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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1212144
審判番号 不服2008-6434  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-14 
確定日 2010-02-19 
事件の表示 特願2002-161034「浮遊粒子状物質濃度測定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月 8日出願公開,特開2004- 3900〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成14年6月3日の出願であって,平成19年3月1日付けで拒絶理由通知がなされ,平成19年5月14日付けで意見書とともに明細書を全文補正する手続補正書が提出された後,同年9月13日付けで最後の拒絶理由通知がなされ,同年11月26日付けで意見書が提出されたが,最後の拒絶理由通知書に記載した理由によって平成20年1月30日付けで拒絶査定がなされ,これに対し同年3月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同年4月11日付けで請求の理由を補正する手続補正書が提出されたものである。

2.原審における最後の拒絶理由通知の理由1は次のとおり:
「1.この出願は,発明の詳細な説明の記載が下記の点で,特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

・理由1
・備考
「散乱光強度に基づいて得られる瞬時の値」と「β線吸収方式によって得られる瞬時の値」との相関関係が不明であるため,「散乱光強度に基づいて得られる瞬時の値」を用いて,如何にして,正確に,「β線吸収方式によって得られる瞬時の値」を補正し得るかが不明である(本願発明において,散乱光強度による測定の測定対象はサンプリング管内に連続的に流れてくるSPMであると認められる。一方,β線吸収方式での測定対象は,平成19年5月14日付けの意見書における「巻き取りリールによるリボンフィルタ(捕集手段)の巻き取りは,一回の測定時間が例えば1時間の場合,1時間毎に繰り返し行われ,一日ではリボンフィルタの上面に24の浮遊粒子状物質(SPM)堆積層(測定スポット)が形成されます〔特許公報(特許第3790458号)〕。この堆積層は,リボンフィルタの巻き取りが停止した状態で形成されます。そして,その形成後,巻き取りリールによるリボンフィルタの巻き取りにより捕集部からβ線照射部へ移動した当該堆積層にβ線が照射されます。」なる記載を参酌するに,SPMの堆積層であると認められる。また,前記意見書には,「β線吸収方式によって得られる瞬時の値bとは,例えば1秒毎に得られる測定値(β線測定値)を意味します」なる記載もあり,以上を整理すると,「散乱光強度に基づいて得られる瞬時の値」は,連続的に流れてくるSPMをリアルタイム測定することによって得られる値であり,「β線吸収方式によって得られる瞬時の値」は,当該連続的に流れるSPMがある程度堆積したものを,例えば1秒毎に一括測定することによって得られる値であると認められる。すなわち,「散乱光強度に基づいて得られる瞬時の値」と「β線吸収方式によって得られる瞬時の値」とは,それぞれ異なる測定対象から得られるものであり,一方の値を他方の値で補正し得るような関係にはないものと認められる。)。

よって,この出願の発明の詳細な説明は,当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。」

3.明細書等の記載についての検討
(3.1)明細書(平成19年5月14日付けで補正)の内容について
請求人(出願人)は,平成19年3月1日付けの拒絶理由通知に対して,平成19年5月14日付けで明細書の全文を補正する手続補正書を提出して,
(イ)出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1における「・・・浮遊粒子状物質濃度測定装置において,前記サンプリング管内を通過するサンプルガスに対して適宜波長の光を照射し,そのときの散乱光強度に基づいて得られる値を用いて前記β線吸収方式によって得られる値を補正することを特徴とする浮遊粒子状物質濃度測定装置。」という記載を,「・・・浮遊粒子状物質濃度測定装置において,前記サンプリング管内を通過するサンプルガスに対して適宜波長の光を照射し,そのときの散乱光強度に基づいて得られる瞬時の値を用いて前記β線吸収方式によって得られる瞬時の値を補正することを特徴とする浮遊粒子状物質濃度測定装置。」と補正するとともに,請求項1と同様の記載のある段落【0006】も同様に補正し,
(ロ)出願当初の明細書の段落【0015】における「CPU22においては,上記出力a,bはそれぞれ次のように処理される。すなわち,散乱光測定に基づく瞬時値aに基づいて前記サンプルガスSG中の分粒されたSPMの重量A(μg)得られる。」という記載を,「CPU22においては,上記出力a,bはそれぞれ次のように処理される。すなわち,散乱光測定に基づく瞬時値aに基づいて前記サンプルガスSG中の分粒されたSPMの重量M(μg)得られる。」と補正し,
(ハ)出願当初の明細書の段落【0019】における「そして,CPU22においては,前記散乱光強度に基づいて得られる瞬時値Aを用いて前記β線吸収方式によって得られる瞬時値Bを補正することにより,SPM濃度のより真値に近い値を算出するのである。」という記載を,「そして,CPU22においては,前記散乱光強度に基づいて得られる瞬時値aを用いて前記β線吸収方式によって得られる瞬時値bを補正することにより,SPM濃度のより真値に近い値を算出するのである。」と補正し,
(ニ)同段落【0007】,【0013】および【0017】の記載における,脱字や誤記の訂正をした。

