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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E01F
管理番号 1215377
審判番号 不服2008-19534  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-31 
確定日 2010-04-22 
事件の表示 特願2005-171577「滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材及びその施工法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月30日出願公開,特開2006-322290〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願に係る手続の経緯の概要は,次のとおりである。
平成17年 5月17日 特許出願
平成18年11月16日 手続補正書,手続補足書及び上申書の提出
平成20年 3月18日 拒絶理由の通知
平成20年 5月30日 手続補正書,手続補足書及び意見書の提出
平成20年 6月20日 拒絶査定
平成20年 7月31日 本件審判請求
平成20年 8月26日 面接
平成20年 9月 1日 手続補正書の提出
平成20年10月 6日 面接
平成20年10月16日 審判請求書の手続補正書及び手続補足書の提出
平成20年11月 7日 前置報告
平成21年 2月12日 上申書の提出
平成21年 8月10日 審査官による前置報告書の内容を提示すると
ともに請求人の意見を求める審尋
平成21年10月 7日 回答書の提出
平成22年 2月 3日 面接


第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成20年9月1日受付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正
本件補正は,特許請求の範囲についてみれば,補正前(平成20年5月30日受付けの手続補正書参照。)に,
「 【請求項1】
溶融型道路標示材に、粒度300?1500μmからなるホタテ貝殻の細粒体を、10?30%の混合比をもって混合したことを特徴とする滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材。
【請求項2】
請求項1に記載のホタテ貝殻入り溶融型道路標示材において、あらかじめ180?200℃で加熱処理したホタテ貝殻を粒度300?1500μmの細粒となし、これを溶融型道路標示材に対し、10?30%の混合比をもって混合したことを特徴とする滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材。
【請求項3】
請求項1または2の何れかに記載のホタテ貝殻細粒体入り溶融型道路標示材を用いる溶融型道路標示施工法において、前記ホタテ貝殻入り溶融型道路標示材を路面上に塗布するにあたり、塗布しつつある溶融型道路標示材上に、ガラスビーズと共に請求項1または2に於いて用いたホタテ貝殻細粒体を散布することを特徴とする滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示施工法。」とあったものを,

「 【請求項1】
粒度300?1500μmからなるホタテ貝殻細粒体を、10?30%の比で混合してなる溶融型道路標示材を路面上に塗布しつつ、該路面上の標示材上にガラスビーズとホタテ貝殻を散布することを特徴とする滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材及び施工法。」と補正するものである。

2 本件補正の目的
上記補正により,本願の請求項1に係る発明は,「ホタテ貝殻入り溶融型道路標示材」という物の発明と,「施工法」という方法の発明との,二つのカテゴリーを含むものとなった。
しかしながら,特許法第68条には「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。・・・」と規定され,同法第2条第3項には,発明の「実施」を,物の発明,方法の発明及び物を生産する方法の発明に区分して定義していることを考慮すれば,一の請求項に異なる二つのカテゴリーを含む発明は,その権利の及ぶ範囲が不明確であるから,上記補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものとはいえない。
また,この補正が,同項第1号に掲げる請求項の削除,同項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮,同項第3号に掲げる誤記の訂正のいずれの事項を目的とするものにも該当しないことは明らかである。

3 むすび
したがって,本件補正は,改正前特許法第17条の2第4項各号に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成20年9月1日受付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1ないし3に係る発明は,平成20年5月30日受付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものであり,そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,上記「第2」の「1」に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 刊行物及び刊行物に記載された事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である,登録実用新案第3100949号公報(以下「刊行物1」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
(1a)「・・・
【請求項2】
溶融型道路標示材に、ホタテ貝殼の細粒体を所要量混合したことを特徴とするホタテ貝殼入り溶融型道路標示材。
・・・
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の溶融型道路標示材において、前記ホタテ貝殼の細粒体の粒度を106?850μmとし、微粉体の粒度を106μm以下としたことを特徴とするホタテ貝殻入り溶融型道路標示材。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載の溶融型道路標示材において、前記溶融型道路標示材に対する前記ホタテ貝殻の細粒体の混合比を5?30%、前記ホタテ貝殻の微粉体の混合比を2?30%としたことを特徴とするホタテ貝殼入り溶融型道路標示材。
・・・」(【実用新案登録請求の範囲】)
(1b)「【考案の属する技術分野】
本考案は、ホタテ貝殼の細粒体、または微粉体あるいは細粒体と微粉体の所要量を溶融型道路標示材に混合してなるホタテ貝殼入り溶融型道路標示材に関するものである。
【従来の技術】
従来環境整備に役立つ資源の再利用をはかり、溶融型道路標示材としてホタテ貝殻使用の試みも見られた事は公知である。」(段落【0001】?【0002】)
(1c)「図1において、Aはホタテ貝殼入り溶融型道路標示材であって、前記ホタテ貝殼入り溶融型道路標示材Aは、周知の各材料、例えば石油樹脂、顔料、体質材、骨材、反射材、添加剤等からなる溶融型道路標示材1と、ホタテ貝殼の細粒体2、または、前記細粒体2とホタテ貝殼の微粉体3とで構成されてなるものであるが、前記ホタテ貝殻入り溶融型道路標示材Aは単に溶融型道路標示材1とホタテ貝殻の微粉体3とで構成することも可能である。4は前記溶融型道路標示材1と、ホタテ貝殻の細粒体2および微粉体3を別個に入れた袋詰体、5は路面である。」(段落【0011】)
(1d)「【考案の効果】
・・・
従来、環境破壊が生ずるため、埋め立て処分、海洋投棄が不可能になった大量のホタテ貝殼の再利用が可能となり、その処理量を大量に増加させ、環境破壊防止に大いに役立ち得る効果があり、その混合比も前記の溶融型道路標示材に対する、ホタテ貝殻の細粒体および微粉体の混合比を全体の35%以下とすることにより、塗料の変質欠陥、塗膜欠陥等を生ずることなく、良好な施工を行うことができる等の効果がある。」(段落【0013】)
そして,上記記載事項(1a)ないし(1d)に記載された内容を総合すると,上記刊行物1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
(引用発明)
「溶融型道路標示材に,粒度を106?850μmとしたホタテ貝殻の細粒体を5?30%の混合比で混合した,ホタテ貝殻入り溶融型道路標示材。」

