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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 1号課題同一 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2号主要部同一 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1212008
審判番号 不服2007-2398  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-18 
確定日 2010-02-18 
事件の表示 特願2002-574078「車載マルチメディア装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月26日国際公開、WO02/75538〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、
本願は、2001年3月19日を国際出願日とする出願であって、
平成18年1月25日付けで審査請求がなされ、
同年8月28日付けで拒絶理由通知(同年9月5日発送)がなされ、
同年11月2日付けで意見書が提出されると共に、同日付けで手続補正書が提出され、
同年12月11日付けで拒絶査定(同年12月19日発送)がなされ、
平成19年1月18日付けで審判請求がされると共に、
同年2月16日付けで手続補正書が提出されとものである。
なお、平成19年3月9日付けで特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、平成21年3月5日付けで当該報告に対する意見を求める旨の審尋(平成21年3月10日発送)がなされ、これに対して同年5月8日付けで回答書が提出されている。



第2.補正却下の決定


[補正却下の決定の結論]
平成19年2月16日付けの明細書についての手続補正を却下する。


[理由]
1.本件補正の内容
平成19年2月16日付けの手続補正(以下「本件補正」と記す。)は、特許請求の範囲について、下記の補正前の特許請求の範囲から、下記の補正後の特許請求の範囲に補正し、これに合わせて発明の詳細な説明の【課題を解決するための手段】の項を補正しようとするものである。

<補正前の特許請求の範囲>
「 【請求項1】
複数の外部ハードウェアと、
上記複数の外部ハードウェアの動作制御に用いられる複数のアプリケーションモジュールからなるアプリケーションモジュール群と、上記アプリケーションモジュール各々の実行をそれぞれ制御するのに用いられるアプリケーション統括モジュールとから構成されるソフトウェアを実行するマイクロプロセッサとを備え、
上記マイクロプロセッサは、上記ソフトウェアを実行して上記外部ハードウェアの動作を制御するにあたり、上記アプリケーション統括モジュールおよび上記アプリケーションモジュールを、独立した別のプロセス空間で並列に実行することを特徴とする車載マルチメディア装置。
【請求項2】
アプリケーションモジュール群は、マイクロプロセッサに実行されることにより、外部ハードウェアとの間でデータの入出力が行われる外部入出力制御モジュールをアプリケーションモジュールの一つとして備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項3】
マイクロプロセッサは、アプリケーション統括モジュールを実行することにより、外部ハードウェアからのデータを解析し、この解析結果に対応するアプリケーションモジュールまたは上記アプリケーション統括モジュールを実行するプロセス空間に上記データを配信することを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項4】
マイクロプロセッサは、アプリケーション統括モジュールを実行して、各アプリケーションモジュールの起動および終了を制御することを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項5】
マイクロプロセッサに実行されることにより、外部ハードウェアに入力された音声データを解析する音声認識部を備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項6】
マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーションモジュールからの文章データを解析し、この解析した文章データを外部ハードウェアによって読上げる文章読上げ部を備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項7】
アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーションモジュールの実行状態の遷移を検知する状態遷移検知部を備え、
上記マイクロプロセッサは、上記アプリケーション統括モジュールの実行に際し、上記アプリケーションモジュールに対するデータを受けると、上記状態遷移検知部を実行して該アプリケーションモジュールが受取可能な実行状態であることを検知してから、該アプリケーションモジュールを実行するプロセス空間に上記データを配信することを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項8】
アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーションモジュールの実行状態の遷移を検知する状態遷移検知部と、自装置に入力されたデータがどのアプリケーションモジュールを用いる処理に使われるデータであるのかを解釈する命令解釈部と、上記命令解釈部によって解釈されたデータに対応するアプリケーションモジュール向けのデータに変換して該アプリケーションモジュールを実行するプロセス空間に送信する命令変換部とを備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項9】
マイクロプロセッサは、アプリケーション統括モジュールを実行することにより、アプリケーションモジュールの起動有無を判定し、上記アプリケーションモジュールを起動して実行を開始してから該アプリケーションモジュールを実行するプロセス空間にデータを配信することを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項10】
アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、各アプリケーションモジュールを実行するプロセス空間の間で通信を行う通信インタフェース部と、上記マイクロプロセッサに実行されることにより、上記通信インタフェース部を除く上記アプリケーション統括モジュールの全ての機能が実現されるアプリケーション統括モジュールアプリケーション部とを備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項11】
アプリケーションモジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーション統括モジュールまたは他の各アプリケーションモジュールを実行するプロセス空間の間で通信を行う通信インタフェース部と、上記マイクロプロセッサに実行されることにより、上記通信インタフェース部を除く該アプリケーションモジュールに固有の機能が実現されるアプリケーションモジュールアプリケーション部とを備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項12】
アプリケーション統括モジュールおよびアプリケーションモジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、相互のプロセス空間の間で通信を行う共通通信インタフェース部を共通して備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項13】
マイクロプロセッサは、アプリケーション統括モジュールを実行することにより、読出命令データを受けたアプリケーションモジュールを主記憶へ読み出すことを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項14】
マイクロプロセッサは、アプリケーション統括モジュールを実行することにより、消去命令データを受けたアプリケーションモジュールを主記憶から消去することを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項15】
マイクロプロセッサは、アプリケーション統括モジュールを実行して主記憶からアプリケーションモジュールを消去する前に該アプリケーションモジュールの内部状態およびデータを保存することを特徴とする請求項14記載の車載マルチメディア装置。
【請求項16】
読出命令データまたは消去命令データを受けたアプリケーションモジュールを主記憶へ読み出しまたは主記憶から消去するアプリケーション入れ替え部を備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項17】
マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーション統括モジュールおよび各アプリケーションモジュールに共通する複数の機能をそれぞれ実現するプログラムを登録した複数のライブラリからなるライブラリ群を備え、
上記マイクロプロセッサは、上記アプリケーション統括モジュールおよび各上記アプリケーションモジュールを実行するにあたり、共通する機能に関して上記ライブラリ群の該当機能に関するライブラリからプログラムを読み出すことを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項18】
ライブラリ群は、全てのライブラリに共通のインタフェースを有し、
マイクロプロセッサは、アプリケーション統括モジュールおよび各アプリケーションモジュールを実行するにあたり、上記ライブラリ群の上記インタフェースを介して所望のライブラリからプログラムを読み出すことを特徴とする請求項17記載の車載マルチメディア装置。
【請求項19】
外部入出力制御モジュールは、マイクロプロセッサに実行されて外部ハードウェアとデータの入出力の制御を行なうプログラムを登録した外部入出力ライブラリを備えることを特徴とする請求項2記載の車載マルチメディア装置。
【請求項20】
各アプリケーションモジュールは、マイクロプロセッサに実行されて外部ハードウェアに描画を行なうプログラムを登録した描画ライブラリと、上記外部ハードウェアとデータの入出力の制御を行なうプログラムを登録した外部入出力ライブラリとをそれぞれ備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項21】
アプリケーションモジュール群は、マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーション統括モジュールおよび各アプリケーションモジュールに共通する複数の機能をそれぞれ実現するプログラムを登録した複数のライブラリからなるライブラリ群を上記アプリケーションモジュールの一つとして備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項22】
マイクロプロセッサは、複数のアプリケーションモジュールを実行するにあたり、ライブラリ群における同一のライブラリに同一の手順で同時にアクセスすることを特徴とする請求項21記載の車載マルチメディア装置。
【請求項23】
アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、上記アプリケーション統括モジュールまたはアプリケーションモジュールから描画命令データを受けると描画可否を判定し、描画可能であれば外部ハードウェアに描画を行う描画権制御部を備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項24】
アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、上記アプリケーション統括モジュールまたはアプリケーションモジュールから音声出力要求を受けると音声出力可否を判定し、音声出力可能であれば外部ハードウェアから音声を出力する音声出力権制御部を備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項25】
アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、上記アプリケーション統括モジュールまたはアプリケーションモジュールから描画権要求データを受け取ると、上記アプリケーション統括モジュールまたは上記アプリケーションモジュールの描画可否を判定し、描画可能であれば上記アプリケーション統括モジュールまたは上記アプリケーションモジュールに描画可能通知データを発する状態遷移検知部を備え、
上記マイクロプロセッサに実行されることにより、上記描画可能通知データを受けた上記アプリケーション統括モジュールまたは上記アプリケーションモジュールからの上記描画命令データにしたがって外部ハードウェアに描画を行なうプログラムを登録した描画ライブラリを備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項26】
アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、上記アプリケーション統括モジュールまたはアプリケーションモジュールから音声出力権要求データを受け取ると、上記アプリケーション統括モジュールまたは上記アプリケーションモジュールの音声出力可否を判定し、音声出力可能であれば上記アプリケーション統括モジュールまたは上記アプリケーションモジュールに音声出力可能通知データを発する状態遷移検知部を備え、
上記マイクロプロセッサに実行されることにより、上記音声出力可能通知データを受けた上記アプリケーション統括モジュールまたは上記アプリケーションモジュールからの音声出力命令データにしたがって外部ハードウェアから音声を出力するプログラムを登録した音声出力ライブラリを備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項27】
マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーション統括モジュールまたはアプリケーションモジュールから描画命令データを受けると描画可否を判定し、描画可能であれば外部ハードウェアに描画を行なうプログラムを登録した描画ライブラリを備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項28】
マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーション統括モジュールまたはアプリケーションモジュールから音声出力命令データを受けると音声出力可否を判定し、音声出力可能であれば外部ハードウェアから音声出力を行なうプログラムを登録した音声出力ライブラリを備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項29】
アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、外部ハードウェアに描画を行なう描画コントロール部と、上記描画を行う際に必要な画面データを記憶した画面データ部とを備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項30】
アプリケーションモジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、外部ハードウェアに描画を行なう描画コントロール部と、上記描画を行う際に必要な画面データを記憶した画面データ部とを備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。」

<補正後の特許請求の範囲>
「 【請求項1】
複数の外部ハードウェアと、
上記複数の外部ハードウェアの動作制御に用いられる複数のアプリケーションモジュールからなるアプリケーションモジュール群と、上記アプリケーションモジュール各々の実行をそれぞれ制御するのに用いられるアプリケーション統括モジュールとから構成されるソフトウェアを実行するマイクロプロセッサと、
上記マイクロプロセッサに実行されることにより、上記アプリケーション統括モジュールおよび各アプリケーションモジュールに共通する複数の機能をそれぞれ実現するプログラムを登録した複数のライブラリからなり、全ての上記ライブラリに共通のインタフェースを有するライブラリ群と、
上記各アプリケーションモジュールに設けられ、上記マイクロプロセッサに実行されて上記外部ハードウェアに描画を行うプログラムを登録した描画ライブラリと、
上記各アプリケーションモジュールに設けられ、上記マイクロプロセッサに実行されて上記外部ハードウェアとの間におけるデータの入出力の制御を行うプログラムを登録した外部入出力ライブラリとを備え、
上記マイクロプロセッサは、
上記ソフトウェアを実行して上記外部ハードウェアの動作を制御するにあたり、上記アプリケーション統括モジュールおよび上記アプリケーションモジュールを、独立した別のプロセス空間で並列に実行し、
上記アプリケーション統括モジュールを実行することにより上記外部ハードウェアからのデータを解析して、この解析結果に対応するアプリケーションモジュールまたは上記アプリケーション統括モジュールのプロセス空間に上記データを配信し、
上記アプリケーション統括モジュールおよび上記各アプリケーションモジュールを実行するにあたり、共通する機能に関して上記ライブラリ群の該当機能に関するライブラリから上記共通のインタフェースを介してプログラムを読み出して実行し、
上記外部ハードウェアに描画を行う場合、該外部ハードウェアの動作制御に用いられるアプリケーションモジュールの上記描画ライブラリからプログラムを読み出して実行し、
上記外部ハードウェアとの間におけるデータの入出力の制御を行う場合、該外部ハードウェアの動作制御に用いられるアプリケーションモジュールの上記外部入出力ライブラリからプログラムを読み出して実行することを特徴とする車載マルチメディア装置。
【請求項2】
アプリケーションモジュール群は、マイクロプロセッサに実行されることにより、外部ハードウェアとの間でデータの入出力が行われる外部入出力制御モジュールをアプリケーションモジュールの一つとして備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項3】
マイクロプロセッサは、アプリケーション統括モジュールを実行して、各アプリケーションモジュールの起動および終了を制御することを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項4】
マイクロプロセッサに実行されることにより、外部ハードウェアに入力された音声データを解析する音声認識部を備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項5】
マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーションモジュールからの文章データを解析し、この解析した文章データを外部ハードウェアによって読上げる文章読上げ部を備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項6】
アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーションモジュールの実行状態の遷移を検知する状態遷移検知部を備え、
上記マイクロプロセッサは、上記アプリケーション統括モジュールの実行に際し、上記アプリケーションモジュールに対するデータを受けると、上記状態遷移検知部を実行して該アプリケーションモジュールが受取可能な実行状態であることを検知してから、該アプリケーションモジュールを実行するプロセス空間に上記データを配信することを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項7】
アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーションモジュールの実行状態の遷移を検知する状態遷移検知部と、入力データがどのアプリケーションモジュールを用いる処理に使われるデータであるのかを解釈する命令解釈部と、上記命令解釈部によって解釈されたデータに対応するアプリケーションモジュール向けのデータに変換して該アプリケーションモジュールを実行するプロセス空間に送信する命令変換部とを備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項8】
マイクロプロセッサは、アプリケーション統括モジュールを実行することにより、アプリケーションモジュールの起動有無を判定し、上記アプリケーションモジュールを起動して実行を開始してから該アプリケーションモジュールを実行するプロセス空間にデータを配信することを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項9】
アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、各アプリケーションモジュールを実行するプロセス空間で通信を行う通信インタフェース部と、上記マイクロプロセッサに実行されることにより、上記通信インタフェース部を除く上記アプリケーション統括モジュールの全ての機能が実現されるアプリケーション統括モジュールアプリケーション部とを備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項10】
アプリケーションモジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーション統括モジュールまたは他の各アプリケーションモジュールを実行するプロセス空間で通信を行う通信インタフェース部と、上記マイクロプロセッサに実行されることにより、上記通信インタフェース部を除く該アプリケーションモジュールに固有の機能が実現されるアプリケーションモジュールアプリケーション部とを備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項11】
アプリケーション統括モジュールおよびアプリケーションモジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、相互のプロセス空間で通信を行う共通通信インタフェース部を共通して備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項12】
マイクロプロセッサは、アプリケーション統括モジュールを実行することにより、読出命令データを受けたアプリケーションモジュールを主記憶へ読出すことを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項13】
マイクロプロセッサは、アプリケーション統括モジュールを実行することにより、消去命令データを受けたアプリケーションモジュールを主記憶から消去することを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項14】
マイクロプロセッサは、アプリケーション統括モジュールを実行して主記憶からアプリケーションモジュールを消去する前に該アプリケーションモジュールの内部状態およびデータを保存することを特徴とする請求項13記載の車載マルチメディア装置。
【請求項15】
読出命令データまたは消去命令データを受けたアプリケーションモジュールを主記憶へ読出または主記憶から消去するアプリケーション入れ替え部を備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項16】
アプリケーションモジュール群は、マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーション統括モジュールおよび各アプリケーションモジュールに共通する複数の機能をそれぞれ実現するプログラムを登録した複数のライブラリからなるライブラリ群を上記アプリケーションモジュールの一つとして備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項17】
マイクロプロセッサは、複数のアプリケーションモジュールを実行するにあたり、ライブラリ群における同一のライブラリに同一の手順で同時にアクセスすることを特徴とする請求項16記載の車載マルチメディア装置。
【請求項18】
アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、上記アプリケーション統括モジュールまたはアプリケーションモジュールから描画命令データを受けると描画可否を判定し、描画可能であれば外部ハードウェアに描画を行う描画権制御部を備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項19】
アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、上記アプリケーション統括モジュールまたはアプリケーションモジュールから音声出力要求を受けると音声出力可否を判定し、音声出力可能であれば外部ハードウェアから音声を出力する音声出力権制御部を備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項20】
アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、上記アプリケーション統括モジュールまたはアプリケーションモジュールから描画権要求データを受け取ると、上記アプリケーション統括モジュールまたは上記アプリケーションモジュールの描画可否を判定し、描画可能であれば上記アプリケーション統括モジュールまたは上記アプリケーションモジュールに描画可能通知データを発する状態遷移検知部を備え、
上記マイクロプロセッサに実行されることにより、上記描画可能通知データを受けた上記アプリケーション統括モジュールまたは上記アプリケーションモジュールからの上記描画命令データにしたがって外部ハードウェアに描画を行なうプログラムを登録した描画ライブラリを備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項21】
アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、上記アプリケーション統括モジュールまたはアプリケーションモジュールから音声出力権要求データを受け取ると、上記アプリケーション統括モジュールまたは上記アプリケーションモジュールの音声出力可否を判定し、音声出力可能であれば上記アプリケーション統括モジュールまたは上記アプリケーションモジュールに音声出力可能通知データを発する状態遷移検知部を備え、
上記マイクロプロセッサに実行されることにより、上記音声出力可能通知データを受けた上記アプリケーション統括モジュールまたは上記アプリケーションモジュールからの音声出力命令データにしたがって外部ハードウェアから音声を出力するプログラムを登録した音声出力ライブラリを備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項22】
マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーション統括モジュールまたはアプリケーションモジュールから描画命令データを受けると描画可否を判定し、描画可能であれば外部ハードウェアに描画を行なうプログラムを登録した描画ライブラリを備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項23】
マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーション統括モジュールまたはアプリケーションモジュールから音声出力命令データを受けると音声出力可否を判定し、音声出力可能であれば外部ハードウェアから音声出力を行なうプログラムを登録した音声出力ライブラリを備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項24】
アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、外部ハードウェアに描画を行なう描画コントロール部と、上記描画を行う際に必要な画面データを記憶した画面データ部とを備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。
【請求項25】
アプリケーションモジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、外部ハードウェアに描画を行なう描画コントロール部と、上記描画を行う際に必要な画面データを記憶した画面データ部とを備えることを特徴とする請求項1記載の車載マルチメディア装置。」


