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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1212150
審判番号 不服2008-20384  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-08 
確定日 2010-02-19 
事件の表示 特願2002-5945「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月22日出願公開、特開2003-205088〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成14年1月15日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成20年4月24日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対し、平成20年8月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年9月5日に手続補正がなされたものである。

第二.平成20年9月5日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年9月5日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により補正された、補正後の特許請求の範囲に記載された発明は次のとおりである(下線部は補正によって変更又は追加された箇所)。
「【請求項1】
遊技機の前面側に且つ該遊技機の遊技領域以外の領域に複数色に発光可能な発光部を備え、
通常遊技状態および特別入賞装置が作動する特別遊技状態を採り得るゲーム性を有し、
特別遊技状態の特別入賞装置の作動状況の変化に対応して前記発光部の発光色が変化するように構成されている遊技機において、
特別入賞装置には、入賞球排出口に誘導された遊技球の入賞球数をカウントする入賞球検知手段が備えられており、
遊技機の裏面側に、特別入賞装置の動作を制御する制御信号を送信可能な主制御部と発光部の発光を制御する発光制御部を有して構成される制御部をなす基板が搭載され、
主制御部と発光制御部は、主制御部から発光制御部に制御信号を送信可能に接続されており、
発光制御部は、特別入賞装置の作動状況の変化に対応して発光部の発光色が変化する発光パターンとして複数種類の発光パターンを記憶し、且つ、主制御部からの制御信号に基づき、特別入賞装置の作動状況に応じて発光部の発光色を変化させる発光制御を行い、
主制御部は、特別遊技状態において、特別入賞装置に、特別入賞装置の開閉扉の開放から閉鎖までを1ラウンドとして、所定のラウンド数に達するまで、開放扉の開閉動作を繰返させ、且つ、特別入賞装置に、該特別入賞装置の開閉扉を開放させた後、特別入賞装置への入賞球数が所定球数に達した場合、もしくは、特別入賞装置の開閉扉の開放時間が所定時間になった場合に、特別入賞装置の開閉扉を閉鎖させており、
制御部の基板に、発光制御部に記憶された発光パターンを切り替える切替えスイッチが搭載され、且つ、発光部は、切替えスイッチの操作に応じて選択された発光パターンにて、特別入賞装置の作動状況の変化に対応して発光し、
発光制御部にて発光制御される発光部の発光色を変化させる発光パターンは、入賞球検知手段によりカウントされた入賞球数の変化であって特別入賞装置へ入賞した遊技球の1ラウンドにおける入賞球数の変化を特別入賞装置の作動状況の変化として、該入賞球数に応じて発光部の発光色が変化する発光パターンである、ことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
遊技機の前面側に且つ該遊技機の遊技領域以外の領域に複数色に発光可能な発光部を備え、
通常遊技状態および特別入賞装置が作動する特別遊技状態を採り得るゲーム性を有し、
特別遊技状態の特別入賞装置の作動状況の変化に対応して前記発光部の発光色が変化するように構成されている遊技機において、
遊技機の裏面側に、特別入賞装置の動作を制御する制御信号を送信可能な主制御部と発光部の発光を制御する発光制御部を有して構成される制御部をなす基板が搭載され、
主制御部と発光制御部は、主制御部から発光制御部に制御信号を送信可能に接続されており、
発光制御部は、特別入賞装置の作動状況の変化に対応して発光部の発光色が変化する発光パターンとして複数種類の発光パターンを記憶し、且つ、主制御部からの制御信号に基づき、特別入賞装置の作動状況に応じて発光部の発光色を変化させる発光制御を行い、
主制御部は、特別遊技状態において、特別入賞装置に、該特別入賞装置の開閉扉の開放から閉鎖までを1ラウンドとして、所定のラウンド数に達するまで、開放扉の開閉動作を繰返させ、且つ、特別入賞装置に、該特別入賞装置の開閉扉を開放させた後、特別入賞装置への入賞球数が所定球数に達した場合、もしくは、特別入賞装置の開閉扉の開放時間が所定時間になった場合に、特別入賞装置の開閉扉を閉鎖させており、
制御部の基板に、発光制御部に記憶された発光パターンを切り替える切替えスイッチが搭載され、且つ、発光部は、切替えスイッチの操作に応じて選択された発光パターンにて、特別入賞装置の作動状況の変化に対応して発光し、
発光制御部にて発光制御される発光部の発光色を変化させる発光パターンは、1ラウンドにおける特別入賞装置が開放または拡大している時間の経過を特別入賞装置の作動状況の変化として、該時間の経過に応じて発光部の発光色が変化する発光パターンである、ことを特徴とする遊技機。」
(以下、補正後の請求項2に係る発明を「本願補正発明」という。)

