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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1214321
審判番号 不服2007-25795  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-20 
確定日 2010-04-01 
事件の表示 特願2003-186718「コンテンツ流通支援装置及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 1月27日出願公開、特開2005- 25251〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成15年6月30日の出願であって,平成19年4月20日付けで拒絶理由通知(2回目)がなされ,これに対して,同年6月25日付けで意見書の提出と共に手続補正がなされたが,同年8月7日付けで拒絶査定がなされた。これに対し,同年9月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされ,同年10月22日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成19年10月22日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年10月22日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
平成19年10月22日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により,特許請求の範囲は,
「【請求項1】 ユーザごとのポイントを記録するポイント記録手段と,
ユーザに提供可能なコンテンツファイルを蓄積するコンテンツ蓄積手段と,
ユーザからコンテンツファイルを収受して前記コンテンツ蓄積手段に蓄積するとともに,該コンテンツファイルを提供したユーザの前記ポイントにポイント値を加算するコンテンツ収受手段と,
ユーザから提供を希望するコンテンツファイルを指定する情報を受け付ける受付手段と,
前記指定情報の受付に応じて,前記ユーザに対応する前記ポイント記録手段に記録されたポイントが,前記指定されたコンテンツファイルを提供するために必要なポイントを充足するか否かを判定する判定手段と,
前記記録されたポイントが前記提供するために必要なポイントを充足すると判定された場合は,ユーザに対して前記コンテンツ蓄積手段から前記指定されたコンテンツファイルを読み出して提供するとともに,該コンテンツファイルの提供を受けたユーザの前記ポイントからポイント値を減算し,当該コンテンツファイルを提供したユーザの前記ポイントにポイント値を加算し,前記記録されたポイントが前記提供するために必要なポイントを充足しないと判定された場合は,その旨を通知して終了するコンテンツ提供手段とを有し, 前記コンテンツ収受手段にてコンテンツファイルを提供した際,及び,前記コンテンツ提供手段にてコンテンツファイルが提供された際に加算されるポイントを利用して,前記コンテンツ提供手段にてコンテンツの提供を受けることを特徴とするコンテンツ流通支援装置。
【請求項2】 ユーザごとのポイントを記録するポイント記録手段と,ユーザに提供可能なコンテンツファイルを蓄積するコンテンツ蓄積手段とを有するサーバコンピュータで実行可能なコンテンツ流通支援プログラムであって,
ユーザからコンテンツファイルを収受して前記コンテンツ蓄積手段に蓄積するとともに,該コンテンツファイルを提供したユーザの前記ポイントにポイント値を加算するコンテンツ収受手順と,
ユーザから提供を希望するコンテンツファイルを指定する情報を受け付ける受付手順と,
前記指定情報の受付に応じて,前記ユーザに対応する前記ポイント記録手段に記録されたポイントが,前記指定されたコンテンツファイルを提供するために必要なポイントを充足するか否かを判定する判定手順と,
前記記録されたポイントが前記提供するために必要なポイントを充足すると判定された場合は,ユーザに対して前記コンテンツ蓄積手段から前記指定されたコンテンツファイルを読み出して提供するとともに,該コンテンツファイルの提供を受けたユーザの前記ポイントからポイント値を減算し,当該コンテンツファイルを提供したユーザの前記ポイントにポイント値を加算し,前記記録されたポイントが前記提供するために必要なポイントを充足しないと判定された場合は,その旨を通知して終了するコンテンツ提供手段とを有し, 前記コンテンツ収受手順にてコンテンツファイルを提供した際,及び,前記コンテンツ提供手順にてコンテンツファイルが提供された際に加算されるポイントを利用して,前記コンテンツ提供手順にてコンテンツの提供を受けることを特徴とするコンテンツ流通支援プログラム。」と補正された。(補正箇所を示す下線は,手続補正書記載のものを援用した。)

(2)請求項1の補正について
まず,特許請求の範囲の請求項1においてする本件補正が,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「改正前特許法」という。)第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするものであるか否かについて検討する。

