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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2007800051 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  B01J
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B01J
審判 全部無効 2項進歩性  B01J
管理番号 1212121
審判番号 無効2008-800007  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-01-15 
確定日 2010-02-15 
事件の表示 上記当事者間の特許第4014604号「排泄物処理材」の特許無効審判事件についてされた平成20年 9月17日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成20年(行ケ)第10396号平成21年 6月30日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第4014604号の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれを「本件発明1」及び「本件発明2」といい、全体について「本件発明」という。)は、平成17年4月22日に特許出願され、平成19年9月21日にその特許の設定登録がなされたものである。
その後、請求人株式会社大貴から平成20年1月15日付け審判請求書により本件発明1及び2の特許について特許無効審判の請求がなされた。これに対し、被請求人ペパーレット株式会社より同年3月31日付けで答弁書が提出され、同年7月15日に行われた口頭審理の後、同年9月17日に「特許第4014604号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。」との審決がなされた。
これに対し、被請求人(特許権者)は、同年10月27日に知的財産高等裁判所に審決取消訴訟を提起し、(「平成20年(行ケ)第10396号」)、平成21年6月30日に「特許庁が無効2008-800007号事件について平成20年9月17日にした審決を取り消す。」旨の判決が言い渡され、この判決は確定している。
なお、被請求人は、平成20年10月28日に本件特許について訂正審判(訂正2008-390121号)を請求したが、平成21年7月6日に請求を取り下げた。

II.本件発明
本件発明1及び2は、本件特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるそれぞれ次のとおりのものである。
「【請求項1】表面に表飾のための凹凸が施された塩化ビニールシートに紙製シートを貼り合わせて成る壁紙の廃材を原料とし、該壁紙を細かく破砕し形成した表面に上記凹凸を残存する塩化ビニール片と紙片の貼り合わせ構造を有する破砕片と、繊維状吸水材又は粉粒状吸水材とを組成材とする粗粒状体から成り、該粗粒状体中の塩化ビニール片の上記凹凸面が対面して通水路を形成し、該通水路内に上記繊維状吸水材又は粉粒状吸水材を保持した構造を有することを特徴とする排泄物処理材。
【請求項2】上記粗粒状体は水分を吸収すると粘着性を生ずる粘着成分を含有せる通水性被覆を有することを特徴とする請求項1記載の排泄物処理材。」

III.請求人の主張の概要
請求人は、本件発明1及び2についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として以下の甲第1号証及び参考資料(審判請求書に添付したものと平成20年7月29日付け上申書に添付したものの2つ)を提出し、審判請求書、口頭審理(口頭審理陳述要領書及び第1回口頭審理調書を含む)及びその後の上申書における主張を整理すると、以下の無効理由のとおり主張している。

1.無効理由

(1)無効理由1
本件発明1及び2は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、本件発明1及び2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(2)無効理由2
本件特許請求の範囲の記載では、本件発明は明確ではなく、また、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明を当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。したがって、本件発明1及び2についての特許は、特許法第36条第4項第1号又は第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

2.証拠方法
甲第1号証:特開2000-60338号公報
参考資料(審判請求書に添付したもの):紙加工便覧編集委員会編,「最新紙加工便覧」,株式会社テックタイムス,昭和63年8月20日,p.1073-1075
参考資料(平成20年7月29日付け上申書に添付したもの):特開平11-220965号公報

IV.被請求人の主張の概要
被請求人は、請求人の上記主張に対して、本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として以下の乙第1号証及び検乙第1号証乃至検乙第4号証を提出し、答弁書、口頭審理(口頭審理陳述要領書及び第1回口頭審理調書を含む)及びその後の上申書における主張を整理すると、請求人の主張する前記無効理由に対して以下のとおり反論している。

1.無効理由に対する反論

(1)無効理由1に対して
本件発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)無効理由2に対して
本件特許請求の範囲及び本件明細書の発明の詳細な説明には、請求人が主張する記載不備はない。

2.証拠方法
乙第1号証:紙加工便覧編集委員会編,「最新紙加工便覧」,株式会社テックタイムス,昭和63年8月20日,p.1073-1082
検乙第1号証:建物内壁化粧材として用いられるビニール壁紙、即ち表面に表飾のための凹凸模様が施されたビニール壁紙の切片
検乙第2号証:検乙第1号証のビニール壁紙を粉砕機(ハンマークラッシャー)にかけ、8mmの目を有するスクリーンを通して得られた8mm以下の破砕片
検乙第3号証:検乙第2号証のラミネート加工紙の代表例である紙製アイスクリーム容器の切片
検乙第4号証:アイスクリーム容器を粉砕機(ハンマークラッシャー)にかけ、1.5mmの目を有するスクリーンを通して得られた1.5mm以下の粉状乃至繊維状(綿状)粉砕物

