるエッチング速度及びエッチング特性の変動を補償することができる。
本発明による方法及び装置は様々な構造の反応室に使用することができる。最近最もポピュラーな装置はガス流を放射状か、長手方向のいずれかに流すようにしたものである。最初の場合には、第1供給ラインが有孔電極の中央領域を経てガス混合物を送給し、1個以上の第2供給ラインが有孔電極の1個又は複数の周辺個所を経てガス混合物を送給し、支持電極上方のガス流が空所の第1(中央)領域から放射状に外方へと流れるようにすることができる。」(第7頁第1-11行)

(1g)「図面の簡単な説明
図1は本発明による方法によって電子デバイスを製造するのに用いられる本発明によるプラズマ処理装置の一部を断面で、一部を図式的に示した図であり」(第7頁第17-19行)

(1h)「図1は半径方向のガス流を有する所謂“容量的に結合させた大面積平行板”タイプのプラズマ反応器を示す。この反応器は反応室10を具えており、この反応室内には支持電極11が有孔電極12に対向して取付けられている。プラズマ処理は支持電極11の上に取付けた1個以上のデバイス基板4(14)の表面にて行われる。支持電極11は接地する。無線周波電圧はRF源50からインピーダンス整合回路網52を経て有孔電極12に印加される。これらの手段50,52により電極11と12との間に交流電界がかけられて、有孔電極12を経て送り込まれる反応ガスの混合物25から電極11と12との間の空所内に反応性プラズマ5が発生する。有孔電極12と、そのガス供給手段21及び22とのアセンブリは所謂“シャワーヘッド”を形成し、この名はガスが有孔電極12を経て斯かる空所内に送り込まれることに由来している。これまでに述べたようなプラズマ反応器は、モノリシック集積回路及び/又は液晶ディスプレイの如き大面積電子デバイスにおける薄膜のプラズマ増速堆積又はプラズマエッチングに用いられるような既知のタイプのものと見なすことができる。
・・・特に斯かる薄膜回路の適用に当っては、大面積の支持電極11の全体にわたるプラズマ処理を十分に均一とする必要がある。このためにはガス混合物25を有孔電極12へ供給する供給ラインを数個(例えば第1及び第2)のライン21及び22とするのが有利である。従って、図1に示してあるように、第1供給ライン21は有孔電極12の中央領域12aへガス混合物を送給でき、第2供給ライン22は有孔電極12の環状周辺領域12bへガス混合物を送給することができる。反応室10は、この室内を適当な圧力に保つためにポンプ(図示せず)に接続されるガスの出口29を有している。これらの出口29は、支持電極11(及びその上の1個又は複数の基板4(14)の上方のガス流28が中央領域から放射状に外へ向うように支持電極11に関連して位置付けるようにする。
先ず、プラズマ処理による堆積膜(又は他のいずれかのもの)の所望な諸特性を達成するように、プラズマ処理過程の主要件(例えば、温度、圧力、反応ガス、ガス混合物の配合、流速等)を最適化することは標準的で、しかも望ましいやり方である。しかし、同一配合のガス組成物を供給ライン21及び22を経て送給する場合に、(別個の供給ライン21及び22内の流速を異なるように調整しても)或る反応ガスは気相中でのプラズマ反応にて、ガス流28が大面積電極11の周辺個所におけるデバイス基板4(14)に達する前にこの基板の中央表面領域にてかなり使用されることになり、基板全体にわたり不均一な堆積又はエッチングが生じ得ることを本発明者等は確めた。従って、シャワーヘッド12から放射状に流れるガスはプラズマ空間内で処理反応により変動量にて消費される。このために、反応室10内のガス分布は個々のガスの利用率の関数並びに有孔電極領域12a及び12bからの流れ配列の関数となる。たいていの場合、本発明を採用しなければ処理がかなり不均一となる。
・・・
本発明により斯様な不均一性をなくすためには、第1及び第2供給ライン21及び22をガス混合物のそれぞれ別個の一次及び二次供給部(23a,24a,55,56)及び(23b,24b,55,56)に接続する。・・・
周辺のガス混合物25bにおける第1反応ガスの供給量を斯様に増やすことにより、支持電極11の周辺領域での第1反応ガスの消費量を少なくとも部分的に補償することができる。このようにして、プラズマ処理を支持電極11の全領域にわたりかなり均一に行うことができる。さらに、均一性を改善するこの方法によれば、処理過程の動作に関する主要件(例えば、温度、圧力、一次ガス混合物25aの配合、流速等)を先ず最適化し、その後1個以上の二次供給部(23b,24b,55,56)とのガス配合の微調整を行なって、特定の装置内でのプラズマ処理操作にて観察される不均一性を補償するようにガス混合物25bを調整することができる。」(第7頁第29行-第10頁第20行)