2.補正要件(目的)の検討
(1)請求項1及び2に共通する補正事項について
請求項1又は2に係る発明を特定するために必要な事項である「発光部」に「該遊技機の遊技領域以外の領域」を付加し、「制御部」に「特別入賞装置の動作を制御する制御信号を送信可能な主制御部」を付加し、当該付加した主制御部について「主制御部と発光制御部は、主制御部から発光制御部に制御信号を送信可能に接続」するものであることを限定し、同じく主制御部について「特別遊技状態において、特別入賞装置に、該特別入賞装置の開閉扉の開放から閉鎖までを1ラウンドとして、所定のラウンド数に達するまで、開放扉の開閉動作を繰返させ、且つ、特別入賞装置に、該特別入賞装置の開閉扉を開放させた後、特別入賞装置への入賞球数が所定球数に達した場合、もしくは、特別入賞装置の開閉扉の開放時間が所定時間になった場合に、特別入賞装置の開閉扉を閉鎖させており」という機能を付加し、「発光制御部」に「主制御部からの制御信号に基づき、特別入賞装置の作動状況に応じて発光部の発光色を変化させる発光制御を行」うこと、及び「発光制御される発光部の発光色を変化させる発光パターンは、1ラウンドにおける」ものであることを付加する補正である。
よって、上記各補正は、補正前の各発明特定事項について限定を付加することとなるので、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当する。

(2)請求項1特有の補正事項について
請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「特別入賞装置」に「入賞球排出口に誘導された遊技球の入賞球数をカウントする入賞球検知手段が備えられており」を付加し、「発光パターン」について「入賞球数の変化を特別入賞装置の作動状況の変化として、該入賞球数に応じて発光部の発光色が変化する」点を限定する補正である。
よって、上記各補正は、補正前の各発明特定事項について限定を付加することとなるので、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当する。

(3)請求項2特有の補正事項について
「発光パターン」について「特別入賞装置が開放または拡大している時間の経過を特別入賞装置の作動状況の変化として、該時間の経過に応じて発光部の発光色が変化する」点を限定する補正であるから、該補正は、補正前の発明特定事項について限定を付加するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当する。

(4)まとめ
以上のとおり、本件補正は、いずれの事項も特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当するから、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に該当する。

