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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  F24F
管理番号 1214924
審判番号 無効2009-800230  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-11-06 
確定日 2010-04-16 
事件の表示 上記当事者間の特許第4279711号発明「換気構造及び換気部材」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4279711号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、残り2分の1を被請求人の負担とする。 
理由
1.手続の経緯・当事者の主張

(1)本件特許第4279711号の請求項1ないし4に係る発明(以下「本件発明1ないし4」という。)についての出願は、平成16年3月23日に特許出願され、平成21年3月19日に本件発明1ないし4について特許の設定登録がされたものである。

(2)これに対して、無効審判請求人(以下「請求人」という。)は、本件発明1ないし4は、甲第1?4号証の刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし4についての特許は、同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであって無効とされるべきであると主張して、平成21年11月6日付けで本件無効審判を請求するとともに、その証拠方法として、
甲第1号証(特開2003-202143号公報)
甲第2号証(特開2004-12086号公報)
甲第3号証(特開平7-91695号公報)
甲第4号証(特開2002-5482号公報)
参考資料1(バクマ工業株式会社・株式会社トミジベアー発行
「住設関連製品総合カタログ2008」)
を提出した。

(3)これに対し、無効審判被請求人(以下「被請求人」という。)より平成21年12月16日付けで答弁書が提出され、審判請求書における無効審判の請求の理由の記載が不十分であるとともに、本件発明1ないし4は、上記甲1?4号証の刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないとの反論がなされた。

(4)上記答弁書の指摘を受けて、請求人は平成22年1月29日付けで弁駁書を提出し、本件発明1ないし4は、甲第1?4号証の刊行物に記載された発明、あるいは、甲第1?4号証及び甲第6号証の刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張し、その証拠方法として、
甲第6号証(特許第3401528号公報)
参考資料2(甲第6号証の特許権者株式会社タイガー産業発行の
パンフレット「北風くん」)
参考資料3(甲第6号証の特許権者株式会社タイガー産業の
作成発行に係る「施工要領書」)
を提出した。

(5)平成22年2月22日の口頭審理において、請求人及び被請求人より、それぞれ同日付けの口頭審理陳述要領書のとおり陳述がなされた。
また、請求人より、本件無効審判請求のうち、本件発明3及び4についての無効審判請求を取下げるとの申立てがなされ、被請求人がこれを承諾したので、審判請求一部取下書が提出され、本件発明3及び4についての無効審判請求が取下げられた。
さらに、請求人による、弁駁書における、新たな証拠である甲第6号証に基づく主張の追加は、請求の理由の要旨を変更する補正であるところ、特許法第131条の2第2項第2号に該当するとして、甲第6号証に基づく主張を追加する該補正が許可された。



2.本件発明1及び本件発明2

本件発明1は、明細書及び図面の記載からみて、次のとおりのものである。
(なお、被請求人による陳述(口頭審理陳述要領書第2頁第5?14行)によれば、本件特許明細書の請求項1に記載された「外壁取付部」及び「外壁取付部と外壁面との空間に囲まれた範囲を満たす断熱材」は、それぞれ「外壁取付板部」及び「外壁取付板部と外壁面とに囲まれた範囲を満たす断熱材」の誤記であり、請求人も認めているため、以下そのように記載する。)

[本件発明1]
「室内外を連通する換気路における外壁側端部に設けた換気管を、外壁より所定長さ突出させて設け、前記換気管突出部分を覆うフード部と、中央に換気管の挿通孔を設けて、換気管開口部をフード部内に位置せしめて外壁に固定する外壁取付板部とを備えた薄金属板製の器具で、前記換気管の露出部分を覆う換気構造において、外壁取付板部の上方及び側方を背面に折曲して封止脚部を設け、外壁取付板部の下方に下縁を前方に跳ね上げた水樋部を設け、封止脚部の端縁及び水樋部背面を外壁面に密着させて固定すると共に、外壁取付板部と外壁面とに囲まれた範囲を満たす断熱材を内装し、先端を窄めると共に適宜な弾性を有する筒状舌部を挿通孔に付設して、前記筒状舌部で挿通孔に位置する換気管の外周を保持してなることを特徴とする換気構造。」


また、本件発明2は、明細書及び図面の記載からみて、次のとおりのものである。
(なお、被請求人による答弁書の記載(第3頁第2?3行)によれば、本件特許明細書の請求項2に記載された「封止脚部の短縁」は「封止脚部の端縁」の誤記であり、請求人も認めているため、以下そのように記載する。)

[本件発明2]
「室内外を連通する換気路における外壁側端部の外壁より所定長さ突出する換気管の突出部分を覆う薄金属板製のフード部材と、前記フード部材の取付部と外壁固定部を備え、且つ中央に換気管の挿通孔を設け、上方及び側方を背面に折曲して封止脚部を設けると共に、下方に前記封止脚部の端縁と一致する背面を有し、且つ下縁を前方に跳ね上げた水樋部を設けた薄金属板製の外壁取付板部材とからなり、且つ前記外壁取付板部材に、挿通孔部分を除いた封止脚部と水樋部で囲まれた範囲に密嵌される発泡樹脂製の断熱部、及び先端を窄めると共に適宜な弾性を有し、挿通孔に位置する換気管の外周を保持してなる筒状舌部を備えてなることを特徴とする換気部材。」



