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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  E01B
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E01B
管理番号 1215813
審判番号 無効2007-800146  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-07-26 
確定日 2010-04-26 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3824948号「レールの据付方法および据付構造」の特許無効審判事件についてされた平成20年 4月25日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成20年(行ケ)第10216号平成21年 3月25日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 請求項17に係る訂正を認めない。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
特許出願日 平成14年 3月 7日
(特願2002-61383号)
設定登録日 平成18年 7月 7日
(特許第3824948号)
審判請求書 平成19年 7月26日
答弁書 平成19年11月21日
訂正請求 平成19年11月21日
弁駁書 平成20年 2月 6日
審決 平成20年 4月25日
(「訂正を認める。本件審判の請求は、成り立たない。」)
知的財産高等裁判所出訴 平成20年 6月 6日
(請求人原告 平成20年(行ケ)第10216号)
判決言渡 平成21年 3月25日
(「審決中、請求項17ないし20に係る発明についての審判請求を成り立たないとした部分を取り消す。原告のその余の請求を棄却する。」)
判決の確定 平成21年 7月14日
(上告棄却、上告受理申立て却下)


第2.判決により確定(平成21年7月14日)した内容
右判決により確定した内容は、以下のとおりである。
(1)平成19年11月21日付け訂正請求書により、請求項1は、
「【請求項1】 軌道の基礎部上面に、走行レールと、当該走行レールに所定間隔をおいて設けられる脱線防止レールとを収納するための凹部を形成するレール溝形成工程と、
上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を上記走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して接着固定する振動吸収板の敷設工程と、
上記走行レールおよび上記脱線防止レールの各レベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールおよび上記脱線防止レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行・脱線防止レールの調整板設置工程と、
上記調整板上に、スペーサによって互いに間隔が保持された上記走行レールおよび脱線防止レールを置き位置決めをする走行・脱線防止レール設置工程と、
上記走行レールおよび脱線防止レールが位置決めされた上記凹部に、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行・脱線防止レールの樹脂注入硬化工程と、
を含むことを特徴とするレールの据付方法。」と訂正された。
(2)同訂正請求書により、請求項4は、
「【請求項4】 軌道の基礎部上面に、走行レールを収納するための凹部を形成する走行レールの溝形成工程と、
上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を上記走行レールの敷設方向に連続して接着固定する振動吸収板の敷設工程と、
上記走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行レールの調整板設置工程と、
上記調整板上に上記走行レールを置き位置決めをする走行レール設置工程と、
上記走行レールが位置決めされた上記凹部に、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行レールの樹脂注入硬化工程と、
を含むことを特徴とするレールの据付方法。」と訂正された。
(3)同訂正請求書により、請求項7は、
「【請求項7】 上記走行レールと上記接続走行レールとの接続端部同士を溶接によって接続するとともに、溶接された上記接続端部のある箇所の上記凹部に上記ポリウレタンを注入する前に、当該凹部の底面の上記振動吸収板の未敷設箇所に接着剤を塗布して上記振動吸収板を接着固定することを特徴とする請求項2、3、5および6のいずれかに記載のレールの据付方法。」と訂正された。
(4)同訂正請求書により、請求項15は、
「【請求項15】 走行レールと、当該レールに所定間隔をおいて設けられた脱線防止レールとの据付構造であって、
軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に、上記走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と、
上記走行レールと脱線防止レールの敷設位置に沿って間隔をおいて、それぞれ振動吸収板上に設けられ、当該走行レールと脱線防止レールの各レベルを所定のレベルにする調整板と、
上記調整板上に位置決めされ、スペーサによって互いの間隔が保持された上記走行レールと脱線防止レールと、
これらが上記凹部に収納された状態で注入して硬化させたポリウレタン層と
を備えたことを特徴とするレールの据付構造。」と訂正された。
(5)同訂正請求書により、特許明細書段落【0007】の
「上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する振動吸収板の敷設工程と、」は、
「上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を上記走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して接着固定する振動吸収板の敷設工程と、」と訂正された。
(6)同訂正請求書により、特許明細書段落【0010】の
「上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する振動吸収板の敷設工程と、」は、
「上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を上記走行レールの敷設方向に連続して接着固定する振動吸収板の敷設工程と、」と訂正された。
(7)同訂正請求書により、特許明細書段落【0013】の
「当該凹部の底面の上記振動吸収板の未敷設箇所に接着剤を塗布して上記振動球種板を接着固定する」は、
「当該凹部の底面の上記振動吸収板の未敷設箇所に接着剤を塗布して上記振動吸収板を接着固定する」と訂正された。
(8)同訂正請求書により、特許明細書段落【0021】の
「軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に、接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と、」は、
「軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に、上記走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と、」と訂正された。

そして、請求項1ないし請求項16に係る発明についての審判の請求は成り立たないことが確定した。
(当該請求項に対する訂正および無効の判断は、後述する【参考】平成20年4月25日付け審決の内容を参照のこと)

一方、判決により、請求項17ないし20に係る発明についての審判請求を成り立たないとした部分は取り消されたので、請求項17ないし請求項20に係る発明についての訂正の適否、および審判請求人の主張については、再度審決する必要がある。


第3.訂正の適否について
1.訂正の内容
確定していない訂正の内容は、以下のとおりである。
(1)特許明細書の請求項17の
「【請求項17】 走行レールの据付構造であって、
軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に、接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と、
上記走行レールの敷設位置に沿って間隔をおいて、それぞれ振動吸収板上に設けられ、上記走行レールのレベルを所定のレベルにする調整板と、
上記調整板上に位置決めされ、スペーサによって互いの間隔が保持された上記走行レールと、
これらが上記凹部に収納された状態で注入して硬化させたポリウレタン層と
を備えたことを特徴とするレールの据付構造。」
を、
「【請求項17】 走行レールの据付構造であって、
軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に、上記走行レールの敷設方向に連続して接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と、
上記走行レールの敷設位置に沿って間隔をおいて、それぞれ振動吸収板上に設けられ、上記走行レールのレベルを所定のレベルにする調整板と、
上記調整板上に位置決めされた上記走行レールと、
これらが上記凹部に収納された状態で注入して硬化させたポリウレタン層と
を備えたことを特徴とするレールの据付構造。」
に訂正するものであり、「振動吸収板」の凹部の底面への接着固定に関し、「上記走行レールの敷設方向に連続して」いるものである点を追加する訂正事項と、「走行レール」に関し、「スペーサによって互いの間隔が保持され」たものである点を削除する訂正事項を含むものである。
(2)特許明細書の段落【0023】の
「軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に、接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と、上記走行レールの下面敷設位置に沿って間隔をおいて、それぞれ振動吸収板上に設けられ、上記走行レールのレベルを所定のレベルにする調整板と、上記調整板上に位置決めされ、スペーサによって互いの間隔が保持された上記走行レールと、」
を、
「軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に、上記走行レールの敷設方向に連続して接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と、上記走行レールの下面敷設位置に沿って間隔をおいて、それぞれ振動吸収板上に設けられ、上記走行レールのレベルを所定のレベルにする調整板と、上記調整板上に位置決めされた上記走行レールと、」
と訂正するものである。

2.訂正の適否の判断
請求項17に係る訂正において、「走行レール」に関して、「スペーサによって互いの間隔が保持され」たものである点を削除する訂正について判断する。
訂正要件の成否は、誤記の訂正を目的とする訂正の場合にあっては、願書に最初に添付した明細書又は図面を基準として判断すべきである(特許法134条の2第5項126条3項参照)ところ、本件特許の願書に最初に添付した明細書(以下、図面と併せ、「当初明細書」という。)には次の記載がある。
ア.「【0079】次に、第二実施形態として、本発明の請求項4および請求項17に関連する上記コンクリートスラブ10の他方の走行レール11のみが収納される他方の凹部33(図9参照)におけるレールの据付方法および据付構造について説明する。・・・・・
【0080】さらに、この振動吸収板14上には、間隔をおいてコルク板からなる高さ調整板15が載置されている。そして、これら複数の調整板15上に、走行レール11が敷設されている。ここで、走行レール11の外側方には、それぞれ塩化ビニル製のパイプ20が付設されている。そして、上記凹部33内に、前述の実施形態と同じポリウレタン21を注入して硬化することにより、走行レール11が固定されている。
中略
【0083】・・・・・すなわち、レールの長さは一般に規格寸法が25mであるが、これらを予め溶接接続して所要の長さにした後、走行レール11両側に、塩化ビニル製のパイプ20を、スペーサ兼水平位置調節用リング23および適宜間隔をおいて巻回された針金やプラスチックバンド(図13参照)24によって付設しておく。そして、図12に示すように、調整板15上に、これらパイプ20が一体化された走行レール11を置く。
【0084】次いで、図13に示すように、パイプ20に装着した水平位置調節用リング23と凹部33の側壁との間にコルク製のくさび部材25を打ちこんで、走行レール11の水平方向の位置を調節する。そして、このようにして走行レール11の位置決めが完了した後に、針金やプラスチックバンド24を取り去る。次に、図14に示すように、凹部33内の全体に後工程で注入されるポリウレタン21との接着強度を増すための第一実施形態と同様のプライマー26を散布する。
【0085】次に、図15に示すように凹部33のレール軌道の外側に位置する側壁33a(図において右側の側壁)と走行レール11との間に、上記ポリウレタン21を注入する。・・・・・
中略
【0094】なお、軌道の基礎部として、第一実施形態の走行レール11と脱線防止レール12を支持するためのレール支持構造と第二実施形態の走行レール11を支持するためのレール支持構造とを形成する2条の凹部が形成された一体型のコンクリートスラブ10を用いると、両走行レール11の間隔や高さ精度を容易に調節することができる。」

当初明細書の前記ア.の各記載によれば、訂正前明細書の請求項17に関連して、走行レール11のみが収納される凹部33におけるレールの据付構造について、「走行レール11をその両側にスペーサ兼水平位置調節用リング23を付設して調整板15上に置き、水平位置調節用リング23と凹部33の側壁との間にコルク製のくさび部材25を打ちこんで、走行レール11の水平方向の位置を調節して、走行レール11の位置決めが完了した後に、凹部33のレール軌道の外側に位置する側壁33aと走行レール11との間にポリウレタン21を注入した構造」が記載されていると認められる。
この「スペーサ兼水平位置調節用リング」の用語は、自然な解釈として「スペーサを兼ねた水平位置調節用リング」を意味すると解されるところ、これをそのスペーサ機能部分を捉えて「スペーサ」と表現することも可能である。
また、当初明細書の前記ア.の各記載によれば、スペーサ兼水平位置調節用リング23は、凹部33の側壁との間にコルク製のくさび部材25を打ちこんで、走行レール11の水平方向の位置を調節して、走行レール11を位置決めする部材であるところ、それぞれ走行レールを据え付ける2条の凹部が形成された一体型のコンクリートスラブを用いるとされているので、一方の凹部33内において水平方向の位置決めされた走行レール11は、他方の凹部内において同様に水平方向の位置決めされた走行レールとの関係で、スペーサ兼水平位置調節用リングによって互いの間隔が保持されているということができる。
してみると、当初明細書の前記ア.の各記載は、「スペーサによって互いに間隔が保持された走行レール」について記載していると解することもできる。
さらに、当初明細書には、次の記載もある。
イ.「【0121】次いで、外軌側の凹部33に形成されるレールの据付構造を得るための他のレールの据付方法である第七実施形態(本発明の請求項6に関連する)について説明する。本実施形態においても、上記第六実施形態と同様に、コンクリートスラブ50に凹部33および溶接凹部33eを形成し、底面の所定箇所に振動吸収板14を接着固定した後に、調整板15、16を載置し、これら調整板15、16上に、スペーサ17によって互いに間隔が保持された走行レール11を置いて、コルク製のくさび部材25を打ち込み、位置決めをする。」
ここで、当初明細書の請求項6は、走行レールと接続走行レールとを凹部内に据え付けるレールの据付方法に係る発明であるところ、上記イ.の記載によれば、同請求項に関連する第七実施形態において、「走行レールがスペーサによって互いに間隔が保持されてそれぞれ調整板上に位置決めされる」という事項が記載されていると認められる。
以上検討したところによれば、当初明細書には、「走行レール」に関し、「スペーサによって互いの間隔が保持された」事項が記載されていたと解することができる。
そうすると、当初明細書の発明の詳細な説明の記載に照らしても、訂正前明細書の請求項17における「スペーサによって互いの間隔が保持され」との記載が誤記であると認めることはできない。
むしろ、当初明細書には、「走行レール」に関し、「スペーサによって互いの間隔が保持された」事項が記載されていたと解することができ、そして、訂正前明細書の請求項17は、車両が走行する走行レールの据付構造に関する発明を記載したものであり、同発明では、走行レールは複数条存在すると解するのが自然であるところ、同請求項の記載は、「スペーサによって互いの間隔が保持された」複数条の走行レールが、「調整板上に位置決めされ」ているという技術的事項が特定されているものと解することができる。
そして、請求項17に係る訂正は、「走行レール」に関して、訂正前明細書の「上記調整板上に位置決めされ、スペーサによって互いの間隔が保持された上記走行レールと、」との記載から、「スペーサによって互いの間隔が保持され」との記載を削除し、「上記調整板上に位置決めされた上記走行レールと、」に訂正するものであり、この訂正は、誤記の訂正を目的とするものとは認められず、また、同訂正事項により、請求項17に係る発明は「スペーサによって互いの間隔を保持され」ていないものを含むことになるから、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものというべきである。
また、請求項17についての訂正と不可分の関係にあることが明らかな段落【0023】についての訂正も、発明の技術範囲を拡張し、又は変更するものというべきである。

3.小括
以上のとおりであるから、上記請求項17および段落【0023】の訂正事項は,特許請求の範囲を拡張するものであり、特許法第134条の2第5項で読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。


第4.本件発明
請求項17に係る訂正は認められないので、本件請求項17ないし請求項20に係る発明(以下、「本件発明17」ないし「本件発明20」という。)は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項17ないし請求項20に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項17】 走行レールの据付構造であって、
軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に、接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と、
上記走行レールの敷設位置に沿って間隔をおいて、それぞれ振動吸収板上に設けられ、上記走行レールのレベルを所定のレベルにする調整板と、
上記調整板上に位置決めされ、スペーサによって互いの間隔が保持された上記走行レールと、
これらが上記凹部に収納された状態で注入して硬化させたポリウレタン層とを備えたことを特徴とするレールの据付構造。
【請求項18】 上記ポリウレタンは、ポリイソシアネート プレポリマーと、アミンとの混合物にコルク粒を1?10重量%含めたものであることを特徴とする請求項15?17のいずれかに記載のレールの据付構造。
【請求項19】 上記振動吸収板は、合成ゴムまたは天然ゴムであり、上記接着剤は硬化剤が加えられたエポキシ樹脂接着剤であることを特徴とする請求項15?18のいずれかに記載のレールの据付構造。
【請求項20】 上記振動吸収板は、コルク粒を1?20重量%含有し、上記調整板は、複数のコルク板を積み重ねて所定の高さに調整したものであることを特徴とする請求項15?19のいずれかに記載のレールの据付構造。」

なお、請求項18ないし請求項20は、請求項17のみならず、判決により確定した請求項15および請求項16を引用したものであるので、請求項18ないし請求項20に係る発明を特定するのに必要な請求項15および請求項16についても、以下に記載しておく。

「【請求項15】 走行レールと、当該レールに所定間隔をおいて設けられた脱線防止レールとの据付構造であって、
軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に、上記走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と、
上記走行レールと脱線防止レールの敷設位置に沿って間隔をおいて、それぞれ振動吸収板上に設けられ、当該走行レールと脱線防止レールの各レベルを所定のレベルにする調整板と、
上記調整板上に位置決めされ、スペーサによって互いの間隔が保持された上記走行レールと脱線防止レールと、
これらが上記凹部に収納された状態で注入して硬化させたポリウレタン層と
を備えたことを特徴とするレールの据付構造。
【請求項16】 上記ポリウレタン層の表面レベルは、上記走行レールと上記凹部側壁との間および上記脱線防止レールと上記凹部側壁との間の上記ポリウレタン層の表面レベルが、上記軌道の基礎部上面レベルと略同じであり、上記走行レールと上記脱線防止レールとの間の上記ポリウレタン層の表面レベルは、走行レール頭部の下端部に位置することを特徴とする請求項15に記載のレールの据付け構造。」


第5.当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は、下記の甲第1号証ないし甲第13号証及び参考資料1ないし3並びに参考資料4-1ないし4-2を提出し、請求項17ないし請求項20に係る発明に関し、以下の無効理由を主張している。

(1)無効理由1
本件発明17ないし20は、甲第1号証ないし甲第13号証に記載された発明から当業者が容易に想到し得た発明であり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(2)無効理由2
本件発明17は、特許を受けようとする発明が明確でなく、特許法第36条第6項第2号の規定に違反する。

甲第1号証:「J-RAIL ’01 鉄道技術連合シンポジウム 講演論文集」、電気学会 交通・電気鉄道技術委員会(平成13年12月)、p.427-434
甲第2号証:「工業大辞書」、(株)日本図書センター(2000年10月25日)、p.1774-p.1775
甲第3号証:Coenraad Esveld、“MODERN RAILWAY TRACK Second Edition”、(蘭)、MRT-Productions(2001年)、p.253-p.257
甲第4号証:欧州特許出願公開第0710743号明細書
甲第5号証:特開昭52-5102号公報
甲第6号証:特公昭63-26205号公報
甲第7号証:特開昭56-6804号公報
甲第8号証:特開昭52-18611号公報
甲第9号証:特開平8-239500号公報
甲第10号証:特開平3-149273号公報
甲第11号証:特開平7-279112号公報
甲第12号証:特開2000-145152号公報
甲第13号証:特開平6-219808号公報
参考資料1:「土木工学ポケットブック」、株式会社山海堂(昭和58年)、p.1054-p.1059
参考資料2:「新編 土木工学ポケットブック」、株式会社オーム社(昭和57年)、p.1116-p.1117、 p.1130-p.1133
参考資料3:「鉄骨工事シリーズ2 鉄骨の溶接」、理工図書株式会社(昭和50年)、p.514-p.515
参考資料4-1:「第四版 土木工学ハンドブック1(当審注:システム上の理由によりローマ数字をアラビア数字で表記する。)」、技報堂出版株式会社(1989年)、p.1435、 p.1448-p.1449
参考資料4-2:「第四版 土木工学ハンドブック2(当審注:システム上の理由によりローマ数字をアラビア数字で表記する。)」、技報堂出版株式会社(1989年)、p.1521、 p.1548-p.1555
甲第1号証の2:「J-RAIL ’01 鉄道技術連合シンポジウム 講演論文集」、電気学会 交通・電気鉄道技術委員会(平成13年12月)、p.431の図-1の拡大図
参考資料5:特開平2-229302号公報


第6.甲各号証及び参考資料の記載事項
請求人の提出した甲第1号証?甲第13号証、甲第1号証の2及び参考資料1?5には、以下の事項が記載されている。
(1)甲第1号証(J-RAIL ’01 鉄道技術連合シンポジウム 講演論文集、p.427-434)
記載事項1-1)
「オランダの化成品会社エディロン(Edilon)は、コークラストと名づけた・・・ポリウレタン系樹脂を用いて、コンクリート道床の溝にレールとともに固定する方式を開発、30年前から試験を開始し、・・・使用実績を重ねていった。
この方式は、レールの支持に金具を使用せず、粘弾性体(コークラスト)でレールを包み込むために、騒音・振動が吸収されるため、・・・保線作業が大幅に軽減できる特長がある。」(第428頁右欄9?19行)

記載事項1-2)
「Infundoと称する樹脂固定軌道というべき新型軌道構造に注目し、我が国への導入を検討した。Infundoは、砕石やまくら木及びレール締結装置を持たない、従来の軌道とは全く異なる構造で、それらの機能をコンクリート床板や樹脂などによって実現するものである。」(第431頁左下欄14?18行)

記載事項1-3)
「Infundo軌道の特徴として、砕石の突き固めやレール締結装置ボルトの点検等の保守が不要になること、レールウェブを樹脂で覆っているため、振動が減衰することから低騒音、低振動が期待できること、・・・などがあげられる」(第431頁左下欄27行?同頁右下欄1行)

記載事項1-4)
「2.2 施工方法 レールより少し大きめの溝がついたコンクリート床版をまず地盤上に施工し、溝の底にはコルクパッドを敷き、さびやゴミを落としたレールを置く。・・・上下左右とも±1mmの精度で施工している。レールのウェブ部の左右に並行して塩ビ製等のパイプを入れる。プライマーを塗布した後、Edilon社製樹脂を溝の隙間に注入し、連続的にレールと溝との隙間を埋めていく。パイプは樹脂の注入量を節約するとともに、各種ケーブルの配線路としても使用できる。」(第431頁右下欄9行?第432頁左欄3行)

記載事項1-5)
「(株)新潟鐵工所新潟構機工場内の線路の一部にInfundo軌道が試験施工された。施工箇所は、直線部1カ所および曲線部1カ所である(図2参照)。・・・曲線部は・・・内軌道レールに護輪軌条を設けた。」(第432頁左欄12行?同頁右欄1行)

記載事項1-6)
「図8は、スラブ中央及び端部のスラブに対するレール上下変位量測定結果を示す。在来軌道では、レールをまくら木で断続的に支持するのに対し、Infundo軌道ではレールを連続的に支持するという違いがあり」(第433頁右欄11?14行)

記載事項1-7)
第429頁の図-1の断面図には、溝内のレール下に高さ調整パッドを設け、その上にレールを設置した点、走行レールと凹部側壁との間は「軌道の基礎部上面レベル」まで樹脂が充填され、車両のフランジウエイとなる走行レールにつながる内側部の樹脂の表面レベルは「走行レール頭部の下端部」とした点が記載されている。

記載事項1-8)
第431頁の図1の断面図には、溝の底にコルクパッドが設けられ、その上にレールを設置した点が記載されている。

記載事項1-9)
第432頁の図2には、INFUNDO施工位置図として、「曲線部INFUNDO軌道」と、「直線部INFUNDO軌道」とが記載されている。

ただし、上記各記載事項のうち、記載事項1-1)、1-7)は、第427頁?第430頁の「S9-1-8.LRT対応の新しい軌道構造および分岐器の動向と日本への適用について」と題した論文に係り、記載事項1-2)?1-6)及び1-8)?1-9)は、第431頁?434頁の「S9-1-9. LRT対応樹脂固定軌道(INFUNDO)の試験施工と特性確認試験について」と題した論文に係る記載である。

