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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63G
管理番号 1214154
審判番号 不服2007-14679  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-22 
確定日 2010-04-12 
事件の表示 特願2003- 84746「容易に反対方向に反転出来る様にした遊戯具シーソー」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月18日出願公開、特開2004- 81817〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

平成15年 3月26日 特許出願(優先権主張 平成14年6月24日)
平成18年 6月28日 拒絶理由通知書
平成18年 7月21日 意見書
平成18年 9月26日 拒絶理由通知書
平成18年11月30日 意見書
平成19年 1月23日 拒絶理由通知書
平成19年 3月27日 意見書,手続補正書
平成19年 4月13日 拒絶査定
平成19年 5月22日 本件審判請求
平成21年 5月 8日 拒絶理由通知書(以下、「当審拒絶理由通知書」という。)
平成21年 6月 9日 意見書

2.当審拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由

当審拒絶理由通知書で通知した拒絶理由の概要は以下のとおりである。

1) 本件出願は、明細書及び図面の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2) 本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物:実公昭56-46796号公報

3.特許請求の範囲の請求項1に記載された発明
本件の特許請求の範囲の請求項1は、平成19年3月27日付け手続補正書によって補正され、その記載は以下のとおりである。

「【請求項1】 シーソー板5の重力を反対方向への反転を助ける力として働かせ、また着地時には着地の衝撃を和らげる力として働かせる為に、シーソー板5の重心3と乗った子供の重心2の間で全重心の下方となる位置に支点1を設けた懸垂型となるシーソーで、容易に反転出来、また、着地の衝撃を少なくした遊戯具シーソー。」

4.当審拒絶理由通知書の拒絶理由1)についての検討

当審拒絶理由通知書の拒絶理由1)で指摘した不備は、
「 本件出願の特許請求の範囲の請求項1には、『シーソー板5の重心3と乗った子供の重心2の間で全重心の下方となる位置』との発明特定事項が記載されている。ここで、『子供の重心2』は、子供の体重、人数、姿勢、乗る位置等に応じて変動するものであるから、『乗った子供の重心』の位置が特定できない。また、『全重心』は、『シーソー板5の重心3』と『子供の重心2』とで決まるものであるが、前述のとおり『子供の重心2』が変動し、それに応じて全重心も変動するから、『全重心』の位置も特定できない。したがって、特許を受けようとする発明が明確に特定できない。」
というものである。
これに対し、審判請求人は、平成21年6月9日付け意見書において、「本件出願では、不特定の子供が乗るシーソーであり、乗った子供には大小長短軽重があり、しかも、固形物ではない、生身の子供は動き回るものであり、乗る姿勢によっても重心位置は変わる性質のものであるために、或る程度の想定により決めなければなりません、従って、御認定頂きましたように子供の重心や全重心位置は決めることになると思います。大凡の全重心位置が決まれば、適度の着地の衝撃は残すのが良いと考える為に、支点位置はそれより余裕をみて下であれば良く、この目的に叶うように材質を選定することで本発明のシーソーの実現は可能です。」と主張するので、以下、検討する。
本件出願の特許請求の範囲の請求項1に記載された「子供の重心」が、子供の体重や姿勢等によって変わることは、請求人も前記意見書において認めるところであり、「子供の重心」を明確に特定することはできない。「全重心」も「子供の重心」に応じて決まることから、「全重心」も明確に特定することはできない。してみると、特許請求の範囲の請求項1に記載された発明特定事項である
「シーソー板5の重心3と乗った子供の重心2の間で全重心の下方となる位置に支点1を設けた懸垂型となるシーソー」
を充足する「シーソー」であるかか否かは、想定する「子供の重心」に応じて決まることになるから、特許を受けようとする発明が明確でない。
したがって、明細書及び図面の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとする拒絶理由1)は、依然として解消していない。