3.甲第1?3、6号証に記載された事項及び発明

(1)甲第2号証には、図面とともに次の技術事項が記載されている。

a.「【請求項1】
室内外を連通する換気路における外壁側端部に設けた換気管を、外壁より所定長さ突出させて設け、前記換気管突出部分に装着されるフードを、外壁に固定する外壁取付板と、外壁取付板に装着するフード体の二部品で構成し、或いは外壁取付部とフード部で構成した一体型の一部品で構成され、前記外壁取付板(外壁取付部)が、中央に換気管の挿通孔を設けると共に、前記挿通孔の孔縁の約下半分程度を前方に突出させて管受け部に形成し、孔縁の上方適宜箇所に、挿通孔中心側に突出させた管抑え部を形成し、外壁面より突出させて設置した換気管に、前記外壁取付板(外壁取付部)を外嵌装着してなることを特徴とする換気構造。
【請求項2】
外壁取付板(外壁取付部)の上方及び側方を背面に折曲して封止脚部を設けると共に、下方に側縁及び下縁を前方に跳ね上げた水樋部を設け、封止脚部の端縁及び水樋部背面を外壁面に密着させて固定してなる請求項1記載の換気構造。」(特許請求の範囲)

b.「外壁取付板2は、薄金属板(ステンレス鋼板)をプレス加工することで容易に形成されるもので、本体板部21の中央に換気管の挿通孔22を設けると共に、前記挿通孔22の孔縁の約下半分程度を前方に突出させて前記換気管1の周面に密着する形状の管受け部23に形成し、孔縁の上方適宜箇所に、挿通孔中心側に突出させた管抑え部24を形成してなる。
前記挿通孔22の内径は、管受け部23以外の範囲において換気管1の外径より少し大きく形成し、管抑え部24はこの大径に形成した範囲で、中心方向に突出させて形成してなり、管抑え部24の両側部分には、切れ込み溝25を設けて管抑え部24に煽り弾性を備えさせてなる。
また本体板部21の上方及び側方を背面に折曲して封止脚部26を設けると共に、下方に水樋部27を連設してなる。この水樋部27は、前記本体板部21より背後方向に封止脚部26と一致する位置まで後退させ、側縁及び下縁を前方側に跳ね上げてなる。
更に本体板部21の適宜位置には、外壁Aに取付板2を固定する釘孔28及びフード体3を装着する螺孔29を設けてなる。」(段落【0018】?【0021】)

c.「而して外壁Aから突出した換気管1に、外壁取付板2の挿通孔22を外嵌合して押入し、封止脚部26の端面及び水樋部27の背面を外壁Aに密着させ、木ネジや釘で固定する。次にフード体3をビス34等で換気管1の開口部分を覆うよう外壁取付板2に装着する。」(段落【0023】)

d.「【発明の効果】
以上のように本発明は、外壁より所定長さ突出させて設けた換気管に、換気管を挿通する挿通孔を有する外壁取付板と、外壁取付板に装着するフード体の二部品で構成したり、又は両者を一体とした一部品で構成し、特に前記挿通孔の孔縁の約下半分程度を前方に突出させて管受け部に形成し、孔縁の上方適宜箇所に、挿通孔中心側に突出させた管抑え部を形成し、前記換気管の外壁突出部分に装着する換気構造で、換気管内で生じた結露の流出が外壁に達しないように換気管と管受け部との密着を、器具装着作業の困難性を伴わずに実現したものである。」(段落【0030】)

そして、摘記事項c及び図3より、フード体3は換気管1突出部分を覆うものであり、外壁取付板2は換気管1の開口部分をフード体3内に位置せしめて外壁Aに固定するものであることが判る。
また、摘記事項b,c及び図1より、水樋部27の背面は封止脚部26の端縁と一致する位置とされることが示されている。

したがって、上記摘記事項及び図1?3を総合すると、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2号証発明A」及び「甲2号証発明B」という。)が記載されていると認められる。

[甲2号証発明A]
「室内外を連通する換気路における外壁側端部に設けた換気管1を、外壁Aより所定長さ突出させて設け、前記換気管1突出部分を覆うフード体3と、中央に換気管1の挿通孔22を設けて、換気管1の開口部分をフード体3内に位置せしめて外壁Aに固定する薄金属板からなる外壁取付板2とを備えたフードを、前記換気管1の外壁突出部分に装着する換気構造において、
外壁取付板2の上方及び側方を背面に折曲して封止脚部26を設け、外壁取付板2の下方に下縁を前方に跳ね上げた水樋部27を設け、封止脚部26の端縁及び水樋部背面を外壁面に密着させて固定してなる、
換気構造。」

[甲2号証発明B]
「室内外を連通する換気路における外壁側端部の外壁より所定長さ突出する換気管1の突出部分を覆うフード体3と、
前記フード体3を装着する螺孔29と外壁Aに外壁取付板2を固定する釘孔28を備え、且つ中央に換気管の挿通孔22を設け、上方及び側方を背面に折曲して封止脚部26を設けると共に、下方に前記封止脚部26の端縁と一致する位置とされた背面を有し、且つ下縁を前方に跳ね上げた水樋部を設けた薄金属板からなる外壁取付板2とからなる、
フード。」


(2)甲第1号証には、図面とともに次の技術事項が記載されている。

e.「【発明の属する技術分野】本発明は、建物の換気を行うために通風口に取り付けられる屋外フードに関するものである。」(段落【0001】)

f.「公称ダクト径がおなじであっても、ダクトの材質によって数種類のダクトがあり、たとえば、塩化ビニールダクト、スパイラル鋼管ダクト、アルミ製フレキシブルダクトなどで、公称ダクト径がΦ100の場合であると、その外径寸法はΦ102mm?Φ114mmと多少の相違があるので筒部108をダクト外径の多少の相違に合わせ隙間のバラツキをなくすため、少なくとも2種類以上用意する必要が生じるという課題があった。
本発明は、上記課題を解決するもので、住宅材の耐久性が損なわれるのを防止し、製品のデザイン性を向上でき、さらに換気性能を犠牲にせず圧力損失が小さいとともに、ダクトの外径寸法の相違にも対応できる、屋外フードを提供することを目的とする。」(段落【0008】?【0009】)

