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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 B41F
管理番号 1215766
審判番号 不服2008-5500  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-06 
確定日 2010-04-30 
事件の表示 平成11年特許願第110324号「印刷機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月31日出願公開、特開2000-301688〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成11年4月19日に出願したものであって、平成19年10月15日付けで手続補正がなされ、平成20年1月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月6日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

第2.本願請求項の記載
平成19年10月15日付け手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである。
「印刷面の搬送方向の長さがL_(0)であるシート状物を保持する長さL_(a)の有効面を周方向に沿って一定の間隔で複数有する回転可能な圧胴と、
前記圧胴に対接し、前記シート状物に印刷を施す第一印刷部と、
前記圧胴に対する前記第一印刷部の対接位置よりも当該圧胴の回転方向下流側で当該圧胴に対接し、前記シート状物に印刷を施す第二印刷部と、
前記圧胴に対する前記第二印刷部の対接位置よりも当該圧胴の回転方向下流側で当該圧胴に対接し、前記シート状物に番号印刷を施す番号印刷部と、
前記圧胴に対する前記番号印刷部の対接位置よりも当該圧胴の回転方向下流側で当該圧胴に対接し、当該圧胴から前記シート状物を受け取る搬送胴と
を備えてなる印刷機において、
前記第一印刷部の前記圧胴との対接位置と前記第二印刷部の前記圧胴との対接位置との間の当該圧胴による前記シート状物の搬送距離L_(1)が当該シート状物の印刷面の搬送方向の長さL_(0)以上の長さ(L_(1)≧L_(0))を有し、
前記番号印刷部の前記圧胴との対接位置と前記搬送胴の前記圧胴との対接位置との間の当該圧胴による前記シート状物の搬送距離L_(2)が当該シート状物の印刷面の搬送方向の長さL_(0)以上の長さ(L_(2)≧L_(0))を有し、
前記第一印刷部の前記圧胴との対接位置と前記番号印刷部の前記圧胴との対接位置との間の当該圧胴によるシート状物の搬送距離L_(3)が当該圧胴の隣り合う前記有効面の間の長さL_(b)の二倍の長さと当該有効面の長さL_(a)とを合わせた長さ以下の長さ(L_(3)≦L_(a)+2L_(b))を有するように、
前記第一印刷部、前記第二印刷部、前記番号印刷部および前記搬送胴がそれぞれ配設されている
ことを特徴とする印刷機。」

第3.記載不備について
1.拒絶理由通知の内容等
平成19年8月10日付け拒絶理由通知書には、以下の記載がある。
「「シート状物の印刷面の搬送方向の長さ」は、シート状物の種類によって異なる。
したがって、・・・(中略)・・・このような発明特定事項によって規定される本願発明が明確であるとは到底認めることができない。
よって、請求項1に係る発明は明確でない。」
また、平成20年1月31日付け拒絶査定には、以下の記載がある。
「(1)[理由1](記載不備)について
シート状物及びシート状物の印刷面の搬送方向の長さは、印刷の仕様に合わせてその都度異なるものが選ばれるはずであり、その長さを任意とすることができる以上、補正された本願発明の技術的範囲は依然として不明確であると言わざるを得ない。」

2.記載不備についての判断
上記第2に記載の通り、本願請求項1は「印刷機」を請求するものであるにもかかわらず、その印刷機で搬送される「シート状物」の「印刷面の搬送方向の長さL_(0)」で、印刷機の構成を特定しようとするものである。印刷機では様々な長さのシート状物を搬送できるから、「印刷面の搬送方向の長さL_(0)」は、可変な長さである。
したがって、可変な長さである「印刷面の搬送方向の長さL_(0)」で「印刷機」を特定しようとしている請求項1の記載では、印刷機の構成を特定することができず、本願請求項1の記載は不明確である。

