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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1214317
審判番号 不服2007-20267  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-19 
確定日 2010-04-01 
事件の表示 特願2004-173221「同一承認順番に複数の承認者を指定できるワークフローシステム。」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月24日出願公開、特開2005-327228〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年5月13日の出願であって、平成19年6月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、さらに、当審において平成21年11月18日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、平成22年1月7日付けで意見書が提出されたものである。

2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年7月19日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
ワークフローを操作するコンピュータ端末と、前記コンピュータ端末とネットワークを経由してワークフローを管理するサーバとを有するワークフローシステムであって、
ワークフロー管理情報と、承認する内容である明細情報と、承認の進捗を記録する承認情報と、使用者情報を有するデータベースと、
前記4つの情報を、それぞれ、作成、参照するワークフロー管理情報処理手段、明細情報処理手段、承認情報処理手段、及び、使用者情報処理手段を具備し、
前記ワークフロー管理情報は、それぞれのワークフロー申請に対する識別子であるワークフロー識別子、承認順番、申請者識別子、決裁結果を有し、
前記明細情報は、ワークフロー識別子および申請内容を保持し、
前記承認情報は、ワークフロー識別子、承認順番、承認者識別子、承認状況の情報を有し、承認結果を保持し、
前記使用者情報は、ワークフローを承認及び申請する人の識別子、氏名を有し、
ワークフローの申請において、
(1)前記明細情報処理手段は、前記明細情報を作成し、
(2)前記承認情報処理手段は、ワークフローを承認する承認者を前記使用者情報から選択し、承認順番と共に、前記承認情報に書込み、承認情報を作成し、
(3)前記ワークフロー管理情報処理手段は、ワークフロー識別子を決め、前記ワークフロー管理情報を作成するとともに、前記明細情報および前記承認情報にワークフロー識別子を付与し、
ワークフローの承認において、
(1)前記ワークフロー管理情報処理手段は、承認者が未承認で、承認情報の承認順番とワークフロー管理情報の承認順番が同じであるワークフロー管理情報を一覧表示し、前記一覧の中から承認処理をするワークフローを選択し、
(2)前記明細情報処理手段は、前記選択したワークフローと同じワークフロー識別子を持つ前記明細情報を表示し、
(3)前記承認情報処理手段は、承認の可否を前記承認情報に書き込み、その時点で同じ処理順番を持つ未処理承認情報がなくなれば前記ワークフロー管理情報の承認順番を次の順番に変更し、
(4)前記ワークフロー管理情報処理手段は、当該ワークフローの決裁の条件が満たされていれば、前記ワークフロー管理情報に決裁の情報を書込み、
各ワークフローの申請について、承認情報内に承認者が承認する順番を持ち、複数の承認者が同じ順番になることが可能で、かつ、承認作業ができる順番を限定できることを特徴とするワークフローシステム。」

3.当審において通知した拒絶理由の概要
平成21年11月18日付けで通知した拒絶理由の概要は以下のとおりである。
『この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開2003-331095号公報
(・・・略・・・)
よって、請求項1?4に係る発明は、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。』

4.引用例について
当審において通知した拒絶理由で引用された、特開2003-331095号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、申請書類の承認処理を支援するシステムに関し、特に、申請に関するデータをサーバ上で一元管理し、承認者がクライアントからサーバにアクセスして承認処理を行うシステムに関する。」

(イ)「【0016】(実施の形態の概要)まず、図1を参照して本実施の形態の概要について説明する。本発明では、図1に示すように、ワークフロー(申請承認処理の流れ)システムの実現において必要となるデータ(社員の情報、組織の情報、申請書の内容など)を全てデータベース300に保存し、データベースの内容をクライアントから参照・状態の変更を行うことで、あたかも申請データを回覧している様に見せる仕組みを実現する。・・・(略)・・・
【0017】(実施の形態の構成)次に、図面を参照して本実施の形態の構成を説明する。図1に示すように、本実施の形態に係る申請承認システムは、Webサーバ200と、利用者が使用するクライアント100,101,102と、データベース300とから構成される。なお、以下においてはクライアントの代表としてクライアント100を用いて説明する。
【0018】Webサーバ200は、サーバ装置等の情報処理装置によって実現される。Webサーバ200は、データベースアクセスモジュール210を備え、このモジュールは、例えばWebサーバ200上でソフトウェアを実行することにより実現される。
【0019】データベースアクセスモジュール210は、データベース300に格納された情報を管理し、クライアント100との間で通信を行い、申請承認処理を支援する。
【0020】データベース300は、記憶装置によって実現され、社員情報,組織情報,書類設計情報,フロー情報,画面表示形式情報等が格納される。
【0021】クライアント100は、パーソナルコンピュータ,PDA,携帯電話等の情報処理装置によって実現される。クライアント100は、LAN,インターネット等のネットワークを介してWebサーバ200へアクセスし、データベースアクセスモジュール210との間で通信を行う。」