(2)甲第2号証(工業大辞書、p.1774-p.1775)
記載事項2-1)
「護輪軌條(ゴリンキジョウ) 鐵道車両の脱逸を防ぎ、・・・設くるものにして・・・曲線其他危害損傷の生ずる虞ある所に置くものとす。・・・護輪軌條と走行軌條(Running Rail)との間には輪縁の通過に差支無き限り、一定の間隙・・・を存し・・・若くは特別の方法を以て、両軌條を連結すべし(第一・二図)」(第1774頁中段)

記載事項2-2)
第一図と第四図(乙)には、護輪軌條と走行軌條がスペーサを介して所定の間隙を以てボルトで連結されている点が記載されている。

記載事項2-3)
第三図(己)および第四図(甲)には、2条の走行軌條の内側に走行軌條より短い2条の護輪軌條が並設されており、走行軌條の接続端部は護輪軌條より突き出る状態とされた点が記載されている。

(3)甲第3号証(Coenraad Esveld、“MODERN RAILWAY TRACK Second Edition、p.253-p.257)
記載事項3-1)
「9.8 埋め込み型レール
9.8.1 埋め込み型レールの特徴 埋め込み型レール構造は、例えばコルクとポリウレタンからなる複合材を介してのレールの連続的な支持を伴う。これらレールはこの弾性複合材を介して固着されるが、・・・レールヘッドを除いてレールの側面(profile)のほぼ全体を包囲する。」(第253頁38?42行)

記載事項3-2)
「このレールの固着の方法は以下の原理を特徴とする:
? レールが弾性帯状板上に連続的に支持されること
? レールが溝内で弾性的固着によってガイドされること
? ・・・
? レールの側面(profile)が弾性的な注入複合材によって固着されること
? ・・・
弾性で連続的に支持されたレールの長所は、単一レール支持材間の二次的な湾曲に起因する力学的な力が存在しないこと、・・・」(第254頁1?8行)

記載事項3-3)
「9.8.2 埋め込み型レール軌道の建造 埋め込み型のレールは、注入された弾性複合材およびレールを収容するための溝部を必要とする。このような溝部は、コンクリートまたは鋼鉄にて提供することができる。・・・図9.46はこの埋め込み型レールを含むスラブの細部の断面を示す。」(第254頁11?21行)

記載事項3-4)
「溝部の底部には、弾性帯状帯(an elastic strip)が敷かれ、レールがこの上面に、溝部内に収まるように置かれるが、ここでレールフットの下側にはパッドが詰められ、両脇には弾性くさびが詰められる。レールはトップダウン方式にて調節される。調節の後、レールは加熱することで応力を解放され、その後、弾性複合材が溝部内に注入される(図9.52)。」(第254頁36?44行)

記載事項3-5)
第254頁の図9.46には、溝部の左側に「弾性くさびとブロック」、溝部の右側に「注入された弾性材」、「弾性くさびとチューブホルダ、φ50mmのPVCチューブ」、溝部の上側に「軌間」、溝部の下側に「弾性材の平準化シム」と記載されている。

記載事項3-6)
第255頁の図9.49には、溝の底がレールの敷設方向に連続して黒灰色で、所定間隔で黄色の模様或いは部材が溝の底の全幅にわたって設けられている点が記載されている

(4)甲第4号証(欧州特許出願公開第0710743号明細書)
記載事項4-1)
「1.コンクリートから製造され、その上側表面に搭載されたパッド(10)を有し、使用において、鉄道レール(12)の下側フランジ(16)を受け、これと噛み合う鉄道枕木(14)であって、前記パッド(10)は複合パッドであり、エラストマーパッド(30)および接合手段(40)を含み、この接合手段の上側表面は前記エラストマーパッド(30)の下側表面にこれらの間の相対的移動を阻止するように接合され、この枕木(14)は、さらに、前記接合手段(40)をこの枕木の上側表面に接合する粘着層(18)を含み、これによってこれらの間の相対移動が阻止され」(請求項1)

記載事項4-2)
「図6および図7の代替態様においては、エラストマーパッド30’は上述のエラストマーパッド30と類似する・・・。微粒子層40’が用いられるが、これはポリウレタンパッド30’に直接に接合された微粒子42を含む。これはこのポリウレタンパッド30’がこのコンクリート枕木14に粘着的に接合することを可能にしている。」(第4頁第5欄15?22行)

記載事項4-3)
「さらに、粘着層50’が用いられ、これら接合された微粒子42’がこのコンクリート枕木14に、これら接合された微粒子42’の露出された部分およびこのコンクリート枕木14の上面18のところで接合され、この結果として、このポリウレタンパッド30’とこのコンクリート枕木14との間の相対的な移動が阻止され」(第4頁第5欄35?42行)

記載事項4-4)
「エラストマーパッド30’および微粒子層40’から構成される複合パッド10’とコンクリート枕木14とが互いにこの微粒子層40’および粘着層50’を介して接合される。」(第4頁第5欄57行?同頁第6欄第2行)

(5)甲第5号証(特開昭52-5102号公報)
記載事項5-1)
「本発明はまた平坦な表面上に所望の傾斜をもつてレールを支持するための傾斜付弾性詰材を提供する。
本発明によれば、詰材は荷重を受けて変形するときに一定の傾斜を維持するように設計される。・・・
詰材はレールに沿つて一定間隔で配置される個々の要素であり、或はまた各レールの下で連続したものとすることもできる。・・・
本発明による詰材は例えば合成ゴム、天然ゴム、コルク、ポリウレタン、ポリ硫化物のような弾性重合材料を含む種々の材料で造ることができる。」(第2頁右上欄8行?同頁左下欄1行)

記載事項5-2)
「平坦な厚板軌条基礎上にレールを連続的または間欠的に支持する傾斜した詰材」(第2頁右下欄10?11行)

記載事項5-3)
「第2図は2つ以上の構成要素を用いた傾斜支持詰材7、8を示し、傾斜要素8は堅い材料で接着形状または界面摩擦によつて矩形弾性詰材7と位置づけられる。
第3図は2つ以上の構成要素を取入れた傾斜支持詰材9、10を示し、これによつて堅い材料の傾斜部材10が矩形弾性着座詰9内に押込められる。」(第3頁右上欄3?10行)

記載事項5-4)
第2図には、コンクリート厚板5上に矩形弾性詰材7が設置され、その上に傾斜要素8が設置され、この傾斜要素8の上にレール1が載置されているものが記載されている。

記載事項5-5)
第3図には、コンクリート厚板5上に矩形弾性着座詰材9が設置され、その上に傾斜部材10が設置され、この傾斜部材10の上にレール1が載置されているものが記載されている。

記載事項5-6)
第1図には、レールを傾斜支持する弾性傾斜詰材6が1段構成であるものが記載されている。

(6)甲第6号証(特公昭63-26205号公報)
記載事項6-1)
「この発明は、瓦斯・液体燃料・水道・地下ケーブル等の鋼管を開削工法により地表下に埋設し、且つ鋼管継手部を溶接により結合する施工法」(第1頁第2欄2?4行)

記載事項6-2)
「従来の開削工法は、道路交通事情等により掘削・山留・配管・芯出し・溶接・検査・防食・砂埋戻し・仮復旧の作業を例えば8時間程度の短い許可作業時間内に完了し、その後は道路を開放する即日復旧工法が主体である。」(第1頁第2欄11?15行)

記載事項6-3)
「まず、管1が前日に埋設したものであり(第1図A参照)、・・・。次に、掘削構に管8を配管し、管1と管8の継手部9にクランプ10をセツトし管1と管8の芯出しを行ない開先を保持する(第1図E参照)。次に、継手部9の仮溶接後にクランプ10は撤去し、継手部9の本溶接後に検査・防食を行なう(第1図F参照)。次に、掘削構を砂で埋戻しながら山留を撤去し(第1図G参照)」(第2頁第3欄1?13行)

記載事項6-4)
「本発明は地表下に管を埋設するに際し、前記管同志の結合個所に会所囲壁を形成するとともに、該会所囲壁間を繋ぐ掘削構内に前記管を設置し、しかる後に前記掘削構を埋戻して前記管を順次埋設していく埋設作業に並行して前記会所囲壁内において前記管同志を順次溶接し、しかる後に溶接終了した会所囲壁を前記埋設作業に並行して撤去する」(第2頁第3欄37?44行)

記載事項6-5)
「第2図は本発明方法を示すものである。すなわち、管埋設が矢印の方向に進むものとし、土圧及び道路を開放する場合は車輛荷重に対して十分な強度を有する機能を持つ会所囲壁10,11,12の設置並びに管13,14,15の布掘部の埋設が既に完了しているとすると、土木チームは新設部16,17の掘削・山留・会所囲壁設置・配管・芯出し・布掘部の砂埋戻しと仮復旧を行ない、溶接チームは土木チームの作業に関係の無い管13,14の継手部をを会所囲壁10内で、管14,15の継手部を会所囲壁11内で土木チームと並列で行なう。会所囲壁10,11内の砂埋戻し・会所囲壁10,11撤去・仮復旧は、溶接チームの作業完了後に土木チームが新設部16,17と並行して都合のよい時点で行なう。」(第3頁第4欄3?17行)

(7)甲第7号証(特開昭56-6804号公報)
記載事項7-1)
「本発明は鉄道等の線路を敷設する際に、溶接によってつなげられたレールを架設する方法およびその方法によって敷設される線路に関する」(第3頁左下欄2?5行)

記載事項7-2)
「案内溝302内にレール300が支持されている。」(第9頁左下欄4?5行)

記載事項7-3)
「レール300のフランジの下に弾性パッド308を入れることによってコンクリート構造に伝達される振動および騒音を小さくすることができる。」(第9頁左下欄16?19行)

記載事項7-4)
「最後にレールとクリップを取り付けた後に、前記案内溝304全体内にHL1級のアスファルト326が充填される。」(第10頁左上欄13?15行)

記載事項7-5
「このような本発明の利点は溶接によってつなげたレール及びコンクリートスラブを用いた路面系の鉄道においても得られる。」(第10頁右上欄6?8行)

(8)甲第8号証(特開昭52-18611号公報)
記載事項8-1)
「スラブ式軌道構造において、レールを直結させるコンクリート版と下層のコンクリート盤あるいは堅固な盤との間に・・・ポリウレタン樹脂と骨材との混合物の固化体よりなる層を設けることを特徴とするスラブ式軌道構造。」(特許請求の範囲)

記載事項8-2)
「本発明の目的は、・・・防音,防振性にすぐれ耐久性があるスラブ式軌道構造を提供することにある。」(第2頁左上欄11?13行)

記載事項8-3)
「ポリウレタン樹脂は1液型と2液型がある。・・・。
2液型ではイソシアネート基を有する化合物を主成分とする・・・主剤と硬化剤とになっている・・・またアミン系触媒を併用することもできる。・・・。
・・・骨材は・・・コルク粉・・・を適宜混入して用いることができる。
樹脂と骨材との混合物は・・・コンクリート版や下層のコンクリート盤や堅固な盤によく接着するが必要に応じてプライマーを使用するとよい。」(第3頁右上欄7行?同頁左下欄15行)

(9)甲第9号証(特開平8-239500号公報)
記載事項9-1)
「【請求項1】 ゴム(A)、軟化剤(B)、無機充填剤及び/又は有機充填剤の充填剤(C)、有機発泡剤(D)及び加硫剤(E)を含有する粘性ゴム混和物を加硫発泡した粘弾性発泡体からなる防振材であって、上記ゴム(A)100重量部に対し、軟化剤(B)10?200重量部と、無機充填剤及び/又は有機充填剤の充填剤(C)5?300重量部を含有し、且つ上記粘弾性発泡体は、密度が0.2g/cm3以下に設定されていると共に、連続気泡と独立気泡が混在することを特徴とする防振材。」(特許請求の範囲)

記載事項9-2)
「【0023】本発明で用いられる無機充填剤及び/又は有機充填剤の充填剤(C)としては、・・・コルク粉末等の有機充填剤が挙げられるのであり、・・・。この場合、これらは単独、もしくは2種以上併せて用いられる。」(第3頁第4欄14?24行)

記載事項9-3)
「【0024】そして、上記無機充填剤及び/又は有機充填剤の充填剤(C)の配合割合としては、上記ゴム (A)100部に対して、5部?300部の範囲に設定することが好ましい。」(第3頁第4欄25?28行)

記載事項9-4)
「【0032】即ち、本発明においては粘性ゴム混和物が、ゴム(A)100重量部に対し、軟化剤(B)10?200重量部、無機充填剤及び/又は有機充填剤の充填剤(C)5?300重量部、有機発泡剤(D)1?50重量部及び加硫剤(E)0.01?10重量部からなるものが望ましい。」(第4頁第5欄33?38行)

(10)甲第10号証(特開平3-149273号公報)
記載事項10-1)
「ポリイソシアネート(バイエル社製、商品名「デスモジュールRF」)50gおよびエポキシ樹脂(シェル社製、商品名「エピコート1007」)25gを脱水酢酸エチル25gに加えて10時間ドラムミルにて混合溶解し、次いでこの溶液に蛍光染料(チバガイギー社製、商品名「ユビテックスOB」)0.5gを添加してドラムミルにて1時間混合してPVCモール用プライマー組成物を製造した。」(第3頁右下欄2?10行)

(11)甲第11号証(特開平7-279112号公報)
記載事項11-1)
「【0016】・・・表皮2材料に用いたクロロプレンゴム(CR)が接着性に優れることから、路面へ路面排水材Aを確実に固着できる。ここで、接着剤には、エポキシ樹脂接着剤が適している。とりわけ、水に不溶性のポリアミドや芳香族ポリアミンを硬化剤に用いたエポキシ樹脂接着剤が好適となる。・・・湿潤しているコンクリート路面でも使用可能で、現場取付工事の作業性に優れるためである。」(第3頁第4欄10?18行)

(12)甲第12号証(特開2000-145152号公報)
記載事項12-1)
「【0028】・・・図10に示すように・・・低地表面部8cには、・・・一対の前記高さ調整板本体20,20が配置されると共に、これらの各高さ調整板本体20,20には、この高さ調整板本体20の略半幅で、高さ方向の構成を略同一とする高さ調整板本体120,120が隣接されて並列配置されている。」(第4頁第6欄49行?第5頁第7欄8行)

記載事項12-2)
図10には、高さ調整板本体20,120を積み重ねて高さ寸法を調整した点が記載されている。

(13)甲第13号証(特開平6-219808号公報)
記載事項13-1)
「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、良好な自己充填性を有するコンクリートの現場施工方法、さらに詳しくは、良好な自己充填性を有するフレッシュコンクリートを型枠内に流し込み、フレッシュコンクリートの流動性と充填性によって締固め作業を行なうことなく、あるいは著しく軽減し、コンクリートを材料分離を生じることなく型枠内全域に緻密に打設する施工方法に関する。」(第2頁第1欄36?43行)

記載事項13-2)
「【0026】・・・コンクリートの流し込み位置は終始、同一の面側からのみとした。」(第5頁第8欄17?24行)

記載事項13-3)
「【0028】自己充填性コンクリートを、図3に示すような断面をもつ鉄筋コンクリートU型側溝へ打設することによって、その流動勾配を調べた。」(第5頁第8欄31?33行)

記載事項13-4)
「【0030】・・・これに対し軟練り普通コンクリートでは、コンクリートの投入面側にコンクリートが堆積し、型枠内全域に充填するためには、・・・コンクリートの投入面を切り替える作業が必要であった。」(第5頁第7欄49行?第6頁第9欄5行)

(14)参考資料1(土木工学ポケットブック、p.1054-p.1059)
記載事項14-1)
「レール長は、・・・定尺を25mとし」(第1057頁3行)

(15)参考資料2(新編 土木工学ポケットブック、p.1116-p.1117, p.1130-p.1133)
記載事項15-1)
「舗装の破損を防ぎ、輪縁路を確保し、かつ脱線車輪の復線の目的も兼ねてガードレールを設ける」(第1116頁右欄20?22行)

(16)参考資料3(鉄骨工事シリーズ2 鉄骨の溶接、p.514-p.515)
記載事項16-1)
「昭和47年労働衛生安全法制定に基づき,安衛則も大幅に改正されたが,「第4章 爆発,火災等の防止」について多くの制限条項が追加された。
溶接作業場付近や直下には・・・燃えやすい物質を置かないようにする」(第514頁9?12行)

(17)参考資料4-1(第四版 土木工学ハンドブックI、p.1435, p.1448-p.1449)
記載事項17-1)
「3.4.2 溶接・・・水圧鉄管に使われる溶接は,・・・。」(第1449頁右欄7?17行)

(18)参考資料4-2(第四版 土木工学ハンドブックII、p.1521, p.1548-p.1555)
記載事項18-1)
「4.2.4 ロングレール レール継目を,溶接により除去し,乗心地の改善,騒音振動の減少などを目的とするロングレールは新設線,既設線を問わず広く採用され」(第1551頁右欄35行?第1552頁左欄第2行)

(19)甲第1号証の2(弁駁書において提出された、甲第1号証の第429頁の図-1の拡大図)
記載事項19-1)
溝内に設置するレールの下に設けた高さ調整パッドの下の溝の底に、パッド状の部材が敷かれている点が記載されている。

(20)参考資料5(特開平2-229302号公報)(弁駁書において提出されたもの。)
記載事項20-1)
「軌道組立体(レールと枕木とから成る予め組立られている構造体)を搬送し、そしてその軌道組立体をこのコンクリート・スラブの上に支持する。」(第4頁右上欄3?6行)


第7.当審の判断
1.請求項17について
事案に鑑み無効理由2から先に判断することとする。
(1)無効理由2について(特許法第36条第6項第2号についての判断)
請求人の主張は、請求項17の「スペーサによって互いに間隔が保持された上記走行レール」に関して、スペーサによって走行レールと何との間隔を保持するのかが不明であるから、請求項17の記載が明確でないというものである。
しかしながら、「第3.訂正の適否について」の「2.訂正の適否の判断」において記載したように、請求項17は、車両が走行する走行レールの据付構造に関する発明を記載したものであり、同発明では、走行レールは複数条存在すると解するのが自然であるところ、同請求項の記載は、「スペーサによって互いの間隔が保持された」複数条の走行レールが、「調整板上に位置決めされ」ているという技術的事項が特定されているものと解することができる。
そうすると、請求項17の記載は明確であるということができ、請求人の主張は採用できない。

(2)無効理由1について(特許法第29条第2項についての判断)
(2-1)甲第1号証に記載された発明
上記第6.(1)に摘示した各記載事項(記載事項1-2、1-4、1-8)によれば、甲第1号証には、「コンクリート床板につけられたレールより少し大きめの溝の底に敷かれたコルクパッドと、その上に置かれたレールと、レールを置いた前記溝に注入される樹脂からなる樹脂固定軌道の構造。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。

(2-2)本件発明17と甲1発明との対比
i) 甲1発明の「レール」は、本件発明17の「走行レール」に相当し、以下同様に、「コンクリート床板」は「軌道の基礎部」に、「溝」は「凹部」に、「溝の底」は「凹部の底面」に、「樹脂固定軌道の構造」は「レールの据付構造」に、それぞれ相当する。
ii) 甲1発明において、「レール」(走行レール)は、「コンクリート床板」(軌道の基礎部)につけられた「溝の底」(凹部の底面)に「敷かれたコルクパッド」の「上に置かれた」ものであるのだから、前記「溝」(凹部)は、前記レールを置くために、コンクリート床板の上面に形成されるものであるということができる。続いて、前記「コルクパッド」は、本件発明17の、(凹部の底面の)「振動吸収板」に相当し、また、甲1発明の前記「敷かれた」点と、本件発明17の「接着固定された」点とは、「敷かれた」点において共通する。したがって、甲1発明の「樹脂固定軌道の構造」(レールの据付構造)は、「走行レールの据付構造」が、「軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に敷かれた振動吸収板」と、「走行レール」とを実質的に備えたものである点で、本件発明17と共通するものである。さらに、甲1発明の「レール」は複数条であり、レールが据付られる際に、その位置およびレール相互の間隔が調整されることは当然であるから、甲1発明のレールが「位置決めされ、互いの間隔が保持され」ているのは明らかといえる。
iii) 甲1発明は、「コルクパッド」(振動吸収板)の上に「レール」(走行レール)を置いた「溝」(凹部)に「樹脂」を「注入」するものであるが、レール及びコルクパッドが溝に収納された状態で樹脂が注入されること、及び、注入された樹脂が、硬化させた樹脂層となることは当業者にとって常識であるから、甲1発明は、「走行レール、及び振動吸収板が凹部に収納された状態で注入して硬化させた樹脂層」を実質的に備えた点で、本件発明17と共通するものであるといえる。

以上のことから、本件発明17と甲1発明とは、
「走行レールの据付構造であって、
軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に敷かれた振動吸収板と、
位置決めされ、互いの間隔が保持された上記走行レールと、
上記走行レールと上記振動吸収板が上記凹部に収納された状態で注入して硬化させた樹脂層とを備えたレールの据付構造。」である点で一致し、以下の点で相違する。

【相違点1】:本件発明17は、振動吸収板が、凹部の底面に、「接着剤層を介して接着固定」されるのに対し、甲1発明は、単に「敷かれ」るものである点。
【相違点2】:本件発明17は、「振動吸収板上に設けられ、走行レールのレベルを所定のレベルにする調整板」を備えるのに対し、甲1発明は、前記構成について明らかでない点。
【相違点3】:本件発明17は、「調整板」を「走行レールの敷設位置に沿って間隔をおいて」設ける構成を備えるのに対し、甲1発明は、前記構成について明らかでない点。
【相違点4】:本件発明17は、走行レールが、「調整板上に位置決めされ、スペーサによって互いの間隔が保持され」た構成を備えるのに対し、甲1発明は、前記構成について明らかでない点。
【相違点5】:本件発明17は、樹脂として、「ポリウレタン」を採用しているのに対し、甲1発明においては、その点が明らかでない点。
なお、相違点5に関し、被請求人は相違点であるとの主張をしていない。