本件補正は,請求項1について,
(ア)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の「コンテンツ提供手段」の機能に,本件補正後の請求項1の「前記記録されたポイントが前記提供するために必要なポイントを充足しないと判定された場合は,その旨を通知して終了する」ことを付加する補正事項と,
(イ)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の「コンテンツ流通支援装置」を,本件補正後の請求項1の「前記コンテンツ収受手段にてコンテンツファイルを提供した際,及び,前記コンテンツ提供手段にてコンテンツファイルが提供された際に加算されるポイントを利用して,前記コンテンツ提供手段にてコンテンツの提供を受けることを特徴とするコンテンツ流通支援装置」とする補正事項とを含むものである。
(補正箇所を示す下線は,いずれも手続補正書記載のものを援用した。)
これを検討すると,上記(ア)の補正事項は,平成19年10月22日付けの手続補正書(方式)により補正された平成19年9月20日付けの審判請求書において審判請求人が『「現在の所有ポイントがダウンロードに必要なポイントに満たない」場合は,「図4に示す表示画面SCR8をクライアント装置2に送信してユーザリクエストが無効であることを通知」します。このような構成により,本願請求項1に係る発明は,出願当初の明細書段落[0051]に記載されているように,「現金を媒介とすることなく,所定のアクションによって生じるポイントの増減によりコンテンツの流通を図ることが出来る。よって,現金を媒介とするが故にコンテンツの取得(購入)を躊躇していたユーザに対して,コンテンツ取得の容易さをアピールすることが出来る」という効果を有します。』と主張しているとおり,単に「コンテンツ提供手段」が提供する機能の態様を限定している補正事項ではなく,「前記記録されたポイントが前記提供するために必要なポイントを充足しないと判定された場合」に「その旨を通知して終了」するという情報処理の発明を特定するために必要な事項を追加する補正である。
補正前の請求項1において,発明を特定するために必要な事項としては,「ユーザごとのポイントを記録するポイント記録手段」との事項,「ユーザに提供可能なコンテンツファイルを蓄積するコンテンツ蓄積手段」との事項,「ユーザからコンテンツファイルを収受して前記コンテンツ蓄積手段に蓄積するとともに,該コンテンツファイルを提供したユーザの前記ポイントにポイント値を加算するコンテンツ収受手段」との事項,「ユーザから提供を希望するコンテンツファイルを指定する情報を受け付ける受付手段」との事項,及び「前記記録されたポイントが前記提供するために必要なポイントを充足すると判定された場合は,ユーザに対して前記コンテンツ蓄積手段から前記指定されたコンテンツファイルを読み出して提供するとともに,該コンテンツファイルの提供を受けたユーザの前記ポイントからポイント値を減算し,当該コンテンツファイルを提供したユーザの前記ポイントにポイント値を加算するコンテンツ提供手段」との事項があり,「前記記録されたポイントが前記提供するために必要なポイントを充足しないと判定された場合は,その旨を通知して終了する」との事項で特定される情報処理は,補正前の請求項1における当該発明を特定するために必要な上記各事項と概念的に同位にあるので,当該発明を特定するために必要な事項のいずれかを概念的に下位にしたものとはいえない。
よって,補正後の特許請求の範囲の請求項1は,その他の補正を検討するまでもなく,補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではないから,補正後の請求項1に係る本件補正は,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。
さらに,補正後の請求項1に係る本件補正が,特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除,同第4項第3号の誤記の訂正,同第4項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものでないことは明らかである。

したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

仮に,本件補正が,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものとして,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について更に検討する。

(3)原査定の拒絶の理由について
原審の拒絶査定の
『この出願については,平成19年 4月20日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって,拒絶をすべきものです。
なお,意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが,拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。』の記載からみて,

原査定の拒絶の理由の概要は,以下のとおりと認められる。

『この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1-2
・引用文献 1
引用文献1には,投稿者であるユーザからインターネットを介して写真等のコンテンツデータを受け付けるとともにコンテンツ収容サーバにアップロードする手段と前記コンテンツデータに対応するポイントを投稿者であるユーザのポイント口座に加算する手段とコンテンツデータのダウンロードを希望する他のユーザからの要求を受けて所望のコンテンツデータをコンテンツ収容サーバから読み出して前記他のユーザに提供するとともに前記他のユーザのポイント口座から対応するポイントを減算する手段と前記他のユーザに提供されたコンテンツデータの投稿者であるユーザのポイント口座に所定のポイントを加算する手段を備えるWWWサーバが開示されており,本願発明に係るコンテンツ流通支援装置と引用文献1に開示されているWWWサーバの構成に格別なる差異は認められない。
(【0022】?【0040】,【図1,2,5,8,9,10,11】等参照。)
拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。
引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2002-99746号公報(以下略)』

