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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2008800146 審決 特許
無効2007800080 審決 特許
無効2009800243 審決 特許
無効2008800037 審決 特許
無効200580364 審決 特許

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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  A61K
管理番号 1212120
審判番号 無効2009-800087  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-04-28 
確定日 2010-02-17 
事件の表示 上記当事者間の特許第4184278号発明「非ゼラチン系カプセル皮膜組成物及びそれを用いたカプセル」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第4184278号(平成14年11月22日国際出願;優先権主張日平成13年11月22日)は、平成20年9月12日に特許権の設定登録がされた。
そして、請求人・鶴間君江により平成21年4月28日付けで本件特許の請求項1に係る発明に対して無効の審判が請求され、被請求人・森下仁丹株式会社により平成21年7月16日付けで答弁書が提出された。
その後、請求人より平成21年10月15日付けの上申書、次いで平成21年11月6日付けの弁駁書が提出されたが、該弁駁書は請求の理由を補正するものであり、その請求の理由の補正は平成21年12月9日付けの補正許否の決定により許可しないと決定された。

2.本件特許発明
本件特許第4184278号の請求項1に係る発明(以下、単に「本件特許発明」ともいう。)は、本件明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定された次のとおりのものである。なお、請求項2?10に係る発明については、無効の請求がなされていないため摘示を要しない。

「【請求項1】 内容物と該内容物を被覆するカプセル皮膜とからなるシームレスカプセルであって、該カプセル皮膜が(a)DE(ブドウ糖当量)の平均値が10未満で、且つ分子量の平均値が30,000以下である可溶性澱粉またはデキストリンおよび(b)ゲル化剤を含有する非ゼラチンシームレスカプセル。」

3.請求人の主張
請求人は、「特許第4184278号発明の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明についての特許を無効とし、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」とし、次の無効理由を主張している。
『本件請求項1の発明は、甲第1?5号証に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号の規定に該当し、本件特許は無効とすべきものである。』
そして、証拠方法として、下記甲第1号証?甲第5号証を提出している。


甲第1号証: 特表平8-509018号公報
甲第2号証: 特開平6-209784号公報
甲第3号証: でん粉製品の知識(高橋禮治著、幸書房刊、平成8年5月
25日発行、平成12年2月5日一部改訂)
甲第4号証: 特開平5-238904号公報
甲第5号証: 特開平6-234882号公報

なお、平成21年11月6日付け弁駁書において、請求人は、記載不備の無効理由(特許法第36条第5項、同第6項第1号、第2号の規定を満たさないため特許法第123条第1項第4号に違反する(当審注:請求人は、同法第123条第1項第2号に違反するとしているが、同項第4号に違反するの誤記と認める。))を追加し、また、甲第14号証(本件優先権出願の明細書)を提示して新規性基準日は優先権主張日ではないと主張すると共に本件国際出願日前の出願であり特許出願後に公開された特許出願の明細書の代用とする公報であると主張する新たな証拠甲第15号証を追加し、更に新たに甲第6?13号証,甲第16号証を追加し、甲第1?13号証及び15号証に記載された発明に基づき容易に発明ができたものである(特許法第29条第2項に違反する)との無効理由に変更し、無効理由の対象としていなかった請求項2?10に言及して、請求の理由を補正しているが、これら請求の理由の補正については、平成21年12月9日付けで特許法第131条の2第2項の規定に基づき許可しないとの補正許否の決定がされている。

4.被請求人の主張
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求めている。
そして、無効理由に対して、被請求人は、「本件特許の請求項1の発明は、甲第1?5号証に記載された発明から当業者がどのように組み合わせたとしても、容易に発明することができないものであり、特許されるべきものである。」と主張している。

