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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 1項2号公然実施 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1214869
審判番号 不服2008-19009  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-24 
確定日 2010-04-08 
事件の表示 特願2004-115702「半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月 9日出願公開、特開2004-348118〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は特許法第41条第1項の規定による優先権の主張を伴う平成16年4月9日(優先日:平成15年4月30日、優先権主張の基礎出願:特願2003-125576号)の出願であって、平成19年11月5日付けで拒絶理由が通知され、平成20年1月15日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年3月7日付けで拒絶理由(いわゆる「最後の拒絶理由通知」である。)が通知され、同年5月19日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月19日付けの手続補正が同年6月18日付けの補正の却下の決定により却下されるとともに、同年3月7日付けの拒絶理由通知書に記載した理由により同年6月18日付けで拒絶査定がなされたため、これを不服として同年7月24日に本件審判請求がされるとともに、同日付けで明細書及び特許請求の範囲について手続補正がなされ、同日付けの審判請求書の請求の理由について同年9月26日付けで手続補正がなされたものである。

第2 補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成20年7月24日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、平成20年1月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲についての

「【請求項1】
フォトマスクに形成されたパターンを半導体基板上のレジスト膜に転写するための露光装置を用意する工程と、
遮光部又は半透明膜に囲まれたホールパターンが一方向にそって3つ以上配列されたパターン列と、前記遮光部又は半透明膜に囲まれて形成された長手方向と短手方向とを有する補助パターンとを有するフォトマスクを用意する工程であって、前記補助パターンは前記ホールパターンの配列方向に直交する方向に一定の距離をおいた位置に配置され、長手方向が前記配列方向に略平行であり、長手方向の長さが前記パターン列の配列方向の長さと同等以上であり、前記レジスト膜に転写されないものであり、
前記露光装置を用いて前記フォトマスクに対して前記配列方向側から斜めに照明光が入射される照明法により、前記フォトマスクに形成されたパターンを前記レジスト膜に転写する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
フォトマスクに形成されたパターンを半導体基板上のレジスト膜に転写するための露光装置を用意する工程と、
遮光部又は半透明膜で構成された長手方向と該長手方向に直交する短手方向とを有する複数のラインパターンが前記短手方向に沿って周期的に配列されたパターン列と、前記遮光部又は半透明膜で構成された長手方向と短手方向とを有する補助パターンとを有するフォトマスクを用意する工程であって、前記補助パターンは前記パターン列のライン端部近傍に配置され、長手方向の長さが前記パターン列の配列方向の長さ以上であり、前記基板上に転写されないものであり、
前記露光装置を用いて前記フォトマスクに対して前記配列方向側から斜めに照明光が入射される照明法により、前記フォトマスクに形成されたパターンを前記レジスト膜に転写する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記各ホールパターンを透過する光の互いの位相差は同位相であり、
前記補助パターンは、透過光の位相が前記ホールパターンの透過光と同位相である第1の補助パターンと、第1の補助パターンと前記ホールパターンとの間に配置され、透過光の位相が前記ホールパターンの透過光と180゜異なる第2の補助パターンとを含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記露光装置の露光波長がλ、前記露光装置の投影レンズの開口数がNAであり、前記補助パターンの幅を基板上での寸法に換算した幅Wは0.3×λ/NA以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記ホールパターンの前記一方向に垂直な辺の長さbと、前記ホールパターンと前記補助パターンの間の距離dとが、0.3×b≦dの関係にあることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記ホールパターンは、NAND型フラッシュメモリのビット線コンタクトホールの形成に用いられることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記補助パターンとして、2本のパターンを平行配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置の製造方法。」

の記載を、

「【請求項1】
フォトマスクに形成されたパターンを半導体基板上のレジスト膜に転写するための露光装置を用意する工程と、
遮光部又は半透明膜に囲まれた長方形のホールパターンが一方向にそって3つ以上配列され、且つホールパターンの長手方向が配列方向と直交するように配列されたパターン列と、前記遮光部又は半透明膜に囲まれて形成されたライン状の第1及び第2の補助パターンとを有するフォトマスクを用意する工程であって、前記第1及び第2の補助パターンは前記ホールパターンの配列方向と平行に前記パターン列に沿って配置され、長手方向の長さが前記パターン列の配列方向の長さと同等以上であり、前記レジスト膜に転写されないものであり、
前記露光装置を用いて前記フォトマスクに対して前記配列方向側から斜めに照明光が入射される照明法により、前記フォトマスクに形成されたパターンを前記レジスト膜に転写する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記ホールパターンの前記一方向に垂直な辺の長さbと、前記ホールパターンと前記第1及び第2の補助パターンの間の距離dとが、0.3×b≦dの関係にあることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記ホールパターンは、NAND型フラッシュメモリのビット線コンタクトホールの形成に用いられることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。」

と補正することを含むものである。

2 本件補正の適否の検討
(1)目的要件についての検討
本件補正は、(ア)本件補正前の請求項2?4,7を削除するとともに、(イ)本件補正前の請求項1,5,6の「ホールパターン」を本件補正後の請求項1,2,3の「長手方向が配列方向と直交する」「長方形のホールパターン」として、「ホールパターン」の形状を限定し、(ウ)本件補正前の請求項1,5,6の「補助パターン」を本件補正後の請求項1,2,3の「ライン状の第1及び第2の補助パターン」として、「補助パターン」の形状及び本数を限定し、(エ)本件補正前の請求項1,5,6の「前記補助パターンは」「長手方向が前記配列方向に略平行であ」ることを本件補正後の請求項1,2,3の「補助パターンは前記ホールパターンの配列方向と平行に前記パターン列に沿って配置され」ることとして、「ホールパターン」に対する「補助パターン」の配置態様を限定することを目的とする補正である。
すると、本件補正のうち上記(ア)の補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下単に「特許法」という。)第17条の2第4項第1号に掲げる「請求項の削除」を目的とする補正に該当し、本件補正のうち上記(イ)?(エ)の補正は、同条項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
したがって、本件補正は、同法第17条の2第4項の規定に適合する。

(2)独立特許要件についての検討
上記(1)で検討したとおり、本件補正のうち本件補正前の請求項1を本件補正後の請求項1とする補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正である。
そこで、本件補正が、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか否か、すなわち、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かを検討する。

ア 本件補正発明の認定
本件補正発明は、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。

「フォトマスクに形成されたパターンを半導体基板上のレジスト膜に転写するための露光装置を用意する工程と、
遮光部又は半透明膜に囲まれた長方形のホールパターンが一方向にそって3つ以上配列され、且つホールパターンの長手方向が配列方向と直交するように配列されたパターン列と、前記遮光部又は半透明膜に囲まれて形成されたライン状の第1及び第2の補助パターンとを有するフォトマスクを用意する工程であって、前記第1及び第2の補助パターンは前記ホールパターンの配列方向と平行に前記パターン列に沿って配置され、長手方向の長さが前記パターン列の配列方向の長さと同等以上であり、前記レジスト膜に転写されないものであり、
前記露光装置を用いて前記フォトマスクに対して前記配列方向側から斜めに照明光が入射される照明法により、前記フォトマスクに形成されたパターンを前記レジスト膜に転写する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。」

イ 引用刊行物の記載事項
本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平11-8179号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の(ア)?(ク)の記載が図面とともにある。

(ア)「【請求項1】斜入射照明光学系を有する投影露光装置を用いてホトマスクに設けられたパタンを基板上に転写する方法において、
前記ホトマスクは少なくとも露光光に対して半透明な領域と主パタンとなる透明な領域を含み、
前記半透明な領域は前記半透明な領域と前記透明な領域を通過する光の位相差が180度となるように調整され、
前記主パタンは繰り返し配置されており、
前記主パタンの繰り返しピッチは前記ホトマスク主面上の水平方向と垂直方向で異なっており、何れかの方向の繰り返しピッチが前記主パタンの大きさの3.2倍以下に配置され、前記基板に転写される前記主パタンの形状を補正するために少なくとも一辺の大きさが前記投影露光装置の投影光学系の解像限界以下の透明な補助開孔部が配置されていることを特徴とするパタン形成方法。
【請求項2】上記斜入射照明は輪帯照明であることを特徴とする請求項1記載のパタン形成方法。」

(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は半導体装置などの製造に用いるホトマスク、特に照明光の位相を変える処理を施したホトマスクの構造に関し、特に転写するパタンの形状補正に関する。」

(ウ)「【0002】
【従来の技術】マスクパタンを転写する露光装置の解像力を向上させる従来技術のひとつとして、特開平04-136854では単一透明パタンの解像度向上手段として、上記単一パタン周囲を半透明にして、すなわち従来型マスクの遮光部を半透明にし、上記半透明部を通過するわずかな光と透明パタンを通過する光の位相を反転させるようにしている。すなわちパタンを転写するレジストの感度以下の光を半透明膜から通過させ、この光と透明パタンを通過してきた光の位相が反転するようにした。半透明膜を通過した光は主パタンを通過してきた光に対して位相が反転しているため、その境界部で位相が反転し、境界部の光強度が0に近づく。これにより、相対的に透明パタンを通過した光の強度とパタン境界部の光強度の比は大きくなり、従来法に比べコントラストの高い光強度分布が得られる。このマスク構造は、従来の遮光膜を位相反転機能をもつ半透明膜に変更するだけで実現でき、マスク製作が簡単であることが特徴である。また周期的に配置されたパタンの焦点深度向上手段として、特開昭61-91662に示すような円環状透明部を持つ特殊絞りを用いた露光装置を用いてパタンを形成する方法がある。この露光装置を用いた場合、周期性を持ったパタンの焦点深度向上が可能である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術において得られる投影像では、形成するパタンのピッチが小さい場合にパタンの形状が変形し(丸が楕円になる等)問題である。このパタンの変形により、実効的な焦点深度が低下し、良好なパタン形成の障害となることが問題となっていた。
【0004】本発明の目的は、パタンの変形を防止し、より大きなリソグラフィプロセスの余裕を得ることにある。」

