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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 H01L |
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管理番号 | 1212065 |
審判番号 | 無効2009-800127 |
総通号数 | 124 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-04-30 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2009-06-18 |
確定日 | 2010-02-15 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3538416号発明「真空処理方法及び真空処理装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3538416号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1 手続の経緯 本件特許第3538416号の請求項1、2に係る発明についての手続の経緯は、以下のとおりである。 ・平成13年12月18日 出願(平成9年3月19日に出願した特願平9-66097号の一部を新たな特許出願としたもの) ・平成16年 3月 3日 特許査定 ・平成16年 3月26日 特許の設定登録 ・平成21年 6月18日 無効審判請求(請求人) ・平成21年 9月 7日 答弁書提出(被請求人) ・平成21年11月24日 口頭審理陳述要領書提出(請求人) ・平成21年11月26日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人) ・平成21年12月 7日 口頭審理 2 当事者の主張 (1)請求人の主張 本件特許の請求項1および2に係る発明は、甲第1号証および甲第2号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 (2)甲各号証 請求人の提出した甲各号証は、次のとおりである。 甲第1号証:特開平5-55148号公報 甲第2号証:特開平9-50948号公報 (3)被請求人の主張 本件特許の請求項1ないし2に係る発明は、甲各号証の存在に拘わらず、特許法第29条第2項の規定に該当するおそれはなく、したがって、請求人の前記主張は誤りであり、本件特許が特許法第123条第1項第2号の規定により無効にされることはない。 3 本件特許の請求項1、2に係る発明 本件特許の請求項1、2に係る発明(以下「本件特許発明1」、「本件特許発明2」という。)は、本件特許明細書の特許請求の範囲に記載された、次のとおりのものである。 【請求項1】 「ウエハに共通のプロセス処理を施す第1及び第2のプロセス処理装置と、 プロセス処埋装置にウエハを搬送する真空搬送装置と、 ウエハを収納する第1及び第2のカセットを載置する大気搬送装置と、 前記各カセット内に収納したウエハを真空搬送装置側に搬出し、真空搬送装置側から搬出された前記プロセス処理装置による処埋の終了した処埋済みウエハをもとのカセットに戻すウエハ搬送装置と、 第1のカセットから搬出したウエハのいずれをも真空雰囲気にある第1のプロセス処理装置に搬送し、第2のカセットから搬出したウエハのいずれをも真空雰囲気にある第2のプロセス処理装置に搬送し、前記第1のプロセス処理装置で共通のプロセス処埋を施したウエハを大気雰囲気にあるもとのカセットに戻し、前記第2のプロセス処理装置で共通のプロセス処理を施したウエハを大気雰囲気にあるもとのカセットに戻すように搬送制御を行う制御装置を備え、 該制御装置は、第1のプロセス処理装置に異常が発生したとき、第1のカセットからのウエハの搬出を中断し、第2のカセットからのウエハの搬出を継続し第2のプロセス処埋装置による処埋を続行することを特徴とする真空処埋装置。」 【請求項2】 「第1及び第2のカセットに収納したウエハをそれぞれ第1及び第2のプロセス処理装置に搬送してウエハに共通のプロセス処理を施し、処理済みウエハをもとのカセットに戻す真空処理方法において、 第1のカセットから搬出したウエハのいずれをも真空雰囲気にある第1のプロセス処理装置に搬送し、第2のカセットから搬出したウエハのいずれをも真空雰囲気にある第2のプロセス処理装置に搬送し、前記第1のプロセス処理装置で共通のプロセス処理を施したウエハを大気雰囲気にあるもとのカセットに戻し、前記第2のプロセス処埋装置で共通のプロセス処理を施したウエハを大気雰囲気にあるもとのカセットに戻し、 第1のプロセス処理装置に異常が発生したとき、第1のカセットからのウエハの搬出を中断し、第2のカセットからのウエハの搬出を継続し第2のプロセス処埋装置による処埋を続行することを特徴とする真空処埋方法。」 4 引用例の記載内容と引用発明 (1)引用例1(甲第1号証):特開平5-55148号公報 (1-1)請求人により甲第1号証として提出された、本件特許に係る出願の原出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である、特開平5-55148号公報(以下「引用例1」という。)には、図1?9とともに、次の記載がある。(下線は当合議体で付加したものである。以下同じ。) 「【0019】図1乃至図6は、被処理材として半導体ウェハを使用し、半導体ウェハの表面に減圧エピタキシャル気相成長を行わせるのに適したマルチチャンバ型枚葉処理装置の一例を示すものである。 【0020】即ち、本処理装置は、図1に示すように、カセットステーション10、出入口ポート20、プラットフォーム30および複数(図示では2個)の処理チャンバ50a,50bとから主に構成され、前記出入口ポート20のカセットステーション10側の側面には第1ゲートバルブ21が、出入口ポート20とプラットフォーム30との間には第2ゲートバルブ31が、プラットフォーム30と各処理チャンバ50a,50bとの間には、第3ゲートバルブ51a,51bが夫々配置されている。 【0021】これにより、出入口ポート20は、第1ゲートバルブ21を開くことによって大気側であるカセットステーション10側に開放でき、第1ゲートバルブ21および第2ゲートバルブ31を閉じることによって密閉される。プラットフォーム30は、第2ゲートバルブ31を開くことによって出入口ポート20内に連通でき、第2ゲートバルブ31および2個の第3ゲートバルブ51a,51bを閉じることによって密閉される。また、各処理チャンバ50aまたは50bは、これに対応する第3ゲートバルブ51aまたは51bを開くことによってプラットフォーム30内に連通でき、この第3ゲートバルブ51aまたは51bを閉じることによって密閉されるよう構成されている。 【0022】前記カセットステーション10には、処理チャンバ50a,50bの数に対応した数、即ち図示では2個の内部に複数の半導体ウェハ(被処理材)Wを多段に収容するカセット11a,11bを移動不能に設置するカセット設置部が設けられているとともに、ウェハセンタリング機構を備えた回転位置合せ装置12が備えられている。この回転位置合せ装置12は、例えば公知のオリフラ合せ装置であり、半導体ウェハWの側部に形成されている直線状のオリエンテーションフラット(オリフラ)Waに対応した位置に、2つのセンサ12a,12bが設けられ、このセンサ12a,12bを介して半導体ウェハWの回転位置合せを行うようにしたものである。 【0023】更に、上記回転位置合せ装置12と出入口ポート20とを直線状に結ぶ位置には、カセットステーション10側と出入口ポート20の内部との間での半導体ウェハWの受渡しを行う搬出入手段として外部ロボット13が備えられている。 【0024】この外部ロボット13には、そのアーム部先端に半導体ウェハWの下面を吸着保持する、例えばセラミック製のハンド14が連結されている。即ち、このハンド14には、図2に示すように、2個の真空吸着孔15a,15bが備えられ、更に半導体ウェハWの有無を検知する検知用の光センサ16が設けられている。