(ウ)「【0034】次に、フロー情報50には、承認ステップ情報40で指定される個々の承認フローの具体的な内容が定義されている(図3のb)。具体的には、承認フローにおける承認順,承認方法,承認者指定方法,承認者,承認種類等が定義される。承認方法には、例えば順次承認かまたは一斉承認かが設定される。順次承認の場合には、承認順には個々の承認者の承認順序が設定される。一方、一斉承認の場合には、承認順には個々の承認者のパラレルな承認が設定される。」

(エ)「【0040】業務を行う場合はクライアント100?102で行い、入力された申請情報はデータベース300に蓄積される。入力されたデータを次の承認者に送る場合は、データベース300に蓄積されている承認順データの内容を変更することで、該当者が画面を表示した場合、そのデータが表示される。
・・・(略)・・・
【0042】まず、利用者(ここでは申請者)は、クライアント100を利用して申請書を入力する(ステップ501)。具体的には、申請者がクライアント100からWebサーバ200にアクセスすると、モジュール210が申請者の識別情報を要求する。申請者が自身の識別情報を入力すると、モジュール210は、社員情報10を参照して申請者の画面パターンを特定し、特定した画面パターンを画面パターン情報20から取り出してクライアント100に表示させる。ここでは、画面パターンとして申請書の作成画面が表示されることとする。申請者は画面上で必要な申請情報を入力する。
【0043】なお、特定した画面パターンの初期画面に複数の申請書が設定されている場合には、図2のfに示すように複数の申請書のインデックスが表示される。申請者が所望のインデックスを選択すると、モジュール210は、選択された申請書の画面をクライアント100に送信して表示させる。
【0044】次に、申請者は、必要に応じて承認ルートを変更し、承認ルートを決定する(ステップ502)。具体的には、図3のaに示されるように、承認ルートが申請時に変更可能なものであれば、申請時に承認ステップの変更,承認者の追加変更等を行う。一方、承認ルートが申請時に変更不可能なものであれば、予め設定された承認ステップでの固定承認ルートのままとなる。
・・・(略)・・・
【0046】申請情報が入力され、承認ルートが決定されると、モジュール210は、申請書情報と承認者情報とをデータベース300に登録する(ステップ503)。具体的には、図5に示されるように、各申請書に一意の申請書IDを割り当て、申請書IDをキーとして申請書情報と承認者情報とを登録する。
【0047】申請書情報は、申請書を入力した申請者の氏名および識別情報(例えばID),申請書の内容,申請書名,発行日付等を含む。また、申請書情報は、上述したような、決定後の承認ルートデータを含むようにしてもよい。
【0048】承認者情報とは、各申請書を承認すべき承認者に関する情報であり、例えば図6に示されるように、各申請書について、承認者識別情報(例えばID),承認者名,各承認者の承認順,承認日,状態フラグ,順番フラグ等を含む。状態フラグは、承認がなされたか否かを示し、承認済みの場合には「1」、未承認の場合には「0」がセットされる。順番フラグは、承認の順番がどの承認者にあるのかを示し、現在承認すべき承認者に「1」がセットされ、承認を行うことにより0クリアされて次の承認者のフラグが「1」にセットされる。なお、承認者情報には、図示しない否決フラグを設けてもよい。この場合には、いずれかの承認者が否決を入力するとその承認者の否決フラグが「1」にセットされる。
【0049】このような承認者情報は、モジュール210が、上記決定された承認ルートに基づいて生成するようにしてもよい。この場合には、モジュール210は、承認ルートからそれぞれの承認者と各承認者の承認順とを抽出して承認者情報を生成する。」

(オ)「【0050】次に、利用者(ここでは承認者)がWebサーバ200にアクセスすると(ステップ504)、当該承認者が承認すべき申請書が当該承認者のクライアントに表示される(ステップ505)。具体的には、承認者がクライアント100からWebサーバ200にアクセスすると、モジュール210が承認者の識別情報を要求する。承認者が自身の識別情報を入力すると、モジュール210は、社員情報10を参照して承認者の画面パターンを特定し、特定した画面パターンを画面パターン情報20から取り出してクライアント100に表示させる。ここでは、申請書の承認画面が表示されることとする。
【0051】また、承認画面の初期画面には、例えば図2のeの承認依頼一覧のように、当該承認者が承認すべき申請書の一覧を表示させるようにしてもよい。具体的には、モジュール210は、入力された承認者の識別情報(承認者ID)に基づいて承認者情報を検索し、当該承認者の順番フラグが「1」になっている申請書を抽出して一覧表示する。
・・・(略)・・・
【0053】次に、承認者が承認処理をおこなうと(ステップ506)、データベース300の承認者情報が更新される(ステップ507)。具体的には、承認者がクライアントの画面上で承認を入力すると、モジュール210は、承認された申請書の承認者情報に対して、当該承認者の状態フラグを「1」にセットし、承認日に現在の日時をセットし、順番フラグを0にクリアし、次の順位の承認者の順番フラグを「1」にセットする。」