(エ)「【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明では光源形状を変更し、且つ投影する主パタンに、透過光の位相差が透明領域と同じでかつ透明な補助パタンを配置した。すなわち、斜入射照明法を用い、周期性のあるパタンの形成が容易である事を利用し、周期性のない方向に補助透明パタンを配置したマスクを用いる。
【0006】具体的には、少なくとも露光光に対して半透明な領域と主パタンとなる透明な領域を含み、前記半透明な領域は前記半透明な領域と前記透明な領域を通過する光の位相差が反転するように調整され、前記主パタンは繰り返し配置されており、前記主パタンの繰り返しピッチは前記ホトマスク主面上の水平方向と垂直方向で異なっており、何れかの方向の繰り返しピッチが前記主パタンの大きさの3.2倍以下に配置され、前記基板に転写される前記主パタンの形状を補正するために少なくとも一辺の大きさが前記投影露光装置の投影光学系の解像限界以下の透明な補助開孔部が配置されていることを特徴とするホトマスクやそれを用いたパタン形成方法により達成される。
【0007】なお、ここでは半透明とは光の透過率が25%以下、望ましくは5%以下の状態をいう。」

(オ)「【0008】
【発明の実施の形態】主パタンが透明領域で形成されている場合の、通常マスクの実施例を図1で説明する。図1(a)は従来法のマスクの平面図であり、図1(b)はマスクの断面図である。11はガラス基板、12は半透明位相シフト膜、13は透明領域で形成される主パタンである。半透明位相シフト膜12は、クロムの酸窒化膜(CrON膜)を用いた。
【0009】また、半透明位相シフト膜12の露光光に対する透過率は4%とした。この半透明位相シフト膜12の厚さはこの膜のある領域と無い領域とを透過した光の位相が互いにほぼ反転するような厚さに設定される。なおここでは半透明膜にCrON膜使用したがこれに限らない。CrO、CrN、MoSiO、MoSiONなど、あるいはSiO2等の透明膜との多層膜など、半透明部と透明部と通過する光の位相がほぼ反転していればよく、通常の半透明位相シフトマスク構造で良い。
【0010】図1(c)に示すようにこのマスクを通過した光の振幅分布は、光透過部である主パタン13を通過した光が正の符号であるのに対し、半透明位相シフト膜12を通過した光の位相は反転し負の符号となる。この光をレンズを通しウエハ上に投影すると、図1(d)に示すように光透過部である主パタン13と半透明位相シフト膜12の境界で位相が反転しているためその直下で光強度はほぼ0となる。そのため光強度の広がりが抑えられ、コントラストの高い微細なパタンが形成できる。
【0011】従来の方法を、図2?図6を用いて説明する。図2(a)は従来法のマスクの平面図であり、図2(b)は非連続方向A-A’の、図2(d)は連続方向B-B‘のマスク断面図である。21はガラス基板、22は半透明位相シフト膜、23は透明領域で形成される主パタンである。半透明位相シフト膜22は、CrON膜を用いた。また、半透明位相シフト膜22の露光光に対する透過率は4%とした。なおここでは半透明膜にCrON膜を使用したがこれに限らない。CrO、CrN、MoSiO、MoSiONなど、あるいはSiO2等の透明膜との多層膜など、半透明部と透明部と通過する光の位相がほぼ反転していればよく、通常の半透明位相シフトマスク構造で良い。図2(c)は非連続方向A-A‘の光強度分布、図2(e)は連続方向B-B’の光強度分布である。非連続方向では周期性がなく、孤立に近いことから半透明位相シフトマスクの効果が十分得られ、良好な光強度のプロファイルが得られる。しかし図2(d)に示す連続方向の光強度分布では小さいピッチでパタンが配置されていることから、半透明位相シフトマスクの効果が十分得られず、光強度のプロファイルが劣化しており問題である。この条件で主パタン23の連続方向の転写パタン寸法を0.24μmとした時の、主パタン23のピッチPと転写パタンの非連続方向寸法の関係を図3に示す。ここでパタンの転写には、露光波長λ=0.248μm、レンズの開口数NA=0.55のステッパを用い、照明条件は図3(b)に示す様なσ0.3の通常照明を用いた。また半透明膜の透過率は透明部の透過率を100%とした時4%、透明部と半透明部の位相差が180°、転写する主パタン23に該る光透過部の設計寸法Wを0.30μm角(投影露光光学系の倍率が1/5なので、マスク上では1.5μm角)とした。主パタン23のピッチPがほぼP≧0.75μmの範囲では、十分主パタン同士が離れているため、転写パタンの非連続方向寸法と連続方向の寸法差は十分小さい。主パタン同士の干渉効果により主パタン23のピッチPがほぼ0.52<P<0.75μmの範囲で転写パタンの非連続方向寸法が大きくなり、また主パタン23のピッチPがほぼP<0.52μmの範囲で転写パタンの連続方向寸法が大きくなる楕円形状となってしまい問題である。主パタン23のピッチP=0.48μmパタンの、転写パタンの焦点深度を図4に示す。非連続方向と連続方向の寸法差は約0.03μmと大きく、目標パタン寸法の約13%の寸法差であり問題である。また寸法変動許容量を目標寸法0.24μm±10%とすると、焦点深度は幅で約0.6μmしか得られない。」

(カ)「【0012】一方向に小さいピッチで配置してあるパタンを形成する従来の方法を、図5及び図6に示す。図5に周期パタンで焦点深度向上効果のある、斜入射照明法を併用した場合を説明する。図5(a)はマスクの平面図であり、図5(b)は非連続方向A-A’の、図5(d)は連続方向B-B‘のマスク断面図である。51はガラス基板、52は半透明位相シフト膜、53は透明領域で形成される主パタンである。半透明位相シフト膜52は、CrON膜を用いた。また、半透明位相シフト膜22の露光光に対する透過率は4%とした。なおここでは半透明膜にCrON膜を使用したがこれに限らない。CrO、CrN、MoSiO、MoSiONなど、あるいはSiO2等の透明膜との多層膜など、半透明部と透明部と通過する光の位相がほぼ反転していればよく、通常の半透明位相シフトマスク構造で良い。図5(c)は非連続方向A-A‘の光強度分布、図5(e)は連続方向B-B’の光強度分布である。非連続方向では周期性がなく斜入射照明法の効果が得られないため、光強度のプロファイルは劣下している。しかし図5(d)に示す連続方向の光強度分布では、周期性を持ってパタンが配置されていることから、斜入射照明法の効果によって良好な光強度コントラストが得られる。この条件で得られる主パタン53のピッチP=0.48μmパタンの、転写パタンの焦点深度を図6(a)に示す。図6(b)に示すような斜入射照明法の1つである輪帯照明法を用いた場合にも連続方向に長いパタンが形成され、転写パタンの連続方向と非連続方向の寸法差は約0.01μmで形成される。この寸法差は通常照明法を用いた場合の1/3程度であり小さいが、目標寸法の約4%の変動であり、プロセス裕度を低下させている。また寸法変動許容量を目標寸法0.24μm±10%とすると、焦点深度は幅で約1.05μmが得られ、通常照明法を用いた場合の約1.8倍の焦点深度が得られる。なお、光源形状を四重極形状の照明法を用いた場合においても、ほぼ同様の結果が得られた。」