(2-3)相違点についての判断
【相違点2】について
上記(2-1)では、甲1発明の認定を、第431頁?434頁の「S9-1-9. LRT対応樹脂固定軌道(INFUNDO)の試験施工と特性確認試験について」と題した論文に基づいて行ったが、同じく甲第1号証の第427頁?第430頁の「S9-1-8.LRT対応の新しい軌道構造および分岐器の動向と日本への適用について」と題した論文の、第429頁の図-1には、溝内のレール下に高さ調整パッドを設け、その上にレールを設置した点が開示されている(記載事項1-7)。ここで、前記開示された点に関し、甲第1号証の第429頁の図-1の拡大図として、弁駁書で提出された甲第1号証の2によれば、溝内に設置するレールの下に設けた前記高さ調整パッドの下の溝の底に、さらに、パッド状の部材が敷かれている点を看て取ることができ(記載事項19-1)、前記パッド状の部材は、溝の底に敷かれたものであることから、甲1発明のコルクパッドに対応すると解するのが相当である。そうすると、甲第1号証には、甲1発明の他に、「コルクパッドの上に設けられたレールの高さ調整パッド」が開示されているということができる。
ここで、上記(2-2)のi) 及びii) に示したように、「コルクパッド」、「レール」は、それぞれ、「振動吸収板」、「走行レール」に相当し、また、前記「高さ調整パッド」は、レールのレベルを所定のレベルにする調整板に外ならない。
したがって、甲第1号証には、「振動吸収板上に設けられ、走行レールのレベルを所定のレベルにする調整板」が開示されているということができる。
そうすると、甲1発明に、甲第1号証に開示された上記の技術を適用して、【相違点2】に係る本件発明17の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たものであるといえる。

【相違点3】について
甲第1号証には、「2.2 施工方法 レールより少し大きめの溝がついたコンクリート床版をまず地盤上に施工し、溝の底にはコルクパッドを敷き、さびやゴミを落としたレールを置く。・・・Edilon社製樹脂を溝の隙間に注入し、連続的にレールと溝との隙間を埋めていく。」(記載事項1-4)と記載されているが、この記載は、「コルクパッド」(振動吸収板)が「敷」かれる状態が、どのようなものかを明確に説明したものであるとはいい得ず、また、Edilon社製樹脂が「連続的にレールと溝との隙間を埋めていく」ことは、単に、当該樹脂の連続性の説明に過ぎず、同じく、「コルクパッド」が「敷」かれる状態を明確に説明したものではない。また、調整板については、何ら言及されていない。
続いて、同じく、甲第1号証には、「在来軌道では、レールをまくら木で断続的に支持するのに対し、Infundo軌道ではレールを連続的に支持する」(記載事項1-6)と記載されているが、ここでの「連続的」な「支持」が、レールと溝との隙間を埋めた樹脂による支持を説明したものであることは、同じく、甲第1号証の「Infundoと称する樹脂固定軌道というべき新型軌道構造に注目し、・・・Infundoは、砕石やまくら木及びレール締結装置を持たない、従来の軌道とは全く異なる構造で、それらの機能をコンクリート床板や樹脂などによって実現する」(記載事項1-2)という記載から推認することができ、ここにおいても、レールを置く「コルクパッド」(振動吸収板)が「敷」かれる状態が、どのようなものかが明確に説明されているとはいい得ない。また、調整板が「レールの敷設位置に沿って間隔をおいて」置かれることについては、何ら言及されていない。
続いて、同じく、甲第1号証の第429頁の図-1(断面図)には、溝内のレール下に高さ調整パッドが設けられ、その上にレールが設置された点が記載されており(記載事項1-7)、前記第429頁の図-1の拡大図として弁駁書において提出された甲第1号証の2には、溝内に設置するレールの下に設けた高さ調整パッドの下の溝の底に、パッド状の部材が敷かれている点が記載されており(記載事項19-1)、第431頁の図1(断面図)には、溝の底にコルクパッドが設けられ、その上にレールを設置した点が記載されている(記載事項1-8)が、上記したように、前記第429頁の図-1と、前記第431頁の図1とは異なる論文に記載されたものであり、後者の図1が記載された論文には、高さ調整パッドに関する記載が一切無いだけでなく、むしろ、「コルクパッドを敷き、さびやゴミを落としたレールを置く」(記載事項1-4)という記載があることからすれば、後者の図1に記載されるコルクパッドの上には、レールが直接置かれるものであると解するのが相当である。したがって、前記第429頁の図-1の断面図と、前記第431頁の図1の断面図とを合わせ見て、高さ調整パッド(調整板)は、コルクパッドの上に、「レールの敷設位置に沿って間隔をおいて」置かれるものであるとはいい得ない。
さらに、同じく、甲第1号証には、「この方式は、レールの支持に金具を使用せず、粘弾性体(コークラスト)でレールを包み込むために、騒音・振動が吸収される」(記載事項1-1)と記載されているが、ここで、「レールを包み込む」として説明される状態が、粘弾性体によりレールの両側部を広く挟み込んでいるだけではなく、粘弾性体が下部にまで回り込んでいることを示すものであるとはいえず、また、仮に下部にまで回り込んでいることを示すものであったとしても、それが、レールの下部に設けられた高さ調整パッド(調整板)を、「レールの敷設位置に沿って間隔をおいて」置くことのみによって実現するものとはいい得ず、例えば、間隔をおかずに連続して置かれた高さ調整パッドに、浅い切り込みを入れたり、孔を設けたりすることによっても実現するものであるから、いずれにしろ、前記の「レールを包み込む」という記載によって、高さ調整パッドが、「レールの敷設位置に沿って間隔をおいて」置かれた状態が説明されているとはいい得ない。また、前記記載は、振動吸収板が敷かれる状態を説明したものでもない。
次に、甲第3号証には、「このレールの固着の方法は以下の原理を特徴とする:
? レールが弾性帯状板上に連続的に支持されること
? レールが溝内で弾性的固着によってガイドされること・・・
? レールの側面(profile)が弾性的な注入複合材によって固着されること・・・
弾性で連続的に支持されたレールの長所は、単一レール支持材間の二次的な湾曲に起因する力学的な力が存在しないこと、・・・」(記載事項3-2)と記載され、また「溝部の底部には、弾性帯状帯(an elastic strip)が敷かれ、レールがこの上面に、溝部内に収まるように置かれるが、ここでレールフットの下側にはパッドが詰められ」(記載事項3-4)と記載されているが、ここで、本件発明17の「振動吸収板」、「調整板」にそれぞれ相当する、「弾性帯状帯(an elastic strip)」、「パッド」は、前記の「単一レール支持材間の二次的な湾曲に起因する力学的な力が存在しない」という長所をもたらすために、ともに、「レールの敷設方向に連続して」置かれていると解するのが相当である。
続いて、同じく、甲第3号証には、溝部の下側に「弾性材の平準化シム」と記載され(記載事項3-5)、また、「埋め込み型レール構造は、例えばコルクとポリウレタンからなる複合材を介してのレールの連続的な支持を伴う。これらレールはこの弾性複合材を介して固着されるが、・・・レールヘッドを除いてレールの側面(profile)のほぼ全体を包囲する。」(記載事項3-1)と記載されている。ここで、「弾性材の平準化シム」は、本件発明17の「調整板」に相当するが、前記「弾性材の平準化シム」が、「レールの敷設位置に沿って間隔をおいて」置かれることは、前記各記載から明らかではない。また、仮に、「profile」が、前記「側面」ではなく、下面及び上面も含めた「輪郭」の意であったとしても、前記弾性複合材が、当該「輪郭」の「ほぼ全体を包囲する」ことは、例えば、間隔をおかずに連続して置かれた前記「弾性材の平準化シム」に、浅い切り込みを入れたり、孔を設けたりすることによっても実現するものであるから、前記各記載が、「弾性材の平準化シム」が、「レールの敷設位置に沿って間隔をおいて」置かれた状態を説明しているとはいい得ない。また、前記各記載は、振動吸収板がレールの敷設方向に連続して敷かれる状態を説明したものでもない。
さらに、同じく、甲第3号証の第255頁の図9.49には、溝の底がレールの敷設方向に連続して黒灰色で、所定間隔で黄色の模様或いは部材が溝の底の全幅にわたって設けられている点が記載されている(記載事項3-6)が、前記「黒灰色」のもの及び「黄色」のものが、それぞれ何であるのかは明確でない。
次に、甲第5号証には、「本発明はまた平坦な表面上に所望の傾斜をもつてレールを支持するための傾斜付弾性詰材を提供する。・・・詰材はレールに沿つて一定間隔で配置される個々の要素であり、或はまた各レールの下で連続したものとすることもできる。」(記載事項5-1)と記載され、また、「平坦な厚板軌条基礎上にレールを連続的または間欠的に支持する傾斜した詰材」(記載事項5-2)と記載され、さらに、第2図には、コンクリート厚板5上に矩形弾性詰材7が設置され、その上に傾斜要素8が設置され、この傾斜要素8の上にレール1が載置されているものが(記載事項5-4)、第3図には、コンクリート厚板5上に矩形弾性着座詰材9が設置され、その上に傾斜部材10が設置され、この傾斜部材10の上にレール1が載置されているものが(記載事項5-5)、第1図には、レールを傾斜支持する弾性傾斜詰材6が1段構成であるものが(記載事項5-6)記載されているが、ここで開示されるのは、あくまで、レールを連続的または間欠的に支持する部材(詰材)に過ぎず、第2図又は第3図に説明される如く2段構成をとるものであったとしても、レールの高さを調整する部材を間欠的に配置することまでも開示するものではない。なお、甲第5号証に記載の技術は、樹脂によりレールを固定する構造に関するものでもない。

以上のことを総合すると、甲第1号証、甲第3号証及び甲第5号証は、いずれも、調整板が、走行レールの敷設位置に沿って間隔をおいて置かれた構成を開示するものではない。
また、甲第2号証及び甲第4号証?甲第13号証も、前記構成を開示するものではない。
そして、甲第3号証に、弾性帯状帯(振動吸収板)及びパッド(調整板)をレールの敷設方向に連続して置く構成が開示され、甲第5号証に、部材(振動吸収板又は調整板)によりレールを連続的または間欠的に支持する構成が開示されていたとしても、これに基づいて、調整板が、走行レールの敷設位置に沿って間隔をおいて置かれたことによって、走行レールの底部下面と、振動吸収板あるいは凹部の底面との間の空間にポリウレタンの充填層が形成され、走行レール自体も強固に固定されるという、特許明細書の段落【0089】に記載された作用を、当業者が予測することは困難である。
さらに、本件発明17は、調整板が、走行レールの敷設位置に沿って間隔をおいて置かれたことにより、ポリウレタンによってレールの下部フランジ及びウエブの全面が拘束されていることと相まって、列車通過時にレールが敷設方向の長い範囲にわたって適切に沈むので、列車の乗り心地がよくなると共に、ポリウレタンによる凹部側面からのレール拘束に加えて、凹部底面からのレール拘束が調整板間でなされ、レールの温度収縮によって発生するレール軸力に対する拘束力が増して、レールの熱収縮による応力集中が回避される作用効果を有するものであり、当該作用効果は、甲第1号証、甲第3号証及び甲第5号証に記載された技術に比して、格別顕著なものである。

(2-4)本件発明17についてのむすび
したがって、相違点1、4、5について検討するまでもなく、甲第1号証?甲第13号証に記載された技術に基づいて、本件発明17の構成とすることは、当業者が容易になし得たものであるということはできない。

2.請求項18ないし請求項20(本件発明18ないし20)について
請求項18は、請求項15ないし17を、請求項19は、請求項15ないし18を、そして、請求項20は、請求項15ないし19を引用した発明であって、本件発明18ないし本件発明20は、請求項15又は請求項17(本件発明17)を特定するために必要な事項をすべて含むものである。
しかして、請求項15に係る発明は、前審決(平成20年4月25日付け審決:下記【参考】を参照のこと)で示されたごとく、甲第1号証?甲第13号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易になし得たものでないと審決され、確定したものである。
そうすると、本件発明18ないし本件発明20は、前審決に記載した理由又は上記(2-2)、(2-3)に記載した理由と同様の理由により、甲第1号証?甲第13号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易になし得たものであるということはできない。

3.小括
以上のとおりであって、請求項17の記載は特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものでなく、また、本件発明17ないし本件発明20は、いずれも特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。


第8.結び
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明17ないし本件発明20の特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
【参考】平成20年4月25日付け審決(1次審決)は、以下のとおり。

「無効2007-800146

東京都港区芝浦1丁目2番3号
請求人 清水建設 株式会社

東京都中央区八重州2-3-1 志賀国際特許事務所
代理人弁理士 佐伯 義文

東京都中央区八重州2-3-1 志賀国際特許事務所
代理人弁理士 鈴木 慎吾

東京都中央区八重州2-3-1 志賀国際特許事務所
代理人弁理士 堀内 正優

オランダ国、エヌエル-2031 シーエヌ ハアレム、ニーベルハイデスウエグ 23
被請求人 エデロン インターナショナル ビー.ヴイ

東京都中央区銀座8丁目16番13号 中銀・城山ビル4階 清水特許事務所
代理人弁理士 清水 千春

東京都中央区八重洲2丁目9番7号
被請求人 新潟トランシス 株式会社

東京都中央区銀座8丁目16番13号 中銀・城山ビル4階 清水特許事務所
代理人弁理士 清水 千春

上記当事者間の特許第3824948号発明「レールの据付方法および据付構造」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結 論
訂正を認める。
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理 由
第1.手続の経緯
本件特許第3824948号に係る発明についての出願は、平成14年3月7日の出願であり、その発明について特許権の設定登録が平成18年7月7日になされ、その請求項1?20に係る発明の特許について平成19年7月26日に、清水建設株式会社より特許無効審判が請求され、同年11月21日に答弁書とともに訂正請求書が提出され、平成20年2月6日に弁駁書が提出されたものである。


第2.訂正の適否について
1.訂正の内容
訂正請求書により被請求人が求める訂正の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項a:特許明細書の特許請求の範囲請求項1の
「【請求項1】 軌道の基礎部上面に、走行レールと、当該走行レールに所定間隔をおいて設けられる脱線防止レールとを収納するための凹部を形成するレール溝形成工程と、上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する振動吸収板の敷設工程と、
上記走行レールおよび上記脱線防止レールの各レベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールおよび上記脱線防止レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行・脱線防止レールの調整板設置工程と、
上記調整板上に、スペーサによって互いに間隔が保持された上記走行レールおよび脱線防止レールを置き位置決めをする走行・脱線防止レール設置工程と、
上記走行レールおよび脱線防止レールが位置決めされた上記凹部に、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行・脱線防止レールの樹脂注入硬化工程と、
を含むことを特徴とするレールの据付方法。」
を、
「【請求項1】 軌道の基礎部上面に、走行レールと、当該走行レールに所定間隔をおいて設けられる脱線防止レールとを収納するための凹部を形成するレール溝形成工程と、
上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を上記走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して接着固定する振動吸収板の敷設工程と、
上記走行レールおよび上記脱線防止レールの各レベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールおよび上記脱線防止レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行・脱線防止レールの調整板設置工程と、
上記調整板上に、スペーサによって互いに間隔が保持された上記走行レールおよび脱線防止レールを置き位置決めをする走行・脱線防止レール設置工程と、
上記走行レールおよび脱線防止レールが位置決めされた上記凹部に、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行・脱線防止レールの樹脂注入硬化工程と、
を含むことを特徴とするレールの据付方法。」とする訂正。

(2)訂正事項b:特許明細書の特許請求の範囲請求項4の
「【請求項4】 軌道の基礎部上面に、走行レールを収納するための凹部を形成する走行レールの溝形成工程と、
上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する振動吸収板の敷設工程と、
上記走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行レールの調整板設置工程と、
上記調整板上に上記走行レールを置き位置決めをする走行レール設置工程と、
上記走行レールが位置決めされた上記凹部に、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行レールの樹脂注入硬化工程と、
を含むことを特徴とするレールの据付方法。」
を、
「【請求項4】 軌道の基礎部上面に、走行レールを収納するための凹部を形成する走行レールの溝形成工程と、
上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を上記走行レールの敷設方向に連続して接着固定する振動吸収板の敷設工程と、
上記走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行レールの調整板設置工程と、
上記調整板上に上記走行レールを置き位置決めをする走行レール設置工程と、
上記走行レールが位置決めされた上記凹部に、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行レールの樹脂注入硬化工程と、
を含むことを特徴とするレールの据付方法。」とする訂正。

(3)訂正事項c:特許明細書の特許請求の範囲請求項7の
「【請求項7】 上記走行レールと上記接続走行レールとの接続端部同士を溶接によって接続するとともに、溶接された上記接続端部のある箇所の上記凹部に上記ポリウレタンを注入する前に、当該凹部の底面の上記振動吸収板の未敷設箇所に接着剤を塗布して上記振動球種板を接着固定することを特徴とする請求項2、3、5および6のいずれかに記載のレールの据付方法。」
を、
「【請求項7】 上記走行レールと上記接続走行レールとの接続端部同士を溶接によって接続するとともに、溶接された上記接続端部のある箇所の上記凹部に上記ポリウレタンを注入する前に、当該凹部の底面の上記振動吸収板の未敷設箇所に接着剤を塗布して上記振動吸収板を接着固定することを特徴とする請求項2、3、5および6のいずれかに記載のレールの据付方法。」とする訂正。

(4)訂正事項d:特許明細書の特許請求の範囲請求項15の
「【請求項15】 走行レールと、当該レールに所定間隔をおいて設けられた脱線防止レールとの据付構造であって、
軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に、接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と、
上記走行レールと脱線防止レールの敷設位置に沿って間隔をおいて、それぞれ振動吸収板上に設けられ、当該走行レールと脱線防止レールの各レベルを所定のレベルにする調整板と、
上記調整板上に位置決めされ、スペーサによって互いの間隔が保持された上記走行レールと脱線防止レールと、
これらが上記凹部に収納された状態で注入して硬化させたポリウレタン層と
を備えたことを特徴とするレールの据付構造。」
を、
「【請求項15】 走行レールと、当該レールに所定間隔をおいて設けられた脱線防止レールとの据付構造であって、
軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に、上記走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と、
上記走行レールと脱線防止レールの敷設位置に沿って間隔をおいて、それぞれ振動吸収板上に設けられ、当該走行レールと脱線防止レールの各レベルを所定のレベルにする調整板と、
上記調整板上に位置決めされ、スペーサによって互いの間隔が保持された上記走行レールと脱線防止レールと、
これらが上記凹部に収納された状態で注入して硬化させたポリウレタン層と
を備えたことを特徴とするレールの据付構造。」とする訂正。

(5)訂正事項e:特許明細書の特許請求の範囲請求項17の
「【請求項17】 走行レールの据付構造であって、
軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に、接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と、
上記走行レールの敷設位置に沿って間隔をおいて、それぞれ振動吸収板上に設けられ、上記走行レールのレベルを所定のレベルにする調整板と、
上記調整板上に位置決めされ、スペーサによって互いの間隔が保持された上記走行レールと、
これらが上記凹部に収納された状態で注入して硬化させたポリウレタン層と
を備えたことを特徴とするレールの据付構造。」
を、
「【請求項17】 走行レールの据付構造であって、
軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に、上記走行レールの敷設方向に連続して接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と、
上記走行レールの敷設位置に沿って間隔をおいて、それぞれ振動吸収板上に設けられ、上記走行レールのレベルを所定のレベルにする調整板と、
上記調整板上に位置決めされた上記走行レールと、
これらが上記凹部に収納された状態で注入して硬化させたポリウレタン層と
を備えたことを特徴とするレールの据付構造。」へと訂正するものであり、「振動吸収板」の凹部の底面への接着固定に関し、「上記走行レールの敷設方向に連続して」いるものである点を追加する訂正事項(以下、「訂正事項e-1」という。)と、「走行レール」に関し、「スペーサによって互いの間隔が保持され」たものである点を削除する訂正事項(以下、「訂正事項e-2」という。)を含むものである。

(6)訂正事項f:特許明細書段落【0007】の
「上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する振動吸収板の敷設工程と、」を、
「上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を上記走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して接着固定する振動吸収板の敷設工程と、」とする訂正。

(7)訂正事項g:特許明細書段落【0010】の
「上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する振動吸収板の敷設工程と、」を、
「上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を上記走行レールの敷設方向に連続して接着固定する振動吸収板の敷設工程と、」とする訂正。

(8)訂正事項h:特許明細書段落【0013】の
「当該凹部の底面の上記振動吸収板の未敷設箇所に接着剤を塗布して上記振動球種板を接着固定する」を、
「当該凹部の底面の上記振動吸収板の未敷設箇所に接着剤を塗布して上記振動吸収板を接着固定する」とする訂正。

(9)訂正事項i:特許明細書段落【0021】の
「軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に、接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と、」を、
「軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に、上記走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と、」とする訂正。

(10)訂正事項j:特許明細書段落【0023】の
「軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に、接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と、上記走行レールの下面敷設位置に沿って間隔をおいて、それぞれ振動吸収板上に設けられ、上記走行レールのレベルを所定のレベルにする調整板と、上記調整板上に位置決めされ、スペーサによって互いの間隔が保持された上記走行レールと、」を、
「軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に、上記走行レールの敷設方向に連続して接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と、上記走行レールの下面敷設位置に沿って間隔をおいて、それぞれ振動吸収板上に設けられ、上記走行レールのレベルを所定のレベルにする調整板と、上記調整板上に位置決めされた上記走行レールと、」とする訂正。

2.訂正の適否の判断
(1)訂正事項a及びdについて
訂正事項a及びdは、ともに、訂正前の請求項1及び15における「振動吸収板」の凹部の底面への接着固定に関し、特許明細書の段落【0057】の記載に基づいて減縮したものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、これらの訂正は、ともに特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項bについて
訂正事項bは、訂正前の請求項4における「振動吸収板」の凹部の底面への接着固定に関し、特許明細書の段落【0079】の記載に基づいて減縮したものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、この訂正は、特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項cについて
訂正事項cは、訂正前の請求項7における「振動球種板」を、「振動吸収板」に訂正するものであって、誤記の訂正を目的とするものである。
また、この訂正は、特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項eについて
訂正事項e-1は、訂正事項bについて上記(2)で説示したものと同様に、訂正前の請求項17における「振動吸収板」の凹部の底面への接着固定に関し、特許明細書の段落【0079】の記載に基づいて減縮したものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、2本の走行レールの間隔を保持するためのスペーサは通常用いられておらず、特許明細書にも走行レールと脱線防止レールとの間隔を保持するためのスペーサしか説明されていないから、脱線防止レールを伴わない走行レールの据付構造において、スペーサが不要なことは明白である。そうしてみると、訂正前の請求項17における、「スペーサによって互いの間隔が保持され」の記載は誤記と認められる。よって、この記載を削除する訂正事項e-2は、誤記の訂正を目的とするものである。
そして、これらの訂正は、特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5)訂正事項f?jについて
訂正事項f?jは、訂正事項a?eに係る特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正にともなって、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、これらの訂正は、訂正事項a?eと同様に、特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(6)むすび
以上のとおりであるから、訂正事項a?jは、特許法第134条の2第1項ただし書きの規定および同法同条第5項の規定により準用する同法第126条第3項および第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。