3.補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討
(1)引用された文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特公平6-30659号公報(以下「引用文献A」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
【0006】【課題を解決するための手段】本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり,特定遊技状態の発生に起因して変動入賞装置が第1状態に変換されてからの経過時間や変動入賞装置が第1状態に変換されている残存時間を,遊技者が視覚的に認識することができる様にしたパチンコ遊技機を提供することを目的とする。要約すれば,本発明のパチンコ遊技機は,遊技者にとって有利な第1状態と遊技者にとって不利な第2状態とに変換可能な変動入賞装置が遊技部内に配設されており,予め設定された特定遊技状態になったことを検出すると,前記変動入賞装置を所定期間第1状態に変換駆動する様にしたパチンコ遊技機を前提として,前記変動入賞装置の第1状態に係わる時間情報を遊技者に視認可能に表示する時間情報表示手段と,前記特定遊技状態検出手段からの検出出力に基づいて前記時間情報表示手段を駆動制御する表示駆動制御手段とを各々具備することにより上記の目的を達成するものである。
【0008】【実施例】本発明の主たる構成やその他の目的は図面を参照して行う以下の実施例の説明により,一層明らかなものとなろう。図1は本発明の一実施例を示すパチンコ遊技機100の外観図である。この実施例のパチンコ遊技機100のガイドレール101で囲まれた遊技部102内にはチューリップ103,天入賞孔104,入賞チャッカ105,スロットゲーム開始の引金となる特定球入賞領域120が配設されるとともに,上記いずれの入賞領域へも入賞しなかったパチンコ球を回収するアウト孔106が設けられる。
【0010】又,遊技部102の中央には本発明の特徴の1つとなるディスプレー領域110や変動入賞装置130が設けられている。
【0011】先ずディスプレー領域110のその主たる目的はパチンコ遊技に付随してスロットゲームを行うものであり,そのゲーム結果に対応して変動入賞装置130の開成態様が定まる。
【0012】具体的にはディスプレー領域110は,図2に示すように4桁の7セグメントの数値表示部111a・b・c・dと,変動入賞装置130の開成時間が3秒経過する毎に点灯位置が移動する時間表示部215及びゲーム権利数を記憶表示する記憶表示部128等を具備しており,いづれかの特定球入賞領域120への入賞により数値表示部111は作動を開始し,その表示が更新される。そして遊技客がストップスイッチ141を押下したタイミングで更新が停止されてスロットゲームは終了する。そしてスロットゲーム終了時の数値表示部111の表示態様に対応して変動入賞装置130の開成態様が定まる。
【0013】本実施例では数値表示部111によるスロットゲームの結果としては,4桁の表示が全て〔7〕になる大当たり・下段3桁の数字が〔7〕になりあるいは4桁の数字が〔7〕以外で揃う中当たり及び上記以外のはずれの3種類の態様を想定しており,大当たりの場合は比較的に長時間変動入賞装置130が開成し,中当たりの場合は比較的に短時間変動入賞装置130が開成し,はずれの場合は変動入賞装置130が瞬時開成する。
【0015】又,本実施例では変動入賞装置130は内部において複数の入賞領域に分割されており,その内部の一部の入賞領域は特別球入賞領域402と定義されている。そして変動入賞装置130が長時間開成している時に特別球入賞領域402内に入賞すると,上記長時間の開成が終了した後に再度変動入賞装置130は上記長時間の開成を繰り返す。
【0025】この制御系は主に,特定球検出器からの特定球検出信号やストップスイッチ141からの停止信号によりスロットゲームの開始や終了を制御するための制御系や,ディスプレー領域110の表示内容を制御するための制御系や,変動入賞装置130を駆動するための制御系や,変動入賞装置130内への入賞状態により変動入賞装置130の動作状態を制御するための制御系及びその他の制御系を含み,これら各種の制御系を一枚の回路図に示すと図面が煩雑なものとなるため,図5,図6,図7,図8に上記の各種の制御系を分割して示すとともに,且つ各制御系毎に分割された回路の接続点をアルファベット符合で示す。
【0031】図中,201はアンド論理の判別回路を,202は変動入賞装置130の開成時間を設定するタイマカウンタを,203・204・205・206・207は各々アンドゲートを,209・210は各々オアゲートを,211はドライバを,212は変動入賞装置を駆動するためのソレノイドを,213は変動入賞装置130の開成時間をカウントするシフトレジスタを,214はシフトレジスタ213の出力を増幅するドライバを,215はディスプレー領域110に設けられた時間表示部を,216はスロットゲームが行われている時やスロットゲームのゲーム結果が現れた時等に各々に対応した効果音を発生する効果音発生回路を,217は効果音信号を増幅するドライバを,171は効果を発生するスピーカを,219はドライバを,221は大当たりとなった時にこれを表示する大当たり表示部を示し,大当たり表示部221は遊技機の近傍に設けられるほか中央制御システムに設けられても良い。
【0067】表示内容が〔7.7.7.7〕となってスロットゲームが終了した場合の動作を概説すれば,
【0068】(a).基本的にはタイマカウンタ202の作用により変動入賞装置130は30秒間開成する。
【0069】(b).又,この30秒間の開成期間中に変動入賞装置130内に例えば10個以上のパチンコ球の入賞があると,上記30秒の期間が経過しなくてもこの長時間の開成を終了する
【0070】(c).又,上記30秒あるいは10個入賞迄の期間中に特別球入賞領域402にパチンコ球が入賞するとこの長時間の入賞を例えば最大10回までは連続して繰り返す。
【0097】先ず,判定回路201が信号aを発生するとシフトレジスタ213はリセット状態を解除され,クロックφ2をカウントする。このシフトレジスタ213は3秒間経過する毎にその出力を1ビットシフトするようになされており,ドライバ214はこれを増幅して時間表示部215に加える。この時間表示部215は発光ダイオード等により構成されており,その表面には図2に示すように1?10の数値が表示してある。従って,この時間表示部215の点灯位置は変動入賞装置130が長時間の開成状態になってから3秒経過するごとに移動していき,変動入賞装置130が何秒間開成しているかを遊技客に示す。
【0098】又,大当たり状態になった時に判定回路201が発生する信号aはP点を経由して,データセレクタ114b・c・dのセレクト端子A/Bに加えられる。その結果データセレクタ114b・c・dはB側入力を選択してデコーダドライバ112b・c・dに加える。