V.無効理由1についての当審の判断

V-1.本件発明1について

1.甲第1号証及び参考資料(審判請求書に添付したもの)の記載事項
甲第1号証及び参考資料(審判請求書に添付したもの)には、それぞれ次の事項が記載されている。

1-1.甲第1号証
(い)「【請求項1】3mm以下の粒度の紙廃材粉及び該紙廃材より少ない量の粉状吸水性樹脂を含有して粒状に形成されている粒体と、該粒体表面部に界面活性剤が付着していることを特徴とする粒状の動物用排泄物処理材。
・・・
【請求項4】紙廃材が、紙おむつ廃材の粉砕物、紙おむつの製造時の裁断屑の粉砕物、印刷された紙の粉砕物、表面がパラフィン被膜又はプラスチック材料被膜が覆われている紙の粉砕物であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の粒状の動物用排泄物処理材。」(特許請求の範囲)
(ろ)「本発明者は、既に、例えば、・・・プラスチック被覆加工紙廃材の粉砕物・・・が吸水性や保水性を有することを発見し、これら廃材の粉砕物を造粒して猫砂等の動物用排泄物処理材とすることを提案した。」(段落【0003】)
(は)「本発明において、水に濡れ難い又は水を弾き易い紙廃材は、例えば、紙おむつ廃材の粉砕物、紙おむつの製造時の裁断屑の粉砕物、パンチ屑、屑紙、印刷された新聞、雑誌や広告等の印刷された紙の粉砕物又はラミネート加工紙等の表面がパラフィン被膜若しくはプラスチック材料被膜が覆われている紙の粉砕物紙おむつ廃材粉等の紙廃材粉砕物或いはこれらに以上の混合物、或いは前記紙廃材とプラスチック廃材粉砕物の混合物を包含する。」(段落【0006】)
(に)「本発明において、造粒物には、紙廃材粉砕物又は該紙廃材粉砕物と吸水性樹脂の混合物を使用することができる。」(段落【0008】)
(ほ)「本発明においては、動物用排泄物処理材の造粒物には、造粒物のみとすることができるが、芯部及び被覆層部を形成することができる。」(段落【0013】)
(へ)「本発明の粒状の動物用排泄物処理材には、特に芯部となる造粒物に被覆材を被覆する工程において、紙廃材粉及び高吸水性樹脂、並びにこれに加えて小麦粉、ポバール、澱粉若しくはその他接着作用を有する物質、又は殺菌作用を有する物質或はこれら配合物質の二以上のものを混合できるので、動物の排泄物に付着して、排泄物を塊状に包み込むこととなり、後始末が簡単かつ容易である。」(段落【0019】)

1-2.参考資料(審判請求書に添付したもの)
(と)「9.インテリア・建築用途
9.1壁紙
・・・
9.1.2壁紙の種類と特徴
・・・
(3)ビニル壁紙
塩化ビニル樹脂に充填材・可塑剤・安定剤・着色剤・防燃薬剤を加えて作ったビニルシートを紙などに裏打ちする,またはビニル層を紙などに塗布し,これに型押し(エンボス),プリント,発泡工程を経て作られる。とくに発泡加工の発展によって立体感の柄を生み出し,壁紙の意匠性の可能性が大きくひろがった。その種類と特徴は次の通りである。
A.エンボス無地系壁紙・・・
B.プリントエンボス無地系壁紙」(第1073頁第1行-第1074頁下から2行目)

2.対比

2-1.甲第1号証発明の認定
甲第1号証の記載事項(い)には、「3mm以下の粒度の紙廃材粉及び該紙廃材より少ない量の粉状吸水性樹脂を含有して粒状に形成されている粒体と、該粒体表面部に界面活性剤が付着している・・・粒状の動物用排泄物処理材」が記載されている。
前記記載中の「紙廃材粉」に関し、記載事項(い)に「紙廃材が、・・・表面がパラフィン被膜又はプラスチック材料被膜が覆われている紙の粉砕物であること」が記載され、また、記載事項(は)に「ラミネート加工紙等の表面がパラフィン被膜若しくはプラスチック材料被膜が覆われている紙」と記載されている。したがって、甲第1号証には、前記記載中の「紙廃材粉」として、表面がプラスチック材料被膜で覆われているラミネート加工紙廃材の粉砕物を用いることが記載されているといえる。
よって、記載事項(い)及び(は)を本件発明1の記載振りに則して整理すると、甲第1号証には、「3mm以下の粒度の表面がプラスチック材料被膜で覆われているラミネート加工紙廃材の粉砕物、及び該粉砕物より少ない量の粉状吸水性樹脂を含有して粒状に形成されている粒体、並びに該粒体表面部に付着した界面活性剤から成る粒状の動物用排泄物処理材」の発明(以下「甲第1号証発明」という。)が記載されているといえる。