そして、このハンド14を、旋回中心O_(1 )に対して半径方向に移動(以下、R移動という)させるとともに、旋回中心O_(1 )を中心に水平回転(同じく、θ移動)させ、更に紙面と垂直な上下方向に移動(同じく、Z移動)させるようなされている。 【0025】なお、このR,θおよびZの各移動機構は、下記の真空用ロボット32と同じであるので、ここではその説明を省略する。 【0026】そして、この外部ロボット13は、ハンド14のR,θおよびZの各移動により、未処理の半導体ウェハWを一方のカセット11aまたは11bから1枚取出して回転位置合せ装置12まで搬送してこの上に載置し、この位置合せ終了後の半導体ウェハWを第1ゲートバルブ21を通過させて出入口ポート20内に搬入させる。そして、出入口ポート20内に収容されている処理済の半導体ウェハWを取出してこれを対応するカセット11aまたは11b内に収容する半導体ウェハWの受渡しを行うようなされている。 【0027】前記出入口ポート20の内部には、半導体ウェハWの周縁部下面を支持する、例えば石英製で板状の被処理材支持部22a,22bが上下2段(図3参照)に平行に配置されて固定されている。これによって、例えば上段に位置する支持部22aの上に未処理の半導体ウェハWを、下段に位置する支持部22bに処理済の半導体ウェハWを夫々載置して支持するようなされている。 【0028】なお、この各支持部22a,22bの上面には、半導体ウェハWの形状に沿った凹部22a′,22b′が設けられ、これによって半導体ウェハWを位置決めしつつ保持するようなされている。 【0029】このように出入口ポート20を構成することにより、この容積の小型化を図って、減圧およびガス置換を短時間で行うとともに、装置全体としてのコンパクト化を図り、しかもパーティクルの発生源をなくすことができる。 【0030】更に、この出入口ポート20は、図3に示すように、排気口23を介して真空ポンプ24に接続されているとともに、給気口25を介してH_(2)ガスやN_(2 )ガスを内部に導入できるよう構成されている。これによって、第1ゲートバルブ21および第2ゲートバルブ31を閉じて密閉するとともに、この排気口23および給気口25を介して、この内部の圧力および雰囲気を独立して制御できるようなされている。 【0031】前記プラットホーム30の内部には、上記外部ロボット13と同様に、R,θおよびZの各動作を行う真空用ロボット32が配置されている。即ち、この真空用ロボット32には、出入口ポート20内に固定して配置された各支持部22a,22bに干渉しないように、例えば石英製でフォーク状となして半導体ウェハWの下面を支持するハンド33が備えられ、このハンド33の上面には、半導体ウェハWの形状に沿った凹部33aが設けられて半導体ウェハWの位置決めを行うようになされている。 【0032】そして、図3に示すように、固定軸34内に回転および上下動自在に保持された中空軸35の駆動部36による駆動(回転および上下動)によって、旋回中心O_(2 )を中心として全体として回転(θ移動)および上下動(Z移動)するとともに、この中空軸35の内部に配置された回転軸(図示せず)の回転によって、図5および図6に示すように、第1アーム37および第2アーム38とを、例えばプーリおよびタイミングベルト(図示せず)によって互いに屈伸させて、旋回中心O_(2 )に対してハンド32aを半径方向に移動(R移動)させるようなされている。 【0033】更に、このプラットフォーム30は、図3に示すように、排気口39を介して真空ポンプ40に接続されているとともに、給気口41を介してH_(2 )ガスやN_(2 )ガスを内部に導入できるよう構成されている。これによって、第2ゲートバルブ31および第3ゲートバルブ51a,51bを閉じて密閉するとともに、この排気口39および給気口41を介して、この内部の圧力および雰囲気を独立して制御できるようなされている。 【0034】そして、このプラットフォーム30内の圧力および雰囲気を一定となし、前記出入口ポート20内の圧力および雰囲気がこのプラットフォーム30内の圧力および雰囲気と等しくなった時に、第2ゲートバルブ31を開いて出入口ポート20とプラットフォーム30とを連通させ、更に一方の処理チャンバ50aまたは50bとプラットフォーム30とを連通させた状態で、真空用ロボット32により半導体ウェハWのプラットフォーム30を介して出入口ポート20と処理チャンバ50aまたは50bとの間の受渡しが行われる。 【0035】前記各処理チャンバ50a,50bは、被処理材としての半導体ウェハWの表面に減圧エピタキシャル成長させるためのものであり、例えば数10torrの減圧下でH_(2 )ガスを流しつつヒータにより半導体ウェハWを1100?1200℃に加熱し、所定のエピタキシャル成長温度にコントロールしつつ反応ガスを流すと同時に半導体ウェハWを回転させることで、この表面にSiのエピタキシャル層を成長させるようなされている。 【0036】即ち、図4に示すように、この各処理チャンバ50a(50b)には、ガス導入口52および排気口53が設けられて、独立して所定の圧力および雰囲気に制御できるようなされている。 【0037】処理チャンバ50a(50b)内には、上面に半導体ウェハWを載置して保持するサセプタ54が配置されている。このサセプタ54は、サセプタホルダ55を介して中空回転軸56の上端に設けられ、図示しない回転駆動源によって回転するようなされている。 【0038】中空回転軸56には、搬入される半導体ウェハWのオリフラWaに合わせるように、サセプタ54の回転位置決めを行うための図示しないエンコーダが取付けられている。サセプタ54の下方には、半導体ウェハWを加熱するヒータ57が配置されている。このヒータ57は、前記中空回転軸56の内部に挿着した固定のヒータ支え軸58の上端に連結したヒータ支え板59に複数の絶縁棒60を介して連結されている。 【0039】また、前記サセプタ54の上方に突出自在で正三角形状に配置された3本の突上げピン61が備えられている。この突上げピン61は、ヒータ支え軸58中に上下動可能に設けられた突上げ軸62の上端に連結されている。 【0040】この突上げピン61は、これを上動させることにより、半導体ウェハWをサセプタ54の上面から持ち上げ、これによって真空用ロボット32のハンド33での半導体ウェハWの保持を可能となし、下降させることにより、半導体ウェハWをサセプタ54の上面に載置するためのものである。 【0041】即ち、前記プラットフォーム30と処理チャンバ50aまたは50bとの間での半導体ウェハWの真空用ロボット32による受渡しは、以下のようにして行われる。ここに、一方の処理チャンバ50aでの処理が終了した後に該処置チャンバ50aとプラットフォーム30との間に設けられた第3ゲートバルブ51aを開き、この処理チャンバ50aとプラットフォーム30との間で半導体ウェハWの受渡しを行う場合について説明する(なお、他の処理チャンバ50bも同様である)。 【0042】先ず、上述のように、外部ロボット13により、出入口ポート20内へ未処理の半導体ウェハWを搬入するとともに、出入口ポート20内から処理済の半導体ウェハWを搬出して第1ゲートバルブ21を閉じ、出入口ポート20内をプラットフォーム30内と等しい圧力および雰囲気にしたところで、第2ゲートバルブ31を開いておく。 【0043】この第2ゲートバルブ31の開放に相俟って、処理チャンバ50aでの半導体ウェハWに対する処理が終了した後、第3ゲートバルブ51aを開き、3本の突上げピン61を上昇させて半導体ウェハWをサセプタ54から上昇させる。この状態で真空用ロボット32を作動させ、そのハンド33を処理済の半導体ウェハWの下方に差し込み、次いで突上げピン61を下降させて処理済の半導体ウェハWをハンド33の上に載せる。そして、半導体ウェハWを載せたハンド33をR動作させて該半導体ウェハWを処理チャンバ50aからプラットフォーム30に搬出し、以下、θ、RおよびZの各動作によって処理済の半導体ウェハWを出入口ポート20内の下段の支持部22b上に移す。 【0044】次いで、真空用ロボット32を一旦後退させ、上昇、前進および更に上昇させて出入口ポート20内の上段の支持部22aで支持された未処理の半導体ウェハWをハンド33の上に載せ、この半導体ウェハWをR動作によってプラットフォーム30内に搬入させた後、θおよびR動作と突き上げピン61の昇降により、上記とほぼ逆の動作で処理チャンバ40aのサセプタ54上に搬入する。 