摘記した上記の記載や図面等によれば、引用文献Aには以下の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。
「 パチンコ遊技機100のガイドレール101で囲まれた遊技部102の中央にはディスプレー領域110や変動入賞装置130が設けられ、
該変動入賞装置130は、遊技者にとって有利な第1状態と遊技者にとって不利な第2状態とに変換可能であり、
前記ディスプレー領域110は、前記変動入賞装置130の開成時間が3秒経過する毎に点灯位置が移動する時間表示部215等を具備しているパチンコ遊技機100において、
前記変動入賞装置130を制御する制御系、前記変動入賞装置130内への入賞状態により前記変動入賞装置130の動作状態を制御するための制御系、前記ディスプレー領域110の表示内容を制御する制御系及びその他の制御系を含む制御系の回路が設けられ、
大当たり状態になった時に判定回路201が信号aを発生するとシフトレジスタ213は3秒間経過する毎にその出力を1ビットシフトするようになされており、ドライバ214はこれを増幅して前記時間表示部215に加え、
該時間表示部215の点灯位置は前記変動入賞装置130が長時間の開成状態になってから3秒経過するごとに移動していき、
前記変動入賞装置130は、前記長時間の開成状態が終了した後に再度前記長時間の開成状態を最大10回までは連続して繰り返し、基本的には前記変動入賞装置130は30秒間開成するが、この30秒間の開成期間中に前記変動入賞装置130内に10個以上のパチンコ球の入賞があると、前記30秒間が経過しなくても前記長時間の開成状態を終了し、
前記時間表示部215の点灯位置は前記変動入賞装置130が前記長時間の開成状態になってから3秒経過するごとに移動していくパチンコ遊技機100。」

(2)引用発明と本願補正発明との対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「パチンコ遊技機100」は、本願補正発明の「遊技機」に相当し、以下同様に、
「ガイドレール101で囲まれた遊技部102」は「遊技領域」に、
「ディスプレー領域110」は「発光部」に、
「変動入賞装置130」は「特別入賞装置」に、
「遊技者にとって有利な第1状態」は「特別遊技状態」に、
「遊技者にとって不利な第2状態」は「通常遊技状態」に、
「ディスプレー領域110の表示内容を制御する制御系」は「発光部の発光を制御する発光制御部」に、
「長時間の開成状態」は「特別遊技状態」に、
「30秒間」は「所定時間」に、
「変動入賞装置130内に10個以上のパチンコ球の入賞があると」は「特別入賞装置への入賞球数が所定球数に達した場合」に、
「前記長時間の開成状態を終了」は「特別入賞装置の開閉扉を閉鎖」に、それぞれ相当する。
さらに、引用文献Aの記載等からみて、以下のことが言える。