2-2.本件発明1と甲第1号証発明との対比
(a)以下、本件発明1と甲第1号証発明とを対比する。
甲第1号証発明の「動物用排泄物処理材」は、本件発明1の「排泄物処理材」に相当し、甲第1号証発明において「動物用排泄物処理材」が「粒状」であることは、本件発明1において「排泄物処理材」が「粗粒状体から成」ることに相当する。また、本件発明1における「粉粒状吸水材」に関して本件明細書の段落【0025】に「粉粒状吸水材11としては吸水性ポリマー・・・を用い」と記載されていることから、甲第1号証発明の「粉状吸水性樹脂」は、本件発明1の「粉粒状吸水材」に相当するといえ、甲第1号証発明が「粉状吸水性樹脂を含有して粒状に形成されている粒体・・・から成る」ことは、本件発明1が「粉粒状吸水材とを組成材とする」ことに相当するということができる。
甲第1号証発明は、「表面がプラスチック材料被膜で覆われているラミネート加工紙廃材の粉砕物・・・を含有して粒状に形成されている粒体・・・から成る」から、「表面がプラスチック材料被膜で覆われているラミネート加工紙廃材」を原料としているといえる。そして、一般に「破砕」は「やぶりくだくこと」を意味するのに対し(株式会社岩波書店刊「広辞苑」第五版参照)、「粉砕」は「粉みじんに細かくくだくこと」を意味しており(同じく、「広辞苑」第五版参照)、両者はともに砕くことを意味しており、また、一般に「破砕」よりも「粉砕」の方が細かく砕くことを意味するが、両者で砕かれたものの大きさに明確な境界はないから、甲第1号証発明における「粉砕物」は、本件発明1における「細かく破砕し形成した・・・破砕片」と、細かく破砕し形成した物である点で共通している。したがって、甲第1号証発明が「表面がプラスチック材料被膜で覆われているラミネート加工紙廃材の粉砕物・・・を含有して粒状に形成されている粒体・・・から成る」ことは、本件発明1が「塩化ビニールシートに紙製シートを貼り合わせて成る壁紙の廃材を原料とし、該壁紙を細かく破砕し形成した・・・破砕片・・・を組成材とする」ことと、廃材を原料とし、該廃材を細かく破砕し形成した物を組成材とする点で共通している。
(b)以上のことから、本件発明1と甲第1号証発明は、次の点で一致する。
<一致点>
「廃材を原料とし、該廃材を細かく破砕し形成した物と、粉粒状吸水材とを組成材とする粗粒状体から成る排泄物処理材。」である点。
一方、本件発明1と甲第1号証発明は、次の三点で相違する。
<相違点1>
本件発明1は、「表面に表飾のための凹凸が施された塩化ビニールシートに紙製シートを貼り合わせて成る壁紙の廃材を原料」とするものであるのに対し、甲第1号証発明は、「表面がプラスチック材料被膜で覆われているラミネート加工紙廃材」を原料とする点。
<相違点2>
本件発明1は、粗粒状体が「壁紙を細かく破砕し形成した表面に上記凹凸を残存する塩化ビニール片と紙片の貼り合わせ構造を有する破砕片・・・を組成材とする」のに対し、甲第1号証発明は、粒体が「加工紙廃材粉砕物・・・を含有」するものであり、シート形態を残存しないか、仮にシート形態を残存するものがあったとしても、加工紙廃材の表面は平滑であるので、かかる「粉砕物」は、表面に凹凸を残存する形態を有するものでない点。
<相違点3>
本件発明1は、「粗粒状体中の塩化ビニール片の上記凹凸面が対面して通水路を形成し、該通水路内に上記繊維状吸水材又は粉粒状吸水材を保持した構造を有する」のに対し、甲第1号証発明の加工紙廃材粉砕物は、紙の部分が主体であるため短繊維状に離解されて、シート原形を留めない粉末状又は綿状のものとなり、仮にシート形態を残存するものがあったとしても、加工紙廃材の表面は平滑であるので、「凹凸面が対面して通水路を形成し、該通水路内に上記繊維状吸水材又は粉粒状吸水材を保持した構造を有する」ものでない点。