本件補正を要約すれば、本件補正は、本件補正前の請求項3、17?20を削除するとともに、本件補正後の請求項1を、本件補正前の請求項1に記載の発明を特定するための事項(以下、発明を特定するための事項を「発明特定事項」と略記する。)に、下記の発明特定事項を追加するものである。

<発明特定事項1>
本件補正前の請求項3に対応する「上記アプリケーション統括モジュールを実行することにより上記外部ハードウェアからのデータを解析して、この解析結果に対応するアプリケーションモジュールまたは上記アプリケーション統括モジュールのプロセス空間に上記データを配信」する旨の発明特定事項。

<発明特定事項2>
本件補正前の請求項17、18に記載の事項に対応する
「上記マイクロプロセッサに実行されることにより、上記アプリケーション統括モジュールおよび各アプリケーションモジュールに共通する複数の機能をそれぞれ実現するプログラムを登録した複数のライブラリからなり、全ての上記ライブラリに共通のインタフェースを有するライブラリ群と」を備え、
上記マイクロプロセッサは、
「上記アプリケーション統括モジュールおよび上記各アプリケーションモジュールを実行するにあたり、共通する機能に関して上記ライブラリ群の該当機能に関するライブラリから上記共通のインタフェースを介してプログラムを読み出して実行」する旨の発明特定事項。

<発明特定事項3>
本件補正前の請求項20に記載の事項に対応する
「上記各アプリケーションモジュールに設けられ、上記マイクロプロセッサに実行されて上記外部ハードウェアに描画を行うプログラムを登録した描画ライブラリと」、
「上記各アプリケーションモジュールに設けられ、上記マイクロプロセッサに実行されて上記外部ハードウェアとの間におけるデータの入出力の制御を行うプログラムを登録した外部入出力ライブラリと」を備える旨の発明特定事項。

<発明特定事項4>
本件補正前のいずれの請求項にも記載の無かった
上記マイクロプロセッサは、
「上記外部ハードウェアに描画を行う場合、該外部ハードウェアの動作制御に用いられるアプリケーションモジュールの上記描画ライブラリからプログラムを読み出して実行し」、
「上記外部ハードウェアとの間におけるデータの入出力の制御を行う場合、該外部ハードウェアの動作制御に用いられるアプリケーションモジュールの上記外部入出力ライブラリからプログラムを読み出して実行する」
旨の発明特定事項。


2.本件補正が新規事項の追加であるか否かについての検討

(1)本件補正後の請求項1記載の事項について
特許法第184条の6第3項の規定により願書に添付して提出した明細書、同明細書に記載した特許請求の範囲、同図面と見なされる国際出願日における明細書、請求の範囲、図面(以下「当初明細書等」と記す。)の記載を検討するに、本件補正前の請求項1に記載の発明特定事項と上記発明特定事項1?4の全ての技術的事項を備える発明は、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもない。

なお、当初明細書等に記載の「実施の形態1」は上記発明特定事項1を備えるものではあるものの、上記発明特定事項2、3及び4を備えるものではない。
また、当初明細書等に記載の「実施の形態2」?「実施の形態12」、「実施の形態13」のうち第29図に対応する実施の形態、「実施の形態15」、「実施の形態18」の説明には上記発明特定事項1を備えるか否かについての明示はないものの、「実施の形態1」の記載から上記発明特定事項1を備えると類推できる。しかしながら、上記発明特定事項2、3及び4を備えるものではない。
また、当初明細書等に記載の「実施の形態13」のうち第30図に対応する実施の形態は「第30図」や国際出願時の明細書の「また、第30図に示すように、外部入出力制御モジュール20に外部入出力ライブラリ(I/Oライブラリ)71を設けて、外部との入出力の制御をアプリケーション統括モジュール17以外のアプリケーションモジュール19にまかせても良い。」(第47頁第9行?第12行)との記載からみて、「外部入出力ライブラリ(I/Oライブラリ)」は「外部入出力制御モジュール20」のみに設けられており、「外部入出力ライブラリ」が「上記各アプリケーションモジュールに設けられ」る旨を特定する上記発明特定事項3の要件を満たしていない。また、発明特定事項4の「上記外部入出力制御モジュール」は発明特定事項3における「外部入出力制御モジュール」を意味するので、この実施の形態は発明特定事項4も備えていない。
また、当初明細書等に記載の「実施の形態13」のうち第31図に対応する実施の形態は上記発明特定事項2?4を備えてはいるものの、上記発明特定事項1を備える旨の明示は見あたらず、しかも、国際出願時の明細書の「さらに、第31図のように、各アプリケーションモジュール19が、描画ライブラリ68,外部入出力ライブラリ71を使用して、直接外部ハードウェア15とのやりとりを行っても良い。」(第47頁第13行?第15行)との記載からみて、「外部入出力ライブラリ(I/Oライブラリ)」は「アプリケーション統括モジュール」を介さずに「外部ハードウェア15とのやりとり」を行うものであるから、「上記アプリケーション統括モジュールを実行することにより上記外部ハードウェアからのデータを解析して、この解析結果に対応するアプリケーションモジュールまたは上記アプリケーション統括モジュールのプロセス空間に上記データを配信」することは、技術的に不自然な構成であり、この「実施の形態」が技術常識からみて上記発明特定事項1を当然備えるはずのものであると認めることもできない。すなわち、「実施の形態13」のうち第31図に対応する実施の形態の記載も上記発明特定事項1?4の全てを備える技術思想を開示するものではない。
さらに、当初明細書等に記載の「実施の形態14」、「実施の形態16」、「実施の形態17」、「実施の形態19」における「アプリケーションモジュール」は「描画ライブラリ」も「外部入出力ライブラリ」も備えておらず、「描画ライブラリ」及び「外部入出力ライブラリ」が「各アプリケーションモジュールに設けられ」る旨を特定する上記発明特定事項3の要件を満たしておらず、また、発明特定事項4の「上記描画ライブラリ」「上記外部入出力制御モジュール」は発明特定事項3における「描画ライブラリ」「外部入出力制御モジュール」を意味するので、これらの「実施の形態」は発明特定事項4も当然備えていない。また上記発明特定事項1を備えるものとも言えない。
また、他に、上記発明特定事項1?4の全てを備える旨の技術思想を示唆する記載は、当初明細書等には見あたらない。

すなわち、本件補正後の請求項1、及び、これと同様の記載内容の補正後の段落【0012】に記載の技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導き出し得るものではない。
本件補正後の請求項1を引用する本件補正後の請求項2?30に記載の技術的事項も、同様の理由により、当初明細書等のすべての記載を総合しても導き出し得るものではない。

(2)本件補正後の請求項2記載の事項について
本件補正後の請求項2記載の「アプリケーションモジュール群は、マイクロプロセッサに実行されることにより、外部ハードウェアとの間でデータの入出力が行われる外部入出力制御モジュールをアプリケーションモジュールの一つとして備える」との技術的事項を備え、且つ、上記発明特定事項2、3及び4を備える発明も、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもないので、この意味においても、本件補正後の請求項2に記載の技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導き出し得るものではない。

(3)本件補正後の請求項3記載の事項について
本件補正後の請求項3記載の「マイクロプロセッサは、アプリケーション統括モジュールを実行して、各アプリケーションモジュールの起動および終了を制御する」との技術的事項を備え、且つ、上記発明特定事項2、3及び4を備える発明も、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもないので、この意味においても、本件補正後の請求項3に記載の技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導き出し得るものではない。

(4)本件補正後の請求項4記載の事項について
本件補正後の請求項4記載の「マイクロプロセッサに実行されることにより、外部ハードウェアに入力された音声データを解析する音声認識部を備える」との技術的事項を備え、且つ、上記発明特定事項2、3及び4を備える発明も、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもないので、この意味においても、本件補正後の請求項4に記載の技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導き出し得るものではない。

(5)本件補正後の請求項5記載の事項について
本件補正後の請求項5記載の「マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーションモジュールからの文章データを解析し、この解析した文章データを外部ハードウェアによって読上げる文章読上げ部を備える」との技術的事項を備え、且つ、上記発明特定事項2、3及び4を備える発明も、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもないので、この意味においても、本件補正後の請求項5に記載の技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導き出し得るものではない。

(6)本件補正後の請求項6記載の事項について
本件補正後の請求項6記載の「アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーションモジュールの実行状態の遷移を検知する状態遷移検知部を備え」、「上記マイクロプロセッサは、上記アプリケーション統括モジュールの実行に際し、上記アプリケーションモジュールに対するデータを受けると、上記状態遷移検知部を実行して該アプリケーションモジュールが受取可能な実行状態であることを検知してから、該アプリケーションモジュールを実行するプロセス空間に上記データを配信する」との技術的事項を備え、且つ、上記発明特定事項2、3及び4を備える発明も、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもないので、この意味においても、本件補正後の請求項6に記載の技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導き出し得るものではない。

(7)本件補正後の請求項7記載の事項について
本件補正後の請求項7記載の「アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーションモジュールの実行状態の遷移を検知する状態遷移検知部と、入力データがどのアプリケーションモジュールを用いる処理に使われるデータであるのかを解釈する命令解釈部と、上記命令解釈部によって解釈されたデータに対応するアプリケーションモジュール向けのデータに変換して該アプリケーションモジュールを実行するプロセス空間に送信する命令変換部とを備える」との技術的事項を備え、且つ、上記発明特定事項2、3及び4を備える発明も、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもないので、この意味においても、本件補正後の請求項7に記載の技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導き出し得るものではない。

(8)本件補正後の請求項8記載の事項について
本件補正後の請求項8記載の「マイクロプロセッサは、アプリケーション統括モジュールを実行することにより、アプリケーションモジュールの起動有無を判定し、上記アプリケーションモジュールを起動して実行を開始してから該アプリケーションモジュールを実行するプロセス空間にデータを配信する」との技術的事項を備え、且つ、上記発明特定事項2、3及び4を備える発明も、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもないので、この意味においても、本件補正後の請求項8に記載の技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導き出し得るものではない。

(9)本件補正後の請求項12記載の事項について
本件補正後の請求項12記載の「マイクロプロセッサは、アプリケーション統括モジュールを実行することにより、読出命令データを受けたアプリケーションモジュールを主記憶へ読出す」との技術的事項を備え、且つ、上記発明特定事項2、3及び4を備える発明も、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもないので、この意味においても、本件補正後の請求項12に記載の技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導き出し得るものではない。

(10)本件補正後の請求項13記載の事項について
本件補正後の請求項13記載の「マイクロプロセッサは、アプリケーション統括モジュールを実行することにより、消去命令データを受けたアプリケーションモジュールを主記憶から消去する」との技術的事項を備え、且つ、上記発明特定事項2、3及び4を備える発明も、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもないので、この意味においても、本件補正後の請求項13に記載の技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導き出し得るものではない。

(11)本件補正後の請求項14記載の事項について
本件補正後の請求項14記載の「マイクロプロセッサは、アプリケーション統括モジュールを実行して主記憶からアプリケーションモジュールを消去する前に該アプリケーションモジュールの内部状態およびデータを保存する」との技術的事項を備え、且つ、上記発明特定事項2、3及び4を備える発明も、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもないので、この意味においても、本件補正後の請求項14に記載の技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導き出し得るものではない。

(12)本件補正後の請求項15記載の事項について
本件補正後の請求項15記載の「読出命令データまたは消去命令データを受けたアプリケーションモジュールを主記憶へ読出または主記憶から消去するアプリケーション入れ替え部を備える」との技術的事項を備え、且つ、上記発明特定事項2、3及び4を備える発明も、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもないので、この意味においても、本件補正後の請求項15に記載の技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導き出し得るものではない。

(13)本件補正後の請求項16記載の事項について
本件補正後の請求項16記載の「アプリケーションモジュール群は、マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーション統括モジュールおよび各アプリケーションモジュールに共通する複数の機能をそれぞれ実現するプログラムを登録した複数のライブラリからなるライブラリ群を上記アプリケーションモジュールの一つとして備える」との技術的事項を備え、且つ、上記発明特定事項1、3及び4を備える発明も、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもないので、この意味においても、本件補正後の請求項16に記載の技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導き出し得るものではない。

(14)本件補正後の請求項17記載の事項について
本件補正後の請求項17記載の「マイクロプロセッサは、複数のアプリケーションモジュールを実行するにあたり、ライブラリ群における同一のライブラリに同一の手順で同時にアクセスする」との技術的事項を備え、且つ、上記発明特定事項1、3及び4を備える発明も、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもないので、この意味においても、本件補正後の請求項17に記載の技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導き出し得るものではない。

(15)本件補正後の請求項18記載の事項について
本件補正後の請求項18記載の「アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、上記アプリケーション統括モジュールまたはアプリケーションモジュールから描画命令データを受けると描画可否を判定し、描画可能であれば外部ハードウェアに描画を行う描画権制御部を備える」との技術的事項を備え、且つ、上記発明特定事項2、3及び4を備える発明も、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもないので、この意味においても、本件補正後の請求項18に記載の技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導き出し得るものではない。

(16)本件補正後の請求項19記載の事項について
本件補正後の請求項19記載の「アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、上記アプリケーション統括モジュールまたはアプリケーションモジュールから音声出力要求を受けると音声出力可否を判定し、音声出力可能であれば外部ハードウェアから音声を出力する音声出力権制御部を備える」との技術的事項を備え、且つ、上記発明特定事項2、3及び4を備える発明も、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもないので、この意味においても、本件補正後の請求項19に記載の技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導き出し得るものではない。

(17)本件補正後の請求項20記載の事項について
本件補正後の請求項20記載の「アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、上記アプリケーション統括モジュールまたはアプリケーションモジュールから描画権要求データを受け取ると、上記アプリケーション統括モジュールまたは上記アプリケーションモジュールの描画可否を判定し、描画可能であれば上記アプリケーション統括モジュールまたは上記アプリケーションモジュールに描画可能通知データを発する状態遷移検知部を備え」、「上記マイクロプロセッサに実行されることにより、上記描画可能通知データを受けた上記アプリケーション統括モジュールまたは上記アプリケーションモジュールからの上記描画命令データにしたがって外部ハードウェアに描画を行なうプログラムを登録した描画ライブラリを備える」との技術的事項を備え、且つ、上記発明特定事項1、3及び4を備える発明も、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもないので、この意味においても、本件補正後の請求項20に記載の技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導き出し得るものではない。

(18)本件補正後の請求項21記載の事項について
本件補正後の請求項21記載の「アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、上記アプリケーション統括モジュールまたはアプリケーションモジュールから音声出力権要求データを受け取ると、上記アプリケーション統括モジュールまたは上記アプリケーションモジュールの音声出力可否を判定し、音声出力可能であれば上記アプリケーション統括モジュールまたは上記アプリケーションモジュールに音声出力可能通知データを発する状態遷移検知部を備え」、「上記マイクロプロセッサに実行されることにより、上記音声出力可能通知データを受けた上記アプリケーション統括モジュールまたは上記アプリケーションモジュールからの音声出力命令データにしたがって外部ハードウェアから音声を出力するプログラムを登録した音声出力ライブラリを備える」との技術的事項を備え、且つ、上記発明特定事項1、3及び4を備える発明も、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもないので、この意味においても、本件補正後の請求項21に記載の技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導き出し得るものではない。

(19)本件補正後の請求項22記載の事項について
本件補正後の請求項22記載の「マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーション統括モジュールまたはアプリケーションモジュールから描画命令データを受けると描画可否を判定し、描画可能であれば外部ハードウェアに描画を行なうプログラムを登録した描画ライブラリを備える」との技術的事項を備え、且つ、上記発明特定事項1、3及び4を備える発明も、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもないので、この意味においても、本件補正後の請求項22に記載の技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導き出し得るものではない。

(20)本件補正後の請求項23記載の事項について
本件補正後の請求項23記載の「マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーション統括モジュールまたはアプリケーションモジュールから音声出力命令データを受けると音声出力可否を判定し、音声出力可能であれば外部ハードウェアから音声出力を行なうプログラムを登録した音声出力ライブラリを備える」との技術的事項を備え、且つ、上記発明特定事項1、3及び4を備える発明も、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもないので、この意味においても、本件補正後の請求項23に記載の技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導き出し得るものではない。

(21)本件補正後の請求項24記載の事項について
本件補正後の請求項24記載の「アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、外部ハードウェアに描画を行なう描画コントロール部と、上記描画を行う際に必要な画面データを記憶した画面データ部とを備える」との技術的事項を備え、且つ、上記発明特定事項2、3及び4を備える発明も、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもないので、この意味においても、本件補正後の請求項24に記載の技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導き出し得るものではない。

(22)本件補正後の請求項25記載の事項について
本件補正後の請求項25記載の「アプリケーションモジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、外部ハードウェアに描画を行なう描画コントロール部と、上記描画を行う際に必要な画面データを記憶した画面データ部とを備える」との技術的事項を備え、且つ、上記発明特定事項1、3及び4を備える発明も、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもないので、この意味においても、本件補正後の請求項25に記載の技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導き出し得るものではない。

(23)小結
以上の通り、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関連において新たな技術的事項を導入するものであるから、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものではない。

したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本件補正の目的について
次に、本件補正の目的について検討する。