4.当審拒絶理由通知書の拒絶理由2)についての検討
4-1 本件発明
上記3.で判断したとおり、本件出願の明細書の特許請求の範囲の記載は不明確であるので、以下のとおり認定し、検討する。
「シーソー板5の重力を反対方向への反転を助ける力として働かせ、また着地時には着地の衝撃を和らげる力として働かせる為に、シーソー板5の重心3と、通常想定されるシーソーの利用形態、即ち、シーソーで遊ぶ子供の平均的な身長・体重、同時に乗る人数、乗った時の姿勢、乗る位置で特定される利用形態における乗った子供の重心2の間で全重心の下方となる位置に支点1を設けた懸垂型となるシーソーで、容易に反転出来、また、着地の衝撃を少なくした遊戯具シーソー。」(以下、「本件発明」という。なお、請求項1の記載に下線部分を追加して認定した。)

4-2 引用発明

刊行物:実公昭56-46796号公報

当審拒絶理由通知書の拒絶理由2)で引用した上記刊行物には、図面と共に以下の事項が記載されている。
(イ)「この考案は、摩擦抵抗をきわめて少なくしてシーソーにおける揺動体の揺動運動を長時間にわたって継続させることを可能とした、シーソー用軸受に関する。
シーソーはわずかの揺動角をきわめてゆるやかに揺動しなければならないため揺動体の揺動運動を長時間にわたって継続させるのに、軸受として滑り軸受を用いては摩擦抵抗が大きくなりすぎて不適当である。ボールベアリングを用いると摩擦抵抗を減らすことができるが、あまりに高価すぎて遊技機用としては適当でない。
この考案は、摩擦抵抗をきわめて小さくして、揺動体の揺動運動を長時間にわたって継続させることができるようにした、シーソー用軸受を安価に提供することを目的とする。」(1頁右欄3-同欄17行)

(ロ)「以下、この考案の実施例を図面を参照しながら説明する。
第1図はこの考案の第1実施例を示す正面図であり、第2図は第1図のII-II断面図である。1,1は一定間隔をおいて配置した支持脚であり、支持脚1,1の上面には平盤2,2を固定している。平盤2,2は、金属、合成樹脂、鉱石などの硬度の高い材質でできており、上面は滑らかになっている。各平盤2,2の上面両端には転動規制体3,3,3,3を取付けている。転動規制体3,3,3,3は硬質材でできていて、棒状、柱状、板状などをしている。そして、転動規制体3,3,3,3の各対は、それぞれ一定間隔をおいて対向させて配置している。
各支持脚1,1の上に円形をした1本の支持軸4をかけ渡して、各支持脚1,1の平盤2,2の上に支持脚4の両端を乗せている。支持脚4の両端は、各転動規制体3,3,3,3の間の平盤2,2上を転動する。なお、転動規制体3,3,3,3の各対の間隔は、支持軸4の軸周の約2分の1程度としておく。支持軸4には、取付体5を介してシーソーの揺動体6を一体に取付けている。
支持軸4の両端面には円弧状をした受球体7,7を取付けている。各支持脚1,1の上面の各最外側に、垂直板8,8をそれぞれ垂直に取付けている。各受球体7,7の上にそれぞれ球体9,9を配置している。球体9,9は、支持軸4の両端面と各垂直板8,8との間にそれぞれ位置しており、ねじれ動きに適切な大きさをした、鋼球などの剛体で形成している。そして、受球体7,7は、支持軸4の転動時にも球体9,9が支持軸4の両端面の位置から外れさせないためにある。なお、受球体7,7は、場合によっては必要ないものである。」(1頁右欄18行-2頁左欄14行)