【0045】そして、未処理の半導体ウェハWを処理チャンバ50a内に搬入した後、第3ゲートバルブ51aを閉じて、この処理チャンバ50aによる処理を開始し、一方、第2ゲートバルブ31を閉じ、出入口ポート20内をN_(2 )ガスにより大気圧まで戻した後、第1ゲートバルブ21を開いて、外部ロボット13による半導体ウェハWの搬送を行うのである。 【0046】ここに、上記各ロボット13,23による半導体ウェハWの搬送は、処理チャンバ50a,50bが2つあるため、1つの処理チャンバ50aまたは50bによる処理時間の1/2の時間間隔で行われる。そこで、出入口ポート20の減圧およびガス置換を含むウェハ搬送時間が、この処理時間の1/2以内であれば、ロスタイムが生じないことになる。 【0047】エピタキシャル成長は、半導体ウェハWを1,100?1,200℃に昇温した後、形成する層の厚さや反応ガスの流量、半導体ウェハWの回転数等の諸条件によって異なるが、通常1?数分間行われる。そして、エピタキシャル成長後は、再び処置チャンバ40内にH_(2 )ガスを流して、半導体ウェハWを200?300℃まで降温させて処理を終了するのであるが、この加熱(heat up)から冷却(cool down)までの時間(処理時間)は、例えば10分程度である。 【0048】次に、上記枚葉処理装置による処理方法の一例を図7および図8を参照して説明する。ここに、図7は、カセットステーション10(なお、同図以下においてCSと略称す)上に設置されたカセット11aまたは11bから半導体ウェハWを取出して、回転位置合せ装置12(同じくOF)、出入口ポート20(同じくI/O)、プラットフォーム30(同じくPF)を順次通過させて一方の処理チャンバ50aまたは50b(同じく、R1またはR2)に搬送し、ここで処理を施した後、処理済の半導体ウェハWを再びカセット11aまたは11b内に戻すウェハ処理シーケンスを示すものであり、図8は、その時の各チャンバI/O,PR,R1およびR2における圧力シーケンスを示すものである。 【0049】なお、同図以下において、H_(2 )は出入口ポート20(I/O)におけるH_(2 )パージを、N_(2 )は同じくN_(2 )パージを、Vは同じく真空引きを夫々示している。 【0050】ここでは、1つの半導体ウェハW_(1 )の処理を中心に、各半導体ウェハWに対する処理の手順を説明する。なお、この半導体ウェハW_(1 )は、カセット11aから取出されて処理チャンバ50a(R1)で処置された後、再びカセット11aに収容されるものとする。 【0051】先ず、カセットステーション10(CS)に設置された一方のカセット11a内に収容されていた半導体ウェハW_(1)_( )を外部ロボット13により取出して、これを回転位置合せ装置12(OF)上に載置する(時間t_(1 ))。一方、出入口ポート20(I/O)内にN_(2 )ガスを導入して、これが大気圧になった時に第1ゲートバルブ21を開いてこれを大気側に開放し(時間t_(2 ))、この開放と相俟って、回転位置合せ装置12(OF)上に載置されていた半導体ウェハW_(1 )を外部ロボット13により出入口ポート20(I/O)内に搬入する。 【0052】この搬入後、出入口ポート20(I/O)内に収納されていた処理済の半導体ウェハW_(2 )を外部ロボット13により取出して、これをカセットステーション10(CS)上の所定のカセット11b内に収容する。この搬出に相俟って、第1ゲートバルブ21を閉じ(時間t_(3 ))、真空引きを行って、この内部の真空度を高め(時間t_(3 )?t_(4 ))、次にH_(2 )ガスを導入してこの内部がプラットフォーム30(RF)内の圧力および雰囲気と同じになったところで、第2ゲートバルブ31を開く(時間t_(5 ))。一方、処理チャンバ50a(R1)内で半導体ウェハW_(3 )に対する処理を終了した時点で第3ゲートバルブ51aを開く(時間t_(6 ))。 【0053】この状態では、プラットフォーム30(RF)を介して出入口ポート20(I/O)と処理チャンバ50a(R1)とが連通している状態となり、前記処理チャンバ50aの開放と相俟って、処理チャンバ50a(R1)内での処理が終了した半導体ウェハW_(3 )を真空ロボット32によりプラットフォーム30(RF)から出入口ポート20(I/O)内に導き、ここに載置収容する。この収容後、出入口ポート20(I/O)内に収容されていた未処理の半導体ウェハW_(1 )を真空ロボット32により処理チャンバ50a(R1)内に搬入し、この搬入に相俟って、第2ゲートバルブ31を閉じる(時間t_(7 ))とともに、搬入後に第3ゲートバルブ51aを閉じる(時間t_(8 ))。 【0054】これによって、この半導体ウェハW_(1 )に対する処理チャンバ50a(R1)内での処理、即ち加熱、エピタキシャル成長および冷却を行うのであるが、この間に出入口ポート20(I/O)では、他方の処理チャンバ50b(R2)に対する搬送処理を行う。 【0055】即ち、上記のようにして第2ゲートバルブ31を閉じた後、出入口ポート20(I/O)内を真空引きしてこの内部を高真空になし(時間t_(7 )?t_(9 ))、しかる後にN_(2 )ガスを導入(時間t_(9 ))することにより、出入口ポート20(I/O)内に存在するパーティクルを排出しつつ大気圧に戻して第1ゲートバルブ21を開く(時間t_(10))。この開放に相俟って、回転位置合せ装置12(OF)上に載置されていた未処理の半導体ウェハW_(4 )を出入口ポート20(I/O)内に搬入し、上記処理チャンバ50a(R1)で処理済の半導体ウェハW_(3 )をここから搬出してカセットステーション10(CS)のカセット11a内に収容する。 【0056】この搬出に相俟って、第1ゲートバルブ21を閉じ(時間t_(11))、上記と同様にして第2ゲートバルブ31および第3ゲートバルブ50bを開いた後、この未処理の半導体ウェハW_(4 )と他方の処理チャンバ50b(R2)で処理された半導体ウェハW_(5 )との受渡し行う(時間t_(12)?t_(13))。しかる後、第3ゲートバルブ50bを閉じて(時間t_(14))、この処理チャンバ50b(R2)内に搬入された半導体ウェハW_(4 )に対する処理を開始し、一方、処理済の半導体ウェハW_(5 )を上記と同様にしてカセットステーション10(CS)のカセット11b内に収容するとともに、未処理の半導体ウェハW_(6 )を出入口ポート20(I/O)内に収容する。 【0057】そして、上記と同様にしてプラットフォーム30(PF)と同じ圧力および雰囲気になったところで第2ゲートバルブ31を開き(時間t_(15))、一方、上記半導体ウェハW_(1 )に対する処理チャンバ50a(R1)内での処理が終了した後、第3ゲートバルブ51aを開き(時間t_(16))、処理チャンバ50a(R1)と出入口ポート20(I/O)とをプラットフォーム30(PF)を介して連通させる。この状態で、処理チャンバ50a(R1)内にある処理済の半導体ウェハW_(1 )を真空ロボット32により出入口ポート20(I/O)内に搬入した後、出入口ポート20(I/O)内に収容されている未処理の半導体ウェハW_(6 )を処理チャンバ50a(R1)内に導き、第2ゲートバルブ31および第3ゲートバルブ51aを順次閉じる(時間t_(17)およびt_(18))。 【0058】そして、この処理チャンバ50a(R1)内に搬入された半導体ウェハW_(6 )に対して、第3ゲートバルブ51aを閉じた後、上記と同様に処理チャンバ50a(R1)内における処理を施し、出入口ポート20(I/O)内は、真空引きを行ってこの内部を高真空にした後にN_(2 )ガスを導入し(時間t_(19))、この内部が大気圧に戻った後に、第1ゲートバルブ21を開いて(時間t_(20))、出入口ポート20(I/O)内に未処理の半導体ウェハW_(7 )を導入するとともに、処理済の半導体ウェハW_(1 )をカセットステーション10のカセット11a内に収容して、この半導体ウェハW_(1)に対する処理を終了する。 