上記(エ)には「承認ルートが申請時に変更可能なものであれば、申請時に承認ステップの変更,承認者の追加変更等を行う」、「モジュール210は、承認ルートからそれぞれの承認者と各承認者の承認順とを抽出して承認者情報を生成する。」と記載され、追加変更の入力はデータベースアクセスモジュールにより行われることから、データベースアクセスモジュールは、承認者を入力させ、承認者と承認順を含む承認者情報を生成することは明らかである。
また、上記(エ)における「承認者情報とは、各申請書を承認すべき承認者に関する情報であり、例えば図6に示されるように、各申請書について、承認者識別情報(例えばID),承認者名,各承認者の承認順,承認日,状態フラグ,順番フラグ等を含む。」、上記(ウ)における「一斉承認の場合には、承認順には個々の承認者のパラレルな承認が設定される。」との記載から、各ワークフローの申請について、承認者情報は各承認者の承認順を含み、複数の承認者が同じ順番になることが可能で、かつ、承認作業ができる順番を限定できることは明らかである。

これらの記載事項及び図面の内容を総合すると、引用例には、
「申請承認を行う利用者が使用するクライアントと、クライアントとネットワークを介して申請承認処理を管理するWebサーバとを有するワークフローシステムであって、
申請書情報、承認者情報を有するデータベースと、
データベースに格納された情報を管理し、クライアントとの間で通信を行い、申請承認処理を支援するデータベースアクセスモジュール(以下、モジュール)を具備し、
申請書情報は、申請者の氏名および識別情報、申請書の内容を有し、
承認者情報は、承認者識別情報、承認者名、各承認者の承認順、承認がなされたか否かを示す状態フラグ、承認の順番がどの承認者にあるのかを示す順番フラグ、否決フラグを有し、
申請書IDをキーとして申請書情報と承認者情報とがデータベースに登録され、
ワークフローの申請において、
モジュールは、必要な申請情報を入力させ、申請書情報を作成し、
モジュールは、承認者を入力させ、承認者と承認順を含む承認者情報を生成し、
モジュールは、各申請書に一意の申請書IDを割り当て、申請書IDをキーとして申請書情報と承認者情報を登録し、
ワークフローの承認において、
モジュールは、入力された承認者の識別情報に基づいて承認者情報を検索し、当該承認者の順番フラグが「1」になっている申請書を抽出して一覧表示し、
モジュールは、承認者がクライアントの画面上で承認を入力すると、承認された申請書の承認者情報に対して、当該承認者の状態フラグを「1」にセットし、順番フラグを0にクリアし、次の順位の承認者の順番フラグを「1」にセットし、
各ワークフローの申請について、承認者情報は各承認者の承認順を含み、複数の承認者が同じ順番になることが可能で、かつ、承認作業ができる順番を限定できることを特徴とするワークフローシステム。」
との発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されていると認められる。

5.対比
本願発明と引用例発明とを対比すると、引用例発明の「クライアント」、「ネットワーク」、「Webサーバ」は、本願発明の「コンピュータ端末」、「ネットワーク」、「サーバ」にそれぞれ相当し、引用例発明の「申請承認を行う利用者が使用するクライアントと、クライアントとネットワークを介して申請承認処理を管理するWebサーバとを有するワークフローシステムであって」は、本願発明の「ワークフローを操作するコンピュータ端末と、前記コンピュータ端末とネットワークを経由してワークフローを管理するサーバとを有するワークフローシステムであって」に相当する。

また、引用例発明の「申請書情報」は、申請書の内容を有することから申請書に関する情報を含み、引用例発明の「承認者情報」は、承認者識別情報、承認順、状態フラグ、否決フラグを有することから承認に関する情報を含み、また、「申請書情報」は、申請者の識別情報を有し、「承認者情報」は、現在承認すべき承認者の順番であることを表す順番フラグを有することから、引用例発明の「申請書情報」及び「承認者情報」にはワークフローに関する情報を含む。
したがって、引用例発明の「申請書情報、承認者情報を有するデータベース」は、ワークフローに関する情報、申請書に関する情報、承認に関する情報を含むから、引用例発明の「申請書情報、承認者情報を有するデータベース」と本願発明の「ワークフロー管理情報と、承認する内容である明細情報と、承認の進捗を記録する承認情報と、使用者情報を有するデータベース」とは、「ワークフローに関する情報と、申請書に関する情報と、承認に関する情報を有するデータベース」である点で共通する。