3.相違点についての判断

3-1.<相違点1>について
表面に表飾のための凹凸が施された塩化ビニールシートに紙製シートを貼り合わせて成る壁紙は、参考資料(審判請求書に添付したもの)(記載事項(と))に記載されているように、本件特許出願前に周知のものである。そして、壁紙の廃材が、建物の解体、改築・改装等に伴い多量に排出されるものであることは、文献を例示するまでもなく本件特許出願前周知の技術事項であるから、表面に表飾のための凹凸が施された塩化ビニールシートに紙製シートを貼り合わせて成る壁紙の廃材は、廃材としてごく普通のものである。
しかしながら、壁紙は、プラスチックと紙の積層構造を有する点で、甲第1号証発明における表面がプラスチック材料被膜で覆われているラミネート加工紙と共通するに留まるものである。
即ち、難燃性を有する塩化ビニール壁紙廃材は、有資格の処理業者のみに処理が委ねられているのに対し、食品容器等に用いられるラミネート加工紙を含む紙廃材の処理には特別な資格を要せず、古紙として回収され製紙会社等における再利用に供されているように、その取扱いは全く異なる。さらに、甲第1号証発明における前記ラミネート加工紙廃材の粉砕物は吸水性や保水性を有する材料として用いられており、紙は一般に吸水性や保水性を有するとしても、塩化ビニールシートを主体としている前記壁紙の紙製シートは相対的に薄く(検乙第1及び2号証参照)、吸水性や保水性を期待することは困難であって、その粉砕物が吸水性や保水性を有する材料として用いられることを想起することはできないものといわざるを得ないし、それを記載又は示唆する証拠も提示されていない。
以上のことに照らせば、「表面に表飾のための凹凸が施された塩化ビニールシートに紙製シートを貼り合わせて成る壁紙の廃材」が周知のものであるとしても、甲第1号証発明において、表面がプラスチック材料被膜で覆われているラミネート加工紙廃材に代えて、壁紙の廃材を用いることを試みることには飛躍があり、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

3-2.<相違点2>について
まず、本件発明1において、破砕片が「表面に上記凹凸を残存する塩化ビニール片と紙片の貼り合わせ構造を有する」点について検討すると、そのことに関して、本件明細書の発明の詳細な説明の記載をみてみると、段落【0027】に「上記破砕片4の大きさは紙片3′が製紙されたシート片としての形態を残存し、且つ塩化ビニール片2′がシート片としての形態を残存する、2?12mm程度の細かく破砕された破砕片4である。」と記載されている。また、前記破砕片を形成するための破砕手段に関して、段落【0037】に「上記壁紙1を破砕し破砕片4を形成する手段として、例えば円筒形のスクリーン6の上部供給口7から大まかに分裁した壁紙1を供給し、上記スクリーン6の内面に沿ってハンマークラッシャー8を回転させて上記壁紙1をスクリーン6内面とハンマークラッシャー8との間で摺擦し、引きちぎるように破砕する。この時、スクリーン6に破砕歯9を設け、この破砕歯9とハンマークラッシャー8との間で上記と壁紙1を引きちぎるように破砕し上記破砕片4を形成することができる。」と記載され、段落【0039】に「又は破砕手段として、カッターを用い、上記壁紙1を比較的鋭利な剪断面を以って切断し、上記破砕片4を形成することができる。」と記載されている。そして、これら記載の他に、形成される破砕片が凹凸を残存する塩化ビニール片と紙片の貼り合わせ構造を有するために用いるべき破砕手段の種類又は必要な破砕の条件は本件明細書に記載されておらず、また、「ハンマークラッシャー」及び「カッター」は、破砕手段として一般的なものである。したがって、本件発明1における「表面に上記凹凸を残存する塩化ビニール片と紙片の貼り合わせ構造を有する破砕片」は、特段の破砕手段又は破砕条件によることなく、「表面に表飾のための凹凸が施された塩化ビニールシートに紙製シートを貼り合わせて成る壁紙の廃材」を2?12mm程度の大きさに破砕することによって形成されるということができる。
これに対し、甲第1号証発明は、「3mm以下の粒度の表面がプラスチック材料被膜で覆われているラミネート加工紙廃材の粉砕物・・・を含有して粒状に形成されている粒体・・・から成る粒状の動物用排泄物処理材」であるから、前記「粉砕物」は最大3mmの大きさのものを包含する。
しかしながら、甲第1号証発明の壁紙の粉砕物と、本件発明1における「破砕片」の実施例は、大きさが2?3mmの範囲でわずかに重複するだけで、重複範囲においてすらプラスチック材料皮膜と紙が共に比較的低強度の表面が平滑な加工紙廃材から凹凸形状を想起することは困難であり(検乙第3号証)、しかも、前記「3-1.」に記載したとおりラミネート加工紙廃材に代えて、壁紙の廃材を用いることを試みることが困難である以上、甲第1号証発明において、表面がプラスチック材料被膜で覆われているラミネート加工紙廃材に代えて、表面に表飾のための凹凸が施された塩化ビニールシートに紙製シートを貼り合わせて成る壁紙の廃材を用いることを導き出すことはできない。
そして、甲第1号証発明において、重複範囲以下の加工紙粉砕物が表面に凹凸を残存しないことは明らかであり(検乙第4号証)、相違点2に係る特定事項を想起することは、当業者といえども容易になし得ることではない。