第3.本件発明
本件特許3824948号の請求項1?20に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明20」という。)は、訂正された明細書(以下、「訂正明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 軌道の基礎部上面に、走行レールと、当該走行レールに所定間隔をおいて設けられる脱線防止レールとを収納するための凹部を形成するレール溝形成工程と、
上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を上記走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して接着固定する振動吸収板の敷設工程と、
上記走行レールおよび上記脱線防止レールの各レベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールおよび上記脱線防止レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行・脱線防止レールの調整板設置工程と、
上記調整板上に、スペーサによって互いに間隔が保持された上記走行レールおよび脱線防止レールを置き位置決めをする走行・脱線防止レール設置工程と、
上記走行レールおよび脱線防止レールが位置決めされた上記凹部に、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行・脱線防止レールの樹脂注入硬化工程と、
を含むことを特徴とするレールの据付方法。

【請求項2】 軌道の基礎部上面に、走行レールと、当該走行レールより短く形成され、かつ当該走行レールに所定間隔をおいて並列に設けられる脱線防止レールとを、上記走行レールの接続端部が上記脱線防止レールの端部よりも敷設方向に突き出る状態で収納するための凹部を形成する走行・脱線防止レールの溝形成工程と、
上記走行レールと上記脱線防止レールとが並列する上記凹部の底面に、接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する走行・脱線防止レールの振動吸収板敷設工程と、
上記走行レールおよび上記脱線防止レールの各レベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールおよび上記脱線防止レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行・脱線防止レールの調整板設置工程と、
上記調整板上に、スペーサによって互いに間隔が保持された上記走行レールおよび脱線防止レールを、上記走行レールの接続端部が上記脱線防止レールの端部よりも敷設方向に突き出る状態で置き、位置決めをする走行・脱線防止レール設置工程と、
上記走行レールおよび上記脱線防止レールが位置決めされた状態で、当該走行レールと脱線防止レールとが並列する箇所の上記凹部に、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行・脱線防止レール並列部分の樹脂注入硬化工程と、
軌道の基礎部上面に、上記走行レールの接続端部に接続される接続走行レールを収納するための凹部を形成する接続走行レール溝形成工程と、
上記接続走行レールの接続端部を除く、当該接続走行レール用の上記凹部の底面に、接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する接続走行レールの振動吸収板の敷設工程と、
上記接続走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記接続走行レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く接続走行レールの調整板設置工程と、
上記調整板上に、上記接続走行レールを置き位置決めをする接続走行レール設置工程と、
上記接続走行レールが位置決めされた上記凹部に、少なくとも上記走行レールとの接続端部を除いて、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる接続走行レールの樹脂注入硬化工程と、
上記ポリウレタンで固定された上記走行レールおよび上記接続走行レールの上記接続端部同士を接続した後に、接続された上記接続端部のある箇所の上記凹部にセルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行レール接続部分の樹脂注入硬化工程と、
を含むことを特徴とするレールの据付方法。

【請求項3】 軌道の基礎部上面に、走行レールと、当該走行レールより短く形成され、かつ当該走行レールに所定間隔をおいて並列に設けられる脱線防止レールとを、上記走行レールの接続端部が上記脱線防止レールの端部よりも敷設方向に突き出る状態で収納するための凹部を形成する走行・脱線防止レールの溝形成工程と、
上記走行レールと上記脱線防止レールとが並列する上記凹部の底面に、接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する走行・脱線防止レールの振動吸収板敷設工程と、
上記走行レールおよび上記脱線防止レールの各レベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールおよび上記脱線防止レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行・脱線防止レールの調整板設置工程と、
上記調整板上に、スペーサによって互いに間隔が保持された上記走行レールおよび脱線防止レールを、当該走行レールの接続端部が当該脱線防止レールの端部よりも敷設方向に突き出る状態で置く走行・脱線防止レール設置工程と、
軌道の基礎部上面に、上記走行レールの接続端部に接続される接続走行レールを収納するための凹部を形成する接続走行レール溝形成工程と、
上記接続走行レールの接続端部を除く、当該接続走行レール用の上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する接続走行レールの振動吸収板敷設工程と、
上記接続走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記接続走行レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く接続走行レールの調整板設置工程と、
上記調整板上に、上記接続走行レールを置く接続走行レール設置工程と、
上記調整板上に置かれた上記走行レールと、上記調整板上に置かれた上記接続走行レールとの接続端部同士を接続する走行レールの接続工程と、
上記走行レール、上記脱線防止レールおよび上記接続走行レールが位置決めされた状態で、上記走行レールと上記脱線防止レールとが並列する箇所の上記凹部と接続された上記接続端部がある箇所の上記凹部とに、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる接続走行レールの樹脂注入硬化工程と、
を含むことを特徴とするレールの据付方法。

【請求項4】 軌道の基礎部上面に、走行レールを収納するための凹部を形成する走行レールの溝形成工程と、
上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を上記走行レールの敷設方向に連続して接着固定する振動吸収板の敷設工程と、
上記走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行レールの調整板設置工程と、
上記調整板上に上記走行レールを置き位置決めをする走行レール設置工程と、
上記走行レールが位置決めされた上記凹部に、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行レールの樹脂注入硬化工程と、
を含むことを特徴とするレールの据付方法。

【請求項5】 軌道の基礎部上面に、走行レールを収納するための凹部を形成する走行レールの溝形成工程と、
上記走行レールの接続端部を除く当該走行レール用の上記凹部の底面に、接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する走行レールの振動吸収板敷設工程と、
上記走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行レールの調整板設置工程と、
上記調整板上に上記走行レールを置き位置決めをする走行レール設置工程と、 上記走行レールが位置決めされた状態で、少なくとも当該走行レールの上記接続端部を除く上記凹部に、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行レールの樹脂注入硬化工程と、
軌道の基礎部上面に、上記走行レールの接続端部に接続される接続走行レールを収納するための凹部を形成する接続走行レール溝形成工程と、
上記接続走行レールの接続端部を除く、当該接続走行レール用の上記凹部の底面に、接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する接続走行レールの振動吸収板敷設工程と、
上記接続走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記接続走行レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く接続走行レールの調整板設置工程と、
上記調整板上に、上記接続走行レールを置き位置決めをする接続走行レール設置工程と、
上記接続走行レールが位置決めされた上記凹部に、少なくとも上記走行レールとの接続端部を除いて、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる接続走行レールの樹脂注入硬化工程と、
上記ポリウレタンで固定された上記走行レールおよび上記接続走行レールの上記接続端部同士を接続した後に、接続された上記接続端部のある箇所の上記凹部にセルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行レール接続部分の樹脂注入硬化工程と、
を含むことを特徴とするレールの据付方法。

【請求項6】 軌道の基礎部上面に、走行レールを収納するための凹部を形成する走行レールの溝形成工程と、
上記走行レールの接続端部を除く当該走行レール用の上記凹部の底面に、接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する走行レールの振動吸収板敷設工程と、
上記走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行レールの調整板設置工程と、
上記調整板上に上記走行レールを置く走行レール設置工程と、
軌道の基礎部上面に、上記走行レールの接続端部に接続される接続走行レールを収納するための凹部を形成する接続走行レール溝形成工程と、
上記接続走行レールの接続端部を除く、当該接続走行レール用の上記凹部の底面に、接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する接続走行レールの振動吸収板敷設工程と、
上記接続走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記接続走行レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く接続走行レールの調整板設置工程と、
上記調整板上に、上記接続走行レールを置く接続走行レール設置工程と、
上記調整板上に置かれた上記走行レールと、上記調整板上に置かれた上記接続走行レールとの接続端部同士を接続する走行レールの接続工程と、
上記走行レールおよび上記接続走行レールが位置決めされた状態で、接続された上記接続端部を含めた上記走行レールがある箇所の上記凹部に、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる接続走行レールの樹脂注入硬化工程と、
を含むことを特徴とするレールの据付方法。

【請求項7】 上記走行レールと上記接続走行レールとの接続端部同士を溶接によって接続するとともに、溶接された上記接続端部のある箇所の上記凹部に上記ポリウレタンを注入する前に、当該凹部の底面の上記振動吸収板の未敷設箇所に接着剤を塗布して上記振動吸収板を接着固定することを特徴とする請求項2、3、5および6のいずれかに記載のレールの据付方法。

【請求項8】 上記走行レールと上記脱線防止レールとを収納する上記凹部部分への上記ポリウレタンの注入は、まず上記走行レールと上記凹部側壁との間および上記脱線防止レールと上記凹部側壁との間に上記ポリウレタンを注入して、上記走行レールと上記凹部側壁との間および上記脱線防止レールと上記凹部側壁との間の上記ポリウレタンの表面レベルが、上記軌道の基礎部上面レベルと略同じにした後に、上記走行レールと上記脱線防止レールとの間にポリウレタンを注入して、上記走行レールと上記脱線防止レールとの間の上記ポリウレタンの表面レベルが、走行レール頭部の下端部に位置するようにすることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載のレールの据付方法。

【請求項9】 上記走行レールのみを収納する上記凹部部分への上記ポリウレタンの注入は、まずレール軌道の外側に位置する上記凹部側壁と上記走行レールとの間に上記ポリウレタンを注入して、当該凹部側壁と上記走行レールとの間の上記ポリウレタンの表面レベルが、上記軌道の基礎部上面レベルと略同じにした後に、レール軌道の内側に位置する上記凹部側壁と上記走行レールとの間に上記ポリウレタンを注入して、当該凹部側壁と上記走行レールとの間の上記ポリウレタンの表面レベルが、レール頭部の下端部に位置するようにすることを特徴とする請求項2?7のいずれかに記載のレールの据付方法。

【請求項10】 上記ポリウレタンは、ポリイソシアネート プレポリマーと、アミンとの混合物にコルク粒を1?10重量%含めたものであることを特徴とする請求項1?9のいずれかに記載のレールの据付方法。

【請求項11】 上記ポリウレタンを凹部に注入する直前に、当該凹部に、プライマーとして溶剤に溶解させたポリイソシアネートを散布することを特徴とする請求項1?10のいずれかに記載のレールの据付方法。

【請求項12】 上記振動吸収板は、合成ゴムまたは天然ゴムであり、上記接着剤は硬化剤が加えられたエポキシ樹脂接着剤であることを特徴とする請求項1?11のいずれかに記載のレールの据付方法。

【請求項13】 上記調整板の高さ寸法の調整は、敷設された振動吸収板上面のレベルを測定し、当該測定値に基づいて、複数の調整板を積み重ねて当該測定値に対応した高さ寸法に調整することを特徴とする請求項1?12のいずれかに記載のレールの据付方法。

【請求項14】 上記振動吸収板が、コルク粒を1?20重量%含有し、上記調整板がコルク板であることを特徴とする請求項1?13のいずれかに記載のレールの据付方法。

【請求項15】 走行レールと、当該レールに所定間隔をおいて設けられた脱線防止レールとの据付構造であって、
軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に、上記走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と、
上記走行レールと脱線防止レールの敷設位置に沿って間隔をおいて、それぞれ振動吸収板上に設けられ、当該走行レールと脱線防止レールの各レベルを所定のレベルにする調整板と、
上記調整板上に位置決めされ、スペーサによって互いの間隔が保持された上記走行レールと脱線防止レールと、
これらが上記凹部に収納された状態で注入して硬化させたポリウレタン層と
を備えたことを特徴とするレールの据付構造。

【請求項16】 上記ポリウレタン層の表面レベルは、上記走行レールと上記凹部側壁との間および上記脱線防止レールと上記凹部側壁との間の上記ポリウレタン層の表面レベルが、上記軌道の基礎部上面レベルと略同じであり、上記走行レールと上記脱線防止レールとの間の上記ポリウレタン層の表面レベルは、走行レール頭部の下端部に位置することを特徴とする請求項15に記載のレールの据付け構造。

【請求項17】 走行レールの据付構造であって、
軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に、上記走行レールの敷設方向に連続して接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と、
上記走行レールの敷設位置に沿って間隔をおいて、それぞれ振動吸収板上に設けられ、上記走行レールのレベルを所定のレベルにする調整板と、
上記調整板上に位置決めされた上記走行レールと、
これらが上記凹部に収納された状態で注入して硬化させたポリウレタン層と
を備えたことを特徴とするレールの据付構造。

【請求項18】 上記ポリウレタンは、ポリイソシアネート プレポリマーと、アミンとの混合物にコルク粒を1?10重量%含めたものであることを特徴とする請求項15?17のいずれかに記載のレールの据付構造。

【請求項19】 上記振動吸収板は、合成ゴムまたは天然ゴムであり、上記接着剤は硬化剤が加えられたエポキシ樹脂接着剤であることを特徴とする請求項15?18のいずれかに記載のレールの据付構造。

【請求項20】 上記振動吸収板は、コルク粒を1?20重量%含有し、上記調整板は、複数のコルク板を積み重ねて所定の高さに調整したものであることを特徴とする請求項15?19のいずれかに記載のレールの据付構造。」


第4.当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は、審判請求書及び弁駁書において、「特許第3824948号に係る特許の請求項1乃至20を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と主張し、その証拠方法として、審判請求書において、下記の甲第1号証ないし甲第13号証及び参考資料1ないし3並びに参考資料4-1ないし4-2を提出し、弁駁書において、甲第1号証の2及び参考資料5を提出しているところ、その理由の概略は以下のとおりである。
(1)無効理由1
本件発明1?20は、甲第1号証?甲第13号証に記載された発明から当業者が容易に想到し得た発明であり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(2)無効理由2
本件発明17は、特許を受けようとする発明が明瞭でなく、特許法第36条第6項第2号の規定に違反する。

甲第1号証:「J-RAIL ’01 鉄道技術連合シンポジウム 講演論文集」、電気学会 交通・電気鉄道技術委員会(平成13年12月)、p.427-434
甲第2号証:「工業大辞書」、(株)日本図書センター(2000年10月25日)、p.1774-p.1775
甲第3号証:Coenraad Esveld、“MODERN RAILWAY TRACK Second Edition”、(蘭)、MRT-Productions(2001年)、p.253-p.257
甲第4号証:欧州特許出願公開第0710743号明細書
甲第5号証:特開昭52-5102号公報
甲第6号証:特公昭63-26205号公報
甲第7号証:特開昭56-6804号公報
甲第8号証:特開昭52-18611号公報
甲第9号証:特開平8-239500号公報
甲第10号証:特開平3-149273号公報
甲第11号証:特開平7-279112号公報
甲第12号証:特開2000-145152号公報
甲第13号証:特開平6-219808号公報
参考資料1:「土木工学ポケットブック」、株式会社山海堂(昭和58年)、p.1054-p.1059
参考資料2:「新編 土木工学ポケットブック」、株式会社オーム社(昭和57年)、p.1116-p.1117、 p.1130-p.1133
参考資料3:「鉄骨工事シリーズ2 鉄骨の溶接」、理工図書株式会社(昭和50年)、p.514-p.515
参考資料4-1:「第四版 土木工学ハンドブック1(当審注:システム上の理由によりローマ数字をアラビア数字で表記する。)」、技報堂出版株式会社(1989年)、p.1435、 p.1448-p.1449
参考資料4-2:「第四版 土木工学ハンドブック2(当審注:システム上の理由によりローマ数字をアラビア数字で表記する。)」、技報堂出版株式会社(1989年)、p.1521、 p.1548-p.1555
甲第1号証の2:「J-RAIL ’01 鉄道技術連合シンポジウム 講演論文集」、電気学会 交通・電気鉄道技術委員会(平成13年12月)、p.431の図-1の拡大図
参考資料5:特開平2-229302号公報

2.被請求人の主張
被請求人は、答弁書及び訂正請求書を提出し、本願発明1?20について「「本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求める。」と主張している。


第5.甲各号証及び参考資料の記載事項
請求人の提出した甲第1号証?甲第20号証、甲第1号証の2及び参考資料1?5には、以下の事項が記載されている。
(1)甲第1号証(J-RAIL ’01 鉄道技術連合シンポジウム 講演論文集、p.427-434)
記載事項1-1)
「オランダの化成品会社エディロン(Edilon)は、コークラストと名づけた・・・ポリウレタン系樹脂を用いて、コンクリート道床の溝にレールとともに固定する方式を開発、30年前から試験を開始し、・・・使用実績を重ねていった。
この方式は、レールの支持に金具を使用せず、粘弾性体(コークラスト)でレールを包み込むために、騒音・振動が吸収されるため、・・・保線作業が大幅に軽減できる特長がある。」(第428頁右欄9?19行)

記載事項1-2)
「Infundoと称する樹脂固定軌道というべき新型軌道構造に注目し、我が国への導入を検討した。Infundoは、砕石やまくら木及びレール締結装置を持たない、従来の軌道とは全く異なる構造で、それらの機能をコンクリート床板や樹脂などによって実現するものである。」(第431頁左下欄14?18行)

記載事項1-3)
「Infundo軌道の特徴として、砕石の突き固めやレール締結装置ボルトの点検等の保守が不要になること、レールウェブを樹脂で覆っているため、振動が減衰することから低騒音、低振動が期待できること、・・・などがあげられる」(第431頁左下欄27行?同頁右下欄1行)

記載事項1-4)
「2.2 施工方法 レールより少し大きめの溝がついたコンクリート床版をまず地盤上に施工し、溝の底にはコルクパッドを敷き、さびやゴミを落としたレールを置く。・・・上下左右とも±1mmの精度で施工している。レールのウェブ部の左右に並行して塩ビ製等のパイプを入れる。プライマーを塗布した後、Edilon社製樹脂を溝の隙間に注入し、連続的にレールと溝との隙間を埋めていく。パイプは樹脂の注入量を節約するとともに、各種ケーブルの配線路としても使用できる。」(第431頁右下欄9行?第432頁左欄3行)

記載事項1-5)
「(株)新潟鐵工所新潟構機工場内の線路の一部にInfundo軌道が試験施工された。施工箇所は、直線部1カ所および曲線部1カ所である(図2参照)。・・・曲線部は・・・内軌道レールに護輪軌条を設けた。」(第432頁左欄12行?同頁右欄1行)

記載事項1-6)
「図8は、スラブ中央及び端部のスラブに対するレール上下変位量測定結果を示す。在来軌道では、レールをまくら木で断続的に支持するのに対し、Infundo軌道ではレールを連続的に支持するという違いがあり」(第433頁右欄11?14行)

記載事項1-7)
第429頁の図-1の断面図には、溝内のレール下に高さ調整パッドを設け、その上にレールを設置した点、走行レールと凹部側壁との間は「軌道の基礎部上面レベル」まで樹脂が充填され、車両のフランジウエイとなる走行レールにつながる内側部の樹脂の表面レベルは「走行レール頭部の下端部」とした点が記載されている。

記載事項1-8)
第431頁の図1の断面図には、溝の底にコルクパッドが設けられ、その上にレールを設置した点が記載されている。

記載事項1-9)
第432頁の図2には、INFUNDO施工位置図として、「曲線部INFUNDO軌道」と、「直線部INFUNDO軌道」とが記載されている。

ただし、上記各記載事項のうち、記載事項1-1)、1-7)は、第427頁?第430頁の「S9-1-8.LRT対応の新しい軌道構造および分岐器の動向と日本への適用について」と題した論文に係り、記載事項1-2)?1-6)及び1-8)?1-9)は、第431頁?434頁の「S9-1-9. LRT対応樹脂固定軌道(INFUNDO)の試験施工と特性確認試験について」と題した論文に係る記載である。

(2)甲第2号証(工業大辞書、p.1774-p.1775)
記載事項2-1)
「護輪軌條(ゴリンキジョウ) 鐵道車両の脱逸を防ぎ、・・・設くるものにして・・・曲線其他危害損傷の生ずる虞ある所に置くものとす。・・・護輪軌條と走行軌條(Running Rail)との間には輪縁の通過に差支無き限り、一定の間隙・・・を存し・・・若くは特別の方法を以て、両軌條を連結すべし(第一・二図)」(第1774頁中段)

記載事項2-2)
第一図と第四図(乙)には、護輪軌條と走行軌條がスペーサを介して所定の間隙を以てボルトで連結されている点が記載されている。

記載事項2-3)
第三図(己)および第四図(甲)には、2条の走行軌條の内側に走行軌條より短い2条の護輪軌條が並設されており、走行軌條の接続端部は護輪軌條より突き出る状態とされた点が記載されている。

(3)甲第3号証(Coenraad Esveld、“MODERN RAILWAY TRACK Second Edition、p.253-p.257)
記載事項3-1)
「9.8 埋め込み型レール
9.8.1 埋め込み型レールの特徴 埋め込み型レール構造は、例えばコルクとポリウレタンからなる複合材を介してのレールの連続的な支持を伴う。これらレールはこの弾性複合材を介して固着されるが、・・・レールヘッドを除いてレールの側面(profile)のほぼ全体を包囲する。」(第253頁38?42行)

記載事項3-2)
「このレールの固着の方法は以下の原理を特徴とする:
? レールが弾性帯状板上に連続的に支持されること
? レールが溝内で弾性的固着によってガイドされること
? ・・・
? レールの側面(profile)が弾性的な注入複合材によって固着されること
? ・・・
弾性で連続的に支持されたレールの長所は、単一レール支持材間の二次的な湾曲に起因する力学的な力が存在しないこと、・・・」(第254頁1?8行)

記載事項3-3)
「9.8.2 埋め込み型レール軌道の建造 埋め込み型のレールは、注入された弾性複合材およびレールを収容するための溝部を必要とする。このような溝部は、コンクリートまたは鋼鉄にて提供することができる。・・・図9.46はこの埋め込み型レールを含むスラブの細部の断面を示す。」(第254頁11?21行)

