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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) B65H |
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管理番号 | 1212838 |
判定請求番号 | 判定2009-600045 |
総通号数 | 124 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2010-04-30 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2009-11-20 |
確定日 | 2010-03-02 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3908155号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号写真に示す「AURORA nano」は、特許第3908155号の特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
1.請求の趣旨 本件判定の請求の趣旨は、イ号写真に示す「AURORA nano」(以下、「イ号物件」という。)は、特許第3908155号の特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明の技術的範囲に属する、との判定を求めたものであって、以下の甲第1号証及びイ号写真として写真1ないし10(枝番を含む。)を証拠方法として提出している。 甲第1号証:特許第3908155号公報(本件特許公報) 2.本件特許発明 甲第1号証からみて、本件の願書に添付した明細書及び図面(以下、「本件明細書等」という。)における特許請求の範囲の記載は、以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】 ホースを巻き取るドラムがフレームに回動自在に支持されたホースリールにおいて、 前記フレームを、前記ドラムが収容されるケース状に形成し、当該フレームに天面を形成するとともに、前記フレームの底面に開口部を設け、前記フレームの脚部を前記開口部を閉鎖する位置と閉鎖しない位置との間で移動可能に取り付けたことを特徴とするホースリール。 【請求項2】 ホースを巻き取るドラムがフレームに回動自在に支持されたホースリールにおいて、 前記フレームを、前記ドラムが収容されるケース状に形成し、当該フレームに天面を形成するとともに、前記フレームの底面に開口部を設ける一方、 前記フレーム下部に、該フレームより側方へ延出した展開状態と、前記開口部に配置されて梱包時において前記開口部内に収容された部品の飛び出しを防止する状態との間で開閉される脚部を設けたことを特徴とするホースリール。 【請求項3】 前記天面を略平坦に形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のホースリール。 【請求項4】 前記天面に他のフレームを積載する積載部を設定したことを特徴とする請求項1、2又は3記載のホースリール。 【請求項5】 前記フレームの天面に、没入した凹部及び該凹部内に収容される取っ手を設け、該取っ手を、前記凹部内に収容された傾倒状態と起立した起立状態との間で回動自在に支持するとともに、 前記傾倒状態から前記起立状態へ移行する際に前記取っ手の自由端部が回動中心上部を通過し当該取っ手が傾斜した状態で回動を規制する規制手段を設けたことを特徴とする請求項1から4にいずれか記載のホースリール。 【請求項6】 前記ドラムを、前記ホースが巻かれる胴部と、該胴部の両端部に設けられた鍔部とで構成し、前記フレームの内側面に、前記鍔部に近接するリブを突設したことを特徴とする請求項1から5にいずれか記載のホースリール。 【請求項7】 前記リブの高さ寸法を、前記フレームの内側面から前記鍔部までの離間距離以上の高さに設定したことを特徴とする請求項6記載のホースリール。」 そして、特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ、「本件特許発明1ないし4」という。)は、上記特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された以下のとおりのものと認める。 なお、その構成要件をA?Iに分説して記載している。(以下、「構成要件A」などという。) 「【請求項1】 A ホースを巻き取るドラムがフレームに回動自在に支持されたホースリールにおいて、 B 前記フレームを、前記ドラムが収容されるケース状に形成し、 C 当該フレームに天面を形成するとともに、 D 前記フレームの底面に開口部を設け、 E 前記フレームの脚部を前記開口部を閉鎖する位置と閉鎖しない位置との間で移動可能に取り付けたことを特徴とするホースリール。 