その結果,補正後の明細書の発明の詳細な説明には,散乱光測定を利用したβ線吸収方式による浮遊粒子状物質濃度測定装置での値の補正に関して次の記載がある。
「 【0007】
より具体的には,SPMの散乱光強度に基づく瞬時値(測定値)とβ線吸収方式によって得られる瞬時値(測定値)との間における一定の係数関係を用いて,前者によって後者を補正することにより,β線源そのものに由来する指示値のバラツキの幅が小さくなり,SPM濃度測定装置の最小検出感度(2σ)が大幅に向上し,例えば,0.5?1μg/m3 といったレベルまで改善される。したがって,PM2.5のような絶対量の少ない微細なSPMを精度よく測定することができる。」

「 【0013】
上記構成のSPM濃度測定装置の作動について説明すると,真空ポンプ13をオンにすると,大気が分粒器16を介してサンプリング管15内に・・・を含んだサンプルガスSGが下流側(真空チャンバ2側)に移動する。そして,このサンプルガスSGが分粒器16の下流側に設けられた散乱光測定部17を通過する際,前記分粒されたSPMが光源19からの可視光の照射を受け,そのとき生ずる散乱光が散乱光検出器20によって受光され,その散乱光強度に比例した出力(瞬時値)aがCPU22に入力される。
【0014】
その後,前記分粒されたSPMを含むサンプルガスSGは,サンプリング管15を経て真空チャンバ2内に導入され,リボンフィルタ5を通過するが,このとき,前記分粒されたSPMは,リボンフィルタ5の上面にスポット状に堆積し,堆積層6aを形成する。この堆積層6aにβ線源7からのβ線が照射されると,このβ線は分粒されたSPMおよびリボンフィルタ5による吸収を受けるが,透過したβ線は検出器8によって検出される。検出器8からは受光したβ線に比例した出力(瞬時値)bが出力され,これがCPU22に入力される。
【0015】
CPU22においては,上記出力a,bはそれぞれ次のように処理される。すなわち,散乱光測定に基づく瞬時値aに基づいて前記サンプルガスSG中の分粒されたSPMの重量M(μg)得られる。
【0016】
また,検出器8からの出力bは,通常のβ線吸収方式による処理が行われる。すなわち,前記リボンフィルタ5に付着したSPMの質量m〔μg〕は,下記(1)式によって求められる。
m=F×ln(R0 /R) ……(1)
ただし,
R0 ;空のリボンフィルタのβ線散乱強度〔I/s〕
R ;SPM捕集後のリボンフィルタのβ線散乱強度〔I/s〕
F ;校正係数〔μg/m3 〕
前記校正係数Fは,β線散乱強度をSPMの質量に換算するための係数で,F=A/(μ/ρ)で表される。ここで,A〔cm2 〕はリボンフィルタの測定断面積〔cm2 〕であり,μ/ρ〔cm/mg〕は,β線源7の固有の質量崩壊係数〔cm/mg〕である。
【0018】
前記(1)式によって求められるSPMの質量と,サンプルガスSGの流量および圧力を補正することにより,SPM濃度B(μg/m3 〕が得られる。
【0019】
そして,CPU22においては,前記散乱光強度に基づいて得られる瞬時値aを用いて前記β線吸収方式によって得られる瞬時値bを補正することにより,SPM濃度のより真値に近い値を算出するのである。」

「 【0020】
【発明の効果】
以上説明したように,この発明によれば,SPMの散乱光強度に基づく瞬時値(測定値)とβ線吸収方式によって得られる瞬時値(測定値)との間における一定の係数関係を用いて,前者によって後者を補正することにより,β線源そのもの由来する指示値のバラツキの幅が小さくなり,SPM濃度測定装置の最小検出感度(2σ)が大幅に向上し,例えば,0.5?1μg/m3 といったレベルまで改善される。したがって,この発明のSPM濃度測定装置によれば,PM2.5のような絶対量の少ない微細なSPMを精度よく測定することができる。」