記載事項3-4)
「溝部の底部には、弾性帯状帯(an elastic strip)が敷かれ、レールがこの上面に、溝部内に収まるように置かれるが、ここでレールフットの下側にはパッドが詰められ、両脇には弾性くさびが詰められる。レールはトップダウン方式にて調節される。調節の後、レールは加熱することで応力を解放され、その後、弾性複合材が溝部内に注入される(図9.52)。」(第254頁36?44行)

記載事項3-5)
第254頁の図9.46には、溝部の左側に「弾性くさびとブロック」、溝部の右側に「注入された弾性材」、「弾性くさびとチューブホルダ、φ50mmのPVCチューブ」、溝部の上側に「軌間」、溝部の下側に「弾性材の平準化シム」と記載されている。

記載事項3-6)
第255頁の図9.49には、溝の底がレールの敷設方向に連続して黒灰色で、所定間隔で黄色の模様或いは部材が溝の底の全幅にわたって設けられている点が記載されている

(4)甲第4号証(欧州特許出願公開第0710743号明細書)
記載事項4-1)
「1.コンクリートから製造され、その上側表面に搭載されたパッド(10)を有し、使用において、鉄道レール(12)の下側フランジ(16)を受け、これと噛み合う鉄道枕木(14)であって、前記パッド(10)は複合パッドであり、エラストマーパッド(30)および接合手段(40)を含み、この接合手段の上側表面は前記エラストマーパッド(30)の下側表面にこれらの間の相対的移動を阻止するように接合され、この枕木(14)は、さらに、前記接合手段(40)をこの枕木の上側表面に接合する粘着層(18)を含み、これによってこれらの間の相対移動が阻止され」(請求項1)

記載事項4-2)
「図6および図7の代替態様においては、エラストマーパッド30’は上述のエラストマーパッド30と類似する・・・。微粒子層40’が用いられるが、これはポリウレタンパッド30’に直接に接合された微粒子42を含む。これはこのポリウレタンパッド30’がこのコンクリート枕木14に粘着的に接合することを可能にしている。」(第4頁第5欄15?22行)

記載事項4-3)
「さらに、粘着層50’が用いられ、これら接合された微粒子42’がこのコンクリート枕木14に、これら接合された微粒子42’の露出された部分およびこのコンクリート枕木14の上面18のところで接合され、この結果として、このポリウレタンパッド30’とこのコンクリート枕木14との間の相対的な移動が阻止され」(第4頁第5欄35?42行)

記載事項4-4)
「エラストマーパッド30’および微粒子層40’から構成される複合パッド10’とコンクリート枕木14とが互いにこの微粒子層40’および粘着層50’を介して接合される。」(第4頁第5欄57行?同頁第6欄第2行)

(5)甲第5号証(特開昭52-5102号公報)
記載事項5-1)
「本発明はまた平坦な表面上に所望の傾斜をもつてレールを支持するための傾斜付弾性詰材を提供する。
本発明によれば、詰材は荷重を受けて変形するときに一定の傾斜を維持するように設計される。・・・
詰材はレールに沿つて一定間隔で配置される個々の要素であり、或はまた各レールの下で連続したものとすることもできる。・・・
本発明による詰材は例えば合成ゴム、天然ゴム、コルク、ポリウレタン、ポリ硫化物のような弾性重合材料を含む種々の材料で造ることができる。」(第2頁右上欄8行?同頁左下欄1行)

記載事項5-2)
「平坦な厚板軌条基礎上にレールを連続的または間欠的に支持する傾斜した詰材」(第2頁右下欄10?11行)

記載事項5-3)
「第2図は2つ以上の構成要素を用いた傾斜支持詰材7、8を示し、傾斜要素8は堅い材料で接着形状または界面摩擦によつて矩形弾性詰材7と位置づけられる。
第3図は2つ以上の構成要素を取入れた傾斜支持詰材9、10を示し、これによつて堅い材料の傾斜部材10が矩形弾性着座詰9内に押込められる。」(第3頁右上欄3?10行)

記載事項5-4)
第2図には、コンクリート厚板5上に矩形弾性詰材7が設置され、その上に傾斜要素8が設置され、この傾斜要素8の上にレール1が載置されているものが記載されている。

記載事項5-5)
第3図には、コンクリート厚板5上に矩形弾性着座詰材9が設置され、その上に傾斜部材10が設置され、この傾斜部材10の上にレール1が載置されているものが記載されている。

記載事項5-6)
第1図には、レールを傾斜支持する弾性傾斜詰材6が1段構成であるものが記載されている。

(6)甲第6号証(特公昭63-26205号公報)
記載事項6-1)
「この発明は、瓦斯・液体燃料・水道・地下ケーブル等の鋼管を開削工法により地表下に埋設し、且つ鋼管継手部を溶接により結合する施工法」(第1頁第2欄2?4行)

記載事項6-2)
「従来の開削工法は、道路交通事情等により掘削・山留・配管・芯出し・溶接・検査・防食・砂埋戻し・仮復旧の作業を例えば8時間程度の短い許可作業時間内に完了し、その後は道路を開放する即日復旧工法が主体である。」(第1頁第2欄11?15行)

記載事項6-3)
「まず、管1が前日に埋設したものであり(第1図A参照)、・・・。次に、掘削構に管8を配管し、管1と管8の継手部9にクランプ10をセツトし管1と管8の芯出しを行ない開先を保持する(第1図E参照)。次に、継手部9の仮溶接後にクランプ10は撤去し、継手部9の本溶接後に検査・防食を行なう(第1図F参照)。次に、掘削構を砂で埋戻しながら山留を撤去し(第1図G参照)」(第2頁第3欄1?13行)

記載事項6-4)
「本発明は地表下に管を埋設するに際し、前記管同志の結合個所に会所囲壁を形成するとともに、該会所囲壁間を繋ぐ掘削構内に前記管を設置し、しかる後に前記掘削構を埋戻して前記管を順次埋設していく埋設作業に並行して前記会所囲壁内において前記管同志を順次溶接し、しかる後に溶接終了した会所囲壁を前記埋設作業に並行して撤去する」(第2頁第3欄37?44行)

記載事項6-5)
「第2図は本発明方法を示すものである。すなわち、管埋設が矢印の方向に進むものとし、土圧及び道路を開放する場合は車輛荷重に対して十分な強度を有する機能を持つ会所囲壁10、11、12の設置並びに管13、14、15の布掘部の埋設が既に完了しているとすると、土木チームは新設部16、17の掘削・山留・会所囲壁設置・配管・芯出し・布掘部の砂埋戻しと仮復旧を行ない、溶接チームは土木チームの作業に関係の無い管13、14の継手部をを会所囲壁10内で、管14、15の継手部を会所囲壁11内で土木チームと並列で行なう。会所囲壁10、11内の砂埋戻し・会所囲壁10、11撤去・仮復旧は、溶接チームの作業完了後に土木チームが新設部16、17と並行して都合のよい時点で行なう。」(第3頁第4欄3?17行)

(7)甲第7号証(特開昭56-6804号公報)
記載事項7-1)
「本発明は鉄道等の線路を敷設する際に、溶接によってつなげられたレールを架設する方法およびその方法によって敷設される線路に関する」(第3頁左下欄2?5行)

記載事項7-2)
「案内溝302内にレール300が支持されている。」(第9頁左下欄4?5行)

記載事項7-3)
「レール300のフランジの下に弾性パッド308を入れることによってコンクリート構造に伝達される振動および騒音を小さくすることができる。」(第9頁左下欄16?19行)

記載事項7-4)
「最後にレールとクリップを取り付けた後に、前記案内溝304全体内にHL1級のアスファルト326が充填される。」(第10頁左上欄13?15行)

記載事項7-5
「このような本発明の利点は溶接によってつなげたレール及びコンクリートスラブを用いた路面系の鉄道においても得られる。」(第10頁右上欄6?8行)

(8)甲第8号証(特開昭52-18611号公報)
記載事項8-1)
「スラブ式軌道構造において、レールを直結させるコンクリート版と下層のコンクリート盤あるいは堅固な盤との間に・・・ポリウレタン樹脂と骨材との混合物の固化体よりなる層を設けることを特徴とするスラブ式軌道構造。」(特許請求の範囲)

記載事項8-2)
「本発明の目的は、・・・防音、防振性にすぐれ耐久性があるスラブ式軌道構造を提供することにある。」(第2頁左上欄11?13行)

記載事項8-3)
「ポリウレタン樹脂は1液型と2液型がある。・・・。
2液型ではイソシアネート基を有する化合物を主成分とする・・・主剤と硬化剤とになっている・・・またアミン系触媒を併用することもできる。・・・。
・・・骨材は・・・コルク粉・・・を適宜混入して用いることができる。
樹脂と骨材との混合物は・・・コンクリート版や下層のコンクリート盤や堅固な盤によく接着するが必要に応じてプライマーを使用するとよい。」(第3頁右上欄7行?同頁左下欄15行)

(9)甲第9号証(特開平8-239500号公報)
記載事項9-1)
「【請求項1】 ゴム(A)、軟化剤(B)、無機充填剤及び/又は有機充填剤の充填剤(C)、有機発泡剤(D)及び加硫剤(E)を含有する粘性ゴム混和物を加硫発泡した粘弾性発泡体からなる防振材であって、上記ゴム(A)100重量部に対し、軟化剤(B)10?200重量部と、無機充填剤及び/又は有機充填剤の充填剤(C)5?300重量部を含有し、且つ上記粘弾性発泡体は、密度が0.2g/cm3以下に設定されていると共に、連続気泡と独立気泡が混在することを特徴とする防振材。」(特許請求の範囲)

記載事項9-2)
「【0023】本発明で用いられる無機充填剤及び/又は有機充填剤の充填剤(C)としては、・・・コルク粉末等の有機充填剤が挙げられるのであり、・・・。この場合、これらは単独、もしくは2種以上併せて用いられる。」(第3頁第4欄14?24行)

記載事項9-3)
「【0024】そして、上記無機充填剤及び/又は有機充填剤の充填剤(C)の配合割合としては、上記ゴム (A)100部に対して、5部?300部の範囲に設定することが好ましい。」(第3頁第4欄25?28行)

記載事項9-4)
「【0032】即ち、本発明においては粘性ゴム混和物が、ゴム(A)100重量部に対し、軟化剤(B)10?200重量部、無機充填剤及び/又は有機充填剤の充填剤(C)5?300重量部、有機発泡剤(D)1?50重量部及び加硫剤(E)0.01?10重量部からなるものが望ましい。」(第4頁第5欄33?38行)

(10)甲第10号証(特開平3-149273号公報)
記載事項10-1)
「ポリイソシアネート(バイエル社製、商品名「デスモジュールRF」)50gおよびエポキシ樹脂(シェル社製、商品名「エピコート1007」)25gを脱水酢酸エチル25gに加えて10時間ドラムミルにて混合溶解し、次いでこの溶液に蛍光染料(チバガイギー社製、商品名「ユビテックスOB」)0.5gを添加してドラムミルにて1時間混合してPVCモール用プライマー組成物を製造した。」(第3頁右下欄2?10行)

(11)甲第11号証(特開平7-279112号公報)
記載事項11-1)
「【0016】・・・表皮2材料に用いたクロロプレンゴム(CR)が接着性に優れることから、路面へ路面排水材Aを確実に固着できる。ここで、接着剤には、エポキシ樹脂接着剤が適している。とりわけ、水に不溶性のポリアミドや芳香族ポリアミンを硬化剤に用いたエポキシ樹脂接着剤が好適となる。・・・湿潤しているコンクリート路面でも使用可能で、現場取付工事の作業性に優れるためである。」(第3頁第4欄10?18行)

(12)甲第12号証(特開2000-145152号公報)
記載事項12-1)
「【0028】・・・図10に示すように・・・低地表面部8cには、・・・一対の前記高さ調整板本体20、20が配置されると共に、これらの各高さ調整板本体20、20には、この高さ調整板本体20の略半幅で、高さ方向の構成を略同一とする高さ調整板本体120、120が隣接されて並列配置されている。」(第4頁第6欄49行?第5頁第7欄8行)

記載事項12-2)
図10には、高さ調整板本体20、120を積み重ねて高さ寸法を調整した点が記載されている。

(13)甲第13号証(特開平6-219808号公報)
記載事項13-1)
「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、良好な自己充填性を有するコンクリートの現場施工方法、さらに詳しくは、良好な自己充填性を有するフレッシュコンクリートを型枠内に流し込み、フレッシュコンクリートの流動性と充填性によって締固め作業を行なうことなく、あるいは著しく軽減し、コンクリートを材料分離を生じることなく型枠内全域に緻密に打設する施工方法に関する。」(第2頁第1欄36?43行)

記載事項13-2)
「【0026】・・・コンクリートの流し込み位置は終始、同一の面側からのみとした。」(第5頁第8欄17?24行)

記載事項13-3)
「【0028】自己充填性コンクリートを、図3に示すような断面をもつ鉄筋コンクリートU型側溝へ打設することによって、その流動勾配を調べた。」(第5頁第8欄31?33行)

記載事項13-4)
「【0030】・・・これに対し軟練り普通コンクリートでは、コンクリートの投入面側にコンクリートが堆積し、型枠内全域に充填するためには、・・・コンクリートの投入面を切り替える作業が必要であった。」(第5頁第7欄49行?第6頁第9欄5行)

(14)参考資料1(土木工学ポケットブック、p.1054-p.1059)
記載事項14-1)
「レール長は、・・・定尺を25mとし」(第1057頁3行)

(15)参考資料2(新編 土木工学ポケットブック、p.1116-p.1117、 p.1130-p.1133)
記載事項15-1)
「舗装の破損を防ぎ、輪縁路を確保し、かつ脱線車輪の復線の目的も兼ねてガードレールを設ける」(第1116頁右欄20?22行)

(16)参考資料3(鉄骨工事シリーズ2 鉄骨の溶接、p.514-p.515)
記載事項16-1)
「昭和47年労働衛生安全法制定に基づき、安衛則も大幅に改正されたが、「第4章 爆発、火災等の防止」について多くの制限条項が追加された。
溶接作業場付近や直下には・・・燃えやすい物質を置かないようにする」(第514頁9?12行)

(17)参考資料4-1(第四版 土木工学ハンドブックI、p.1435、 p.1448-p.1449)
記載事項17-1)
「3.4.2 溶接・・・水圧鉄管に使われる溶接は、・・・。」(第1449頁右欄7?17行)

(18)参考資料4-2(第四版 土木工学ハンドブックII、p.1521、 p.1548-p.1555)
記載事項18-1)
「4.2.4 ロングレール レール継目を、溶接により除去し、乗心地の改善、騒音振動の減少などを目的とするロングレールは新設線、既設線を問わず広く採用され」(第1551頁右欄35行?第1552頁左欄第2行)

(19)甲第1号証の2(弁駁書において提出された、甲第1号証の第429頁の図-1の拡大図)
記載事項19-1)
溝内に設置するレールの下に設けた高さ調整パッドの下の溝の底に、パッド状の部材が敷かれている点が記載されている。

(20)参考資料5(特開平2-229302号公報)(弁駁書において提出されたもの。)
記載事項20-1)
「軌道組立体(レールと枕木とから成る予め組立られている構造体)を搬送し、そしてその軌道組立体をこのコンクリート・スラブの上に支持する。」(第4頁右上欄3?6行)


第6.当審の判断
1.無効理由1について(特許法第29条第2項についての判断)
(1)甲第1号証に記載された発明
i) 甲第1号証の第431頁?434頁の「S9-1-9. LRT対応樹脂固定軌道(INFUNDO)の試験施工と特性確認試験について」と題した論文には、Infundoと称する樹脂固定軌道とその施工方法が記載されており、当該施工方法は、レールより少し大きめの溝がついたコンクリート床版をまず施工し、溝の底にはコルクパッドを敷き、レールをその上に置き、プライマーを塗布した後、樹脂を溝の隙間に注入し、連続的にレールと溝との隙間を埋めていくものである点が開示されている(記載事項1-2、1-4、1-8)。
ii) そして、当該樹脂固定軌道を、線路の一部である曲線部に施工する際に、内軌道レールに護輪軌条を設けることが開示されている(記載事項1-5、1-9)。

以上のことから、甲第1号証には、「レールより少し大きめの溝がついたコンクリート床版をまず施工し、溝の底にはコルクパッドを敷き、レールをその上に置き、樹脂を溝の隙間に注入し、連続的にレールと溝との隙間を埋めていく樹脂固定軌道の施工方法。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。

(2)本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
i) 甲1発明の「レール」は、本件発明1の「走行レール」に相当し、以下同様に、「溝」は「凹部」に、「コンクリート床版」は「軌道の基礎部」に、「溝の底」は「凹部の底面」に、「樹脂固定軌道の施工方法」は「レールの据付方法」に、それぞれ相当する。
ii) 甲1発明の「樹脂固定軌道の施工方法」(レールの据付方法)において、「レール」(走行レール)は、「コンクリート床版」(軌道の基礎部)の「溝の底に」「コルクパッドを敷き」「その上に置」かれるものであるのだから、前記「溝」(凹部)は、前記「レール」を収納するために、「コンクリート床板」の「上面」に形成されるものであるということができる。また、上記(1)のii)に示したように、甲第1号証には、曲線部の内軌道レールに「護輪軌条」(本件発明1の「脱線防止レール」に相当する。)を設けることが開示されており、ここで、「護輪軌条」が、「レール」と所定間隔をおくように互いに連結して設けられるものであることは、当業者にとって常識であるから、前記「護輪軌条」を設ける際に、上述した「レール」を収納するための前記「溝」に、同様に収納させるようにすることは、当業者にとって自明の事項である。したがって、甲1発明の「樹脂固定軌道の施工方法」は、「軌道の基礎部上面に、走行レールと、当該走行レールに所定間隔をおいて設けられる脱線防止レールとを収納するための凹部を形成するレール溝形成工程」に対応する構成を、実質的に備えたものであるといえる。
iii) 甲1発明の「樹脂固定軌道の施工方法」は、「溝の底」(凹部の底面)に「コルクパッドを敷」くものであるが、前記「コルクパッド」は、本件発明1の、(凹部の底面に固定する)「振動吸収板」に相当し、また、甲1発明の前記「敷」くことと、本件発明1の「接着固定する」こととは、「敷」くことにおいて共通する。したがって、甲1発明の「樹脂固定軌道の施工方法」は、「凹部の底面に、振動吸収板を敷く振動吸収板の敷設工程」を実質的に含む点で、本件発明1と共通するものであるといえる。
iv) 甲1発明の「樹脂固定軌道の施工方法」は、「レール」(走行レール)を置く工程を含むものであり、また、上記ii) に説示したように、「レール」を収納するための「溝」(凹部)に「護輪軌条」(脱線防止レール)も収納させる場合には、「護輪軌条」(脱線防止レール)を置く工程も当然含むものであり、さらに、甲1発明においてレールを「置」くことと、本件発明1において、走行レールおよび脱線防止レールを、「置き位置決めする」こととは、「置」くことにおいて共通するから、甲1発明の「樹脂固定軌道の施工方法」は、「走行レール及び脱線防止レールを置く走行・脱線防止レール設置工程」を実質的に含む点で、本件発明1と共通するものであるといえる。
v) 甲1発明の「樹脂固定軌道の施工方法」は、「レール」(走行レール)を「置」いて、「樹脂」を「溝」(凹部)の「隙間に注入」し、「連続的にレールと溝との隙間を埋めていく」ものであるが、土木建設施工現場において注入・使用する樹脂に「セルフレベリング性」を持たせること及び当該樹脂の注入後に「硬化」させることは当業者にとって常識であり、また、上記ii) に説示したように、「レール」を収納するための「溝」に「護輪軌条」(脱線防止レール)も収納させた(置かれた)場合には、前記「樹脂」の注入及び硬化が、前記「レール」だけでなく、前記「護輪軌条」にも及ぶことは明らかである。さらに、甲1発明においてレールが「置」かれたことと、本件発明1において、走行レールおよび脱線防止レールが、「位置決めされた」こととは、「置」かれたことにおいて共通する。したがって、甲1発明の「樹脂固定軌道の施工方法」は、「走行レールおよび脱線防止レールが置かれた凹部に、セルフレベリング性を有する樹脂を注入して硬化させる走行・脱線防止レールの樹脂注入硬化工程」を実質的に含む点で、本件発明1と共通するものであるといえる。

以上のことから、本件発明1と甲1発明とは、
「軌道の基礎部上面に、走行レールと、当該走行レールに所定間隔をおいて設けられる脱線防止レールとを収納するための凹部を形成するレール溝形成工程と、
上記凹部の底面に振動吸収板を敷く振動吸収板の敷設工程と、
上記走行レール及び脱線防止レールを置く走行・脱線防止レール設置工程と、
上記走行レールおよび脱線防止レールが置かれた上記凹部に、セルフレベリング性を有する樹脂を注入して硬化させる走行・脱線防止レールの樹脂注入硬化工程と、
を含むことを特徴とするレールの据付方法。」である点で一致するが、次の点で相違する。

【相違点1】:本件発明1は、振動吸収板を、凹部の底面に、「接着剤を塗布して」「接着固定」するのに対し、甲1発明は、単に「敷」くものである点。
【相違点2】:本件発明1は、「走行レールおよび脱線防止レールの各レベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板」を「振動吸収板上に置く走行・脱線防止レールの調整板設置工程」を含むものであるのに対し、甲1発明は、前記の如くの「調整板設置工程」を含むものではない点。
【相違点3】:本件発明1は、振動吸収板の敷設工程において、振動吸収板を、「走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して」固定し、調整板設置工程において、調整板を、「走行レールおよび脱線防止レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて」置く構成を備えるのに対し、甲1発明は、前記構成について明らかでない点。
【相違点4】:本件発明1は、走行・脱線防止レール設置工程が、「調整板上に、スペーサによって互いに間隔が保持された走行レールおよび脱線防止レールを置き位置決めをする」構成を備えるのに対し、甲1発明は、走行レール及び脱線防止レールを置く点以外は明らかでない点。
【相違点5】:本件発明1は、樹脂注入硬化工程において使用する樹脂として、「ポリウレタン」を採用しているのに対し、甲1発明においては、その点が明らかでない点。なお、相違点5に関し、被請求人は相違点であるとの主張をしていない。