a.引用発明の「ディスプレー領域110」は、パチンコ遊技機100のガイドレール101で囲まれた遊技部102の中央に設けられているから、遊技機の前面側の領域に備えられている点では、本願補正発明と一致している。

b.引用発明の「変動入賞装置130」の開成した状態が遊技者にとって有利であることは明らかであるから、引用発明の「遊技者にとって有利な第1状態」は、本願補正発明の「特別入賞装置が作動する特別遊技状態」に相当し、引用発明も変動入賞装置130が変換可能であることにより、第1状態、第2状態を採り得るゲーム性を有するものといえるから、引用発明は、本願補正発明の「通常遊技状態および特別入賞装置が作動する特別遊技状態を採り得るゲーム性」に相当する機能を有するものということができる。

c.上記b.で述べたと同様に、引用発明において変動入賞装置130が開成した状態は、本願補正発明の「特別遊技状態」に相当し、引用発明において「変動入賞装置130の開成時間が3秒経過する毎に点灯位置が移動する」ことは、変動入賞装置130の作動状況の変化に対応してディスプレー領域110の発光状態が変化していることと言い換えられるから、本願補正発明と引用発明は、“特別遊技状態の特別入賞装置の作動状況の変化に対応して発光部の発光状態が変化するように構成されている”点で、本願補正発明と共通する。

d.引用発明の「変動入賞装置130を制御する制御系」及び「変動入賞装置130内への入賞状態により前記変動入賞装置130の動作状態を制御するための制御系」が、変動入賞装置130の動作を制御する制御信号を送信することは当然のことであるから、これらの制御系は、本願補正発明の「特別入賞装置の動作を制御する制御信号を送信可能な主制御部」に相当する。
また、引用発明の回路が基板上に作成されることは自明の構成であるから、引用発明は、本願補正発明の「特別入賞装置の動作を制御する制御信号を送信可能な主制御部と発光部の発光を制御する発光制御部を有して構成される制御部をなす基板が搭載され」に相当する構成を有するものということができる。

e.引用発明の「シフトレジスタ213」は、引用文献Aの段落【0031】に「変動入賞装置130の開成時間をカウントする」ものと説明されているから、「変動入賞装置130を制御する制御系」又は「変動入賞装置130内への入賞状態により前記変動入賞装置130の動作状態を制御するための制御系」に含まれるものである。
また、「ドライバ214」はシフトレジスタ213の出力を増幅して時間表示部215に加えるものであり、該時間表示部215はディスプレー領域110の一部をなすものであるから、引用発明は「変動入賞装置130を制御する制御系」又は「変動入賞装置130内への入賞状態により前記変動入賞装置130の動作状態を制御するための制御系」から「ディスプレー領域110の表示内容を制御する制御系」に制御信号を送信するものといえる。
そうしてみると、引用発明は、本願補正発明の「主制御部と発光制御部は、主制御部から発光制御部に制御信号を送信可能に接続されており」に相当する構成を有するものということができる。

f.上記e.での検討を踏まえると、引用発明の「時間表示部215の点灯位置」が、「変動入賞装置130を制御する制御系」又は「変動入賞装置130内への入賞状態により前記変動入賞装置130の動作状態を制御するための制御系」からの制御信号に基づいて発光制御されることは明らかであるから、上記c.に記載した事項を考え合わせると、本願補正発明と引用発明は“主制御部からの制御信号に基づき、特別入賞装置の作動状況に応じて発光部の発光状態を変化させる発光制御を行”う点で共通する。