(4)請求人の主張
平成19年10月22日付けの手続補正書(方式)により補正された平成19年9月20日付けの審判請求書における審判請求人の主張の概要は以下のとおりである。
『(3)本願発明が特許されるべき理由
-中略-
(イ)本願発明と引例の対比
引例1は,コンテンツをアップロードした際に,当該アップロードを行ったユーザに対して割引ポイントを発行するシステムを開示しています。また,他のユーザがコンテンツをダウンロードした際にも,当該コンテンツをアップロードしたユーザにポイントを発行します。
確かに,引例1は,その公報段落[0025]に「価格よりポイント残高が大きければ支払価格を0とする。」との記載があり,リアルマネーの追加支払いをすることなくコンテンツの取得ができることを開示していますが,ここでのポイントはあくまでも「支払った金額に応じて」付与されるポイントであり,本質的には,リアルマネーを介さずにコンテンツを取得することはできません。
したがって,引例1の発明によれば,ファイルのアップロードあるいはダウンロードを行う各ユーザは,前提として銀行等の金融機関や信販会社等との契約あるいは決済処理を行うことが必須となります。そのため,1ファイルのアップロードあるいはダウンロードを行うにも煩雑な事前手続が必要となります。このような事前手続は,コンテンツ流通システム利用の初期段階において大きな障壁となります。
一方,本願発明は,「前記コンテンツ収受手段にてコンテンツファイルを提供した際,及び,前記コンテンツ提供手段にてコンテンツファイルが提供された際に加算されるポイントを利用して,前記コンテンツ提供手段にてコンテンツの提供を受けることを特徴」としますので,リアルマネーを媒介とせず,また換金する必要もなく,それらに伴う煩雑な事前手続を不要としたところに特徴があり,引例1の発明に比べて,システム利用上の簡便性の点できわめて有利な効果を有します。
そもそも,引例1と本願発明はその前提が異なっています。引例1はリアルマネーを使ったコンテンツの購入を大前提とし,その上で付加的にポイントを利用した割引サービスを提供するものであるのに対して,本願発明では,リアルマネーを一切使用しないサービスであることを前提としています。したがって,例えば,コンテンツの提供を受けるためのポイントが不足している場合,本願発明では,上述した構成により,ポイントが足りない旨をユーザに通知してコンテンツ提供処理が終了するのに対して,引例1の発明では,単にリアルマネーでの支払いを要求されることとなり,本願発明の上述したような構成をとることはありえません。
よって,引例1は,本願請求項1及び2に係る発明の構成及び効果を何ら開示するものではないから,本願請求項1及び2に係る発明は,引例1から容易に想到し得るものではないと言えます。
(4)むすび
したがって,本願発明は引例に記載された発明から,当業者が容易に発明をすることができたものではありません。よって,原査定を取り消す,この出願の発明はこれを特許すべきものとする,との審決を求めます。』(以上,審判請求書における請求人の主張を引用した。)