5.甲第1号証?甲第5号証の記載事項
以下の摘示事項において、下線は当審で付したものである。

(5-1)甲第1号証
(1-i)「14.(B)(a)5から15のD.E.を有するマルトデキストリン95から100重量%、又は
(b)5から15のD.E.を有するマルトデキストリン45から65重量%、及び24から42のD.E.を有する固形コーンシロップ35から55重量%、又は
(c)5から15のD.E.を有するマルトデキストリン80から95重量%、有機酸の塩1から15重量%、及び有機酸0から15重量%、又は
(d)5から15のD.E.を有するマルトデキストリン25から80重量%、食品ポリマー2から45重量%、及びモノ-もしくはジサッカライド、又は24から42のD.E.を有する固形コーンシロップ10から30重量%、又は
(e)5から15のD.E.を有するマルトデキストリン45から80重量%、カルボキシレート基もしくはサルフェート基を有する炭水化物ポリマー2から22重量%、24から42のD.E.を有する固形コーンシロップ5から30重量%、及び溶解性のあるカルシウム塩0.2から2.0重量%、又は
(f)変性スターチ30から100重量%、及びモノーもしくはジサッカライド0から70重量%、又は
(g)変性スターチ85から100重量%、及び多価アルコール0から15重量%
からなるガラス質マトリックスに
(A)封入された被カプセル化物質
を含み、
(i)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)もしくは(g)と、液状可塑剤、及び被カプセル化物質とを抽出機中で混合して溶融マトリックスを得る工程、及び
(ii)該溶融マトリックスを押出す工程
からなる方法により得られる、カプセル化組成物。」(第3?4頁の請求項14参照)
(1-ii)「したがって、本発明の目的の一つは、常温でガラス質状態で安定しているマトリックス中に被カプセル化物をカプセル化した新規なカプセル化組成物を提供することにある。
本発明の別の目的は、常温でガラス質状態で安定しているマトリックス中に香味剤をカプセル化した新規な香味カプセル化組成物を提供することにある。
本発明の別の目的は、揮発性または感受性の高い香味料成分をカプセル化することが容易な新規な香味カプセル化組成物を提供することにある。
以下の詳細な記載から明らかになるように、上記のおよび他の目的は、一種またはそれ以上の炭水化物食品ポリマーを押出成形機の溶融ゾーンにおいて水性可塑剤と相互作用させ、得られた混合物を押出成形することにより、常温での可塑化による流れや固化を阻止するのに十分な高いTgを有する炭水化物ベースのガラス質マトリックスを調製できることを本発明者が発見したことによって達成された。
また、本発明者は、
(B)(a)5から15のデキストロース等量(D.E.)を有するマルトデキストリン95から100重量%、又は
(b)5から15のD.E.を有するマルトデキストリン45から65重量%、及び24から42のD.E.を有する固形コーンシロップ35から55重量%、又は
(c)5から15のD.E.を有するマルトデキストリン80から95重量%、有機酸の塩1から15重量%、及び有機酸0から15重量%、
又は
(d)5から15のD.E.を有するマルトデキストリン25から80重量%、食品ポリマー2から45重量%、及びモノ-もしくはジサッカライド、又は24から42のD.E.を有する固形コーンシロップ10から30重量%、又は
(e)5から15のD.E.を有するマルトデキストリン45から80重量%、カルボキシレート基もしくはサルフェート基を有する炭水化物ポリマー2から22重量%、24から42のD.E.を有する固形コーンシロップ5から30重量%、及び溶解性のあるカルシウム塩0.2から2.0重量%、又は
(f)変性スターチ(例えば、コハク酸オクテニルナトリウム変性スターチ)30から100重量%、及びモノ-もしくはジサッカライド0から70重量%、又は
(g)変性スターチ(例えば、コハク酸オクテニルナトリウム変性スターチ)85から100重量%、及び多価アルコール0から15重量%
を含むガラス質マトリックスに
(A)封入された被カプセル化物質
を含む組成物は、ガラス質状態で安定である、即ち、常温における可塑化による流れや固化を防止するのに十分な高いTgを有することを発見した。
本発明のカプセル化組成物は、
(i)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)もしくは(g)と、液状可塑剤、及び被カプセル化物質とを抽出機中で混合して溶融マトリックスを得る工程、及び