第4.進歩性について
1.本願発明
上記第3で検討したように、本願請求項1の記載は不明確ではあるが、審判請求書についての平成20年4月7日付け手続補正書で請求人は以下のように主張している。(下線は審決で付した。以下同じ。)
a.「【本願発明が特許されるべき理由】
[理由1(記載不備)について]
・・・印刷機は、印刷を施したい最大のシート状物を印刷できるようにそのサイズが設計されています。そのため、その印刷機で印刷可能なシート状物及びシート状物の印刷面の搬送方向の長さの最大値は、必然的に決まり、それがその印刷機の大前提の規格となります。よって、当業者が、その印刷機で規格を超えるサイズのシート状物を適用して印刷しようとすることは、まったくあり得ないばかりか、そもそも考えもしません。つまり、その印刷機で印刷を行う場合、当業者は、その印刷機で印刷可能なサイズ、すなわち、上記最大値以下のシート状物を当然にして選択するのです。」
b.「3.本願発明と引用文献との対比
・・・
(3)また、引例2には、先に説明したように、圧胴3(本願発明の「圧胴」に相当)に接するゴム胴2a(本願発明の「第一印刷部」に相当),2b(本願発明の「第二印刷部」に相当)の点5,6間の圧胴周面距離E(本願発明の「L_(1)」に相当)を、ゴム胴転写面の円周方向全長F(本願発明の「L_(0)」に相当)より長くなるように・・・」
c.「(7)また、引例6には、最後の印刷箇所である圧胴1(本願発明の「圧胴」に相当)及びゴム胴2(本願発明の「番号印刷部」に相当)の間と、枚葉紙受取箇所12である圧胴1及びチェーン歯車10(本願発明の「搬送胴」に相当)の間との区間(本願発明の「L_(2)」に相当)が、最大枚葉紙サイズ(本願発明の「L_(0)」に相当)よりも大きいチェーン排紙装置を有する枚葉紙用輪転印刷機が記載されています。」

上記a及びcの記載によると、本願請求項1記載の「シート状物の印刷面の搬送方向の長さL_(0)」は、印刷機で印刷可能な最大枚葉紙サイズの搬送方向の長さを意味し、上記bの記載によると、ゴム胴転写面の円周方向全長と等しいものであると認識しているようである。
ゴム胴の有効な転写面の円周方向の長さは、通常、圧胴の有効面の周方向の長さと等しいことは技術常識であるので、本願請求項1記載の「シート状物の印刷面の搬送方向の長さL_(0)」は、「印刷可能な最大枚葉紙サイズの搬送方向の長さ」であり、本願請求項1記載の「有効面の長さL_(a)」と等しいものを含んでいると解釈して以下検討する。(そのように解釈したものを以下、「本願発明」という。)

2.引用刊行物
a.原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である実願昭59-188277号(実開昭61-102527号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
ア.「オフセット印刷機の印刷圧胴の胴径を他の胴の倍以上とし、この印刷圧胴上に凸版胴を設けたことを特微とするオフセット、凸版両用印刷機。」(実用新案登録請求の範囲)
イ.「本考案は上記印刷圧胴の径を従来の倍或は3倍以上にすることによって、印刷圧胴上のスペースを拡げ、凸版胴を取り付けて、オフセット、凸版両面印刷を可能にしたのみならず、更に余ったスペースにミシン掛け装置、ナンバー印刷装置等を取り付けてオフセット印刷機に多機能を持たせたものである。
以下図面に基き本考案の構成作用について説明する。第1図は本考案印刷機の各胴配置関係を示す概略側面図であって、紙葉は給紙パイル1から給紙ガイド板2を経て、スイング爪3によって印刷圧胴4に供給される。5はオフセット印刷装置にインキを供給するオフセットインカー装置、6は湿し水装置、7は版胴、8はブランケット胴である。版胴7、ブランケット胴8等の2倍の径を持つ前記印刷圧胴4の周面上には、ミシン掛け装置9(図では縦ミシン掛け装置)と凸版胴10、凸版インカー装置11が配置され、又印刷圧胴4の下部は排紙装置12のデリベリローラ12aに接している。13は排出された印刷紙を堆積する排紙パイルである。前記スイング爪3から送られた紙葉は印刷圧胴の受渡爪20(第2図)で把握され、印刷圧胴上でオフセット印刷、ミシン目入れ、凸版印刷をされて排紙装置12のデリベリローラ12a、チエインコンベヤ12bを経て排紙パイル13へ積み重ねられる。本装置における特徴は印刷圧胴の径が他の胴の径の2倍以上、即ち2倍、3倍、4倍…等の大径であることで、第2図はその一例として2倍径の印刷圧胴の断面略図を示す。又印刷圧胴4は受渡爪20、20aを内蔵する2個の切欠部21、21aで2分され、凸版、ミシン刃による損傷を防ぐため夫々薄鋼板22、22aをその表面に張設されている。23、23a、24、24aはこの薄鋼板の止め金具、張り金具である。」(第1頁下から第5行?第3頁第9行)
ウ.第1図から、オフセットインカー装置5、湿し水装置6、版胴7及びブランケット胴8からなる部分(以下、「オフセット印刷部」という。)が印刷圧胴4に対接し、前記印刷圧胴4に対するオフセット印刷部の対接位置よりも当該印刷圧胴4の回転方向下流側で当該印刷圧胴4に凸版インカー装置11及び凸版胴10からなる部分(以下、「凸版印刷部」という。)が対接し、前記印刷圧胴4に対する凸版印刷部の対接位置よりも当該印刷圧胴4の回転方向下流側で当該印刷圧胴4にデリベリローラ12が対接していることが看取できる。