(5)進歩性について
本願補正発明が,特許法第29条第2項の規定を満たしているかを検討する。

(5-1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-099746号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに以下の下記(a)-(f)の事項が記載されている。
(a)「【発明の属する技術分野】本発明は,インターネットを経由したショッピングの際のポイント管理方法及び装置並びに記憶媒体,ポイント管理システムに関する。」(段落【0001】)
(b)「本実施例では,コンテンツ販売業者が,インターネット経由で写真のデータをダウンロードすることにより,有料もしくは無料で写真をユーザに提供する。このコンテンツ販売において,購入者であるユーザB(図1)が支払った金額に応じてポイントが付与され,次回以降の購入時にこのポイントを充当することで割引となるポイント制を導入しており,さらに,投稿者であるユーザAが写真のデータを投稿した場合にもこのポイントが加算される。(中略)図1において,1はユーザ(投稿者)Aの所有するパーソナルコンピュータ(以下,PC)である。2はユーザPC1に接続されたデジタルカメラなどのコンテンツの入出力機器である。3はインターネットである。4はコンテンツ販売事業者のWWWサーバである。5はコンテンツを蓄積・管理するコンテンツ収容サーバである。6はユーザのポイントを管理するデータベースである。7は他のユーザ(コンテンツ購入者)Bの所有するパーソナルコンピュータ(以下,PC)である。」(段落【0017】?【0019】)
(c)「このような構成によって成り立つコンテンツ販売事業者のシステムにおいて,情報を投稿するユーザに対するポイント管理方法について説明する。(中略)
まず,ユーザBがコンテンツ販売事業者のコンテンツ収容サーバ5に収容されている写真を購入する場合を例にして,図2のWWWサーバ4の動作を示したフローチャートをもとに説明する。(中略)
図3はWWWサーバ4が写真販売時に示す画面の一例を示した図である。S204でユーザBは図3に示す写真販売ページ301を閲覧し,この中から購入したい写真302をクリックすることにより選択する。S205で,選択終了後,購入決定ボタン305をクリックすると,WWWサーバ4はこれを受け付ける。クリックをするまでは選択できる。S206で,ユーザBが購入の決定をした時に,入力ボックス303,304からユーザBの会員IDやパスワードの入力を受け付ける。ユーザBがこのコンテンツ販売事業者のポイント制の会員であるならば,ユーザBはポイント口座を持っており,そのポイント情報はデータベース6の中に蓄積されている。(中略)
S208で,ユーザBがポイント会員であるならば,WWWサーバ4はデータベース6内のデータからユーザBのポイント情報を読み出す。S209で,WWWサーバ4は図4に示すような写真販売支払確認ページ401を提示し,ボタン402または403でユーザBにポイントを充当するか否かを選択させる。S210で,ユーザBがポイントを充当するなら,データベース6から得たユーザBのポイント残高より支払価格を算出する。具体的には,価格からポイント残高を引いた数値を支払価格とし,価格よりポイント残高が大きければ支払価格を0とする。(中略)コンテンツ収容サーバ5から写真のデータのダウンロードが開始され,PC7に写真のデータが送信される。S214で,無事ダウンロードが終了すると,支払いにより発生するポイントと,充当したため消滅するポイントを計算し,データベース6に記録して,販売取引は終了する。(中略)
次に本発明の主要部分である,投稿者であるユーザAが写真のデータを投稿する場合について,WWWサーバ4の動作を示した図5をもとに説明する。(中略)
ユーザAは,デジタルカメラ2などにより撮影された写真のデータを,メモリカードの差し替えやインターフェースケーブルの接続などの手段によりPC1に転送する。(中略)
S507で,ユーザAのPC1からコンテンツ収容サーバ5への写真データのアップロードが行われ,コンテンツ収容サーバ5は写真データを受信し,同時にWWWサーバ4はデータサイズのカウントを行う。(中略)
S508で,図7に示したように,転送終了時のデータサイズに応じてポイント数を算出し,データベース6に情報を送る。データベース6ではWWWサーバ4から送られた情報を元にユーザAのポイント数を加算する。例えば図4のように,ユーザBの支払金額が\300の場合,その10%の30ポイントを蓄積して,充当時には\30割引となる。」(段落【0020】?【0029】)
(d)「(第2の実施例)(中略)
次に,ユーザBがコンテンツ販売事業者のコンテンツ収容サーバ5に収容されている写真(ユーザAが投稿した写真を含む)を購入する場合に,購入したユーザBと先に登録したユーザAにポイントが加算されることを,WWWサーバ4の動作を示した図9および図10をもとに説明する。(中略)
S913でダウンロードが開始され,PC7へ写真データが送信されると,S914で,ダウンロードする写真データの中に,投稿による写真が含まれているかどうかを判断する。含まれている場合は,後述する投稿者へのポイントアップのプロセスを起動させる。ポイントアップ後,もしくはS914で投稿による写真が含まれていない場合は,S916で,無事ダウンロードが終了すると,支払いにより発生するポイントと,充当したため消滅するポイントを計算し,データベース6に記録し,販売取引は終了する。(中略)
S1001で,投稿者ポイントアップのプロセスが起動されると,S1002で,起動される際にパラメータとして与えられた投稿者の会員IDを一つずつ読み出し,S1003で,データベースに確認のため照会する。ここではユーザAのIDが照会され,確かに会員であることを確認する。S1004で,ポイントをユーザAのポイントに加算してデータベース6に記録する。一件ダウンロードされると,一件分のポイントが加算される。(以下,略)」(段落【0032】?【0037】)
(e)「本実施例中ではコンテンツは写真であったが,写真に限らずその他の静止画,動画,また音楽データ,文書等でも構わない。」【0039】
(f)「実施例1と実施例2の算出方法を組み合わせても良い。」(段落【0040】)

上記摘記事項(a),(b),(c)から,引用例1のポイント管理装置は,インターネットを経由したショッピングの際のポイント管理装置に関する発明であって,コンテンツを蓄積・管理するコンテンツ収容サーバと,ユーザのポイントを管理するデータベースを備え,当該データベースの中に,ユーザのポイント情報が蓄積されているので,引用例1には,ユーザごとのポイントを記録するデータベースと,ユーザに提供可能なコンテンツファイルを蓄積するコンテンツ収容サーバと,を備えたポイント管理装置が開示されている。

また,上記摘記事項(c),(e)より,引用例1のポイント管理装置は,投稿者であるユーザが写真のデータを投稿する場合に,ユーザは,デジタルカメラなどにより撮影された写真のデータを,メモリカードの差し替えやインターフェースケーブルの接続などの手段によりPC1に転送している。そして,PC1からコンテンツ収容サーバへの写真データのアップロードが行われ,コンテンツ収容サーバは写真データを受信し,同時にWWWサーバがポイント数を算出し,データベースに情報を送り,データベースではWWWサーバから送られた情報を元にユーザのポイント数を加算することが開示されている。引用例1において,写真データを転送する際には,ファイル形式で転送されると考えるのが自然であるので,引用例1には,ユーザからコンテンツファイルを収受して前記コンテンツ収容サーバに蓄積するとともに,該コンテンツファイルを提供したユーザの前記ポイントにポイント値を加算するコンテンツ収受の機能を備えたポイント管理装置が開示されている。