(1)補正後の請求項1に関する補正について

ア.請求項の削除に該当するか否かの検討
まず、本件補正後の請求項1に係る補正の目的が、特許法第17条の2第4項第1号の「請求項の削除」に該当するものであるか否かについて検討する。
本件補正前の請求項3は本件補正前の請求項1を引用するものであり、また、本件補正前の請求項17も本件補正前の請求項1を引用するものであり、件補正前の請求項18は本件補正前の請求項17を引用するものであり、本件補正前の請求項20は本件補正前の請求項1を引用するものであったのであるから、上記発明特定事項1?4の全てを発明特定事項として含むところの、本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の請求項3に係る発明でも、本件補正前の請求項17に係る発明でも、本件補正前の請求項18に係る発明でも、本件補正前の請求項20に係る発明でもない。また、本件補正後の請求項1に係る発明が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20以外の請求項に係る発明でもないことは明らかである。
従って、本件補正の請求項1に関する補正は、請求項の削除を目的とするものではない。

イ.特許請求の範囲の限定的減縮に該当するか否かの検討
次に、本件補正後の請求項1に係る補正の目的が、特許法第17条の2第4項第2号の「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。) 」(以下、これを「限定的減縮」あるいは「限定的に減縮」等と略記する。)に該当するものであるか否かについて検討する。

(ア)補正前の請求項1の限定的減縮に該当するか否かの検討
<発明特定事項1を追加する補正について>
本件補正前の請求項1記載の発明特定事項に、上記発明特定事項1を追加する補正は、「特許請求の範囲の減縮」をするものであると言える。
しかしながら、上記発明特定事項1が追加されることで、「上記アプリケーション統括モジュールを実行することにより上記外部ハードウェアからのデータを解析して、この解析結果に対応するアプリケーションモジュールまたは上記アプリケーション統括モジュールのプロセス空間に上記データを配信」すると言う、本件補正前の請求項1に係る発明にはない別個の作用が追加されるのであるから、これを本件補正前の請求項1におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできない。

<発明特定事項2を追加する補正について>
本件補正前の請求項1記載の発明特定事項に、上記発明特定事項2を追加する補正は、「特許請求の範囲の減縮」をするものであると言える。
しかしながら、上記発明特定事項2が追加されることで、「上記マイクロプロセッサに実行されることにより、上記アプリケーション統括モジュールおよび各アプリケーションモジュールに共通する複数の機能をそれぞれ実現するプログラムを登録した複数のライブラリからなり、全ての上記ライブラリに共通のインタフェースを有するライブラリ群」と言う本件補正前の請求項1に係る発明が備えていなかった手段を備えるものとなり、しかも上記マイクロプロセッサは、「上記アプリケーション統括モジュールおよび上記各アプリケーションモジュールを実行するにあたり、共通する機能に関して上記ライブラリ群の該当機能に関するライブラリから上記共通のインタフェースを介してプログラムを読み出して実行」すると言う、本件補正前の請求項1に係る発明にはない別個の作用が追加されるのであるから、これを本件補正前の請求項1におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできない。

<発明特定事項3を追加する補正について>
本件補正前の請求項1記載の発明特定事項に、上記発明特定事項3を追加する補正は、「特許請求の範囲の減縮」をするものであると言える。
しかしながら、上記発明特定事項3が追加されることで、「上記各アプリケーションモジュールに設けられ、上記マイクロプロセッサに実行されて上記外部ハードウェアに描画を行うプログラムを登録した描画ライブラリと」、「上記各アプリケーションモジュールに設けられ、上記マイクロプロセッサに実行されて上記外部ハードウェアとの間におけるデータの入出力の制御を行うプログラムを登録した外部入出力ライブラリ」と言う本件補正前の請求項1に係る発明が備えていなかった手段を備えるものとなるのであるから、これを本件補正前の請求項1におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできない。

<発明特定事項4を追加する補正について>
本件補正前の請求項1記載の発明特定事項に、上記発明特定事項4を追加する補正は、「特許請求の範囲の減縮」をするものであると言える。
しかしながら、上記発明特定事項4が追加されることで、「上記外部ハードウェアに描画を行う場合、該外部ハードウェアの動作制御に用いられるアプリケーションモジュールの上記描画ライブラリからプログラムを読み出して実行し」、「上記外部ハードウェアとの間におけるデータの入出力の制御を行う場合、該外部ハードウェアの動作制御に用いられるアプリケーションモジュールの上記外部入出力ライブラリからプログラムを読み出して実行する」と言う、本件補正前の請求項1に係る発明にはない別個の作用が追加されるのであるから、これを本件補正前の請求項1におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできない。

なお、請求人は審判請求書の「2.補正の根拠の明示」の項において、
「上記補正後の請求項1における「上記マイクロプロセッサに実行されることにより、上記アプリケーション統括モジュールおよび各アプリケーションモジュールに共通する複数の機能をそれぞれ実現するプログラムを登録した複数のライブラリからなり、全ての上記ライブラリに共通のインタフェースを有するライブラリ群と、上記各アプリケーションモジュールに設けられ、上記マイクロプロセッサに実行されて上記外部ハードウェアに描画を行うプログラムを登録した描画ライブラリと、上記各アプリケーションモジュールに設けられ、上記マイクロプロセッサに実行されて上記外部ハードウェアとの間におけるデータの入出力の制御を行うプログラムを登録した外部入出力ライブラリとを備え、」という補正事項は、出願当初の請求項19?22の記載事項に基づくものであり、発明特定事項であるマイクロプロセッサに実行されるソフトウェアの概念を限定的に減縮するものであります。従いまして、この補正は、拒絶査定不服審判の請求時の補正に対する制限を満たし、且つ新規事項の追加にあたらない適法なものであります。
また、上記補正後の請求項1における「マイクロプロセッサは、・・・上記アプリケーション統括モジュールを実行することにより上記外部ハードウェアからのデータを解析して、この解析結果に対応するアプリケーションモジュールまたは上記アプリケーション統括モジュールのプロセス空間に上記データを配信し、」という補正事項は、出願当初の請求項4の記載に基づくものであり、発明特定事項であるマイクロプロセッサの概念を限定的に減縮するものであります。従いまして、この補正は、拒絶査定不服審判の請求時の補正に対する制限を満たし、且つ新規事項の追加にあたらない適法なものであります。
さらに、上記補正後の請求項1における「マイクロプロセッサは、・・・上記アプリケーション統括モジュールおよび上記各アプリケーションモジュールを実行するにあたり、共通する機能に関して上記ライブラリ群の該当機能に関するライブラリから上記共通のインタフェースを介してプログラムを読み出して実行し、上記外部ハードウェアに描画を行う場合、該外部ハードウェアの動作制御に用いられるアプリケーションモジュールの上記描画ライブラリからプログラムを読み出して実行し、上記外部ハードウェアとの間におけるデータの入出力の制御を行う場合、該外部ハードウェアの動作制御に用いられるアプリケーションモジュールの上記外部入出力ライブラリからプログラムを読み出して実行する」という補正事項は、出願当初の請求項19?22の記載事項に基づくものであり、発明特定事項であるマイクロプロセッサの概念を限定的に減縮するものであります。従いまして、この補正は、拒絶査定不服審判の請求時の補正に対する制限を満たし、且つ新規事項の追加にあたらない適法なものであります。」
と主張しているが、本件の「ソフトウエア」は「マイクロプロセッサ」が実行する作用で特定される発明特定事項(機能実現手段)であるところ、作用で物を特定しようとする記載を用いた発明特定事項の作用とは別個の作用を有する発明特定事項は、概念的に前者の下位のものと認めることのできないものである。従って、本件補正を「発明特定事項であるマイクロプロセッサの概念を限定的に減縮するもの」との請求人の上記主張を認めることはできない。

従って、本件補正前の請求項1を本件補正後の請求項1とする補正が、本件補正前の請求項1の限定的減縮を目的とするものと認めることはできない。

(イ)補正前の請求項3の限定的減縮に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の請求項3に係る発明に、上記発明特定事項2を追加するものであるが、上記 <発明特定事項2を追加する補正について>で述べたと同様に、これを本件補正前の請求項3におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできない。
従って、本件補正前の請求項3を本件補正後の請求項1とする補正が、本件補正前の請求項3に係る発明の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。

(ウ)補正前の請求項17、18の限定的減縮に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の請求項17、18に係る発明を組み合わせたものに、上記発明特定事項1、3、4を追加するものであるが、上記 <発明特定事項1を追加する補正について><発明特定事項3を追加する補正について><発明特定事項4を追加する補正について>で述べたと同様に、これを本件補正前の請求項17、18におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできない。
従って、本件補正前の請求項17、18を本件補正後の請求項1とする補正が、本件補正前の請求項17、18に係るいずれかの発明の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。

(エ)補正前の請求項20の限定的減縮に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の請求項20に係る発明を組み合わせたものに、上記発明特定事項1、2、4を追加するものであるが、上記 <発明特定事項1を追加する補正について><発明特定事項2を追加する補正について><発明特定事項4を追加する補正について>で述べたと同様に、これを本件補正前の請求項20におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできない。
従って、本件補正前の請求項20を本件補正後の請求項1とする補正が、本件補正前の請求項20に係るいずれかの発明の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。

(オ)他の請求項の限定的減縮に該当するか否かの検討
本件補正前の請求項1、3、17、18、20以外の請求項は、いずれも、本件補正後の請求項1には記載のない発明特定事項を有しており、本件補正後の請求項1が本件補正前の請求項1、3、17、18、20以外の請求項記載のいずれかの発明特定事項を限定的に減縮したものでないことは明らかである。

従って、本件補正における本件補正後の請求項1に関する補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない

ウ.誤記の訂正、明りようでない記載の釈明に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項1に関する本件補正が誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しないものであることは明らかである。

エ.よって、本件補正における本件補正後の請求項1に関する補正の目的は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない。


(2)本件補正後の請求項2に関する補正について

ア.請求項の削除に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項2は、本件補正後の請求項1に対して、本件補正前の請求項2と同じ限定を付すものであるが、本件補正前の請求項2は上記発明特定事項1?4の限定の無かった本件補正前の請求項1を引用していたのに対し、本件補正後の請求項2に係る発明は、上記発明特定事項1?4を具備する本件補正後の請求項1を引用しているのであるから、本件補正前の請求項2に係る発明と同じものではない。また、本件補正前の他のいずれの請求項に係る発明も、本件補正後の請求項2に係る発明のいずれとも同じものではない。
従って、補正後の請求項2に関する補正は請求項の削除を目的とするものではない。

イ.特許請求の範囲の限定的減縮に該当するか否かの検討
上記(1)イ.で述べたことと同様に、上記発明特定事項1?4は本件補正前の請求項2におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできないので、本件補正前の請求項2を本件補正後の請求項2とする補正が、本件補正前の請求項2の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項2の「アプリケーションモジュール群は、マイクロプロセッサに実行されることにより、外部ハードウェアとの間でデータの入出力が行われる外部入出力制御モジュールをアプリケーションモジュールの一つとして備える」との発明特定事項が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることもできないので、本件補正前の請求項1、3、17、18、20を本件補正後の請求項2とする補正が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20のいずれかの限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項2が、本件補正前の請求項1、2、3、17、18、20以外の請求項を限定的に減縮したものでないことは明らかである。
従って、本件補正における本件補正後の請求項2に関する補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない

ウ.誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項2に関する本件補正が誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しないものであることは明らかである。

エ.よって、本件補正における本件補正後の請求項2に関する補正の目的は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない。


(3)本件補正後の請求項3に関する補正について

ア.請求項の削除に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項3は、本件補正後の請求項1に対して、本件補正前の請求項4と同じ限定を付すものであるが、本件補正前の請求項4は上記発明特定事項1?4の限定の無かった本件補正前の請求項1を引用していたのに対し、本件補正後の請求項3に係る発明は、上記発明特定事項1?4を具備する本件補正後の請求項1を引用しているのであるから、本件補正前の請求項4に係る発明と同じものではない。また、本件補正前の他のいずれの請求項に係る発明も、本件補正後の請求項3に係る発明のいずれとも同じものではない。
従って、補正後の請求項3に関する補正は請求項の削除を目的とするものではない。

イ.特許請求の範囲の限定的減縮に該当するか否かの検討
上記(1)イ.で述べたことと同様に、上記発明特定事項1?4は本件補正前の請求項4におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできないので、本件補正前の請求項4を本件補正後の請求項3とする補正が、本件補正前の請求項4の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項3の「マイクロプロセッサは、アプリケーション統括モジュールを実行して、各アプリケーションモジュールの起動および終了を制御する」との発明特定事項が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることもできないので、本件補正前の請求項1、3、17、18、20を本件補正後の請求項3とする補正が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20のいずれかの限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項3が、本件補正前の請求項1、3、4、17、18、20以外の請求項を限定的に減縮したものでないことは明らかである。
従って、本件補正における本件補正後の請求項3に関する補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない

ウ.誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項3に関する本件補正が誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しないものであることは明らかである。

エ.よって、本件補正における本件補正後の請求項3に関する補正の目的は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない。


(4)本件補正後の請求項4に関する補正について

ア.請求項の削除に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項4は、本件補正後の請求項1に対して、本件補正前の請求項5と同じ限定を付すものであるが、本件補正前の請求項5は上記発明特定事項1?4の限定の無かった本件補正前の請求項1を引用していたのに対し、本件補正後の請求項4に係る発明は、上記発明特定事項1?4を具備する本件補正後の請求項1を引用しているのであるから、本件補正前の請求項5に係る発明と同じものではない。また、本件補正前の他のいずれの請求項に係る発明も、本件補正後の請求項4に係る発明のいずれとも同じものではない。
従って、補正後の請求項4に関する補正は請求項の削除を目的とするものではない。

イ.特許請求の範囲の限定的減縮に該当するか否かの検討
上記(1)イ.で述べたことと同様に、上記発明特定事項1?4は本件補正前の請求項5におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできないので、本件補正前の請求項5を本件補正後の請求項4とする補正が、本件補正前の請求項5の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項4の「マイクロプロセッサに実行されることにより、外部ハードウェアに入力された音声データを解析する音声認識部を備える」との発明特定事項が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることもできないので、本件補正前の請求項1、3、17、18、20を本件補正後の請求項4とする補正が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20のいずれかの限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項4が、本件補正前の請求項1、3、5、17、18、20以外の請求項を限定的に減縮したものでないことは明らかである。
従って、本件補正における本件補正後の請求項4に関する補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない

ウ.誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項4に関する本件補正が誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しないものであることは明らかである。

エ.よって、本件補正における本件補正後の請求項4に関する補正の目的は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない。


(5)本件補正後の請求項5に関する補正について

ア.請求項の削除に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項5は、本件補正後の請求項1に対して、本件補正前の請求項6と同じ限定を付すものであるが、本件補正前の請求項6は上記発明特定事項1?4の限定の無かった本件補正前の請求項1を引用していたのに対し、本件補正後の請求項5に係る発明は、上記発明特定事項1?4を具備する本件補正後の請求項1を引用しているのであるから、本件補正前の請求項6に係る発明と同じものではない。また、本件補正前の他のいずれの請求項に係る発明も、本件補正後の請求項5に係る発明のいずれとも同じものではない。
従って、補正後の請求項5に関する補正は請求項の削除を目的とするものではない。

イ.特許請求の範囲の限定的減縮に該当するか否かの検討
上記(1)イ.で述べたことと同様に、上記発明特定事項1?4は本件補正前の請求項6におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできないので、本件補正前の請求項6を本件補正後の請求項5とする補正が、本件補正前の請求項6の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項5の「マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーションモジュールからの文章データを解析し、この解析した文章データを外部ハードウェアによって読上げる文章読上げ部を備える」との発明特定事項が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることもできないので、本件補正前の請求項1、3、17、18、20を本件補正後の請求項5とする補正が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20のいずれかの限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項5が、本件補正前の請求項1、3、6、17、18、20以外の請求項を限定的に減縮したものでないことは明らかである。
従って、本件補正における本件補正後の請求項5に関する補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない

ウ.誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項5に関する本件補正が誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しないものであることは明らかである。

エ.よって、本件補正における本件補正後の請求項5に関する補正の目的は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない。


(6)本件補正後の請求項6に関する補正について

ア.請求項の削除に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項6は、本件補正後の請求項1に対して、本件補正前の請求項7と同じ限定を付すものであるが、本件補正前の請求項7は上記発明特定事項1?4の限定の無かった本件補正前の請求項1を引用していたのに対し、本件補正後の請求項6に係る発明は、上記発明特定事項1?4を具備する本件補正後の請求項1を引用しているのであるから、本件補正前の請求項7に係る発明と同じものではない。また、本件補正前の他のいずれの請求項に係る発明も、本件補正後の請求項6に係る発明のいずれとも同じものではない。
従って、補正後の請求項6に関する補正は請求項の削除を目的とするものではない。

イ.特許請求の範囲の限定的減縮に該当するか否かの検討
上記(1)イ.で述べたことと同様に、上記発明特定事項1?4は本件補正前の請求項7におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできないので、本件補正前の請求項7を本件補正後の請求項6とする補正が、本件補正前の請求項7の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項6の「アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーションモジュールの実行状態の遷移を検知する状態遷移検知部を備え」、「上記マイクロプロセッサは、上記アプリケーション統括モジュールの実行に際し、上記アプリケーションモジュールに対するデータを受けると、上記状態遷移検知部を実行して該アプリケーションモジュールが受取可能な実行状態であることを検知してから、該アプリケーションモジュールを実行するプロセス空間に上記データを配信する」との発明特定事項が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることもできないので、本件補正前の請求項1、3、17、18、20を本件補正後の請求項6とする補正が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20のいずれかの限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項6が、本件補正前の請求項1、3、7、17、18、20以外の請求項を限定的に減縮したものでないことは明らかである。
従って、本件補正における本件補正後の請求項6に関する補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない

ウ.誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項6に関する本件補正が誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しないものであることは明らかである。

エ.よって、本件補正における本件補正後の請求項6に関する補正の目的は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない。


(7)本件補正後の請求項7に関する補正について

ア.請求項の削除に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項7は、本件補正後の請求項1に対して、本件補正前の請求項8と同じ限定を付すものであるが、本件補正前の請求項8は上記発明特定事項1?4の限定の無かった本件補正前の請求項1を引用していたのに対し、本件補正後の請求項7に係る発明は、上記発明特定事項1?4を具備する本件補正後の請求項1を引用しているのであるから、本件補正前の請求項8に係る発明と同じものではない。また、本件補正前の他のいずれの請求項に係る発明も、本件補正後の請求項7に係る発明のいずれとも同じものではない。
従って、補正後の請求項7に関する補正は請求項の削除を目的とするものではない。

イ.特許請求の範囲の限定的減縮に該当するか否かの検討
上記(1)イ.で述べたことと同様に、上記発明特定事項1?4は本件補正前の請求項8におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできないので、本件補正前の請求項8を本件補正後の請求項7とする補正が、本件補正前の請求項8の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項7の「アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーションモジュールの実行状態の遷移を検知する状態遷移検知部と、入力データがどのアプリケーションモジュールを用いる処理に使われるデータであるのかを解釈する命令解釈部と、上記命令解釈部によって解釈されたデータに対応するアプリケーションモジュール向けのデータに変換して該アプリケーションモジュールを実行するプロセス空間に送信する命令変換部とを備える」との発明特定事項が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることもできないので、本件補正前の請求項1、3、17、18、20を本件補正後の請求項7とする補正が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20のいずれかの限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項7が、本件補正前の請求項1、3、8、17、18、20以外の請求項を限定的に減縮したものでないことは明らかである。
従って、本件補正における本件補正後の請求項7に関する補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない

ウ.誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項7に関する本件補正が誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しないものであることは明らかである。

エ.よって、本件補正における本件補正後の請求項7に関する補正の目的は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない。


(8)本件補正後の請求項8に関する補正について

ア.請求項の削除に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項8は、本件補正後の請求項1に対して、本件補正前の請求項9と同じ限定を付すものであるが、本件補正前の請求項9は上記発明特定事項1?4の限定の無かった本件補正前の請求項1を引用していたのに対し、本件補正後の請求項8に係る発明は、上記発明特定事項1?4を具備する本件補正後の請求項1を引用しているのであるから、本件補正前の請求項9に係る発明と同じものではない。また、本件補正前の他のいずれの請求項に係る発明も、本件補正後の請求項8に係る発明のいずれとも同じものではない。
従って、補正後の請求項8に関する補正は請求項の削除を目的とするものではない。

イ.特許請求の範囲の限定的減縮に該当するか否かの検討
上記(1)イ.で述べたことと同様に、上記発明特定事項1?4は本件補正前の請求項9におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできないので、本件補正前の請求項9を本件補正後の請求項8とする補正が、本件補正前の請求項9の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項8の「マイクロプロセッサは、アプリケーション統括モジュールを実行することにより、アプリケーションモジュールの起動有無を判定し、上記アプリケーションモジュールを起動して実行を開始してから該アプリケーションモジュールを実行するプロセス空間にデータを配信する」との発明特定事項が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることもできないので、本件補正前の請求項1、3、17、18、20を本件補正後の請求項8とする補正が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20のいずれかの限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項8が、本件補正前の請求項1、3、9、17、18、20以外の請求項を限定的に減縮したものでないことは明らかである。
従って、本件補正における本件補正後の請求項8に関する補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない

ウ.誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項8に関する本件補正が誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しないものであることは明らかである。

エ.よって、本件補正における本件補正後の請求項8に関する補正の目的は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない。


(9)本件補正後の請求項9に関する補正について

ア.請求項の削除に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項9は、本件補正後の請求項1に対して、本件補正前の請求項10と同じ限定を付すものであるが、本件補正前の請求項10は上記発明特定事項1?4の限定の無かった本件補正前の請求項1を引用していたのに対し、本件補正後の請求項9に係る発明は、上記発明特定事項1?4を具備する本件補正後の請求項1を引用しているのであるから、本件補正前の請求項10に係る発明と同じものではない。また、本件補正前の他のいずれの請求項に係る発明も、本件補正後の請求項9に係る発明のいずれとも同じものではない。
従って、補正後の請求項9に関する補正は請求項の削除を目的とするものではない。

イ.特許請求の範囲の限定的減縮に該当するか否かの検討
上記(1)イ.で述べたことと同様に、上記発明特定事項1?4は本件補正前の請求項10におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできないので、本件補正前の請求項10を本件補正後の請求項9とする補正が、本件補正前の請求項10の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項9の「アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、各アプリケーションモジュールを実行するプロセス空間で通信を行う通信インタフェース部と、上記マイクロプロセッサに実行されることにより、上記通信インタフェース部を除く上記アプリケーション統括モジュールの全ての機能が実現されるアプリケーション統括モジュールアプリケーション部とを備える」との発明特定事項が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることもできないので、本件補正前の請求項1、3、17、18、20を本件補正後の請求項9とする補正が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20のいずれかの限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項9が、本件補正前の請求項1、3、10、17、18、20以外の請求項を限定的に減縮したものでないことは明らかである。
従って、本件補正における本件補正後の請求項9に関する補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない

ウ.誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項9に関する本件補正が誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しないものであることは明らかである。

エ.よって、本件補正における本件補正後の請求項9に関する補正の目的は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない。


(10)本件補正後の請求項10に関する補正について

ア.請求項の削除に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項10は、本件補正後の請求項1に対して、本件補正前の請求項11と同じ限定を付すものであるが、本件補正前の請求項11は上記発明特定事項1?4の限定の無かった本件補正前の請求項1を引用していたのに対し、本件補正後の請求項10に係る発明は、上記発明特定事項1?4を具備する本件補正後の請求項1を引用しているのであるから、本件補正前の請求項11に係る発明と同じものではない。また、本件補正前の他のいずれの請求項に係る発明も、本件補正後の請求項10に係る発明のいずれとも同じものではない。
従って、補正後の請求項10に関する補正は請求項の削除を目的とするものではない。

イ.特許請求の範囲の限定的減縮に該当するか否かの検討
上記(1)イ.で述べたことと同様に、上記発明特定事項1?4は本件補正前の請求項11におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできないので、本件補正前の請求項11を本件補正後の請求項10とする補正が、本件補正前の請求項11の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項10の「アプリケーションモジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーション統括モジュールまたは他の各アプリケーションモジュールを実行するプロセス空間で通信を行う通信インタフェース部と、上記マイクロプロセッサに実行されることにより、上記通信インタフェース部を除く該アプリケーションモジュールに固有の機能が実現されるアプリケーションモジュールアプリケーション部とを備える」との発明特定事項が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることもできないので、本件補正前の請求項1、3、17、18、20を本件補正後の請求項10とする補正が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20のいずれかの限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項10が、本件補正前の請求項1、3、11、17、18、20以外の請求項を限定的に減縮したものでないことは明らかである。
従って、本件補正における本件補正後の請求項10に関する補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない

ウ.誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項10に関する本件補正が誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しないものであることは明らかである。

エ.よって、本件補正における本件補正後の請求項10に関する補正の目的は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない。


(11)本件補正後の請求項11に関する補正について

ア.請求項の削除に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項11は、本件補正後の請求項1に対して、本件補正前の請求項12と同じ限定を付すものであるが、本件補正前の請求項12は上記発明特定事項1?4の限定の無かった本件補正前の請求項1を引用していたのに対し、本件補正後の請求項11に係る発明は、上記発明特定事項1?4を具備する本件補正後の請求項1を引用しているのであるから、本件補正前の請求項12に係る発明と同じものではない。また、本件補正前の他のいずれの請求項に係る発明も、本件補正後の請求項11に係る発明のいずれとも同じものではない。
従って、補正後の請求項11に関する補正は請求項の削除を目的とするものではない。

イ.特許請求の範囲の限定的減縮に該当するか否かの検討
上記(1)イ.で述べたことと同様に、上記発明特定事項1?4は本件補正前の請求項12におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできないので、本件補正前の請求項12を本件補正後の請求項11とする補正が、本件補正前の請求項12の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項11の「アプリケーション統括モジュールおよびアプリケーションモジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、相互のプロセス空間で通信を行う共通通信インタフェース部を共通して備える」との発明特定事項が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることもできないので、本件補正前の請求項1、3、17、18、20を本件補正後の請求項11とする補正が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20のいずれかの限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項11が、本件補正前の請求項1、3、12、17、18、20以外の請求項を限定的に減縮したものでないことは明らかである。
従って、本件補正における本件補正後の請求項11に関する補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない

ウ.誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項11に関する本件補正が誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しないものであることは明らかである。

エ.よって、本件補正における本件補正後の請求項11に関する補正の目的は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない。


(12)本件補正後の請求項12に関する補正について

ア.請求項の削除に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項12は、本件補正後の請求項1に対して、本件補正前の請求項13と同じ限定を付すものであるが、本件補正前の請求項13は上記発明特定事項1?4の限定の無かった本件補正前の請求項1を引用していたのに対し、本件補正後の請求項12に係る発明は、上記発明特定事項1?4を具備する本件補正後の請求項1を引用しているのであるから、本件補正前の請求項13に係る発明と同じものではない。また、本件補正前の他のいずれの請求項に係る発明も、本件補正後の請求項12に係る発明のいずれとも同じものではない。
従って、補正後の請求項12に関する補正は請求項の削除を目的とするものではない。

イ.特許請求の範囲の限定的減縮に該当するか否かの検討
上記(1)イ.で述べたことと同様に、上記発明特定事項1?4は本件補正前の請求項13におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできないので、本件補正前の請求項13を本件補正後の請求項12とする補正が、本件補正前の請求項13の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項12の「マイクロプロセッサは、アプリケーション統括モジュールを実行することにより、読出命令データを受けたアプリケーションモジュールを主記憶へ読出す」との発明特定事項が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることもできないので、本件補正前の請求項1、3、17、18、20を本件補正後の請求項12とする補正が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20のいずれかの限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項12が、本件補正前の請求項1、3、13、17、18、20以外の請求項を限定的に減縮したものでないことは明らかである。
従って、本件補正における本件補正後の請求項12に関する補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない

ウ.誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項12に関する本件補正が誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しないものであることは明らかである。

エ.よって、本件補正における本件補正後の請求項12に関する補正の目的は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない。


(13)本件補正後の請求項13に関する補正について

ア.請求項の削除に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項13は、本件補正後の請求項1に対して、本件補正前の請求項14と同じ限定を付すものであるが、本件補正前の請求項14は上記発明特定事項1?4の限定の無かった本件補正前の請求項1を引用していたのに対し、本件補正後の請求項13に係る発明は、上記発明特定事項1?4を具備する本件補正後の請求項1を引用しているのであるから、本件補正前の請求項14に係る発明と同じものではない。また、本件補正前の他のいずれの請求項に係る発明も、本件補正後の請求項13に係る発明のいずれとも同じものではない。
従って、補正後の請求項13に関する補正は請求項の削除を目的とするものではない。

イ.特許請求の範囲の限定的減縮に該当するか否かの検討
上記(1)イ.で述べたことと同様に、上記発明特定事項1?4は本件補正前の請求項14におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできないので、本件補正前の請求項14を本件補正後の請求項13とする補正が、本件補正前の請求項14の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項13の「マイクロプロセッサは、アプリケーション統括モジュールを実行することにより、消去命令データを受けたアプリケーションモジュールを主記憶から消去する」との発明特定事項が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることもできないので、本件補正前の請求項1、3、17、18、20を本件補正後の請求項13とする補正が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20のいずれかの限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項13が、本件補正前の請求項1、3、14、17、18、20以外の請求項を限定的に減縮したものでないことは明らかである。
従って、本件補正における本件補正後の請求項13に関する補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない

ウ.誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項13に関する本件補正が誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しないものであることは明らかである。

エ.よって、本件補正における本件補正後の請求項13に関する補正の目的は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない。


(14)本件補正後の請求項14に関する補正について

ア.請求項の削除に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項14は、本件補正後の請求項13に対して、本件補正前の請求項15と同じ限定を付すものであるが、本件補正前の請求項15は上記発明特定事項1?4の限定の無かった本件補正前の請求項13を引用していたのに対し、本件補正後の請求項14に係る発明は、上記発明特定事項1?4を具備する本件補正後の請求項13を引用しているのであるから、本件補正前の請求項15に係る発明と同じものではない。また、本件補正前の他のいずれの請求項に係る発明も、本件補正後の請求項14に係る発明と同じものではない。
従って、補正後の請求項14に関する補正は請求項の削除を目的とするものではない。

イ.特許請求の範囲の限定的減縮に該当するか否かの検討
上記(1)イ.で述べたことと同様に、上記発明特定事項1?4は本件補正前の請求項14、15におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできないので、本件補正前の請求項15を本件補正後の請求項14とする補正が、本件補正前の請求項14、15の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項13の上記発明特定事項及び本件補正後の請求項14の「マイクロプロセッサは、アプリケーション統括モジュールを実行して主記憶からアプリケーションモジュールを消去する前に該アプリケーションモジュールの内部状態およびデータを保存する」との発明特定事項が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることもできないので、本件補正前の請求項1、3、17、18、20を本件補正後の請求項14とする補正が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20のいずれかの限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項14が、本件補正前の請求項1、3、14、15、17、18、20以外の請求項を限定的に減縮したものでないことは明らかである。
従って、本件補正における本件補正後の請求項14に関する補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない

ウ.誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項14に関する本件補正が誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しないものであることは明らかである。

エ.よって、本件補正における本件補正後の請求項14に関する補正の目的は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない。


(15)本件補正後の請求項15に関する補正について

ア.請求項の削除に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項15は、本件補正後の請求項1に対して、本件補正前の請求項16と同じ限定を付すものであるが、本件補正前の請求項16は上記発明特定事項1?4の限定の無かった本件補正前の請求項1を引用していたのに対し、本件補正後の請求項15に係る発明は、上記発明特定事項1?4を具備する本件補正後の請求項1を引用しているのであるから、本件補正前の請求項16に係る発明と同じものではない。また、本件補正前の他のいずれの請求項に係る発明も、本件補正後の請求項15に係る発明のいずれとも同じものではない。
従って、補正後の請求項15に関する補正は請求項の削除を目的とするものではない。

イ.特許請求の範囲の限定的減縮に該当するか否かの検討
上記(1)イ.で述べたことと同様に、上記発明特定事項1?4は本件補正前の請求項16におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできないので、本件補正前の請求項16を本件補正後の請求項15とする補正が、本件補正前の請求項16の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項15の「読出命令データまたは消去命令データを受けたアプリケーションモジュールを主記憶へ読出または主記憶から消去するアプリケーション入れ替え部を備える」との発明特定事項が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることもできないので、本件補正前の請求項1、3、17、18、20を本件補正後の請求項15とする補正が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20のいずれかの限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項15が、本件補正前の請求項1、3、16、17、18、20以外の請求項を限定的に減縮したものでないことは明らかである。
従って、本件補正における本件補正後の請求項15に関する補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない

ウ.誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項15に関する本件補正が誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しないものであることは明らかである。

エ.よって、本件補正における本件補正後の請求項15に関する補正の目的は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない。


(16)本件補正後の請求項16に関する補正について

ア.請求項の削除に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項16は、本件補正後の請求項1に対して、本件補正前の請求項21と同じ限定を付すものであるが、本件補正前の請求項21は上記発明特定事項1?4の限定の無かった本件補正前の請求項1を引用していたのに対し、本件補正後の請求項16に係る発明は、上記発明特定事項1?4を具備する本件補正後の請求項1を引用しているのであるから、本件補正前の請求項21に係る発明と同じものではない。また、本件補正前の他のいずれの請求項に係る発明も、本件補正後の請求項16に係る発明のいずれとも同じものではない。
従って、補正後の請求項16に関する補正は請求項の削除を目的とするものではない。

イ.特許請求の範囲の限定的減縮に該当するか否かの検討
上記(1)イ.で述べたことと同様に、上記発明特定事項1?4は本件補正前の請求項21におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできないので、本件補正前の請求項21を本件補正後の請求項16とする補正が、本件補正前の請求項21の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項16の「アプリケーションモジュール群は、マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーション統括モジュールおよび各アプリケーションモジュールに共通する複数の機能をそれぞれ実現するプログラムを登録した複数のライブラリからなるライブラリ群を上記アプリケーションモジュールの一つとして備える」との発明特定事項が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることもできないので、本件補正前の請求項1、3、17、18、20を本件補正後の請求項16とする補正が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20のいずれかの限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項2が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20、21以外の請求項を限定的に減縮したものでないことは明らかである。
従って、本件補正における本件補正後の請求項16に関する補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない

ウ.誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項16に関する本件補正が誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しないものであることは明らかである。

エ.よって、本件補正における本件補正後の請求項16に関する補正の目的は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない。


(17)本件補正後の請求項17に関する補正について

ア.請求項の削除に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項17は、本件補正後の請求項16に対して、本件補正前の請求項22と同じ限定を付すものであるが、本件補正前の請求項22は上記発明特定事項1?4の限定の無かった本件補正前の請求項21を引用していたのに対し、本件補正後の請求項17に係る発明は、上記発明特定事項1?4を具備する本件補正後の請求項16を引用しているのであるから、本件補正前の請求項22に係る発明と同じものではない。また、本件補正前の他のいずれの請求項に係る発明も、本件補正後の請求項17に係る発明と同じものではない。
従って、補正後の請求項17に関する補正は請求項の削除を目的とするものではない。