3-3.<相違点3>について
まず、甲第1号証発明は、「・・・ラミネート加工紙廃材の粉砕物、及び該粉砕物より少ない量の粉状吸水性樹脂を含有して粒状に形成されている粒体・・・から成る粒状の動物用排泄物処理材」であり、さらに甲第1号証の記載事項(に)に「本発明において、造粒物には、・・・紙廃材粉砕物と吸水性樹脂の混合物を使用することができる。」と記載されていることから、甲第1号証発明において、ラミネート加工紙廃材の粉砕物と粉状吸水性樹脂は混合して造粒されていることを含むということができる。
そして、本件発明1の「塩化ビニール片の上記凹凸面が対面して・・・上記繊維状吸水材又は粉粒状吸水材を保持した構造」について検討すると、本件明細書の段落【0031】に「上記破砕片4と繊維状吸水材又は/及び粉粒状吸水材11を既知の造粒機にかけて造粒し、図3Aに示す粗粒状体5を形成する。」と記載されていることから、本件発明1における「塩化ビニール片の上記凹凸面が対面して・・・上記繊維状吸水材又は粉粒状吸水材を保持した構造」は、表面に凹凸を残存する塩化ビニール片と紙片の貼り合わせ構造を有する破砕片と繊維状吸水材又は粉粒状吸水材を造粒することによって得られるということができる。
そうすると、両発明は、粉砕物又は破砕物を吸水性剤と混合して造粒することにより製造することにおいて共通するものの、前記「3-1.」に記載したとおり、甲第1号証発明において、表面がプラスチック材料被膜で覆われているラミネート加工紙廃材に代えて、表面に表飾のための凹凸が施された塩化ビニールシートに紙製シートを貼り合わせて成る壁紙の廃材を用いることは困難であり、甲第1号証発明の動物用排泄物処理材は、粉砕物がシート形態を残存しないか、仮にシート形態を残存するものがあったとしても、加工紙廃材の表面は平滑のものとなり、本件発明1と同様の塩化ビニール片の凹凸面が対面して、粉粒状吸水材を保持した構造を有することにはならない。
次に、本件発明1において「通水路」が形成されている点について検討する。
一般的に通水路は水の流れる路を意味するところ、前記ビニール片の凹凸面間に到達した動物の排泄物中の水分は、水を透過しない塩化ビニール片に遮水され、対面する塩化ビニール片の間を該塩化ビニール片に沿ってある方向性をもって移動するから、前記ビニール片の凹凸面間は水の流れる路であるといえる。
しかしながら、前記したとおり、甲第1号証発明において、表面がプラスチック材料被膜で覆われているラミネート加工紙廃材に代えて、表面に表飾のための凹凸が施された塩化ビニールシートに紙製シートを貼り合わせて成る壁紙の廃材を用いることを想到することに至らない以上、動物用排泄物処理材となる粉砕物が凹凸面が対面した構造である「通水路」を採用することは困難で、当業者が適宜なし得ることということはできない。