g.「(実施の形態1)図1?図4に示すように、外壁5に取付けられ、屋外側開口部3に位置する略中央に開口部25を有したフランジ部6と、このフランジ部6に取付けて室内1と屋外2とを連通して屋外側開口部3より所定の長さだけ突出したダクト4の外径寸法Aに密着するように、フランジ部6の開口部25に周接して設け、略中央に開口を有したシールパッキン7とからなる本体8と、この本体8に設けられ、ダクト4と連通する開口10を有したフード9とを備えた屋外フード12を構成する。
そして、屋外フード12を外壁5に施工する際には、室内1と屋外2を連通するように外壁5に開口された屋外側開口部3にダクト4が差し込まれ、屋外2より、フランジ部6の開口部25に周接して設けたシールパッキン7の内周部の内径寸法Bにダクト4を挿入後、フランジ部6(を)外壁5に仮固定する。その後、フランジ部6に設けられた4箇所のねじ止め穴14を介して外壁5にねじ止めし、その後、がらり11を設けたフード9を前面から本体8に取付けることにより、外壁5に屋外フード12の取り付けが完了する。
このとき、シールパッキン7は、同じ公称径のダクト4であれば、そのダクトの種類にかかわらず前記ダクトの外径寸法に密着させることができる内径を有した、ゴム状の弾性、柔軟性を有する材質からなり、例えば、合成ゴム、ウレタン樹脂、EDPM、軟質発泡樹脂、軟性樹脂などである。」(段落【0013】?【0016】)

h.「また、ダクト4内に溜まった結露水17などを屋外2に排出する時、外壁5より極力遠い位置で滴下させるように、突出したダクト4の真下側で、フランジ部6の開口部25の下方に水切板18を設け、その水切板18は、ダクトの外径寸法Aより小さい巾Eを有し、屋外側開口部3より突出したダクトの長さCよりも、所定の水切り板の突出長さDを有する。これによりダクト4に溜まった結露水を受け止め屋外に排出させることとなる。」(段落【0018】)

i.「また、ダクト4と屋外フード12との現場での水密接続は、同じ公称径のダクト4であればそのダクト4の種類にかかわらず異なるダクト4の外径寸法にも密着できる、ゴム状弾性、柔軟性を有したシールパッキン7を介し、屋外フード12へのダクト4の挿入作業だけで密着できる(乾式工法)ので、従来のコーキング材(湿式工法)による施工、すなわち、コーキング材を用いて隙間を埋める現場作業が不要となり、より簡単に短時間で隙間なく確実に行える。
また、シールパッキン7は、同じ公称径のダクト4であればそのダクト4の種類にかかわらず異なる外径寸法のダクトにも密着できる内径を有し、ゴム状弾性、柔軟性を有するので、ダクトによって異なる外径寸法の大きさ毎に用意する必要がなく、1種類で各種の多少の外径寸法の違いがあるダクト4にも対応でき、部品の共用化が図れる。」(段落【0026】?【0027】)

j.「(実施の形態2)図5に示すように、フランジ部6の開口部25に周接して設けたシールパッキン7Bの内周部の断面形状を、前記内周部にダクト4を嵌挿した時に、その先端がダクトの外径寸法Aに全周において密着圧接するようにくの字形状で形成した構成とする。
上記構成において、現場において屋外フード12をダクト4にシールパッキン7Bを介して接続すると、シールパッキン7Bは、内周部の先端がダクト外径寸法Aに全周において密着圧接し、ダクト外径寸法Aの多少の違いにかかわらず、くの字形状の根元で曲がり追随することとなる。
このように本発明の実施の形態2の屋外フード12によれば、シールパッキン7Bは、内周部の断面形状を、その先端がダクト4の外周側に全周において密着圧接するようにくの字形状とし、くの字形状の根元で曲がりダクト4の外周に追随するように一体に形成したので、ダクト外径寸法Aの多少の違いにかかわらず、水密性が良く、追随性の良い屋外フード12を提供できる。また、ダクト4挿入時に、シールパッキン7Bの内周部の断面形状を挿入抵抗が少ない方向に、くの字形状としているため、よりスムーズに挿入することができ、施工性が良い屋外フード12を提供できる。」(段落【0033】?【0035】)

また、図5には、屋外フード12のフード9がダクト4の突出部分を覆っていること、ダクト4の開口部をフード9内に位置せしめた状態でフランジ部6が外壁5に固定されることが示されている。
さらに、図1,2,5には、フランジ部6の上方、下方及び側方が背面に折曲され、折曲部分の端縁を外壁5に当接させてフランジ部6が固定されることが示されている。

したがって、上記摘記事項及び図1,2,5を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1号証発明A」及び「甲1号証発明B」という。)が記載されていると認められる。

[甲1号証発明A]
「室内1と屋外2とを連通するように外壁5に開口された屋外側開口部3より、ダクト4を所定の長さだけ突出し、ダクト4の突出部分を覆うフード9と、略中央に開口部25を有し、ダクト4の開口部をフード9内に位置せしめた状態で外壁5に固定されるフランジ部6とを備えた屋外フード12で、前記ダクト4の突出部分を覆う、建物の換気を行うために屋外フード12を通風口に取り付ける構造において、
フランジ部6の上方、下方及び側方を背面に折曲した折曲部分を設け、折曲部分の端縁を外壁5に当接させて固定すると共に、
内周部の断面形状をくの字形状で形成した、ゴム状の弾性、柔軟性を有する材質からなるシールパッキン7Bをフランジ部6の開口部25に周接して設け、シールパッキン7Bが、屋外フード12へ挿入されるダクト4に、内周部の先端がダクトの外形寸法に全周において密着圧接する、
建物の換気を行うために屋外フードを通風口に取り付ける構造。」