g.引用発明において「前記長時間の開成状態が終了した後に再度前記長時間の開成状態を最大10回までは連続して繰り返」すことは、実質的に本願補正発明の「特別入賞装置に、該特別入賞装置の開閉扉の開放から閉鎖までを1ラウンドとして、所定のラウンド数に達するまで、開放扉の開閉動作を繰返させ」に相当するということができる。
また、引用発明の「変動入賞装置130」は、要するに10個以上のパチンコ球の入賞があった場合又は30秒間の開成期間が経過した場合に前記長時間の開成状態を終了するものであり、これらの制御が「変動入賞装置130を制御する制御系」及び「変動入賞装置130内への入賞状態により前記変動入賞装置130の動作状態を制御するための制御系」で行われていることは明らかであるから、引用発明は、本願補正発明の「主制御部は、特別遊技状態において、特別入賞装置に、該特別入賞装置の開閉扉の開放から閉鎖までを1ラウンドとして、所定のラウンド数に達するまで、開放扉の開閉動作を繰返させ、且つ、特別入賞装置に、該特別入賞装置の開閉扉を開放させた後、特別入賞装置への入賞球数が所定球数に達した場合、もしくは、特別入賞装置の開閉扉の開放時間が所定時間になった場合に、特別入賞装置の開閉扉を閉鎖させており」に相当する構成を有するものということができる。

h.引用発明の「時間表示部215の点灯位置」は、変動入賞装置130が前記長時間の開成状態になってから3秒経過するごとに移動していくのであるから、上記f.での検討を踏まえると、本願補正発明の「発光パターン」と、“1ラウンドにおける特別入賞装置が開放している時間の経過を特別入賞装置の作動状況の変化として、該時間の経過に応じて発光部の発光状態が変化する発光態様”である点で共通する。

以上を総合すると、両者は、
「 遊技機の前面側の領域に発光部を備え、
通常遊技状態および特別入賞装置が作動する特別遊技状態を採り得るゲーム性を有し、
特別遊技状態の特別入賞装置の作動状況の変化に対応して前記発光部の発光状態が変化するように構成されている遊技機において、
遊技機に、特別入賞装置の動作を制御する制御信号を送信可能な主制御部と発光部の発光を制御する発光制御部を有して構成される制御部をなす基板が搭載され、
主制御部と発光制御部は、主制御部から発光制御部に制御信号を送信可能に接続されており、
発光制御部は、主制御部からの制御信号に基づき、特別入賞装置の作動状況に応じて発光部の発光状態を変化させる発光制御を行い、
主制御部は、特別遊技状態において、特別入賞装置に、該特別入賞装置の開閉扉の開放から閉鎖までを1ラウンドとして、所定のラウンド数に達するまで、開放扉の開閉動作を繰返させ、且つ、特別入賞装置に、該特別入賞装置の開閉扉を開放させた後、特別入賞装置への入賞球数が所定球数に達した場合、もしくは特別入賞装置の開閉扉の開放時間が所定時間になった場合に、特別入賞装置の開閉扉を閉鎖させており、
発光制御部にて発光制御される発光部の発光状態を変化させる発光態様は、1ラウンドにおける特別入賞装置が開放している時間の経過を特別入賞装置の作動状況の変化として、該時間の経過に応じて発光部の発光状態が変化する発光態様である遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本願補正発明の「発光部」は、遊技機の遊技領域以外の領域に備えられ、複数色に発光可能であるのに対し、引用発明の「ディスプレー領域110」は、遊技部102の中央に設けられ、複数色に発光可能なものかどうか明らかでない点。

[相違点2]発光状態の変化に関して、本願補正発明の「発光部」は発光色が変化するのに対し、引用発明の「ディスプレー領域110」は時間表示部215の点灯位置が移動するものである点。

[相違点3]本願補正発明は、制御部をなす基板が遊技機の裏面側に搭載されているのに対し、引用発明は、制御系の回路がパチンコ遊技機100のどこに配置されているのか不明である点。

[相違点4]本願補正発明は、「発光制御部」が「特別入賞装置の作動状況の変化に対応して発光部の発光色が変化する発光パターンとして複数種類の発光パターンを記憶」するのに対し、引用発明は、「時間表示部215の点灯位置」に関して、複数種類の発光態様を記憶するものではない点。