3-4.相違点に係る本件発明1の発明特定事項を採用することにより奏される効果について
<相違点1>乃至<相違点3>に係る本件発明1の発明特定事項を採用することにより奏される効果に関し、本件明細書の段落【0009】-【0015】に「塩化ビニール片によって上記粗粒状体の体積を確保する増量材として有効に機能させつつ、該塩化ビニール片に付帯する紙片に吸収性能を具有せしめ、壁紙の廃材利用と相俟って排泄物処理材の大幅なコストダウンを達成する」こと(以下「効果1」という。)、「従来焼却処理等されていた廃壁紙を適性原料として再利用し、省資源に資する」こと(以下「効果2」という。)、「廃壁紙が固有する塩化ビニール片は上記増量材、粒状形成材として機能しつつ、紙片が吸収した排尿を塩化ビニール片が遮水して紙片の紙層中に有効に保水せしめる」こと(以下「効果3」という。)、「塩化ビニールシート及びこれに由来する塩化ビニール片は、表面を表飾するための多数の凹凸を有し、該塩化ビール片の凹凸内に繊維状吸水材又は粉粒状吸水材を捕捉し、塩化ビニール片と両吸水材との一体造粒化を助ける」こと(以下「効果4」という。)、「塩化ビニール片でバックアップされた紙片がその紙層中に排尿を吸水し保水すると同時に、粗粒状体中の破砕片の塩化ビニール片が対面して、即ち凹凸面が対面して通水路を形成し、該通水路内に上記凹凸によって上記繊維状吸水材又は粉粒状吸水材を確実に保持する」こと(以下「効果5」という。)、「排尿は上記通水路内に誘引されつつ通水路内の繊維状吸水材又は粉粒状吸水材と凹凸に捕捉され、その機能を遺憾なく発揮せしめる」こと(以下「効果6」という。)、及び「排泄物処理材の原料とする廃壁紙はその塩化ビニールシート中に、通常、重量比30%程度の炭酸カルシウムを含有するので、粗粒状体中に自動的に炭酸カルシウムを取り込み、この炭酸カルシウムにより重みを付加し飛散や動物の体毛への付着を防止する重量付加効果を発揮せしめることができ、新たに炭酸カルシウムやクレー等の鉱物質充填材を加える必要が無いか、減殺できるから更にコストダウンに繋がる」こと(以下「効果7」という。)が記載されている。

(1)効果1乃至3について
塩化ビニールは水道管にも用いられる樹脂であり、遮水性を有している。また、壁紙に限らず廃材を再利用することにより環境への負荷を軽減できること、又は原材料費を低減できることは、文献を例示するまでもなく本件特許出願前周知の技術事項である。
しかしながら、効果1乃至3は、甲第1号証発明において、表面がプラスチック材料被膜で覆われているラミネート加工紙廃材に代えて、表面に表飾のための凹凸が施された塩化ビニールシートに紙製シートを貼り合わせて成る壁紙の廃材を用いることが容易に想到することができない以上、当業者であっても予測することができない効果であるといえる。

(2)効果4乃至6について
前記のとおり、甲第1号証発明において、表面がプラスチック材料被膜で覆われているラミネート加工紙廃材に代えて、表面に表飾のための凹凸が施された塩化ビニールシートに紙製シートを貼り合わせて成る壁紙の廃材を用いることが容易に想到することができない以上、効果4乃至6は当業者であっても予測することができない効果であるといえる。

(3)効果7について
壁紙に用いられる塩化ビニール樹脂に充填材を配合することは、参考資料(審判請求書に添付したもの)に「(3)ビニル壁紙
塩化ビニル樹脂に充填材・・・を加えて作ったビニルシート・・・」(記載事項(と))と記載されているように本件特許出願前周知の技術事項である。
しかしながら、前記のとおり、甲第1号証発明において、表面がプラスチック材料被膜で覆われているラミネート加工紙廃材に代えて、表面に表飾のための凹凸が施された塩化ビニールシートに紙製シートを貼り合わせて成る壁紙の廃材を用いることが容易に想到することができない以上、効果7は、当業者であっても予測することができない効果であるといえる。

4.本件発明1についての結び
以上のことから、本件発明1は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができないものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとすることができない。

V-2.本件発明2について
(a)本件発明2は、本件発明1を引用し、本件発明1に、さらに「上記粗粒状体は水分を吸収すると粘着性を生ずる粘着成分を含有せる通水性被覆を有すること」を発明特定事項として付加したものである。
(b)前記「V-1.」に記載した理由により、本件発明1が本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明基づいて、当業者が容易に発明をすることができないものであるので、同様にそれを引用する本件発明2も甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができないものであるといえる。
(c)以上のことから、本件発明2は、前記「V-1.」に記載した理由により、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができないものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとすることができない。