【0059】上記実施例は、プラットフォーム30内の圧力を処理チャンバ50a,50b内の処理圧力と同一にして、出入口ポート20内の圧力のみを変化させるようにした例を示しているが、この方法によれば、処理チャンバ50a,50b内の圧力は、半導体ウェハWの搬出入時およびエピタキシャル成長時中共に同じで、圧力変動がないため、処理チャンバ50a,50b内に生じたパーティクルの舞い上がりがなく、従って半導体ウェハW上へのパーティクルの付着を極力少なくすることができる。 【0060】また、出入口ポート20内は、大気圧と減圧の繰り返しとなるが、この出入口ポート20内に可動物がないため、パーティクルの発生源がない。しかも出入口ポート20は、容積がかなり小さく、かつ外部から1枚の半導体ウェハWが搬入される単純な構成で済むため、外部から持ち込まれたパーティクルは、減圧時またはH_(2 )ガスへの置換時に排出され易くなるばかりでなく、プラットフォーム30の容積に対する出入口ポート20の容積の割合が小さいため、プラットフォーム30の圧力または雰囲気の変動を少なく抑えることができる。また、プラットフォーム30内は、処理チャンバ50a,50bと同様に圧力変動がないため、パーティクルが舞い上ってしまうことはない。 【0061】なお、ここで使用されている真空ロボット32は、可動部を完全にシールして真空中で用いても実質的にパーティクルの発生がないようにしたものである。 【0062】この方法による場合、プラットフォーム30内のクリーン度を実測したところ、0.1μmクラス10が得られ、超LSIの製造プロセスとして使用できることが確認されている。 【0063】図9は、プラットフォーム30内の真空度をより高めるとともに、プラットフォーム30と各処理チャンバ50aまたは50bとの間で真空受渡しを行うようにした本発明に係る枚葉処理方法の第2の実施例における各チャンバでの圧力シーケンスを示すもので、プラットフォーム30(PF)内の真空度を、例えば処理チャンバ50a,50b(R1,R2)内における処理圧力(数10torr)より2桁程低い圧力、即ち高真空にしておき、処理チャンバ50a,50b(R1,R2)内の圧力をこのプラットフォーム30内の圧力と等しい圧力まで真空度を高めた状態で、半導体ウェハWの受渡しを行うようにしたものである。 【0064】即ち、第2ゲートバルブ31を開いて出入口ポート20(I/O)とプラットフォーム30(PF)とを連通させる際に、出入口ポート20(I/O)内の圧力をプラットフォーム30(PF)内の圧力と同じ圧力、即ち高真空にするとともに、各処理チャンバ50aまたは50b(R1またはR2)内の圧力を、処理終了後から第3ゲートバルブ51aまたは51bを開くまでの間にプラットフォーム30(RF)の圧力に等しい高真空となして該第3ゲートバルブ51aまたは51bを開く。そして、この状態でプラットフォーム30(PF)と各処理チャンバ50aまたは50b(R1またはR2)との間での半導体ウェハWの受渡しを行い、更に第3ゲートバルブ51aまたは51cを閉じた後、処理を開始する前に各処理チャンバ50aまたは50b(R1またはR2)内の圧力を処理圧力に戻すようにしたものである。 【0065】この方法によれば、処理チャンバ50a,50b内の圧力が変動するが、処理後に減圧するため、処理チャンバ50a,50b内の雰囲気の置換およびパーティクルの排出が容易となるばかりでなく、プラットフォーム30から各処理チャンバ50a,50bへガスが流入することによる処理チャンバ50a、50bの汚染を防止することができる。 【0066】上記各実施例において、出入口ポート20は、第1ゲートバルブ21および第2ゲートバルブ31が共に閉じている状態では、未処理かまたは処理済のいずれか一方の半導体ウェハWが1枚収納されているだけである。このため、ベーキングや紫外線照射等により浄化処理等の前処理や熱処理等の後処理を枚葉で的確に行うようにすることができる。」 (1-2)引用例1の記載内容を整理すると、次のとおりである。 ア 引用例1の段落【0020】の下線部には「本処理装置は、図1に示すように、カセットステーション10、出入口ポート20、プラットフォーム30および複数(図示では2個)の処理チャンバ50a,50bとから主に構成され」ることが記載されており、引用例1の段落【0055】、【0063】の下線部の記載を整理すると、「出入口ポート20」、「プラットフォーム30」、「処理チャンバ50a,50b」は、「高真空」の状態で使用され得るから、引用例1には、真空処理装置が開示されている。 イ 引用例1の段落【0020】、【0035】の下線部の記載を整理すると、「複数(図示では2個)の処理チャンバ50a,50b」を、「被処理材としての半導体ウェハWの表面に減圧エピタキシャル成長させるためのもの」として用いており、「処理チャンバ50a」と「処理チャンバ50b」は「半導体ウェハW」に「減圧エピタキシャル成長」という共通のプロセス処理を施すものであるから、引用例1には、半導体ウェハに共通のプロセス処理を施す処理チャンバ50a及び処理チャンバ50bが開示されている。 ウ 引用例1の段落【0020】、【0041】、【0044】、【0045】の下線部の記載を整理すると、「未処理の半導体ウェハWを」「プラットフォーム30内に搬入させた後、」「未処理の半導体ウェハWを処理チャンバ50a内に搬入」しており、「処理チャンバ50bも同様」であるから、引用例1には、処理チャンバ50a及び処理チャンバ50bに半導体ウェハを搬入するプラットフォーム30が開示されている。 エ 引用例1の段落【0020】、【0022】の下線部の記載を整理すると、「カセットステーション10」には、「処理チャンバ50a,50bの数に対応した数、即ち図示では2個の内部に複数の半導体ウェハ(被処理材)Wを多段に収容するカセット11a,11bを移動不能に設置するカセット設置部が設けられている」から、引用例1には、半導体ウェハを収容するカセット11a及びカセット11bを(カセット設置部に)設置するカセットステーション10が開示されている。 オ 引用例1の段落【0020】、【0023】、【0026】の下線部の記載を整理すると、「カセットステーション10側と出入口ポート20の内部との間での半導体ウェハWの受渡しを行う搬出入手段として」備えられた「外部ロボット13」は、「未処理の半導体ウェハWを一方のカセット11aまたは11bから1枚取出して」「半導体ウェハWを第1ゲートバルブ21を通過させて出入口ポート20内に搬入させ」、「出入口ポート20内に収容されている処理済の半導体ウェハWを取出してこれを対応するカセット11aまたは11b内に収容する半導体ウェハWの受渡しを行う」ものであり、「出入口ポート20」が「外部ロボット13」よりも「プラットフォーム30」側にあることも図1より明らかである。 また、引用例1の段落【0048】、【0050】の下線部の記載を整理すると、「カセット11aまたは11bから半導体ウェハWを取出して」「一方の処理チャンバ50aまたは50b(同じく、R1またはR2)に搬送し、ここで処理を施した後、処理済の半導体ウェハWを再びカセット11aまたは11b内に戻」しており、例として挙げられた「半導体ウェハW_(1)」は「カセット11aから取出されて処理チャンバ50a(R1)で処置された後、再びカセット11aに収容され」ている。 よって、引用例1には、カセット11aまたは11b内に収容する半導体ウェハをプラットフォーム30側(出入口ポート20内)に搬入させ、プラットフォーム30側(出入口ポート20内)に収容されている処理チャンバ50aまたは処理チャンバ50bで処理を施した処理済の半導体ウェハを取出して再び(もとの)カセット11aまたは11b内に収容する外部ロボット13が開示されている。 カ 引用例1の段落【0048】の下線部の記載を整理すると、図7が「カセット11aまたは11bから半導体ウェハWを取出して」「一方の処理チャンバ50aまたは50b(同じく、R1またはR2)に搬送し、ここで処理を施した後、処理済の半導体ウェハWを再びカセット11aまたは11b内に戻すウェハ処理シーケンスを示す」ものであり、このようなウェハ処理シーケンスの制御を行うために、真空処理装置が一般的に制御装置を備えていることは技術常識である。 