(3.2)発明の詳細な説明についての記載要件不備
発明の詳細な説明における散乱光測定を利用したβ線吸収方式による浮遊粒子状物質濃度測定装置での補正についての記載事項は,前記(3.1)のとおりであるが,段落【0007】の「より具体的には,SPMの散乱光強度に基づく瞬時値(測定値)とβ線吸収方式によって得られる瞬時値(測定値)との間における一定の係数関係」とは,具体的に何と何をどのようにして求められる「一定の係数関係」であるのか,不明である。そして,段落【0013】?【0018】の「瞬時値a」と「瞬間値b」を説明する記載を参照しても,段落【0019】の「そして,CPU22においては,前記散乱光強度に基づいて得られる瞬時値aを用いて前記β線吸収方式によって得られる瞬時値bを補正することにより,SPM濃度のより真値に近い値を算出するのである。」というだけの記載からは,「散乱光強度に基づいて得られる瞬時の値」を用いて,如何にして,正確に,「β線吸収方式によって得られる瞬時の値」を補正し得るか不明である。
そして、両者が、補正可能な関係を有するという技術常識もみいだせない。

なお、請求人は,当該拒絶の理由1について,拒絶査定不服審判の請求の理由(平成20年4月11日付け手続補正書で補正されたもの。以下,同様。)において,大気中の浮遊粒子状物質濃度測定装置についての文献2件(参考資料1,2)と清浄化した大気についてのβ線吸収方式での実験データである参考資料3,並びに「(1)は光散乱方式で得られた測定値(相対濃度)を積算し,換算係数(F値)を用いて質量濃度へ換算した場合の質量濃度グラフ,(2)はβ線吸収方式で得られた質量濃度の積算値を示すグラフ,(3)は公定法(JIS Z 8808)により得られる質量濃度の積算値を示すグラフ,(4)は本発明による補正後に得られる質量濃度の積算値を示すグラフ」を示すという参考図を添付して,次のように主張している。
(i)3頁の参考図についての記載
「●そこで,参考図を用いて,本願発明では何を行っているのかを端的に説明します。
補正は,グラフ(2)中の異常時,例えば,その他の箇所と比べて10%以上の変動が発生したときに施されます。すなわち,24時間のうちノイズNが発生している一部に対してだけ散乱光強度に基づいて得られる瞬時の値を使う,という補正を施すわけです。言い換えますと,グラフ(2)中のノイズNが発生した地点Bにおける瞬時の値だけを,これに対応するグラフ(1)の地点Aにおける瞬時の値に入れ換える補正を行うだけです。」
(なお,この参考図は,「(1)は光散乱方式で得られた測定値(相対濃度)を積算し,換算係数(F値)を用いて質量濃度へ換算した場合の質量濃度グラフ」と,横軸である時間軸の経過により値が同じままであっても下がることはありえない積算値であるにもかかわらず,グラフ(1)の質量濃度値が略正弦波状に上下するという,実際にはありえないグラフ図である。)
(ii)4頁?5頁
「《理由1に対する見解》
本願発明は,真値に可及的に近い正確な浮遊粒子状物質(SPM)濃度を得るためβ線吸収方式を主測定方式とし,光散乱方式を補助的に使用する構成を備えています。
β線吸収方式は,原理の特性として,外乱因子やβ崩壊から発生する不定期のノイズが,SPM濃度測定の正確性を阻害する要因となっています。そこで,本願発明は,この正確性を向上させることを目的としています。
本願発明における「β線吸収方式によって得られる瞬時の値」(b)および本願発明における「散乱光強度に基づいて得られる瞬時の値」(a)とは,それぞれ例えば1秒毎に得られる測定値です。
また,「β線吸収方式によって得られる瞬時の値」(b)とは,測定開始から測定時点までの間にリボンフィルタ(捕集手段の一例)5に付着したSPM質量を意味する値であり,
「散乱光強度に基づいて得られる瞬時の値」(a)とは,連続的に流れてくるSPMをリアルタイムに測定した結果得られるSPM濃度を意味する値です。
そして,それらの「瞬時の値」(b),(a)を用いた補正をするために,例えば上記「β線吸収方式によって得られる瞬時の値」(b)から,その「瞬時の値」(b)を得た時点より1秒前に得られた「β線吸収方式によって得られる瞬時の値」(b)-1を差し引いた値〔=(b)-(b)-1〕,つまり1秒間にリボンフィルタ5に付着したSPM質量と,上記「散乱光強度に基づいて得られる瞬時の値」(a)(=SPM濃度)から算出した1秒間に流れるSPM質量の比較をします。
その算出した値の比較に基づいてβ線吸収方式の異常値を検知し,異常値発生時点のサンプルガスを測定対象とした「β線吸収方式によって得られる瞬時の値」(b)A のみを上記異常値発生時点のサンプルガスを測定対象とした「散乱光強度に基づいて得られる瞬時の値」(a)A に基づいて補正します(当初明細書の段落番号0019)。この補正の手法は以下のようなものです。
例えば,異常値を示した「β線吸収方式によって得られる瞬時の値」(b)A を得た時点より1秒前に得られた「β線吸収方式によって得られる瞬時の値」(b)-1に,異常値発生時点のサンプルガスを測定対象とした「散乱光強度に基づいて得られる瞬時の値」(a)A から求められる1秒間に流れるSPM質量を加算する,といったことをします。
ところで,β線吸収方式においては,例えば一回(1サイクル)の測定時間が例えば1時間である場合,各「β線吸収方式によって得られる瞬時の値」(b)から例えば,近似直線を得ることにより1時間分のSPM質量の積算量を求め,SPM濃度を求めています(当初明細書の段落番号0016,0017,0018)。
従って,本願発明によると,外乱因子やβ崩壊から発生する不定期のノイズが生じたことにより異常値を示した「β線吸収方式によって得られる瞬時の値」(b)A を積算してSPM濃度を算出することにより誤差が生ずる,といったβ線吸収方式の弱点を,異常値発生時点のサンプルガスを測定対象とした「散乱光強度に基づいて得られる瞬時の値」(a)A を用いて異常値を示した「β線吸収方式によって得られる瞬時の値」(b)A を補正することで補い,正確なSPM濃度の算出を導くことができます。
なお,散乱光検出器20とリボンフィルタ5の配置関係上生じたサンプルガス到達時間の差によるずれは,例えば散乱光検出器20とリボンフィルタ5の位置を近付けることや,サンプルガスの流量が一定であることから時間差を算出し,「β線吸収方式によって得られる瞬時の値」を得た時点よりその時間差分前に得られた「散乱光強度に基づいて得られる瞬時の値」を採用する,といったことにより,解消できます。
以上のことから,記載不備について解消したものと思料します。」