イ.特許請求の範囲の限定的減縮に該当するか否かの検討
上記(1)イ.で述べたことと同様に、上記発明特定事項1?4は本件補正前の請求項21、22におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできないので、本件補正前の請求項22を本件補正後の請求項17とする補正が、本件補正前の請求項21、22の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項16の上記発明特定事項及び本件補正後の請求項17の「マイクロプロセッサは、複数のアプリケーションモジュールを実行するにあたり、ライブラリ群における同一のライブラリに同一の手順で同時にアクセスする」との発明特定事項が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることもできないので、本件補正前の請求項1、3、17、18、20を本件補正後の請求項17とする補正が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20のいずれかの限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項2が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20、21、22以外の請求項を限定的に減縮したものでないことは明らかである。
従って、本件補正における本件補正後の請求項17に関する補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない

ウ.誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項17に関する本件補正が誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しないものであることは明らかである。

エ.よって、本件補正における本件補正後の請求項17に関する補正の目的は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない。


(18)本件補正後の請求項18に関する補正について

ア.請求項の削除に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項18は、本件補正後の請求項1に対して、本件補正前の請求項23と同じ限定を付すものであるが、本件補正前の請求項23は上記発明特定事項1?4の限定の無かった本件補正前の請求項1を引用していたのに対し、本件補正後の請求項18に係る発明は、上記発明特定事項1?4を具備する本件補正後の請求項1を引用しているのであるから、本件補正前の請求項23に係る発明と同じものではない。また、本件補正前の他のいずれの請求項に係る発明も、本件補正後の請求項18に係る発明のいずれとも同じものではない。
従って、補正後の請求項18に関する補正は請求項の削除を目的とするものではない。

イ.特許請求の範囲の限定的減縮に該当するか否かの検討
上記(1)イ.で述べたことと同様に、上記発明特定事項1?4は本件補正前の請求項23におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできないので、本件補正前の請求項23を本件補正後の請求項18とする補正が、本件補正前の請求項23の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項18の「アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、上記アプリケーション統括モジュールまたはアプリケーションモジュールから描画命令データを受けると描画可否を判定し、描画可能であれば外部ハードウェアに描画を行う描画権制御部を備える」との発明特定事項が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることもできないので、本件補正前の請求項1、3、17、18、20を本件補正後の請求項18とする補正が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20のいずれかの限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項18が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20、23以外の請求項を限定的に減縮したものでないことは明らかである。
従って、本件補正における本件補正後の請求項18に関する補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない

ウ.誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項18に関する本件補正が誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しないものであることは明らかである。

エ.よって、本件補正における本件補正後の請求項18に関する補正の目的は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない。


(19)本件補正後の請求項19に関する補正について

ア.請求項の削除に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項19は、本件補正後の請求項1に対して、本件補正前の請求項24と同じ限定を付すものであるが、本件補正前の請求項24は上記発明特定事項1?4の限定の無かった本件補正前の請求項1を引用していたのに対し、本件補正後の請求項19に係る発明は、上記発明特定事項1?4を具備する本件補正後の請求項1を引用しているのであるから、本件補正前の請求項24に係る発明と同じものではない。また、本件補正前の他のいずれの請求項に係る発明も、本件補正後の請求項19に係る発明のいずれとも同じものではない。
従って、補正後の請求項19に関する補正は請求項の削除を目的とするものではない。

イ.特許請求の範囲の限定的減縮に該当するか否かの検討
上記(1)イ.で述べたことと同様に、上記発明特定事項1?4は本件補正前の請求項24におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできないので、本件補正前の請求項24を本件補正後の請求項19とする補正が、本件補正前の請求項24の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項19の「アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、上記アプリケーション統括モジュールまたはアプリケーションモジュールから音声出力要求を受けると音声出力可否を判定し、音声出力可能であれば外部ハードウェアから音声を出力する音声出力権制御部を備える」との発明特定事項が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることもできないので、本件補正前の請求項1、3、17、18、20を本件補正後の請求項19とする補正が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20のいずれかの限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項19が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20、24以外の請求項を限定的に減縮したものでないことは明らかである。
従って、本件補正における本件補正後の請求項19に関する補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない

ウ.誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項19に関する本件補正が誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しないものであることは明らかである。

エ.よって、本件補正における本件補正後の請求項19に関する補正の目的は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない。


(20)本件補正後の請求項20に関する補正について

ア.請求項の削除に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項20は、本件補正後の請求項1に対して、本件補正前の請求項25と同じ限定を付すものであるが、本件補正前の請求項25は上記発明特定事項1?4の限定の無かった本件補正前の請求項1を引用していたのに対し、本件補正後の請求項20に係る発明は、上記発明特定事項1?4を具備する本件補正後の請求項1を引用しているのであるから、本件補正前の請求項25に係る発明と同じものではない。また、本件補正前の他のいずれの請求項に係る発明も、本件補正後の請求項20に係る発明のいずれとも同じものではない。
従って、補正後の請求項20に関する補正は請求項の削除を目的とするものではない。

イ.特許請求の範囲の限定的減縮に該当するか否かの検討
上記(1)イ.で述べたことと同様に、上記発明特定事項1?4は本件補正前の請求項25におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできないので、本件補正前の請求項25を本件補正後の請求項20とする補正が、本件補正前の請求項25の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項20の「アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、上記アプリケーション統括モジュールまたはアプリケーションモジュールから描画権要求データを受け取ると、上記アプリケーション統括モジュールまたは上記アプリケーションモジュールの描画可否を判定し、描画可能であれば上記アプリケーション統括モジュールまたは上記アプリケーションモジュールに描画可能通知データを発する状態遷移検知部を備え」、「上記マイクロプロセッサに実行されることにより、上記描画可能通知データを受けた上記アプリケーション統括モジュールまたは上記アプリケーションモジュールからの上記描画命令データにしたがって外部ハードウェアに描画を行なうプログラムを登録した描画ライブラリを備える」との発明特定事項が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることもできないので、本件補正前の請求項1、3、17、18、20を本件補正後の請求項20とする補正が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20のいずれかの限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項20が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20、25以外の請求項を限定的に減縮したものでないことは明らかである。
従って、本件補正における本件補正後の請求項20に関する補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない

ウ.誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項20に関する本件補正が誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しないものであることは明らかである。

エ.よって、本件補正における本件補正後の請求項20に関する補正の目的は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない。


(21)本件補正後の請求項21に関する補正について

ア.請求項の削除に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項21は、本件補正後の請求項1に対して、本件補正前の請求項26と同じ限定を付すものであるが、本件補正前の請求項26は上記発明特定事項1?4の限定の無かった本件補正前の請求項1を引用していたのに対し、本件補正後の請求項21に係る発明は、上記発明特定事項1?4を具備する本件補正後の請求項1を引用しているのであるから、本件補正前の請求項26に係る発明と同じものではない。また、本件補正前の他のいずれの請求項に係る発明も、本件補正後の請求項21に係る発明のいずれとも同じものではない。
従って、補正後の請求項21に関する補正は請求項の削除を目的とするものではない。

イ.特許請求の範囲の限定的減縮に該当するか否かの検討
上記(1)イ.で述べたことと同様に、上記発明特定事項1?4は本件補正前の請求項26におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできないので、本件補正前の請求項26を本件補正後の請求項21とする補正が、本件補正前の請求項26の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項21の「アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、上記アプリケーション統括モジュールまたはアプリケーションモジュールから音声出力権要求データを受け取ると、上記アプリケーション統括モジュールまたは上記アプリケーションモジュールの音声出力可否を判定し、音声出力可能であれば上記アプリケーション統括モジュールまたは上記アプリケーションモジュールに音声出力可能通知データを発する状態遷移検知部を備え」、「上記マイクロプロセッサに実行されることにより、上記音声出力可能通知データを受けた上記アプリケーション統括モジュールまたは上記アプリケーションモジュールからの音声出力命令データにしたがって外部ハードウェアから音声を出力するプログラムを登録した音声出力ライブラリを備える」との発明特定事項が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることもできないので、本件補正前の請求項1、3、17、18、20を本件補正後の請求項1とする補正が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20のいずれかの限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項21が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20、26以外の請求項を限定的に減縮したものでないことは明らかである。
従って、本件補正における本件補正後の請求項21に関する補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない

ウ.誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項21に関する本件補正が誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しないものであることは明らかである。

エ.よって、本件補正における本件補正後の請求項21に関する補正の目的は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない。


(22)本件補正後の請求項22に関する補正について

ア.請求項の削除に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項22は、本件補正後の請求項1に対して、本件補正前の請求項27と同じ限定を付すものであるが、本件補正前の請求項27は上記発明特定事項1?4の限定の無かった本件補正前の請求項1を引用していたのに対し、本件補正後の請求項22に係る発明は、上記発明特定事項1?4を具備する本件補正後の請求項1を引用しているのであるから、本件補正前の請求項27に係る発明と同じものではない。また、本件補正前の他のいずれの請求項に係る発明も、本件補正後の請求項22に係る発明のいずれとも同じものではない。
従って、補正後の請求項22に関する補正は請求項の削除を目的とするものではない。

イ.特許請求の範囲の限定的減縮に該当するか否かの検討
上記(1)イ.で述べたことと同様に、上記発明特定事項1?4は本件補正前の請求項27におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできないので、本件補正前の請求項27を本件補正後の請求項22とする補正が、本件補正前の請求項27の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項22の「マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーション統括モジュールまたはアプリケーションモジュールから描画命令データを受けると描画可否を判定し、描画可能であれば外部ハードウェアに描画を行なうプログラムを登録した描画ライブラリを備える」との発明特定事項が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることもできないので、本件補正前の請求項1、3、17、18、20を本件補正後の請求項22とする補正が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20のいずれかの限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項22が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20、27以外の請求項を限定的に減縮したものでないことは明らかである。
従って、本件補正における本件補正後の請求項22に関する補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない

ウ.誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項22に関する本件補正が誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しないものであることは明らかである。

エ.よって、本件補正における本件補正後の請求項22に関する補正の目的は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない。


(23)本件補正後の請求項23に関する補正について

ア.請求項の削除に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項23は、本件補正後の請求項1に対して、本件補正前の請求項28と同じ限定を付すものであるが、本件補正前の請求項28は上記発明特定事項1?4の限定の無かった本件補正前の請求項1を引用していたのに対し、本件補正後の請求項23に係る発明は、上記発明特定事項1?4を具備する本件補正後の請求項1を引用しているのであるから、本件補正前の請求項28に係る発明と同じものではない。また、本件補正前の他のいずれの請求項に係る発明も、本件補正後の請求項23に係る発明のいずれとも同じものではない。
従って、補正後の請求項23に関する補正は請求項の削除を目的とするものではない。

イ.特許請求の範囲の限定的減縮に該当するか否かの検討
上記(1)イ.で述べたことと同様に、上記発明特定事項1?4は本件補正前の請求項28におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできないので、本件補正前の請求項28を本件補正後の請求項23とする補正が、本件補正前の請求項28の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項23の「マイクロプロセッサに実行されることにより、アプリケーション統括モジュールまたはアプリケーションモジュールから音声出力命令データを受けると音声出力可否を判定し、音声出力可能であれば外部ハードウェアから音声出力を行なうプログラムを登録した音声出力ライブラリを備える」との発明特定事項が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることもできないので、本件補正前の請求項1、3、17、18、20を本件補正後の請求項23とする補正が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20のいずれかの限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項23が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20、28以外の請求項を限定的に減縮したものでないことは明らかである。
従って、本件補正における本件補正後の請求項23に関する補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない

ウ.誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項23に関する本件補正が誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しないものであることは明らかである。

エ.よって、本件補正における本件補正後の請求項23に関する補正の目的は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない。


(24)本件補正後の請求項24に関する補正について

ア.請求項の削除に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項24は、本件補正後の請求項1に対して、本件補正前の請求項29と同じ限定を付すものであるが、本件補正前の請求項29は上記発明特定事項1?4の限定の無かった本件補正前の請求項1を引用していたのに対し、本件補正後の請求項24に係る発明は、上記発明特定事項1?4を具備する本件補正後の請求項1を引用しているのであるから、本件補正前の請求項29に係る発明と同じものではない。また、本件補正前の他のいずれの請求項に係る発明も、本件補正後の請求項24に係る発明のいずれとも同じものではない。
従って、補正後の請求項24に関する補正は請求項の削除を目的とするものではない。

イ.特許請求の範囲の限定的減縮に該当するか否かの検討
上記(1)イ.で述べたことと同様に、上記発明特定事項1?4は本件補正前の請求項29におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできないので、本件補正前の請求項29を本件補正後の請求項24とする補正が、本件補正前の請求項29の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項24の「アプリケーション統括モジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、外部ハードウェアに描画を行なう描画コントロール部と、上記描画を行う際に必要な画面データを記憶した画面データ部とを備える」との発明特定事項が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることもできないので、本件補正前の請求項1、3、17、18、20を本件補正後の請求項24とする補正が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20のいずれかの限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項24が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20、29以外の請求項を限定的に減縮したものでないことは明らかである。
従って、本件補正における本件補正後の請求項24に関する補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない

ウ.誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項24に関する本件補正が誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しないものであることは明らかである。

エ.よって、本件補正における本件補正後の請求項24に関する補正の目的は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない。


(25)本件補正後の請求項25に関する補正について

ア.請求項の削除に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項25は、本件補正後の請求項1に対して、本件補正前の請求項30と同じ限定を付すものであるが、本件補正前の請求項30は上記発明特定事項1?4の限定の無かった本件補正前の請求項1を引用していたのに対し、本件補正後の請求項25に係る発明は、上記発明特定事項1?4を具備する本件補正後の請求項1を引用しているのであるから、本件補正前の請求項30に係る発明と同じものではない。また、本件補正前の他のいずれの請求項に係る発明も、本件補正後の請求項25に係る発明のいずれとも同じものではない。
従って、補正後の請求項25に関する補正は請求項の削除を目的とするものではない。

イ.特許請求の範囲の限定的減縮に該当するか否かの検討
上記(1)イ.で述べたことと同様に、上記発明特定事項1?4は本件補正前の請求項30におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることはできないので、本件補正前の請求項30を本件補正後の請求項25とする補正が、本件補正前の請求項30の限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項25の「アプリケーションモジュールは、マイクロプロセッサに実行されることにより、外部ハードウェアに描画を行なう描画コントロール部と、上記描画を行う際に必要な画面データを記憶した画面データ部とを備える」との発明特定事項が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20におけるいずれかの発明特定事項を概念的により下位のものに限定するものと認めることもできないので、本件補正前の請求項1、3、17、18、20を本件補正後の請求項25とする補正が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20のいずれかの限定的減縮を目的とするものと認めることもできない。
また、本件補正後の請求項25が、本件補正前の請求項1、3、17、18、20以、30外の請求項を限定的に減縮したものでないことは明らかである。
従って、本件補正における本件補正後の請求項25に関する補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない

ウ.誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当するか否かの検討
本件補正後の請求項25に関する本件補正が誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しないものであることは明らかである。

エ.よって、本件補正における本件補正後の請求項25に関する補正の目的は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない。


(26)小結
以上の通り、本件補正の特許請求の範囲についての補正は、特許法第17条の2第4項各号のいずれをも目的としない補正事項を含むものである。
従って、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



4.本件補正の独立特許要件について
次に、本件補正後の請求項1に関するる「特許請求の範囲の減縮」をする補正が「第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの」に該当するものであると仮定した場合に、本件補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。


(1)進歩性(特許法第29条第2項)について

ア.本件補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)は、上記1.において、補正後の特許請求の範囲の【請求項1】として記載した通りのものである。


イ.引用文献

(ア)原審引用文献の記載内容
原審の拒絶の査定の理由である上記平成18年8月28日付けの拒絶理由通知において引用された、下記引用文献1には、下記引用文献記載事項が記載されている。

<引用文献1>
特表平11-500084号公報(平成11年1月6日公表)

<引用文献記載事項1-1>
「1. 車両用コンピュータ・システムであって、
車両のダッシュボードに装着するのに適したサイズのハウジングと、
前記ハウジング内に装着したコンピュータと、
前記コンピュータ上で実行するオープン・プラットフォーム・オペレーティング・システムであって、車両のユーザが供給する多数のアプリケーションをサポートするように構成した前記オペレーティング・システムと、
から成る車両用コンピュータ・システム。
」(第2頁第2行?第8行)

<引用文献記載事項1-2>
「3. 請求項1記載の車両用コンピュータ・システムにおいて、前記オペレーティング・システムは、多数のアプリケーションを同時に走らせることが可能な、マルチタスキング・オペレーティング・システムであること、を特徴とする車両用コンピュータ・システム。」(第2頁第16行?第19行)

<引用文献記載事項1-3>
「4. 請求項1記載の車両用コンピュータ・システムであって、更に、
前記ハウジングに取り付けたフェースプレートと、
前記フェースプレート内に収容し、かつ前記コンピュータにコンパチブルに接続した周辺装置と、
を含み、
前記オペレーティング・システムが前記周辺装置を管理すること、
を特徴とする車両用コンピュータ・システム。」(第2頁第20行?第26行)

<引用文献記載事項1-4>
「5. 請求項4記載の車両用コンピュータ・システムにおいて、前記周辺装置はディスプレイであること、を特徴とする車両用コンピュータ・システム。
6. 請求項4記載の車両用コンピュータ・システムにおいて、前記周辺装置は入力機構であること、を特徴とする車両用コンピュータ・システム。」(第2頁第27行?第3頁第2行)

