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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1213297
審判番号 不服2007-18741  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-05 
確定日 2010-03-11 
事件の表示 特願2003-377585「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月 2日出願公開、特開2005-137609〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

特許出願 平成15年11月6日(特願2002-335226(出願日:平成14年11月19日)に基づく国内優先権主張出願である特願2003-376946(出願日:平成15年11月6日)の分割出願)
審査請求 平成15年11月6日
拒絶理由 平成19年1月10日
手続補正 平成19年3月13日
拒絶査定 平成19年5月29日
審判請求 平成19年7月5日
手続補正 平成19年7月25日

第2 補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成19年7月25日付の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1.本件補正前後の請求項の記載

本件補正前(平成19年3月13日付の手続補正書)の請求項1と、本件補正後(平成19年7月25日付の手続補正書)の請求項1は、それぞれ次のとおりである。

[本件補正前の請求項1]
「複数の役から内部当選役を決定する内部当選役決定手段と、
該内部当選役決定手段の決定結果に基づいて遊技結果を表示する遊技結果表示手段と、
前記内部当選役決定手段により特定の役が内部当選役として決定されたことに基づいて前記遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合に、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段とを備えた遊技機において、
前記遊技結果表示手段は、第1表示手段と、正面側から見て該第1表示手段の表示領域より手前側に設けられた第2表示手段としての液晶表示装置とを含んで構成され、
前記第1表示手段は、複数の図柄を可変表示及び停止表示可能な複数の図柄表示部を含んで構成され、
前記液晶表示装置は、前記図柄表示部の表示を透過して表示可能な図柄表示領域を前記複数の図柄表示部それぞれに対応させて設け、これら複数の図柄表示領域それぞれの周囲に窓枠表示領域を設け、前記特定の役が前記内部当選役として決定されているか否かに基づいて前記図柄の停止表示と略同時期に前記窓枠表示領域の表示態様を変化させ、この変化が行われる場合に、前記図柄表示領域では前記図柄表示部の図柄を遮蔽表示するように低い透過率として前記複数の図柄表示領域の光透過率を変化させることを特徴とする遊技機。」

[本件補正後の請求項1]
「複数の役から内部当選役を決定する内部当選役決定手段と、
該内部当選役決定手段の決定結果に基づいて遊技結果を表示する遊技結果表示手段と、
前記内部当選役決定手段により特定の役が内部当選役として決定されたことに基づいて前記遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合に、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段とを備えた遊技機において、
前記遊技結果表示手段は、第1表示手段と、正面側から見て該第1表示手段の表示領域より手前側に設けられた第2表示手段としての液晶表示装置とを含んで構成され、
前記第1表示手段は、複数の図柄を可変表示及び停止表示可能な複数の図柄のそれぞれを裏側から照明する、前記液晶表示装置を駆動させる回路とは異なる駆動回路により駆動される照明手段を備えた複数の図柄表示部を含んで構成され、
前記液晶表示装置は、前記図柄表示部の表示を透過して表示可能な図柄表示領域を前記複数の図柄表示部それぞれに対応させて設け、これら複数の図柄表示領域それぞれの周囲に窓枠表示領域を設け、前記特定の役が前記内部当選役として決定されているか否かに基づいて前記図柄の停止表示と略同時期に前記窓枠表示領域の表示態様を変化させ、この変化が行われる場合に、前記図柄表示領域では前記図柄表示部の図柄を前記照明手段が照明しないようにすることで遮蔽表示するように低い透過率として前記複数の図柄表示領域の光透過率を変化させることを特徴とする遊技機。」

2.本件補正の検討

本件補正は、特許請求の範囲を補正することを含んでおり、請求項1については具体的には以下の点で変更するものである。
(a)「複数の図柄表示部」について「複数の図柄のそれぞれを裏側から照明する、前記液晶表示装置を駆動させる回路とは異なる駆動回路により駆動される照明手段を備えた」という点を限定
(b)「遮蔽表示」について「前記照明手段が照明しないようにすることで」という点を限定

そして、上記いずれの補正事項も、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められるから、次に本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)について独立特許要件の判断を行う。

3.引用例

原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-350805号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。