また、引用例1の段落【0063】の下線部の記載を整理すると、第2の実施例において「プラットフォーム30(PF)内の真空度を」「高真空にしておき、処理チャンバ50a,50b(R1,R2)内の圧力をこのプラットフォーム30内の圧力と等しい圧力まで真空度を高めた状態で、半導体ウェハWの受渡しを行う」から、処理チャンバ50a,50b内を高真空にした状態で、半導体ウェハの受渡しを行っており、引用例1の段落【0021】、【0051】、【0052】、【0058】の下線部の記載を整理すると、「出入口ポート20は、第1ゲートバルブ21を開くことによって大気側であるカセットステーション10側に開放でき」、「出入口ポート20」が「大気圧になった時に第1ゲートバルブ21を開いてこれを大気側に開放し」、「処理済の半導体ウェハW_(2)(W_(1))を」「カセット11b(11a)内に収容」するから、処理済の半導体ウェハを大気側のカセット11a,11bに収容している。 よって、引用例1には、カセット11aまたはカセット11bから取出した半導体ウェハを高真空にした処理チャンバ50aまたは処理チャンバ50bに搬送し、前記処理チャンバ50aまたは処理チャンバ50bで(共通のプロセス)処理を施した処理済の半導体ウェハを再び大気側のカセット11aまたは11b内に戻すようにウェハ処理シーケンスの制御を行う制御装置が開示されている。 キ 引用例1の段落【0050】?【0058】の下線部の記載を図7を参照しつつ整理すると、処理される半導体ウェハW_(1)?半導体ウェハW_(7)の搬送の流れは、以下のようになる。 半導体ウェハ 搬出カセット 処理チャンバ 搬入カセット W_(2) 不明 → 不明 → 11b W_(3) 不明 → 50a → 11a W_(5) 不明 → 50b → 11b W_(1) 11a → 50a → 11a W_(4) 不明 → 50b → 不明 W_(6) 不明 → 50a → 不明 W_(7) 不明 → 不明 → 不明 段落【0050】?【0058】の記載は、「1つの半導体ウェハW_(1)の処理を中心に、各半導体ウェハWに対する処理の手順を説明」したものであるから、すべての「半導体ウェハ」について、「搬出カセット」、「処理チャンバ」、「搬入カセット」が明示されているわけではないものの、少なくとも以下の(ア)?(ウ)については開示されているものと認められる。 (ア)「半導体ウェハW_(1)」に関しては、「カセット11a」から搬出され、「処理チャンバ50a」での処理を経て、もとの「カセット11a」に再び搬入されている。 (イ)処理チャンバは、「処理チャンバ50a」と「処理チャンバ50b」とが交互に使用され、カセットへの搬入は、「カセット11a」と「カセット11b」とに交互に行われている。 (ウ)「処理チャンバ50a」で処理された半導体ウェハは「カセット11a」に搬入され、「処理チャンバ50b」で処理された半導体ウェハは「カセット11b」に搬入されている。 よって、上記(ア)?(ウ)の点と、段落【0048】の「カセット11aまたは11bから半導体ウェハWを取出して、・・・一方の処理チャンバ50aまたは50b(同じく、R1またはR2)に搬送し、ここで処理を施した後、処理済の半導体ウェハWを再びカセット11aまたは11b内に戻すウェハ処理シーケンス」との記載、及び、段落【0050】の「この半導体ウェハW_(1 )は、カセット11aから取出されて処理チャンバ50a(R1)で処置された後、再びカセット11aに収容されるものとする。」との記載を総合すると、段落【0050】?【0058】及び図7に記載されたウェハ処理シーケンスは、カセット11aから取出した半導体ウェハのいずれをも、処理チャンバ50aに搬送し、ここ(処理チャンバ50a)で処理を施した処理済の半導体ウェハを再び(もとの)カセット11a内に戻し、カセット11bから取出した半導体ウェハのいずれをも、処理チャンバ50bに搬送し、ここ(処理チャンバ50b)で処理を施した処理済の半導体ウェハを再び(もとの)カセット11b内に戻すものであると解するのが最も自然であるから、引用例1には、そのようなウェハ処理シーケンスが実質的に開示されているものと認められる。 (1-3)上記(1-2)のア?キによれば、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が開示されているといえる。 「半導体ウェハに共通のプロセス処理を施す処理チャンバ50a及び処理チャンバ50bと、 処理チャンバ50a及び処理チャンバ50bに半導体ウェハを搬入するプラットフォーム30と、 半導体ウェハを収容するカセット11a及びカセット11bを設置するカセットステーション10と、 カセット11aまたは11b内に収容する半導体ウェハをプラットフォーム30側に搬入させ、プラットフォーム30側に収容されている処理チャンバ50aまたは処理チャンバ50bで処理を施した処理済の半導体ウェハを取出して再びもとのカセット11aまたは11b内に収容する外部ロボット13と、 カセット11aから取出した半導体ウェハのいずれをも、高真空にした処理チャンバ50aに搬送し、カセット11bから取出した半導体ウェハのいずれをも、高真空にした処理チャンバ50bに搬送し、前記処理チャンバ50aで共通のプロセス処理を施した処理済の半導体ウェハを再び大気側のもとのカセット11a内に戻し、前記処理チャンバ50bで共通のプロセス処理を施した処理済の半導体ウェハを再び大気側のもとのカセット11b内に戻すようにウェハ処理シーケンスの制御を行う制御装置と、 を備えることを特徴とする真空処理装置。」 (1-4)また、上記(1-2)のア?キを、半導体ウェハの処理方法の観点からみれば、引用例1には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が開示されているといえる。 「カセット11aまたは11b内に収容する半導体ウェハを処理チャンバ50aまたは処理チャンバ50bに搬入させて半導体ウェハに共通のプロセス処理を施し、処理済の半導体ウェハを取出して再びもとのカセット11aまたは11b内に収容する真空処理方法において、 カセット11aから取出した半導体ウェハのいずれをも、高真空にした処理チャンバ50aに搬送し、カセット11bから取出した半導体ウェハのいずれをも、高真空にした処理チャンバ50bに搬送し、前記処理チャンバ50aで共通のプロセス処理を施した処理済の半導体ウェハを再び大気側のもとのカセット11a内に戻し、前記処理チャンバ50bで共通のプロセス処理を施した処理済の半導体ウェハを再び大気側のもとのカセット11b内に戻す、 ことを特徴とする真空処理方法。」 (2)引用例2(甲第2号証):特開平9-50948号公報 (2-1)請求人により甲第2号証として提出された、本件特許に係る出願の原出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である、特開平9-50948号公報(以下「引用例2」という。)には、図1?7とともに、次の記載がある。 「【0009】 【発明が解決しようとする課題】ここで、半導体製造においては、例えば、外因によってプロセスモジュールでのプロセス条件が変動する、各モジュールのコントローラで処理エラーが発生する等といった、種々な障害が発生する場合がある。このような障害に発生に対して、上記した従来の半導体製造装置にあっては、障害箇所が一部のプロセス系であっても、統合制御コントローラが全ての処理動作を中断させていた。したがって、未処理のウエハが僅かであるような場合でも、これらウエハの処理が続行されないため、結果として、ウエハ処理が大幅に遅延してしまう事態が生じていた。 【0010】本発明は上記従来の事情に鑑みなされたもので、一部のプロセス系で障害が生じた場合には、残余の正常なプロセス系で基板(ウエハ)処理を続行し、総じて生産効率を向上させる半導体製造装置の障害対処システムを提供することを目的とする。」 「【0013】 【実施例】本発明の一実施例に係る半導体製造装置の障害対処システムを図面を参照して説明する。なお、本実施例は図1及び図2に示した半導体製造装置に本発明を適用したものであり、既に説明した部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。