(キ)「【0013】本発明の原理の説明を図7に、実施例を図8及び図9に示す。本発明では図7(a)に示すように、主パタン73の配置ピッチが大きな非連続方向に、ウエハ上に転写しない主パタンと同じ位相差の透明補助パタン74を配置した。図7(b)は非連続方向A-A‘のマスク断面図であり、図7(d)は連続方向B-B’のマスク断面図である。71はガラス基板、72は半透明位相シフト膜、73は透明領域で形成される主パタンである。半透明位相シフト膜72は、CrON膜を用いた。また、半透明位相シフト膜72の露光光に対する透過率は4%とした。なおここでは半透明膜にCrON膜を使用したがこれに限らない。CrO、CrN、MoSiO、MoSiONなど、あるいはSiO2等の透明膜との多層膜など、半透明部と透明部と通過する光の位相がほぼ反転していればよく、通常の半透明位相シフトマスク構造で良い。図7(c)は非連続方向の光強度分布、図7(e)は連続方向の光強度分布である。非連続方向においても補助パタンを配置することにより、パタンは周期的に配置されたことになり斜入射照明法による効果が得られ、光強度は急峻なプロファイルが得られる。図7(d)に示す連続方向の光強度分布では周期性をもってパタンが配置されていることから、斜入射照明法の効果によって良好な光強度コントラストが得られる。この条件でパタンを形成する事により、連続方向と非連続方向の両方向で、良好なコントラストが得られる。また主パタンの配置ピッチは、図3に示したように干渉の効果が得られる、転写パタン寸法の約3.2倍以下の場合に本発明の効果が得られる。
【0014】図8(a)は転写した主パタンの最大寸法を0.24μmとしたときの、連続方向と非連続方向の寸法と補助パタンの配置位置Rの関係を示している。補助パタンの配置位置Rは、補助パタン74と主パタン73のパタンエッジ間距離である。ここでパタンの転写には、露光波長λ=0.248μm、レンズの開口数NA=0.55のステッパを用い、照明条件は図8(b)に示す様な外径σ0.7、内径σ0.4の輪帯照明を用いた。また半透明膜の透過率は透明部の透過率を100%とした時4%、透明部と半透明部の位相差が180°、転写する主パタン73に該る光透過部の設計寸法Wを0.28μm角(投影露光光学系の倍率が1/5なので、マスク上では1.4μm角)、主パタン73の配置ピッチPは0.48μm(投影露光光学系の倍率が1/5なので、マスク上では2.4μm)のマスクを用いた。補助透明パタン74の幅Gは解像限界以下にする事が望ましく、G=b×λ/NA(ただし露光波長をλ、レンズの開口数をNA、0.05≦b≦0.25)で表わされ、ここではGは0.10μmとした。図8(a)に示すように、ピッチの小さい連続方向と非連続方向の転写パタン寸法は、補助パタンの配置位置Rが約0.225μmを中心として逆転する。また補助パタンの配置位置Rが約0.28μm以上或いは約0.24μm以下では、補助パタンを配置しない場合よりも寸法差が大きくなるため、逆効果となる。補助パタン74の配置位置Rが約0.225μmで連続方向と非連続方向の転写パタン寸法がほぼ同じになる。よって補助透明パタンと主パタンの中心間距離Rは、寸法補正の効果からR=a×λ/NA(ただし露光波長をλ、レンズの開口数をNA、0.53≦a≦0.62)で配置すれば、目標を達成できる。
【0015】図9は補助パタン位置R=0.26μmで形成した転写パタンの焦点深度を示している。補助パタン74を配置することにより、連続方向と非連続方向の転写パタン寸法差は、約0.001μmとほぼ真円に近い値まで低減することができた。また、連続方向と非連続方向の転写パタン寸法差を小さくしたことにより、焦点深度は約1.35μmが得られ、焦点深度も同時に向上した。ここでは照明形状に図8(b)に示すような斜入射照明法の一つである輪帯照明法を用いたが、光源形状を四重極形状の照明法を用いた場合にも、補助パタンを最適な位置に配置することによりほぼ同様の結果が得られた。
【0016】なお、主パタンの配置ピッチや補助パタンの寸法及び係数を上記のように限定したが、主パタン及び補助パタンの大きさや形状、配置位置は半透明領域の透過率及び光源形状によって最適値は異なる。例えば透過率が変わることによって、半透明領域を通過する光強度が変化する。例えば透過率を6%に変更する場合、半透明領域を通過する光強度は大きくなる。これによって、主パタン寸法及び補助パタンの寸法等変更するが、各々最適化すればほぼ問題なくパタンの形状を補正でき、その結果形状の良いパタンがより大きな焦点深度が得られる。また光源の形状を変えることにより配置ピッチの最適値が変わることから、補助パタンを配置する最適位置が変わる。例えば、四重極照明を用いた場合、光源の開口位置によってパタンピッチの最適値が変わってしまい、ピッチによっては従来よりも焦点深度が低下する。これによって、補助パタンの寸法及び配置位置等変更するが、各々最適化すればほぼ問題なくパタンの形状を補正でき、その結果より大きな焦点深度が得られる。したがって、半透明領域の透過率及び光源形状に合わせて補助パタンの配置位置等の最適化が必要である。主パタンの形状は、正方形ホールパタンに限らない。長方形パタン等でも、小さいピッチで連続して配置されている場合は適用可能である。また補助パタンの形状は長方形のスリットパタンに限らない。正方形パタン等でも、主パタンが小さいピッチで連続して配置されており、かつ大きなピッチでパタンが配置されている部分に形状を補正することを目的とするパタンがあれば適用可能である。半透明領域の透過率も本実施例に限らず、透過率に適した係数を使用する事によって適用できる。また、マスクの構造及び材料は本実施例で用いた材料に限らない。すなわち、本発明では使用するマスクの構造が透明領域と半透明領域を含み、かつ透明領域と半透明領域を通過する光の位相差がほぼ180°であって、投影する主パタンが少なくとも一方向に連続して配置されており、且つ大きいピッチで配置されている部分に主パタンと同じ位相でかつ解像しない透明パタンが配置されていれば目的を達成できる。また光源形状は、本文中では輪帯照明法を用いたが、これに限らない。斜入射照明法であれば、四重極等各々の光源に合わせて補助パタンの位置等を変更することにより適用できる。
【0017】本マスクをダイナミックRAMの電極接続孔パタンの形成に適用した例を図10及び図11を用いて説明する。図10は複数個のメモリセルを配置したメモリセル群の平面図である。同図で、ワード線WL1?WL4がY方向に、データ線BL1?BL3がX方向に配されており、王冠型のキャパシタの下部電極101がこれらワード線とデータ線の上部に形成されている。ワード線WL1?WL4の隙間の活性領域102上には、平面形状の長手方向がY方向となるプラグ電極103が該活性領域102に接して、かつ活性領域以外の領域に延在する様にして配されており、該プラグ電極103にはデータ線BL1?BL3が一部で重なるように配されている。さらに、活性領域102上には開孔部104が形成されており、該開孔部介してキャパシタの下部電極101が接続されている。ここで、開孔部104の形成に用いたホトマスクの形状を図11に示す。111は開孔部104の主パタンであり、主パタンの形状を補正することを目的とした補助パタン112を配置した。なおここではパタンの転写に、露光波長λ=0.248μm、レンズの開口数NA=0.55のステッパを用い、照明条件は斜入射照明の一つである外径σ0.7、内径σ0.4の輪帯照明を用いた。また半透明膜の透過率は透明部の透過率を100%とした時4%、透明部と半透明部の位相差が180°、転写する開孔部104に該る主パタン111の設計寸法が0.28μm角(投影露光光学系の倍率が1/5なので、マスク上では1.4μm角)、補助パタン112の巾が0.10μmのマスクを用いた。目標の寸法規格を満たす焦点深度は、補助パタンを用いない場合は約0.9μmであったが、本発明の適用の場合は約1.4μmとなり、約1.5倍の焦点裕度が実現でき、素子の良品歩留りを約10%向上できた。
【0018】
【発明の効果】本発明の適用により、微細パタンを2度露光等工程の増加することなく、穴パタンを十分な余裕をもって密配置できる。特に微細化が困難な超LSIの電極取り出し用穴パタンの微細化及び微細配置が実現でき、また微小ピッチの配置でも十分な焦点深度が確保できるので超LSIの製造を光リソグラフィを用いて実現する事が可能となる。また、超LSI製品の不良率の低減が可能となり、工業的に極めて有利である。」

(ク)図7,11から、四角形のホールパターンである主パタンが連続方向に小さいピッチで3つ連続して配置され、前記3つの主パタンの連続方向の長さよりも長い透明な長方形のスリットパタンである補助パタンが、前記主パタンの非連続方向に前記主パタンを挟むように一対配置されていることを認めることができる。

ウ 引用例1記載の発明の認定
(ア)a 引用例1の上記記載事項(キ)の段落【0016】の「また補助パタンの形状は長方形のスリットパタンに限らない。」との記載から、図7の補助パタンの形状は、長方形のスリットパタンであると認めることができる。
また、引用例1の上記記載事項(キ)の段落【0016】の「主パタンの形状は、正方形ホールパタンに限らない。」との記載から、図7の主パタンの形状は、正方形ホールパタンであると認めることができる。
そして、引用例1の上記記載事項(キ)の段落【0014】に「補助パタンの配置位置Rは、補助パタン74と主パタン73のパタンエッジ間距離である。」と記載され、引用例1には、補助パタン74と主パタン73のパタンエッジ間距離が連続方向で変化する旨の記載もないから、図7の補助パタンのエッジと主パタンエッジとの距離Rは連続方向で一定であり、引用例1の図7の長方形のスリットパタンである補助パタン74の長手方向は、正方形ホールパタンである主パタン73の配列方向(すなわち「連続方向」)に平行であると認めることができる。

b 引用例1の上記記載事項(カ)の段落【0012】の「非連続方向では周期性がなく斜入射照明法の効果が得られないため、光強度のプロファイルは劣下している。」との記載、及び、引用例1の上記記載事項(キ)の段落【0013】の「非連続方向においても補助パタンを配置することにより、パタンは周期的に配置されたことになり斜入射照明法による効果が得られ、光強度は急峻なプロファイルが得られる。」との記載に照らすと、引用例1の図7において、主パタン73の非連続方向の繰り返しピッチは、補助パタン74がなければ斜入射照明法の効果が得られない程大きいと認めることができる。すると、引用例1の図7の主パタン73は、「非連続方向」について、実質的に孤立パターンとみなすことができる。また、このように、引用例1の図7の主パタン73は、「非連続方向」について、実質的に孤立パターンとみなすことができることは、引用例1の上記記載事項(オ)の段落【0011】の「非連続方向では周期性がなく、孤立に近い」という記載からも明らかである。
そして、フォトリソグラフィにより孤立パターンを形成する際、形成されるパターンの変形を防止するとともに焦点深度を向上させるために、フォトマスクの孤立パターンの周囲に補助パターンを設ける際、前記補助パターンを前記孤立パターンの隣接する辺に平行に設けることは、本件出願の優先日当時において当業者の技術常識である(例えば、特開2000-66372号公報(特に、段落【0012】、図6)を参照。)。
以上述べた引用例1の記載及び本件出願の優先日当時における当業者の技術常識からも、引用例1の図7の長方形のスリットパタンである補助パタン74(上記aを参照。)の長手方向は、正方形ホールパタンである主パタン73(上記aを参照。)の配列方向(すなわち「連続方向」)に平行であると認めることができる。

(イ)引用例1の上記記載事項(キ)の段落【0016】には、「主パタンの形状は、正方形ホールパタンに限らない。長方形パタン等でも、小さいピッチで連続して配置されている場合は適用可能である。」と記載されているから、引用例1には、図7,11等のホトマスクにおいて主パタンの形状が長方形ホールパタンであることも記載されていると認めることができる。