VI.無効理由2についての当審の判断

VI-1.特許法第36条第6項第2号に規定する要件について
(a)請求人は、無効理由2のうち特許法第36条第6項第2号に規定する要件について、具体的には、審判請求書の第10頁第19行-第11頁第14行において、
「本件発明は、「粗粒状体中の塩化ビニール片の上記凹凸面が対面して通水路を形成し、該通水路内に上記繊維状吸水材又は粉粒状吸水材を保持した構造を有する」ことを要件とするものであり、該要件により、「排尿は上記通水路13内に誘引されつつ通水路13内の繊維状吸水材又は粉粒状吸水材11と凹凸10に捕捉し、粗粒状体5の吸水と保水目的を有効に達成する。」(本件明細書段落【0043】)ものである。
・・・
しかし、本件明細書の発明の詳細な説明及び図面には、上記要件にある「通水路」が塩化ビニール片同士の間でどの程度の間隔及び長さを有するものとして形成されているのか一切説明がなく、当業者が該「通水路」を具体的に特定することができないので、請求項1の記載は明確であるとはいえない。」
と主張している。そして、平成20年7月29日付け上申書の第5頁第1-2行においても、同様の主張をしている。
(b)そこで、本件発明における「通水路」に関して、本件明細書の発明の詳細な説明をみると、段落【0014】に「排尿は上記通水路内に誘引されつつ通水路内の繊維状吸水材又は粉粒状吸水材と凹凸に捕捉され、その機能を遺憾なく発揮せしめる。」と記載されており、「通水路」を形成する塩化ビニール片と排尿との関係については、段落【0011】に「上記廃壁紙が固有する塩化ビニール片は上記増量材、粒状形成材として機能しつつ、紙片が吸収した排尿を塩化ビニール片が遮水して紙片の紙層中に有効に保水せしめる。」と記載されている。したがって、塩化ビニール片の凹凸面が対面して形成された「通水路」に到達した排尿は、対面している塩化ビニール片に遮水され、該塩化ビニール片の間を該塩化ビニール片に沿ってある方向性をもって移動して繊維状吸水材又は粉粒状吸水材と凹凸に捕捉されるといえ、この作用は、塩化ビニール片同士の間隔又は塩化ビニール片同士が対面している部分の長さにかかわりなく得られるものである。そして、一般的に通水路は水の流れる路を意味するから、前記排尿をある方向性をもって移動させるという作用が本件発明における「通水路」の作用であるといえる。よって、本件発明においては、塩化ビニール片の凹凸面が対面しさせすれば、排尿をある方向性をもって移動させるという作用を有する「通水路」が形成されるといえ、該「通水路」が塩化ビニール片同士の間でどの程度の間隔及び長さを有するものとして形成されているのかが明らかでなければ、当業者が該「通水路」を具体的に特定することができず、本件発明は明確でないとはいえない。

