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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1213984
審判番号 不服2008-29735  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-20 
確定日 2010-03-25 
事件の表示 特願2002-247737「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月18日出願公開、特開2004- 81611〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年8月27日の出願であって、平成20年7月15日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成20年9月22日付けで手続補正がされ、平成20年10月10日付けで拒絶査定がされ、これに対し平成20年11月20日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に記載された発明は、平成20年9月22日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「特定大当り、通常大当りまたは外れであることを報知するための特別図柄につき、始動口への入賞に基づいて、各種設定時間に亘る変動表示の後に確定表示をする図柄表示部と、
特定大当りまたは通常大当りに係る確定表示に基づいて、入賞が容易であるように開成する特定入賞口と、
特定入賞口への入賞に基づき所定数の遊技球を払出す払出部と、
各部を制御する制御部と
を備え、
制御部において、
抽選により、各確定表示を、特定大当り、通常大当りまたは外れと定める当り判定処理と、
特定大当りに係る確定表示をすることに対応して、次回の特定大当りまたは通常大当りとなる確率を増加する確率変動状態を生起するように設定する確率変動設定処理と、
確率変動状態において通常大当りに係る確定表示をしたことに対応して、その後における変動表示の設定時間の平均値が、特定回数までの変動表示において短縮される変動時間短縮状態を生起するように設定する短縮設定処理と
を行うと共に、
特定回数に亘る変動時間短縮状態または特別回数に亘る変動時間短縮状態において通常大当りに係る確定表示をしたことに対応して、再度特別回数までにおいて変動表示の設定時間の平均値が短縮される変動時間短縮状態を生起するように設定する再短縮設定処理を行い、
確率変動状態でなくかつ変動時間短縮状態でない状態または所定回数に亘る変動時間短縮状態において通常大当りに係る確定表示をしたことに対応して、変動表示の設定時間の平均値が、特別回数より少ない所定回数において短縮される変動時間短縮状態を生起するように設定する別短縮設定処理を行う
ことを特徴とするパチンコ機。」(以下、「本願発明」という。)

3.引用発明
(1)引用刊行物およびそこにおける記載事項の認定
原査定の拒絶の理由に引用されたパチンコ必勝ガイド2002・9・12号,株式会社白夜書房,2002年8月12日独立行政法人工業所有権情報・研修館受入,第14巻21号(通巻373号),3?5頁(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、上記引用文献の表紙には「受入 平成 14.8.12 情報館」との印が押されており、また、パチンコ必勝ガイド2002・9・1号34頁には「パチンコ必勝ガイド9月12日号 8月12日(月)発売!」と記載されており、引用文献が本願出願前に公知になったことは明らかである。

・記載事項1
4?5頁には、「21世紀基準デジパチパーフェクトガイド」と題して、「新内規のルールに則って、開発することが可能となったスペックを持つ」デジパチ機について紹介した記事が記載されている。
・記載事項2
4頁中央部には、「今回の内規改定による変更点は、大きく分けて上に挙げた3つ。なかでも一番の注目は、「大当り終了後に100回転の時間短縮機能の搭載がOKになった」こと。この変更により、大当り終了後に発生する時短中に、確変を引き戻して大連チャンといったことも可能になったのだ。」と記載されている。
・記載事項3
5頁上部には、「今後主流になると思われるのは、CRFウォンテッドFXに代表される、「フルスペックタイプ」。このタイプは、2分の1で確変に突入&継続し、通常大当り後ならびに確変終了後、100回転の時短に突入するのが最大の特徴。つまり・・・時短中に再度大当りを引き戻すチャンスが残るのだ。」と記載されている。
・記載事項4
5頁上部には「通常大当り終了後の全てに時短がつくフルスペックタイプ」とのタイトルの下に、フルスペックタイプの遊技フローが記載されている。
当該遊技フローは以下のフローを含むものである。なお、「通常大当り」及び「時短100回転ゾーン突入!!」は、それぞれ2箇所に記載されているので、上部に記載されているものを「通常大当り」(A)、「時短100回転ゾーン突入!!」(B)とし、下部に記載されているものを「通常大当り」(C)、「時短100回転ゾーン突入!!」(D)とし、区別することとする。また、最初に「大当り発生!!」となる前の状態は「通常状態」であること、「確変大当り」後次回の「大当り」となるまでの間はいわゆる「確率変動状態」であることは自明である。
(1)「通常状態」→「確変大当り」→「確率変動状態」
(2)「確率変動状態」→「通常大当り」(C)→「時短100回転ゾーン突入!!」(D)
(3)「時短100回転ゾーン突入!!」(D)→「通常大当り」(A)→「時短100回転ゾーン突入!!」(B)→「通常大当り」(A)→「時短100回転ゾーン突入!!」(B)
(4)「通常状態」→「通常大当り」(A)→「時短100回転ゾーン突入!!」(B)→「通常大当り」(A)→「時短100回転ゾーン突入!!」(B)