上記記載及び図面を含む刊行物1全体の記載から、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。
「受渡爪20、20aを内蔵する2個の切欠部21、21aで2分された2倍径の印刷圧胴4と、
前記印刷圧胴4に対接し、紙葉にオフセット印刷をするオフセット印刷部と、
前記印刷圧胴4に対する前記オフセット印刷部の対接位置よりも当該印刷圧胴4の回転方向下流側で当該印刷圧胴4に対接し、前記紙葉に凸版印刷をする凸版印刷部と、
前記印刷圧胴4に対する前記凸版印刷部の対接位置よりも当該印刷圧胴4の回転方向下流側で当該印刷圧胴4に対接し、当該印刷圧胴4から前記紙葉を受け取るデリベリローラ12と、
前記印刷圧胴4上の余ったスペースに取り付けたナンバー印刷装置と、
を備えてなるオフセット、凸版両用印刷機。」(以下、「引用発明」という。)

b.原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特公昭50-6805号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
エ.「(ロ)又版、ゴム胴各2本に対し共通の圧胴1本の等径よりなる胴で1印刷ユニツトを形成し、これを2組並置して2色、3色間を多数の渡し胴か又はチエーン受渡し機構によつて連結して構成する形式の4色機にあつては、(第2図、第3図)各ゴム胴の共通の圧胴に対する接点間の距離が小さく前行程印刷中に次行程印刷が行われる関係上、各ゴム胴の胴仕立寸法や印圧量の微妙な相違がダブリ現象となつて表われてくる公算が大きい。」(第1頁第1欄第34行?第2欄第6行)
オ.「以下図面についてその詳細を説明する。第1図において、1a,1b,1c,1dは版胴、2a,2b,2c,2dはゴム胴、3,3'は圧胴、4は渡し胴を示す。圧胴3,3'及び渡し胴4は版、ゴム胴直径の3倍直径をもち周面3等分位置に夫々紙くわえ爪(図示せず)が装置される。圧胴3,3'にはゴム胴2a,2b、と2c,2dとが夫々接して印刷ユニツトを形成し、渡し胴4が両圧胴3,3'と互に接して両ユニツトを連結する。このような胴配列下にあつてゴム胴は次の如き条件を満足する位置に設定されている。即ち圧胴3に接する点5,6間の圧胴周面距離Eを、ゴム胴転写面の円周方向全長Fより長くなるように配置するとともに、各ゴム胴間の距離A,A',A″が等しく高さB,B',B'',B'''も等しくなるような位置とする。」(第1頁第2欄第18?33行)
カ.「この発明は以上のような構成からなり、圧胴3,3'、渡し胴4の径を板を版、ゴム胴の3倍直径で構成し各ゴム胴間の距離A,A',A''を充分広くとつたので、前記(ロ)項でのべたこの種4色機の欠陥を解消することができる。」(第2頁第3欄第2?6行)

c.原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開昭47-12109号公報(以下、「刊行物3」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
キ.「圧胴1は版胴4,5によりインキ付けされるゴム胴2,3と協働する。枚葉紙は紙差し板6からストツプシリンダ7と渡し胴8とによつて圧胴1に送られる。この圧胴1はこの実施例のばあいにはゴム胴2,3の2倍の大きさの外周を有している。軸9には図示されていない掴(審決注:「掴」は、原文では旧字体である。)み機構を保持するチエーン11のチエーン歯車10が支承されている。前記掴み機構は圧胴1から枚葉紙を受取りかつ排紙する。圧胴1とチエーン歯車10との間に形成された受取個所は12で示されている。この受取個所は圧胴1とゴム胴2との間の最後の印刷個所から最大サイズ長さよりも遠くまで離されている。これによつて枚葉紙端部をも均一に押出すことができるようになつている。さらに最大長さを有する枚葉紙もはじめから終りまで正しい速度で印刷帯を通過せしめられるようになつた。」(第2頁右上欄第11行?左下欄第7行)