【請求項2】 A ホースを巻き取るドラムがフレームに回動自在に支持されたホースリールにおいて、 B 前記フレームを、前記ドラムが収容されるケース状に形成し、 C 当該フレームに天面を形成するとともに、 F 前記フレームの底面に開口部を設ける一方、 G 前記フレーム下部に、該フレームより側方へ延出した展開状態と、前記開口部に配置されて梱包時において前記開口部内に収容された部品の飛び出しを防止する状態との間で開閉される脚部を設けたことを特徴とするホースリール。 【請求項3】 H 前記天面を略平坦に形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のホースリール。 【請求項4】 I 前記天面に他のフレームを積載する積載部を設定したことを特徴とする請求項1、2又は3記載のホースリール。」 4.イ号物件 イ号物件について、判定請求書及びにこれに添付されたイ号写真に基づいて検討する。 判定請求書第4頁には、 『このホース5を巻き取るドラム6が、本体フレーム1に回動自在に支持されてなる構成は、「(a)ホースを巻き取るドラムがフレームに回動自在に支持されたホースリールにおいて、」に該当します。 写真1及び写真2、写真5に示されるように、ホース5を巻き取るドラム6を収容した本体フレーム1を形成してなる構成は、「(b)前記ドラムが収容されるケース状に形成し、」に該当します。 写真4に示されるように、天面10を形成してなる構成は、「(c)当該フレームに天面を形成するとともに、」に該当します。 写真7に示されるように、底面に開口部11を形成してなる構成は、「(d)前記フレームの底面に開口部を設け、」に該当します。 写真7及び写真8に示されるように、脚部2がスライドすることにより開閉位置のそれぞれに移動可能となる構成は、「(e)前記フレームの脚部を前記開口部を閉鎖する位置と閉鎖しない位置との間で移動可能に取り付けたことを特徴とするホースリール。」に該当します。 写真7に示されるように、本体フレーム1の底面に開口部11を形成してなる構成は、「(f)前記フレームの底面の開口部を設ける一方、」に該当します。 写真7に示されるように、本体フレーム1の下部に、脚部2が本体フレーム1より側方へ延出してなる構成は、「(g)前記フレーム下部に、」及び「(h)該フレームより側方へ延出した展開状態と、」に該当します。 写真7及び写真8に示されるように、脚部2が本体フレーム1より側方へ延出せず、底面の閉鎖状態にしてなる構成は、「(i)前記開口部に配置されて梱包時において前記開口部内に収容された部品の飛び出しを防止する状態との間で開閉される脚部を設けたことを特徴とするホースリール。」に該当します。』と記載されている。 すなわち、請求人はイ号物件を、 「ホース5を巻き取るドラム6が、本体フレーム1に回動自在に支持されて、 ホース5を巻き取るドラム6を収容した本体フレーム1を形成し、 天面10を形成し、 底面に開口部11を形成し、 脚部2がスライドすることにより開閉位置のそれぞれに移動可能となる」もの、 または、 「ホース5を巻き取るドラム6が、本体フレーム1に回動自在に支持されて、 ホース5を巻き取るドラム6を収容した本体フレーム1を形成し、 天面10を形成し、 本体フレーム1の底面に開口部11を形成し、 本体フレーム1の下部に、脚部2が本体フレーム1より側方へ延出し、 脚部2が本体フレーム1より側方へ延出せず、底面の閉鎖状態にしてなる」ものであると説明している。 そこで、イ号物件について、イ号写真に基づいて詳しく検討すると、 (ア)「ホース5」、「ノズル3」及び「ハンドル9」を備えていること並びに「本体フレーム1」の外観から、イ号物件は、ホースを巻き取るドラムが、本体フレームに回動自在に支持されるいわゆる「ホースリール」であるものと認められる。 (イ)「本体フレーム1」は、写真1?6から、その外観よりケース状であるものと認められる。 (ウ)「本体フレーム1」には、写真1?6から、「天面10」が形成されているものと認められる。 (エ)「本体フレーム1」の底面には、写真7から、「開口部11」が形成されているものと認められる。 (オ)「本体フレーム1」の底からみて、写真7及び8から、「本体フレーム1」の下部に、左右の「脚部2、2」が、スライドすることにより「本体フレーム1」から延出した位置と、左右の「脚部2、2」が延出しない、すなわちお互いに接触するまで後退した位置のそれぞれに移動可能に取り付けられているものと認められる。 (カ)左右の「脚部2、2」には、写真7及び8から、左右の「脚部2、2」が対向する位置に、それぞれ縦長の「凹所」が設けられているものと認められ、そして、上記「脚部2」がお互いに接触するまで後退した位置に移動した状態では、上記「開口部11」は、上記各「凹所」以外の部分では左右の「脚部2、2」により閉鎖状態とされるが、上記各「凹所」により形成される縦長の開口が残存する状態であることが認められる。 