<引用文献記載事項1-5>
7. 請求項1記載の車両用コンピュータ・システムにおいて、前記オペレーティング・システムがサポートするアプリケーションは、ナビゲーション・アプリケーション、娯楽用アプリケーション、通信アプリケーション、車両防犯アプリケーション、および車両診断アプリケーションから成る群から選択すること、を特徴とする車両用コンピュータ・システム。
」(第3頁第3行?第7行)

<引用文献記載事項1-6>
「発明の概要
本発明は、多種多様の個別システムを統合し、容易な拡張を可能にする汎用計算機プラットフォームを提供することが可能な、車両用コンピュータ・システムに関するものである。この車両用コンピュータ・システムは、車両のダッシュボードに装着するようなサイズとしたハウジングを有する。このシステムは、オープン・ハードウエア・アーキテクチャ(open hardware architecture)を備え、オープン・プラットフォーム・オペレーティング・システムをサポートする。オープン・プラットフォーム・オペレーティング・システムは、ソフトウエア販売業者から供給可能な、多数の異なるアプリケーションをサポートする。例えば、オペレーティング・システムは、娯楽、ナビゲーション、通信、防犯、診断等に関連するアプリケーションをサポート可能である。好適な実現例では、オペレーティング・システムは、同時に多数のアプリケーションを走らせることができる、マルチタスキング・オペレーティング・システムである。コンピュータは、1台以上の記憶装置(例えば、ハード・ディスク駆動装置、CD駆動装置、フロッピ・ディスク駆動装置、カセット・プレーヤ、またはスマート・カード・リーダ)を有し、これによって、ユーザは記憶媒体(例えば、ハード・ディスク、CD、ディスケット、カセット、またはスマート・カード)からプログラムをコンピュータにダウンロードすることができる。また、ユーザは、書き込み可能媒体(例えば、ハード・ディスク、ディスケット、カセット、またはスマート・カード)にデータを書き込むことができる。このように、車両の所有者は、追加プログラムをインストールすることにより、彼らの車両に新たなシステムを容易に追加することができる。」(第12頁第18行?第13頁第11行)

<引用文献記載事項1-7>
「一実現例では、車両用コンピュータ・システムは2つの独立したプロセッサを有する。一方のプロセッサ(例えば、Intel(登録商標)をベースとするマイクロプロセッサ)をコンピュータ・モジュール上に備え、車両のダッシュボードまたはその他の場所に位置するハウジングの固定ベース・ユニットに装着する。オペレーティング・システムはこのプロセッサ上で走り、車両に関連するアプリケーションをサポートすると共に、これに加えて、パーソナル・コンピュータが典型的に提供する機能全てを与える。また、取り外し自在にベース・ユニットに接続するフェースプレート・モジュール上に、他方のプロセッサ(例えば、デジタル信号プロセッサ)を備える。フェースプレート・モジュールは、AM/FMチューナ、ディスプレイ、キーパッド、およびCODECを有し、これらは第2のプロセッサで制御する。サポート・モジュールとして公知の第3のモジュールを、固定ベース・ユニット内に配置する。サポート・モジュールは、記憶装置(娯楽プレーヤとしても機能する)、電源、娯楽システム用のマルチメディア・オーディオ駆動部、および通信バスを備える。」(第13頁第12行?同頁第25行)

<引用文献記載事項1-8>
「第1図は、本発明の一実現例による、車両用コンピュータ・システム20を示す。車両用コンピュータ・システム20は、モニタ24、防犯センサ26、車両診断インターフェース28、スピーカ30、車両バッテリ32、およびアンテナ(群)34を含む、種々の周辺装置に結合した集中コンピュータ22を有する。コンピュータ22は、従来のカー・ステレオと同様に、車両のダッシュボードに装着するようなサイズとしたハウジング36内に組み込んである。好ましくは、ハウジング36は、単一DIN(ドイツ工業規格)の形状係数を有する。しかし、2DINユニット(2DIN unit)またはその他のOEM用の特殊な形状係数でおそらく収容可能であろう。」(第16頁第15行?同頁第23行)

<引用文献記載事項1-9>
「コンピュータ22は、多数のアプリケーションをサポートする、オープン・プラットフォーム・オペレーティング・システムを走らせる。オープン・プラットフォーム・オペレーティング・システムおよびオープン・コンピュータ・システム・アーキテクチャを用いると、独立した販売業者が生産した様々なソフトウエア・アプリケーションやハードウエア周辺装置は、車両の購入後に、車両のユーザが後からインストールすることができる。これは、ソフトウエア・アプリケーションを、特別に設計した埋め込みシステム専用とする必要がないという利点がある。オープン・ハードウエア・アーキテクチャは、グラフィカル・ユーザ・インターフェースを採用したマルチタスキング・オペレーティング・システムを走らせることが好ましい。好適なオペレーティング・システムの1つは、Windows95(登録商標)またはWindows NT(登録商標)あるいはWindows(登録商標)のその他の派生バージョンのような、Microsoft Corporationが販売するWindows(登録商標)ブランドのオペレーティング・システムである。マルチタスキング・オペレーティング・システムは、多数のアプリケーションの同時実行を可能にする。」(第16頁第24行?第17頁第10行)

<引用文献記載事項1-10>
「一般に、車両用コンピュータ・システム20を用いれば、1つのオープン・プラットフォーム・ハードウエアおよびソフトウエア・アーキテクチャ上に、多数の車両関連システムを統合することが可能である。例えば、車両用コンピュータ・システム20は、マルチメディア娯楽用システム、ナビゲーション・システム、通信システム、防犯システム、および診断システムとして機能することができる。更に、車両用コンピュータ・システム20は、従来からデスクトップおよびラップトップ・パーソナル・コンピュータと関連がある、追加の機能も提供する。例えば、車両用コンピュータ・システム20は、文書処理アプリケーション、スプレッドシート・アプリケーション、データベース・アプリケーション、および約束/予定アプリケーションをサポートすることができる。更に、車両用コンピュータ・システム20は、車両内の他の計算機ユニットに対するサーバとして動作し、ゲーム、ビデオ・ムービーを乗客に分配するように構成することも可能である。」(第19頁第18行?第20頁第2行)

<引用文献記載事項1-11>
「また、フェースプレート・モジュール60には、ラジオ機能をサポートするラジオ・チューナ84も装備してある。ラジオ・チューナ84は、AM/FMチューナ、RBDS復調器、およびFMサブキャリア・プログラミング(FM subcarrier programming)上で送信される情報を復元するデコーダを含む。加えて、セルラ電話機85またはRFトランシーバも、任意にフェースプレートに取り付けることも可能である。」(第22頁第9頁から同頁第14行)

<引用文献記載事項1-12>
「 コンピュータ・モジュール64
コンピュータ・モジュール64は、ダッシュボードに装着するベース・ユニット46内またはこれとは別個の場所に位置し、Intel(登録商標)の486マイクロプロセッサのような、マイクロプロセッサ100の形態の第2のプロセッサを含む。コンピュータ・モジュール64は、サポート・モジュール62上の第2のインターフェース・スロット72にコンパチブルに結合する電気的インターフェースを有する、プラグイン・マザーボード(plug-in motherboard)として構成する。差し込んだ場合、コンピュータ・モジュール64は、内部共有バス68に対するアクセスを有する。このように、フェースプレート・モジュール60、サポート・モジュール62、およびコンピュータ・モジュール64は全て、同一の内部バス68を共有し、互いに通信を行う。コンピュータ・モジュール64は、サポート・モジュール62上の電源サブシステム66から電力を得る。
マイクロプロセッサ100は、Microsoft CorporationからのWindows95(登録商標)またはWindows NT(登録商標)あるいはその他のWindows(登録商標)から派生したオペレーティング・システムのような、オープン・プラットフォーム・オペレーティング・システムを走らせる。オペレーティング・システムは、ハード・ディスク駆動装置104(例えば、>200Mバイト)に記憶させる。コンピュータ・モジュール64は、車両ユーザが所望する可能性がある任意の種々のアプリケーションもサポートする。これらのアプリケーションもハード・ディスク駆動装置104、またはCDROM、カセット、CDチェンジャ、またはフロッピ・ディスケットのような、除去可能な記憶媒体上に記憶させることができる。DRAM105(例えば、8Mバイト)およびフラッシュ・メモリ106(例えば、512Kバイト)をコンピュータ・モジュール内で用いることにより、オペレーティング・システムおよびロードしたアプリケーションを走らせる際に、マイクロプロセッサ100をサポートする。」(第26頁第3行?同頁第15行)

<引用文献記載事項1-13>
「また、コンピュータ・モジュールは拡張スロット124も含み、種々の周辺装置をサポートする。例えば、コンピュータ・モジュール64は、拡張スロットを介して、ユニバーサル・シリアル・バス、アナログI/O、RFトランシーバ、セルラ・フォン/モデム、ディスプレイ、テープ・プレーヤ、MPEGビデオ/オーディオ・デコーダ、TVチューナ、ジャイロスコープ、キーボード、マウス、ジョイスティック、およびドッキング・ステーションのような、追加の周辺装置をサポートすることができる」(第28頁第10行?同頁第17行)

<引用文献記載事項1-14>
「 システム・ソフトウエア
先に記したように、車両用コンピュータ・システムは、Windows95(登録商標)、Windows NT(登録商標)またはWindows(登録商標)の派生物のような、オープン・プラットフォーム・オペレーティング・システムを走らせる。このオペレーティング・システムが対応するいくつかのアプリケーションがある。これらのアプリケーションには、ナビゲーション・アプリケーション、防犯アプリケーション、ラジオ・オン・デマンド・アプリケーション(時間またはコンテンツのようなラジオ番組の属性に基づく、番組の記録および再生)、ページング・アプリケーション、およびフェースプレート・ユーザ・インターフェースが含まれる。アプリケーションは、ハード・ディスク駆動装置上、またはCDROM駆動装置内に挿入したCDROM上に記憶させることができる。
また、車両用コンピュータ・システムは、種々のアプリケーションをサポートする特定の機能を提供する、いくつかのアプリケーション・プログラム・インターフェース(API)を実現する。APIの例は、位置およびナビゲーションAPI、スマート・カードおよび暗号API、診断API、ラジオ/TVチューナAPI、およびアナログI/O APIを含む。
これらのアプリケーションおよびAPIは、車両に関係したものである。車両に関係のないその他のアプリケーションも、コンピュータにロード可能である。そのようなアプリケーションは、Microsoft CorporationからのMoney^(TM)のような路上にある間に銀行取引におけるユーザの補佐を行う、銀行業務/経理アプリケーションを含んでもよい。また、車内ビデオ・ムービーまたはゲームの表示を容易にするビデオ・アプリケーションであってもよい。本質的に、車両用コンピュータ・システムは、オープン・プラットフォーム・オペレーティング・システム上で走るあらゆるアプリケーションをサポート可能であり、それらは多種多様である。」(第33頁第33行?同頁第27行)

(イ)参考文献の記載内容
また、本願の出願前に発行された下記の参考文献には、それぞれ下記参考文献記載事項が記載されている。

<参考文献1>
星野 友彦,「Windows NTの実像 第2部 全体像信頼性と互換性を最重視して複数モジュールでOSを構成」,日経バイト,1993年10月1日,日経BP社,第117号,p.92?100

<参考文献記載事項1-1>
「複数モジュールの集合体
Windows NTはマルチプロセス/マルチスレッドの仕組みを最大限に享受できるように設計されている。OSの各機能は機能別にモジュール化され,それぞれがプロセスとして走る。複数のモジュールが並行に動作することで,全体の実行効率を上げている。
OSを複数モジュールの集合体として提供することのもう一つのメリットは,システムの信頼性や拡張性が向上することだ。各モジュールはそれぞれ独立したアドレス空間を持っているので,お互いにほかのモジュールから保護されている。一つのモジュールがクラッシュしても別のモジュールに影響を与えることは少ない。また新たなモジュールを追加すれば,OSのほかの部分に手を加えることなく,機能を拡張できる。
Windows NTを構成するモジュール群を図2に示した。OSの基本サービスを提供し,カーネルとしての役割を果たすモジュール群と,各種OS用APIのエミュレーションや画面描画などを実現するモジュール群の二つに大別できる。前者をNTExecutiveと呼び,プロセサのカーネル・モードで動作する。後者はサブシステムと呼び,プロセサのユーザ・モードで動く。NT Executiveとサブシステムの間のインタフェース(システム・サービスAPIと呼ぶ)は一意に規定されている。
NT Executiveは以下のモジュール群から成る。まずハードウェアに近い層には動作プラットフォーム間の違いを吸収するHAL(hardware abstraction layer)と呼ぶモジュールがあり,その上にはスレッドのスケジューリングや割り込み処理などを行うNT力ーネルがある。そしてNTカーネルの上には特定の機能をもった六つのモジュール群がある。⊂1⊃(「⊂数字⊃」は「○」内に数字を記した文字フォントを意味する。以下同様。)仮想記憶管理機能,⊂2⊃オブジェク卜・マネジャ,⊂3⊃ローカル・プロシージャ・コール(LPC)機能,⊂4⊃プロセス・マネジャ,⊂5⊃セキュリティ・リファレンス・モニタ,および⊂6⊃I/O管理機能である(表1)。
一方サブシステム群には⊂1⊃Windowsサブシステム,⊂2⊃MS-DOSサブシステム,⊂3⊃OS/2サブシステム,⊂4⊃POSIXサブシステム,⊂5⊃セキュリティ・サブシステムの5種類がある。
このうち⊂1⊃のWindowsサブシステムはWindows NTの中心的なAPI であるWin 32 APIを提供するほか,他のサブシステムからリクエストを受け,画面描画やキー入力管理などのユーザ・インタフェースに関するすべての処理を行う(後述)。
⊂2⊃?⊂4⊃の各サブシステムはそれぞれDOS,OS/2,POSIXのAPIを提供し,これらのOS用アプリケーションがWindows NT上で動作するようなエミュレーション環境を実現している。
Windows 3.1のAPIであるWin 16は,MS-DOSサブシステムの上にさらにサブシステム(WOW:Windows on Win32)を載せて実装ずる(第5部参照)。
最後の⊂5⊃セキュリティ・サブシステムは他のサブシステムとは異なり,アプリケーションの実行には直接関与しない。Windows NTが動作するシステムへのログオン手続きを担当する。Windows NTではアプリケーションの実行環境を提供する⊂1⊃?⊂4⊃のサブシステムを環境サブシステムと呼び,その他のOSの機能を提供するサブシステムを中枢サブシステムと呼ぶ。Windows NTに標準で含まれる中枢サブシステムは現時点ではセキュリティ・サブシステムだけである。」(第94頁中央欄第4行?第95頁中央欄第18行)

<参考文献記載事項1-2>
注3)ほとんどのマイクロプロセサはソフトウェアの信頼性を高めるため,複数の動作モードを持つ。OSのカーネルを前提としたカーネル・モード(特権モードやスーパバイザ・モードとも呼ぶ)ではプロセサの管理する全資源(レジスタやメモリなど)に自由にアクセスできるのに対して,アプリケーション・プログラムを想定したユーザモード(非特権モードやノーマル・モードとも呼ぶ)ではリソースへのアクセスが制限される。これにより,ユーザ・モードで動作するソフトウェアがカーネルを不当に書き換えるのを防止できる。」(第94頁欄外)


<参考文献記載事項1-3>
「ユーザ・インタフエースはWinサブシステムに一任
Windows NTの環境サブシステムの中で,Windowsサブシステムだけは特別な役割を担っている。Windows NTのユーザ・インタフェースに関するすべての処理はWindowsサブシステムが行う。具体的には画面出力やキーボードやマウスからのイベントの受け付けはすべてWindowsサブシステムが行い,他の環境サブシステムはWindowsサブシステムに処理を依頼する。
DOSアプリケーションが画面に文字列を表示することを考えてみよう。DOSアプリケーションが文字列表示命令(通常はINT 10_(H))を発行すると,それをMS-DOSサブシステムが受け取る(図4の⊂1⊃)。MS-DOSサブシステムはこの命令をWindowsサブシステムが理解できる形式に変換し,前述のLPCを使ってWindowsサブシステムに処理を依頼する(図4の⊂2⊃)。最後にメッセージを受け取ったWindowsサブシステムがNT Executive下のディスプレイ・ドライバを制御して実際に画面に文字列を表示する(図4の⊂3⊃)。
ユーザ・インタフェースに関する処理をWindowsサブシステムに一元化することによるメリットは明らかだ。システムの保守性が向上するし,信頼性も増す。また,すべての画面出力をWindowsサブシステムが管理しているおかげで,DOSアプリケーションやWindows 3.1アプリケーションとWindows NTアプリケーションの間でクリップボードによるデータ交換も可能になる。その半面,APIの変換やメッセージの通信に伴うオーバーヘッドも無視できない。特にGUIペースで動作するWindows 3.1用のアプリケーションをWindows NT上で実行する場合,かなりの速度低下を覚悟しなくてはならない(p.101の別掲記事「NT上でExcelを動かすと,Win 3.1上の7割程度の速度」参照)。」(第96頁右欄第7行?第97頁左欄第20行)


<参考文献2>
古庄 歩,「Windows95を使いこなす[第1回] フォルダーやファイルの正体を解剖する。まず中身を理解して使いやすく手を加えよう」,日経パソコン,1997年4月7日,日経BP社,第286号,p.252?256

<参考文献記載事項2-1>
「Windowsフォルダーの下にある、ドライバーやDLL(共有ライブラリ)などシステムに深く絡むファイルが入っている。アプリケーションをインストールするたびに固有のDLLがコピーされ,このフオルダーは肥大化していく傾向がある」(253頁図2のフォルダ名「システム」に対応する「概要」の欄)