(ii)該溶融マトリックスを押出す工程
を含むプロセスによって調製することができる。」(第11頁27行?第13頁15行参照)
(1-iii)「被カプセル化物が脂質親和性である場合には、通常は脂質親和相またはマトリックス混合物中に添加される乳化剤の助けを借りて、最終製品のガラス質マトリックス中に被カプセル化物が分散される。一方、被カプセル化物が親水性または水溶性である場合には、最終製品中に被カプセル化物が分散溶質としておよび/または分散カプセル形成物として含まれる。」(第17頁23?27行参照)
(1-iv)「一般的に、市販のマルトデキストリンは選択されたコーンスターチの加水分解によって調製される。マルトデキストリン生成物は、少量のモノおよびジサッカライドも含む炭水化物オリゴマーの複合混合物として得られる。5?10のデキストロース等量(D.E.)を有するものであれば如何なる市販のマルトデキストリンも好適に使用できる。しかし、10?15D.E.のマルトデキストリンが好ましい。本明細書で使用されるデキストロース等量(D.E.)という語は、デキストロースとして計算した製品中の還元糖(乾燥状態での)百分率を表す。アメリカン・メイズ社(American Maise Company)(インディアナ州ハモンド)のロデックス(Lodex)10を使用することによって良好な結果が得られた。」(第19頁2?10行参照)
(1-v)「他の実施態様では、マトリックスが(e)5?15D.E.のマルトデキストリンを45?80重量%、カルボキシレートまたはサルフェートを有する炭水化物ポリマーを2?22重量%、D.E.が24?42の固形コーンシロップを5?30重量%、および水溶性カルシウム塩を0.2?2.0重量%含む。重量%は乾燥状態での値である。好ましくは、マトリックス(e)は5?15DEのマルトデキストリンを40?80重量%、カルボキシル塩基または硫酸塩基を有する炭水化物ポリマーを4?15重量%、D.E.が24?42の固形コーンシロップを10?25重量%、および水溶性カルシウム塩を0.4?1.8重量%含む。重量%は乾燥状態での値である。
カルボキシル基または硫酸基を有する適切な炭水化物ポリマーは、水溶性であり、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、低メトキシペクチン、アルギン酸ナトリウム、ならびにκおよびιカラギーナンを挙げることができる。」(第26頁24行?第27頁8行参照)
(1-vi)「本発明のカプセル化組成物は、(i)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)もしくは(g)と、液状可塑剤、及び被カプセル化物質とを抽出機中で混合して溶融マトリクッスを得る工程、及び(ii)該溶融マトリックスを抽出す工程を含む方法により得られる。
この方法は、通常の一軸スクリュー抽出機、もしくは共回転二軸スクリュー抽出機中で実施することができる。一軸スクリュー抽出機を使用するか、二軸スクリュー抽出機を使用するかの選択は多くのファクターに依るが、主にマトリックスと被カプセル化物質の搬送特性に依る。一軸スクリュー抽出機は、推進流に完全に依存する。一方、二軸スクリュー抽出機は、強制的なポンピング作用をある程度もたらす。
通常、一軸スクリュー押出機が使用できれば常に、それを二軸スクリュー抽出機で置き換えることができる。しかしながら、一軸スクリュー押出機は使用できず、二軸スクリュー抽出機が必要とされる状況もある。そのような状況とは、高いTgを有するガラス質のマトリックスを調製していて、水性可塑剤を少量添加する場合等である。この場合、一軸スクリュー抽出機を使用すると、マトリックスの原料がカラメル化して、一軸スクリュー抽出機を詰まらせることがある。」(第31頁4?19行参照)
(1-vii)「最終的に抽出された組成物は、抽出されたまま、すなわち抽出された棒、もしくはフィラメントの状態で使用することができる。或いは、抽出された物質を、好ましくは冷却した後、例えば、磨砕、粉砕等により更に加工してもよい。磨砕した組成物は、被カプセル化物質の貯蔵及び/又は持続放出のためにそのまま用いてもよい。或いは、分散された被カプセル化物質の場合には、エタノール、イソプロパノール、ヘキサンのような食品等級溶剤で表面の油を洗浄し、残留溶剤を標準的な方法で除去してもよい。」(第34頁15?21行参照)