また、引用例発明の「データベースアクセスモジュール」は、データベースに格納された情報を管理し、クライアントとの間で通信を行い、申請者はクライアントを利用して申請書を入力し、承認ルートを決定し、申請書情報と承認者情報を登録し、承認者はWebサーバにアクセスして申請書の一覧を表示させ、承認処理を行い承認者情報を更新する申請承認処理を支援するための機能を有するものであるから、データベースアクセスモジュールの機能は、申請書情報を作成するための機能、承認者情報を作成するための機能、ワークフローを作成するための機能、承認画面を表示するための機能、承認者情報を更新するための機能を含む。
したがって、引用例発明の「データベースに格納された情報を管理し、クライアントの間で通信を行い、申請承認処理を支援するデータベースアクセスモジュール」と本願発明の「前記4つの情報を、それぞれ、作成、参照するワークフロー管理情報処理手段、明細情報処理手段、承認情報処理手段、及び、使用者情報処理手段」とは、「データベースが有する情報を、それぞれ、作成、参照する、申請書情報を作成するための機能、承認者情報を作成するための機能、ワークフローを作成するための機能、承認画面を表示するための機能、及び、承認者情報を更新するための機能」である点で共通する。

また、引用例発明の「申請書ID」は、各申請書に一意に割り当てられ、申請書IDをキーとして申請書情報と承認者情報とを登録することから、本願発明の「ワークフロー識別子」に相当し、引用例発明の「申請者の識別情報」、「申請書の内容」は、本願発明のワークフロー管理情報の「申請者識別子」、明細情報の「申請内容」にそれぞれ相当し、引用例発明の「承認者識別情報」、「各承認者の承認順」は、本願発明の承認情報の「承認者識別子」、承認情報の「承認順番」にそれぞれ相当し、引用例発明の「状態フラグ」は、承認がなされたか否かを示すから、本願発明の承認情報の「承認状況の情報」に相当し、引用例発明の「順番フラグ」は、承認の順番がどの承認者にあるのかを示し、各承認者には承認順が設定されているから、本願発明のワークフロー管理情報の「承認順番」に相当し、引用例発明の「否決フラグ」は、承認者が否決したときの承認結果であるから、本願発明の承認情報の「承認結果」に相当し、引用例発明の「申請者の氏名」、「承認者の氏名」は、本願発明の「ワークフローを承認及び申請する人の氏名」に相当する。
したがって、引用例発明の「申請書情報」、「承認者情報」は、ワークフローに関する情報、申請書に関する情報、承認に関する情報を含むから、引用例発明の「申請書情報は、申請者の氏名および識別情報、申請書の内容を有し、承認者情報は、承認者識別情報、承認者名、各承認者の承認順、承認がなされたか否かを示す状態フラグ、承認の順番がどの承認者にあるのかを示す順番フラグ、否決フラグを有し、申請書IDをキーとして申請書情報と承認者情報とがデータベースに登録され、」と本願発明の「前記ワークフロー管理情報は、それぞれのワークフロー申請に対する識別子であるワークフロー識別子、承認順番、申請者識別子、決裁結果を有し、前記明細情報は、ワークフロー識別子および申請内容を保持し、前記承認情報は、ワークフロー識別子、承認順番、承認者識別子、承認状況の情報を有し、承認結果を保持し、前記使用者情報は、ワークフローを承認及び申請する人の識別子、氏名を有し、」とは、「ワークフローに関する情報は、承認順番、申請者識別子を有し、申請書に関する情報は、申請内容を保持し、承認に関する情報は、承認順番、承認者識別子、承認状況の情報を有し、承認結果を保持し、それぞれの情報はそれぞれのワークフロー申請に対する識別子であるワークフロー識別子で関連付けられ、」である点で共通する。

また、引用例発明の「申請書情報」は、申請書に関する情報を含むから本願発明の「明細情報」に相当し、引用例発明の「モジュール」は、申請書情報を作成するための機能を含むから、引用例発明の「モジュールは、必要な申請情報を入力させ、申請書情報を作成し」と本願発明の「前記明細情報処理手段は、前記明細情報を作成し」とは、「申請書情報を作成するための機能は、明細情報を作成し」である点で共通する。

また、引用例発明の「承認者情報」は、承認に関する情報を含むから本願発明の「承認情報」に相当し、引用例発明の「モジュール」は、承認者情報を作成するための機能を含むから、引用例発明の「モジュールは、承認者を入力させ、承認者と承認順を含む承認者情報を生成し」と本願発明の「前記承認情報処理手段は、ワークフローを承認する承認者を前記使用者情報から選択し、承認順番と共に、前記承認情報に書込み、承認情報を作成し」とは、「承認者情報を作成するための機能は、ワークフローを承認する承認者を入力し、承認順番と共に、承認情報に書込み、承認情報を作成し」である点で共通する。

また、引用例発明の「申請書ID」は、本願発明の「ワークフロー識別子」に相当し、引用例発明の「申請書情報と承認者情報」は、ワークフローに関する情報、申請書に関する情報、承認に関する情報を含むから本願発明のワークフロー管理情報、明細情報、承認情報に相当し、引用例発明の「モジュール」は、ワークフローを作成するための機能を含むから、引用例発明の「モジュールは、各申請書に一意の申請書IDを割り当て、申請書IDをキーとして申請書情報と承認者情報を登録し」と本願発明の「前記ワークフロー管理情報処理手段は、ワークフロー識別子を決め、前記ワークフロー管理情報を作成するとともに、前記明細情報および前記承認情報にワークフロー識別子を付与し」とは、「ワークフローを作成するための機能は、ワークフロー識別子を決め、ワークフロー管理情報を作成するとともに、明細情報および承認情報にワークフロー識別子を付与し」である点で共通する。