[相違点5]本願補正発明は「制御部の基板に、発光制御部に記憶された発光パターンを切り替える切替えスイッチが搭載され、且つ、発光部は、切替えスイッチの操作に応じて選択された発光パターンにて、特別入賞装置の作動状況の変化に対応して発光」するのに対し、引用発明の「ディスプレー領域110の表示内容を制御する制御系」は、そのような切替えスイッチを備えておらず、発光態様の選択を行っていない点。

(3)相違点の検討及び判断
[相違点1について]
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平6-114148号公報(以下「引用文献B」という。)の段落【0023】に「前記ELランプeは図7で例示するように、金属枠部又は木枠部等、機枠2の表面に設けることもできる。図7にあっては、その上部に複数配設している。すなわち、機枠2の上部に横長の楕円形の孔60を三箇所形成し、その裏面から該孔60よりもやや大きなELランプeを夫々貼りつける。このとき、各ELランプeの色は、例えば、左から、青、緑、青の発光色のものを適用する。そして、このELランプeを上述の特定入賞口27に配置したセンサからの当たり情報に基づき、左から右へ点滅し、次に右から左に点滅する往復点滅作動を流れるように生じさせる。これにより、この特別駆動状態が、躍動感をもって実行され、パチンコ遊戯の興趣を増大し得ることとなる。」と記載されており、パチンコ遊技機において、遊技領域以外の領域に発光部を設ける点及び当たり情報に基づいて、左から、青、緑、青の発光色のELランプeを、左から右へ点滅し、次に右から左に点滅させることが開示されている(以下「引用文献B記載の事項」という)。
そして、引用発明及び引用文献B記載の事項ともにパチンコ遊技機の当たり表示に関するものであるから、引用発明に引用文献B記載の事項を適用し、ディスプレー領域110の配置箇所を遊技領域以外とするとともに、複数色のランプを配置して、相違点1に係る本願補正発明のような構成とすることは、遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に想到し得る。

[相違点2について]
程度やレベルの報知を、発光色の変化によって行うことは、例えば、特開2002-795号公報(段落【0098】及び図15)、特開2001-62035号公報(段落【0063】?【0065】、【表1】)及び特開平9-187553号公報(段落【0012】)に示されるように、遊技機の分野において従来周知の報知技術(以下「周知技術1」という。)である。
そうしてみると、引用発明に引用文献B記載の事項を適用するに際して、時間表示部215において3秒経過する毎に点灯位置が移動することによって行っている開成時間の進行程度の報知を、色の変化によって行うようにすることは、当業者が適宜採用する単なる設計的事項と判断される。
なお、この点について審判請求人は、「不正行為の早期発見」の効果を主張している(審判請求の理由3-2-2.第8?9頁)。
しかし、本願の願書に最初に添付した明細書及び図面には「不正行為の早期発見」に関する記載は認められないので、審判請求人の上記主張は明細書の記載に基づかない主張であり、その効果が本願補正発明の構成から自明な効果とするならば、当業者が引用発明、引用文献B記載の事項及び周知技術1に基づいて予測できる程度の効果ということができるから、請求人が主張する「不正行為の早期発見」の効果は格別のものではない。

[相違点3について]
制御基板を遊技機の裏面側に配置することは、例えば、特開平9-24136号公報(段落【0037】、【図2】)、特開平9-47559号公報(段落【0031】、【図3】)に示されるように、遊技機の分野において従来周知の報知技術(以下「周知技術2」という。)である。
そうしてみると、引用発明に周知技術2を適用し、制御系の回路(基板)の配設箇所を遊技機の裏面側として、相違点3に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得る。