(ハ)「この考案の構成は以上のとおりであるが、つぎに、第5図及び第6図によりこの考案に係るシーソー用軸受の作動状況を説明する。揺動体6はゆるやかな揺動運動を繰り返すのであるが、このとき取付体5を介して揺動体6と一体に固定された支持軸4は、支持脚1,1の上面に固定した平盤2,2上を、線接触状態で接しながらゆるやかに転って、往復運動をつづけていく。なお、支持軸4の往復運動の範囲は、各対の転動規制体3,3,3,3の間になる(第5図及び第6図がその範囲を示している。)。支持軸4は線接触状態で接しながら転がっていくのであるから、摩擦抵抗はきわめて小さくなり、高能率な揺動運動を行うことができる。
なお、支持軸4は平盤2,2上に乗せられているにすぎないのであるから、外力により左右方向に平行移動しようとするが、その動きは球体9,9が阻止している。また、左右方向にねじれる動きも出てくるが、もし揺動体6がねじれた状態で支持軸4が転動した場合は、支持軸4の両端部分の先行した側がまず転動規制体3に当った後は空転し、つぎに他側が転動規制体3に当ったときにねじれが修正されることになる。」(2頁左欄29行-同頁右欄15行)

(ニ)「以上の説明から明らかなように、この考案に係るシーソー用軸受においては、揺動体6の揺動にともなって支持軸4が、転動規制体3,3,3,3間の平盤2,2上を線接触状態でゆるやかに転動するようになっているので、軸受による摩擦抵抗をきわめて小さくすることができる。また、揺動体6の左右方向への平行移動は球体9,9が阻止し、揺動体6のねじれ作用は転動規制体3,3,3,3が修正することになるので、揺動体6は摩擦抵抗の少ない安定した揺動運動を、長時間にわたって継続することができるのである。」(2頁右欄16-同欄26行)

第2図によれば、取付け体5と支持軸4は、揺動体6の上面に取り付けられていることが看取できる。したがって、上記刊行物には、その記載事項(イ)?(ニ)と図面からみて、以下の発明が記載されている。
「揺動体6と、
前記揺動体6の上面に取付体5を介して一体に取付けられた支持軸4と、
一定間隔をおいて配置した支持脚1,1と、
前記支持脚1,1の上面に固定され、硬度の高い材質で上面が滑らかな平盤2,2と、
前記平盤2,2の上面両端に取付けられた転動規制体3,3,3,3とを備えるシーソーであって、
前記平盤2,2の上に支持軸4の両端を乗せることで、各支持脚1,1の上に前記支持軸4をかけ渡した遊技機用のシーソー。」(以下、「引用発明」という。)

4-3 対比・検討

そこで、本件発明と引用発明とを対比する。
(A)引用発明における「揺動体6」が本件発明の「シーソー板5」に相当し、引用発明の「遊技機用シーソー」が本件発明の「遊戯具シーソー」に相当する。
(B)引用発明におけるシーソーは、揺動体6に取り付けた支持軸の両端が平盤2の上に乗ることで揺動体6が吊り下げられているから、揺動体6は懸垂されていると言え、引用発明のシーソーは懸垂型のシーソーと言える。
(C)引用発明においては、支持軸4の両端と平盤2とが接する位置で揺動板6が支持され、該位置を支点として揺動するから、該位置が、本件発明における支点1に相当する。

以上のことから、本件発明と引用発明は、
「シーソー板と、支点を設けた懸垂型の遊戯具シーソー」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1) 遊戯具シーソーが、本件発明では、子供が乗る遊戯具シーソーであるのに対し、引用発明では子供が乗るものか否か明確でない点。
(相違点2) 支点の位置が、本件発明では「シーソー板5の重心3と乗った子供の重心2の間で全重心の下方となる位置」であるのに対し、引用発明では明らかでない点。
(相違点3) 本件発明の遊戯具シーソーは、「シーソー板5の重力を反対方向への反転を助けるための力として働かせ、また着地時には着地の衝撃を和らげる力として働かせる為」になされたものであり、「容易に反転出来、また、着地の衝撃を少なくした」ものであるのに対し、引用発明は、摩擦抵抗を小さくするためになされたものである点。