[甲1号証発明B]
「室内1と屋外2とを連通するように外壁5に開口された屋外側開口部3より所定の長さだけ突出するダクト4の突出部分を覆うフード9と、
フード9を前面から取付ける本体8と外壁5にねじ止めするためのねじ止め穴14を備え、且つ略中央に開口部25を有し、上方、下方及び側方を背面に折曲した折曲部分を設けたフランジ部6とからなり、且つ
フランジ部6の開口部25に、
内周部の断面形状をくの字形状で形成した、ゴム状の弾性、柔軟性を有する材質からなり、屋外フード12へ挿入されるダクト4に、内周部の先端がダクトの外形寸法に全周において密着圧接する、シールパッキン7Bを周接して設けた、
屋外フード12。」


(3)甲第3号証には、図面とともに次の技術事項が記載されている。

k.「本発明において、換気ガラリ及びフード状カバーの材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、FRP等の合成樹脂や鉄、アルミニウム、銅、真鍮等の金属等が使用できる。」(段落【0008】)

l.「本発明換気口の構造においては、換気ガラリの上面を覆うフード状カバーが外壁に取付けられているので、換気ガラリに雨水が直接当たるのが防止され、フード状カバーと外壁面との間がシール材によって防水されているので、フード状カバーと外壁面との間から雨水が侵入するのが防止される。」(段落【0011】)

m.「3は換気ガラリ2を覆うフード状カバーであり、カバー3の上端部及び下端部において外壁1の換気口11の周縁外面にポリウレタン製シール材31を介して木ねじ32により取付けられ、カバー3の下方には複数枚の垂直な羽板33が間隔をおいて並設されている。フード状カバー3の上端部と外壁1との間にはコーキング34が施されている。
〔実施例1の作用〕次に、図1、2に示す本発明換気口の構造の作用について説明する。外壁1の外面を流下する雨水は、シール材31によってフード状カバー3内には侵入しない。」(段落【0015】?【0016】)


(4)甲第6号証には、図面とともに次の技術事項が記載されている。

n.「【従来の技術およびその欠点】従来の換気装置の接続構造の一例を図17に示す。図17において、通気パイプ2、換気ファン3および屋外フード(換気器具)100からなる換気装置が設けられている。通気パイプ2は、内壁5を貫通して設けられ、換気用通路10の一部を構成している。前記通気パイプ2の室内側開口2aには、換気ファン3が設けられている。一方、前記通気パイプ2の屋外側開口2bには、屋外フード100の差込部1dが挿入されている。
ここで、施工時に屋外フード100の差込部1dのまわりにコーキング材6を付着させて、通気パイプ2内に差し込み、差込部1dと通気パイプ2とのシールを行っている。しかし、コーキング材6の塗布ムラや経時劣化などにより、通気層8を流れる雨水等が通気パイプ2の内部に浸入するおそれがある。また、冬期には、室内の湿潤な空気が、前記コーキング材6の部分を通って通気層8内に侵入し、通気層8内で結露し、外壁4の裏側において水滴が凍結して壁面を損傷させるなどのおそれがある。」(段落【0002】?【0003】)

o.「本発明の主目的は、通気パイプと換気装置との間のシールの気密防水処理を容易かつ確実に行えるようにして、凍害の防止と施工性の向上を図ることである。」(段落【0007】)

p.「本発明において、「乾式シール部材」とは、所定の形状を有するエラストマーであって、所定の部位をシールする部材をいう。なお、エラストマーとは、発泡ゴム、充実ゴムまたは発泡樹脂などからなり、外力が加わると大きく変形し、当該外力を取り除くと、元の形状に復元する部材をいう。」(段落【0019】)

q.「図2に示すように、台座22が外壁4に固定される。
前記台座22を外壁4に固定した状態では、前記通気パイプ2の突出部2cの先端は、前記台座22のベース部25よりも屋外側に向って突出して露出している。これにより、前記外壁4と通気パイプ2と外嵌部29と円環部24との間にはパッキン配置空間35が形成される。該パッキン配置空間35には、乾式シール部材からなるパッキン32が装着され、図1および図2のように、前記通気パイプ2の外周面と前記円環部24との間をシールしている。」(段落【0022】?【0023】)

r.「図12ないし図15は本発明の第4実施形態を示す。図14(b)に示すように、台座22は、円周部29を有している。円周部29は、通気パイプ2の突出部2cの外周面に近接すると共に、外壁4に近接する背面28を備えている。前記円周部29のまわりには、環状の突条部31が、外壁4に向って突出するように形成されている。前記外壁4と前記円周部29の背面28と前記突条部31とで形成されるパッキン配置空間35には、板状のパッキン32が装着される。」(段落【0045】)

s.「図12に示すように、前記台座22は、止メ具60により外壁4に固定される。前記止メ具60を締めると、前記パッキン32が、前記外壁4と前記円周部29の背面28との間で圧縮される。これにより、前記外壁4と前記台座22との間が、前記通気パイプ2のまわりの全周にわたってシールされる。」(段落【0049】)

t.「パッキン32は、板状のシートパッキンを所定幅に切断し、所定の挿通孔32aを打ち抜くようにすれば、パッキンの成型コストを安くすることができる。また、前記突条部31は、パッキン32の外周を位置決めする…。」(段落【0051】)