(イ)相違点についての判断
【相違点2】について
上記(1)では、甲1発明(甲1号証に記載された発明)の認定を、第431頁?434頁の「S9-1-9. LRT対応樹脂固定軌道(INFUNDO)の試験施工と特性確認試験について」と題した論文に基づいて行ったが、同じく甲第1号証の第427頁?第430頁の「S9-1-8.LRT対応の新しい軌道構造および分岐器の動向と日本への適用について」と題した論文の、第429頁の図-1には、溝内のレール下に高さ調整パッドを設け、その上にレールを設置した点が開示されている(記載事項1-7)。ここで、前記開示された点に関し、甲第1号証の第429頁の図-1の拡大図として、弁駁書で提出された甲第1号証の2によれば、溝内に設置するレールの下に設けた前記高さ調整パッドの下の溝の底に、さらに、パッド状の部材が敷かれている点を看て取ることができ(記載事項19-1)、前記パッド状の部材は、溝の底に敷かれたものであることから、甲1発明のコルクパッドに対応すると解するのが相当である。そうすると、甲第1号証には、甲1発明の他に、溝の底に敷かれたコルクパッドの上に、レールの高さ調整パッドを設けることが開示されているということができる。
ここで、上記(ア)のi) 及びiii) に示したように、「溝の底」、「コルクパッド」、「レール」は、それぞれ、「凹部の底面」、「振動吸収板」、「走行レール」に相当し、また、前記「レールの高さ調整パッド」は、レールの「レベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板」に外ならない。さらに、上記(ア)のii) において説示したように、レールを収納するための「溝」(凹部)に「護輪軌条」(脱線防止レール)も収納させる場合に、前記「レールの高さ調整パッド」に、レール同様に高さ調整が必要となる前記「護輪軌条」の「レベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板」としての機能を付与することは、当業者にとって自明である。
したがって、甲第1号証には、「走行レールおよび脱線防止レールの各レベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、振動吸収板上に置く」こと、及びその設置工程(走行・脱線防止レールの調整板設置工程)が開示されているということができる。
そうすると、甲1発明に、甲第1号証に開示された上記の技術を適用して、【相違点2】に係る本件発明1の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たものであるといえる。

【相違点3】について
甲1号証には、「2.2 施工方法 レールより少し大きめの溝がついたコンクリート床板をまず地盤上に施工し、溝の底にはコルクパッドを敷き、さびやゴミを落としたレールを置く。・・・Edilon社製樹脂を溝の隙間に注入し、連続的にレールと溝との隙間を埋めていく。」(記載事項1-4)と記載されているが、この記載は、「コルクパッド」(振動吸収板)が「敷」かれる状態が、レールの敷設方向に間隔をおいてではなく、連続したものであることを明確に説明したものであるとはいい得ず、また、Edilon社製樹脂が「連続的にレールと溝との隙間を埋めていく」ことは、単に、当該樹脂の連続性の説明に過ぎず、同じく、「コルクパッド」が「敷」かれる状態を明確に説明したものではない。また、調整板については、何ら言及されていない。
続いて、同じく、甲第1号証には、「在来軌道では、レールをまくら木で断続的に支持するのに対し、Infundo軌道ではレールを連続的に支持する」(記載事項1-6)と記載されているが、ここでの「連続的な支持」が、レールと溝との隙間を埋めた樹脂による支持を説明したものであることは、同じく、甲第1号証の「Infundoと称する樹脂固定軌道というべき新型軌道構造に注目し、・・・Infundoは、砕石やまくら木及びレール締結装置を持たない、従来の軌道とは全く異なる構造で、それらの機能をコンクリート床板や樹脂などによって実現する」(記載事項1-2)という記載から推認することができ、ここにおいても、レールを置く「コルクパッド」(振動吸収板)が「敷」かれる状態が、レールの敷設方向に間隔をおいてではなく、連続したものであることが明確に説明されているとはいい得ない。また、調整板が「レールの敷設位置に沿って間隔をおいて」置かれることについては、何ら言及されていない。
続いて、同じく、甲第1号証の第429頁の図-1(断面図)には、溝内のレール下に高さ調整パッドが設けられ、その上にレールが設置された点が記載されており(記載事項1-7)、前記第429頁の図-1の拡大図として弁駁書において提出された甲第1号証の2には、溝内に設置するレールの下に設けた高さ調整パッドの下の溝の底に、パッド状の部材が敷かれている点が記載されており(記載事項19-1)、第431頁の図1(断面図)には、溝の底にコルクパッドが設けられ、その上にレールを設置した点が記載されている(記載事項1-8)が、上記したように、前記第429頁の図-1と、前記第431頁の図1とは異なる論文に記載されたものであり、後者の図1が記載された論文には、高さ調整パッドに関する記載が一切無いだけでなく、むしろ、「コルクパッドを敷き、さびやゴミを落としたレールを置く」(記載事項1-4)という記載があることからすれば、後者の図1に記載されるコルクパッドの上には、レールが直接置かれるものであると解するのが相当である。したがって、前記第429頁の図-1の断面図と、前記第431頁の図1の断面図とを合わせ見て、高さ調整パッド(調整板)は、コルクパッドの上に、「レールの敷設位置に沿って間隔をおいて」置かれるものであるとはいい得ない。
さらに、同じく、甲第1号証には、「この方法は、レールの支持に金具を使用せず、粘弾性体(コークラスト)でレールを包み込むために、騒音・振動が吸収される」(記載事項1-1)と記載されているが、ここで、「レールを包み込む」として説明される状態が、粘弾性体によりレールの両側部を広く挟み込んでいるだけではなく、粘弾性体が下部にまで回り込んでいることを示すものであるとはいえず、また、仮に下部にまで回り込んでいることを示すものであったとしても、それが、レールの下部に設けられた高さ調整パッド(調整板)を、「レールの敷設位置に沿って間隔をおいて」置くことのみによって実現するものとはいい得ず、例えば、間隔をおかずに連続して置かれた高さ調整パッドに、浅い切り込みを入れたり、孔を設けたりすることによっても実現するものであるから、いずれにしろ、前記の「レールを包み込む」という記載によって、高さ調整パッドが、「レールの敷設位置に沿って間隔をおいて」置かれた状態が説明されているとはいい得ない。また、前記記載は、振動吸収板が敷かれる状態を説明したものでもない。
次に、甲第3号証には、「このレールの固着の方法は以下の原理を特徴とする:
? レールが弾性帯状板上に連続的に支持されること
? レールが溝内で弾性的固着によってガイドされること・・・
? レールの側面(profile)が弾性的な注入複合材によって固着されること・・・
弾性で連続的に支持されたレールの長所は、単一レール支持材間の二次的な湾曲に起因する力学的な力が存在しないこと、・・・」(記載事項3-2)と記載され、また「溝部の底部には、弾性帯状帯(an elastic strip)が敷かれ、レールがこの上面に、溝部内に収まるように置かれるがここでレールフットの下側はパッドを詰められ」(記載事項3-3)と記載されているが、ここで、本件発明1の「振動吸収板」、「調整板」にそれぞれ相当する、「弾性帯状帯(an elastic strip)」、「パッド」は、前記の「単一レール支持材間の二次的な湾曲に起因する力学的な力が存在しない」という長所をもたらすために、ともに、「レールの敷設方向に連続して」置かれていると解するのが相当である。
続いて、同じく、甲第3号証には、溝部の下側に「弾性材の平準化シム」と記載され(記載事項3-5)、また、「埋め込み型レール構造は、例えばコルクとポリウレタンからなる複合材を介してのレールの連続的な支持を伴う。これらレールはこの弾性複合材を介して固着されるが、・・・レールヘッドを除いてレールの側面(profile)のほぼ全体を包囲する。」(記載事項3-1)と記載されている。ここで、「弾性材の平準化シム」は、本件発明1の「調整板」に相当するが、前記「弾性材の平準化シム」が、「レールの敷設位置に沿って間隔をおいて」置かれることは、前記各記載から明らかではない。また、仮に、「profile」が、前記「側面」ではなく、下面及び上面も含めた「輪郭」の意であったとしても、前記弾性複合材が、当該「輪郭」の「ほぼ全体を包囲する」ことは、例えば、間隔をおかずに連続して置かれた前記「弾性材の平準化シム」に、浅い切り込みを入れたり、孔を設けたりすることによっても実現するものであるから、前記各記載が、「弾性材の平準化シム」が、「レールの敷設位置に沿って間隔をおいて」置かれた状態を説明しているとはいい得ない。また、前記各記載は、振動吸収板がレールの敷設方向に連続して敷かれる状態を説明したものでもない。
さらに、同じく、甲第3号証の第255頁の図9.49には、溝の底がレールの敷設方向に連続して黒灰色で、所定間隔で黄色の模様或いは部材が溝の底の全幅にわたって設けられている点が記載されている(記載事項3-6)が、前記「黒灰色」のもの及び「黄色」のものが、それぞれ何であるのかは明確でない。
次に、甲第5号証には、「本発明はまた平坦な表面上に所望の傾斜をもつてレールを支持するための傾斜付弾性詰材を提供する。・・・詰材はレールに沿つて一定間隔で配置される個々の要素であり、或はまた各レールの下で連続したものとすることもできる。」(記載事項5-1)と記載され、また、「平坦な厚板軌条基礎上にレールを連続的または間欠的に支持する傾斜した詰材」(記載事項5-2)と記載され、さらに、第2図には、コンクリート厚板5上に矩形弾性詰材7が設置され、その上に傾斜要素8が設置され、この傾斜要素8の上にレール1が載置されているものが(記載事項5-4)、第3図には、コンクリート厚板5上に矩形弾性着座詰材9が設置され、その上に傾斜部材10が設置され、この傾斜部材10の上にレール1が載置されているものが(記載事項5-5)、第1図には、レールを傾斜支持する弾性傾斜詰材6が1段構成であるものが(記載事項5-6)記載されているが、ここで開示されるのは、あくまで、レールを連続的または間欠的に支持する部材(詰材)に過ぎず、第2図又は第3図に説明される如く2段構成をとるものであったとしても、一方を連続的に、他方を間欠的に配置することまでも開示するものではない。なお、甲第5号証に記載の技術は、樹脂によりレールを固定する構造に関するものでもない。

そうすると、甲第1号証、甲第3号証及び甲第5号証は、いずれも、振動吸収板を走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して固定し、且つ、調整板を走行レールおよび脱線防止レールの敷設位置に沿って間隔をおいて置く構成を開示するものではない。
また、甲第2号証及び甲第4号証?甲第13号証も、前記構成を開示するものではない。
そして、甲第3号証に、弾性帯状帯(振動吸収板)及びパッド(調整板)をレールの敷設方向に連続して置く構成が開示され、甲第5号証に、部材(振動吸収板又は調整板)によりレールを連続的または間欠的に支持する構成が開示されていたとしても、これに基づいて、振動吸収板を走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して固定し、且つ、調整板を走行レールおよび脱線防止レールの敷設位置に沿って間隔をおいて置くことによって、走行レールの底部下面と振動吸収板との間の空間にポリウレタンの充填層が形成され、調整板が振動吸収板に固定されると共に走行レール自体も強固に固定されるという、特許明細書の段落【0089】に記載された作用を、当業者が予測することは困難である。
さらに、本件発明1は、振動吸収板を走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して固定し、且つ、調整板を走行レールおよび脱線防止レールの敷設位置に沿って間隔をおいて置くことにより、ポリウレタンによってレールの下部フランジ及びウエブの全面が拘束されていることと相まって、列車通過時にレールが敷設方向の長い範囲にわたって適切に沈むので、列車の乗り心地がよくなると共に、ポリウレタンによる凹部側面からのレール拘束に加えて、凹部底面からのレール拘束が調整板間でなされ、レールの温度収縮によって発生するレール軸力に対する拘束力が増して、レールの熱収縮による応力集中が回避される作用効果を有するものであり、当該作用効果は、甲第1号証、甲第3号証及び甲第5号証に記載された技術に比して、格別顕著なものである。

(ウ)本件発明1についてのむすび
したがって、相違点1、4、5について検討するまでもなく、甲1発明及び甲第1号証?甲第13号証に記載された技術に基づいて、本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

(3)本件発明2について
(ア)本件発明2と甲1発明との対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
i) 甲1発明の「レール」は、本件発明2の「走行レール」に相当し、以下同様に、「溝」は「凹部」に、「コンクリート床板」は「軌道の基礎部」に、「溝の底」は「凹部の底面」に、「樹脂固定軌道の施工方法」は「レールの据付方法」に、それぞれ相当する。
ii) 甲1発明の「樹脂固定軌道の施工方法」(レールの据付方法)において、「レール」(走行レール)は、「コンクリート床板」(軌道の基礎部)の「溝の底に」「コルクパッドを敷き」「その上に置」かれるものであるのだから、前記「溝」(凹部)は、前記「レール」を収納するために、「コンクリート床板」の上面に形成されるものであるということができる。また、上記(1)のii)に示したように、甲第1号証には、曲線部の内軌道レールに「護輪軌条」(本件発明2の「脱線防止レール」に相当する。)を設けることが開示されており、ここで、「護輪軌条」が、「レール」と並列して所定間隔をおくように互いに連結して設けられるものであることは、当業者にとって常識であるから、上述した「レール」を収納するための前記「溝」に、前記「護輪軌条」も同様に収納させるようにすることは、当業者にとって自明の事項である。したがって、甲1発明の「樹脂固定軌道の施工方法」は、「軌道の基礎部上面に、走行レールと、当該走行レールに所定間隔をおいて並列に設けられる脱線防止レールとを収納するための凹部を形成するレール溝形成工程」を実質的に含む点で、本件発明2と共通するものであるといえる。
iii) 甲1発明の「樹脂固定軌道の施工方法」は、「溝の底」(凹部の底面)に「コルクパッドを敷」くものであるが、前記「コルクパッド」は、本件発明2の、(凹部の底面に固定する)「振動吸収板」に相当し、また、甲1発明の前記「敷」くことと、本件発明2の「接着固定する」こととは、「敷」くことにおいて共通する。また、「溝」(凹部)に、「レール」(走行レール)と「護輪軌条」(脱線防止レール)とが並列に設けられることは、上記ii)に説示したとおりであり、さらに、このとき、前記「コルクパッド」(振動吸収板)を、「レール」と同様に車輪が当たる「護輪軌条」のためにも利用することは、当業者にとって自明である。したがって、甲1発明の「樹脂固定軌道の施工方法」は、「走行レールと脱線防止レールとが並列する凹部の底面に、振動吸収板を敷く走行・脱線防止レールの振動吸収板の敷設工程」を実質的に含む点で、本件発明2と共通するものであるといえる。
iv) 甲1発明の「樹脂固定軌道の施工方法」は、「レール」(走行レール)を置く工程を含むものであり、また、上記ii) に説示したように、「レール」を収納するための「溝」(凹部)に「護輪軌条」(脱線防止レール)も収納させる場合には、「護輪軌条」(脱線防止レール)を置く工程も当然含むものであり、さらに、甲1発明においてレールを「置」くことと、本件発明2において、走行レールおよび脱線防止レールを、「置き位置決めする」こととは、「置」くことにおいて共通するから、甲1発明の「樹脂固定軌道の施工方法」は、「走行レール及び脱線防止レールを置く走行・脱線防止レール設置工程」を実質的に含む点で、本件発明2と共通するものであるといえる。
v) 甲1発明の「樹脂固定軌道の施工方法」は、「レール」(走行レール)を「置」いて、「樹脂」を「溝」(凹部)の「隙間に注入」し、「連続的にレールと溝との隙間を埋めていく」ものであるが、土木建設施工現場において注入・使用する樹脂に「セルフレベリング性」を持たせること及び当該樹脂の注入後に「硬化」させることは当業者にとって常識であり、また、上記ii) に説示したように、「レール」を収納するための「溝」に「護輪軌条」(脱線防止レール)も並列して収納させた(置かれた)場合には、「溝」への前記「樹脂」の注入及び硬化が、その箇所では、前記「レール」だけでなく、前記「護輪軌条」にも及ぶことは明らかである。そして、さらに、甲1発明においてレールが「置」かれたことと、本件発明2において、走行レールおよび脱線防止レールが、「位置決めされた」こととは、「置」かれたことにおいて共通する。したがって、甲1発明の「樹脂固定軌道の施工方法」は、「走行レールおよび脱線防止レールが置かれた状態で、当該走行レールと脱線防止レールとが並列する箇所の凹部に、セルフレベリング性を有する樹脂を注入して硬化させる走行・脱線防止レールの並列部分の樹脂注入硬化工程」を実質的に含む点で、本件発明2と共通するものであるといえる。
vi) レールを施工するにあたり、連続するレールを、順次、同様の方法で据付・接続していくことは一般的であるから、甲1発明には、「走行レール」の据付方法に加えて、「接続走行レール」の据付方法についても開示されているということができる。すなわち、上記i)?v)において説示した事項に加え、甲1発明は、「軌道の基礎部上面に、上記走行レールの接続端部に接続される接続走行レールを収納するための凹部を形成する接続走行レール溝形成工程と、当該接続走行レール用の上記凹部の底面に振動吸収板を置く接続走行レールの振動吸収板の敷設工程と、上記接続走行レールを置く接続走行レール設置工程と、上記接続走行レールが置かれた上記凹部に、セルフレベリング性を有する樹脂を注入して硬化させる接続走行レールの樹脂注入硬化工程」もまた実質的に含むものである。

以上のことから、本件発明2と甲1発明とは、
「軌道の基礎部上面に、走行レールと、当該走行レールに所定間隔をおいて並列に設けられる脱線防止レールとを収納するための凹部を形成するレール溝形成工程と、
上記凹部の底面に振動吸収板を敷く振動吸収板の敷設工程と、
上記走行レール及び脱線防止レールを置く走行・脱線防止レール設置工程と、
上記走行レールおよび脱線防止レールが置かれた状態で、当該走行レールと脱線防止レールとが並列する箇所の上記凹部に、セルフレベリング性を有する樹脂を注入して硬化させる走行・脱線防止レール並列部分の樹脂注入硬化工程と、
軌道の基礎部上面に、上記走行レールの接続端部に接続される接続走行レールを収納するための凹部を形成する接続走行レール溝形成工程と、当該接続走行レール用の上記凹部の底面に振動吸収板を置く接続走行レールの振動吸収板の敷設工程と、上記接続走行レールを置く接続走行レール設置工程と、上記接続走行レールが置かれた上記凹部に、セルフレベリング性を有する樹脂を注入して硬化させる接続走行レールの樹脂注入硬化工程と、
を含むことを特徴とするレールの据付方法。」である点で一致するが、次の点で相違する。

【相違点1】:本件発明2は、「脱線防止レール」が「走行レールより短く形成され」、「凹部」が、「走行レールの接続端部が脱線防止レールの端部よりも敷設方向に突き出る状態で収納する」ためのものである構成を備えるのに対し、甲1発明は、前記構成について明らかでない点。
【相違点2】:本件発明2は、振動吸収板を、凹部の底面に、「接着剤を塗布して」「接着固定」するのに対し、甲1発明は、単に「敷」くものである点。
【相違点3】:本件発明2は、「走行レールおよび脱線防止レールの各レベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板」を「振動吸収板上に置く走行・脱線防止レールの調整板設置工程」を含み、また、「接続走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板」を「振動吸収板上に置く接続走行レールの調整板設置工程」を含むものであるのに対し、甲1発明は、前記した如くの、各「調整板設置工程」を含むものではない点。
【相違点4】:本件発明2は、調整板設置工程(走行・脱線防止レールの調整板設置工程、接続走行レールの調整板設置工程)において、調整板を、「走行レールおよび脱線防止レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて」置き、また、「接続走行レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて」置く構成を備えるのに対し、甲1発明は、前記各構成について明らかでない点。
【相違点5】:本件発明2は、走行・脱線防止レール設置工程が、「調整板上に、スペーサによって互いに間隔が保持された走行レールおよび脱線防止レールを、走行レールの接続端部が脱線防止レールの端部よりも敷設方向に突き出る状態で置き、位置決めをする」構成を備え、また、接続走行レール設置工程が、「調整板上に、接続走行レールを置き位置決めをする」のに対し、甲1発明は、走行レール、脱線防止レール及び接続走行レールを置く点以外は明らかでない点。
【相違点6】:本件発明2は、樹脂注入硬化工程において使用する樹脂として、「ポリウレタン」を採用しているのに対し、甲1発明においては、その点が明らかでない点。なお、相違点6に関し、被請求人は相違点であるとの主張をしていない。
【相違点7】:本件発明2は、振動吸収板の敷設を「接続走行レールの接続端部を除く」凹部に行い、また、樹脂の注入を「少なくとも走行レールとの接続端部を除い」た凹部に行い、さらに、走行レール接続部分の樹脂注入硬化工程として「ポリウレタンで固定された走行レールおよび接続走行レールの接続端部同士を接続した後に、接続された接続端部のある箇所の凹部にセルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる」構成を備えるのに対し、甲1発明は、前記構成を備えたものではない点。

(イ)相違点についての判断
【相違点3】について
上記(1)では、甲1発明(甲1号証に記載された発明)の認定を、第431頁?434頁の「S9-1-9. LRT対応樹脂固定軌道(INFUNDO)の試験施工と特性確認試験について」と題した論文に基づいて行ったが、同じく甲第1号証の第427頁?第430頁の「S9-1-8.LRT対応の新しい軌道構造および分岐器の動向と日本への適用について」と題した論文の、第429頁の図-1には、溝内のレール下に高さ調整パッドを設け、その上にレールを設置した点が開示されている(記載事項1-7)。ここで、前記開示された点に関し、甲第1号証の第429頁の図-1の拡大図として、弁駁書で提出された甲第1号証の2によれば、溝内に設置するレールの下に設けた前記高さ調整パッドの下の溝の底に、さらに、パッド状の部材が敷かれている点を看て取ることができ(記載事項19-1)、前記パッド状の部材は、溝の底に敷かれたものであることから、甲1発明のコルクパッドに対応すると解するのが相当である。そうすると、甲第1号証には、甲1発明の他に、溝の底に敷かれたコルクパッドの上に、レールの高さ調整パッドを設けることが開示されているということができる。
ここで、上記(ア)のi)及びiii)に示したように、「溝の底」、「コルクパッド」、「レール」は、それぞれ、「凹部の底面」、「振動吸収板」、「走行レール」に相当し、また、前記「レールの高さ調整パッド」は、レールの「レベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板」に外ならない。さらに、上記(ア)のii) において説示したように、レールを収納するための「溝」(凹部)に「護輪軌条」(脱線防止レール)も収納させる場合に、前記「レールの高さ調整パッド」に、レール同様に高さ調整が必要となる前記「護輪軌条」の「レベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板」としての機能を付与することは、当業者にとって自明である。
したがって、甲第1号証には、「走行レールおよび脱線防止レールの各レベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、振動吸収板上に置く」こと、及びその設置工程(走行・脱線防止レールの調整板設置工程)が開示されているということができ、さらに、上記(ア)のiv)に示したように、連続するレールを、順次、同様の方法で据付ることは一般的であるから、同様にして、「接続走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、振動吸収板上に置く」こと、及びその設置工程(接続走行レールの調整板設置工程)もまた開示されているということができる。
そうすると、甲1発明に、甲第1号証に開示された上記の技術を適用して、【相違点3】に係る本件発明2の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たものであるといえる。