(ウ)したがって、引用例1の上記記載事項(ア)?(ク)から、引用例1には次の発明が記載されていると認めることができる。

「斜入射照明法の一つである輪帯照明光学系を有する投影露光装置を用いてホトマスクに設けられたパタンを基板上に転写するダイナミックRAMの電極接続孔パタンの形成方法において、
前記ホトマスクは、半透明位相シフト膜が形成された露光光に対して半透明な領域と、主パタンとなる透明な領域を含み、
前記半透明な領域は、前記半透明な領域と前記透明な領域を通過する光の位相差が180度となるように調整され、
前記主パタンは、長方形ホールパタンであって、繰り返し配置されており、
前記主パタンの繰り返しピッチは前記ホトマスク主面上の水平方向と垂直方向で異なっており、前記主パタンの配置ピッチが斜入射照明法の効果が得られない程大きい方向を非連続方向といい、前記主パタンの配置ピッチが斜入射照明法の効果によって良好な光強度コントラストが得られる程小さい方向を連続方向というと、前記主パタンは連続方向に3つ繰り返し配置されており、
幅が前記投影露光装置の投影光学系の解像限界以下であり長さが前記3つの主パタンの連続方向の長さよりも長い長方形のスリットパタンである透明補助パタンが、前記主パタンの非連続方向に前記主パタンを挟むように一対配置され、前記透明補助パタンの長手方向は連続方向に平行であり、
前記透明補助パタンを配置することにより、非連続方向においてもパタンは周期的に配置されたことになり斜入射照明法による効果が得られ、前記基板に転写される前記主パタンの形状の変形を防止する、
ダイナミックRAMの電極接続孔パタンの形成方法。」(以下「引用発明1」という。)

エ 本件補正発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
(ア)本件出願の優先日当時における当業者の技術常識や引用例1の上記記載事項(イ)の段落【0001】の「本発明は半導体装置などの製造に用いるホトマスク・・・に関する。」との記載に照らし、引用発明1の「ダイナミックRAM」は半導体装置であると認めることができる。
したがって、引用発明1の「ダイナミックRAM」の「形成方法」は、本件補正発明の「半導体装置の製造方法」に相当する。

(イ)引用発明1の「ホトマスク」、「ホトマスクに設けられたパタン」は、それぞれ、本件補正発明の「フォトマスク」、「フォトマスクに形成されたパターン」に相当する。
また、上記(ア)において述べたとおり、引用発明1の「ダイナミックRAM」は半導体装置であるから、引用発明1の「基板」は半導体基板であることは明らかである。
さらに、本件出願の優先日当時における当業者の技術常識や引用例1の上記記載事項(ウ)の段落【0002】の「パタンを転写するレジスト」との記載に照らし、引用発明1の「ダイナミックRAMの電極接続孔パタンの形成方法」において、「投影露光装置を用いてホトマスクに設けられたパタンを基板上に転写する」に当たり、前記「基板」上にレジスト膜が形成されていることも明らかである。
そして、引用発明1の「ダイナミックRAMの電極接続孔パタンの形成方法」では、「投影露光装置を用いてホトマスクに設けられたパタンを基板上に転写する」から、引用発明1の「ダイナミックRAMの電極接続孔パタンの形成方法」において、「投影露光装置を用いてホトマスクに設けられたパタンを基板上に転写する」に当たり、「ホトマスクに設けられたパタンを基板上に転写する」ための「投影露光装置」を用意していることは明らかである。
したがって、引用発明1の「ダイナミックRAMの電極接続孔パタンの形成方法」において、「投影露光装置を用いてホトマスクに設けられたパタンを基板上に転写する」ための「投影露光装置」を用意する工程は、本件補正発明の「フォトマスクに形成されたパターンを半導体基板上のレジスト膜に転写するための露光装置を用意する工程」に相当する。

(ウ)a 引用発明1の「ホトマスクは、半透明位相シフト膜が形成された露光光に対して半透明な領域と、主パタンとなる透明な領域を含み」、「前記主パタンは、長方形ホールパタンであ」るから、引用発明1の「長方形ホールパタンであ」る「主パタン」は、「半透明位相シフト膜が形成された露光光に対して半透明な領域」に囲まれていると認めることができる。したがって、引用発明1の「半透明位相シフト膜が形成された露光光に対して半透明な領域」に囲まれた「長方形ホールパタンであ」る「主パタン」は、本件補正発明の「半透明膜に囲まれた長方形のホールパターン」に相当する。
そして、引用発明1の「半透明位相シフト膜が形成された露光光に対して半透明な領域」に囲まれた「長方形ホールパタンであ」る「主パタン」「は連続方向に3つ繰り返し配置されて」いることと、本件補正発明の「遮光部又は半透明膜に囲まれた長方形のホールパターンが一方向にそって3つ以上配列され、且つホールパターンの長手方向が配列方向と直交するように配列されたパターン列」とは、「半透明膜に囲まれた長方形のホールパターンが一方向にそって3つ以上配列されたパターン列」である点で一致する。

b 引用発明1の「ホトマスクは、半透明位相シフト膜が形成された露光光に対して半透明な領域と、主パタンとなる透明な領域を含み」、「長方形のスリットパタンである透明補助パタンが、前記主パタンの非連続方向に前記主パタンを挟むように一対配置され」るから、引用発明1の「長方形のスリットパタンである透明補助パタン」は、「半透明位相シフト膜が形成された露光光に対して半透明な領域」に囲まれていると認めることができる。したがって、引用発明1の「半透明位相シフト膜が形成された露光光に対して半透明な領域」に囲まれた「長方形のスリットパタンである透明補助パタン」と、本件補正発明の「前記遮光部又は半透明膜に囲まれて形成されたライン状の第1及び第2の補助パターン」とは、「前記半透明膜に囲まれて形成されたライン状の補助パターン」である点で一致する。
また、引用発明1の「透明補助パタンが、前記主パタンの非連続方向に前記主パタンを挟むように一対配置され、前記透明補助パタンの長手方向は」「主パタン」が「3つ繰り返し配置され」る「連続方向に平行であ」ることと、本件補正発明の「前記第1及び第2の補助パターンは前記ホールパターンの配列方向と平行に前記パターン列に沿って配置され」ることとは、「補助パターンは前記ホールパターンの配列方向と平行に前記パターン列に沿って配置され」る点で一致する。
さらに、引用発明1の「透明補助パタン」は「長さが前記3つの主パタンの連続方向の長さよりも長い長方形のスリットパタンである」ことと、本件補正発明の「前記第1及び第2の補助パターンは」「長手方向の長さが前記パターン列の配列方向の長さと同等以上であ」ることとは、「補助パターンは長手方向の長さが前記パターン列の配列方向の長さと同等以上であ」る点で一致する。
そして、引用発明1の「透明補助パタン」は「幅が前記投影露光装置の投影光学系の解像限界以下であ」ることと、本件補正発明の「前記第1及び第2の補助パターンは」「前記レジスト膜に転写されないものであ」ることとは、「前記補助パターンは前記レジスト膜に転写されないものであ」る点で一致する。

(エ)上記(イ)で述べたとおり、引用発明1の「基板」上にレジスト膜が形成されていることは明らかである。
また、引用発明1の「ダイナミックRAMの電極接続孔パタンの形成方法」では、「斜入射照明法の一つである輪帯照明光学系を有する投影露光装置を用いてホトマスクに設けられたパタンを基板上に転写する」から、引用発明1の「ホトマスク」に対して「連続方向」側から斜めに照明光が照射されていると認めることができる。
したがって、引用発明1の「斜入射照明法の一つである輪帯照明光学系を有する投影露光装置を用いてホトマスクに設けられたパタンを基板上に転写する」ことは、本件補正発明の「前記露光装置を用いて前記フォトマスクに対して前記配列方向側から斜めに照明光が入射される照明法により、前記フォトマスクに形成されたパターンを前記レジスト膜に転写する工程」に相当する。

(オ)すると、本件補正発明と引用発明1とは、

「フォトマスクに形成されたパターンを半導体基板上のレジスト膜に転写するための露光装置を用意する工程と、
半透明膜に囲まれた長方形のホールパターンが一方向にそって3つ以上配列されたパターン列と、前記半透明膜に囲まれて形成されたライン状の補助パターンとを有するフォトマスクを用意する工程であって、前記補助パターンは前記ホールパターンの配列方向と平行に前記パターン列に沿って配置され、長手方向の長さが前記パターン列の配列方向の長さと同等以上であり、前記レジスト膜に転写されないものであり、
前記露光装置を用いて前記フォトマスクに対して前記配列方向側から斜めに照明光が入射される照明法により、前記フォトマスクに形成されたパターンを前記レジスト膜に転写する工程と、
を含む半導体装置の製造方法。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

〈相違点1〉
本件補正発明の「ホールパターン」の形状は「長手方向が配列方向と直交する」「長方形」であるのに対し、引用発明1の「主パタン」の形状は、「長方形ホールパタン」である点。

〈相違点2〉
本件補正発明の「補助パターン」は「第1」「の補助パターン」及び「第2の補助パターン」からなるのに対し、引用発明1の「補助パタン」は「前記主パタンの非連続方向に前記主パタンを挟むように一対配置され」る点。