<参考文献3>
特開平11-249912号公報(平成11年9月17日出願公開)

<参考文献記載事項3-1>
「【請求項1】 外部装置との入出力機能を有する情報処理装置において、外部装置からの要求を受け付ける要求入力タスクと、その要求に対応する処理を行ない応答を出力する機能を有する複数の機能タスクとから構成されることを特徴とした情報処理装置。
【請求項2】 前記要求入力タスクが前記要求内容を解析し、処理を依頼する機能タスクを選択し、その要求に対応する処理を行なう前記選択された機能タスクが要求元の外部装置に対して応答を返すことを特徴とした請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】 外部からの要求を受け付ける前記要求入力タスクが、その要求に対応する機能タスクに対して処理を依頼するメッセージに、処理依頼内容とともに外部装置との出力方法を記述することを特徴とした請求項1記載の情報処理装置。」(特許請求の範囲)

<参考文献記載事項3-2>
「【0002】
【従来の技術】外部装置からの要求にしたがった処理を行ない、その処理結果を出力する機能を有する情報処理装置を実現する場合、リアルタイムOS(Operation System)を用い、マルチタスク環境下でプログラムを動作させることが一般的であり、要求を入力、応答を出力する入出力タスクと、要求に対応した処理を行なう機能タスクで構成する場合が多い。
【0003】いま外部装置からの要求の種類をA?Dとし、その要求を受けとり処理を行なう場合の従来の情報処理装置の構成を図2に示す。外部装置11からの要求を入力し、その結果を出力する入出力タスク12と、要求A?Dの各々に対応する処理を行なう機能タスク群13から構成される。
【0004】情報処理装置10の初期化後、入出力タスク12は、情報処理装置10に接続された外部装置11からの要求を待つ。外部装置11から、情報処理装置10に対して要求を発行し、入出力タスク12はその要求を解析し、その要求に対応した処理を行なうタスクを機能タスク群13から選択する。例として機能Bタスク15が選択された場合、入出力タスク12は機能Bタスク15に対して要求メッセージ18を発行する。要求メッセージ18を発行後、入出力タスク12は機能Bタスク15からの応答メッセージ19を待つ。」

<参考文献記載事項3-3>
「【0022】次に、本実施の形態における情報処理方法を図5を用いて詳細に説明する。図5において、N13、N14、…、N21は処理手順番号を示す。まず、要求入力タスクはN13、N14にて外部装置からの要求を待つ。外部装置の要求があった場合、N15にてその要求内容を解析し、処理を依頼する機能タスクを選択する。次に、N16では外部装置への出力方法及び出力手段を選択し、要求メッセージを作成する。N17では作成した要求メッセージを選択した機能タスクに送信する。」

<参考文献記載事項3-4>
「【0024】次に、複数の外部装置が接続された場合の情報処理装置を図6を用いて説明する。図6において、外部装置A34が要求を出し、機能Bタスク38が処理を行ない、その応答を外部装置B42が受ける場合について説明する。外部装置A34は情報処理装置33に対して要求を発行し、要求入力タスク35はその要求を解析し、処理を依頼するタスクを機能タスク群36から機能タスクB38を選択する。依頼する処理内容と、外部装置B42に出力する方法を要求メッセージ41に記述し、機能Bタスク38に送信する。機能Bタスク38は、要求メッセージ41の要求内容にしたがった処理を行ない、出力手段にしたがって外部装置B42に出力する。」


<参考文献4>
特開平11-53177号公報(平成11年2月26日出願公開)

<参考文献記載事項4-1>
「【請求項1】 1つ以上のタスクまたはモジュールから構成されるオブジェクトを定義し、処理に時間を要するハードウェア資源の利用を一元管理するオブジェクトを一元管理オブジェクトとし、
一つ以上の一元管理オブジェクトから構成される車載型または携帯型情報提供装置またはそのソフトウェア構造。
【請求項2】 装置の状態を認識して制御するシステム管理オブジェクトと、
装置の移動に基づく処理を管理する位置管理オブジェクトと、
装置へ入力される情報を管理する入力管理オブジェクトと、
画面への出力を管理する画面出力一元管理オブジェクトと、
オーディオ出力を管理するオーディオ出力一元管理オブジェクトと、
ストレージデバイスへのアクセスを管理するストレージ一元管理オブジェクトを含む請求項1記載の車載型または携帯型情報提供装置およびそのソフウェア構造。」(特許請求の範囲)

<参考文献記載事項4-2>
「【0021】図2は実施の形態1における情報提供装置の構成図である。このようにハードウェア211の上に階層状にソフトウェアが積み重なることで構成される。図2においてシステム管理オブジェクト201はシステム全体の動作を制御するオブジェクトである。入力管理オブジェクト202はユーザーの操作などのイベントをシステム管理オブジェクト201に通知する。位置管理オブジェクト203は車載型、携帯型情報提供装置の位置を管理し、位置によって起動する処理の管理を行う。この種の処理には、道案内や観光案内などがあり、所定の位置にユーザーが到着した時に、その場所に依存する情報を提供するものである。」

<参考文献記載事項4-3>
「【0026】システムライブラリ208、OS209は一般的なバイオスや基本ソフトであり、デバイスドライバ210も一般的なものと同じである。このようなソフト構造を用いてハードウェア211を制御することでシステムを動作させている。」

<参考文献記載事項4-4>
「【0028】まずステップ301では、イベントを取得する。イベントはシステム内部や外部の要因で発生するものであり、例えばキー操作時にはキーイベントが発生し、セットしたタイマーが所定の時間経過を通知する時にはタイマーイベントが発生する。ナビシステムに特有のイベントについては後に説明する。次のステップ302では、イベント発生時に起動する処理の対応を示したイベント処理対応表を参照して起動すべき処理を得る。
【0029】図3(b)はナビシステムの主たる表示画面である地図表示画面でのイベント処理対応表である。ここでは、先に説明したキー操作やタイマーに関係するイベントを省略している。例えば通常のナビシステムでは、十字カーソルキーの操作で地図のスクロール表示を行うので、この場合には十字カーソルキーのイベントに対応して各方向への地図スクロール処理を起動する必要がある。」

<参考文献記載事項4-5>
「【0031】あるイベントにより画面が地図表示画面から遷移した場合には、遷移した先の画面イベント処理対応表をステップ302で使用することになる。この単純な処理によって複雑なシステムの動作をすべて制御することができる。この対応表については後に説明する。
【0032】実際の処理は、別タスクで非同期に実行されることが多いため、ここでの処理起動は処理要求のメッセージを発行することになる。従って、図3(a)に示したメイン処理は非常に短時間で処理することが可能であり、常にシステムに対するイベントを待ち受ける状態になる。」

<参考文献記載事項4-6>
「【0061】システム管理オブジェクト201では、システムが地図表示画面であることを認識しており、地図表示画面のイベント-処理対応表を取得している。そこでキー押下イベントの引数からメニューキーが押されたことを知り、イベント-処理対応表を参照し、引数をメニューとして画面遷移処理を起動する。そして、イベント-処理対応表の更新を行うと共に、遷移する画面の描画を行うことで画面遷移処理ができる。描画するための描画データは、イベント-処理対応表と共に画面遷移データ207として記憶されている。
【0062】これで図11(b)のメニュー画面に遷移する。メニュー画面でのイベント-処理対応表は図11(e)である。この画面では、地図を表示していないので現在地更新イベントを受信しても地図表示処理は起動しない点が図11(d)との違いである。しかし、車の移動に応じて音声による案内を行うものと仮定しているので、現在地更新イベントにより案内処理を起動し、音声案内発声イベントで音声出力処理を起動するように定義している。また、このメニュー画面で地図キーを押すことにより地図表示画面に遷移することは、地図キーイベント受信時に地図を引数にして画面遷移処理を起動する定義で実現することができる。」


<参考文献5>
特開平9-223097号公報(平成9年8月26日出願公開)

<参考文献記載事項5-1>
「【請求項1】 表示部を有し、データが入力される入力モジュールと入力されたデータを処理する処理モジュールと入力されたデータを未処理でまたは処理後に出力する出力モジュールとの間のデータのやりとりを制御する入出力制御装置であって、
前記表示部の画面上には、前記入力モジュール、前記処理モジュール、前記出力モジュールを表すアイコンが表示され、
前記画面上の前記入力モジュールのアイコンと前記出力モジュールのアイコンとの間に、前記入力モジュールから入力されたデータを前記出力モジュールから出力させるための未処理データ出力トリガボタンを配置し、前記入力モジュールのアイコンと前記処理モジュールのアイコンとの間に、前記入力モジュールから入力されたデータを前記処理モジュールで処理させるための処理トリガボタンを配置し、前記処理モジュールのアイコンと前記出力モジュールのアイコンとの間に、前記処理モジュールで処理されたデータを前記出力モジュールから出力させるための処理後データ出力トリガボタンを配置したことを特徴とする入出力制御装置。
【請求項2】 請求項1記載の入出力制御装置において、前記入力モジュール、前記処理モジュール、前記出力モジュールのアイコンは、それぞれ3角形の頂点に配置されていることを特徴とする入出力制御装置。
【請求項3】 請求項1または請求項2記載の入出力制御装置は、前記入力モジュール、前記処理モジュール、前記出力モジュールを接続するための共通のインタフェースを有することを特徴とする入出力制御装置。
【請求項4】 請求項3記載の入出力制御装置において、前記入力モジュール、前記処理モジュール、前記出力モジュールは、アダプタモジュールを介して前記共通のインタフェースに接続されることを特徴とする入出力制御装置。」

<参考文献6>
特開2001-14103号公報(平成13年1月19日出願公開)

<参考文献記載事項6-1>
「【請求項1】 文字入力操作用の主画面を表示するメインモジュールと、このメインモジュールとの間の共通のインタフェースを有し、それぞれに異なる入力機能を提供する複数のサブモジュールとを備えた文字入力装置であって、
上記各サブモジュールの中で文字入力に実際に使用するサブモジュールを設定するモジュール設定手段と、
上記メインモジュールの起動により、上記モジュール設定手段によって設定された上記各サブモジュールの読み込みを行うモジュール制御手段と、
このモジュール制御手段によって読み込まれた上記各サブモジュールに基づいて、それぞれに固有の文字入力画面を上記主画面上に重ね表示する表示手段と、
この表示手段によって表示された上記各文字入力画面上で入力された文字列を入力対象に送出する文字列送出手段とを具備したことを特徴とする文字入力装置。」


ウ.引用発明の認定

(ア)引用文献1には「車両用コンピュータ・システム」が記載されており、これは上記引用文献記載事項1-1記載の通り「コンピュータ」と、「前記コンピュータ上で実行するオープン・プラットフォーム・オペレーティング・システムであって、車両のユーザが供給する多数のアプリケーションをサポートするように構成した前記オペレーティング・システム」とから成るものである。

(イ)また、上記「コンピュータ」は上記引用文献記載事項1-7、1-12等記載の通り「マイクロプロセッサ100」を有しており、この「マイクロプロセッサ」が「オペレーティング・システムおよびロードしたアプリケーションを走らせる」ものであることは明らかである。

(ウ)この「前記オペレーティング・システム」は、上記引用文献記載事項1-2、1-6、1-9記載のように「多数のアプリケーションを同時に走らせることが可能な、マルチタスキング・オペレーティング・システム」である。

(エ)また、上記「車両用コンピュータ・システム」としては、上記引用文献記載事項1-3、1-4、1-8、1-11、1-13等からみて、「ディスプレイ」、「入力機構」、「ラジオ・チューナ」、「セルラ電話機」、「RFトランシーバ」等の「周辺装置」を備えた「フェースプレート」や、「モニタ24、防犯センサ26、車両診断インターフェース28、スピーカ30、車両バッテリ32、およびアンテナ(群)34」、「ユニバーサル・シリアル・バス、アナログI/O、RFトランシーバ、セルラ・フォン/モデム、ディスプレイ、テープ・プレーヤ、MPEGビデオ/オーディオ・デコーダ、TVチューナ、ジャイロスコープ、キーボード、マウス、ジョイスティック、およびドッキング・ステーション」等の複数の「周辺装置」を有することも記載されている。

(オ)また、上記「アプリケーション」は、上記引用文献記載事項1-5記載の「ナビゲーション・アプリケーション、娯楽用アプリケーション、通信アプリケーション、車両防犯アプリケーション、および車両診断アプリケーション」や、上記引用文献記載事項1-14記載の「ラジオ・オン・デマンド・アプリケーション」「ページング・アプリケーション」「フェースプレート・ユーザ・インターフェース」「銀行業務/経理アプリケーション」「ビデオ・アプリケーション」などであり、また、上記「ラジオ・オン・デマンド・アプリケーション」や「ビデオ・アプリケーション」が上記「ラジオ・チューナ」や「ディスプレイ、テープ・プレーヤ、MPEGビデオ/オーディオ・デコーダ、TVチューナ」等の「周辺装置」を制御することは明らかである。

(カ)また、上記「車両用コンピュータ・システム」は上記引用文献記載事項1-10記載のように「マルチメディア娯楽用システム」「として機能することができる」ものである。

(キ)従って、引用文献1には、下記引用発明が記載されていると認められる。

<引用発明>
「コンピュータと、前記コンピュータ上で実行するオープン・プラットフォーム・オペレーティング・システムであって、車両のユーザが供給する多数のアプリケーションをサポートするように構成した前記オペレーティング・システムとから成る車両用コンピュータ・システムであって、(上記(ア)より)
前記コンピュータはオペレーティング・システムおよびロードしたアプリケーションを走らせるマイクロプロセッサを有し、(上記(イ)より)
前記オペレーティング・システムは多数のアプリケーションを同時に走らせることが可能な、マルチタスキング・オペレーティング・システムであり(上記(ウ)より。)
複数の周辺装置を有し、(上記(エ)より)
上記多数のアプリケーションは上記周辺装置を制御するものであり、(上記(オ)より)
マルチメディア娯楽用システムとして機能することができる車両用コンピュータ・システム(上記(カ)より)」


エ.対比
以下、本件補正発明と引用発明とを比較する。

(ア)引用発明は「マルチメディア娯楽用システムとして機能することができる車両用コンピュータ・システム」であり、本件補正発明と同様に「車載マルチメディア装置」とも言えるものである。

(イ)また、引用発明における「周辺装置」も「外部ハードウェア」と言えるものであり、引用発明と本件補正発明とは「上記複数の外部ハードウェア」を備える点で一致する。

(ウ)引用発明における「多数のアプリケーション」は、本件補正発明における「アプリケーションモジュール群」に対応付けられるものであるところ、引用発明における「アプリケーション」は「上記周辺装置を制御するもの」であるから、両者は「上記複数の外部ハードウェアの動作制御に用いられる複数のアプリケーションモジュールからなるアプリケーションモジュール群」と言える点で一致する。

(エ)引用発明における「オペレーティング・システム」は、本件補正発明における「アプリケーション統括モジュール」に対応付けられるものであるところ、引用発明における「オペレーティング・システム」は「車両のユーザが供給する多数のアプリケーションをサポートするように構成した」ものであり、しかも「多数のアプリケーションを同時に走らせることが可能な、マルチタスキング・オペレーティング・システム」であるから、上記アプリケーション各々の実行をそれぞれ制御するものであることは明らかである。 してみると、引用発明における「オペレーティング・システム」と本件補正発明における「アプリケーション統括モジュール」とは「上記アプリケーションモジュール各々の実行をそれぞれ制御するのに用いられるアプリケーション統括モジュール」と言える点で一致する。

(オ)引用発明における「マイクロプロセッサ」は、本件補正発明における「マイクロプロセッサ」に対応付けられるものであるところ、引用発明における「マイクロプロセッサ」は「オペレーティング・システムおよびロードしたアプリケーションを走らせる」ものであるから、両者は「アプリケーションモジュール群と」「アプリケーション統括モジュールとから構成されるソフトウェアを実行するマイクロプロセッサ」と言える点で一致する。


オ.一致点・相違点
よって、本件補正発明は下記一致点で引用発明と一致し、下記相違点で引用発明と相違する。

<一致点>
「複数の外部ハードウェアと、
上記複数の外部ハードウェアの動作制御に用いられる複数のアプリケーションモジュールからなるアプリケーションモジュール群と、上記アプリケーションモジュール各々の実行をそれぞれ制御するのに用いられるアプリケーション統括モジュールとから構成されるソフトウェアを実行するマイクロプロセッサと」「を備え」る「車載マルチメディア装置。」

<相違点1>
本件補正発明におけるマイクロプロセッサは「上記ソフトウェアを実行して上記外部ハードウェアの動作を制御するにあたり、上記アプリケーション統括モジュールおよび上記アプリケーションモジュールを、独立した別のプロセス空間で並列に実行」するものである点。
(これに対し、引用発明における「オペレーティング・システム」は「多数のアプリケーションを同時に走らせることが可能な、マルチタスキング・オペレーティング・システム」であるが、該「オペレーティング・システム」及び「アプリケーション」が「独立した別のプロセス空間で並列に実行」することを直接明示する記載は引用文献1には見あたらない。)

<相違点2>
本件補正発明におけるマイクロプロセッサは「上記アプリケーション統括モジュールを実行することにより上記外部ハードウェアからのデータを解析して、この解析結果に対応するアプリケーションモジュールまたは上記アプリケーション統括モジュールのプロセス空間に上記データを配信」するものである点。
(これに対し、引用文献1には、「オペレーティング・システムが前記周辺装置を管理する」(引用文献記載事項1-3)ことや「いくつかのアプリケーション・プログラム・インターフェース(API)を実現する」(引用文献記載事項1-14)ことの記載はあるものの、「オペレーティング・システム」を実行することにより上記「周辺装置」からのデータを解析して、この解析結果に対応する「アプリケーション」または「オペレーティング・システム」のプロセス空間に上記データを配信」することを直接明示する記載は見あたらない。)