[相違点4及び5について]
相違点4及び5は、いずれも発光態様の記憶及び切り替えに関するものであるから、合わせて検討する。
同様の機能作用を奏するものを複数用意しておき、当該複数の内から切り替えによって一つを選択することでゲーム内容に変化を持たせること、及び当該切り替えに際して、遊技機の裏面側に搭載された制御基板に設けられたキースイッチを用いることは、例えば、特開平10-99498号公報(段落【0012】、【0024】、【0052】、図2)、特開平6-218094号公報(段落【0016】、図3)及び特開平6-71040号公報(段落【0024】、図2)に見られるように、遊技機の分野において従来周知の技術(以下「周知技術3」という。)であり、しかも、ランプによる表示態様を複数種類用意し記憶しておくことも、例えば、特開平10-146451号公報(段落【0056】、【0111】)及び特開平11-57196号公報(段落【0028】、【0034】)に見られるように、遊技機の分野において従来周知の技術(以下「周知技術4」という。)であるから、引用発明の「時間表示部215」に周知技術3及び4を適用して、複数の表示態様をディスプレー領域110の表示内容を制御する制御系に記憶しておき、キースイッチ操作により該複数の表示態様の内から一つを選択するようにし、相違点4及び5に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得る。

(4)まとめ
以上のように相違点1?5は、いずれも当業者が容易に想到し得るものであり、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献B記載の事項及び周知技術1?4に基いて当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本願補正発明は、引用発明、引用文献B記載の事項及び周知技術1?4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第三.本願発明について
1.本願発明
平成20年9月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年4月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 遊技機の前面側に複数色に発光可能な発光部を備え、通常遊技状態および特別入賞装置が作動する特別遊技状態を採り得るゲーム性を有し、特別遊技状態の特別入賞装置の作動状況の変化に対応して前記発光部の発光色が変化するように構成されている遊技機において、
遊技機の裏面側に、発光部の発光を制御する発光制御部を有して構成される制御部をなす基板が搭載されており、
発光制御部に、特別入賞装置の作動状況の変化に対応して発光部の発光色が変化する発光パターンとして複数種類の発光パターンが記憶され、制御部の基板に、発光制御部に記憶された発光パターンを切り替える切替えスイッチが搭載され、且つ、発光部が、切替えスイッチの操作に応じて選択された発光パターンにて、特別入賞装置の作動状況の変化に対応して発光し、
特別入賞装置の作動状況の変化が、特別入賞装置が開放または拡大している時間の経過であることを特徴とする遊技機。」

2.特許法第29条第2項の検討
(1)引用文献記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献A(特公平6-30659号公報)及びその記載事項は、前記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。

(2)引用発明と本願発明との対比及び判断
本願発明は、前記「第二」で検討した本願補正発明から、(i)「発光部」、(ii).「制御部」、(iii)「主制御部」、(iv)「発光制御部」、(v)「発光パターン」の各限定事項である(i)「該遊技機の遊技領域以外の領域」、(ii)「特別入賞装置の動作を制御する制御信号を送信可能な主制御部」、(iii)「主制御部と発光制御部は、主制御部から発光制御部に制御信号を送信可能に接続」及び「特別遊技状態において、特別入賞装置に、該特別入賞装置の開閉扉の開放から閉鎖までを1ラウンドとして、所定のラウンド数に達するまで、開放扉の開閉動作を繰返させ、且つ、特別入賞装置に、該特別入賞装置の開閉扉を開放させた後、特別入賞装置への入賞球数が所定球数に達した場合、もしくは、特別入賞装置の開閉扉の開放時間が所定時間になった場合に、特別入賞装置の開閉扉を閉鎖させており」、(iv)「主制御部からの制御信号に基づき、特別入賞装置の作動状況に応じて発光部の発光色を変化させる発光制御を行」うこと、及び「発光制御される発光部の発光色を変化させる発光パターンは、1ラウンドにおける」ものであること、(v)「特別入賞装置が開放または拡大している時間の経過を特別入賞装置の作動状況の変化として、該時間の経過に応じて発光部の発光色が変化する」点の構成を省いたものといえる。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.3.(4)」に記載したとおり、引用発明、引用文献B記載の事項及び周知技術1?4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用文献B記載の事項及び周知技術1?4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献B記載の事項及び周知技術1?4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第四.むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項(請求項1)について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-07 
結審通知日 2009-12-09 
審決日 2010-01-04 
出願番号 特願2002-5945(P2002-5945)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阿南 進一  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 吉村 尚
河本 明彦
発明の名称 遊技機  
代理人 細井 勇  

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