また、引用例発明の抽出される「承認者の順番フラグが「1」になっている申請書」は、承認者が未承認で、現在承認すべき承認者が承認する順番であることを表し、引用例発明の「モジュール」は、承認画面を表示するための機能を含むから、引用例発明の「モジュールは、入力された承認者の識別情報に基づいて承認者情報を検索し、当該承認者の順番フラグが「1」になっている申請書を抽出して一覧表示し」と本願発明の「前記ワークフロー管理情報処理手段は、承認者が未承認で、承認情報の承認順番とワークフロー管理情報の承認順番が同じであるワークフロー管理情報を一覧表示し、前記一覧の中から承認処理をするワークフローを選択し」とは、「承認画面を表示するための機能は、承認者が未承認で、ワークフロー管理情報の承認順番に基づいてワークフロー管理情報を一覧表示し」である点で共通する。

また、引用例発明の「承認者がクライアントの画面上で承認を入力すると、当該承認者の状態フラグを「1」にセットし」は、否決の場合は否決フラグが「1」にセットされるから、本願発明の「承認の可否を承認情報に書き込み」に相当し、引用例発明の「順番フラグを0にクリアし、次の順位の承認者の順番フラグを「1」にセットし」は、本願発明の「ワークフロー管理情報の承認順番を次の順番に変更し」に相当し、引用例発明の「モジュール」は、承認者情報を更新するための機能を含むから、引用例発明の「モジュールは、承認者がクライアントの画面上で承認を入力すると、承認された申請書の承認者情報に対して、当該承認者の状態フラグを「1」にセットし、順番フラグを0にクリアし、次の順位の承認者の順番フラグを「1」にセットし」と本願発明の「前記承認情報処理手段は、承認の可否を前記承認情報に書き込み、その時点で同じ処理順番を持つ未処理承認情報がなくなれば前記ワークフロー管理情報の承認順番を次の順番に変更し」とは、「承認者情報を更新するための機能は、承認の可否を前記承認情報に書き込み、前記ワークフロー管理情報の承認順番を次の順番に変更し」である点で共通する。

また、引用例発明の「各ワークフローの申請について、承認者情報は各承認者の承認順を含み、複数の承認者が同じ順番になることが可能で、かつ、承認作業ができる順番を限定できる」は、本願発明の「各ワークフローの申請について、承認情報内に承認者が承認する順番を持ち、複数の承認者が同じ順番になることが可能で、かつ、承認作業ができる順番を限定できる」に相当し、引用例発明の「ワークフローシステム」は、その機能からして、本願発明の「ワークフローシステム」に相当する。

そうすると、両者は
「ワークフローを操作するコンピュータ端末と、前記コンピュータ端末とネットワークを経由してワークフローを管理するサーバとを有するワークフローシステムであって、
ワークフローに関する情報と、申請書に関する情報と、承認に関する情報を有するデータベースと、
データベースが有する情報を、それぞれ、作成、参照する、申請書情報を作成するための機能、承認者情報を作成するための機能、ワークフローを作成するための機能、承認画面を表示するための機能、及び、承認者情報を更新するための機能を具備し、
ワークフローに関する情報は、承認順番、申請者識別子を有し、
申請書に関する情報は、申請内容を保持し、
承認に関する情報は、承認順番、承認者識別子、承認状況の情報を有し、承認結果を保持し、
それぞれの情報は、それぞれのワークフロー申請に対する識別子であるワークフロー識別子で関連付けられ、
ワークフローの申請において、
申請書情報を作成するための機能は、明細情報を作成し、
承認者情報を作成するための機能は、ワークフローを承認する承認者を入力し、承認順番と共に、承認情報に書込み、承認情報を作成し、
ワークフローを作成するための機能は、ワークフロー識別子を決め、ワークフロー管理情報を作成するとともに、明細情報および承認情報にワークフロー識別子を付与し、
ワークフローの承認において、
承認画面を表示するための機能は、承認者が未承認で、ワークフロー管理情報の承認順番に基づいてワークフロー管理情報を一覧表示し、
承認者情報を更新するための機能は、承認の可否を前記承認情報に書き込み、前記ワークフロー管理情報の承認順番を次の順番に変更し、
各ワークフローの申請について、承認情報内に承認者が承認する順番を持ち、複数の承認者が同じ順番になることが可能で、かつ、承認作業ができる順番を限定できることを特徴とするワークフローシステム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明においては、データベースが有する情報は「ワークフロー管理情報と、承認する内容である明細情報と、承認の進捗を記録する承認情報と、使用者情報」であり、「ワークフロー管理情報は、それぞれのワークフロー申請に対する識別子であるワークフロー識別子、承認順番、申請者識別子、決裁結果を有し、明細情報は、ワークフロー識別子および申請内容を保持し、承認情報は、ワークフロー識別子、承認順番、承認者識別子、承認状況の情報を有し、承認結果を保持し、使用者情報は、ワークフローを承認及び申請する人の識別子、氏名を有」するのに対し、引用例発明においては、データベースが有する情報は「申請書情報、承認者情報」であり、「申請書情報は、申請者の氏名および識別情報、申請書の内容を有し、承認者情報は、承認者識別情報、承認者名、各承認者の承認順、承認がなされたか否かを示す状態フラグ、承認の順番がどの承認者にあるのかを示す順番フラグ、否決フラグを有し、申請書IDをキーとして申請書情報と承認者情報とがデータベースに登録され」る点。