VI-2.特許法第36条第4項第1号に規定する要件について
(a)請求人は、無効理由2のうち特許法第36条第4項第1号に規定する要件について、具体的には、審判請求書の第10頁第19行-第11頁第19行において、
「本件発明は、「粗粒状体中の塩化ビニール片の上記凹凸面が対面して通水路を形成し、該通水路内に上記繊維状吸水材又は粉粒状吸水材を保持した構造を有する」ことを要件とするものであり、該要件により、「排尿は上記通水路13内に誘引されつつ通水路13内の繊維状吸水材又は粉粒状吸水材11と凹凸10に捕捉し、粗粒状体5の吸水と保水目的を有効に達成する。」(本件明細書段落【0043】)ものである。
上記構造に関連する本件明細書の記載は、<1>「粗粒状体5全体の組成分中には破砕片4を10?90%程度含有せしめ、繊維状吸水材又は粉粒状吸水材11を10?90%配合する」(段落【0024】)、<2>「上記破砕片4の大きさは紙片3′が製紙されたシート片としての形態を残存し、且つ塩化ビニール片2′がシート片としての形態を残存する、2?12mm程度の細かく破砕された破砕片4である。」(段落【0027】)及び<3>「上記破砕片4と繊維状吸水材又は/及び粉粒状吸水材11を既知の造粒機にかけて造粒し、図3Aに示す粗粒状体5を形成する。好ましい例として、上記破砕片4と木粉,無機充填材,パルプスラッジの一種又は二種以上を混合した混合体に水分を吸水すると膨潤し粘着性を生ずる吸水性ポリマー又はでんぷん又はCMC等を混合し、噴霧又はシャワーにて貧加水して撹拌し、これを既知の造粒機にかけ造粒して乾燥し、2?20mm程度の大きさを有する粗粒状体5を得る。」(段落【0031】)である。
・・・本件明細書には、本件明細書に記載された大きさの破砕片を、本件明細書に記載された配合量で、どのような造粒方法を採用すれば、塩化ビニール片同士が互いに対面する構造をとり、かつ、排尿が「通水路」内に誘引される程度の幅及び長さを有する構造をとり得るのかが記載されておらず、発明の詳細な説明に当業者が本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。」
と主張している。なお、審判請求書における数字を○囲いした記述は、その代用として該数字の前後それぞれに「<」及び「>」を付して表記した。
(b)そこで、本件発明の排泄物処理材の造粒方法に関して、本件明細書の発明の詳細な説明をみると、請求人が前記のとおり審判請求書に摘示しているように、段落【0031】に「破砕片4と木粉,無機充填材,パルプスラッジの一種又は二種以上を混合した混合体に水分を吸水すると膨潤し粘着性を生ずる吸水性ポリマー又はでんぷん又はCMC等を混合し、噴霧又はシャワーにて貧加水して撹拌し、これを既知の造粒機にかけ造粒して乾燥し、2?20mm程度の大きさを有する粗粒状体5を得る。」と記載されている。ここで、段落【0025】に「上記粉粒状吸水材11としては吸水性ポリマーやでんぷんやCMC、木粉や紙粉等を用い」と記載されているから、前記記載中の「吸水性ポリマー又はでんぷん又はCMC」は本件発明における「繊維状吸水材又は粉粒状吸水材」として用いられているといえる。したがって、本件明細書の発明の詳細な説明には、破砕片と繊維状吸水材又は粉粒状吸水材を混合して造粒することが記載されているということができる。そして、一般に混合物中の物質は任意の方向を向いているから、破砕片と繊維状吸水材又は粉粒状吸水材を混合して造粒しさえすれば、破砕片の大きさ及び破砕片と繊維状吸水材又は粉粒状吸水材の配合量にかかわらず、また造粒方法が如何なるものであっても、一部の破砕片の塩化ビニール片は、繊維状吸水材又は粉粒状吸水材を介して他の破砕片の塩化ビニール片と対面することになるといえる。さらに、前記「VI-1.(b)」に記載したとおり、塩化ビニール片の凹凸面が対面して形成された「通水路」に到達した排尿は、対面している塩化ビニール片に遮水され、該塩化ビニール片の間を該塩化ビニール片に沿ってある方向性をもって移動して繊維状吸水材又は粉粒状吸水材と凹凸に捕捉されるといえ、この作用は、塩化ビニール片同士の間隔又は塩化ビニール片同士が対面している部分の長さにかかわりなく得られるものである。
以上のことから、破砕片と繊維状吸水材又は粉粒状吸水材を混合して造粒しさえすれば、破砕片の塩化ビニール片は、繊維状吸水材又は粉粒状吸水材を介して他の破砕片の塩化ビニール片と対面することになり、塩化ビニール片の凹凸面が対面して形成された「通水路」に到達した排尿は、該塩化ビニール片の間を該塩化ビニール片に沿ってある方向性をもって移動して繊維状吸水材又は粉粒状吸水材と凹凸に捕捉されることを当業者は理解することができ、具体的な造粒方法の記載がなくても、発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではないとまではいえない。
(c)また、請求人は、口頭審理陳述要領書の第4頁第4-5行において、
「本件明細書の発明の詳細な説明及び図面からは、本件発明の「通水路」について、図6の構造を有することを実際にどのように確認したのかも不明である。」
と主張している。さらに、請求人は、平成20年7月29日付け上申書の第4頁第19-26行において、
「例えば、本件特許発明では、粗粒状体中の「破砕片」は重量比で10%程度でもよく、その場合の「繊維状吸水材又は粉粒状吸水材」の配合量は90重量%となる(段落【0021】、【0024】)。
そのような配合割合での「破砕片」の粗粒状体中における分散状態を考えると、「繊維状吸水材又は粉粒状吸水材」の海の中にまばらに「破砕片」が分散している状態となり、そもそも「破砕片」同士が会合することも困難であり、まして、「破砕片」の凹凸面同士が対面して「通水路」を形成する確率はきわめて低く、どのようにすれば本件特許発明の「通水路」の形成が可能であるかは依然として不明であり、その確認方法も不明である。」
と主張している。
しかしながら、前記「(b)」に記載したとおり、破砕片と繊維状吸水材又は粉粒状吸水材を混合して造粒しさえすれば、破砕片の塩化ビニール片は繊維状吸水材又は粉粒状吸水材を介して他の破砕片の塩化ビニール片と対面すること、すなわち本件発明において「粗粒状体中の塩化ビニール片の上記凹凸面が対面して通水路を形成し、該通水路内に上記繊維状吸水材又は粉粒状吸水材を保持した構造を有すること」を当業者は理解することができる。したがって、本件発明の「通水路」を実際にどのように確認したのかが不明であったとしても、また、「「破砕片」の凹凸面同士が対面して「通水路」を形成する確率はきわめて低」いとしても、発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではないとはいえない。

VI-3.無効理由2についての結び
以上のことから、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものであり、また、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に適合するものである。

VII.結び
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1及び2に係る特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-15 
結審通知日 2008-09-03 
審決日 2010-01-04 
出願番号 特願2005-125351(P2005-125351)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (B01J)
P 1 113・ 537- Y (B01J)
P 1 113・ 536- Y (B01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 知宏  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 五十棲 毅
木村 孔一
登録日 2007-09-21 
登録番号 特許第4014604号(P4014604)
発明の名称 排泄物処理材  
代理人 中畑 孝  
代理人 松井 佳章  

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