しかしながら,ここに記載の値の補正の手法は,本願明細書及び図面に記載されていないし,また,自明な事項であるとも認められない。
特に,「異常値を示した「β線吸収方式によって得られる瞬時の値」(b)A を得た時点より1秒前に得られた「β線吸収方式によって得られる瞬時の値」(b)-1に,異常値発生時点のサンプルガスを測定対象とした「散乱光強度に基づいて得られる瞬時の値」(a)A から求められる1秒間に流れるSPM質量を加算する」という値の補正については,本願明細書段落【0007】の「より具体的には,SPMの散乱光強度に基づく瞬時値(測定値)とβ線吸収方式によって得られる瞬時値(測定値)との間における一定の係数関係を用いて,前者によって後者を補正する」という記載事項と,異なっている。すなわち,請求人の主張する値の補正の手法においては,係数は存在せず,本願明細書に記載の前記「一定の係数関係」を用いた値の補正ではない。
よって,記載不備については解消したとする請求人の主張を認めることはできない。

(4)以上のことから,本願明細書の発明の詳細な説明には,請求項1に記載された「前記サンプリング管内を通過するサンプルガスに対して適宜波長の光を照射し,そのときの散乱光強度に基づいて得られる瞬時の値を用いて前記β線吸収方式によって得られる瞬時の値を補正する」という事項により特定される「浮遊粒子状物質濃度測定装置」の発明について,どのように補正するのか十分な記載がない。
よって,本願明細書の発明の詳細な説明は,当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分な記載がなされていないものである。

4.むすび
以上検討したところによれば,本願は,平成14年改正前の特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないので,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-14 
結審通知日 2009-12-22 
審決日 2010-01-05 
出願番号 特願2002-161034(P2002-161034)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 島田 英昭  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 小島 寛史
秋月 美紀子
発明の名称 浮遊粒子状物質濃度測定装置  
代理人 藤本 英夫  
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