上記判定請求書での説明を参照しつつ、上記検討結果(ア)?(カ)によれば、イ号物件は、おおよそ、以下のとおりのものと認められる。 なお、イ号物件をa?eに分説して記載している。(以下、「構成a」などという。) 「a ホース5を巻き取るドラム6が、本体フレーム1に回動自在に支持さ れているホースリールにおいて、 b 前記ドラム6を収容した本体フレーム1をケース状に形成し、 c 本体フレーム1に天面10を形成し、 d 本体フレーム1の底面に開口部11を形成し、 e 本体フレーム1の下部に、左右の脚部2、2が、本体フレーム1から延出した位置と、左右の脚部2、2がお互いに接触するまで後退した位置のそれぞれに移動可能に取り付けられ、また、左右の脚部2、2には、左右の脚部2、2が対向する位置に、それぞれ縦長の凹所が設けられ、そして、左右の脚部2、2が上記後退した位置に移動した状態では、上記開口部11は、上記各凹所以外の部分では左右の脚部2、2により閉鎖状態とされるが、上記各凹所により形成される縦長の開口が残存している状態であるホースリール。」 5.対比・判断 5-1.本件特許発明1について 本件特許発明1とイ号物件とを対比すると、 イ号物件の構成a?dが、それぞれ本件特許発明1の構成要件A?Dを充足していることは明らかである。 次に、本件特許発明1の構成要件Eの「前記フレームの脚部を前記開口部を閉鎖する位置と閉鎖しない位置との間で移動可能に取り付けた」ことについて検討すると、本件明細書等には、構成要件Eの構成に関連して、 「【0035】 前記下部容器12の底面61には、図7にも示すように、矩形状の底部開口部62が開設されており、本体ケース11は、この底部開口部62を介して外部に連通している。 【0036】 また、前記底面61には、横長の脚固定部材65,65が前面側及び後面側の各縁部に沿ってネジ止めされている。両脚固定部材65,65の両端部には、図8にも示すように、十字状の軸部66,66が互いに対向する方向へ突設されており、対向した軸部66,66には、同形状に形成された脚部67,67が回動自在に支持されている。 【0037】 この脚部67の両端部には、前記軸部66,66に外嵌する円筒部71,71が基端部72に形成されており、この円筒部71には、先端へ向けて延出する上面部73が一体形成されている。前記両脚部67,67は、前記円筒部66,66を中心に回動することによって、図9に示すように、両脚部67,67の先端が前記本体ケース11の下部に配置され両脚部67,67が前記底面開口部62の下部に配置された折り畳み状態74と、図1に示したように、両脚部67,67の先端が本体ケース11より側方へ延出し、かつ前記本体ケース11の底面61に当接して(図8参照)回動が規制された展開状態75とを任意に形成できるように構成されている。 【0038】 これにより、展開状態75において、本体ケース11の起立状態の安定化を図れるように構成されており、前記折り畳み状態74にあっては、底面61に開設された前記底面開口部62を前記脚部67,67によって閉鎖できるように構成されている。」と記載され、 そして、図8及び9を参照すると、両脚部67,67が、順次、円筒部66,66を中心に回動することによって、両脚部67,67の先端が前記本体ケース11の下部に配置され両脚部67,67が前記底面開口部62の下部に配置された折り畳み状態74とされると、「底面開口部62」は「脚部67,67」により完全に閉鎖状態となるものと認められる。 また、その効果に関連して、 「【0052】 さらに、前記本体ケース11の底面61には、底面開口部62が開設されており、梱包時において、別体化された水道側ホース用の接続プラグ51や前記ハンドル47を、前記底面開口部62内に収容することができる。これにより、梱包時のコンパクト化を図ることができる。 【0053】 この状態で、脚部67,67を本体ケース11下部に折り畳むことにより、当該脚部67,67によって底面開口部62を閉鎖することができる。これにより、底部開口部62内に収容した前記接続プラグ51や前記ハンドル47の不用意な飛び出しを防止することができる。 【0054】 加えて、使用時には、ホース14に結露した水滴や付着した土などを、前記底面開口部62を介して、本体ケース11下方へ落下して排出することもできる。」及び 「【0059】 【発明の効果】 以上説明したように、本発明の請求項1及び2のホースリールにあっては、・・・ 【0062】 また、梱包時において、別体化されたホース接続プラグや回転操作用のハンドルなどの構成部品を、フレーム底面の開口部内に収容することがで きる。これにより、梱包時のコンパクト化を図ることができる。 