オ 相違点についての判断
(ア)相違点1について
a 半導体デバイスのコンタクトホール形成用フォトマスクの技術分野では、長手方向がコンタクトホールパターンの配列方向と直交するように長方形のコンタクトホールパターンを配置することは、本件出願の優先日当時において当業者に周知の技術的事項である(例えば、特開2001-337440号公報(特に、段落【0010】、【0016】?【0017】、【0031】?【0036】、図1)、特開2001-168304号公報(特に、段落【0057】?【0059】、【0085】、【0094】?【0101】、【0245】?【0246】、図1?4)を参照。)。また、引用例1には、「長方形ホールパタンであ」る「ダイナミックRAMの電極接続孔」用の「主パタン」として、かかる周知の長方形のコンタクトホールを除外する旨の記載もない。すると、引用発明1の「長方形ホールパタンであ」る「ダイナミックRAMの電極接続孔」用の「主パタン」には、上記周知の長方形のコンタクトホールパターン、すなわち、長手方向が前記「主パタン」の配列方向(すなわち「連続方向」)に直交するように配置された「長方形ホールパタンであ」る「主パタン」が含まれることは明らかである。
そして、引用発明1の長手方向が前記「主パタン」の配列方向(すなわち「連続方向」)に直交するように配置された「長方形ホールパタンであ」る「主パタン」は、本件補正発明の「長手方向が配列方向と直交する」「長方形のホールパターン」に相当する。
したがって、上記相違点1は実質的に相違点ではない。

b また、仮に、引用発明1の「長方形ホールパタンであ」る「ダイナミックRAMの電極接続孔」用の「主パタン」に、長手方向が前記「主パタン」の配列方向(すなわち「連続方向」)に直交するように配置された「長方形ホールパタンであ」る「主パタン」が含まれるということができないとしても、上記周知技術に照らして、引用発明1の「長方形ホールパタンであ」る「ダイナミックRAMの電極接続孔」用の「主パタン」を、長手方向が前記「主パタン」の配列方向(すなわち「連続方向」)に直交するように配置することは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。
したがって、仮に、上記相違点1が実質的に相違点であるとしても、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。

(イ)相違点2について
a 本件補正発明には、「ホールパターン」の「パターン列」に対する「第1及び第2の補助パターン」の配置の態様について、「前記第1及び第2の補助パターンは前記ホールパターンの配列方向と平行に前記パターン列に沿って配置され」るとしか特定されていないから、本件補正発明の「第1及び第2の補助パターン」には、「ホールパターン」の「パターン列」の上部に配置された1本の補助パターンと前記「パターン列」の下部に配置された1本の補助パターンからなる補助パターン(本件出願の図4のような、前記「パターン列」を挟むように設けられた一対の補助パターン)が含まれると解することができる。
そして、引用発明1の「補助パタン」は「前記主パタンの非連続方向に前記主パタンを挟むように一対配置され」ている。
すると、引用発明1の「前記主パタンの非連続方向に前記主パタンを挟むように」「配置され」た「一対」の「補助パタン」は、本件補正発明の「第1」「の補助パターン」及び「第2の補助パターン」に相当する。
したがって、上記相違点2は実質的に相違点ではない。

b また、平成20年9月26日付けの手続補正により補正された同年7月24日付けの審判請求書の請求の理由における「平成20年7月24日付けの手続補正書により、請求項1において、ホールパターンが長方形であること、更には補助パターンが2本のライン状のパターンであること(原請求項7の内容)を限定した。ホールパターンが長方形であること、補助パターンが2本のライン状のパターンであることは、明細書の段落番号(0036)及び図12に記載されている。」との記載に照らし、本件補正発明の「第1及び第2の補助パターン」は、本件出願の図12のような態様で形成された二対の補助パターンであると認めた場合について検討する。
上記ウ(ア)bに記載したとおり、引用発明1の「主パタン」は、「非連続方向」について、実質的に孤立パターンとみなすことができる。
そして、フォトリソグラフィにより孤立パターンを形成する際、形成されるパターンの変形を防止するとともに焦点深度を向上させるために、フォトマスクの孤立パターンの周囲に前記孤立パターンを挟むように補助パターンを二対設けることは、本件出願の優先日当時において当業者に周知の技術的事項である(例えば、特開平6-95360号公報(特に、段落【0007】,【0022】?【0027】、図2,4(d))、特開平11-7120号公報(特に、段落【0076】?【0079】、図18)、国際公開第01/61412号(特に、第7頁第25行?第8頁第7行、第11頁第7行?第12頁第5行)を参照。)。
すると、上記周知技術に照らし、実質的に孤立パターンとみなすことができる引用発明1の「主パタン」の「非連続方向」に、「前記主パタンを挟むように」「補助パタン」を二対配置することは、当業者にとって容易に想到し得る。
したがって、仮に、本件補正発明の「第1及び第2の補助パターン」は本件出願の図12のような態様で形成された二対の補助パターンであると認めたとしても、上記相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。

カ 本件補正発明の独立特許要件の判断
(ア)以上のとおりであるから、上記相違点1?2は実質的に相違点ではなく、本件補正発明は引用例1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するから、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(イ)a また、上記相違点1?2のいずれかが実質的に相違点であるとしても、以上検討したとおり、引用発明1に上記相違点1?2に係る本件補正発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易であり、本件補正発明の効果は、引用例1に記載された発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものに過ぎない。
したがって、本件補正発明は引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

b なお、本件補正発明の効果について、請求人は、平成20年9月26日付けの手続補正により補正された同年7月24日付けの審判請求書の請求の理由において、「本願発明では、長辺が比較的短い長方形のホールパターンを用いているが、これは次の理由による。本来は正方形ホールを1次元配置させたいが、リソグラフィーマージンを確保することができない。そこで、正方形ホールを長方形化することでリソグラフィーマージンを確保できることとなる。しかし、長辺が長すぎると半導体チップの面積が広くなってしまう。この不具合を解決させるため、長辺を可能な限り短くさせてもリソグラフィーマージンが確保できるようにする手段が本願発明である。従って、本願発明の特徴は、ホール形状を確定させた後、補助パターンを配置してリソグラフィーマージンを広げるのではなく、予め定められたリソグラフィーマージンを確保するようにホールパターンの寸法も考慮に入れた補助パターンの配置方法としている点である。」、「複数のホールパターンを一方向に沿って密に配列する場合、十分なリソグラフィーマージンを得るためには、ホールパターンをその配列方向と直交する方向に長い長方形にせざるを得ない。しかし、ホールパターンの長径方向の長さが長いほど、ホールパターンの占有面積が大きくなる。本願発明では、2本の補助パターンの配置によりホールパターンの長径をあまり長くすることなく、即ち占有面積が過度に大きくならない程度にしつつ、リソグラフィーマージンを確保することができるため、ホールパターンに対する占有面積を低減できると云う大きなメリットを有するのである。」と主張している。しかし、請求人の上記主張のうち「正方形ホールを長方形化することでリソグラフィーマージンを確保できる」こと、及び、「複数のホールパターンを一方向に沿って密に配列する場合、十分なリソグラフィーマージンを得るためには、ホールパターンをその配列方向と直交する方向に長い長方形にせざるを得ない。」ことは、本件補正により補正された明細書には記載されておらず、また、平成22年1月25日付けの面接資料に照らしても、「正方形ホールを長方形化することでリソグラフィーマージンを確保できる」こと、及び、「複数のホールパターンを一方向に沿って密に配列する場合、十分なリソグラフィーマージンを得るためには、ホールパターンをその配列方向と直交する方向に長い長方形にせざるを得ない。」ことが本件出願の優先日当時における当業者の技術常識であると認めることもできないから、請求人が主張する上記効果は本件補正発明の効果と認めることはできない。
また、仮に、「正方形ホールを長方形化することでリソグラフィーマージンを確保できる」こと、及び、「複数のホールパターンを一方向に沿って密に配列する場合、十分なリソグラフィーマージンを得るためには、ホールパターンをその配列方向と直交する方向に長い長方形にせざるを得ない。」という請求人の主張を認めたとしても、「正方形ホールを長方形化することでリソグラフィーマージンを確保できる」ことは本件出願の優先日当時において当業者に周知の技術的事項であるから(例えば、特開2001-337440号公報(特に、段落【0010】、【0016】?【0017】、【0031】?【0036】、図1)、特開2001-168304号公報(特に、段落【0057】?【0059】、【0085】、【0094】?【0101】、【0245】?【0246】、図1?4)、特開平5-82467号公報(特に、段落【0010】】、図1)を参照。)、本件補正発明の効果は、引用例1に記載された発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものに過ぎない。

3 むすび
以上検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
なお、引用例1は審査段階において挙げられていない引用例であり、上記補正の却下の理由は原査定の理由とは実質的に異なる理由であるが、特許法第159条第2項において、同法第50条は、「第50条ただし書中『第17条の2第1項第3号に掲げる場合』とあるのは、『第17条の2第1項第3号又は第4号に掲げる場合』」と読み替えて準用され、同法第50条は、「審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第17条の2第1項第3号に掲げる場合において、第53条第1項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。」とされ、補正の却下について意見書を提出する機会は与えなくてよいとされているから、本件補正の却下に当たり、上記補正の却下の理由を事前に通知する必要はない(知財高裁平成19年(行ケ)第10056号参照。)。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1 本件発明の認定
本件補正が却下されたから、平成20年1月15日付けの手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面に基づいて審理すると、本件出願の請求項2に係る発明(以下「本件発明」という。)は、平成20年1月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の【請求項2】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。

「フォトマスクに形成されたパターンを半導体基板上のレジスト膜に転写するための露光装置を用意する工程と、
遮光部又は半透明膜で構成された長手方向と該長手方向に直交する短手方向とを有する複数のラインパターンが前記短手方向に沿って周期的に配列されたパターン列と、前記遮光部又は半透明膜で構成された長手方向と短手方向とを有する補助パターンとを有するフォトマスクを用意する工程であって、前記補助パターンは前記パターン列のライン端部近傍に配置され、長手方向の長さが前記パターン列の配列方向の長さ以上であり、前記基板上に転写されないものであり、
前記露光装置を用いて前記フォトマスクに対して前記配列方向側から斜めに照明光が入射される照明法により、前記フォトマスクに形成されたパターンを前記レジスト膜に転写する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。」