当審注:上記摘示(1-i)?(1-vii)において、「抽出」(抽出す,抽出機,スクリュー抽出機など)の用語が頻出しているが、前後の記載や技術常識からみて、明らかに「押出」の誤記と解するのが相当であるから、「抽出」を「押出」に読み替えて、以下判断する。

(5-2)甲第2号証
(2-i)「【請求項15】 (α1.6)結合を持つ枝分かれ分子、約20,000?約50,000ダルトンの分子量および約8より小さいD.E.のマルトデキストリンを構成成分として使用する製剤用生成物。」(第2頁2欄5?8行参照)
(2-ii)「【従来技術】低いD.E.の澱粉加水分解物および澱粉転化生成物は業界において公知である。一般にこれらは澱粉を酸または酵素で加水分解することによって製造される。かゝる生成物は無刺激な味覚、低い甘味度および低い吸湿性を有しそして種々の食品用途に有用である。例えばこのものは充填剤、キャリヤー、造膜剤、カプセル化剤等として使用できる。
【0003】低いD.E.の澱粉加水分解物を製造する従来の方法の代表例は、米国特許第3,853,706号明細書および同第3,849,194号明細書に開示されたものである。この両方の特許は澱粉加水分解物を処理する為にある種の微生物のα-アミラーゼを利用しそして5と20?25との間のD.E.を持つ生成物を提供する方法を開示している。
【0004】?【0006】 ・・・中略・・・
【0007】色々な低いD.E.のマルトデキストリンが市販されている。例えば米国、アイオワ州、MuscatineのGrain Processing Corporationから入手できるMaltrin M040-マルトデキストリンは、約4?7のD.E.を有することが開示されている。」(第2頁2欄23行?第3頁3欄19行参照)

(5-3)甲第3号証
(3-i)「・・・でん粉の分解程度は通常DE(dextrose equivalent の略で固形分中のグルコースに換算した直接還元糖百分率,したがって理論的にはグルコースが100)で表わされているがDE95?100に相当するグルコース製品や40?50の水あめは一般にでん粉糖に分類され,加工でん粉と区別されている。したがって加工でん粉はDE40以下の湿式分解でん粉であり,DE10以下をデキストリン,DE10?20をマルトデキストリン(アメリカでは20以下),20?40程度の粉末を粉あめと細分類されることもある。・・・」(第97頁10?21行参照)