プロセスモジュールPM1とPM2とから成るプロセス系と、プロセスモジュールPM4とPM3とから成るプロセス系とのいずれにも障害がなく正常に稼働している状態では、本実施例においても、統合制御コントローラGCが図3に示したテーブル内容に従って各コントローラPC1?PC4、CC1、CC2、TCを統括して制御し、図4に示したようにウエハを奇数枚目と偶数枚目に分けてそれぞれのプロセス系で分散処理させる。 【0014】本実施例の統合制御コントローラGCは、各プロセスモジュールコントローラPC1?PC4からのエラー信号を受けて、各プロセスモジュールコントローラPC1?PC4及び各プロセスモジュールPC1?PC4での障害発生を検知する手段を有しており、システム稼働中はこの障害発生検知を常時行っている。また、本実施例の統合制御コントローラGCは、ウエハ搬送テーブルTの内容を書き換える手段を有しており、障害発生を検知したときには、この書換手段によってテーブルTの内容を書き換え、障害が発生したプロセス系で処理する予定のウエハを残余の正常なプロセス系へ振り替えて処理を続行する縮退運用を実施する。なお、本実施例では、統合制御コントローラGCの操作パネルを操作して、作業者が縮退運用を実施するか否かを選択指示することができ、当該指示がなされている場合にのみ、統合制御コントローラGCが縮退運用を実施する。 【0015】次に、各プロセス系を成すプロセスモジュールコントローラPC1?PC4及びプロセスモジュールPC1?PC4で障害が発生した場合における、本実施例のシステムの動作を図5?図7を参照して説明する。まず、システムが起動されると統合制御コントローラGCが各プロセスモジュールコントローラPC1?PC4からのエラー信号の監視を開始し(ステップSS1)、プロセスモジュールコントローラPC1?PC4或いはプロセスモジュールPC1?PC4のいずれかで障害が発生して、統合制御コントローラGCが当該障害に係るプロセスモジュールコントローラPC1?PC4からのエラー信号を受信すると、縮退運用を実施する指示がなされていか否かを判断する(ステップS2)。 【0016】この結果、縮退運用の実施が指示されていない場合には、従来と同様に全てのプロセス系の処理を中断させる(ステップS3)。なお、本実施例では、統合制御コントローラGCの操作パネルを操作して、縮退運用をすることなく、正常なプロセス系のみをそのまま稼動させるように選択指示することもでき、この指示がなされている場合には、正常なプロセス系は図3に示した内容のままのテーブエルTに従って自己が処理すべきウエハのみの処理を続行する(ステップS3)。一方、上記の判断の結果、縮退運用実施の指示がなされている場合には、エラー信号及び図3のテーブル内容に基づいて、障害が発生したプロセス系が奇数枚目のウエハを処理する系であるかを統合制御コントローラGCが判断する(ステップS4)。 【0017】この結果、奇数枚目のウエハを処理する系(すなわち、PM1及びPM2の系)で障害が発生している場合にはウエハ搬送テーブルTの奇数枚目のウエハに関するスケジュールを書き換える一方(ステップS5)、偶数枚目のウエハを処理する系(すなわち、PM4及びPM3の系)で障害が発生している場合にはウエハ搬送テーブルTの偶数枚目のウエハに関するスケジュールを書き換える(ステップS6)。 【0018】この書き換え処理は統合制御コントローラGCの書換手段でなされ、例えば、図3中及び図5図中に×印で示すように、1枚目(奇数枚目)のウエハのプロセス処理中に障害が発生した場合には、図6に*印で示すように、ウエハ搬送テーブルTの当該ウエハ以降の奇数枚目に係るスケジュールが書き換えられる。すなわち、3枚目、5枚目、7枚目、9枚目のウエハは、正常な処理においてはプロセスモジュールPM1及びPM2から成るプロセス系で処理されるようにスケジュールされているが(図3参照)、このプロセス系に障害が発生したことにより、プロセスモジュールPM4及びPM3から成る正常なプロセス系で処理されるように書き換えられる。 【0019】このようにテーブルTの書き換えがなされた後、このテーブルTの内容に従って統合制御コントローラGCが制御を行う(ステップS7)。この結果、図5に示すように、プロセスモジュールPM4及びPM3から成る正常なプロセス系において、後続する(3枚目以降の)ウエハが処理される。したがって、障害が生じたプロセス系で処理する予定のウエハについても処理が続行され、ウエハに薄膜形成等の所定の処理が施される。 【0020】なお、この縮退運用による処理においては、プロセス系が減少することによってウエハ搬送の重複が減少することから、統合制御コントローラGCは図5に示すように3枚目以降のウエハについての待ち時間を調整し、2経路で処理していたものを1経路で処理するように制御を行う。このため、プロセス系に障害が生じても装置を停止することなく、全てのウエハを処理することができる。 【0021】なお、上記の実施例では、統合制御コントローラGCはコントローラPC1?PC4からのエラー信号で障害発生を検知するようにしたが、各コントローラPC1?PC4や各プロセスモジュールPC1?PC4を直接監視して、障害発生を検知するようにしてもよい。また、上記実施例の半導体製造装置では、搬入用と搬出用のカセットモジュールCM1、CM2をそれぞれ設けたが、1つのカセットモジュールで搬入と搬出とを兼用させることも可能である。 【0022】また、本発明においては、半導体製造装置のプロセス系は2つ以上あればよく、また、各プロセス系は1つ以上のプロセスモジュールで構成されていればよい。また、本発明はクラスタ型以外の半導体製造装置にも適用することが可能であり、要は、2つ以上のプロセス系で処理対象の基板を分散処理する半導体製造装置であれば本発明を適用することができる。」 (2-2)引用例2の記載内容を整理すると、次のとおりである。 ア 引用例2の段落【0013】?【0016】の下線部の記載を整理すると、「半導体製造装置の障害対処システム」において、「ウエハ」を(「奇数枚目と偶数枚目」の)2系統に分けて、「プロセスモジュールPM1とPM2とから成るプロセス系と、プロセスモジュールPM4とPM3とから成るプロセス系」の2つの「プロセス系で分散処理させる」に際して、「プロセスモジュールPC1?PC4のいずれかで障害が発生し」た時に、「従来と同様に全てのプロセス系の処理を中断させる」、「正常なプロセス系のみをそのまま稼動させる」、「縮退運用を実施する」の3通りの対応指示を選択でき、このうち、「正常なプロセス系のみをそのまま稼動させる」「指示がなされている場合には、正常なプロセス系は」「自己が処理すべきウエハのみの処理を続行する」ことが記載されており、「正常なプロセス系のみをそのまま稼動させる」(「自己が処理すべきウエハのみの処理を続行する」)ということは、逆に言えば「障害が発生し」た(プロセスモジュールを含む)「プロセス系の処理を中断させる」ということであるから、引用例2には、ウエハを2系統に分けて2つのプロセス系で分散処理させるに際して、プロセスモジュールのいずれかで障害が発生した時に、障害が発生したプロセスモジュールを含む側のプロセス系の処理を中断させ、正常な側のプロセス系のみをそのまま稼動させて自己が処理すべきウエハのみの処理を続行する、半導体製造装置の障害対処システムが開示されている。 イ 引用例2の段落【0009】、【0010】の下線部の記載を整理すると、「従来の半導体製造装置にあっては、障害箇所が一部のプロセス系であっても、統合制御コントローラが全ての処理動作を中断させていた」ために「結果として、ウエハ処理が大幅に遅延してしまう事態が生じていた」という問題を解決するために、「一部のプロセス系で障害が生じた場合には、残余の正常なプロセス系で基板(ウエハ)処理を続行し、総じて生産効率を向上させる」ことを目的とすることが記載されている。 そして、「正常なプロセス系のみをそのまま稼動させる」場合であっても、(引用例2の主たる発明部分である「縮退運用を実施する」場合よりは劣るものの)、従来の「全てのプロセス系の処理を中断させる」場合と比較すれば、「一部のプロセス系で障害が生じた場合には、残余の正常なプロセス系で基板(ウエハ)処理を続行」しており、「生産効率を向上させる」ことができるのは明らかである。 