• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て成立) B01D
管理番号 1214465
判定請求番号 判定2009-600047  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2010-05-28 
種別 判定 
判定請求日 2009-12-08 
確定日 2010-04-08 
事件の表示 上記当事者間の特許第2551480号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「スクレ?パ濾過システム」は,特許第2551480号発明の技術的範囲に属する。 
理由 1.請求の趣旨・手続の経緯
本件判定請求の趣旨は,イ号図面及びその説明書に示す「スクレーパ濾過システム」(以下,「イ号物件」という。)は,平成21年4月28日に存続期間満了により権利消滅している特許第2551480号(以下,「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属するとの判定を求めるものである。
これに対し,平成22年1月7日付け(再送日は同月20日)で被請求人に判定請求書副本を送達するとともに,期間を指定して答弁書を提出する機会を与えたが,被請求人からは何らの応答もなされなかった。

2.本件特許発明
本件特許発明は,特許明細書及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1,2に記載されたとおりのものであり,このうち,請求人が上記判定を求めるのは請求項1に係る発明であり(以下,「本件特許発明1」という。),その構成要件を符号を付けて分説して記載すると次のとおりである(以下,「構成要件A」などという。)。

「A 濾カスに圧力を加えて前方に押し出しながら濾過を行うスクレーパ濾過システムであって,
B 筒状ないし円錐状の所望の濾過孔を有するフィルタエレメントの
C 周面に沿って回転するスクリュ状羽根の外周端面全域に沿って,前記フィルタエレメントと摺接し,スクリュ状羽根の前後に隙間を開けずに設けたスクレーパ機構を設けて
D 前記フィルタエレメントの周面に付着する濾カス固形分を引掻除去できるようにしてなることを特徴とする
E スクレーパ濾過システム。」

3.イ号物件
(1)イ号物件の特定
イ号図面が,甲第4号証(特許第3222738号公報)に基づくものであり,イ号図面の説明書もまた,甲第4号証の記載に基づくものであることから,イ号物件は甲第4号証に基づき特定されるものとして,判定を行う。
(2)イ号物件の構成
イ号図面及びその説明書の記載事項を総合すると,イ号物件は,その構成を請求人の主張に沿って本件特許発明1の分説と対応するよう分説すれば,次のとおりの構成を具備するものと認められる(以下,「構成a」などという。)。

「a 圧縮された原料7が,スクリーン4により圧搾分離液12と脱水粕11に分離され,下方に押し出される,縦形式固液分離精製搾り機1であって,
b スクリーン4は無数の微細な細孔を有し,円錐状に形成され,
c スクリュー3の羽根18先端全長に亘り接合される摺接部材18aは,スクリーン4内面を摺動し,
d 摺接部材18aは,スクリーン4の目詰まりを防止する,
e 縦形式固液分離精製搾り機1。」