(1i)「本願の図3に示すように、又EP-A-0561462に説明されているように、MIMデバイス及びTFTの製造は、薄膜の過剰領域をその厚さ全体にわたりエッチング除去するためにホトリソグラフィ兼エッチング段を伴なう。このエッチング段は図1に示したようなプラズマ反応器内にて行なうこともできる。例えば、SF_(6)及びCHF_(3)のような様々なガス混合物をプラズマ用に用いることができる。この場合には、第2供給部55bから周辺領域12bに送給されるガス混合物25bの或る反応ガスの量を、第1供給部55aから中央領域12aに送給されるガス混合物25aにおける対応する反応ガスの量よりも多くなるようにガス配合を調整して、エッチング速度及びエッチング特性を補償するようにする。このエッチング工程段の後に、デバイス基板4(14)を・・・さらに処理して、・・・例えば液晶ディスプレイを形成する。」(第12頁第25行-第13頁第7行)

(3-2)当審の判断
(3-2-1)引用例4に記載の発明
引用例4の上記摘記(1a)-(1i)をまとめると、引用例4には、
「デバイス基板の表面から薄膜の過剰領域をその厚さ全体にわたりエッチング除去するためにホトリソグラフィ兼エッチング段を伴なう処理を行う、半径方向のガス流を有する平行板タイプのプラズマエッチング装置であって、
反応室10と、
デバイス基板を取付ける支持電極11と、
前記支持電極に対向して取り付けられている有孔電極12と、ガス供給手段21及び22とのアセンブリによって形成される所謂“シャワーヘッド”と、
インピーダンス整合回路網52を経て前記有孔電極12に無線周波電圧を印加するRF源50と、
支持電極11に関連して位置付けされたガスの出口29に接続されたポンプとを備え、
第1供給ライン21は有孔電極12の中央領域12aを経て一次ガス混合物を送給し、且つ第2供給ライン22は有孔電極12の環状周辺領域12bを経て二次ガス混合物を送給するものであって、
前記ガス混合物が、該混合物における第2反応ガスよりも速い割合でプラズマ処理にて消費される第1反応ガスを含み、且つ前記第2供給ラインが、前記第1供給ラインによって供給される一次ガス混合物よりも第1反応ガスを多量に含む二次ガス混合物を供給して、プラズマ処理が支持電極の領域全体にわたり均一に行われるようにすることを特徴とするプラズマエッチング装置。」
の発明(以下、「引用例4発明」という。)が記載されていると認められる。

(3-2-2)対比
本願発明1と引用例4発明とを対比する。
(a)引用例4発明の「デバイス基板」、「反応室」、「支持電極」、「RF源」、「支持電極11に関連して位置付けされたガスの出口29に接続されたポンプ」は、本願発明1の「被処理体」、「真空処理室」、「試料台」、「高周波電源」、「真空処理室の下部に接続され該真空処理室内を排気する排気手段」に相当する。

(b)引用例4発明の「有孔電極12の中央領域12a」、「有孔電極12の環状周辺領域12b」は、それぞれ、本願発明1の「第1のガス噴出領域」、「第2のガス噴出領域」に相当し、また、引用例4発明の「第1供給ラインによって供給される一次ガス混合物」及び「第1供給ラインによって供給される一次ガス混合物よりも第1反応ガスを多量に含む二次ガス混合物」は、本願発明1の「第1のガス噴出領域と前記第2のガス噴出領域から各々供給される、均一性を改善させたい加工特性に対応した前記流量比の異なる混合ガス」に相当する。

(c)引用例4発明の「支持電極に対向して取り付けられている有孔電極12」は、本願発明1の「ガスシャワープレート」に相当する部材であると同時に、本願発明1の「導電性材料からなり試料台に対向して真空処理室の上部に配置された平面状の電極」に相当する部材であるとも認められる。