また,上記摘記事項(c),(d),(e),(f)より,引用例1のポイント管理装置は,ユーザが購入したい写真を選択し,購入決定ボタンをクリックすると,WWWサーバがこれを受け付け,WWWサーバはデータベース内のデータからユーザのポイント情報を読み出し,ユーザがポイントを充当するなら,データベースから得たユーザのポイント残高より,価格からポイント残高を引いた数値を支払価格とし,価格よりポイント残高が大きければ支払価格を0としている。そして,コンテンツ収容サーバから写真のデータのダウンロードが開始され,PCに写真のデータが送信され,ダウンロードする写真データの中に,投稿による写真が含まれている場合は,投稿者へのポイントアップのプロセスを起動させ,ポイントを投稿したユーザのポイントに加算してデータベースに記録している。さらに,ポイントアップ後,ダウンロードが終了すると,購入したユーザの支払いにより発生するポイントと,充当したため消滅するポイントを計算し,データベースに記録している。よって,引用例1には,ユーザから提供を希望するコンテンツファイルを指定する情報を受け付ける受付の機能と,前記指定情報の受付に応じて,前記ユーザに対応する前記データベースに記録されたポイントが,前記指定されたコンテンツファイルを提供するために必要なポイントを充足するか否かを判定する判定の機能と,前記記録されたポイントが前記提供するために必要なポイントを充足すると判定された場合は,ユーザに対して前記コンテンツ収容サーバから前記指定されたコンテンツファイルを読み出して提供するとともに,該コンテンツファイルの提供を受けたユーザの前記ポイントからポイント値を減算し,当該コンテンツファイルを提供したユーザの前記ポイントにポイント値を加算するコンテンツ提供の機能を備えたポイント管理装置が開示されている。

また,上記摘記事項(a)?(f)より,引用例1のポイント管理装置は,投稿者であるユーザが写真のデータを投稿した場合と,ユーザが投稿した写真が購入された場合にポイントが加算されるのであって,ユーザが購入時に,データベースから得たユーザのポイント残高より,価格からポイント残高を引いた数値を支払価格とし,価格よりポイント残高が大きければ支払価格を0とするように,ポイントを充当することが可能であるのだから,引用例1には,前記コンテンツ収受手段にてコンテンツファイルを提供した際,及び,前記コンテンツ提供手段にてコンテンツファイルが提供された際に加算されるポイントを利用して,前記コンテンツ提供手段にてコンテンツの提供を受ける機能を備えたポイント管理装置が開示されている。

そうすると,上記摘記事項(a)-(f)によれば,引用例1には,
「ユーザごとのポイントを記録するデータベースと,
ユーザに提供可能なコンテンツファイルを蓄積するコンテンツ収容サーバと,
ユーザからコンテンツファイルを収受して前記コンテンツ収容サーバに蓄積するとともに,該コンテンツファイルを提供したユーザの前記ポイントにポイント値を加算するコンテンツ収受の機能と,
ユーザから提供を希望するコンテンツファイルを指定する情報を受け付ける受付の機能と,
前記指定情報の受付に応じて,前記ユーザに対応する前記データベースに記録されたポイントが,前記指定されたコンテンツファイルを提供するために必要なポイントを充足するか否かを判定する判定の機能と,
前記記録されたポイントが前記提供するために必要なポイントを充足すると判定された場合は,ユーザに対して前記コンテンツ収容サーバから前記指定されたコンテンツファイルを読み出して提供するとともに,該コンテンツファイルの提供を受けたユーザの前記ポイントからポイント値を減算し,当該コンテンツファイルを提供したユーザの前記ポイントにポイント値を加算するコンテンツ提供の機能とを備え,
前記コンテンツ収受手段にてコンテンツファイルを提供した際,及び,前記コンテンツ提供手段にてコンテンツファイルが提供された際に加算されるポイントを利用して,前記コンテンツ提供手段にてコンテンツの提供を受ける機能を備えたポイント管理装置。」の発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認められる。