[相違点2]
本願発明においては、「ワークフロー管理情報処理手段、明細情報処理手段、承認情報処理手段、及び、使用者情報処理手段」を有するのに対し、引用例発明においては、「データベースアクセスモジュール」を有する点。

[相違点3]
本願発明においては、「承認情報処理手段は、ワークフローを承認する承認者を前記使用者情報から選択」するのに対し、引用例発明においては、「モジュールは、承認者を入力させ」る点。

[相違点4]
本願発明においては、「ワークフロー管理情報処理手段は、承認者が未承認で、承認情報の承認順番とワークフロー管理情報の承認順番が同じであるワークフロー管理情報を一覧表示し、前記一覧の中から承認処理をするワークフローを選択」するのに対し、引用例発明においては、「モジュールは、入力された承認者の識別情報に基づいて承認者情報を検索し、当該承認者の順番フラグが「1」になっている申請書を抽出して一覧表示」する点。

[相違点5]
本願発明においては、「明細情報処理手段は、前記選択したワークフローと同じワークフロー識別子を持つ前記明細情報を表示」するのに対し、引用例発明においてはそのようになっていない点。

[相違点6]
本願発明においては、承認情報処理手段は、ワークフロー管理情報の承認順番を次の順番に変更する条件として「その時点で同じ処理順番を持つ未処理承認情報がなくな」る場合であるのに対し、引用例発明においてはそのようになっていない点。

[相違点7]
本願発明においては「ワークフロー管理情報処理手段は、当該ワークフローの決裁の条件が満たされていれば、前記ワークフロー管理情報に決裁の情報を書込」むのに対し、引用例発明においてはそのようになっていない点。