3 対比
本願発明と引用発明を対比すると,両者の一致点および相違点は,次のとおりである。

<一致点>
「溶融型道路標示材に,ホタテ貝殻の細粒体を混合した,ホタテ貝殻入り溶融型道路標示材。」

<相違点>
ホタテ貝殻入り溶融型道路標示材が,本願発明は「粒度300?1500μmからなるホタテ貝殻の細粒体を,10?30%の混合比をもって混合した」ものであって,「滑り抵抗性に優れた」ものであるのに対し,引用発明は「粒度を106?850μmとしたホタテ貝殻の細粒体を,5?30%の混合比で混合した」ものであって,滑り抵抗性の程度は不明である点。

4 判断
上記相違点について検討する。本願発明における「滑り抵抗性」について,本願の明細書の段落【0008】には「・・・ホタテ貝殻細粒体は、その形状が同粒径の石灰石とは形状を異にし、図2に示したように棒状体をなしており、滑り抵抗性を確保するのに適したものであり・・・(当初明細書には「・・・ホタテ貝殻の形状が石灰石の同径の物に比較し、棒状形状になり、滑り抵抗性を確保するのに適したものとなり・・・」と記載されていた。)」と記載され,同【図4】には,ホタテ貝殻のアスペクト比(粒の形状)が,粒度約10?1000μmの範囲において,約1.8?2.8(縦長の形状)であることが示されている。そうすると,引用発明の「粒度106?850μm」のホタテ貝殻の細粒体が滑り抵抗性に優れたアスペクト比を有していることは明らかであり,その滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻の細粒体を混合したホタテ貝殻入り溶融型道路標示材は,滑り抵抗性に優れたものといえる。
そして,本願発明と引用発明とは,溶融型道路標示材に混合されるホタテ貝殻の細粒体の粒度が「粒度300?850μm」の範囲で共通しており,混合比が「10?30%」の範囲で共通しているものであるところ,溶融型道路標示材に混合されるホタテ貝殻の細粒体の粒度や混合比は,溶融型道路標示材に必要とされる強度,耐摩耗性,耐候性,滑りにくさ等を考慮して,当業者が適宜変更し得たものであるから,強度,耐摩耗性,耐候性,滑りにくさ等を考慮した結果,溶融型道路標示材に混合されるホタテ貝殻の細粒体の粒度及び混合比の範囲を,それぞれ,「粒度300?1500μm」及び「10?30%」程度に設定することは,当業者が容易になし得たことである。
また,本願発明の作用効果は,引用発明と比較して顕著なものとはいえない。
したがって,本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお,請求人は,平成21年2月12日付け上申書において,ホタテ貝殻細粒体のアスペクト比が1.5より大きく3.0より小さい旨を特定した補正案を提示している。
しかしながら,例えば,「北海道立工業試験場主催,技術移転フォーラム2004,-北海道立工業試験場成果発表会-プログラム・発言要旨,平成16年5月19日,40?42頁」の「ホタテ貝殻粉末は・・・粉砕の進行に伴い貝殻の微細組織に由来するアスペクト比(長軸/短軸)の大きい棒状(図1)を示す。(40頁左欄下から11?14行参照。)」及び「ホタテ貝殻粉末は、アスペクト比が高い形状を有するため、石灰石粉末よりも補強効果が高かったものと考えられる。(42頁左欄下から9?11行参照。)」という記載,及び,特開2004-75964号公報の段落【0008】の「ホタテ貝殻は、・・・炭酸カルシウムの結晶構造は、・・・粉砕すると他の貝殻によっては得られない成長方向に沿ったアスペクト比を有する棒状の粉砕物となる。」という記載に見られるように,ホタテ貝殻を細粒化した際に粒の形状が縦長のアスペクト比となることは,ホタテ貝殻自体に自然に備わる属性にすぎない。すなわち,ホタテ貝殻を10?1000μm程度に細粒化すれば,その粒の形状は,自ずから縦長のアスペクト比を持ったものとなるのであるから,この補正案により,上記判断が覆るものではない。

5 むすび
上記したとおり,本願発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-18 
結審通知日 2010-02-23 
審決日 2010-03-08 
出願番号 特願2005-171577(P2005-171577)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳元 八大  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 伊波 猛
関根 裕
発明の名称 滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材及びその施工法  
代理人 塩澤 克利  
代理人 塩澤 克利  
代理人 野口 武男  
代理人 野口 武男  

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