2 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶理由に引用され、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平5-217840号公報(以下「引用例2」という。)には、以下のア?キの記載が図示とともにある。

ア 「【請求項1】 主波長λの光束で斜め照明した原板上の微細パターンから生じる回折光を開口数NAの投影光学系の瞳面上に入射させて、該原板上の微細パターンを感光性基板に投影して半導体デバイスを製造する際、該原板上の微細パターンは周期的に配列した複数の格子パターンより成り、該感光性基板上に投影される該格子パターン像の一辺から垂直方向に測った距離をDとしたとき、D≦λ/NAの範囲内に隣接する格子パターンがない部分的孤立パターンに対して線幅をLとしたとき、L≦0.2(λ/NA)の補助パターンを該部分的孤立パターンの一辺の少なくとも一部に平行に該一辺から垂直方向に測った距離をSとしたとき、
0≦S≦0.1(λ/NA)
の範囲内に設けていることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。」

イ 「【請求項4】 照明系から射出した主波長λの光束で原板上の微細パターンを斜め照明し、該原板上の微細パターンから生じる回折光を開口数NAの投影光学系の瞳面上に入射させて、該投影光学系により該原板上の微細パターンを感光性基板に投影する投影露光装置において、該原板上の微細パターンは周期的に配列した複数の格子パターンより成り、該感光性基板上に投影される該格子パターン像の一辺から垂直方向に測った距離をDとしたとき、D≦λ/NAの範囲内に隣接する格子パターンがない部分的孤立パターンに対して線幅をLとしたとき、L≦0.2(λ/NA)の補助パターンを該部分的孤立パターンの一辺の少なくとも一部に平行に該一辺から垂直方向に測った距離をSとしたとき、
0≦S≦0.1(λ/NA)
の範囲内に設けていることを特徴とする投影露光装置。」

ウ 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は半導体デバイスの製造方法及びそれを用いた投影露光装置に関し、具体的には半導体素子(半導体デバイス)の製造装置である所謂ステッパーにおいてレチクル面上のパターンを適切に構成し、及びそれを適切なる光強度分布で投影し、高い光学性能を良好に維持するようにしたものである。」

エ 「【0017】本発明は本出願人が先に提案した投影露光装置を更に改良発展させ、レチクル面上のパターンの構成及びその照明方法を適切に設定することにより、密集パターンのうち側方のパターンの片辺の所定の範囲内に隣接するパターンがない所謂部分的孤立パターンにおいても近接効果の影響を同様にし、ウエハ面上での投影パターン像のコントラストをそろえ、又歪みを少なくし、解像力を効果的に向上させることができる半導体デバイスの製造方法及びそれを用いた投影露光装置の提供を目的とする。」

オ 「【0022】
【実施例】図1は本発明の半導体デバイスの製造方法を投影露光装置に適用したときの要部概略図である。
【0023】図1において、Mはレチクルであり、レチクルMには後述する本発明の特徴とする構成の回路パターン(微細パターン)が形成されている。Wはウエハであり、ウエハWにはレジストが塗布している。10は投影露光装置の光軸、20は光源(1次光源)で波長λの光束を放射している。30は光源20からの光をレチクルMに向ける照明光学系、30Aは照明光学系30の開口絞り(絞り)であり、絞り30Aは照明光学系30の不図示の光学式インテグレーター(フライアイレンズ)の光射出面の近傍に置かれ、光学式インテグレーターと共にその開口に2次光源を形成する。
【0024】40はレチクルMを保持するレチクルステージ、50は照明光学系30の環状の2次光源からの光束で均一照明されたレチクルMの回路パターンの縮小像を投影する投影レンズ系(投影光学系)で、開口数NAである。50Aは投影レンズ系50の開口絞り(絞り)であり、この絞り50Aが投影レンズ系50の瞳を定める。ここでは絞り50Aの開口の位置を瞳位置として説明を行う。60はウエハWを保持するウエハステージであり、ウエハステージ60はウエハW上の表面が投影レンズ系50によりレチクルMの回路パターンの結像面に一致するようウエハWを保持する。
【0025】以上の構成で、光源20と照明光学系30とを用いてレチクルMを照明すると、レチクルMの回路パターン(主として縦横パターンの集合より成る。)で生じる回折光が投影レンズ系50の絞り50Aの開口に捕らえられ、投影レンズ系50がこれらの回折光によりレチクルMの回路パターンの像をウエハW上に投影し、回路パターン像をウエハWのレジストに転写する。このような露光-転写の工程を経てウエハWから半導体デバイスが製造される。
【0026】図1の投影露光装置では、照明光学系30の絞り30Aの位置と投影レンズ系50の絞り50Aの位置とが互いに共役な位置に設定されており、絞り30Aの開口(2次光源)の像が投影レンズ系50の絞り50Aの開口中に投影される。従って、絞り30Aの開口の形状や大きさ(2次光源の形状や大きさ)を後述するように適宜定めることにより、絞り50Aの開口即ち瞳に形成する絞り30Aの開口像即ち有効光源の形状と大きさが決まる。尚、絞り50Aの開口は円形である。
【0027】本発明では絞り50Aの開口(瞳面)上の光強度分布が中心領域に比べて周辺領域で強くなるように各要素を設定している。
【0028】図2は図1の投影露光装置の投影レンズ系50の瞳(以下「瞳50A」と記す)に形成される有効光源の代表的な光源像の模式図を瞳の半径を1として示している。尚図2では投影レンズ系50の瞳50Aの中心を原点にしたxy座標系に瞳50Aと有効光源を図示している。このxy座標系のx軸はレチクルMの横パターン(「横」方向に伸びる線状パターン)の長手方向に、このxy座標系のy軸はレチクルMの縦パターン(「縦」方向に伸びる線状パターン)の長手方向に対応している。
【0029】図2(A)は従来の照明法による光源像であり、本発明の照明法との差を説明するために示したものである。図2(A)では瞳50Aの原点を中心に半径σ=0.5の内側に円形の有効光源200aを形成した場合を示している。
【0030】図2(B)はx軸に対して反時計回りに計った角度θがθ=45°,135°,225°,270°の角度をなす直線上に半径σ=0.2の円形の4つの有効光源21a?21dが形成されるように構成した本発明に係る照明法を用いた場合を示している。図2(B)の有効光源21a?21dの中心座標は各々(0.5,0.5),(-0.5,0.5),(-0.5,-0.5),(0.5,-0.5)である。
【0031】図2(C)は瞳50Aの原点を中心に一辺が2L1と2L2の2つの正方形を形成し、この2つの正方形で囲まれた環状領域(中抜けの環状領域)201aに有効光源が形成されるように構成した本発明に係る照明法を用いた場合を示している。同図ではL1=0.3,L2=0.6である。
【0032】尚、本発明に係る照明法により瞳50Aに形成される有効光源は原点領域に比べて周辺領域の光強度が強くなるようなものであれば、どのような形状であっても良い。例えば瞳50A上の各有効光源が弱い光で連続してつながっているような形状のものであっても良い。
【0033】この他本発明においては、本出願人が先に出願した例えば特願平3-128446号、特願平3-225222号、特願平3-225225号等で提案した照明法が適用可能である。
【0034】本発明はレチクルに斜めから光を入射させることによってレチクル面上の回路パターンの0次光と1次回折光又は0次光と-1次回折光のペアを用い、そのペアの各々の回折光が瞳の中心から等距離に入るようにし、結像させている。
【0035】即ち、空間周波数の高い回路パターンの前記回折光のペアを効率良く有効光源に取り入れるようにし、かつ像性能を悪化させるような回路パターンの回折光を有効光源に取り入れないようにして解像力を向上させている。
【0036】以下このような照明法を「本発明に係る照明法」と称する。
【0037】次に本発明に係るレチクルMの回路パターン(微細パターン)の特徴について説明する。本発明に係るレチクル面上の回路パターンの構成は回路パターンが連続的に繰り返し配置した複数の格子パターンより成り、かつ本発明に係る照明法を用いたときにウエハ面上に形成される格子パターン像の光強度分布(コントラスト)を向上させ、このとき全ての格子パターン像が略均一な強度分布とすることができる。
【0038】まず格子パターン像のコントラストをそろえる方法について説明する。
【0039】図3は本発明に係る回路パターンの説明図である。回路パターンは連続的(周期的)に配列した複数の格子パターンより成っているのを対象としている。同図では例として5つの格子パターンより成る場合を示している。格子パターンの線幅と間隔は共にウエハ面上でL(L=0.5λ/NA)となるようにしている。以下格子パターンに関する寸法は全てウエハ面上での値を用いている。
【0040】本発明ではウエハ面上に投影される格子パターン像(線幅L)の一辺から垂直方向(格子パターンの並び方向、x方向)に測った距離をDとし、D≦λ/NAの範囲内に隣接する格子パターンがない格子パターンを部分的孤立パターンと定義する。
【0041】図3(A)では部分的孤立パターン(31a,31e)の一辺(31aa,31ee)に平行に(y方向に)線幅をL31aとしたとき、
L31a≦0.2(λ/NA)
を満足する補助パターン32を該1辺(31aa,31ee)から垂直方向(x方向)に測った距離をSとしたとき、
S≦0.1(λ/NA)
を満足する領域に設けている。(以下「補助パターン」という。)・・・(中略)・・・
【0043】・・・(中略)・・・次に図3(A),(B),(C)に示す回路パターンを用いたときのウエハ面上の格子パターン像の光強度分布(コントラスト)について説明する。(ベストフォーカス)図4(A),(B),(C)は各々図3(A),(B),(C)で示す回路パターンを用いたときのウエハ面上における回路パターン像の強度分布の説明図である。
【0044】図4(A)は図3(A)の回路パターンにおいてS=0.025(λ/NA),L31a=0.05(λ/NA)としたときを示している。
・・・(中略)・・・
【0047】図5(A)は従来の回路パターンとして5本の格子パターン(5本格子パターン)を用いたときのウエハ面上での線幅L、間隔Lの5つの格子パターン像のベストフォーカスでの強度分布である。
【0048】図5(B)は回路パターンとして線幅L、間隔Lの5つの格子パターンを用い、その両側に線幅0.02(λ/NA)の位相シフト膜を施した従来の格子パターン(エッジ強調型パターン)を用いた場合の格子パターン像の強度分布である。
【0049】図5(A),(B)に示すように従来の回路パターンを用いたときや、従来の位相シフト膜を用いたときは複数の格子パターン像のうち、両側の格子パターン像の強度が内側の格子パターン像の強度に比べて低くなってくる。
【0050】これに比べて図3(A),(B),(C)に示す回路パターンを用いれば図4(A),(B),(C)に示すように両側の格子パターン像の強度は向上し、全ての格子パターン像の強度を略均一とすることができる。
【0051】即ち、本発明に係る照明法と回路パターンを用いれば全ての格子パターン像の解像力を平均的に向上させることができる。
【0052】又実際、露光を行なった場合通常のパターンでは両端の2本は中央の3本に比べてパターンの線幅が細くなり均一性が悪かったが図3の方法を用いることにより5本すべて等しくなり均一性が向上した。
・・・(中略)・・・
【0055】更に図4,図5ではベストフォーカスのみを示しているがデフォーカス時には、本発明の照明系により強度ピーク、コントラストが密集パターンでは向上し、更に図3の方法を用いるとベストフォーカス時と同様、線幅、Wall angleが密集パターンと同様の向上を示すので結果として深度の向上が著しく認められた。」