<相違点3>
本件補正発明は「上記マイクロプロセッサに実行されることにより、上記アプリケーション統括モジュールおよび各アプリケーションモジュールに共通する複数の機能をそれぞれ実現するプログラムを登録した複数のライブラリからなり、全ての上記ライブラリに共通のインタフェースを有するライブラリ群」を備え、本件補正発明におけるマイクロプロセッサは「上記アプリケーション統括モジュールおよび上記各アプリケーションモジュールを実行するにあたり、共通する機能に関して上記ライブラリ群の該当機能に関するライブラリから上記共通のインタフェースを介してプログラムを読み出して実行」するものである点。
(これに対し、引用文献1には「ライブラリ」についての記載は無い。)

<相違点4>
本件補正発明は「上記各アプリケーションモジュールに設けられ、上記マイクロプロセッサに実行されて上記外部ハードウェアに描画を行うプログラムを登録した描画ライブラリ」と、「上記各アプリケーションモジュールに設けられ、上記マイクロプロセッサに実行されて上記外部ハードウェアとの間におけるデータの入出力の制御を行うプログラムを登録した外部入出力ライブラリ」とを備え、本件補正発明におけるマイクロプロセッサは「上記外部ハードウェアに描画を行う場合、該外部ハードウェアの動作制御に用いられるアプリケーションモジュールの上記描画ライブラリからプログラムを読み出して実行し」、「上記外部ハードウェアとの間におけるデータの入出力の制御を行う場合、該外部ハードウェアの動作制御に用いられるアプリケーションモジュールの上記外部入出力ライブラリからプログラムを読み出して実行する」ものである点。
(これに対し、引用文献1には「描画ライブラリ」や「外部入出力ライブラリ」についての記載は無い。)


カ.判断
以下、上記相違点について検討する。

<相違点1について>
「マルチタスキング・オペレーティング・システム」においては「アプリケーション」が「独立した別のプロセス空間で並列に実行」するものであることは当業者の技術常識に他ならず、また、「オペレーティングシステム」を構成するモジュールも「独立した別のプロセス空間で並列に実行」するのが一般的な構成である。(必要があれば上記参考文献記載事項1-1、1-2等参照)
従って、マイクロプロセッサを「上記ソフトウェアを実行して上記外部ハードウェアの動作を制御するにあたり、上記アプリケーション統括モジュールおよび上記アプリケーションモジュールを、独立した別のプロセス空間で並列に実行」するものとすることは、「多数のアプリケーションを同時に走らせることが可能な、マルチタスキング・オペレーティング・システム」を採用した際の必然的な作用に過ぎず、引用発明においても当然の如く採用されている事項であると認められ、上記相違点1は実質的な相違点とは認めることのできないものである。

<相違点2について>
周辺装置とアプリケーション間の通信を周辺装置からのデータを解析して、この解析結果に対応するアプリケーションに上記データを配信することは、周知慣用技術に他ならないものであり(必要があれば上記参考文献記載事項3-1?3-4、4-4?4-6等参照。)、これを引用発明に適用して、マイクロプロセッサが「上記アプリケーション統括モジュールを実行することにより上記外部ハードウェアからのデータを解析して、この解析結果に対応するアプリケーションモジュールまたは上記アプリケーション統括モジュールのプロセス空間に上記データを配信」するものとすることは、当業者であれば適宜に採用し得た設計的事項に過ぎないものである。

<相違点3について>
プログラム部品のライブラリ化は当業者が常套とする周知慣用技術に他ならないものであり(必要があれば、上記参考文献記載事項2-1、4-3等参照。)、プログラム部品間のインタフェースを共通化することも、当業者の常套手段に過ぎない(必要があれば、上記参考文献記載事項5-1、6-1等参照。)ので、引用発明においても「上記マイクロプロセッサに実行されることにより、上記アプリケーション統括モジュールおよび各アプリケーションモジュールに共通する複数の機能をそれぞれ実現するプログラムを登録した複数のライブラリからなり、全ての上記ライブラリに共通のインタフェースを有するライブラリ群」を備え、マイクロプロセッサが「上記アプリケーション統括モジュールおよび上記各アプリケーションモジュールを実行するにあたり、共通する機能に関して上記ライブラリ群の該当機能に関するライブラリから上記共通のインタフェースを介してプログラムを読み出して実行」するものとすることも、当業者であれば通常採用する設計的事項に過ぎないものである。

<相違点4について>
描画やIOの処理プログラムを部品化することも、当業者が常套とする周知慣用技術に他ならないものであり(必要があれば、上記参考文献記載事項1-3、4-1、5-1、6-1等参照。)引用発明においても「上記各アプリケーションモジュールに設けられ、上記マイクロプロセッサに実行されて上記外部ハードウェアに描画を行うプログラムを登録した描画ライブラリ」と、「上記各アプリケーションモジュールに設けられ、上記マイクロプロセッサに実行されて上記外部ハードウェアとの間におけるデータの入出力の制御を行うプログラムを登録した外部入出力ライブラリ」とを備え、マイクロプロセッサが「上記外部ハードウェアに描画を行う場合、該外部ハードウェアの動作制御に用いられるアプリケーションモジュールの上記描画ライブラリからプログラムを読み出して実行し」、「上記外部ハードウェアとの間におけるデータの入出力の制御を行う場合、該外部ハードウェアの動作制御に用いられるアプリケーションモジュールの上記外部入出力ライブラリからプログラムを読み出して実行する」ものとすることも、当業者であれば通常採用する設計的事項に過ぎないものである。

してみると、本件補正発明の構成は引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、当該構成の採用によって奏される作用効果も、当業者であれば容易に予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。

よって、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


(2)記載要件(特許法第36条)について
上記2.で述べたように、本件補正後の請求項1?25に係る発明は当初明細書等に記載されものではないので、本件補正後の請求項1?25に係る発明は当初明細書等記載の実施の形態と対応付けられるものではない。
そして、平成18年11月2日付けの手続補正書及び平成19年2月16日付けの手続補正書においては、発明の詳細な説明における実施の形態に関する補正はなされていない。
してみると、本件補正後の請求項1?25に係る発明は、本件補正後の発明の詳細な説明に記載の実施の形態とも対応しないものであるから、本件補正後の発明の詳細な説明に記載した発明ではない。また、本件補正後の発明の詳細な説明は、当業者が本件補正後の請求項1?25に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているものではなく、しかも、本件補正後の請求項1?25に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないものでもある。
従って、本件補正後の発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第4項及び第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件補正後の請求項1?25に係る発明は、この理由によっても特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


(3)小結
したがって、仮に、本件補正の目的が特許法第17条の2第4項第2号に掲げるものであるとしても、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


5.回答書で提示の補正案について
上記回答書で提示される補正案について検討するに、
、当該補正案の請求項1に記載の技術的事項は、上記2.と同様の理由で、当初明細書等の記載の範囲内においてするものではない。
また、「マルチタスクOS上で」なる限定を追加する補正も特許法第17条第4項各号のいずれをも目的とするものではない。
さらに、仮に、該補正案通りの補正が特許請求の範囲の限定的減縮であるとしても、その補正後の明細書は特許法第36条第4項及び第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
さらに、「マルチタスクOS上で」「アプリケーションモジュール」「アプリケーション統括モジュール」とから構成されるソフトウエアを実行すること、換言すれば、アプリケーションを制御するモジュールををOS外のものとすることも、例えば上記参考文献4(特に図2)記載の如く適宜に採用されている事項であるから、補正案の請求項1に係る発明にも進歩性を認めることはできず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

従って、上記補正案の補正がなされたと仮定しても、その補正は補正却下の決定を免れることはできず、かかる補正の機会を設けることに益は無い。


6.むすび
以上をまとめると以下の通りである。

本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

仮に、本件補正の目的が特許法第17条の2第4項第2号に掲げるものであるとしても、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正却下の決定の結論の通り決定する。



第3.本件審判請求の成否について

1.手続きの経緯・本願発明の認定
本願の手続きの経緯の概略は上記第1.記載の通りのものであり、さらに、平成19年2月16日付けの手続補正は上記第2.のとおり却下された。
従って、本願の特許請求の範囲は、平成18年11月2日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の通りのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」と言う。)は、上記第2.1.に補正前の特許請求の範囲の【請求項1】として記載した通りのものである。


2.新規性進歩性(特許法第29条)について

(1)引用文献の記載内容・引用発明の認定
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、上記第2.4.(1)イ.記載の引用文献記載事項が記載されており、上記引用文献1には上記第2.4.(1)ウ.で認定した通りの引用発明が記載されていると認められる。

(2)対比・判断
以下、本願発明と引用発明とを比較すると
本願発明は、上記第2.4.(1)オ.記載の一致点で引用発明と一致し、上記第2.4.(1)オ.記載の相違点1のみで引用発明と相違する。
しかしながら、上記相違点1については上記第2.4.(1)カ.で判断したように、引用発明においても当然の如く採用されている事項であると認められ、上記相違点1は実質的な相違点とは認めることのできないものである。
してみると、本願発明は引用文献1記載の発明に他ならない。
また、仮に、上記相違点1が実質的な相違点で有るとしても、上記相違点1は、参考文献1等記載の如く、周知慣用技術に過ぎないものであり、格別新たな効果を奏するものでもないから、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)小結
よって、本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


3.出願の単一性(特許法第37条)について
本願は、本願特許請求の範囲の請求項1?30に記載された通りの、2以上の発明について、1の願書で出願するものであるところ、その請求項1?30に係る発明は、上記上記第2.1.の<補正前の特許請求の範囲>の【請求項1】?【請求項30】として記載した通りのものである。
そこで、本願特許請求の範囲の請求項1?33に係る発明が特許法第37条各号の関係を有しているか否かについて検討する。


(1)特許法第37条第1号の関係について

ア.分野の共通性
本願請求項1?30に係る発明は、いずれも、本願発明の詳細な説明の【技術分野】の項の段落【0001】記載の通り、「ナビゲーションサービス・ハイパーテキスト閲覧・デジタルオーディオ再生等を実行し、その画面を表示する車載マルチメディア装置に関するもの」であるから、本願請求項1?30に係る発明の産業上の利用分野は同一のものであると言える。

イ.課題の共通性

(ア)本願明細書の発明の詳細な説明には【発明が解決しようとする課題】の項に、以下の課題が記載されている。
「【0006】
従来の車載マルチメディア装置は以上のように単一プロセスで構成されているので、車載マルチメディア装置全体が大きくなった際に新たな機能を追加するには、全体を修正・コンパイルしなおす必要があるため、新機能追加がし難く、コンパイル/デバッグの作業効率が落ちるという課題があった。」
「【0008】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、各アプリケーション機能を別プロセスに分離することで、車載マルチメディア装置全体が大きくなった場合にも、新たな機能を容易に追加可能にし、コンパイル/デバッグの作業効率を向上させることを目的とする。」

しかしながら、該課題は、本願請求項1?30に係る発明に共通する課題であるものの、本願請求項1に係る発明は、上記2.で論じた通り、引用文献1記載の発明に他ならないものであるから、該共通の課題は、本願出願前には解決済みであった課題であり、本願出願時まで未解決であった技術上の課題であるとは言えない。

(イ)また、本願明細書の発明の詳細な説明の【発明が解決しようとする課題】の項には、以下の課題も記載されている。
「 【0007】
また、上記課題の解決のために、単にマルチプロセスにし、各プロセスの起動・終了の制御のみ行うシェルを採用した場合、各アプリケーション画面のフォーカス切り替えのみの制御しかできず、操作命令はフォーカスのあるアプリケーションにのみ渡され、その他のアプリケーションには操作命令が渡らないという不具合が生じる。」
「 【0009】
また、この発明は、入出力の管理をアプリケーション統括モジュールにまかせることにより、各アプリケーションモジュール毎に特殊なイベント処理をさせずに、機能毎のアプリケーションモジュールの追加を容易にし、車載マルチメディア装置の開発効率を向上することを目的とする。」

しかしながら、本願請求項1に係る発明における「アプリケーション統括モジュール」は「上記アプリケーションモジュール各々の実行をそれぞれ制御するのに用いられる」との限定がなされているでけで、「入出力の管理」を行う旨の限定のないものであるから、本願請求項1に係る発明は該課題を解決し得るものではなく、該課題が本願請求項1に係る発明と本願請求項2?30に係る発明に共通する課題でないことは明らかである。

(ウ)また、本願明細書の発明の詳細な説明の【発明が解決しようとする課題】の項には、以下の課題も記載されている。
「 【0010】
さらに、この発明は、各アプリケーションに共通な機能を共通ライブラリにまとめ、これを使用することで、各モジュールのサイズの減少および共通機能の開発・デバッグの作業効率を向上させることを目的とする。」

しかしながら、本願請求項1に係る発明は「共通ライブラリ」を有する旨の限定のなされたものではないのであるから、本願請求項1に係る発明は該課題を解決し得るものではなく、該課題も本願請求項1に係る発明と本願請求項2?30に係る発明に共通する課題でないことは明らかである。

(エ)また、本願明細書の発明の詳細な説明の【発明が解決しようとする課題】の項には、以下の課題も記載されている。
「 【0011】
さらに、この発明は、共通通信インタフェースを持つアプリケーション統括モジュールもしくは、共通通信インタフェースを持つアプリケーションモジュールであれば、自由にモジュールの入れ換えおよび追加を可能とすることを目的とする。」

しかしながら、本願請求項1に係る発明における「アプリケーション統括モジュール」「アプリケーションモジュール」は「共通通信インタフェース」を有する旨の限定のないものであるから、本願請求項1に係る発明は該課題を解決し得るものではなく、該課題も本願請求項1に係る発明と本願請求項2?30に係る発明に共通する課題でないことは明らかである。

(オ)また、他に、本願請求項1に係る発明と本願請求項2?30に係る発明との間に共通し、かつ、本願出願時まで未解決であった技術上の課題は見あたらない。

(カ)従って、本願請求項1に係る発明と他の請求項に係る発明の「解決しようとする課題が同一である」とは言えない。
よって、本願請求項1に係る発明を特定発明とした場合には、本願請求項2?30に係る発明は特許法第37条第1号に掲げる発明とは言えない。
さらに、同様の理由により、本願請求項2?30に係る発明を特定発明とした場合でも、本願請求項1に係る発明は特許法第37条第1号に掲げる発明とは言えない。


(2)特許法第37条第2号の関係について

ア.分野の共通性
上記(1)で述べた通り、本願請求項1?30に係る発明の産業上の利用分野は同一のものであると言える。

イ.主要部の共通性
本願請求項2?30に係る発明は、本願請求項1に係る発明に更に限定を加えたものであるから、これらと本願請求項1に係る発明とは、本願請求項1に記載する事項を有する点で共通する。
しかしながら、本願請求項1に係る発明は、上記2.で論じた通り、引用文献1記載の発明に他ならないものであるから、本願請求項1に記載する事項は、主要部、すなわち、解決しようとする課題に対応した新規な事項と言えるものではない。
また、他に、本願請求項1に係る発明と本願請求項2?30に係る発明との間に共通の主要部と言える事項は見あたらない。
よって、本願請求項1に係る発明を特定発明とした場合には、本願請求項2?30に係る発明は特許法第37条第2号に掲げる発明とは言えない。
また、同様の理由により、請求項2?30に係る発明を特定発明とした場合でも、本願請求項1に係る発明は特許法第37条第2号に掲げる発明とは言えない。

(3)特許法第37条第3号の関係について
本願請求項1?30に係る発明はいずれも「物」の発明であるから、本願請求項1?30に係る発明のいずれを特定発明としても、他の請求項に係る発明は、該特定発明を生産する方法の発明とも、該特定発明を使用する方法の発明とも、該特定発明を取り扱う方法の発明とも言えるものではない。
本願請求項1?30に係る発明はいずれも「車載マルチメディア装置」の発明であるから、本願請求項1?30に係る発明のいずれを特定発明としても、他の請求項に係る発明は、該特定発明を生産する機械、器具、装置、その他の物の発明とも、該特定発明の特定の性質を専ら利用する物の発明とも、該特定発明を取り扱う物の発明とも言えるものではない。
よって、本願請求項1?30に係る発明のいずれを特定発明としても、他の請求項に係る発明は特許法第37条第3号に掲げる発明とは言えない。

(4)特許法第37条第4号の関係について
本願請求項1?30に係る発明はいずれも「物」の発明であるから、本願請求項1?30に係る発明のいずれを特定発明としても、該特定発明の実施に直接使用する機械、器具、装置その他の物には該当しない。
よって、本願請求項1?30に係る発明のいずれを特定発明としても、他の請求項に係る発明は、特許法第37条第4号に掲げる発明とは言えない。

(5)特許法第37条第5号の関係について
上記(1)?(4)記載の通りであるから、本願請求項1?30に係る発明のいずれを特定発明としても、当該特定発明と他の請求項に係る発明とは特許法第37条第5号の経済産業省令で定める関係を有しない。

(6)小結
以上の通りであるから、本願は、特許法第37条に規定する要件を満たしていない。


4.むすび
以上をまとめると以下の通りである。

本願請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

本願請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

本願は、特許法第37条に規定する要件を満たしていない。

よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-09 
結審通知日 2009-12-15 
審決日 2010-01-04 
出願番号 特願2002-574078(P2002-574078)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06F)
P 1 8・ 536- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 537- Z (G06F)
P 1 8・ 113- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 642- Z (G06F)
P 1 8・ 641- Z (G06F)
P 1 8・ 561- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保 光宏  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 石田 信行
石井 茂和
発明の名称 車載マルチメディア装置  
代理人 濱田 初音  
代理人 田澤 英昭  

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