(5-2)対比
本願補正発明と引用例1発明とを対比すると,引用例1発明の「データベース」,「コンテンツ収容サーバ」は,本願補正発明の「ポイント記録手段」,「コンテンツ蓄積手段」に相当する。
また,引用例1発明の「ポイント管理装置」は,以下の相違点があるものの,投稿者であるユーザがコンテンツを投稿してポイントを得る機能と,ユーザがコンテンツとポイントを交換する機能とを備えている点で,本願補正発明の「コンテンツ流通支援装置」の概念を包含している。
さらに,引用例1発明の「コンテンツ収受の機能」,「受付の機能」,「判定の機能」,「コンテンツ提供の機能」は,以下の相違点があるものの,それぞれの機能が,本願補正発明の「コンテンツ収受手段」,「受付手段」,「判定手段」,「コンテンツ提供手段」のそれぞれの手段の概念を包含している。
してみれば,本願補正発明と引用例1発明とは,以下の点で一致し,[相違点1],[相違点2]の点で相違する。

[一致点]
「ユーザごとのポイントを記録するポイント記録手段と,
ユーザに提供可能なコンテンツファイルを蓄積するコンテンツ蓄積手段と,
ユーザからコンテンツファイルを収受して前記コンテンツ蓄積手段に蓄積するとともに,該コンテンツファイルを提供したユーザの前記ポイントにポイント値を加算するコンテンツ収受の機能と,
ユーザから提供を希望するコンテンツファイルを指定する情報を受け付ける受付の機能と,
前記指定情報の受付に応じて,前記ユーザに対応する前記ポイント記録手段に記録されたポイントが,前記指定されたコンテンツファイルを提供するために必要なポイントを充足するか否かを判定する判定の機能と,
前記記録されたポイントが前記提供するために必要なポイントを充足すると判定された場合は,ユーザに対して前記コンテンツ蓄積手段から前記指定されたコンテンツファイルを読み出して提供するとともに,該コンテンツファイルの提供を受けたユーザの前記ポイントからポイント値を減算し,当該コンテンツファイルを提供したユーザの前記ポイントにポイント値を加算するコンテンツ提供の機能を備え,
前記コンテンツ収受手段にてコンテンツファイルを提供した際,及び,前記コンテンツ提供手段にてコンテンツファイルが提供された際に加算されるポイントを利用して,前記コンテンツ提供手段にてコンテンツの提供を受ける機能を備えたコンテンツ流通支援装置。」

[相違点1]
本願補正発明では,コンテンツ流通支援装置が,「コンテンツ収受手段」,「受付手段」,「判定手段」,「コンテンツ提供手段」とを有しているのに対し,引用例1発明では,コンテンツ流通支援装置に相当するポイント管理装置が,「コンテンツ収受の機能」,「受付の機能」,「判定の機能」,「コンテンツ提供の機能」をそれぞれ備えているものの,各機能を,「コンテンツ収受手段」,「受付手段」,「判定手段」,「コンテンツ提供手段」とに分けて構成していない点。

[相違点2]
本願補正発明では,コンテンツ流通支援装置が,「前記コンテンツ収受手段にてコンテンツファイルを提供した際,及び,前記コンテンツ提供手段にてコンテンツファイルが提供された際に加算されるポイントを利用して,前記コンテンツ提供手段にてコンテンツの提供を受けることを特徴と」しているのに対し,引用例1発明では,コンテンツ流通支援装置に相当するポイント管理装置が,「前記コンテンツ収受の機能にてコンテンツファイルを提供した際,及び,前記コンテンツ提供の機能にてコンテンツファイルが提供された際に加算されるポイントを利用して,前記コンテンツ提供の機能にてコンテンツの提供を受ける」機能を備えているものの,当該機能を特徴としておらず,その結果,本願補正発明では,コンテンツ提供手段が「前記記録されたポイントが前記提供するために必要なポイントを充足しないと判定された場合は,その旨を通知して終了する」機能を備えているのに対し,引用例1発明では,コンテンツ提供の機能が,そのような機能を備えていない点。

(5-3)当審の判断
[相違点1]について
コンピュータを用いた装置において,コンピュータが備える機能を,機能別の手段に分けて構成することは,当業者が適宜決定し得る設計的事項であるので,引用例1発明の「コンテンツ収受の機能」,「受付の機能」,「判定の機能」,「コンテンツ提供の機能」を,それぞれ「コンテンツ収受手段」,「受付手段」,「判定手段」,「コンテンツ提供手段」とに分けて構成することは当業者にとって容易である。
よって,引用例1発明において,相違点1に係る本願補正発明の構成を得ることは,当業者が容易になし得た事項である。