カ 「【0056】次に本実施例において主として所謂近接効果から生じる投影パターン像の形状の歪みを補正し、解像力を向上させる方法について説明する。
【0056】次に本実施例において主として所謂近接効果から生じる投影パターン像の形状の歪みを補正し、解像力を向上させる方法について説明する。
【0057】図6に示すような縦横の複数の格子パターンの場合は近接するパターンの有無によって近接効果が一様でないため、端のパターン61の投影パターン像はパターンに隣接している領域に歪みが生じてくる。
【0058】図6(B)はこのときの投影パターン像の歪みを2次元シュミレーションを行い、強度分布の等高線で示した説明図である。等高線は強度I=0.2,0.3,0.4,0.5,0.6で表している。以下投影パターン像の強度分布は同様にして示している。図6(B)に示すようにk_(2) =±0.5のパターンは部分的孤立パターン61のうちパターンに隣接した領域に歪みが生じている。
【0059】そこで本発明では図7(A)に示すように部分的孤立パターン71の辺のうち隣接するパターンがない領域に補助パターン72を設けている。このときの補助パターン72はパターン71より、距離をSとしたとき、
0<S<0.1
だけ離し、かつ幅をL72としたとき、
0<L72<0.2
としている。
【0060】図7(B)は図7(A)に示す如く補助パターン72を設けたときの投影パターン像の強度分布の説明図である。図7(B)に示すように補助パターンを設けることにより、投影パターン像の歪みが補正されていることがわかる。
【0061】本発明ではこれにより連続したパターンを投影するときの投影パターン像の歪みを少なくし、解像力をバランス良く維持している。
【0062】図8(A)は連続パターン81a?81eのうち末端の歪みを補正する為に各パターンの端部に補助パターン82を設けたときの説明図である。同図では縦パターン81a?81eと補助パターン82との間隔Sを
0<S<0.1
とし、補助パターン82の幅L82を
0<L82<0.2
としている。
【0063】図8(B)はこのときの投影パターン像の強度分布の説明図である。
【0064】図9(A)は補助パターン92を複数の連続パターン91a?91eの末端に連続して設けたときの説明図である。図9(B)は図9(A)における投影パターン像の強度分布の等高線の説明図である。」

キ 「【0070】
【発明の効果】本発明によれば以上のように、レチクル面上のパターンの構成及びその照明方法を適切に設定することにより、密集パターンのうち側方のパターンの片辺の所定の範囲内に隣接するパターンがない所謂部分的孤立パターンにおいても近接効果の影響を少なくし、ウエハ面上での投影パターン像のパターン形状、即ち線幅、Wall angleをそろえ、又歪みを少なくし解像力及び深度を効果的に向上させることができる半導体デバイスの製造方法及びそれを用いた投影露光装置を達成することができる。」

3 引用例2記載の発明の認定
(1)(a)引用例2の上記記載事項オの段落【0028】の「このxy座標系のx軸はレチクルMの横パターン(『横』方向に伸びる線状パターン)の長手方向に、このxy座標系のy軸はレチクルMの縦パターン(『縦』方向に伸びる線状パターン)の長手方向に対応している。」との記載、及び、図3に示されたxy座標系に照らし、引用例2の図3の場合の格子パターンは縦方向に伸びる線状パターンであると認めることができ、また、(b)引用例2の上記記載事項カの段落【0062】の「縦パターン81a?81e」との記載、及び、引用例2の上記記載事項オの段落【0028】の「縦パターン(『縦』方向に伸びる線状パターン)」との記載に照らすと、引用例2の図8の連続パターン81a?81eを構成する各パターン81a,81b,・・・,81eは縦方向に伸びる線状パターンであると認めることができ、さらに、(c)引用例2の上記記載事項オの段落【0039】の「図3は本発明に係る回路パターンの説明図である。回路パターンは連続的(周期的)に配列した複数の格子パターンより成っているのを対象としている。・・・(中略)・・・格子パターンの線幅と間隔は共にウエハ面上でL(L=0.5λ/NA)となるようにしている。」との記載、及び、図8から連続パターン81a?81eを構成する各パターンの線幅及び間隔はいずれもL(L=0.5λ/NA)であると認めることができることから、引用例2では、図3,8の場合について、連続パターン(連続的(周期的)に配列した複数の格子パターン)として「縦方向に伸びる線状パターン」の「線幅と間隔」が「共にウエハ面上でL(=0.5λ/NA)」(引用例2の上記記載事項オの段落【0039】)であるパターンを採用していると認めることができる。
また、引用例2の上記記載事項カの段落【0062】?【0064】の記載及び図8,9に照らすと、引用例2の図8及び図9の例は、連続パターンの末端の歪みを補正するために前記連続パターンに設けられる補助パターンの態様が、線幅(L82=L92=0.05λ/NA)及び前記連続パターンの末端からの距離(S=0.05λ/NA)の点で同じである。さらに、引用例2には、図9の連続パターンとして、図3,8の連続パターンと異なるパターンを採用する旨の記載も特にない。
以上述べたことに鑑みると、引用例2の図9の連続パターン91a?91eは、図3の連続パターン31a?31e及び図8の連続パターン81a?81eと同じく、縦方向に伸びる線状パターンが横方向に連続的(周期的)に複数配列された連続パターンであり、縦方向に伸びる線状パターンの線幅と間隔が共にウエハ面上でL(=0.5λ/NA)であると認めることができ、引用例2の図9のパターン91bの線幅がLであるとの図示は、パターン91aとパターン91bとの間隔がLであるとの図示の誤記と認める。

(2)引用例2の図9の連続パターン91a?91eの末端(すなわち、前記連続パターン91a?91eの縦方向の端部)には隣接する格子パターンがなく、かつ、図9の連続パターン91a?91eの末端(すなわち、前記連続パターン91a?91eの縦方向の端部)に補助パターン92が設けられていることから、図9の連続パターン91a?91eの末端(すなわち、前記連続パターン91a?91eの縦方向の端部)は、その縦方向について「部分的孤立パターン」(引用例2の上記記載事項ア、上記記載事項イ、上記記載事項オの段落【0040】等)に当たることは明らかである。
そして、引用例2の図3における「部分的孤立パターン」に対する補助パターンの形成態様に関する引用例2の上記記載事項オの段落【0041】の記載、引用例2の上記記載事項カの段落【0062】?【0064】の記載、及び、引用例2の図9に照らすと、引用例2の図9における連続パターン91a?91eの末端(すなわち、前記連続パターン91a?91eの縦方向の端部)に対する補助パターン92の形成態様は、前記連続パターン91a?91eの末端(縦方向端部)の一辺に平行に(横方向に)線幅をL92がL92=0.05(λ/NA)である補助パターン92を、該一辺から縦方向に図った距離をSとしたとき、S=0.05(λ/NA)に設けたものであると認めることができる。

(3)引用例2の上記記載事項オの段落【0022】の「ウエハWにはレジストが塗布している。」との記載及び引用例2の図9(B)から、補助パターン92はウエハに塗布されたレジストに転写されないことを認めることができる。