【請求項1】
複数の図柄表示部に夫々図柄をスクロール表示可能な図柄表示手段と、これら図柄表示部とその周囲部の前面側に配設された透明な前面パネルとを備えたスロットマシンにおいて、
前記前面パネルの背面または背面近傍に、複数行複数列のドットを介してドットパターンで表示可能なマトリクス表示部を備えた光透過性のある情報表示パネルを設けたことを特徴とするスロットマシン。
【0021】
前記各回転リール5?7の外周面には、「7」、「BAR 」、「スイカ」、「プラム」、「ベル」・・・などの複数種類の21個の図柄が所定間隔おきに1列状に印刷されている。回転リール5?7及びその外周面の複数の図柄、リール駆動モータ51?53などが図柄表示手段に相当し、各回転リール5?7のうちの前端部分の3つの図柄(図柄表示窓3a?3cから見える3つの図柄)を表示する部分が各図柄表示部5a?7aである。ここで、入賞ラインは、後述の情報表示パネル4に表示される。LED表示ランプや2桁の7セグメント数字を表示する7セグメント型表示器などは設けられておらず、LED表示ランプの代わりの表示と2桁の7セグメント数字の表示は、情報表示パネル4を介して表示される。
【0027】
次に、このスロットマシン1の制御系について説明する。図5のブロック図に示すように、制御装置35は、CPU36とROM37とRAM38とを含むマイクロコンピュータ、入力インターフェイス39、出力インターフェイス40、駆動回路41?45などで構成されている。入力インターフェイス39には、メダル投入センサ50、ベットボタン11に連動して作動するベットスイッチ11a、スタートレバー13に連動されたスタートスイッチ13a、ストップボタン14?16に夫々連動されたストップスイッチ14a?16a、精算ボタン12に連動された精算スイッチ12aなど接続されている。
【0031】
乱数抽選手段61は、スタートスイッチ13aからの信号と乱数発生手段60で発生させた乱数に基づいて抽選を行なう。抽選結果判定手段62は、乱数抽選手段61における抽選結果を判定し、入賞を示唆するか、ビッグボーナスへの移行を示唆するか、或いはハズレを示唆するか否かの判定を行なう。停止図柄選択手段63は、抽選結果判定手段62における判定結果に基づいて回転リール5?7の停止時に図柄表示窓3a?3cに停止表示する図柄の組合せを選択する。
【0032】
例えば、「ダイヤ、ダイヤ、ダイヤ」、「スイカ、スイカ、スイカ」、「チェリー、─、─」(左端の回転リール5に「チェリー」の図柄を停止表示させ、他の回転リール6?7に任意の図柄を停止表示させる)等の図柄の組合わせを選択する。ビッグボーナスへの移行を示唆する場合は、例えば「7、7、7」の図柄の組合せを選択する。レギュラーボーナスへの移行を示唆する場合は、例えば「BAR 、BAR 、BAR 」の図柄の組合せを選択する。このレギュラーボーナスは、通常遊技と比較して遊技者がより多くのメダルを獲得できるようなゲームを、所定条件が達成されるまで行なうことが可能なゲーム態様である。
【0033】
ビッグボーナスは、レギュラーボーナスを所定条件が達成されるまで行なうことが可能なゲーム態様であり、レギュラーボーナスを複数回行なうことにより、より一層多くのメダルを獲得することが可能となる。
図柄停止制御手段64は、停止図柄選択手段63で選択された図柄の組合せと、ストップスイッチ14a?16aからのストップ信号に基づいて、各リール駆動モータ51?53の制御を行なって、図柄表示窓3a?3c内に停止表示される図柄の組合せが入賞態様或いはハズレの態様となるように、回転リール5?7を停止させるものである。
【0038】
更に、3枚目のメダルを投入したとき、図12に示すように3メダル用の入賞ラインL4,L5が追加して、例えば4ドットの線幅で強調して太く表示される。次に、スタートレバー13を操作すると、リール駆動モータ51?53が同時に駆動され、図13に示すように回転リール5?7が同時に所定回転方向に回転する。尚、図柄表示部5a?7aにおいて、下向きの長い矢印はリールの回転状態を示す。このとき、入賞ラインL1?L5の線幅が例えば2ドットに縮小すれば、入賞ラインL1?L5の表示コントラストが薄く(細い点線にて図示)なり、図柄表示部5a?7aを移動する図柄等の下地を見易くなる。
【0043】
このように、前面パネル2の背面近傍に、3つの図柄表示部5a?7aよりも前方に、中パネル3の前面近傍に光透過性のある情報表示パネル4を設け、その情報表示パネル4に発光可能な多数行多数列のドットを介してドットパターンで表示可能なマトリクス表示部4aを設けたので、このマトリクス表示部4aに、メダル投入で有効化された入賞ラインL1?L5を表示させたり、種々のアニメーションA1,A2や説明情報やメッセージ、リーチマークM5や大当たりマークM7などを表示させることができ、ゲームを面白くし盛り上げることができ、スロットマシン1の性能を高めることができる。
また、マトリクス表示部4aには、前記の種々の情報以外にも、予め設定した絵図や文字列や線画などの情報をドットパターンで表示可能であるので、汎用性と自由度に優れる。
【0044】
しかも、情報表示パネル4は光透過性を有するので、情報表示パネル4により表示が行われていても、この情報表示パネル4を通して、図柄表示部5a?7aの図柄や中パネル3の前面に印されたその他の絵や文字などの下地が見えなくなることもなく、情報表示パネル4による表示情報と下地の情報とを重ね合わせて見ることができる。そして、マトリクス表示部4aに必要な情報だけを表示できるので、遊技者による表示情報の確認が簡単化する。更に、情報表示パネル4のマトリクス表示部4aに、中パネル3に設けていたLED形の表示ランプに代わるランプマークM1?M3,M1aを表示するため、複数のLED表示ランプを省略して構成を簡単化することができる。