[相違点2]について
まず,ポイントを用いてユーザのアクセスを促すために,ユーザが現金やクレジットを用いることなくポイントを蓄積し,当該ポイントを何らかの対価と交換するコンピュータ装置は,例えば,特開2002-056289号公報(以下,「周知例1」という。)の段落【0022】に,「ユーザーが,コンテンツ見出し領域6内の見出しの一つをクリックすると,この見出しに対応するコンテンツの内容が,ユーザー端末3の表示装置3aに表示される。ただし,コンテンツの内容を表示させるには,「ポイント」が必要になる。ユーザーが,この「ポイント」を獲得するには,バナー広告領域7内のバナー広告をクリックする。バナー広告をクリックすると,ユーザーは,所定のポイントを獲得することができる。そして,獲得したポイントを用いて,コンテンツの内容を表示させることができる。コンテンツの内容を表示させると,所定のポイントだけ,ユーザーが持っていたポイントが減少する。以上の仕組みにより,ホームページの運用者は,自分が運用するホームページに掲載されたバナー広告の,ユーザーによる閲覧を促進させることができる。」ことが,また,特開2001-319073号公報(以下,「周知例2」という。)の【要約】に,「ポータルサイト1が,消費者端末2から投稿された投稿情報に投稿料をポイントとして与え,投稿情報の確認後にコンテンツとしてデータベースに蓄積し,投稿者以外の者がコンテンツを利用する場合には投稿者以外の者から利用料の支払いを受けると共に,投稿者に著作権料をポイントとして与え,その投稿者がデータベースに蓄積されたコンテンツを利用する場合には,与えられたポイントを用いて利用料の支払いに充てることを可能としたオンデマンドコンテンツ提供システムである。」ことが開示されているように,当業者に周知の事項である。
また,ポイントを何らかの対価と交換するコンピュータ装置において,保有するポイントが対価との交換に不足している際の処理として,不足していることを通知して交換を行わない技術は,例えば,特開2002-063330号公報(以下,「周知例3」という。)の段落【0059】に「残ポイント数と商品の購入に必要なポイント数とが比較され,(中略)ユーザの残ポイント数が不足する場合は,その旨を表示し(814),処理は最初に戻される。」ことが,また,特開2002-092469号公報(以下,「周知例4」という。)の段落【0076】に「会員データベース131より当該会員の現在保有する累積ポイントを読み込み,選択された賞品に必要なポイント数を賞品データベース134から読み出し,ポイントが足りているか否かを判定する。ポイントが不足する場合には,「交換できません」のメッセージを表示する。」ことが記載されているように,当業者に周知の事項である。
引用例1記載のコンテンツ流通支援装置に相当するポイント管理装置は,「前記コンテンツ収受手段にてコンテンツファイルを提供した際,及び,前記コンテンツ提供手段にてコンテンツファイルが提供された際に加算されるポイントを利用して,前記コンテンツ提供手段にてコンテンツの提供を受ける」機能を備えているコンピュータ装置であり,ポイントを用いてユーザのアクセスを促すために,ユーザが現金やクレジットを用いることなくポイントを蓄積し,当該ポイントを何らかの対価と交換するコンピュータ装置が当業者に周知であるのであるから,引用例1発明のコンテンツ流通支援装置に相当するポイント管理装置が備える当該機能を,ユーザーが現金やクレジットを用いることなくポイントを蓄積し,当該ポイントを何らかの対価と交換するために用いることと,その際に,保有するポイントが対価との交換に不足している際の処理として,不足していることを通知して交換を行わない周知の事項を参酌することは,当業者にとって容易である。その際,さらに,「[相違点1]について」で検討したとおり「コンテンツ提供の機能」を「コンテンツ提供手段」に設計変更することも,当業者にとって容易である。
すなわち,引用例1発明の「コンテンツ流通支援装置」に相当する「ポイント管理装置」を「前記コンテンツ収受手段にてコンテンツファイルを提供した際,及び,前記コンテンツ提供手段にてコンテンツファイルが提供された際に加算されるポイントを利用して,前記コンテンツ提供手段にてコンテンツの提供を受けることを特徴と」させ,それに伴い,「コンテンツ提供手段」に「前記記録されたポイントが前記提供するために必要なポイントを充足しないと判定された場合は,その旨を通知して終了する」機能を備えさせることは,当業者が容易に想到し得た事項である。
よって,引用例1発明において,相違点2に係る本願補正発明の構成を得ることは,当業者が容易になし得た事項である。

審判請求書における審判請求人の主張についても検討したが,本願補正発明が,「前記コンテンツ収受手段にてコンテンツファイルを提供した際,及び,前記コンテンツ提供手段にてコンテンツファイルが提供された際に加算されるポイントを利用して,前記コンテンツ提供手段にてコンテンツの提供を受けることを特徴」としており,リアルマネーを媒介とせず,また換金する必要もなく,それらに伴う煩雑な事前手続を不要としたところに特徴があるとしても,上記「[相違点2]について」で検討したとおり,引用例1発明のコンテンツ流通支援装置が備える当該機能を,ユーザーが現金やクレジットを用いることなくポイントを蓄積し,当該ポイントを何らかの対価と交換するために用いることと,その際に,保有するポイントが対価との交換に不足している際の処理として,不足していることを通知して交換を行わない周知の事項を採用することは,当業者が容易に想到し得たことであるので,当該主張を採用することができない。