【相違点4】について
甲第1号証の第429頁の図-1(断面図)には、溝内のレール下に高さ調整パッドが設けられ、その上にレールが設置された点が記載されており(記載事項1-7)、前記第429頁の図-1の拡大図として弁駁書において提出された甲第1号証の2には、溝内に設置するレールの下に設けた高さ調整パッドの下の溝の底に、パッド状の部材が敷かれている点が記載されており(記載事項19-1)、第431頁の図1(断面図)には、溝の底にコルクパッドが設けられ、その上にレールを設置した点が記載されている(記載事項1-8)が、上記したように、前記第429頁の図-1と、前記第431頁の図1とは異なる論文に記載されたものであり、後者の図1が記載された論文には、高さ調整パッドに関する記載が一切無いだけでなく、むしろ、「コルクパッドを敷き、さびやゴミを落としたレールを置く」(記載事項1-4)という記載があることからすれば、後者の図1に記載されるコルクパッドの上には、レールが直接置かれるものであると解するのが相当である。したがって、前記第429頁の図-1の断面図と、前記第431頁の図1の断面図とを合わせ見て、高さ調整パッド(調整板)は、コルクパッドの上に、「レールの敷設位置に沿って間隔をおいて」置かれるものであるとはいい得ない。
続いて、同じく、甲第1号証には、「この方式は、レールの支持に金具を使用せず、粘弾性体(コークラスト)でレールを包み込むために、騒音・振動が吸収される」(記載事項1-1)と記載されているが、ここで、「レールを包み込む」として説明される状態が、粘弾性体によりレールの両側部を広く挟み込んでいるだけではなく、粘弾性体が下部にまで回り込んでいることを示すものであるとはいえず、また、仮に下部にまで回り込んでいることを示すものであったとしても、それが、レールの下部に設けられた高さ調整パッド(調整板)を、「レールの敷設位置に沿って間隔をおいて」置くことのみによって実現するものとはいい得ず、例えば、間隔をおかずに連続して置かれた高さ調整パッドに、浅い切り込みを入れたり、孔を設けたりすることによっても実現するものであるから、いずれにしろ、前記の「レールを包み込む」という記載によって、高さ調整パッドが、「レールの敷設位置に沿って間隔をおいて」置かれた状態が説明されているとはいい得ない。
次に、甲第3号証には、「このレールの固着の方法は以下の原理を特徴とする:
? レールが弾性帯状板上に連続的に支持されること
? レールが溝内で弾性的固着によってガイドされること・・・
? レールの側面(profile)が弾性的な注入複合材によって固着されること・・・
弾性で連続的に支持されたレールの長所は、単一レール支持材間の二次的な湾曲に起因する力学的な力が存在しないこと、・・・」(記載事項3-2)と記載され、また「溝部の底部には、弾性帯状帯(an elastic strip)が敷かれ、レールがこの上面に、溝部内に収まるように置かれるが、ここでレールフットの下側にはパッドが詰められ」(記載事項3-3)と記載されているが、ここで、本件発明1の「振動吸収板」、「調整板」にそれぞれ相当する、「弾性帯状帯(an elastic strip)」、「パッド」は、前記の「単一レール支持材間の二次的な湾曲に起因する力学的な力が存在しない」という長所をもたらすために、ともに、「レールの敷設方向に連続して」置かれていると解するのが相当である。
続いて、同じく、甲第3号証には、溝部の下側に「弾性材の平準化シム」と記載され(記載事項3-5)、また、「埋め込み型レール構造は、例えばコルクとウレタンからなる複合材を介してのレールの連続的な支持を伴う。これらレールはこの弾性複合材を介して固着されるが、・・・レールヘッドを除いてレールの側面(profile)のほぼ全体を包囲する。」(記載事項3-1)と記載されている。ここで、「弾性材の平準化シム」は、本件発明1の「調整板」に相当するが、前記「弾性材の平準化シム」が、「レールの敷設位置に沿って間隔をおいて」置かれることは、前記各記載から明らかではない。また、仮に、「profile」が、前記「側面」ではなく、下面及び上面も含めた「輪郭」の意であったとしても、前記弾性複合材が、当該「輪郭」の「ほぼ全体を包囲する」ことは、例えば、間隔をおかずに連続して置かれた前記「弾性材の平準化シム」に、浅い切り込みを入れたり、孔を設けたりすることによっても実現するものであるから、前記各記載が、「弾性材の平準化シム」が、「レールの敷設位置に沿って間隔をおいて」置かれた状態を説明しているとはいい得ない。また、前記各記載は、振動吸収板がレールの敷設方向に連続して敷かれる状態を説明したものでもない。
さらに、同じく、甲第3号証の第255頁の図9.49には、溝の底がレールの敷設方向に連続して黒灰色で、所定間隔で黄色の模様或いは部材が溝の底の全幅にわたって設けられている点が記載されている(記載事項3-6)が、前記「黒灰色」のもの及び「黄色」のものが、それぞれ何であるのかは明確でない。
次に、甲第5号証には、「本発明はまた平坦な表面上に所望の傾斜をもつてレールを支持するための傾斜付弾性詰材を提供する。・・・詰材はレールに沿つて一定間隔で配置される個々の要素であり、或はまた各レールの下で連続したものとすることもできる。」(記載事項5-1)と記載され、また、「平坦な厚板軌条基礎上にレールを連続的または間欠的に支持する傾斜した詰材」(記載事項5-2)と記載され、さらに、第2図には、コンクリート厚板5上に矩形弾性詰材7が設置され、その上に傾斜要素8が設置され、この傾斜要素8の上にレール1が載置されているものが(記載事項5-4)、第3図には、コンクリート厚板5上に矩形弾性着座詰材9が設置され、その上に傾斜部材10が設置され、この傾斜部材10の上にレール1が載置されているものが(記載事項5-5)、第1図には、レールを傾斜支持する弾性傾斜詰材6が1段構成であるものが(記載事項5-6)記載されており、傾斜を有する前記各詰材(傾斜支持詰材8、傾斜部材10、弾性傾斜詰材6)は、傾斜をもつてレールを支持するためのものであるから、少なくとも、傾斜の度合いによりレールの高さを調整する機能を有し、本件発明2の「調整板」に対応するものといえる。

上記したように、甲第1号証及び甲第3号証は、いずれも、調整板を、走行レール、脱線防止レール及び接続走行レールの敷設位置に沿って間隔をおいて置く構成を開示するものではなく、甲第2号証及び甲第4号証?甲第13号証もまた、前記構成を開示するものではない。
また、甲第5号証は、傾斜を有する「詰材」(調整板)によりレールを間欠的に支持する構成を開示するものではあるが、一方で、甲第5号証に記載の技術は、樹脂によりレールを固定する構造に関するものではないから、樹脂によるレールの据付方法に係る甲1発明に適用して、調整板を走行レール、脱線防止レール及び接続走行レールの敷設位置に沿って間隔をおいて置くことによって、走行レールの底部下面と振動吸収板との間の空間にポリウレタンの充填層が形成され、調整板が振動吸収板に固定されると共に走行レール自体も強固に固定されるという、特許明細書の段落【0089】に記載された作用を、当業者が予測することは困難である。
さらに、本件発明2は、調整板を、走行レール、脱線防止レール及び接続走行レールの敷設位置に沿って間隔をおいて置くことにより、ポリウレタンによってレールの下部フランジ及びウエブの全面が拘束されていることと相まって、列車通過時にレールが敷設方向の長い範囲にわたって適切に沈むので、列車の乗り心地がよくなると共に、ポリウレタンによる凹部側面からのレール拘束に加えて、凹部底面からのレール拘束が調整板間でなされ、レールの温度収縮によって発生するレール軸力に対する拘束力が増して、レールの熱収縮による応力集中が回避される作用効果を有するものであり、当該作用効果は、甲第1号証、甲第3号証及び甲第5号証に記載された技術に比して、格別顕著なものである。

(ウ)本件発明2についてのむすび
したがって、相違点1、2、5?7について検討するまでもなく、甲1発明及び甲第1号証?甲第13号証に記載された技術に基づいて、本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

(4)本件発明3について
(ア)本件発明3と甲1発明との対比
本件発明3と甲1発明とを対比する。
i) 甲1発明の「レール」は、本件発明3の「走行レール」に相当し、以下同様に、「溝」は「凹部」に、「コンクリート床板」は「軌道の基礎部」に、「溝の底」は「凹部の底面」に、「樹脂固定軌道の施工方法」は「レールの据付方法」に、それぞれ相当する。
ii) 上記(3)(ア)ii)に説示した事項と同様に、甲1発明の「樹脂固定軌道の施工方法」は、「軌道の基礎部上面に、走行レールと、当該走行レールに所定間隔をおいて並列に設けられる脱線防止レールとを収納するための凹部を形成するレール溝形成工程」を実質的に含む点で、本件発明3と共通するものであるといえる。
iii) 上記(3)(ア)iii)に説示した事項と同様に、甲1発明の「樹脂固定軌道の施工方法」は、「走行レールと脱線防止レールとが並列する凹部の底面に、振動吸収板を敷く走行・脱線防止レールの振動吸収板の敷設工程」を実質的に含む点で、本件発明3と共通するものであるといえる。
iv) 上記(3)(ア)iv)に説示した事項と同様に、甲1発明の「樹脂固定軌道の施工方法」は、「走行レール及び脱線防止レールを置く走行・脱線防止レール設置工程」を実質的に含む点で、本件発明3と共通するものであるといえる。
v) 上記(3)(ア)vi)に説示した事項と同様に、甲1発明は、「軌道の基礎部上面に、上記走行レールの接続端部に接続される接続走行レールを収納するための凹部を形成する接続走行レール溝形成工程と、当該接続走行レール用の上記凹部の底面に振動吸収板を置く接続走行レールの振動吸収板の敷設工程と、上記接続走行レールを置く接続走行レール設置工程」を実質的に含むものである。
vi) 甲1発明の「樹脂固定軌道の施工方法」は、「レール」(走行レール)を「置」いて、「樹脂」を「溝」(凹部)の「隙間に注入」し、「連続的にレールと溝との隙間を埋めていく」ものであるが、土木建設施工現場において注入・使用する樹脂に「セルフレベリング性」を持たせること及び当該樹脂の注入後に「硬化」させることは当業者にとって常識であり、また、上記iv) に説示したように、走行レール及び脱線防止レールが置かれた場合には、凹部への樹脂の注入及び硬化が、走行レールだけでなく、脱線防止レールにも及ぶことは明らかである。したがって、甲1発明の「樹脂固定軌道の施工方法」は、「走行レールおよび脱線防止レールが置かれた状態で、当該走行レールと脱線防止レールとが並列する箇所の凹部に、セルフレベリング性を有する樹脂を注入して硬化させる樹脂注入硬化工程」を実質的に含む点で、本件発明3と共通するものであるといえる。

以上のことから、本件発明3と甲1発明とは、
「軌道の基礎部上面に、走行レールと、当該走行レールに所定間隔をおいて並列に設けられる脱線防止レールとを収納するための凹部を形成するレール溝形成工程と、
上記凹部の底面に振動吸収板を敷く振動吸収板の敷設工程と、
上記走行レール及び脱線防止レールを置く走行・脱線防止レール設置工程と、
軌道の基礎部上面に、上記走行レールの接続端部に接続される接続走行レールを収納するための凹部を形成する接続走行レール溝形成工程と、当該接続走行レール用の上記凹部の底面に振動吸収板を置く接続走行レールの振動吸収板の敷設工程と、上記接続走行レールを置く接続走行レール設置工程と、
走行レールおよび脱線防止レールが置かれた状態で、当該走行レールと脱線防止レールとが並列する箇所の凹部に、セルフレベリング性を有する樹脂を注入して硬化させる樹脂注入硬化工程と、
を含むことを特徴とするレールの据付方法。」である点で一致するが、次の点で相違する。

【相違点1】?【相違点4】:上記(3)(ア)に示した、本件発明2と甲1発明との【相違点1】?【相違点4】で、本件発明3と甲1発明とは相違する。
【相違点5】:本件発明3は、走行・脱線防止レール設置工程が、「調整板上に、スペーサによって互いに間隔が保持された走行レールおよび脱線防止レールを、走行レールの接続端部が脱線防止レールの端部よりも敷設方向に突き出る状態で置」く構成を備え、また、接続走行レール設置工程が、「調整板上に、接続走行レールを置」くのに対し、甲1発明は、走行レール、脱線防止レール及び接続走行レールを置く点以外は明らかでない点。
【相違点6】:本件発明3は、振動吸収板の敷設を「接続走行レールの接続端部を除く」凹部に行うのに対し、甲1発明は、この点が明らかでない点。
【相違点7】:本件発明3は、「上記調整板上に置かれた上記走行レールと、上記調整板上に置かれた上記接続走行レールとの接続端部同士を接続する走行レールの接続工程と、上記走行レール、上記脱線防止レールおよび上記接続走行レールが位置決めされた状態で、上記走行レールと上記脱線防止レールとが並列する箇所の上記凹部と接続された上記接続端部がある箇所の上記凹部とに、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる接続走行レールの樹脂注入硬化工程」を構成として含むのに対し、甲1発明は、前記構成に関し、「走行レールおよび脱線防止レールが置かれた状態で、当該走行レールと脱線防止レールとが並列する箇所の凹部に、セルフレベリング性を有する樹脂を注入して硬化させる樹脂注入硬化工程」を含む以外は明らかでない点。

(イ)相違点についての判断
【相違点3】及び【相違点4】についての判断は、上記(3)(イ)に説示した、本件発明2と甲1発明との【相違点3】及び【相違点4】についての判断と同様である。

(ウ)本件発明3についてのむすび
したがって、相違点1、2、5?7について検討するまでもなく、甲1発明及び甲第1号証?甲第13号証に記載された技術に基づいて、本件発明3の構成とすることは、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

(5)本件発明4について
本件発明4は、実質的に、本件発明1における「脱線防止レール」及び「スペーサ」に関する構成を省いたものである。
そうすると、上記(2)(イ)に説示した、本件発明1と甲1発明との【相違点2】及び【相違点3】についてした判断と同様の理由により、甲1発明及び甲第1号証?甲第13号証に記載された技術に基づいて、本件発明4の構成とすることは、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

(6)本件発明5について
本件発明5は、実質的に、本件発明2における「脱線防止レール」及び「スペーサ」に関する構成を省くとともに、本件発明2の「振動吸収板敷設工程」において、振動吸収板の接着固定を施す箇所を、「走行レールの接続端部を除く」箇所に限定し、同じく本件発明2の(走行レールの)「樹脂注入硬化工程」において樹脂を注入して硬化させる箇所を、凹部の「少なくとも走行レールの接続端部を除く」箇所に限定したものである。
そうすると、上記(3)(イ)に説示した、本件発明2と甲1発明との【相違点3】及び【相違点4】についてした判断と同様の理由により、甲1発明及び甲第1号証?甲第13号証に記載された技術に基づいて、本件発明5の構成とすることは、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

(7)本件発明6について
本件発明6は、実質的に、本件発明3における「脱線防止レール」及び「スペーサ」に関する構成を省いたものである。
そうすると、上記(4)(イ)に説示した、本件発明3と甲1発明との【相違点3】及び【相違点4】についてした判断と同様の理由により、甲1発明及び甲第1号証?甲第13号証に記載された技術に基づいて、本件発明6の構成とすることは、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

(8)本件発明7?14について
本件発明7?14は、いずれも、本件発明1?6を直接的あるいは間接的に引用する発明であって、本件発明1?6を特定するために必要な事項をすべて含むものである。
本件発明1?6は、上記(2)?(7)に記載したとおり、甲1発明及び甲第1号証?甲第13号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易になし得たものであるとはいえないのだから、同様の理由により、甲1発明及び甲第1号証?甲第13号証に記載された技術に基づいて、本件発明7?14の構成とすることは、当業者が容易になし得たものであるとはいえない

(9)本件発明15について
(ア)甲第1号証に記載された発明
上記第5.(1)に摘示した各記載事項(記載事項1-2、1-4、1-8)によれば、甲第1号証には、「コンクリート床板につけられたレールより少し大きめの溝の底に敷かれたコルクパッドと、その上に置かれたレールと、レールを置いた前記溝に注入される樹脂からなる樹脂固定軌道の構造。」の発明(以下、「甲1’発明」という。)が記載されているものと認められる。

(イ)本件発明15と甲1’発明との対比
i) 甲1’発明の「レール」は、本件発明15の「走行レール」に相当し、以下同様に、「コンクリート床板」は「軌道の基礎部」に、「溝」は「凹部」に、「溝の底」は「凹部の底面」に、「樹脂固定軌道の構造」は「レールの据付構造」に、それぞれ相当する。
ii) 甲第1号証には、曲線部の内軌道レールに「護輪軌条」(本件発明15の「脱線防止レール」に相当する。)を設けることが開示されており(記載事項1-5、1-9)、ここで、護輪軌条が、レールと所定間隔をおくように互いに連結して設けるものであることは、当業者にとって常識である。また、甲1’発明において、「レール」(走行レール)は、「コンクリート床板」(軌道の基礎部)につけられた「溝の底」(凹部の底面)に「敷かれたコルクパッド」の「上に置かれた」ものであるのだから、前記「溝」(凹部)は、前記レールを置くために、コンクリート床板の上面に形成されるものであるということができる。続いて、前記「コルクパッド」は、本件発明15の、(凹部の底面の)「振動吸収板」に相当し、また、甲1’発明の前記「敷かれた」点と、本件発明1の「接着固定された」点とは、「敷かれた」点において共通する。したがって、甲1’発明の「樹脂固定軌道の構造」(レールの据付構造)は、「走行レールと当該レールに所定間隔をおいて設けられた脱線防止レールとの据付構造」が、「軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に敷かれた振動吸収板」と、「走行レールと脱線防止レール」とを実質的に備えたものである点で、本件発明15と共通するものである。
iii) 甲1’発明は、「コルクパッド」(振動吸収板)の上に「レール」(走行レール)を置いた「溝」(凹部)に「樹脂」を「注入」するものであるが、レール及びコルクパッドが溝に収納された状態で樹脂が注入されること、及び、注入された樹脂が、硬化させた樹脂層となることは当業者にとって常識であり、また、上記ii)に示したように、レールに護輪軌条を設けるときには、当該護輪軌条(脱線防止レール)をレールと所定間隔をおくように互いに連結して設けることが常識であるから、甲1’発明は、「走行レール、及び振動吸収板が凹部に収納された状態で注入して硬化させた樹脂層」を実質的に備えた点で、本件発明15と共通するものであるといえる。

以上のことから、本件発明15と甲1’発明とは、
「走行レールと当該レールに所定間隔をおいて設けられた脱線防止レールとの据付構造であって、軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に敷かれた振動吸収板と、走行レールと脱線防止レールと、走行レール、及び振動吸収板が凹部に収納された状態で注入して硬化させた樹脂層とを備えたレールの据付構造」である点で一致するが、次の点で相違する。

【相違点1】:本件発明15は、振動吸収板が、凹部の底面に、「接着剤層を介して接着固定」されるのに対し、甲1’発明は、単に「敷かれ」るものである点。
【相違点2】:本件発明15は、「振動吸収板上に設けられ、走行レールと脱線防止レールの各レベルを所定のレベルにする調整板」を備えるのに対し、甲1’発明は、前記の如くの「調整板」を備えたものではない点。
【相違点3】:本件発明15は、振動吸収板を、「走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して」固定し、調整板を、「走行レールと脱線防止レールの敷設位置に沿って間隔をおいて」設ける構成を備えるのに対し、甲1’発明は、前記構成について明らかでない点。
【相違点4】:本件発明15は、走行レールと脱線防止レールとが、「調整板上に位置決めされ、スペーサによって互いの間隔が保持され」た構成を備えるのに対し、甲1’発明は、前記構成について明らかでない点。
【相違点5】:本件発明15は、樹脂として、「ポリウレタン」を採用しているのに対し、甲1’発明においては、その点が明らかでない点。なお、相違点5に関し、被請求人は相違点であるとの主張をしていない。

(ウ)相違点についての判断
【相違点2】について
上記(ア)では、甲1’発明の認定を、第431頁?434頁の「S9-1-9. LRT対応樹脂固定軌道(INFUNDO)の試験施工と特性確認試験について」と題した論文に基づいて行ったが、同じく甲第1号証の第427頁?第430頁の「S9-1-8.LRT対応の新しい軌道構造および分岐器の動向と日本への適用について」と題した論文の、第429頁の図-1には、溝内のレール下に高さ調整パッドを設け、その上にレールを設置した点が開示されている(記載事項1-7)。ここで、前記開示された点に関し、甲第1号証の第429頁の図-1の拡大図として、弁駁書で提出された甲第1号証の2によれば、溝内に設置するレールの下に設けた前記高さ調整パッドの下の溝の底に、さらに、パッド状の部材が敷かれている点を看て取ることができ(記載事項19-1)、前記パッド状の部材は、溝の底に敷かれたものであることから、甲1’発明のコルクパッドに対応すると解するのが相当である。そうすると、甲第1号証には、甲1’発明の他に、「コルクパッドの上に設けられたレールの高さ調整パッド」が開示されているということができる。
ここで、上記(イ)のi) 及びii) に示したように、「コルクパッド」、「レール」は、それぞれ、「振動吸収板」、「走行レール」に相当し、また、前記「高さ調整パッド」は、レールのレベルを所定のレベルにする調整板に外ならない。さらに、上記(イ)のii) において説示したように、レールと所定間隔をおくように互いに連結した「護輪軌条」(脱線防止レール)を設ける場合に、前記「高さ調整パッド」に、レール同様に高さ調整が必要となる前記護輪軌条のレベルを所定のレベルにする」機能を付与することは、当業者にとって自明である。
したがって、甲第1号証には、「振動吸収板上に設けられ、走行レールと脱線防止レールの各レベルを所定のレベルにする調整板」が開示されているということができる。
そうすると、甲1’発明に、甲第1号証に開示された上記の技術を適用して、【相違点2】に係る本件発明15の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たものであるといえる。