6.相違点についての判断
[相違点1について]
引用例発明の「申請書情報、承認者情報」は、申請者の識別情報、申請者の氏名、承認者識別情報、承認者名を有することから申請者であり承認者である利用者は識別情報を有することは明らかであり、申請者であり承認者である利用者の識別情報、該利用者の氏名からなる情報をデータベースに設けて管理することは単なる設計事項に過ぎない。
また、引用例発明は申請承認業務であるから申請した申請書に決裁結果を有することは明らかであり、該決裁結果を承認者情報に含めることは当業者が適宜なし得たことである。
そして、引用例発明の「申請書情報、承認者情報」は、申請者の識別情報、現在承認すべき承認者の順番であることを表す順番フラグを有することからワークフローに関する情報を含み、申請書の内容を有することから申請書に関する情報を含み、承認者識別情報、承認順、状態フラグ、否決フラグを有することから承認に関する情報を含むものであり、また、申請書情報と承認者情報は申請書IDをキーとして関連付けられていることから、データベースに格納される「申請書情報、承認者情報」を、申請書ID、順番フラグ、申請者の識別情報、決裁結果を有するワークフローに関する情報と、申請書ID、申請書の内容を有する申請書に関する情報と、申請書ID、承認順、承認者識別情報、状態フラグ、否決フラグを有する承認に関する情報として構成することに、技術上何ら格別な困難性は認められない。
そうすると、引用例発明において、データベースが有する情報をワークフロー管理情報と、承認する内容である明細情報と、承認の進捗を記録する承認情報と、使用者情報とし、ワークフロー管理情報は、それぞれのワークフロー申請に対する識別子であるワークフロー識別子、承認順番、申請者識別子、決裁結果を有し、明細情報は、ワークフロー識別子および申請内容を保持し、承認情報は、ワークフロー識別子、承認順番、承認者識別子、承認状況の情報を有し、承認結果を保持し、使用者情報は、ワークフローを承認及び申請する人の識別子、氏名を有する構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
したがって、相違点1に係る本願発明の構成は、引用例発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点2について]
引用例発明の「データベースアクセスモジュール」は、データベースに格納された情報を管理し、クライアントとの間で通信を行い、申請者はクライアントを利用して申請書を入力し、承認ルートを決定し、申請書情報と承認者情報を登録し、承認者はWebサーバにアクセスして申請書の一覧を表示させ、承認処理を行い承認者情報を更新する申請承認処理を支援するための機能を有するものであるから、データベースアクセスモジュールの機能は、申請書情報を作成するための機能、承認者情報を作成するための機能、ワークフローを作成するための機能、承認画面を表示するための機能、承認者情報を更新するための機能を含むものである。
そして、一つの処理手段に複数の機能をもたせて構成することに、技術上何ら格別な困難性は認められないから、申請書情報を作成するための機能を明細情報処理手段とし、承認者情報を作成するための機能と承認者情報を更新するための機能を承認情報処理手段とし、ワークフローを作成するための機能と承認画面を表示するための機能をワークフロー管理情報処理手段として構成し、また、利用者の情報を管理するための機能として使用者情報処理手段を設けることは当業者が適宜なし得たことである。
そうすると、引用例発明において、データベースが有する情報を、それぞれ、作成、参照する処理手段について、ワークフロー管理情報処理手段、明細情報処理手段、承認情報処理手段、及び、使用者情報処理手段として構成することは当業者が容易になし得たことである。
したがって、相違点2に係る本願発明の構成は、引用例発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点3について]
所定の情報の中から特定の情報を選択して入力することは普通に行われていることであるから、データベースに使用者情報を有する引用例発明において、承認情報を作成する際に、承認情報処理手段が、ワークフローを承認する承認者を使用者情報から選択することは当業者が容易になし得たことである。
したがって、相違点3に係る本願発明の構成は、引用例発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点4について]
引用例発明における順番フラグは、承認の順番がどの承認者にあるのかを示し、各承認者には承認順が設定されているから、順番フラグから現在承認すべき承認者の承認順が認識されるものであり、「1」にセットされている順番フラグから現在承認すべき承認者を示すとともに現在の承認順を示すものとすることに、技術上何ら格別な困難性は認められない。
そして、引用例発明の順番フラグが現在の承認順を示す場合に、抽出される申請書において、現在承認すべき承認者は、「1」にセットされた順番フラグが示す現在の承認順と該承認者の承認順が同一であり、順番フラグが「1」にセットされた承認者は未承認であり、また、一覧表示された情報から所定の情報を選択して処理を行うことは普通に行われていることである。
そうすると、データベースにワークフロー管理情報、承認情報を有する引用例発明において、ワークフロー管理情報処理手段が、承認者が未承認で、承認情報の承認順番とワークフロー管理情報の承認順番が同じであるワークフロー管理情報を一覧表示し、一覧の中から承認処理をするワークフローを選択することは当業者が容易になし得たことである。
したがって、相違点4に係る本願発明の構成は、引用例発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点5について]
引用例発明における申請書情報は申請書の内容を含み、申請書情報は申請書IDで管理され、また、引用例の図2(e)における、「承認依頼一覧や申請中書類一覧などの中で表示が必要な物を指定」との記載から、承認処理を行う申請書の内容を確認するために、承認依頼一覧から指定した申請書と同じ申請書IDを持つ申請書の内容を表示することに、技術上何ら格別な困難性は認められない。
そうすると、データベースに明細情報を有する引用例発明において、明細情報処理手段が、選択したワークフローと同じワークフロー識別子を持つ明細情報を表示することは当業者が容易になし得たことである。
したがって、相違点5に係る本願発明の構成は、引用例発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点6について]
上記(ウ)における、「一斉承認の場合には、承認順には個々の承認者のパラレルな承認が設定される」との記載から、複数の承認者に同じ承認順を設定し同じ承認順のすべての承認者による承認がなされたら次の承認順とすること、すなわち、同じ承認順のすべての承認者による承認がなされたら次の順位の承認者の順番フラグを「1」にセットすることに、技術上何ら格別な困難性は認められない。
そうすると、データベースにワークフロー管理情報を有する引用例発明において、承認情報処理手段が、その時点で同じ処理順番を持つ未処理承認情報がなくなればワークフロー管理情報の承認順番を次の順番に変更することは当業者が容易になし得たことである。
したがって、相違点6に係る本願発明の構成は、引用例発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点7について]
引用例発明は申請承認業務であるから申請した申請書に決裁結果を有することは明らかである。
そして、承認業務において承認の条件が満たされたら決裁されることは普通に行われていることであるから、データベースにワークフロー管理情報を有する引用例発明において、ワークフロー管理情報処理手段が、ワークフローの決裁の条件が満たされていれば、ワークフロー管理情報に決裁の情報を書込むことは当業者が容易になし得たことである。
したがって、相違点7に係る本願発明の構成は、引用例発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願発明の作用効果も、引用例発明及び周知の事項から当業者が予測できる範囲のものである。