3.対比
本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「印刷圧胴4」、「紙葉」、「オフセット印刷部」、「凸版印刷部」、「ナンバー印刷装置」、「デリベリローラ12」及び「オフセット、凸版両用印刷機」は、それぞれ本願発明の「圧胴」、「シート状物」、「第一印刷部」、「第二印刷部」、「番号印刷部」、「搬送胴」及び「印刷機」に相当する。
引用発明の「印刷圧胴4」は、「受渡爪20、20aを内蔵する2個の切欠部21、21aで2分された2倍径の」のものであるから、有効面を周方向に沿って一定の間隔で複数有する回転可能な圧胴といえ、その有効面の周方向長さを本願発明に倣いL_(a)とすると、該有効面は印刷面の搬送方向の長さがL_(0)、即ち、印刷可能な最大枚葉紙サイズの搬送方向の長さがL_(a)であるシート状物を保持することが可能であることは明らかである。
引用発明の「デリベリローラ12」も本願発明の「搬送胴」も圧胴の回転方向最下流側で圧胴に対接することは自明であるから、両者は、圧胴の回転方向最下流側で当該圧胴に対接し、当該圧胴から前記シート状物を受け取る搬送胴である点で共通する。
よって、本願発明と引用発明とは、
「印刷面の搬送方向の長さがL_(0)であるシート状物を保持する長さL_(a)の有効面を周方向に沿って一定の間隔で複数有する回転可能な圧胴と、
前記圧胴に対接し、前記シート状物に印刷を施す第一印刷部と、
前記圧胴に対する前記第一印刷部の対接位置よりも当該圧胴の回転方向下流側で当該圧胴に対接し、前記シート状物に印刷を施す第二印刷部と、
前記シート状物に番号印刷を施す番号印刷部と、
前記圧胴の回転方向最下流側で当該圧胴に対接し、当該圧胴から前記シート状物を受け取る搬送胴と
を備えてなる印刷機において、
前記第一印刷部、前記第二印刷部、前記番号印刷部および前記搬送胴がそれぞれ配設されている
印刷機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]番号印刷部の対接位置に関し、本願発明は、「前記圧胴に対する前記第二印刷部の対接位置よりも当該圧胴の回転方向下流側で当該圧胴に対接し」、「前記圧胴に対する前記番号印刷部の対接位置よりも当該圧胴の回転方向下流側で当該圧胴に対接し・・・搬送胴」と特定され、即ち、第二印刷部の対接位置よりも当該圧胴の回転方向下流側で搬送胴の対接位置よりも当該圧胴の回転方向上流側であるのに対し、引用発明は、印刷圧胴4上の余ったスペースに取り付けたものであって、圧胴のどの位置に対接するのか明示されていない点。
[相違点2]本願発明は、「前記第一印刷部の前記圧胴との対接位置と前記第二印刷部の前記圧胴との対接位置との間の当該圧胴による前記シート状物の搬送距離L_(1)が当該シート状物の印刷面の搬送方向の長さL_(0)以上の長さ(L_(1)≧L_(0))を有し」と特定されているのに対し、引用発明は、該搬送距離が明示されていない点。
[相違点3]本願発明は、「前記番号印刷部の前記圧胴との対接位置と前記搬送胴の前記圧胴との対接位置との間の当該圧胴による前記シート状物の搬送距離L_(2)が当該シート状物の印刷面の搬送方向の長さL_(0)以上の長さ(L_(2)≧L_(0))を有し」と特定されているのに対し、引用発明は、該搬送距離が明示されていない点。
[相違点4]本願発明は、「前記第一印刷部の前記圧胴との対接位置と前記番号印刷部の前記圧胴との対接位置との間の当該圧胴によるシート状物の搬送距離L_(3)が当該圧胴の隣り合う前記有効面の間の長さL_(b)の二倍の長さと当該有効面の長さL_(a)とを合わせた長さ以下の長さ(L_(3)≦L_(a)+2L_(b))を有する」と特定されているのに対し、引用発明は、該搬送距離が明示されていない点。

4.判断
上記相違点1について検討する。
番号印刷部は、番号を印刷するためのものであって、番号は通常よく見えるよう最上層に印刷するものであり、番号印刷部ではない印刷部の対接位置よりも圧胴の回転方向下流側で搬送胴の対接位置よりも圧胴の回転方向上流側に番号印刷部を対接させることは周知技術(原査定の拒絶の理由に引用された特開昭60-206645号公報、実願昭60-141929号(実開昭62-50931号)のマイクロフィルム、特開昭63-188049号公報参照。)であるから、引用発明に該周知技術を適用し、本願発明の上記相違点1のような構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。

上記相違点2について検討する。
刊行物2には、ダブリ現象を回避するべく圧胴3(本願発明の「圧胴」に相当。)に接する点5、6間の圧胴周面距離E(本願発明の「第一印刷部の圧胴との対接位置と第二印刷部の前記圧胴との対接位置との間の当該圧胴によるシート状物の搬送距離L_(1)」に相当。)を、ゴム胴転写面の円周方向全長F(本願発明の「シート状物の印刷面の搬送方向の長さL_(0)」に相当。)より長くなるように配置することが記載されており、ダブリ現象を回避することは、印刷機において自明の課題であるから、引用発明に刊行物2記載の事項を適用し、本願発明の上記相違点2のような構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。