【0063】 また、使用時には、ホースに結露した水滴をフレーム外へ排出することもできる。 【0064】 さらに、脚部をフレーム下部に配置することにより、当該脚部によってフレーム底面の開口部を閉鎖することができる。これにより、開口部内に 収容した構成部品の不用意な飛び出しを防止することができる。」と記載されている。 よって、構成要件Eの「前記フレームの脚部を前記開口部を閉鎖する位置と閉鎖しない位置との間で移動可能に取り付けたこと」における「閉鎖」とは、梱包時において、別体化されたホース接続プラグや回転操作用のハンドルなどの構成部品を、フレーム底面の開口部内に収容した場合に、上記開口部内に収容した構成部品の不用意な飛び出しを防止することができる状態でなければならなく、また、本件明細書等には、閉鎖状態としては、図9に示されるようにフレーム底面の開口部を完全に閉鎖状態とするものしか開示されていないことから、上記開口部内に収容される物品が、その大きさ及び形状にかかわらず、不用意な飛び出しを防止されるような上記開口部の「完全な閉鎖」を意味するものと解するのが相当である。 それに対し、イ号物件の構成eをみてみると、左右の脚部2、2が後退した位置に移動した状態では、上記開口部11は、上記左右の脚部2、2に設けられた凹所以外の部分では左右の脚部2、2により閉鎖状態とされるが、上記各凹所により形成される縦長の開口が残存している状態であることから、閉鎖は完全ではない。 また、上記残存している「開口」の技術的な意義は、イ号写真のみでは、必ずしも明確でないが、使用後に脚部を後退した位置に移動した状態とした場合においても、上記残存している「開口」により本体フレーム内部の水等を排出することができるという技術的な意義があるとも理解でき、単なる不必要な「開口」と認めることもできない。 以上のことから、イ号物件は、本件特許発明1の構成要件Eを充足しているということはできない。 5-2.本件特許発明2について 本件特許発明2とイ号物件とを対比すると、 イ号物件の構成a?dが、それぞれ本件特許発明2の構成要件A?C、Fを充足していることは明らかである。 次に、本件特許発明2における構成要件Gの「前記フレーム下部に、該フレームより側方へ延出した展開状態と、前記開口部に配置されて梱包時において前記開口部内に収容された部品の飛び出しを防止する状態との間で開閉される脚部を設けた」ことについて検討すると、 脚部は、「フレームより側方へ延出した展開状態」と「開口部に配置されて梱包時において前記開口部内に収容された部品の飛び出しを防止する状態」との間で開閉されることから、脚部が「開口部に配置されて梱包時において前記開口部内に収容された部品の飛び出しを防止する状態」とは、「脚部が開口部に配置されて梱包時において前記開口部内に収容された部品の飛び出しを防止する閉じた状態」であると認められ、 そして、「脚部が開口部に配置されて梱包時において前記開口部内に収容された部品の飛び出しを防止する閉じた状態」とは、上記本件特許発明1における検討と同様に、フレーム底面の開口部内に収容される物品が、その大きさ及び形状にかかわらず、不用意な飛び出しを防止されるように上記開口部が完全に閉じた状態を意味するものと解するのが相当である。 それに対し、イ号物件の構成eは、左右の脚部2、2が後退した位置に移動した状態では、開口が残存している状態であることから、開口部が完全に閉じた状態ではない。 以上のことから、イ号物件は、本件特許発明2の構成要件Gを充足しているということはできない。 6.本件特許発明3及び4について 本件特許発明3及び4は、いずれも本件特許発明1または2を直接的あるいは間接的に引用するものであることから、本件特許発明1の構成要件Eまたは本件特許発明2の構成要件Gを含むものである。 よって、イ号物件は、本件特許発明3及び4においても構成要件Eまたは構成要件Gを充足しているということはできない。 7.むすび 以上のとおり、イ号物件の構成は、本件特許発明1ないし4の構成要件を充足しないから、イ号物件は、本件特許発明1ないし4の技術的範囲に属しない。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2010-02-18 |
出願番号 | 特願2002-338918(P2002-338918) |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZB
(B65H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 島田 信一、木村 立人 |
特許庁審判長 |
鳥居 稔 |
特許庁審判官 |
鈴木 由紀夫 佐野 健治 |
登録日 | 2007-01-26 |
登録番号 | 特許第3908155号(P3908155) |
発明の名称 | ホースリール |
代理人 | 土橋 皓 |