(5-4)甲第4号証
(4-i)「【請求項1】水溶性被覆物質中に農薬活性成分を保持せしめた粒子径50μm以下の農薬マイクロカプセル。
【請求項2】水溶性被覆物質が、5?40のsp値を有し、成膜作用または包接作用を有するものである請求項1記載の農薬マイクロカプセル。
【請求項3】水溶性被覆物質が水溶性高分子物質またはシクロデキストリンである請求項1または2記載の農薬マイクロカプセル。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】?【請求項3】参照)
(4-ii)「【0040】本発明に使用される水溶性被膜物質は、水に易溶性のものである。また、水溶性であり、結晶性も低く、sp値(溶解度パラメータ)が5?40、好ましくは10?30の範囲のものが用いられる。なかでも、成膜性物質や包接作用を有する物質が好ましい。
【0041】該水溶性被膜物質としては、水溶性天然高分子、水溶性半合成高分子、水溶性合成高分子等の水溶性高分子被覆物質やシクロデキストリンが挙げられる。
【0042】天然水溶性高分子としては、デンプン質、マンナン、海藻類、植物粘質物、微生物による粘質物およびタンパク質等が挙げられる。具体的に、デンプン質としてはかんしょデンプン、ばれいしょデンプン、タピオカデンプン、小麦デンプン、コーンスターチ等である。マンナンとしてはこんにゃくマンナン等である。・・・。
【0043】水溶性合成高分子としては、・・・。
【0044】水溶性半合成高分子としては、セルロース系水溶性半合成高分子、デンプン系水溶性半合成高分子等が挙げられる。セルロース系のものとしてはビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等である。デンプン系のものとしては可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン、デキストリン、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉等である。なかでも、デンプン系のものが好ましく、具体的にはデキストリンが好ましい。デキストリンとは、一般にアミロデキストリン、エリトロデキストリン、アクロデキストリンおよびマルトデキストリンの四種が知られている。本件発明に用いられるものは、水溶性であればいずれであってもよく、また、その混合物であってもよい。アミロデキストリンは冷水には難溶性であるため、その配合はなるべく少ないほ方が好ましく、エリトロデキストリン、アクロデキストリンおよびマルトデキストリン、特に、エリトロデキストリンが主成分であるデキストリンが好ましい。
【0045】上記の水溶性高分子被覆物質の分子量や重合度は、該高分子物質を構成するモノマーの種類や高分子物質自体の特性によって、適宜決定され、特に限定されるべきものではない。前記したように、水溶性であり、成膜性作用を有する物質であればいかなるものでも使用することができる。例えば、デキストリンであれば分子量が10,000以下、好ましくは3,000?10,000の範囲のエリトロデキストリンやアクロデキストリンを主体とした物が用いられる。・・・。
【0046】シクロデキストリンとしては、α-、β-またはγ-シクロデキストリン等である。なかでも、α-シクロデキストリンが好ましい。具体的市販品としては、トヨデリンP^(TM)(約50%のシクロデキストリン含有、特に30%のα-シクロデキストリン含有:東洋醸造製)、イソエリート^(TM)(約60%のα-シクロデキストリン含有:日研化学製)等などが挙げられる。
【0047】?【0048】・・・中略・・・
【0049】従って、上記のうち好ましい水溶性被膜物質は、植物粘質物の水溶性天然高分子ガム、デンプン系水溶性半合成高分子、シクロデキストリンである。具体的には、アラビアガム、α-シクロデキストリンおよびデキストリンである。このうち、最も好ましい水溶性被膜物質は植物粘質物の水溶性天然高分子ガムのアラビアガムである。」(第6頁10欄45行?第7頁12欄36行参照)
(4-iii)「【0058】(2)調製液の乾燥
上記(1)工程で調製された液を、減圧乾燥や噴霧乾燥によって乾燥する。
【0059】減圧乾燥等の手段によって、乾燥した場合には、乾燥物を粉砕し、所定の粒子径以下の粒子に篩分けする。
【0060】また、スプレードライヤー等による噴霧乾燥などの手段によって、乾燥した場合には、その乾燥条件を適宜選択し、所望の粒子径のものを得る。
【0061】特定の範囲の粒子径を有するマイクロカプセルを得るには、この噴霧乾燥の手段が有効である。
【0062】噴霧乾燥の条件としては、溶媒である水分を除去できる範囲の温度であればよい。例えば、50?250℃、好ましくは70?200℃の温度範囲で乾燥する。スプレードライヤーのアトマイザー回転数は、使用される機種によって異なるが、得られる乾燥粒子の粒子径が50μm以下、好ましくは3?45μm、更に好ましくは5?40μmの範囲となるように設定すればよい。」(第8頁13欄38行?同頁14欄6行参照)