上記によれば「各回転リール5?7のうちの前端部分の3つの図柄(図柄表示窓3a?3cから見える3つの図柄)を表示する部分が各図柄表示部5a?7aである」(段落【0021】)とあるから、段落【0031】における「図柄表示窓3a?3cに停止表示する図柄」、段落【0033】における「図柄表示窓3a?3c内に停止表示する図柄」とは、いずれも「図柄表示部5a?7aに停止表示する図柄」と言い換えることができる。
したがって、引用文献1における記載事項及び図面を総合的に勘案すれば、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「各回転リール5?7の外周面には複数種類の21個の図柄が所定間隔おきに1列状に印刷されており、複数の図柄表示部5a?7aに夫々図柄をスクロール表示可能な回転リール5?7及びその外周面の複数の図柄、リール駆動モータ51?53からなる図柄表示手段と、図柄表示部とその周囲部の前面側に配設された透明な前面パネル2とを備えたスロットマシンにおいて、
乱数抽選手段61は、スタートレバー13に連動されたスタートスイッチ13aからの信号と乱数発生手段60で発生させた乱数に基づいて抽選を行ない、抽選結果判定手段62は、乱数抽選手段61における抽選結果を判定し、入賞或いはハズレを示唆するか否かの判定を行ない、停止図柄選択手段63は、抽選結果判定手段62における判定結果に基づいて回転リール5?7の停止時に図柄表示部5a?7aに停止表示する図柄の組合せを選択し、
スタートレバー13を操作すると、リール駆動モータ51?53が同時に駆動され、回転リール5?7が同時に所定回転方向に回転し、
図柄停止制御手段64は、停止図柄選択手段63で選択された図柄の組合せと、ストップスイッチ14a?16aからのストップ信号に基づいて、各リール駆動モータ51?53の制御を行なって、図柄表示部5a?7aに停止表示される図柄の組合せが入賞態様或いはハズレの態様となるように、回転リール5?7を停止させ、
抽選結果判定手段62がビッグボーナスへの移行を示唆する場合は「7、7、7」の図柄の組合せを選択し、レギュラーボーナスへの移行を示唆する場合は「BAR 、BAR 、BAR 」の図柄の組合せを選択し、
レギュラーボーナスは、通常遊技と比較して遊技者がより多くのメダルを獲得できるようなゲームを、所定条件が達成されるまで行なうことが可能なゲーム態様であり、またビッグボーナスは、レギュラーボーナスを所定条件が達成されるまで行なうことが可能なゲーム態様であり、レギュラーボーナスを複数回行なうことにより、より一層多くのメダルを獲得することが可能となり、
前面パネル2の背面または背面近傍に、3つの図柄表示部5a?7aよりも前方に、複数行複数列のドットを介してドットパターンで種々の情報を表示可能なマトリクス表示部4aを備えた光透過性のある情報表示パネル4を設け、情報表示パネル4は光透過性を有するので、情報表示パネル4により表示が行われていても、情報表示パネル4を通して図柄表示部5a?7aの図柄が見えなくなることがなく、前記の種々の情報以外にも、予め設定した絵図や文字列や線画などの情報をドットパターンで表示可能であるので、汎用性と自由度に優れるスロットマシン。」