(5-4)まとめ
以上のとおり,本願補正発明は,引用例1発明並びに周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(6)まとめ
したがって,仮に,本件補正が,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものとしても,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明について
(1)本願発明について
平成19年10月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成19年6月25日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「ユーザごとのポイントを記録するポイント記録手段と,
ユーザに提供可能なコンテンツファイルを蓄積するコンテンツ蓄積手段と,
ユーザからコンテンツファイルを収受して前記コンテンツ蓄積手段に蓄積するとともに,該コンテンツファイルを提供したユーザの前記ポイントにポイント値を加算するコンテンツ収受手段と,
ユーザから提供を希望するコンテンツファイルを指定する情報を受け付ける受付手段と,
前記指定情報の受付に応じて,前記ユーザに対応する前記ポイント記録手段に記録されたポイントが,前記指定されたコンテンツファイルを提供するために必要なポイントを充足するか否かを判定する判定手段と,
前記記録されたポイントが前記提供するために必要なポイントを充足すると判定された場合に,ユーザに対して前記コンテンツ蓄積手段から前記指定されたコンテンツファイルを読み出して提供するとともに,該コンテンツファイルの提供を受けたユーザの前記ポイントからポイント値を減算し,当該コンテンツファイルを提供したユーザの前記ポイントにポイント値を加算するコンテンツ提供手段と
を有するコンテンツ流通支援装置。」

(2)進歩性(特許法29条2項に規定する要件)について
本願発明が,特許法第29条第2項の規定の規定を満たしているかを検討する。

(2-1)引用例1?2
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及びその摘記事項(a)-(f)は,前記2.「(5-1)引用例」に記載したとおりである。

(2-2)対比・判断
本願発明は,前記2.で検討した本願補正発明から,「コンテンツ提供手段」の限定事項である「前記記録されたポイントが前記提供するために必要なポイントを充足しないと判定された場合は,その旨を通知して終了」することと,「コンテンツ流通支援装置」の限定事項である「前記コンテンツ収受手段にてコンテンツファイルを提供した際,及び,前記コンテンツ提供手段にてコンテンツファイルが提供された際に加算されるポイントを利用して,前記コンテンツ提供手段にてコンテンツの提供を受けることを特徴と」することを省いたものである。(補正箇所を示す下線は,手続補正書記載のものを援用した。)
そうすると,本願発明は,引用例1発明と下記の点で一致し,「2.(5-2)対比」にて対比したとおりの[相違点1]の点で相違することとなる。
[一致点]
「ユーザごとのポイントを記録するポイント記録手段と,
ユーザに提供可能なコンテンツファイルを蓄積するコンテンツ蓄積手段と,
ユーザからコンテンツファイルを収受して前記コンテンツ蓄積手段に蓄積するとともに,該コンテンツファイルを提供したユーザの前記ポイントにポイント値を加算するコンテンツ収受の機能と,
ユーザから提供を希望するコンテンツファイルを指定する情報を受け付ける受付の機能と,
前記指定情報の受付に応じて,前記ユーザに対応する前記ポイント記録手段に記録されたポイントが,前記指定されたコンテンツファイルを提供するために必要なポイントを充足するか否かを判定する判定の機能と,
前記記録されたポイントが前記提供するために必要なポイントを充足すると判定された場合は,ユーザに対して前記コンテンツ蓄積手段から前記指定されたコンテンツファイルを読み出して提供するとともに,該コンテンツファイルの提供を受けたユーザの前記ポイントからポイント値を減算し,当該コンテンツファイルを提供したユーザの前記ポイントにポイント値を加算するコンテンツ提供の機能と,
を有するコンテンツ流通支援装置。」

[相違点1]について検討すると,「2.(5-3)当審の判断」の「[相違点1]について」で判断したとおり,引用例1発明において,相違点1に係る本願補正発明の構成を得ることは,当業者が容易になし得た事項であるので,本願発明も同様の理由により,引用例1発明並びに周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1発明並びに周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項の発明について検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-28 
結審通知日 2010-02-02 
審決日 2010-02-15 
出願番号 特願2003-186718(P2003-186718)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q)
P 1 8・ 572- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 智康  
特許庁審判長 清田 健一
特許庁審判官 齋藤 哲
須田 勝巳
発明の名称 コンテンツ流通支援装置及びプログラム  
代理人 高橋 敬四郎  

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