(5-5)甲第5号証
(5-i)「【0047】例4
下記の組成物を上記の装置を用いて本発明による方法によって首尾よく押出成形した。
【0048】L:コーンスターチ 39.3%、ピロデキストリン(平均分子量8710)30.5%、グリセロール22.6%、水5.7%。
M:コーンスターチ 59.8%、ピロデキストリン(平均分子量24490) 10.2%、グリセロール22.4%、水5.7%。
【0049】N:コーンスターチ 39.3%、ピロデキストリン(平均分子量24490) 30.5%、グリセロール22.6%、水5.7%。
O:コーンスターチ 20.1、ピロデキストリン(平均分子量24490)53.9%、グリセロール24%。」(第6頁10欄5?19行参照)

6.当審の判断
請求人は、概略、「本件特許の請求項1の発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、両者は、デキストリン製カプセルの組成に関する発明である点で共通し、本件特許請求項1の発明は、デキストリンに関する数値限定として、(イ)DEの平均値が10未満、及び、(ウ)分子量の平均値が30,000以下であるのに対し、甲第1号証に記載された発明は、(イ' )D Eが5から15であり、(ウ)分子量については触れていない点で相違する。なお、本件特許の請求項1では、(エ)可溶性澱粉またはデキストリンと記載されているが、可溶性澱粉とは、加水分解の程度が低い澱粉に対する通称に過ぎず、正確にはDE値によって特定されるので、デキストリンとまとめて検討する。」と主張し、その検討の結果、「このように、本件特許発明の請求項1における数値限定事項である(イ)DEの平均値が10未満も、(ウ)分子量の平均値が30,000以下も、閾値は合致しないが、従来公知の事項に過ぎず、両数値限定事項を兼ね備えたデキストリンも、従来公知の市販品に過ぎず、甲第1?5号証は、本件特許発明と同じ技術分野であるから、甲第2?5号証に記載された上記の点の構成を甲第1号証に記載されたものに適用することは、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に推考し得たものである。また、本件特許発明の効果も、甲第1?5号証に記載のものから予測できる以上のものはない。」と主張している。

そこで、甲第1号証に記載された発明を検討する。
甲第1号証には、前記(5-1)の摘示の記載からみて、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「5から15のデキストロース等量(D.E.)を有するマルトデキストリンからなる常温でガラス質状態で安定しているマトリックス中に、被カプセル化物がカプセル化(封入)されたカプセル。」

次いで、引用発明と本件特許発明を対比する。
(a)引用発明の「マルトデキストリン」は、本件特許発明の「デキストリン」に相当し、「非ゼラチン」であることも明らかである。
(b)引用発明の「5から15のデキストロース等量(D.E.)を有するマルトデキストリン」は、本件特許発明の「DE(ブドウ糖当量)の平均値が10未満で」である「デキストリン」に対応し、「デキストロース等量(D.E.)」と「DE(ブドウ糖当量)」は同じことを指すと認められることを勘案し、両者の「DE(ブドウ糖当量)」は「5から10未満」で重複する。
(c)引用発明の「マトリックス中に、被カプセル化物がカプセル化(封入)された」は、本件特許発明の「内容物と該内容物を被覆するカプセル皮膜とからなる・・カプセル」に対応し、引用発明の「被カプセル化物」と「マトリックス」が、それぞれ本件特許発明の「内容物」と「該内容物を被覆するカプセル」に相当する。

そうすると、両発明は、
「内容物と該内容物を被覆するカプセルであって、該カプセルが(a)DE(ブドウ糖当量)の平均値が5から10未満であるデキストリンを含有する非ゼラチンカプセル。」
で一致し、次の相違点1?3で相違する。
<相違点>
1.カプセルに関し、本件特許発明が「内容物を被覆するカプセル皮膜とからなるシームレスカプセル」と特定されているのに対し、引用発明ではそのように特定されていない点
2.デキストリンに関し、本件特許発明では「分子量の平均値が30,000以下である」と特定されているのに対し、引用発明ではそのように特定されていない点
3.本件特許発明では、「(b)ゲル化剤を含有する」と特定されているのに対し、引用発明ではそのように特定されていない点