4.対比

ここで、本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「スロットマシン」は本願補正発明の「遊技機」に相当し、以下同様に「図柄表示手段」は「第1表示手段」に、「情報表示パネル4」は「第2表示手段」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「乱数抽選手段61」、「抽選結果判定手段62」及び「停止図柄選択手段63」は、乱数に基づいて抽選を行ない、入賞或いはハズレを示唆するか否かの判定を行ない、当該判定結果に基づいて図柄の組合せを選択しているから、本願補正発明の「複数の役から内部当選役を決定する内部当選役決定手段」に相当すると判断できる。
引用発明における「図柄停止制御手段64」は、上記で選択された図柄の組合せに基づいて、停止表示される図柄の組合せが入賞態様或いはハズレの態様となるように制御しているから、本願補正発明の「内部当選役決定手段の決定結果に基づいて遊技結果を表示する遊技結果表示手段」に相当すると判断することができる。
引用発明において「ビッグボーナスへの移行を示唆」及び「レギュラーボーナスへの移行を示唆」とは、本願補正発明における「特定の役が内部当選役として決定」に相当するものであり、そして「7、7、7」又は「BAR 、BAR 、BAR 」の図柄の組合せが停止表示された場合にビッグボーナス又はレギュラーボーナスへ移行するものであると判断できるから、ここで「「7、7、7」の図柄の組合せ」及び「「BAR 、BAR 、BAR 」の図柄の組合せ」は、本願補正発明の「特定の遊技結果」に相当し、また「ビッグボーナスへの移行」や「レギュラーボーナスへの移行」とは、本願補正発明の「遊技者に有利な利益状態の発生」に相当する。よって、引用発明も本願補正発明における「前記内部当選役決定手段により特定の役が内部当選役として決定されたことに基づいて前記遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合に、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段」を具備するものである。
さらに、引用発明においては「情報表示パネル4」は「前面パネル2の背面または背面近傍」かつ「3つの図柄表示部5a?7aよりも前方」に設けられているから、本願補正発明の「正面側から見て該第1表示手段の表示領域より手前側に設けられた」点を満たしている。
引用発明において「図柄表示手段」は「複数の図柄表示部5a?7aに夫々図柄をスクロール表示可能」なものであって、また「各リール駆動モータ51?53の制御を行なって、図柄表示部5a?7aに停止表示される図柄の組合せが入賞態様或いはハズレの態様となるように、回転リール5?7を停止させ」るものであるから、引用発明の「図柄表示部5a?7a」は本願補正発明の「複数の図柄を可変表示及び停止表示可能」である点を満たしている。
引用発明の「情報表示パネル4」は「光透過性を有するので、情報表示パネル4により表示が行われていても、情報表示パネル4を通して図柄表示部5a?7aの図柄が見えなくなることがない」のであるから、本願補正発明の「前記図柄表示部の表示を透過して表示可能」である点を満たし、また「情報表示パネル4を通して図柄表示部5a?7aの図柄が見え」る領域とは、本願補正発明の「前記複数の図柄表示部それぞれに対応させて設け」られた「図柄表示領域」に他ならない。さらに引用発明においては情報表示パネル4が「種々の情報を表示可能」であるから、引用発明と本願補正発明とは「第2表示手段はその表示態様を変化させる」点で共通している。