(d)引用例4発明と本願発明1は、半径方向のガス流を有する平行板タイプのプラズマエッチング装置である点で一致する。

そうすると、本願発明1と引用例4発明は、
「被処理体をエッチング処理する真空処理室を備え、半径方向のガス流を有する平行板タイプのプラズマエッチング装置であって、
ガスシャワープレートは、前記被処理体の中心部上方に相当する位置に配置され、前記被処理体の中心を中心とした中央側空間に連通する複数のガス噴出口から前記真空処理室内へ、第1の混合比を有する混合ガスが噴出する第1のガス噴出領域と、
前記第1のガス噴出領域の外周側に配置され外側空間に連通する複数のガス噴出口から前記真空処理室内へ前記第1のガス噴出領域とは流量比の異なる混合ガスが噴出する第2のガス噴出領域とを備え、
前記第1のガス噴出領域と前記第2のガス噴出領域から各々、均一性を改善させたい加工特性に対応した前記流量比の異なる混合ガスを導入する
ことを特徴とするプラズマエッチング装置。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:被処理体をエッチング処理する真空処理室を備え、半径方向のガス流を有する平行板タイプのプラズマエッチング装置として、本願発明1が、「真空処理室内に配置され、被処理体を載置する試料台と、導電性材料からなり前記試料台に対向して前記真空処理室の上部に配置された平面状の電極と、該平面状の電極の前記真空処理室側に設けられたガスシャワープレートと、高周波電源から前記平面状の電極の中央付近に高周波の電磁波を導く手段と、前記真空処理室の下部に接続され該真空処理室内を排気する排気手段」という構造を備えるのに対して、引用例4発明は「デバイス基板を取付ける支持電極と、前記支持電極に対向して取り付けられている有孔電極12と、ガス供給手段21及び22とのアセンブリによって形成される所謂“シャワーヘッド”と、インピーダンス整合回路網52を経て前記有孔電極12に無線周波電圧を印加するRF源50と、支持電極11に関連して位置付けされたガスの出口29に接続されたポンプ」という構造を有する点。

相違点2:本願発明1が、「平面状の電極とガスシャワープレートとの間に、前記被処理体の中心を中心として中央側空間及び外側空間が同心円状に形成されており、前記平面状の電極は、前記高周波の電磁波を導く手段よりも外側の位置で前記中央側空間及び前記外側空間に各々連通し流量比の異なるプラズマ生成用の混合ガスを導入するガス導入口を備えて」いるのに対して、引用例4にはこのような構造が示されていない点。

(3-2-3)判断
(a)相違点1について
上記摘記(1f)には「本発明による方法及び装置は様々な構造の反応室に使用することができる。最近最もポピュラーな装置はガス流を放射状か、長手方向のいずれかに流すようにしたものである。最初の場合には、第1供給ラインが有孔電極の中央領域を経てガス混合物を送給し、1個以上の第2供給ラインが有孔電極の1個又は複数の周辺個所を経てガス混合物を送給し、支持電極上方のガス流が空所の第1(中央)領域から放射状に外方へと流れるようにすることができる。」と記載されており、引用例4発明が、引用例4に記載された特定の構造を具備したプラズマエッチング装置に特有の課題を解決する為の発明ではなく、「ガス流を放射状か、長手方向のいずれかに流すようにした」ポピュラーな装置に使用することができることが示されている。

一方、被処理体をエッチング処理する真空処理室を備え、半径方向のガス流を有する平行板タイプのプラズマエッチング装置として、「真空処理室内に配置され、被処理体を載置する試料台と、導電性材料からなり前記試料台に対向して前記真空処理室の上部に配置された平面状の電極と、該平面状の電極の前記真空処理室側に設けられたガスシャワープレートと、高周波電源から前記平面状の電極の中央付近に高周波の電磁波を導く手段と、前記真空処理室の下部に接続され該真空処理室内を排気する排気手段」という構造を備えた装置は、下記の周知文献1-3にも記載されているように周知である。