4.当審の判断

(1)本件発明1についての検討

(1)-1)甲2号証発明Aとの対比
本件発明1と甲2号証発明Aとを対比する。
甲2号証発明Aにおける「フード体3」は、本件発明1における「フード部」に相当し、同様に、
「換気管1の開口部分」は「換気管開口部」に、
「外壁取付板2」は「外壁取付板部」に、
「フード」は「器具」に、
「フードを、前記換気管1の外壁突出部分に装着する」は「器具で、前記換気管の露出部分を覆う」に、それぞれ相当する。

すると、本件発明1と甲2号証発明Aとは、次の一致点及び相違点を有するものである。

<一致点>
室内外を連通する換気路における外壁側端部に設けた換気管を、外壁より所定長さ突出させて設け、前記換気管突出部分を覆うフード部と、中央に換気管の挿通孔を設けて、換気管開口部をフード部内に位置せしめて外壁に固定する外壁取付板部とを備えた器具で、前記換気管の露出部分を覆う換気構造において、
外壁取付板部の上方及び側方を背面に折曲して封止脚部を設け、外壁取付板部の下方に下縁を前方に跳ね上げた水樋部を設け、封止脚部の端縁及び水樋部背面を外壁面に密着させて固定してなる、
換気構造。

<相違点>
1a) 「フード部(フード体3)」と「外壁取付板部(外壁取付板2)」とを備えた「器具(フード)」が、本件発明1においては「薄金属板製」とされているのに対し、甲2号証発明Aにおいては、「フード」を構成する部材のうち「外壁取付板2」は「薄金属板からなる」とされているものの、「フード体3」が「薄金属板製」か否か不明である点。

2a) 本件発明1においては、「外壁取付板部と外壁面とに囲まれた範囲を満たす断熱材を内装し」ているのに対し、甲2号証発明Aではそのような構成を備えていない点。

3a) 本件発明1においては、「先端を窄めると共に適宜な弾性を有する筒状舌部を挿通孔に付設して、前記筒状舌部で挿通孔に位置する換気管の外周を保持してなる」のに対し、甲2号証発明Aではそのような構成を備えていない点。


(1)-2)本件発明1についての判断
上記相違点について検討する。

<相違点 1a) について>
フード部材を備えた換気構造において、フード部材を金属板製とすることは、例えば甲第3号証(摘記事項k参照)にも記載されるように、当該技術分野において従来より周知かつ汎用の技術である。
したがって、甲2号証発明Aにおいて上記周知技術を採用し、「外壁取付板部(外壁取付板2)」のみでなく「フード部(フード体3)」をも「薄金属板製」とし、「器具(フード)」全体を「薄金属板製」として、上記相違点 1a) に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が設計的事項として容易に為し得たことである。

<相違点 3a) について>
本件発明1と甲1号証発明Aとを対比する。
甲1号証発明Aにおける「ダクト4」は、本件発明1における「換気管」に相当し、以下同様に、
「室内1と屋外2とを連通するように外壁5に開口された屋外側開口部3より、ダクト4を所定の長さだけ突出し」は、「室内外を連通する換気路における外壁側端部に設けた換気管を、外壁より所定長さ突出させて設け」に、
「フード9」は「フード部」に、
「略中央に開口部25を有し」は「中央に換気管の挿通孔を設けて」に、
「フランジ部6」は「外壁取付板部」に、
「ダクト4の開口部をフード9内に位置せしめた状態で外壁5に固定されるフランジ部6」は「換気管開口部をフード部内に位置せしめて外壁に固定する外壁取付板部」に、
「屋外フード12」は「器具」に、
「ダクト4の突出部分を覆う」は「換気管の露出部分を覆う」に、
「建物の換気を行うために屋外フード12を通風口に取り付ける構造」は「換気構造」に、
「フランジ部6の上方(、下方)及び側方を背面に折曲した折曲部分を設け」は「外壁取付板部の上方及び側方を背面に折曲して封止脚部を設け」に、
「折曲部分の端縁を外壁5に当接させて固定する」は「封止脚部の端縁」を「外壁面に密着させて固定する」に、
「ゴム状の弾性、柔軟性を有する材質からなる」は「適宜な弾性を有する」に、
「フランジ部6の開口部25に周接して設け」は「挿通孔に付設」に、
それぞれ相当する。
また、甲1号証発明Aにおける「内周部の断面形状をくの字形状で形成した」「シールパッキン7B」は、図5を参照すれば、本件発明1における「先端を窄め」た「筒状舌部」に相当するものと言える。
さらに、甲1号証発明Aの「シールパッキン7B」は、「屋外フード12へ挿入されるダクト4(換気管)」すなわち「(屋外フード12の)フランジ部6の開口部25(挿通孔)へ挿入されるダクト4(換気管)」に、「内周部の先端がダクトの外形寸法に全周において密着圧接」するものであるから、「挿通孔に位置する換気管の外周を保持」するものと言える。

したがって、甲1号証発明Aを本件発明1の用語を用い、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、次のようになる。

「室内外を連通する換気路における外壁側端部に設けた換気管を、外壁より所定長さ突出させて設け、前記換気管突出部分を覆うフード部と、中央に換気管の挿通孔を設けて、換気管開口部をフード部内に位置せしめて外壁に固定する外壁取付板部とを備えた器具で、前記換気管の露出部分を覆う換気構造において、
外壁取付板部の上方、下方及び側方を背面に折曲して封止脚部を設け、封止脚部の端縁を外壁面に密着させて固定すると共に、
先端を窄めると共に適宜な弾性を有する筒状舌部を挿通孔に付設して、前記筒状舌部で挿通孔に位置する換気管の外周を保持してなる
換気構造。」