したがって、本願補正発明と引用発明は、
「複数の役から内部当選役を決定する内部当選役決定手段と、
該内部当選役決定手段の決定結果に基づいて遊技結果を表示する遊技結果表示手段と、
前記内部当選役決定手段により特定の役が内部当選役として決定されたことに基づいて前記遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合に、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段とを備えた遊技機において、
前記遊技結果表示手段は、第1表示手段と、正面側から見て該第1表示手段の表示領域より手前側に設けられた第2表示手段とを含んで構成され、
前記第1表示手段は、複数の図柄を可変表示及び停止表示可能な複数の図柄表示部を含んで構成され、
前記第2表示手段は、前記図柄表示部の表示を透過して表示可能な図柄表示領域を前記複数の図柄表示部それぞれに対応させて設け、前記第2表示手段はその表示態様を変化させる遊技機。」
である点で一致し、以下の各点で相違している。

[相違点1]
上記一致点における「第2表示手段」について、本願補正発明は「液晶表示装置」であるのに対して、引用発明にはかかる構成がない点。

[相違点2]
本願補正発明は「複数の図柄のそれぞれを裏側から照明する、前記液晶表示装置を駆動させる回路とは異なる駆動回路により駆動される照明手段」を備えているのに対して、引用発明では不明である点。

[相違点3]
本願補正発明は「複数の図柄表示領域それぞれの周囲に窓枠表示領域を設け」ているのに対して、引用発明においては不明である点。

[相違点4]
上記一致点における「第2表示手段はその表示態様を変化させる」点について、本願補正発明においては「前記特定の役が前記内部当選役として決定されているか否かに基づいて前記図柄の停止表示と略同時期に前記窓枠表示領域」において行われるのに対して、引用発明においてはかかる構成については不明である点。

[相違点5]
上記一致点における「第2表示手段はその表示態様を変化させる」点について、本願補正発明においては、相違点4にかかる表示の変化が行われる場合に、「前記図柄表示領域では前記図柄表示部の図柄を前記照明手段が照明しないようにすることで遮蔽表示するように低い透過率として前記複数の図柄表示領域の光透過率を変化させる」ものであるのに対して、引用発明においてはかかる構成については不明である点。

5.相違点の判断

上記相違点について検討する。

[相違点1について]
リールの前面側に液晶表示装置を設ける点は、例えば特開平7-124290号公報の液晶パネル40や特開2001-252394号公報の透過型液晶表示器24に示されるように周知技術(以下「周知技術1」という。)に過ぎず、引用発明の情報表示パネル4として液晶表示装置を採用することは、当業者にとって容易に設計できたことに過ぎない。
よって、本願補正発明の相違点1にかかる構成は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者にとって容易に想到できたことである。

[相違点2について]
いわゆるバックライトを備える点は 例えば後記の周知技術4において示されるように周知のことに過ぎない。また、その駆動回路を表示手段の駆動回路と別とすることは常識的事項に過ぎない。
よって、本願補正発明の相違点2にかかる構成は、引用発明及び周知技術4に基づいて当業者にとって容易に想到できたことである。

[相違点3について]
相違点3における「これら複数の図柄表示領域それぞれの周囲に窓枠表示領域を設け」ている点について、発明の詳細な説明を参照すれば、「図柄表示領域の周囲に窓枠表示領域(窓枠表示領域22L,22C,22R)を設けている。すなわち、液晶表示装置31に、窓枠表示領域を表示しているので、前述の表示窓のような開口を設けているだけの遊技機に較べ、遊技性が増す。また窓枠表示領域を画像表示している場合は、固定表示(例えば、前述の表示窓の枠を予め(製造工程等)装飾を施して表示)されたものと違い、例えば画像による表示であるため、色褪せが起こることも無く、また、その色彩、形状等を容易に設定できて好適である。」(段落【0060】)とあるように、窓枠表示領域としての専用の構造を設けているのではなく、単にそのような表示を表示手段上で行なっているだけと解される。とすれば、窓枠表示領域を「設ける」ことは、窓枠を示す表示を行う領域を「定める」ことに過ぎないものであると判断できる。
一方、特開平6-246040号公報における目印表示枠78I,80や特開平6-246041号公報における目印表示枠80、特開平7-236732号公報(図3,4を参照すれば、図柄の可変表示位置を枠状に囲むような表示が行われている点が図示されている。)にあるように、表示手段において窓枠を示す表示を行う点は周知技術(以下「周知技術2」という。)に過ぎない。
そして引用発明においても、図柄表示部5a?7aの周囲部分が「窓枠」の領域に該当するが、引用発明も「前記の種々の情報以外にも、予め設定した絵図や文字列や線画などの情報をドットパターンで表示可能であるので、汎用性と自由度に優れる」ものであるから、引用発明の情報表示パネル4における表示は自由に選択設計できることに過ぎない。そして周知技術2にあるように、窓枠表示自体は周知の表示態様であって、引用発明の情報表示パネル4において、窓枠に該当する領域において窓枠表示を行うこと、すなわち窓枠表示を行う領域を定めることに何ら阻害要因はなく、当業者にとって容易に設計できたことである。
したがって、本願補正発明の相違点3にかかる構成は、引用発明及び周知技術2に基づいて当業者にとって容易に想到できたことである。