周知文献1:特開2000-164563号公報(拒絶査定時に周知技術として示した文献)
周知文献2:特開2000-306883号公報(拒絶査定時に周知技術として示した文献)
周知文献3:国際公開第00/31787号(拒絶査定時に周知技術として示した文献)
周知文献1の図1、周知文献2の図1、周知文献3の図5、6に「真空処理室内に配置され、被処理体を載置する試料台と、導電性材料からなり前記試料台に対向して前記真空処理室の上部に配置された平面状の電極と、該平面状の電極の前記真空処理室側に設けられたガスシャワープレートと、高周波電源から前記平面状の電極の中央付近に高周波の電磁波を導く手段と、前記真空処理室の下部に接続され該真空処理室内を排気する排気手段」という構造を備えた装置が記載されていることが認められる。

そして、前記「真空処理室内に配置され、被処理体を載置する試料台と、導電性材料からなり前記試料台に対向して前記真空処理室の上部に配置された平面状の電極と、該平面状の電極の前記真空処理室側に設けられたガスシャワープレートと、高周波電源から前記平面状の電極の中央付近に高周波の電磁波を導く手段と、前記真空処理室の下部に接続され該真空処理室内を排気する排気手段」を備えた周知のプラズマエッチング装置が、前記「ガス流を放射状か、長手方向のいずれかに流すようにした」ポピュラーな装置に該当することを鑑みれば、引用例4発明の「有孔電極」を備えた構造に替えて、「真空処理室内に配置され、被処理体を載置する試料台と、導電性材料からなり前記試料台に対向して前記真空処理室の上部に配置された平面状の電極と、該平面状の電極の前記真空処理室側に設けられたガスシャワープレートと、高周波電源から前記平面状の電極の中央付近に高周波の電磁波を導く手段と、前記真空処理室の下部に接続され該真空処理室内を排気する排気手段」とした周知の構造を採用することは当業者が容易に想到し得たことであると認められる。

(b)相違点2について
引用例4発明において、プラズマエッチング装置の構造として「真空処理室内に配置され、被処理体を載置する試料台と、導電性材料からなり前記試料台に対向して前記真空処理室の上部に配置された平面状の電極と、該平面状の電極の前記真空処理室側に設けられたガスシャワープレートと、高周波電源から前記平面状の電極の中央付近に高周波の電磁波を導く手段と、前記真空処理室の下部に接続され該真空処理室内を排気する排気手段」を採用することは、上記「(a)相違点1について」で検討したように当業者が容易になし得たことである。
一方、引用例4発明は、「第1供給ライン21は有孔電極12の中央領域12aを経て一次ガス混合物を送給し、且つ第2供給ライン22は有孔電極12の環状周辺領域12bを経て二次ガス混合物を送給するもの」である。
してみれば、引用例4発明に、プラズマエッチング装置の構造として「真空処理室内に配置され、被処理体を載置する試料台と、導電性材料からなり前記試料台に対向して前記真空処理室の上部に配置された平面状の電極と、該平面状の電極の前記真空処理室側に設けられたガスシャワープレートと、高周波電源から前記平面状の電極の中央付近に高周波の電磁波を導く手段と、前記真空処理室の下部に接続され該真空処理室内を排気する排気手段」を備えた構造をとするにあたり、ガスシャワープレートの中央側空間に連通する第1のガス噴出領域の複数のガス噴出口から一次ガス混合物が噴出し、前記第1のガス噴出領域の外周側の複数のガス噴出口から流量比の異なる二次ガス混合物が噴出するようにするために、何らかの構造を必要とすることは自明である。
そして、前記必要に応じて、「平面状の電極とガスシャワープレートとの間に、前記被処理体の中心を中心として中央側空間及び外側空間を同心円状に形成」すること、及び、「前記平面状の電極に、前記高周波の電磁波を導く手段よりも外側の位置で前記中央側空間及び前記外側空間に各々連通し流量比の異なるプラズマ生成用の混合ガスを導入するガス導入口を」設けることは、引用例4発明の具体的適用に伴う設計変更であって、当業者の通常の創作能力の発揮であり、この点において進歩性を認めることはできない。

また、引用例4に記載された発明に、前記周知技術を組み合わせることを妨げる格別の理由は認められず、両者を組み合わせることによる効果も当業者が予測する範囲内のものといえる。