(2)引用発明の認定
引用文献は、上記記載事項1にあるように、パチンコ機の一種であるデジパチ機に関する。
デジパチ機に関する常識を踏まえると、引用文献に記載されたデジパチ機は、確変大当り、通常大当りまたは外れであることを報知するための特別図柄について、始動口への入賞に基づいて、各種設定時間に亘る変動表示の後に確定表示をする図柄表示部と、確変大当りまたは通常大当りに係る確定表示に基づいて、入賞が容易であるように開成する大入賞口と、大入賞口への入賞に基づき所定数の遊技球を払出す払出部と、各部を制御する制御部とを備え、制御部において、抽選により、各確定表示を、確変大当り、通常大当りまたは外れと定める当り判定処理と遊技フローの制御を行うという構成を当然具備するものである。
そうすると、引用文献には次の発明が実質的に記載されていると認められる。
「確変大当り、通常大当りまたは外れであることを報知するための特別図柄について、始動口への入賞に基づいて、各種設定時間に亘る変動表示の後に確定表示をする図柄表示部と、
確変大当りまたは通常大当りに係る確定表示に基づいて、入賞が容易であるように開成する大入賞口と、
大入賞口への入賞に基づき所定数の遊技球を払出す払出部と、
各部を制御する制御部と
を備え、
制御部において、抽選により、各確定表示を、確変大当り、通常大当りまたは外れと定める当り判定処理と
フロー(1):「通常状態」→「確変大当り」→「確率変動状態」
フロー(2):「確率変動状態」→「通常大当り」(C)→「時短100回転ゾーン突入!!」(D)
フロー(3):「時短100回転ゾーン突入!!」(D)→「通常大当り」(A)→「時短100回転ゾーン突入!!」(B)→「通常大当り」(A)→「時短100回転ゾーン突入!!」(B)
フロー(4):「通常状態」→「通常大当り」(A)→「時短100回転ゾーン突入!!」(B)→「通常大当り」(A)→「時短100回転ゾーン突入!!」(B)
を含む遊技フローの制御を行うデジパチ機。」(以下、「引用発明」という。)