そこで、こられの相違点について検討する。
(1)相違点1について
シームレスカプセルについてどのようなものか検討するに、本件特許明細書では、「シームレスカプセルは、例えば、多重ノズルを用いた滴下法によりシームレスカプセルを連続生産する方法、例えば特開昭58-22062号公報、特開昭59-131355号公報、特開平3-52639号公報、特開平5-031352号公報、特開平7-069867号公報等に記載の方法が挙げられるが、必ずしもこれらの方法に限定されるものではない。例えば、多重ノズルを用いた滴下法によれば、定常速度で流下する液状油中に二重以上の同心多重ノズルを挿入し、これら同心多重ノズルの最内側ノズルから内容物質を、そして前記非ゼラチン皮膜組成物を最外側ノズルから、それぞれ同時に一定速度で射出すると、液状油と皮膜物質との間に作用する界面張力によって、球状の継目なし(シームレス)カプセルを連続的に製造することができる。 本発明のカプセルの乾燥後の粒径範囲は、通常0.1mm?10mm、望ましくは粒径0.3mm?8mmである。これらのカプセル皮膜厚さは30μm?300μmの範囲で形成できる。」(本件特許公報第5頁33?45行参照)と説明されていて、実施例においても多重ノズルを用いた滴下法が採用されている。

これに対し、引用発明のカプセル化組成物を用いて得られるカプセルは、「常温でガラス質状態で安定しているマトリックス中に、被カプセル化物がカプセル化(封入)された」ものであり、具体的には被カプセル化物質をカプセル化組成物中に練り込んで押出形成したカプセルであり(摘示(1-i),(1-ii)参照)、最終的に押出されたまま、すなわち棒、フィラメント状、或いは、磨砕、粉砕等により更に加工して用いられる(摘示(1-vii)参照)から、本件特許発明で特定する「内容物を被覆するカプセル皮膜とからなるシームレスカプセル」とは、内容物を被覆する皮膜を有さない点において基本的に異なるものといえる。
換言すれば、引用発明におけるカプセルは、押出機で混練して得た「溶融マトリックス」に被カプセル化物質が分散、乃至は分散溶質として含まれるものであり(摘示(1-iii)も参照)、被カプセル化物質が分散したマトリックスである点で、本件特許発明で意図されるカプセル皮膜からなる球状の継ぎ目のないカプセルとは本質的に異なるものと認められる。
してみると、引用発明は、「内容物を被覆するカプセル皮膜とからなるシームレスカプセル」ではないし、また、引用発明の発明特定事項として特定された「被カプセル化物質が分散したマトリックス」を、「内容物を被覆するカプセル皮膜とからなるシームレスカプセル」に変更すべき理由は見当たらないし動機付けもないから、本件特許発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