なお、審判請求人は、審判請求書の請求の理由の「(1.4) 本願発明の作用、効果」の項目において、「本願発明は、プラズマ生成のための母ガスの供給と電力の供給の両面において被処理体の面内均一化を図ることで、活性種と反応副生成物の面内均一化を実現し、選択比の均一化を達成するものであります。」と主張する。
しかしながら、本願明細書の「このように、本発明は、先に述べた活性種濃度分布や副生成ガス濃度分布を、異なる流量や流量比からなる複数の混合ガスを導入することで均一化し、均一なプラズマ処理を行うことが可能となる。」(【0016】)等の記載から、「本願発明は、プラズマ生成のための母ガスの供給において被処理体の面内均一化を図ることで、選択比の均一化を達成するものであります。」ことを認めることはできるものの、本願発明が「電力の供給において被処理体の面内均一化を図ることで、活性種と反応副生成物の面内均一化を実現し、選択比の均一化を達成」したという技術的意義を有する発明であることは、本願明細書又は図面に記載されておらず、また、「本願発明の如く、平面状の電極(平面アンテナ2)の中央付近に高周波電源から電磁波を印加する構成Eを採用した場合、この電磁波(電界)によるプラズマ生成効率は被処理体の中心部上方に相当する位置で最大であり、半径方向外側に向かうほど、電界が弱くなる中央凸型の傾向となります。」等の効果は、審判請求書等で初めて示されたものであるから、前記主張は明細書の記載に基づかない主張であって採用することができない。
また、仮に、前記「平面状の電極(平面アンテナ2)の中央付近に高周波電源から電磁波を印加する構成Eを採用した場合、この電磁波(電界)によるプラズマ生成効率は被処理体の中心部上方に相当する位置で最大であり、半径方向外側に向かうほど、電界が弱くなる中央凸型の傾向となります。」等の効果を認めたとしても、このような効果は前記周知文献に記載された発明もまた備えているものと解されるから、引用例4発明に周知技術を適用した発明において、前記効果は当業者が予測する範囲内のものであり、本願発明1の進歩性を肯定するに足る格別の効果であるということはできない。

さらに、審判請求人は、審判請求書の請求の理由の「(2.3.3)引用文献4と周知技術との組み合わせ」の項目において、「しかしながら、引用文献4の発明は、反応ガスの分布制御によりプラズマ処理が面内均一に行われるようにした(6頁15?16行)ものであります。すなわち、堆積薄膜の膜厚や組成の不均一性の改善のための、反応ガスの分布制御に主眼が置かれています。引用文献4には、プラズマ生成効率に配慮して「プラズマ処理に関わるイオンやラジカルなどの活性種を被処理体の処理面全体にわたり均一な濃度で分布させる。」という技術思想の開示は有りません。前記したように、高周波電源として引用文献4で採用されている13.56MHzの程度の比較的低い周波数であれば問題はありませんが、VHF帯やUHF帯、マイクロ波のような高い周波数を採用した場合、真空処理室内へ放射される電磁波(電界)の分布の偏りの影響が大きくなります。引用文献4では、高周波電源21からの高周波電力が外周端おいて有孔電極12に供給されています。この場合、電界によるプラズマ生成効率は、被処理体の一方の端部上方に相当する位置で最大であり、他方の端部側に向かうほど、略同心円状に電界が弱くなる傾向となります。引用文献4では、この被処理体の一方の端部を中心とする電界強度の分布と、被処理体の中央を中心とする同心円状の混合ガスの流量比の分布とは、全く相関関係がありません。そのため、中央部と周辺部とで流量比を制御したとしても、プラズマ生成のための母ガスの分布と電界強度の分布との対応関係がとれず、プラズマ処理に関わるイオンやラジカルなどの活性種を被処理体の処理面全体にわたり均一な濃度で分布させることが出来ません。換言すると、母ガスの供給と電力の供給の両面において被処理体の面内均一化を図ることはできません。」と主張するが、本願発明1は、「高周波の電磁波」と規定するだけであって、審判請求人が前記請求の理由において「問題はありません」とする「高周波電源として引用文献4で採用されている13.56MHzの程度の比較的低い周波数」を除外するものではないから、審判請求人の前記主張は、その主張の前提を欠き採用することができない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用例4と周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-10 
結審通知日 2009-12-15 
審決日 2009-12-28 
出願番号 特願2005-182912(P2005-182912)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 572- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷部 智寿  
特許庁審判長 徳永 英男
特許庁審判官 國方 康伸
加藤 浩一
発明の名称 プラズマエッチング装置  
代理人 ポレール特許業務法人  

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