ここで、上記甲1号証発明Aは、「公称ダクト径がおなじであっても、ダクトの材質によって数種類のダクトがあり、…その外径寸法は…多少の相違があるので…、ダクトの外径寸法の相違にも対応できる、屋外フードを提供する」(摘記事項f参照)ために、「外壁取付板部(フランジ部6)」の略中央の「換気管の挿通孔(開口部25)」に「筒状舌部(シールパッキン7B)」を付設したものである。
すると、甲2号証発明Aも、外壁取付板部(外壁取付板2)の中央に設けた挿通孔に換気管を挿入するものであり、甲1号証発明Aと同様に、換気管の外形寸法の相違に対応しなければならないという課題を有することは明らかであるから、甲第1号証の開示に接した当業者が、甲1号証発明Aにおける「先端を窄めると共に適宜な弾性を有する筒状舌部」を甲第2号証発明Aの「外壁取付板部の挿通孔」に付設することによって、同じ課題を解決することに、格別の困難性は見い出せない。
したがって、甲2号証発明Aにおいて、甲1号証発明Aの「先端を窄めると共に適宜な弾性を有する筒状舌部」を採用し、「筒状舌部で挿通孔に位置する換気管の外周を保持」するものとして、相違点 3a) に係る本件発明1が具備する構成とすることは、当業者が容易に為し得たことである。

<相違点 2a) について>
フード部を備えた換気構造の技術分野において、フード部の取付部材と外壁面との間の空間を発泡樹脂製のシール材等で塞ぎ、雨水の侵入防止及び結露による凍害防止を図ることは、従来より周知かつ汎用されている技術である。(例えば、甲第3号証の摘記事項l,m及び図1,2、あるいは、甲第6号証の摘記事項n?s及び図12?14等参照。)
また、発泡樹脂製のシール材によって空間を「満たす」ようにして、シールを確実とすることも、当該技術分野において従来より周知の技術である。(例えば、甲第6号証の摘記事項o,s及び図12参照。)

一方、甲2号証発明Aは、外壁取付板部(外壁取付板2)に封止脚部26及び水樋部27を設け、封止脚部26の端縁及び水樋部27背面を外壁面に密着させて固定するため、図3に示されるように、外壁取付板部(外壁取付板2)の前面が外壁面から隔てられているものである。
そして、上記 <相違点 3a) について> でみたように、甲2号証発明Aに甲1号証発明Aの「筒状舌部(シールパッキン7B)」を組み合わせることは当業者にとって容易に想到し得るものであるところ、甲2号証発明Aの「外壁取付板部の挿通孔」に甲1号証発明Aの「筒状舌部」を付設すると、外壁取付板部、外壁面、及び筒状舌部とに囲まれた範囲に空間が生じることは、甲第1号証の図5を勘案すれば当業者にとり明らかであるから、このとき、上記周知技術に鑑み、外壁取付板部、外壁面とに囲まれた範囲を満たす発泡樹脂製のシール材を内装することに、格別の困難性は見出せない。
また、発泡樹脂が断熱機能を備えることは周知であり、従来より断熱材として発泡樹脂が汎用されていることから、発泡樹脂製のシール材を内装すればそれが同時に断熱材としての機能を奏することは、当業者に自明な事項である。
したがって、甲2号証発明Aに甲1号証発明Aを適用するに際し、上記周知技術を考慮して「外壁取付板部と外壁面とに囲まれた範囲を満たす断熱材」を内装するものとして、相違点2a) に係る本件発明1が具備する構成とすることは、当業者であれば容易に為し得たものと言わざるを得ない。


そして、本件発明1が奏する効果についてみても、甲2号証発明A、甲1号証発明A及び上記周知技術から、当業者が予測し得る範囲のものである。

したがって、本件発明1は、甲2号証発明A、甲1号証発明A、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。



(2)本件発明2についての検討

(2)-1)甲2号証発明Bとの対比
本件発明2と甲2号証発明Bとを対比する。
甲2号証発明Bにおける「フード体3」は、本件発明2における「フード部材」に相当し、同様に、
「フード体3を装着する螺孔29」は「フード部材の取付部」に、
「外壁Aに外壁取付板2を固定する釘孔28」は「外壁固定部」に、
「封止脚部26の端面と一致する位置とされた背面」は「封止脚部の端縁と一致する背面」に、
「外壁取付板2」は「外壁取付板部材」に、
「フード」は「換気部材」に、それぞれ相当する。

すると、本件発明2と甲2号証発明Bとは、次の一致点及び相違点を有するものである。

<一致点>
室内外を連通する換気路における外壁側端部の外壁より所定長さ突出する換気管の突出部分を覆うフード部材と、
前記フード部材の取付部と外壁固定部を備え、且つ中央に換気管の挿通孔を設け、上方及び側方を背面に折曲して封止脚部を設けると共に、下方に前記封止脚部の端縁と一致する背面を有し、且つ下縁を前方に跳ね上げた水樋部を設けた薄金属板製の外壁取付板部材とからなる、
換気部材。

<相違点>
1b) 「フード部材(フード体3)」が、本件発明2においては「薄金属板製」とされているのに対し、甲2号証発明Bにおいては、「フード体3」が「薄金属板製」か否か不明である点。

2b) 「外壁取付板部材(外壁取付板2)」に、本件発明2においては、「挿通孔部分を除いた封止脚部と水樋部で囲まれた範囲に密嵌される発泡樹脂製の断熱部」を備えているのに対し、甲2号証発明Bではそのような構成を備えていない点。

3b) 「外壁取付板部材(外壁取付板2)」に、本件発明2においては、「先端を窄めると共に適宜な弾性を有し、挿通孔に位置する換気管の外周を保持してなる筒状舌部を備えてなる」のに対し、甲2号証発明Bではそのような構成を備えていない点。