ところで、弁駁書において請求人は、被請求人がシームレスカプセルは単核で引用発明は多核である点で異なる旨主張したことに対し、(イ)甲第9号証(特開昭61-149155号公報)に「本発明は複数の核を有するシームレスカプセルの製造方法に関するものであり、・・・」(第1頁1欄16?17行)との記載があり、図4?14には様々な核及びカプセルの形状が例示されていると指摘し、複数の核を有するシームレスカプセルの例があることを主張し(なお、甲号証とすることなく単に文献名が提示された特開昭61-151119号公報は甲第9号証と同様な技術であり、同じく特開昭62-23454号公報はカプセルの技術ではないし、同じく実開昭63-1000436号は存在し得ないものであり、同じく特開平1-193216号公報はソフトカプセルにすぎない。)、また、(ロ)甲第10号証(特開2001-178383号公報)に「・・・ソフトカプセル内容薬液を製造し、従来のカプセル充填製造方法、例えば、対向ロータリーダイ式のゼラチンシートシームレスカプセル加工の手法を用いてカプセル化した。」(第3頁1欄36?39行)と記載されているから、シームレスカプセルは滴下法以外の方法によっても製造できると主張している。
しかし、(イ)の例は、本件明細書に記載されている多重ノズル管と類似する手法で複数の被カプセル物質を吐出する滴下法により多核にするものであり、引用発明で用いられる混練し押出成形するような被カプセル物質がマトリックスに分散するような多核とは本質的に異なるものというべきであること、また、(ロ)の例で得られるのはシート状の押出物であって、本件特許発明の「内容物を被覆するカプセル皮膜とからなるシームレスカプセル」とは本質的に異なるものであること、そして、上記容易に想到し得ないとの当審の判断が、単に多核か単核かの観点ではなく、「内容物を被覆するカプセル皮膜とからなるシームレスカプセル」が意図されるかどうかの観点で判断をしていることを併せ考慮すると、上記当審の判断は、弁駁書における請求人の前記主張を勘案しても影響されるものではない。
更に、同弁駁書において請求人は、本件明細書の記載を引用し、「本件特許におけるカプセルの材料に関しては、シームレスカプセル以外の硬質カプセルやソフトカプセル、マイクロカプセルなど様々なカプセルに同様に適することが開示されています。」と主張しているが、本件特許発明はシームレスカプセルに限定されたものであり、対象外とされた記載が本件特許明細書に残っているにすぎず、そのことによって前記当審の容易に想到し得ないとの判断が左右されるわけではない。
そして、同弁駁書において請求人は、「なお、甲第1号証における「押出し」は、本件特許において述べられている滴下法のように、定常速度で流下する液状油中に押出すことを、特に排除していません。」と主張しているが、甲第1号証において液状油中に押出ことは明示的記載はないし、自明であるとも認められないから、該請求人の主張は失当であり、採用できない。

次に、甲第2号証?甲第5号証にはデキストリンのDE値や分子量について記載されている。しかし、甲第3号証と甲第5号証は、カプセル化について説明されていない。そして、甲第2号には、澱粉加水分解物および澱粉転化生成物を「カプセル化剤」として使用できるとの記載(摘示(2-ii)参照)はあるものの、カプセル化に関してそれ以上の説明もなく、「内容物を被覆するカプセル皮膜とからなるシームレスカプセル」について記載するものではない。また、甲第4号証には、例えば噴霧法によって形成された粒子径50μm未満のマイクロカプセルについて記載(摘示(4-i)参照)されているが、上記本件特許明細書の説明を引用したような滴下法により形成されたカプセルの大きさ(0.1mm即ち100μm程度を越える)がマイクロカプセルと本質的に異なる「内容物を被覆するカプセル皮膜とからなるシームレスカプセル」について記載するものではない。
したがって、甲第2?5号証の記載を勘案しても、容易に想到し得ないとの上記判断を左右できるものではない。
また、上記検討において、「デキストリン」の代わりに「可溶性澱粉」に置き換えても、上記相違点1の相違はあるから、容易に想到し得ないとの上記判断を覆すことができない。

よって、相違点2,3について検討するまでもなく、本件特許発明は、甲第2?5号証の記載を勘案しても、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものではないから、無効理由に関する請求人の主張は理由がないものであり採用できない。

6.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由によっては本件請求項1に係る発明についての特許を無効にすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-09 
結審通知日 2009-12-14 
審決日 2010-01-04 
出願番号 特願2003-545290(P2003-545290)
審決分類 P 1 123・ 121- Y (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 遠藤 広介  
特許庁審判長 川上 美秀
特許庁審判官 弘實 謙二
内田 淳子
登録日 2008-09-12 
登録番号 特許第4184278号(P4184278)
発明の名称 非ゼラチン系カプセル皮膜組成物及びそれを用いたカプセル  
代理人 山本 宗雄  
代理人 山田 卓二  
代理人 後藤 裕子  
代理人 田中 光雄  
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