7.審判請求人の主張について
審判請求人は、平成22年1月7日付けの意見書において、以下のとおり主張している。
『本願請求項1には、承認処理の具体的手順が次にように具体的に記載されていますが、引用文献には記載されていません。
つまり、本願請求項1には、「ワークフローの承認において、(1)前記ワークフロー管理情報処理手段は、承認者が未承認で、承認情報の承認順番とワークフロー管理情報の承認順番が同じであるワークフロー管理情報を一覧表示し、前記一覧の中から承認処理をするワークフローを選択し、(2)前記明細情報処理手段は、前記選択したワークフローと同じワークフロー識別子を持つ前記明細情報を表示し、(3)前記承認情報処理手段は、承認の可否を前記承認情報に書き込み、その時点で同じ処理順番を持つ未処理承認情報がなくなれば前記ワークフロー管理情報の承認順番を次の順番に変更し、(4)前記ワークフロー管理情報処理手段は、当該ワークフローの決済の条件が満たされていれば、前記ワークフロー管理情報に決済の情報を書込み、」と記載され、いわば、グループウェアを使わないでデータベース管理システムだけで行う承認処理の手順が具体的に示されています。
引用文献の請求項1には、「前記承認履歴手段は、前記承認者によって必要な承認処理がなされた場合には、当該承認処理がなされた申請書データに関する承認履歴を更新する申請承認サーバ」と記載されています。つまり、引用文献の請求項1には、申請承認サーバが、画面に表示される申請データに関する履歴を更新することが記載されています。しかし、承認処理の具体的な手順、つまり、承認処理において何がどのように行われるかが記載されていません。
引用文献の請求項2には、「特定された画面パターンを前記申請者または承認者のクライアントに表示させる画面選択手段をさらに備える請求項1に記載の承認申請サーバ」と記載されています。つまり、画面に表示される画面パターンを保持し画面にその画面パターンを表示する申請承認サーバが記載されています。しかし、ワークフローシステムが行う承認処理の具体的な手順、つまり、承認処理において何がどのように行われるかが記載されていません。
引用文献の請求項3には、「抽出した申請データの一覧を前記承認者クライアントに表示させる請求項1または請求項2に記載の申請承認サーバ」と記載され、申請書データをクライアントに表示する申請承認サーバが示されています。しかし、承認処理の具体的な手順、つまり、承認処理において何がどのように行われるかが記載されていません。
引用文献の請求項4には、「前記複数の承認者の承認者間の承認順序が定義される請求項1?3のいずれかに記載の申請承認サーバ」が記載され、承認ルートの情報を保持する申請承認サーバが記載されています。しかし、ワークフローシステムが行う承認処理の具体的な手順、つまり、承認処理において何がどのように行われるかが記載されていません。
引用文献の請求項5には、「前記承認履歴管理手段は、・・・承認者によって必要な承認処理がなされた場合には、当該承認処理がなされた申請書データに関する承認履歴を更新する請求項4に記載の申請承認サーバ」と記載されています。つまり、承認者の操作により、画面に表示される申請書データの承認履歴が更新されることが記載されています。 引用文献の請求項6には、「申請書類データについて、・・・、承認履歴管理手段は、順番フラグが立てられた承認者によって必要な承認処理がなされた場合には、当該承認者の順番フラグを立てる請求項1?5の申請承認サーバ」と記載されています。つまり、承認者の操作により、画面に表示される承認者情報が更新されることが記載されています。しかし、ワークフローシステムが行う承認処理の具体的な手順、つまり、承認処理において何がどのように行われるかが記載されていません。
引用文献の明細書には、「前記承認履歴管理手段は、・・・、当該承認処理がなされた申請書データに関する承認履歴を更新するようにした。」(0010)、「履歴管理手段は、・・・承認者によって必要な承認処理がなされた場合には、当該承認者の順番フラグをクリアし、次の順位の承認者の順番フラグを立てるようにした。」(0011)、「次に、承認者が承認処理をおこなうと(ステップ506)、データベース300の承認者情報が更新される(ステップ507)。具体的には、承認者がクライアントの画面上で承認を入力すると、モジュール210は、承認された申請書の承認者情報に対して、当該承認者の状態フラグを「1」にセットし、承認日に現在の日時をセットし、順番フラグを0にクリアし、次の順位の承認者の順番フラグを「1」にセットする。」(0053)と記載されています。
つまり、引用文献には、承認者が承認処理を行うと画面に表示される承認者情報が更新されることが記載されているだけです。したがって、この引用文献には、上述のような本願技術の特徴であるグループウェアを使わずにデータベース管理システムだけで行う承認処理の具体的な手順、つまり、承認処理において何がどのように行われるかが記載されていません。引用文献の明細書の他の部分にも、承認処理の手順が具体的に記載されていません。
なお、他の請求項2?4についても、請求項1と同様の特徴を有します。
したがって、引用文献によって、本願請求項1?4に係る発明の進歩性は否定されません。』

しかしながら、引用例発明の認定、本願発明と引用例発明の一致点、相違点の認定、及び相違点についての判断は、前記「4.」、「5.」、及び「6.」に記載したとおりであるから、上記審判請求人の主張はこれを採用することはできない。

8.むすび
したがって、本願発明は、引用例発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-29 
結審通知日 2010-02-02 
審決日 2010-02-15 
出願番号 特願2004-173221(P2004-173221)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 裕子  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 小山 満
山本 穂積
発明の名称 同一承認順番に複数の承認者を指定できるワークフローシステム。  
代理人 新居 広守  

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