(2)-2)本件発明2についての判断
<相違点 1b) について>
フード部材を備えた換気構造において、フード部材を金属板製とすることは、例えば甲第3号証(摘記事項k参照)にも記載されるように、当該技術分野において従来より周知かつ汎用の技術である。
したがって、甲2号証発明Bにおいて上記周知技術を採用し、「フード部材(フード体3)」を「薄金属板製」として、上記相違点 1b) に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が設計的事項として容易に為し得たことである。

<相違点 3b) について>
本件発明2と甲1号証発明Bとを対比する。
甲1号証発明Bにおける「ダクト4」は、本件発明2における「換気管」に相当し、以下同様に、
「室内1と屋外2とを連通するように外壁5に開口された屋外側開口部3より所定の長さだけ突出するダクト4」は、「室内外を連通する換気路における外壁側端部の外壁より所定長さ突出する換気管」に、
「フード9」は「フード部材」に、
「フード9を前面から取付ける本体8」は「フード部材の取付部」に、
「外壁5にねじ止めするためのねじ止め穴14」は「外壁固定部」に、
「略中央に開口部25を有し」は「中央に換気管の挿通孔を設け」に、
「上方(、下方)及び側方を背面に折曲した折曲部分を設け」は「上方及び側方を背面に折曲して封止脚部を設け」に、
「フランジ部6」は「外壁取付板部材」に、
「フランジ部6の開口部25に」「周接して設けた」は「外壁取付板部材に」「備えてなる」に、
「ゴム状の弾性、柔軟性を有する材質からな」ることは「適宜な弾性を有する」ことに、
「シールパッキン7B」は「筒状舌部」に、
「屋外フード12」は「換気部材」に、
それぞれ相当する。
また、甲1号証発明Bにおける「内周部の断面形状をくの字形状で形成した」「シールパッキン7B」は、図5を参照すれば、本件発明2における「先端を窄め」た「筒状舌部」に相当するものと言える。
さらに、甲1号証発明Bの「シールパッキン7B」は、「屋外フード12へ挿入されるダクト4(換気管)」すなわち「(屋外フード12の)フランジ部6の開口部25(挿通孔)へ挿入されるダクト4(換気管)」に、「内周部の先端がダクトの外形寸法に全周において密着圧接」するものであるから、「挿通孔に位置する換気管の外周を保持」するものと言える。

したがって、甲1号証発明Bを本件発明2の用語を用い、本件発明2の記載ぶりに則って整理すると、次のようになる。

「室内外を連通する換気路における外壁側端部の外壁より所定長さ突出する換気管の突出部分を覆うフード部材と、
前記フード部材の取付部と外壁固定部を備え、且つ中央に換気管の挿通孔を設け、上方、下方及び側方を背面に折曲して封止脚部を設けた外壁取付板部材とからなり、且つ
前記外壁取付板部材に、
先端を窄めると共に適宜な弾性を有し、挿通孔に位置する換気管の外周を保持してなる筒状舌部を備えてなる
換気部材。」

ここで、上記甲1号証発明Bは、「公称ダクト径がおなじであっても、ダクトの材質によって数種類のダクトがあり、…その外径寸法は…多少の相違があるので…、ダクトの外径寸法の相違にも対応できる、屋外フードを提供する」(摘記事項f参照)ために、「外壁取付板部材(フランジ部6)」の略中央の換気管の挿通孔(開口部25)に「筒状舌部(シールパッキン7B」を備えさせたものである。
すると、甲2号証発明Bも、外壁取付板部材(外壁取付板2)の中央に設けた挿通孔に換気管を挿入するものであり、甲1号証発明Bと同様に、換気管の外形寸法の相違に対応しなければならないという課題を有することは明らかであるから、甲第1号証の開示に接した当業者が、甲1号証発明Bにおける「先端を窄めると共に適宜な弾性を有し、挿通孔に位置する換気管の外周を保持してなる筒状舌部」を、甲第2号証発明Bにおける「外壁取付板部材」の挿通孔に備えさせて、同じ課題を解決することに、格別の困難性は見い出せない。
したがって、甲2号証発明Bにおいて、甲1号証発明Bの「先端を窄めると共に適宜な弾性を有し、挿通孔に位置する換気管の外周を保持してなる筒状舌部する筒状舌部」を採用し、相違点 3b) に係る本件発明2が具備する構成とすることは、当業者が容易に為し得たことである。


<相違点 2b) について>
フード部材を備えた換気部材の技術分野において、フード部材の取付部材と外壁面との間の空間を発泡樹脂製のシール材等で塞ぎ、雨水の侵入防止及び結露による凍害防止を図ることは、従来より周知かつ汎用されている技術である。(例えば、甲第3号証の摘記事項l,m及び図1,2、あるいは、甲第6号証の摘記事項n?s及び図12?14等参照。)
また、発泡樹脂製のシール材を空間に「密嵌」して、シールを確実とすることも、当該技術分野において従来より周知の技術である。(例えば、甲第6号証の摘記事項o,s及び図12参照。)

一方、上記 <相違点 3b) について> でみたように、甲2号証発明Bに甲1号証発明Bの「筒状舌部」を組み合わせることは当業者が容易に想到し得るものであるところ、甲2号証発明Bは、図3に示されるように、外壁取付板部材(外壁取付板2)の上方及び側方に設けた封止脚部26の端縁、及び、下方に設けた水樋部27背面を外壁面に密着させて固定するため、外壁取付板部(外壁取付板2)の前面が外壁面から隔てられているものであるから、このような甲2号証発明Bの外壁取付板部の挿通孔に甲1号証発明Bの「筒状舌部(シールパッキン7B)」(図5参照)を付設すると、挿通孔部分を除いた、封止脚部と水樋部で囲まれた範囲に空間が生じることは、当業者にとり明らかである。
よって、このとき、上記周知技術を考慮し、挿通孔部分を除いた、封止脚部と水樋部で囲まれた範囲に生じる空間を塞ぐように、発泡樹脂製のシール材を密嵌することに格別の困難性は見出せない。
また、発泡樹脂が断熱機能を備えることは周知であるから、発泡樹脂製のシール材を密嵌すればそれが同時に断熱部として機能することも、当業者にとって自明の事項である。
したがって、甲2号証発明Bに甲1号証発明Bを適用するに際して、外壁取付板部材の「挿通孔部分を除いた封止脚部と水樋部で囲まれた範囲」に、発泡樹脂製の「断熱部」を密嵌し、相違点2b) に係る本件発明2が具備する構成とすることは、当業者であれば容易に為し得たものと言わざるを得ない。