[相違点4について]
ボーナスを含む内部当選結果に基づいて、停止操作に連動して演出画像を変化させる点は、特開2000-140198号公報(例えば段落【0220】?【0223】等)や特開2001-321486号公報(例えば図38,40,56等参照)にあるように周知技術(以下「周知技術3」という。)に過ぎない。
そして、[相違点3について]で検討したように引用発明の情報表示パネル4における表示は自由に選択設計できることに過ぎないことであって、周知技術3の採用にあたり、画像表示の変化をどこでどのように行うかも当業者の設計事項であるから、窓枠に該当する領域でこれを行うことも当業者にとって容易である。

[相違点5について]
ボーナスを含む内部当選結果に基づいて、停止操作に連動していわゆるバックライトを消灯させる演出も、特開2000-140198号公報(【要約】欄参照)、パチスロ機「サンダーV」(例えば、パチスロ必勝ガイド1998年4月号(白夜書房、1998年4月1日発売日)6ページの下部に、「予告機能テーブルの見方」として「■消灯…「×」は消灯無し、「数字」は消灯するリールの数です。例えば、「2」の場合は「第1・第2停止リールが消灯」と言う意味で、リールを停止させた順に消灯していきます。」と記載され、6?7ページには「BIG成立ゲーム」、「REG成立ゲーム」、「ボーナスフラグ成立後ハズレ」、「ボーナスフラグ成立後」の各小役成立時、のそれぞれにおける消灯演出の選択率が記載されている。)にあるように周知技術(以下「周知技術4」という。)に過ぎない。
相違点4にかかる表示の変化とは停止操作に連動して行われるものであるが、周知技術4も停止操作に連動して行われるものであるから時期的な差はない。そして、内部当選の報知演出を複数の手段を用いて行うことも慣用的になされていることであるから、相違点4にかかる表示の変化にあわせて、周知技術4に基づく演出についても同時に報知演出として用いることに何ら阻害要因はない。
なお、周知技術4の採用の結果、リールの背後からの光がなくなることとなり、その結果図柄表示領域が低い光透過率(すなわち遮蔽表示)となることは当然の帰結に過ぎない。
したがって、本願補正発明の相違点4にかかる構成は、引用発明及び周知技術4に基づき、当業者にとって容易に想到できたことである。

[本願補正発明の独立特許要件の判断]
よって、引用発明及び周知技術1?4に基づいて、本願補正発明の上記相違点にかかる構成とすることは、当業者にとって容易に想到できることである。
また、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術1?4から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は引用発明及び周知技術1?4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

6.補正の却下の決定のむすび

よって、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反しており、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断

1.本願発明の認定

本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1にかかる発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1.に[本件補正前の請求項1]として記載されたとおりのものである。

2.引用例

引用文献1及びその記載事項は、上記第2[理由]3.に記載したとおりのものである。

3.対比・判断

上記第2[理由]2.及び5.において検討したように、本願発明に限定的減縮を加えたと認められる本願補正発明が、引用発明及び周知技術1?4に基づいて、当業者が容易に想到できたものである。
とすれば、本願補正発明から限定を解除した本願発明も同様に、引用発明及び周知技術1?4に基づいて、当業者が容易に想到できたものである。

したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第4 むすび

以上のとおり、本件補正は却下され、そして、本願発明は原査定の拒絶の理由に基づいて特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-22 
結審通知日 2010-01-12 
審決日 2010-01-25 
出願番号 特願2003-377585(P2003-377585)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 池谷 香次郎
森 雅之
発明の名称 遊技機  
代理人 藤田 和子  

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