なお,イ号物件は,請求人の特許権を侵害していたとする被請求人の搾り装置(判定請求書3頁「2.判定の必要性」)であるか否か不明であることを,念のため申し添える。

4.対比・判断
イ号物件の構成が本件特許発明1の各構成要件を充足するか否かについて,検討する。
(1)構成要件A,Eについて
イ号物件の「スクリーン4により圧搾分離液12と脱水粕11に分離され」は、本件特許発明1の「濾過を行う」に対応するものと認められる。そして、イ号物件の圧縮された「原料7」は,同時に「スクリーン4により圧搾分離液12と脱水粕11に分離され」るから,本件特許発明1の「濾カス」に対応するものと認められる。また,イ号物件の「圧縮された」とは,イ号図面の説明書の「スクリーン4と羽根18および羽根18先端に接合された摺接部材18a間に形成される間隙内で次第に圧縮される」との記載からみて,スクリーン4,羽根18,及び摺接部材18aの3つの部材で形成される間隙内で圧力を受けながら,圧縮されたことと認められる。
そして,イ号物件の「下方に押し出される」とは,縦形式固液分離精製搾り機の下方,すなわち進行方向であるから,前方に押し出すことと認められる。
さらに,イ号物件の「縦形式固液分離精製搾り機1」は,イ号図面の説明書に「縦形式固液分離精製搾り機1は・・・スクリュー3の羽根18先端に接合される摺接部材18a(・・・)と,該摺接部材18aが摺動するスクリーン4等からなる」,「摺接部材18aは,上記スクリ-ン4内面を摺動して原料7をスクリーン4に押しつけ,圧力の損失をなくすと共にスクリーン4の目詰まりを防止する」と記載されていることからみて,摺接部材18aを有し,該摺接部材18aは圧力の損失をなくす程度にスクリーン内面に密着して摺動し,スクリーン4内面の原料7を引掻除去するスクレーパ作用を備えるものと認められる。そうすると,イ号物件の「縦形式固液分離精製搾り機1」は,スクレーパ作用を備える,スクレーパ濾過システムであると認められる。
以上のとおりであるから,イ号物件の構成a「圧縮された原料7が,スクリーン4により圧搾分離液12と脱水粕11に分離され,下方に押し出される,縦形式固液分離精製搾り機1であって,」及び構成e「縦形式固液分離精製搾り機1」は,それぞれ,本件特許発明1の構成要件A「濾カスに圧力を加えて前方に押し出しながら濾過を行うスクレーパ濾過システムであって,」及び構成要件E「スクレーパ濾過システム」を充足する。
(2)構成要件Bについて
イ号図面の説明書に「圧縮された原料7はスクリーン4により圧搾分離液12と脱水粕11に分離される。・・・圧縮されて発生する液体もスクリーン4の全面から圧出し,圧搾分離液12となる。」と記載されていることからみて,イ号物件の「スクリーン4」及び「無数の微細な細孔」は,それぞれ,本件特許発明1の「フィルタエレメント」及び「濾過孔」に対応するものと認められる。
そうすると,イ号物件の構成b「スクリーン4は無数の微細な細孔を有し,円錐状に形成され,」は,本件特許発明1の構成要件B「円錐状の所望の濾過孔を有するフィルタエレメントの」を充足する。
(3)構成要件Cについて
イ号物件の「スクリュー3の羽根18」及び「先端全長に亘り」は,それぞれ,本件特許発明1の「スクリュ状羽根」及び「外周端面全域に沿って」に対応するものと認められる。
そして,イ号物件の「摺接部材18a」は,上記(1)における検討のとおりスクレーパ作用を備えると認められるから,本件特許発明1の「スクレーパ機構」に対応するものと認められる。また,イ号物件の「接合される」は,本件特許発明1の「設けた」に対応するものと認められる。
さらに,イ号物件の「スクリーン4内面を摺動し」は,イ号図面の説明書の「スクリーン4は・・・スクリュー3の羽根18先端に接合される摺接部材18aが摺動する状態に配置される。」との記載からみて,本件特許発明1のフィルタエレメントの「周面に沿って回転する」と「前記フィルタエレメントと摺接し」の双方に対応するものと認められる。
そうすると,イ号物件の構成cは,本件特許発明1の構成要件Cのうち,「周面に沿って回転するスクリュ状羽根の外周端面全域に沿って,前記フィルタエレメントと摺接し,スクリュ状羽根に設けたスクレーパ機構を設けて」を充足するが,本件特許発明1の構成要件Cがスクリュ状羽根に「前後に隙間を開けずに」スクレーパ機構を設けているのに対し,イ号物件の構成cの摺接部材18aに関しては,上記「前後に隙間を開けずに」に対応する構成がない点で一応相違している。
そこで,本件特許発明1の構成要件Cの「前後に隙間を開けずに」の技術的意味について検討するに,本件特許明細書の実施例に「スクリュ状羽根の前後に隙間がないので加圧力の洩れを生ずることなく」と記載され(本件特許公報3頁5欄20?21行),発明の効果に「スクレーパ機構がスクリュ状羽根の前後に隙間を開けずに設けられ,その全域がフィルタエレメントに摺接していることにより,加圧力の洩れが生じることがなく」と記載されている(同3頁6欄13?16行)。これらの記載を踏まえると,「前後に隙間を開けずに」とは,加圧力の洩れが生じないよう,スクレーパ機構をフィルタエレメントに連続的に摺接するようにスクリュ状羽根に設けること,と解するのが通常である。
一方,イ号物件の「摺接部材18a」は,イ号図面の説明書及び甲第4号証に「摺接部材18aは,上記スクリーン4内面を摺動して原料7をスクリーン4に押しつけ,圧力の損失をなくす」,「摺接部材がスクリーン内面を摺動するため,圧力損失を防ぐことができ」と記載されていることからみて,加圧力の洩れが生じないよう,スクリーン4内面を連続的に摺動するようにスクリュー3の羽根18に接合されている,すなわちスクリュー3の羽根18の前後に隙間を開けずに接合されているものと認められる。
以上のとおりであるから,上記の一応相違する点において,本件特許発明1とイ号物件に差異があるということはできず,イ号物件の構成cは,本件特許発明1の構成要件Cを充足する。
(4)構成要件Dについて
上記(1)?(3)の検討に照らし合わせると,イ号物件の構成d「摺接部材18aは,スクリーン4の目詰まりを防止する,」は,本件特許発明1の構成要件D「前記フィルタエレメントの周面に付着する濾カス固形分を引掻除去できるようにしてなることを特徴とする」を充足することは明らかである。

5.むすび
以上のとおりであるから,イ号物件は,本件特許発明1の技術的範囲に属する。
よって,結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2010-03-29 
出願番号 特願平1-107834
審決分類 P 1 2・ 1- YA (B01D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 金 公彦  
特許庁審判長 大黒 浩之
特許庁審判官 五十棲 毅
小川 慶子
登録日 1996-08-22 
登録番号 特許第2551480号(P2551480)
発明の名称 スクレ?パ濾過システム  
代理人 西尾 美良  
代理人 丹羽 宏之  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