上記相違点3について検討する。
刊行物3には、最大長さを有する枚葉紙もはじめから終りまで正しい速度で印刷帯を通過させるべく、受取個所(本願発明の「搬送胴の圧胴との対接位置」に相当。)は圧胴1とゴム胴2との間の最後の印刷個所から最大サイズ長さ(本願発明の「シート状物の印刷面の搬送方向の長さL_(0)」に相当。)よりも遠くまで離すことが記載されており、最大長さを有する枚葉紙もはじめから終りまで正しい速度で印刷帯を通過させることは印刷機において当然の要求であるから、上記相違点1で検討したように引用発明に周知技術を適用する際に、刊行物3に記載の事項を適用し、本願発明の上記相違点3のような構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。

上記相違点4について検討する。
引用発明の印刷圧胴4は、「受渡爪20、20aを内蔵する2個の切欠部21、21aで2分された2倍径の」ものであるから、有効面の周方向長さをL_(a)とし、有効面の間の長さをL_(b)とすると印刷圧胴4の全周は、2L_(a)+2L_(b)である。
番号印刷部は、通常順次更新される番号を印刷するものであるから、通常のオフセット印刷部や凸版印刷部より印刷ミスが生じる可能性の高いものである。新たな紙葉に対する最初の印刷開始位置である第一印刷部の圧胴との対接位置を番号印刷部の圧胴との対接位置から下流方向に有効面の長さL_(a)以上離せば番号印刷部でのミスが生じても、直ちに第一印刷部を胴抜きして新たな紙葉に対する印刷開始を防ぐことが可能なことは明らかである。上記相違点1で検討したように引用発明に周知技術を適用する際に、番号印刷部でのミスが生じても、新たな紙葉に対する印刷開始を防ぐように、番号印刷部の圧胴との対接位置から下流方向に有効面の長さL_(a)以上離して第一印刷部の圧胴との対接位置を配置すると、圧胴の全周から該長さを差し引いた長さである「第一印刷部の圧胴との対接位置と番号印刷部の前記圧胴との対接位置との間の当該圧胴によるシート状物の搬送距離L_(3)」は、圧胴の隣り合う有効面の間の長さL_(b)の二倍の長さと当該有効面の長さL_(a)とを合わせた長さ以下の長さ(L_(3)≦L_(a)+2L_(b))を有することは明らかである。
また、上記相違点3で検討したように、番号印刷部の圧胴との対接位置と搬送胴の前記圧胴との対接位置との間の当該圧胴によるシート状物の搬送距離L_(2)が当該シート状物の印刷面の搬送方向の長さL_(0)以上の長さ(L_(2)≧L_(0))とすることが想到容易であり、その場合、番号印刷部の圧胴との対接位置から下流方向に向かって第一印刷部の圧胴との対接位置までの間の当該圧胴によるシート状物の搬送距離は、有効面の長さL_(a)に搬送胴から第一印刷部の圧胴との対接位置までの搬送距離を加えた長さとなるから、当然L_(a)より長くなる。圧胴の全周から該長さを差し引いた長さである「第一印刷部の圧胴との対接位置と番号印刷部の前記圧胴との対接位置との間の当該圧胴によるシート状物の搬送距離L_(3)」は、圧胴の隣り合う有効面の間の長さL_(b)の二倍の長さと当該有効面の長さL_(a)とを合わせた長さ以下の長さ(L_(3)≦L_(a)+2L_(b))を有することは明らかである。
よって、引用発明において本願発明の上記相違点4のような構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。

以上のとおりであるから、本願発明の相違点1?4に係る構成は、引用発明、刊行物2、3に記載された事項および周知技術に基づいて当業者が容易に想到することができたものであり、それにより得られる効果も当業者が予測できる範囲のものである。

第5.むすび
第3で検討したように、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、第4で検討したように、本願発明は、引用発明、刊行物2、3に記載された事項および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-25 
結審通知日 2010-03-02 
審決日 2010-03-15 
出願番号 特願平11-110324
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41F)
P 1 8・ 537- Z (B41F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 真介  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 桐畑 幸▲廣▼
江成 克己
発明の名称 印刷機  
代理人 光石 忠敬  
代理人 松元 洋  
代理人 光石 俊郎  
代理人 田中 康幸  

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