よって、引用例2には、障害が発生した時に、正常なプロセス系のみをそのまま稼動させることにより、従来の全てのプロセス系の処理を中断させる場合と比較して、生産効率を向上させることが開示されている。 5 本件特許発明1について (1)本件特許発明1と引用発明1との対比 本件特許発明1と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1の「半導体ウェハ」、「処理チャンバ50a」、「処理チャンバ50b」、「プラットフォーム30」、「カセット11a」、「カセット11b」、「カセットステーション10」、「外部ロボット13」、「高真空」、「大気側」は、それぞれ、本件特許発明1の「ウエハ」、「第1のプロセス処理装置」、「第2のプロセス処理装置」、「真空搬送装置」、「第1のカセット」、「第2のカセット」、「大気搬送装置」、「ウエハ搬送装置」、「真空雰囲気」、「大気雰囲気」に相当する。 イ 引用発明1の「ウェハ処理シーケンスの制御」は、搬送に関する制御を含むものであるから、本件特許発明1の「搬送制御」に相当する。 ウ そうすると、本件特許発明1と引用発明1の一致点及び相違点は、次のとおりとなる。 《一致点》 「ウエハに共通のプロセス処理を施す第1及び第2のプロセス処理装置と、 プロセス処埋装置にウエハを搬送する真空搬送装置と、 ウエハを収納する第1及び第2のカセットを載置する大気搬送装置と、 前記各カセット内に収納したウエハを真空搬送装置側に搬出し、真空搬送装置側から搬出された前記プロセス処理装置による処埋の終了した処埋済みウエハをもとのカセットに戻すウエハ搬送装置と、 第1のカセットから搬出したウエハのいずれをも真空雰囲気にある第1のプロセス処理装置に搬送し、第2のカセットから搬出したウエハのいずれをも真空雰囲気にある第2のプロセス処理装置に搬送し、前記第1のプロセス処理装置で共通のプロセス処埋を施したウエハを大気雰囲気にあるもとのカセットに戻し、前記第2のプロセス処理装置で共通のプロセス処理を施したウエハを大気雰囲気にあるもとのカセットに戻すように搬送制御を行う制御装置を備えることを特徴とする真空処埋装置。」 《相違点》 本件特許発明1は、「該制御装置は、第1のプロセス処理装置に異常が発生したとき、第1のカセットからのウエハの搬出を中断し、第2のカセットからのウエハの搬出を継続し第2のプロセス処埋装置による処埋を続行する」のに対し、引用発明1は、「処理チャンバ50a」に異常が発生した場合の対処について、特に明示しない点。 (2)本件特許発明1と引用発明1との相違点の判断 上記(1)で認定した相違点について検討する。 ア 上記4(2-2)アより、引用例2には、ウエハを2系統に分けて2つのプロセス系で分散処理させるに際して、プロセスモジュールのいずれかで障害が発生した時に、障害が発生したプロセスモジュールを含む側のプロセス系の処理を中断させ、正常な側のプロセス系のみをそのまま稼動させて自己が処理すべきウエハのみの処理を続行する、半導体製造装置の障害対処システムが開示されており、上記4(2-2)イより、障害が発生した時に、正常なプロセス系のみをそのまま稼動させることにより、引用例2には、従来の全てのプロセス系の処理を中断させる場合と比較して、生産効率を向上させることが開示されている。 イ 引用発明1は、「カセット11aから取出した半導体ウェハのいずれをも、高真空にした処理チャンバ50aに搬送し、カセット11bから取出した半導体ウェハのいずれをも、高真空にした処理チャンバ50bに搬送し、前記処理チャンバ50aで共通のプロセス処理を施した処理済の半導体ウェハを再び大気側のもとのカセット11a内に戻し、前記処理チャンバ50bで共通のプロセス処理を施した処理済の半導体ウェハを再び大気側のもとのカセット11b内に戻す」ものであるから、「カセット11aから取出した半導体ウェハ」と「カセット11bから取出した半導体ウェハ」の2系統に分けて、「処理チャンバ50a」をプロセスモジュールとした「カセット11a」→「処理チャンバ50a」→「カセット11a」の経路で処理を行うプロセス系と、「処理チャンバ50b」をプロセスモジュールとした「カセット11b」→「処理チャンバ50b」→「カセット11b」の経路で処理を行うプロセス系とで分散処理を行うものである。 ウ 引用発明1においても、プロセス系の一部において障害が発生することは当然考えられることであり、そのような場合でも生産効率の低下を最小限にとどめたいという課題を内在していることは明らかである。また、引用例2の段落【0022】の下線部には、「2つ以上のプロセス系で処理対象の基板を分散処理する半導体製造装置であれば本発明を適用することができる」と記載されているが、上記イより、引用発明1が「2つ以上のプロセス系で処理対象の基板を分散処理する半導体製造装置」に該当することは明らかである。 エ よって、引用発明1において、引用例2に開示された技術思想を適用し、「ウエハを2系統に分けて2つのプロセス系で分散処理させるに際して、プロセスモジュールのいずれかで障害が発生した時に、障害が発生したプロセスモジュールを含む側のプロセス系の処理を中断させ、正常な側のプロセス系のみをそのまま稼動させて自己が処理すべきウエハのみの処理を続行する」制御を「制御装置」に対して行わせることは、当業者が容易になし得たことである。そしてその際に、プロセスモジュールである「処理チャンバ50a」及び「処理チャンバ50b」のうち、「処理チャンバ50a」に障害が発生した場合は、「カセット11a」→「処理チャンバ50a」→「カセット11a」の経路の処理が、中断すべき障害が発生した側のプロセス系に該当し、「カセット11b」→「処理チャンバ50b」→「カセット11b」の経路の処理が、続行すべき正常な側のプロセス系に該当するから、結果として、本件特許発明1のように、「該制御装置は、第1のプロセス処理装置に異常が発生したとき、第1のカセットからのウエハの搬出を中断し、第2のカセットからのウエハの搬出を継続し第2のプロセス処埋装置による処埋を続行する」との構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 オ 被請求人は、口頭審理陳述要領書において、「甲第2号証には、プロセスモジュールで障害が発生した場合における同一カセット内のウエハに関して、(1)縮退運用の実施が指示されていない場合には、従来と同様に全てのプロセス系の処理を中断させる。(2)正常なプロセス系のみをそのまま稼働させる。(3)縮退運用実施の指示がなされている場合には、正常なプロセス系で処理されるようにウエハ搬送テーブルを書き換えることが示されている。 このように、プロセスモジュールで障害が発生した場合において、正常なプロセス系のみをそのまま稼働させる処理は、障害発生時に取られる処理のうちの一つにすぎない。」(6頁19?28行)とした上で、「このように、プロセスモジュールで障害が発生した場合において取られる処理の1つに過ぎない処理を、方式の異なる甲第1号証に適用すること、を示唆する記載も見あたらない。すなわち、甲第2号証での最適な障害発生対処法ではない処理である前記(2)の処理(正常なプロセス系のみをそのまま稼働させる処理)を甲第1号証に適用する動機付けが見当たらない。」(6頁29行?7頁4行)と主張する。 しかしながら、引用例2(甲第2号証)に開示された上記(1)?(3)の3つの処理は、障害が生じた際の基本的な対処法を類型化したものと理解でき、それぞれ長所及び短所を有しているものの、いずれも状況に応じて使い分けることのできる有効な処理であることは明らかである。確かに、引用例2では上記(3)の処理に主眼を置いた記載がなされているが、それは、上記(3)の処理がより高度の制御を必要とするからであり、上記(2)の処理の採用を妨げるものではない。 カ また、被請求人は、口頭審理陳述要領書において、「甲第1号証のものは、二つのカセットから二つの処理室にそれぞれウエハを搬入出するというウエハの搬送方式がとられ、また、二つの処理室では同一の処理あるいは分割された連続処理の一部を実行する処理方式であり、1つのカセットに収容されているウエハを分散して処理する分散処理方式ではない。」(6頁7?10行)とした上で、「なお、甲第2号証の段落【0022】には、「2つ以上のプロセス系で処理対象の基板を分散処理する半導体製造装置であれば本発明を適用することができる」と記載されているが、前記「2つ以上のプロセス系で処理対象の基板を分散処理する半導体製造装置」が、甲第2号証のものとは異なる搬送方式をとる甲第1号証の半導体処理装置を指すと解すべき理由はない。」