4.対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「確変大当り」、「大入賞口」、「デジパチ機」は、本願発明の「特定大当り」、「特定入賞口」、「パチンコ機」に相当する。
そして、引用発明について、以下のことがいえる。
(1)「フロー(1):「通常状態」→「確変大当り」→「確率変動状態」」について
確変大当りになる際に、確変大当りに係る確定表示をすることは自明であり、確変大当り後に生起する確率変動状態においては次回の確変大当りまたは通常大当りとなる確率が増加するように制御部において制御されることは自明である。
そうすると、引用発明は、本願発明の「(制御部において、)特定大当りに係る確定表示をすることに対応して、次回の特定大当りまたは通常大当りとなる確率を増加する確率変動状態を生起するように設定する確率変動処理(を行う)」に相当する構成を実質的に具備するものである。
(2)「時短100回転ゾーン突入!!」について
当該記載の時短は、時間短縮を略したものであって、変動表示の設定時間の平均値を通常状態に比較して短縮する状態であることは自明であり、本願補正発明の「変動時間短縮状態」に相当するものである。また、「時短100回転」は、100回までの変動表示において時間短縮状態となることを意味することは明らかである。
(3)「フロー(2):「確率変動状態」→「通常大当り」(C)→「時短100回転ゾーン突入!!」(D)」について
当該フローは、確率変動状態において通常大当りに係る確定表示がされて通常大当りとなり、その終了後に100回までの変動表示において時間短縮状態が生起されることを意味しており、このような時間短縮状態を生起するように設定する処理は短縮設定処理ということができ、当該処理は制御部が行うことが当然である。
そして、引用発明の「100回」と本願発明の「特定回数」は、「時間短縮の上限回数」という点では共通しており、この上限回数を後述する他の上限回数と区別して「第1の上限回数」と称すると、引用発明と本願発明とは「(制御部において、)確率変動状態において通常大当りに係る確定表示をしたことに対応して、その後における変動表示の設定時間の平均値が、第1の上限回数までの変動表示において短縮される変動時間短縮状態を生起するように設定する短縮設定処理(を行う)」という点において共通しているということができる。
(4)「フロー(3):「時短100回転ゾーン突入!!」(D)→「通常大当り」(A)→「時短100回転ゾーン突入!!」(B)→「通常大当り」(A)→「時短100回転ゾーン突入!!」(B)」について
当該フローは、確率変動状態終了後(「通常大当り」(C)終了後)の時間短縮状態すなわち「第1の上限回数に亘る時間短縮状態」において通常大当りした場合に、大当りの終了後に再度100回までの時間短縮状態になること、更に、その再度の時間短縮状態において通常大当りした場合に、大当り終了後に再度100回までの時間短縮状態になることを意味している。また、このような再度の時間短縮状態を生起するように設定する処理は再短縮設定処理ということができ、当該処理は制御部が行うことが当然である。
一方、本願発明は、確率変動状態終了後(「通常大当り」終了後)の変動時間短縮状態である、特定回数に亘る変動時間短縮状態において通常大当りに係る確定表示をしたことに対応して、再度特別回数までにおいて変動時間短縮状態となり、更に、特別回数に亘る変動時間短縮状態において通常大当りに係る確定表示をしたことに対応して、再度特別回数までにおいて変動時間短縮状態となるものである。
そして、引用発明の「100回」と本願発明の「特別回数」は、「時間短縮状態の上限回数」という点では共通しており、この上限回数を「第2の上限回数」と称すると、引用発明と本願発明とは「(制御部において、)第1の上限回数に亘る変動時間短縮状態または第2の上限回数に亘る変動時間短縮状態において通常大当りに係る確定表示をしたことに対応して、再度第2の上限回数までにおいて変動表示の設定時間の平均値が短縮される変動時間短縮状態を生起するように設定する再短縮設定処理(を行う)」という点において共通しているということができる。
(5)「フロー(4):「通常状態」→「通常大当り」(A)→「時短100回転ゾーン突入!!」(B)→「通常大当り」(A)→「時短100回転ゾーン突入!!」(B)」について
当該フローにおいて、「通常状態」は確率変動状態でも時間短縮状態でもない状態であり、通常状態において通常大当りした場合に、大当りの終了後に100回までの時間短縮状態になること、更に、その時間短縮状態において通常大当たりした場合に、大当り終了後に100回までの時間短縮状態になることを意味している。また、このような時間短縮状態は、(4)で検討したような確率変動状態を経たフローにおける時間短縮状態とは別と解することができるから、これを生起するように設定する処理は別短縮設定処理ということができ、当該処理は制御部が行うことが当然である。
一方、本願発明は、確率変動状態でなくかつ変動時間短縮状態でない状態において通常大当りに係る確定表示をしたことに対応して、所定回数において変動時間短縮状態となり、更に、所定回数に亘る変動時間短縮状態において通常大当りに係る確定表示をしたことに対応して、所定回数において変動時間短縮状態となるものである。
そして、引用発明の「100回」と本願発明の「所定回数」は、「時間短縮状態の上限回数」という点では共通しており、この上限回数を「第3の上限回数」と称すると、引用発明と本願発明とは「(制御部において、)確率変動状態ではなくかつ変動時間短縮状態でない状態または第3の上限回数に亘る変動時間短縮状態において通常大当りに係る確定表示をしたことに対応して、変動表示の設定時間の平均値が、第3の上限回数において短縮される変動時間短縮状態を生起するように設定する別短縮設定処理(を行う)」という点において共通しているということができる。