(4)すると、引用例2の上記記載事項ア?キから、引用例2には次の発明が記載されていると認めることができる。

「主波長λの環状領域に有効光源が形成されるように構成した光束で斜め照明したレチクル上の微細パターンから生じる回折光を開口数NAの投影光学系の瞳面上に入射させて、前記レチクル上の微細パターンをレジストが塗布されたウエハに投影する投影露光装置により半導体デバイスを製造する際、
前記レチクル上の微細パターンは、縦方向に伸びる線状パターンが横方向に連続的(周期的)に複数配列された連続パターンよりなり、
前記連続パターンの末端(縦方向端部)の一辺に平行に(横方向に)連続して補助パターンを設け、
前記補助パターンは、線幅LがL=0.05(λ/NA)であり、
前記連続パターンの末端(縦方向端部)の一辺から縦方向に測った距離をSとしたとき、S=0.05(λ/NA)に前記補助パターンを設け、
前記補助パターンは前記ウエハに塗布された前記レジストに転写されない、
半導体デバイスの製造方法。」(以下「引用発明2」という。)

4 本件発明と引用発明2の一致点及び相違点の認定
(1)引用発明2の「半導体デバイスの製造方法」は、本件発明の「半導体装置の製造方法」に相当する。

(2)引用発明2の「レチクル」、「レチクル上の微細パターン」は、それぞれ、「フォトマスク」、「フォトマスクに形成されたパターン」に相当する。
また、本件出願の優先日当時における当業者の技術常識に照らし、引用発明2の「ウエハ」に「塗布された」「レジスト」が膜状であること、及び、引用発明2の「半導体デバイス」が「製造」される「ウエハ」が半導体基板であることは、明らかである。
さらに、引用発明2の「半導体デバイスの製造方法」では、「前記レチクル上の微細パターンをレジストが塗布されたウエハに投影する投影露光装置により半導体デバイスを製造」しているから、引用発明2の「半導体デバイスの製造方法」において、「該レチクル上の微細パターンをレジストが塗布されたウエハに投影する」に当たり、「該レチクル上の微細パターンをレジストが塗布されたウエハに投影する」ための「投影露光装置」を用意していることは明らかである。
したがって、引用発明2の「半導体デバイスの製造方法」において「該レチクル上の微細パターンをレジストが塗布されたウエハに投影する」ための「投影露光装置」を用意する工程は、本件発明の「フォトマスクに形成されたパターンを半導体基板上のレジスト膜に転写するための露光装置を用意する工程」に相当する。

(3)a 引用発明2の「縦方向に伸びる線状パターン」は、本件発明の「長手方向と該長手方向に直交する短手方向とを有する」「ラインパターン」に相当する。
そして、引用発明2の「縦方向に伸びる線状パターンが横方向に連続的(周期的)に複数配列された連続パターン」と、本件発明の「遮光部又は半透明膜で構成された長手方向と該長手方向に直交する短手方向とを有する複数のラインパターンが前記短手方向に沿って周期的に配列されたパターン列」とは、「長手方向と該長手方向に直交する短手方向とを有する複数のラインパターンが前記短手方向に沿って周期的に配列されたパターン列」である点で一致する。

b 引用発明2の「前記連続パターンの末端(縦方向端部)の一辺に平行に(横方向に)連続して」「設け」られた「線幅LがL=0.05(λ/NA)であ」る「補助パターン」と、本件発明の「前記遮光部又は半透明膜で構成された長手方向と短手方向とを有する補助パターン」とは、「長手方向と短手方向とを有する補助パターン」である点で一致する。
また、引用発明2の「前記連続パターンの末端(縦方向端部)の一辺から縦方向に測った距離をSとしたとき、S=0.05(λ/NA)に前記補助パターンを設け」ることは、本件発明の「前記補助パターンは前記パターン列のライン端部近傍に配置され」ることに相当する。
さらに、引用発明2の「前記補助パターンは前記ウエハに塗布された前記レジストに転写されない」ことは、本件発明の「前記補助パターンは」「前記基板上に転写されないものであ」ることに相当する。

(4)引用発明2の「縦方向に伸びる線状パターンが横方向に連続的(周期的)に複数配列された連続パターンよりな」る「レチクル」は「環状領域に有効光源が形成されるように構成した光束で斜め照明」されるから、引用発明2の「レチクル」に対して「縦方向に伸びる線状パターン」の「配列」方向(すなわち「横方向」)側から斜めに照明光が照射されていると認めることができる。
したがって、引用発明2の「投影露光装置により」「主波長λの環状領域に有効光源が形成されるように構成した光束で斜め照明した」「縦方向に伸びる線状パターンが横方向に連続的(周期的)に複数配列された連続パターンよりな」る「レチクル上の微細パターンから生じる回折光を開口数NAの投影光学系の瞳面上に入射させて、前記レチクル上の微細パターンをレジストが塗布されたウエハに投影する」ことは、本件発明の「前記露光装置を用いて前記フォトマスクに対して前記配列方向側から斜めに照明光が入射される照明法により、前記フォトマスクに形成されたパターンを前記レジスト膜に転写する工程」に相当する。

(5)すると、本件発明と引用発明2とは、

「フォトマスクに形成されたパターンを半導体基板上のレジスト膜に転写するための露光装置を用意する工程と、
長手方向と該長手方向に直交する短手方向とを有する複数のラインパターンが前記短手方向に沿って周期的に配列されたパターン列と、長手方向と短手方向とを有する補助パターンとを有するフォトマスクを用意する工程であって、前記補助パターンは前記パターン列のライン端部近傍に配置され、前記基板上に転写されないものであり、
前記露光装置を用いて前記フォトマスクに対して前記配列方向側から斜めに照明光が入射される照明法により、前記フォトマスクに形成されたパターンを前記レジスト膜に転写する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。」

である点で一致し、以下の点で一応相違する。

〈相違点1’〉
本件発明の「ラインパターン」及び「補助パターン」は「遮光部又は半透明膜で構成され」ているのに対し、引用発明2の「縦方向に伸びる線状パターン」及び「補助パターン」について上記のような限定がなされていない点。

〈相違点2’〉
本件発明の「補助パターン」の「長手方向の長さ」は「前記パターン列の配列方向の長さ以上であ」るのに対し、引用発明2の「前記連続パターンの末端(縦方向端部)の一辺に平行に(横方向に)連続して」「設け」られた「補助パターン」の長手方向(すなわち「横方向」)の長さについて上記のような限定がなされていない点。

5 相違点についての判断
(1)相違点1’について
フォトリソグラフィの技術分野において、ウエハに形成しようとするパターンや、ウエハには形成されないがウエハに形成しようとするパターンの変形を防止して焦点深度を高めるための補助パターンを、遮光部又は半透明膜で構成することは、本件出願の優先日当時において当業者に周知の技術的事項である(例えば、国際公開第01/61412号(特に、第5頁第26?28行)を参照。)。また、引用例2には、「縦方向に伸びる線状パターン」及び「補助パターン」として、かかる周知の遮光部又は半透明膜で構成されたパターンを除外する旨の記載もない。すると、引用発明2の「縦方向に伸びる線状パターン」及び「補助パターン」には、上記周知の遮光部又は半透明膜で構成されたパターンが含まれることは明らかである。
そして、引用発明2の遮光部又は半透明膜で構成された「縦方向に伸びる線状パターン」、遮光部又は半透明膜で構成された「補助パターン」は、それぞれ、本件発明の「遮光部又は半透明膜で構成された」「ラインパターン」、「遮光部又は半透明膜で構成された」「補助パターン」に相当する。
したがって、上記相違点1’は実質的に相違点ではない。

b また、仮に、引用発明2の「縦方向に伸びる線状パターン」及び「補助パターン」に、上記周知の遮光部又は半透明膜で構成されたパターンが含まれるということができないとしても、上記周知技術に照らして、引用発明2の「縦方向に伸びる線状パターン」及び「補助パターン」を、遮光部又は半透明膜で構成することは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。
したがって、仮に、上記相違点1’が実質的に相違点であるとしても、上記相違点1’に係る本件発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。

(2)相違点2’について
フォトリソグラフィのマスクの技術分野では、ウエハに形成しようとするパターン(以下「主パターン」という。なお、ウエハに形成しようとするパターンが周期パターンである場合には、周期パターン全体が前記「主パターン」に当たる。)に隣接して、ウエハには形成されないが前記主パターンの変形を防止して焦点深度を高めるための補助パターンを設けるに当たり、前記補助パターンの長さを前記主パターンの長さ以上とすることは、本件出願の優先日当時において当業者に周知の技術的事項である(例えば、前記主パターンが一次元周期パターンである場合に、前記補助パターンの長手方向の長さを前記主パターンの配列方向の長さ以上とすることは、原査定で引用された特開平8-76355号公報(特に、段落【0036】、図7)、引用例1(特に、段落【0013】?【0016】、図7)を参照。)。
すると、引用発明2に上記周知技術を適用して、引用発明2の「縦方向に伸びる線状パターンが横方向に連続的(周期的)に複数配列された連続パターン」「の末端(縦方向端部)の一辺に平行に(横方向に)連続して補助パターンを設け」るに当たり、前記「補助パターン」の長手方向(すなわち「横方向」)の長さを前記「連続パターン」の配列方向(すなわち「横方向」)の長さ以上とすることは、当業者にとって容易に想到し得る。
したがって、上記相違点2’に係る本件発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。

6 むすび
以上のとおり、上記相違点1’?2’に係る本件発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。
そして、本件発明の効果は、引用発明2及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものに過ぎない。
したがって、本件発明は、引用例2に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に想到し得る発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本件発明が特許を受けることができない以上、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-29 
結審通知日 2010-02-02 
審決日 2010-02-19 
出願番号 特願2004-115702(P2004-115702)
審決分類 P 1 8・ 112- Z (G03F)
P 1 8・ 113- Z (G03F)
P 1 8・ 575- Z (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉浦 淳佐野 浩樹  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 日夏 貴史
小松 徹三
発明の名称 半導体装置の製造方法  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 中村 誠  
代理人 河野 哲  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 村松 貞男  

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