(7頁11?15行)と主張する。 しかしながら、引用例2(甲第2号証)に開示された「2つ以上のプロセス系」は、「障害が発生したプロセス系」及び「正常なプロセス系」という概念で扱われており、この2つに区分することができさえすればよいのであるから、搬送方式によって制限を受けるものではない。そして、引用発明1の「カセット11a」→「処理チャンバ50a」→「カセット11a」の経路及び「カセット11b」→「処理チャンバ50b」→「カセット11b」の経路からなる2つの「ウェハ処理シーケンス」は、例えば「処理チャンバ50a」に障害が生じた場合には、前者の経路が「障害が発生したプロセス系」となると同時に、後者の経路が「正常なプロセス系」として機能し続けることを考えれば、上記「2つ以上のプロセス系」に該当することは明らかであり、引用発明1が引用例2に開示された上記「2つ以上のプロセス系で処理対象の基板を分散処理する半導体製造装置」に該当することも明らかである。 キ 上記オ、カで検討したとおり、被請求人の主張は採用できない。 ク したがって、本件特許発明1は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 6 本件特許発明2について (1)本件特許発明2と引用発明2との対比 本件特許発明2と引用発明2とを対比する。 ア 引用発明2の「カセット11a」、「カセット11b」、「半導体ウェハ」、「処理チャンバ50a」、「処理チャンバ50b」、「高真空」、「大気側」は、それぞれ、本件特許発明2の「第1のカセット」、「第2のカセット」、「ウエハ」、「第1のプロセス処理装置」、「第2のプロセス処理装置」、「真空雰囲気」、「大気雰囲気」に相当する。 イ そうすると、本件特許発明2と引用発明2の一致点及び相違点は、次のとおりとなる。 《一致点》 「第1及び第2のカセットに収納したウエハをそれぞれ第1及び第2のプロセス処理装置に搬送してウエハに共通のプロセス処理を施し、処理済みウエハをもとのカセットに戻す真空処理方法において、 第1のカセットから搬出したウエハのいずれをも真空雰囲気にある第1のプロセス処理装置に搬送し、第2のカセットから搬出したウエハのいずれをも真空雰囲気にある第2のプロセス処理装置に搬送し、前記第1のプロセス処理装置で共通のプロセス処理を施したウエハを大気雰囲気にあるもとのカセットに戻し、前記第2のプロセス処埋装置で共通のプロセス処理を施したウエハを大気雰囲気にあるもとのカセットに戻すことを特徴とする真空処埋方法。」 《相違点》 本件特許発明2は、「第1のプロセス処理装置に異常が発生したとき、第1のカセットからのウエハの搬出を中断し、第2のカセットからのウエハの搬出を継続し第2のプロセス処埋装置による処埋を続行する」のに対し、引用発明2は、「処理チャンバ50a」に異常が発生したときの対処について、特に明示しない点。 (2)本件特許発明2と引用発明2との相違点の判断 上記(1)で認定した相違点について検討する。 ア 上記4(2-2)アより、引用例2には、ウエハを2系統に分けて2つのプロセス系で分散処理させるに際して、プロセスモジュールのいずれかで障害が発生した時に、障害が発生したプロセスモジュールを含む側のプロセス系の処理を中断させ、正常な側のプロセス系のみをそのまま稼動させて自己が処理すべきウエハのみの処理を続行する、半導体製造装置の障害対処システムが開示されており、上記4(2-2)イより、障害が発生した時に、正常なプロセス系のみをそのまま稼動させることにより、引用例2には、従来の全てのプロセス系の処理を中断させる場合と比較して、生産効率を向上させることが開示されている。 イ 引用発明2は、「カセット11aから取出した半導体ウェハのいずれをも、高真空にした処理チャンバ50aに搬送し、カセット11bから取出した半導体ウェハのいずれをも、高真空にした処理チャンバ50bに搬送し、前記処理チャンバ50aで共通のプロセス処理を施した処理済の半導体ウェハを再び大気側のもとのカセット11a内に戻し、前記処理チャンバ50bで共通のプロセス処理を施した処理済の半導体ウェハを再び大気側のもとのカセット11b内に戻す」ものであるから、「カセット11aから取出した半導体ウェハ」と「カセット11bから取出した半導体ウェハ」の2系統に分けて、「処理チャンバ50a」をプロセスモジュールとした「カセット11a」→「処理チャンバ50a」→「カセット11a」の経路で処理を行うプロセス系と、「処理チャンバ50b」をプロセスモジュールとした「カセット11b」→「処理チャンバ50b」→「カセット11b」の経路で処理を行うプロセス系とで分散処理を行うものである。 ウ 引用発明2においても、プロセス系の一部において障害が発生することは当然考えられることであり、そのような場合でも生産効率の低下を最小限にとどめたいという課題を内在していることは明らかである。また、引用例2の段落【0022】の下線部には、「2つ以上のプロセス系で処理対象の基板を分散処理する半導体製造装置であれば本発明を適用することができる」と記載されているが、上記イより、引用発明2が「2つ以上のプロセス系で処理対象の基板を分散処理する半導体製造装置」を用いた処理方法に該当することは明らかである。 エ よって、引用発明2において、引用例2に開示された技術思想を適用し、「ウエハを2系統に分けて2つのプロセス系で分散処理させるに際して、プロセスモジュールのいずれかで障害が発生した時に、障害が発生したプロセスモジュールを含む側のプロセス系の処理を中断させ、正常な側のプロセス系のみをそのまま稼動させて自己が処理すべきウエハのみの処理を続行する」ことは、当業者が容易になし得たことである。そしてその際に、プロセスモジュールである「処理チャンバ50a」及び「処理チャンバ50b」のうち、「処理チャンバ50a」に障害が発生した場合は、「カセット11a」→「処理チャンバ50a」→「カセット11a」の経路の処理が、中断すべき障害が発生した側のプロセス系に該当し、「カセット11b」→「処理チャンバ50b」→「カセット11b」の経路の処理が、続行すべき正常な側のプロセス系に該当するから、結果として、本件特許発明2のように、「第1のプロセス処理装置に異常が発生したとき、第1のカセットからのウエハの搬出を中断し、第2のカセットからのウエハの搬出を継続し第2のプロセス処埋装置による処埋を続行する」との構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 オ したがって、本件特許発明2は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 7 結言 以上の次第で、本件特許の請求項1、2に係る発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件特許の請求項1、2に係る発明は、特許法29条2項の規定に違反して特許されたものであるから、特許法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-12-21 |
結審通知日 | 2009-12-24 |
審決日 | 2010-01-05 |
出願番号 | 特願2001-384743(P2001-384743) |
審決分類 |
P
1
113・
121-
Z
(H01L)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 大嶋 洋一、柴沼 雅樹 |
特許庁審判長 |
相田 義明 |
特許庁審判官 |
廣瀬 文雄 安田 雅彦 |
登録日 | 2004-03-26 |
登録番号 | 特許第3538416号(P3538416) |
発明の名称 | 真空処理方法及び真空処理装置 |
代理人 | 飯島 大輔 |
代理人 | 特許業務法人 武和国際特許事務所 |
代理人 | アイアット国際特許業務法人 |
代理人 | 飯島 大輔 |
代理人 | 佐藤 英二郎 |
代理人 | 石塚 利博 |
代理人 | 特許業務法人 武和国際特許事務所 |
代理人 | 佐藤 英二郎 |
代理人 | 石塚 利博 |