そして、本件発明2が奏する効果についてみても、甲2号証発明B、甲1号証発明B及び上記周知技術から、当業者が予測し得る範囲のものである。

したがって、本件発明2は、甲2号証発明B、甲1号証発明B、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。



5.被請求人の主張について

被請求人は、答弁書及び口頭審理陳述要領書において、次のように主張している。

ア.「発明1の「断熱材」の「外壁取付部と外壁面との空間に囲まれた範囲(=封止脚部内方空間)を満たす」と、発明2の「断熱部」の「挿通孔部分を除いた封止脚部と水樋部で囲まれた範囲(=封止脚部内方空間)に密嵌される」は、実質的に同一であり、…外壁取付部の裏面に断熱材(断熱部)が存在することで、封止脚部の内方の空間に存在する空気が外壁取付部を通して冷却されることが無く、且つ当該空間を満たすことによって結露の原因となる空気が存在する空間をできるだけ無くすること(空間充満構成の採用)で、結露の発生を防止するものである。」(答弁書第3頁第16行?第4行第1行)

イ.「審判請求人は、甲3号証記載の発明が、前記構成を開示していると指摘しているが、「ポリウレタン製シール材31」は、当該個所での密封(水封)を実現するものであり、…図2に示されているようにシール部材31の周縁が膨出し、その膨出面と封止脚部と対応する周面(「封止脚部の対応する周面」の誤記と認める。以下同様。)との間に空間が存在していることから、シール部材は、封止脚部内方に該当する空間を満たすことを前提としているものではない。」(答弁書第4頁第5?11行)

ウ.「「封止脚部」は外壁面との間のシーリング用として設けたもので、この結果封止脚部内方空間に結露が生ずることになり、封止脚部のシーリングの確実性の点から、前記結露による問題(結露の流出による外壁面の汚れ)が生じてしまうので、その対策として封止脚部空間を「満たす」又は「密嵌」する断熱材を設けたものである。
従って「断熱材」及び「断熱部」は、…封止脚部内方空間の結露の発生源となる空気の存在を少なくし、且つ断熱機能によって当該空間内の空気が外気によって冷却されること(を)阻止して結露の発生を防止したものである。」(被請求人口頭審理陳述要領書第2頁第25行?第3頁第5行)

エ.「甲6号証には、本件発明の封止脚部に対応する部分が存在しない。…。
尚図示されている突条部31は、…シーリング用として設けた「封止脚部」ではない。
確かに第4実施形態においては、台座(=外壁取付板部)と外壁面との間にパッキン(断熱機能を備える)を介在させることは開示されているが、封止脚部を前提とした構造における内方空間という概念は全くない構造において、「断熱部・断熱材で、封止脚部内方空間を満たす」という概念は想到されない。」(被請求人口頭審理陳述要領書第3頁第14行?第4頁第5行)


上記被請求人の主張について検討する。

上記イ.において、被請求人は、甲第3号証に記載された「シール部材31」は、「周縁が膨出し、その膨出面と封止脚部の対応する周面との間に空間が存在している」から、本件発明1及び2のように、「封止脚部内方空間を満たす(に密嵌される)」ことを前提としていないと主張する。
しかしながら、本件発明1及び2の、「満たす」または「密嵌」の意味について、被請求人も上記ア、ウでそれぞれ「空気が存在する空間をできるだけ無くすること」、「空気の存在を少なく」することと述べているように、本件発明1及び2においても、「封止脚部内方空間」に、断熱材によって満たされない空間がわずかに残る状態を排除していないものと解される。
したがって、被請求人の甲第3号証についての上記主張は、本件発明1及び2についての被請求人の上記主張と矛盾しており採用できない。
なお、本件発明1及び2の実施例として記載される本件特許公報の図6には、断熱部材3と、外壁取付板部材1の上方の封止脚部16の、対応する周面との間に、空間が存在したものが記載されている。

また、上記エ.の、甲第6号証には「封止脚部を前提とした構造における内方空間という概念は全くない」との被請求人の主張については、甲第6号証の図12,14及び「外壁4と前記円周部29の背面28と前記突条部31とで形成されるパッキン配置空間35には、板状のパッキン32が装着される」(摘記事項r参照)との記載より、甲第6号証には、本件発明1及び2における「封止脚部」に対応する部材である「突条部31」の内方空間としての、「パッキン配置空間35」が明記されているのであるから、被請求人の甲第6号証についての上記主張も採用できない。



6. 結論

したがって、本件発明1及び2は、甲第2号証に記載された発明、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1及び2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第62条の規定により、請求人及び被請求人がそれぞれ負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2010-03-05 
出願番号 特願2004-84214(P2004-84214)
審決分類 P 1 113・ 121- Z (F24F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 礒部 賢  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 長浜 義憲
渋谷 知子
登録日 2009-03-19 
登録番号 特許第4279711号(P4279711)
発明の名称 換気構造及び換気部材  
代理人 牛木 理一  
代理人 近藤 彰  

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