そうすると、本願発明と引用発明は、
「特定大当り、通常大当りまたは外れであることを報知するための特別図柄につき、始動口への入賞に基づいて、各種設定時間に亘る変動表示の後に確定表示をする図柄表示部と、
特定大当りまたは通常大当りに係る確定表示に基づいて、入賞が容易であるように開成する特定入賞口と、
特定入賞口への入賞に基づき所定数の遊技球を払出す払出部と、
各部を制御する制御部と
を備え、
制御部において、
抽選により、各確定表示を、特定大当り、通常大当りまたは外れと定める当り判定処理と、
特定大当りに係る確定表示をすることに対応して、次回の特定大当りまたは通常大当りとなる確率を増加する確率変動状態を生起するように設定する確率変動処理と、
確率変動状態において通常大当りに係る確定表示をしたことに対応して、その後における変動表示の設定時間の平均値が、第1の上限回数までの変動表示において短縮される変動時間短縮状態を生起するように設定する短縮設定処理と
を行うと共に、
第1の上限回数に亘る変動時間短縮状態または第2の上限回数に亘る変動時間短縮状態において通常大当りに係る確定表示をしたことに対応して、再度第2の上限回数までにおいて変動表示の設定時間の平均値が短縮される変動時間短縮状態を生起するように設定する再短縮設定処理を行い、
確率変動状態ではなくかつ変動時間短縮状態でない状態または第3の上限回数に亘る変動時間短縮状態において通常大当りに係る確定表示をしたことに対応して、変動表示の設定時間の平均値が、第3の上限回数において短縮される変動時間短縮状態を生起するように設定する別短縮設定処理を行う
パチンコ機。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
第1、第2および第3の上限回数が、本願発明では特定回数、特別回数および所定回数であるのに対し、引用発明ではそれぞれ100回である点。
<相違点2>
本願発明では第3の上限回数(所定回数)は第2の上限回数(特定回数)より少ないのに対し、引用発明ではそのような関係はない点。

5.判断
上記相違点1、2について、あわせて検討する。
本願発明では、第1、第2および第3の上限回数について特定回数、特別回数および所定回数と記載しているが、「特定」、「特別」および「所定」自体は、「回数」について格別の技術的意義を付すものではなく、それぞれの「回数」が異なり得るということを意味するものと解するのが至当である。
一方、パチンコ機において、変動時間短縮状態中に再度変動時間短縮状態となる場合に異なる上限回数まで変動時間短縮状態を生起させること、すなわち異なる遊技状態(最初の変動時間短縮状態、再度の変動時間短縮状態)において変動時間短縮状態の上限回数を異なるものとすることは以下の例に示されるように従来周知である。
(周知例1)特開平9-122317号公報(段落0026参照)
(周知例2)特開平9-28878号公報(段落0028参照)
(周知例3)特開2002-66026号公報(図2参照)
そして、変動時間短縮状態は通常状態に比較して遊技者に利益を付与するものであるが、どのような遊技状態においてどの程度の利益を遊技者に付与するかは、遊技の興趣、遊技店の得るべき利益等を考慮して、パチンコ機の設計において適宜決定し得る事項であることは明らかである。
そうすると、異なる遊技状態において変動時間短縮状態の上限回数を異なるものとすることが周知である以上、引用発明において異なる遊技状態(第1の上限回数に亘る時間短縮状態、第2の上限回数に亘る時間短縮状態、第3の上限回数に亘る時間短縮状態)における上限回数を異なり得るものとすることに技術的困難性はなく、それぞれの上限回数を特定回数、特別回数および所定回数と称呼することは人為的決定事項であるから、相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者にとって想到容易である。
また、第3の上限回数が第2の上限回数より多くすべき必然性はなく、どのような遊技状態においてどの程度の利益を遊技者に付与するかが適宜決定し得る事項であることは上述のとおりであって、どちらの回数を少なくするかは適宜決定すればよい事項であるから、相違点2に係る技術事項である、第3の上限回数(所定回数)を第2の上限回数(特定回数)より少なくすることも単なる設計事項に過ぎない。

そして、本願発明の効果は、引用発明、上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用発明、上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6. むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-25 
結審通知日 2010-01-26 
審決日 2010-02-09 
出願番号 特願2002-247737(P2002-247737)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤田 真治  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 吉村 尚
池谷 香次郎
発明の名称 パチンコ機  
代理人 石田 喜樹  
代理人 井上 敬也  
代理人 園田 清隆  
代理人 上田 恭一  

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