以下、上記相違点について検討する。
(相違点1)と(相違点2)は、子供が乗って遊戯するシーソーに関する相違点であるので、まとめて検討する。
遊戯具シーソーとして、子供が乗って遊戯するシーソー(例えば、実願昭55-62148号(実開昭59-193号)のマイクロフィルムに記載されるシーソーを参照。)と、子供がぶら下がって遊戯するシーソー(例えば、実公昭30-9728号公報に記載されるシーソーを参照)は、何れも周知・慣用のシーソーである。そして、引用発明の遊戯具シーソーが前記何れのシーソーであるかは明確ではないが、子供が乗って遊戯する周知・慣用のシーソーとして構成することに困難性はない。
次に、引用発明を子供が乗って遊戯するシーソーとして構成した場合の各重心位置の関係について検討する。
引用発明における揺動板6の重心位置は、揺動板6の板圧の中心にある。そして、子供の重心位置と全重心の位置は、シーソーに乗る子供の平均的な身長・体重、同時に乗る人数、乗った時の姿勢、乗る位置等の具体的数値や態様が不明であるから正確な各重心位置の特定は困難であるとしても、審判請求人(出願人)が平成18年11月30日付けで提出した意見書の(12)(13)において「シーソー板の板厚が極端に厚い板でない限り全重心の位置はシーソー板より上方になる・・・」「したがって、実施例としてシーソー板を四センチメトール厚さの木板とし、シーソー板の重量と子供の重量が等しいと仮定すれば、シーソー板の重心は板厚の中心にあり、子供の重心はシーソー板の上方十センチメトール位と考えられ、全重心の位置はシーソー板の上方四センチメトール位の位置になると考えられる。」と記載するとおり、子供の重心位置と全重心の位置は何れもシーソー板の上方にあり、全重心位置は、子供の重心位置と揺動板の重心位置の間に位置するものと認めるのが妥当である。
更に、引用発明の揺動体6は、平盤2と支持軸4の両端とが接する位置で支持されて揺動するから、該位置が支点の位置であり、揺動板6のほぼ上面に位置する。
してみると、引用発明を子供が乗って遊戯する周知・慣用のシーソーとして構成した際には、支点の位置が「シーソー板5の重心3と乗った子供の重心2の間で全重心の下方となる位置」となり、上記相違点2は実質的な相違点とはならない。
以上のとおりであるから、引用発明の遊戯具シーソーを子供が乗って遊戯する周知・慣用のシーソーとして構成し、上記相違点1、2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことと認める。

(相違点3)についての検討
相違点3に係る発明特定事項は、発明の目的、効果を特定する事項である。引用発明におけるシーソーは、相違点3に係る目的や効果を明示するものではないが、引用発明を子供が乗って遊戯するシーソーとして構成したシーソーが、当然に奏する作用・効果等に過ぎず、格別のものとは認められない。

4-4 意見書の主張について
審判請求人(出願人)は、平成21年6月9日付け意見書において、引用する刊行物における「揺動体の揺動運動を長時間にわたって継続させるのに」という文言から、引用発明は全重心が支点の下にある弥次郎兵衛型のシーソーである旨主張する。
しかしながら、引用する刊行物においては、軸受けの摩擦抵抗を小さくすることを課題とするものであって、審判請求人が指摘する上記記載は、摩擦抵抗を小さくしたことに対する効果を記載したものであって、弥次郎兵衛型のシーソーを意味するものではないと解するのが妥当である。そしてその余に引用発明が弥次郎兵衛型のシーソーである旨を示唆する記載はない。
よって、意見書における上記主張は採用することができない。

4-5 まとめ
以上のとおりであるから、本件発明は、上記刊行物に記載された発明と周知慣用技術とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項に規定する発明に該当する。

5.むすび

したがって、本件出願は、上記当審拒絶理由書で通知した拒絶の理由1)、2)が依然として解消しておらず、上記の拒絶理由によって拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-06 
結審通知日 2009-08-11 
審決日 2009-09-08 
出願番号 特願2003-84746(P2003-84746)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (A63G)
P 1 8・ 121- WZ (A63G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井海田 隆池谷 香次郎  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 村田 尚英
越河 勉
発明の名称 容易に反対方向に反転出来る様にした遊戯具シーソー  

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