【相違点3】について
甲1号証には、「2.2 施工方法 レールより少し大きめの溝がついたコンクリート床版をまず地盤上に施工し、溝の底にはコルクパッドを敷き、さびやゴミを落としたレールを置く。・・・Edilon社製樹脂を溝の隙間に注入し、連続的にレールと溝との隙間を埋めていく。」(記載事項1-4)と記載されているが、この記載は、「コルクパッド」(振動吸収板)が「敷」かれる状態が、レールの敷設方向に間隔をおいてではなく、連続したものであることを明確に説明したものであるとはいい得ず、また、Edilon社製樹脂が「連続的にレールと溝との隙間を埋めていく」ことは、単に、当該樹脂の連続性の説明に過ぎず、同じく、「コルクパッド」が「敷」かれる状態を明確に説明したものではない。また、調整板については、何ら言及されていない。
続いて、同じく、甲第1号証には、「在来軌道では、レールをまくら木で断続的に支持するのに対し、Infundo軌道ではレールを連続的に支持する」(記載事項1-6)と記載されているが、ここでの「連続的」な「支持」が、レールと溝との隙間を埋めた樹脂による支持を説明したものであることは、同じく、甲第1号証の「Infundoと称する樹脂固定軌道というべき新型軌道構造に注目し、・・・Infundoは、砕石やまくら木及びレール締結装置を持たない、従来の軌道とは全く異なる構造で、それらの機能をコンクリート床板や樹脂などによって実現する」(記載事項1-2)という記載から推認することができ、ここにおいても、レールを置く「コルクパッド」(振動吸収板)が「敷」かれる状態が、レールの敷設方向に間隔をおいてではなく、連続したものであることが明確に説明されているとはいい得ない。また、調整板が「レールの敷設位置に沿って間隔をおいて」置かれることについては、何ら言及されていない。
続いて、同じく、甲第1号証の第429頁の図-1(断面図)には、溝内のレール下に高さ調整パッドが設けられ、その上にレールが設置された点が記載されており(記載事項1-7)、前記第429頁の図-1の拡大図として弁駁書において提出された甲第1号証の2には、溝内に設置するレールの下に設けた高さ調整パッドの下の溝の底に、パッド状の部材が敷かれている点が記載されており(記載事項19-1)、第431頁の図1(断面図)には、溝の底にコルクパッドが設けられ、その上にレールを設置した点が記載されている(記載事項1-8)が、上記したように、前記第429頁の図-1と、前記第431頁の図1とは異なる論文に記載されたものであり、後者の図1が記載された論文には、高さ調整パッドに関する記載が一切無いだけでなく、むしろ、「コルクパッドを敷き、さびやゴミを落としたレールを置く」(記載事項1-4)という記載があることからすれば、後者の図1に記載されるコルクパッドの上には、レールが直接置かれるものであると解するのが相当である。したがって、前記第429頁の図-1の断面図と、前記第431頁の図1の断面図とを合わせ見て、高さ調整パッド(調整板)は、コルクパッドの上に、「レールの敷設位置に沿って間隔をおいて」置かれるものであるとはいい得ない。
さらに、同じく、甲第1号証には、「この方式は、レールの支持に金具を使用せず、粘弾性体(コークラスト)でレールを包み込むために、騒音・振動が吸収される」(記載事項1-1)と記載されているが、ここで、「レールを包み込む」として説明される状態が、粘弾性体によりレールの両側部を広く挟み込んでいるだけではなく、粘弾性体が下部にまで回り込んでいることを示すものであるとはいえず、また、仮に下部にまで回り込んでいることを示すものであったとしても、それが、レールの下部に設けられた高さ調整パッド(調整板)を、「レールの敷設位置に沿って間隔をおいて」置くことのみによって実現するものとはいい得ず、例えば、間隔をおかずに連続して置かれた高さ調整パッドに、浅い切り込みを入れたり、孔を設けたりすることによっても実現するものであるから、いずれにしろ、前記の「レールを包み込む」という記載によって、高さ調整パッドが、「レールの敷設位置に沿って間隔をおいて」置かれた状態が説明されているとはいい得ない。また、前記記載は、振動吸収板が敷かれる状態を説明したものでもない。
次に、甲第3号証には、「このレールの固着の方法は以下の原理を特徴とする:
? レールが弾性帯状板上に連続的に支持されること
? レールが溝内で弾性的固着によってガイドされること・・・
? レールの側面(profile)が弾性的な注入複合材によって固着されること・・・
弾性で連続的に支持されたレールの長所は、単一レール支持材間の二次的な湾曲に起因する力学的な力が存在しないこと、・・・」(記載事項3-2)と記載され、また「溝部の底部には、弾性帯状帯(an elastic strip)が敷かれ、レールがこの上面に、溝部内に収まるように置かれるが、ここでレールフットの下側にはパッドが詰められ」(記載事項3-4)と記載されているが、ここで、本件発明1の「振動吸収板」、「調整板」にそれぞれ相当する、「弾性帯状帯(an elastic strip)」、「パッド」は、前記の「単一レール支持材間の二次的な湾曲に起因する力学的な力が存在しない」という長所をもたらすために、ともに、「レールの敷設方向に連続して」置かれていると解するのが相当である。
続いて、同じく、甲第3号証には、溝部の下側に「弾性材の平準化シム」と記載され(記載事項3-5)、また、「埋め込み型レール構造は、例えばコルクとポリウレタンからなる複合材を介してのレールの連続的な支持を伴う。これらレールはこの弾性複合材を介して固着されるが、・・・レールヘッドを除いてレールの側面(profile)のほぼ全体を包囲する。」(記載事項3-1)と記載されている。ここで、「弾性材の平準化シム」は、本件発明1の「調整板」に相当するが、前記「弾性材の平準化シム」が、「レールの敷設位置に沿って間隔をおいて」置かれることは、前記各記載から明らかではない。また、仮に、「profile」が、前記「側面」ではなく、下面及び上面も含めた「輪郭」の意であったとしても、前記弾性複合材が、当該「輪郭」の「ほぼ全体を包囲する」ことは、例えば、間隔をおかずに連続して置かれた前記「弾性材の平準化シム」に、浅い切り込みを入れたり、孔を設けたりすることによっても実現するものであるから、前記各記載が、「弾性材の平準化シム」が、「レールの敷設位置に沿って間隔をおいて」置かれた状態を説明しているとはいい得ない。また、前記各記載は、振動吸収板がレールの敷設方向に連続して敷かれる状態を説明したものでもない。
さらに、同じく、甲第3号証の第255頁の図9.49には、溝の底がレールの敷設方向に連続して黒灰色で、所定間隔で黄色の模様或いは部材が溝の底の全幅にわたって設けられている点が記載されている(記載事項3-6)が、前記「黒灰色」のもの及び「黄色」のものが、それぞれ何であるのかは明確でない。
次に、甲第5号証には、「本発明はまた平坦な表面上に所望の傾斜をもつてレールを支持するための傾斜付弾性詰材を提供する。・・・詰材はレールに沿つて一定間隔で配置される個々の要素であり、或はまた各レールの下で連続したものとすることもできる。」(記載事項5-1)と記載され、また、「平坦な厚板軌条基礎上にレールを連続的または間欠的に支持する傾斜した詰材」(記載事項5-2)と記載され、さらに、第2図には、コンクリート厚板5上に矩形弾性詰材7が設置され、その上に傾斜要素8が設置され、この傾斜要素8の上にレール1が載置されているものが(記載事項5-4)、第3図には、コンクリート厚板5上に矩形弾性着座詰材9が設置され、その上に傾斜部材10が設置され、この傾斜部材10の上にレール1が載置されているものが(記載事項5-5)、第1図には、レールを傾斜支持する弾性傾斜詰材6が1段構成であるものが(記載事項5-6)記載されているが、ここで開示されるのは、あくまで、レールを連続的または間欠的に支持する部材(詰材)に過ぎず、第2図又は第3図に説明される如く2段構成をとるものであったとしても、一方を連続的に、他方を間欠的に配置することまでも開示するものではない。なお、甲第5号証に記載の技術は、樹脂によりレールを固定する構造に関するものでもない。

そうすると、甲第1号証、甲第3号証及び甲第5号証は、いずれも、振動吸収板が、走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して固定され且つ、調整板が、走行レールおよび脱線防止レールの敷設位置に沿って間隔をおいて置かれた構成を開示するものではない。
また、甲第2号証及び甲第4号証?甲第13号証も、前記構成を開示するものではない。
そして、甲第3号証に、弾性帯状帯(振動吸収板)及びパッド(調整板)をレールの敷設方向に連続して置く構成が開示され、甲第5号証に、部材(振動吸収板又は調整板)によりレールを連続的または間欠的に支持する構成が開示されていたとしても、これに基づいて、振動吸収板が、走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して固定され、且つ、調整板が、走行レールおよび脱線防止レールの敷設位置に沿って間隔をおいて置かれたことによって、走行レールの底部下面と振動吸収板との間の空間にポリウレタンの充填層が形成され、調整板が振動吸収板に固定されると共に走行レール自体も強固に固定されるという、特許明細書の段落【0089】に記載された作用を、当業者が予測することは困難である。
さらに、本件発明15は、振動吸収板が、走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して固定され、且つ、調整板が、走行レールおよび脱線防止レールの敷設位置に沿って間隔をおいて置かれたことにより、ポリウレタンによってレールの下部フランジ及びウエブの全面が拘束されていることと相まって、列車通過時にレールが敷設方向の長い範囲にわたって適切に沈むので、列車の乗り心地がよくなると共に、ポリウレタンによる凹部側面からのレール拘束に加えて、凹部底面からのレール拘束が調整板間でなされ、レールの温度収縮によって発生するレール軸力に対する拘束力が増して、レールの熱収縮による応力集中が回避される作用効果を有するものであり、当該作用効果は、甲1号証、甲第3号証及び甲第5号証に記載された技術に比して、格別顕著なものである。

(エ)本件発明15についてのむすび
したがって、相違点1、4、5について検討するまでもなく、甲1’発明及び甲第1号証?甲第13号証に記載された技術に基づいて、本件発明15の構成とすることは、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

(10)本件発明16について
本件発明16は、本件発明15を引用する発明であって、本件発明15を特定するために必要な事項をすべて含むものである。
本件発明15は、上記(9)に記載したとおり、甲1’発明及び甲第1号証?甲第13号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易になし得たものであるとはいえないのだから、同様の理由により、甲1’発明及び甲第1号証?甲第13号証に記載された技術に基づいて、本件発明16の構成とすることは、当業者が容易になし得たものであるとはいえない

(11)本件発明17について
本件発明17は、実質的に、本件発明15における「脱線防止レール」及び「スペーサ」に関する構成を省いたものである。
そうすると、上記(9)(イ)に説示した、本件発明15と甲1’発明との【相違点2】及び【相違点3】についてした判断と同様の理由により、甲1’発明及び甲第1号証?甲第13号証に記載された技術に基づいて、本件発明17の構成とすることは、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

(12)本件発明18?20について
本件発明18?20は、いずれも、本件発明15又は本件発明17を直接的あるいは間接的に引用する発明であって、本件発明15又は本件発明17を特定するために必要な事項をすべて含むものである。
本件発明15及び17は、上記(9)及び(11)に記載したとおり、甲1’発明及び甲第1号証?甲第13号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易になし得たものであるとはいえないのだから、同様の理由により、甲1’発明及び甲第1号証?甲第13号証に記載された技術に基づいて、本件発明18?20の構成とすることは、当業者が容易になし得たものであるとはいえない


2.無効理由2について(特許法第36条第6項第2号についての判断)
平成19年11月21日に提出された訂正請求書により、訂正前の請求項17における「スペーサによって互いに間隔が保持された上記走行レール」から、「スペーサによって互いの間隔が保持され」を削除する訂正がなされ、「スペーサ」が何との間隔を保持するのかが不明である点が解消されたので、請求項17は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものではない。


3.まとめ
以上のとおりであって、本件発明1?20は、いずれも特許法第29条第第2項の規定に違反するものではなく、訂正後の請求項17の記載は特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものではない。


第7.結び
以上のとおりであるから、請求人の主張および証拠方法によっては、本件発明1?20の特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。

平成20年 4月25日

審判長 特許庁審判官 小原 博生
特許庁審判官 小林 俊久
特許庁審判官 川島 陵司」
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
レールの据付方法および据付構造
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】軌道の基礎部上面に、走行レールと、当該走行レールに所定間隔をおいて設けられる脱線防止レールとを収納するための凹部を形成するレール溝形成工程と、
上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を上記走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して接着固定する振動吸収板の敷設工程と、
上記走行レールおよび上記脱線防止レールの各レベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールおよび上記脱線防止レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行・脱線防止レールの調整板設置工程と、
上記調整板上に、スペーサによって互いに間隔が保持された上記走行レールおよび脱線防止レールを置き位置決めをする走行・脱線防止レール設置工程と、
上記走行レールおよび脱線防止レールが位置決めされた上記凹部に、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行・脱線防止レールの樹脂注入硬化工程と、
を含むことを特徴とするレールの据付方法。
【請求項2】軌道の基礎部上面に、走行レールと、当該走行レールより短く形成され、かつ当該走行レールに所定間隔をおいて並列に設けられる脱線防止レールとを、上記走行レールの接続端部が上記脱線防止レールの端部よりも敷設方向に突き出る状態で収納するための凹部を形成する走行・脱線防止レールの溝形成工程と、
上記走行レールと上記脱線防止レールとが並列する上記凹部の底面に、接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する走行・脱線防止レールの振動吸収板敷設工程と、
上記走行レールおよび上記脱線防止レールの各レベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールおよび上記脱線防止レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行・脱線防止レールの調整板設置工程と、
上記調整板上に、スペーサによって互いに間隔が保持された上記走行レールおよび脱線防止レールを、上記走行レールの接続端部が上記脱線防止レールの端部よりも敷設方向に突き出る状態で置き、位置決めをする走行・脱線防止レール設置工程と、
上記走行レールおよび上記脱線防止レールが位置決めされた状態で、当該走行レールと脱線防止レールとが並列する箇所の上記凹部に、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行・脱線防止レール並列部分の樹脂注入硬化工程と、
軌道の基礎部上面に、上記走行レールの接続端部に接続される接続走行レールを収納するための凹部を形成する接続走行レール溝形成工程と、
上記接続走行レールの接続端部を除く、当該接続走行レール用の上記凹部の底面に、接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する接続走行レールの振動吸収板の敷設工程と、
上記接続走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記接続走行レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く接続走行レールの調整板設置工程と、
上記調整板上に、上記接続走行レールを置き位置決めをする接続走行レール設置工程と、
上記接続走行レールが位置決めされた上記凹部に、少なくとも上記走行レールとの接続端部を除いて、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる接続走行レールの樹脂注入硬化工程と、
上記ポリウレタンで固定された上記走行レールおよび上記接続走行レールの上記接続端部同士を接続した後に、接続された上記接続端部のある箇所の上記凹部にセルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行レール接続部分の樹脂注入硬化工程と、
を含むことを特徴とするレールの据付方法。
【請求項3】軌道の基礎部上面に、走行レールと、当該走行レールより短く形成され、かつ当該走行レールに所定間隔をおいて並列に設けられる脱線防止レールとを、上記走行レールの接続端部が上記脱線防止レールの端部よりも敷設方向に突き出る状態で収納するための凹部を形成する走行・脱線防止レールの溝形成工程と、
上記走行レールと上記脱線防止レールとが並列する上記凹部の底面に、接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する走行・脱線防止レールの振動吸収板敷設工程と、
上記走行レールおよび上記脱線防止レールの各レベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールおよび上記脱線防止レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行・脱線防止レールの調整板設置工程と、
上記調整板上に、スペーサによって互いに間隔が保持された上記走行レールおよび脱線防止レールを、当該走行レールの接続端部が当該脱線防止レールの端部よりも敷設方向に突き出る状態で置く走行・脱線防止レール設置工程と、
軌道の基礎部上面に、上記走行レールの接続端部に接続される接続走行レールを収納するための凹部を形成する接続走行レール溝形成工程と、
上記接続走行レールの接続端部を除く、当該接続走行レール用の上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する接続走行レールの振動吸収板敷設工程と、
上記接続走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記接続走行レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く接続走行レールの調整板設置工程と、
上記調整板上に、上記接続走行レールを置く接続走行レール設置工程と、
上記調整板上に置かれた上記走行レールと、上記調整板上に置かれた上記接続走行レールとの接続端部同士を接続する走行レールの接続工程と、
上記走行レール、上記脱線防止レールおよび上記接続走行レールが位置決めされた状態で、上記走行レールと上記脱線防止レールとが並列する箇所の上記凹部と接続された上記接続端部がある箇所の上記凹部とに、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる接続走行レールの樹脂注入硬化工程と、
を含むことを特徴とするレールの据付方法。
【請求項4】軌道の基礎部上面に、走行レールを収納するための凹部を形成する走行レールの溝形成工程と、
上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を上記走行レールの敷設方向に連続して接着固定する振動吸収板の敷設工程と、
上記走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行レールの調整板設置工程と、
上記調整板上に上記走行レールを置き位置決めをする走行レール設置工程と、
上記走行レールが位置決めされた上記凹部に、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行レールの樹脂注入硬化工程と、
を含むことを特徴とするレールの据付方法。
【請求項5】軌道の基礎部上面に、走行レールを収納するための凹部を形成する走行レールの溝形成工程と、
上記走行レールの接続端部を除く当該走行レール用の上記凹部の底面に、接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する走行レールの振動吸収板敷設工程と、
上記走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行レールの調整板設置工程と、
上記調整板上に上記走行レールを置き位置決めをする走行レール設置工程と、
上記走行レールが位置決めされた状態で、少なくとも当該走行レールの上記接続端部を除く上記凹部に、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行レールの樹脂注入硬化工程と、
軌道の基礎部上面に、上記走行レールの接続端部に接続される接続走行レールを収納するための凹部を形成する接続走行レール溝形成工程と、
上記接続走行レールの接続端部を除く、当該接続走行レール用の上記凹部の底面に、接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する接続走行レールの振動吸収板敷設工程と、
上記接続走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記接続走行レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く接続走行レールの調整板設置工程と、
上記調整板上に、上記接続走行レールを置き位置決めをする接続走行レール設置工程と、
上記接続走行レールが位置決めされた上記凹部に、少なくとも上記走行レールとの接続端部を除いて、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる接続走行レールの樹脂注入硬化工程と、
上記ポリウレタンで固定された上記走行レールおよび上記接続走行レールの上記接続端部同士を接続した後に、接続された上記接続端部のある箇所の上記凹部にセルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行レール接続部分の樹脂注入硬化工程と、
を含むことを特徴とするレールの据付方法。
【請求項6】軌道の基礎部上面に、走行レールを収納するための凹部を形成する走行レールの溝形成工程と、
上記走行レールの接続端部を除く当該走行レール用の上記凹部の底面に、接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する走行レールの振動吸収板敷設工程と、
上記走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行レールの調整板設置工程と、
上記調整板上に上記走行レールを置く走行レール設置工程と、
軌道の基礎部上面に、上記走行レールの接続端部に接続される接続走行レールを収納するための凹部を形成する接続走行レール溝形成工程と、
上記接続走行レールの接続端部を除く、当該接続走行レール用の上記凹部の底面に、接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する接続走行レールの振動吸収板敷設工程と、
上記接続走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記接続走行レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く接続走行レールの調整板設置工程と、
上記調整板上に、上記接続走行レールを置く接続走行レール設置工程と、
上記調整板上に置かれた上記走行レールと、上記調整板上に置かれた上記接続走行レールとの接続端部同士を接続する走行レールの接続工程と、
上記走行レールおよび上記接続走行レールが位置決めされた状態で、接続された上記接続端部を含めた上記走行レールがある箇所の上記凹部に、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる接続走行レールの樹脂注入硬化工程と、
を含むことを特徴とするレールの据付方法。
【請求項7】上記走行レールと上記接続走行レールとの接続端部同士を溶接によって接続するとともに、溶接された上記接続端部のある箇所の上記凹部に上記ポリウレタンを注入する前に、当該凹部の底面の上記振動吸収板の未敷設箇所に接着剤を塗布して上記振動吸収板を接着固定することを特徴とする請求項2、3、5および6のいずれかに記載のレールの据付方法。
【請求項8】上記走行レールと上記脱線防止レールとを収納する上記凹部部分への上記ポリウレタンの注入は、まず上記走行レールと上記凹部側壁との間および上記脱線防止レールと上記凹部側壁との間に上記ポリウレタンを注入して、上記走行レールと上記凹部側壁との間および上記脱線防止レールと上記凹部側壁との間の上記ポリウレタンの表面レベルが、上記軌道の基礎部上面レベルと略同じにした後に、上記走行レールと上記脱線防止レールとの間にポリウレタンを注入して、上記走行レールと上記脱線防止レールとの間の上記ポリウレタンの表面レベルが、走行レール頭部の下端部に位置するようにすることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載のレールの据付方法。
【請求項9】上記走行レールのみを収納する上記凹部部分への上記ポリウレタンの注入は、まずレール軌道の外側に位置する上記凹部側壁と上記走行レールとの間に上記ポリウレタンを注入して、当該凹部側壁と上記走行レールとの間の上記ポリウレタンの表面レベルが、上記軌道の基礎部上面レベルと略同じにした後に、レール軌道の内側に位置する上記凹部側壁と上記走行レールとの間に上記ポリウレタンを注入して、当該凹部側壁と上記走行レールとの間の上記ポリウレタンの表面レベルが、レール頭部の下端部に位置するようにすることを特徴とする請求項2?7のいずれかに記載のレールの据付方法。
【請求項10】上記ポリウレタンは、ポリイソシアネート プレポリマーと、アミンとの混合物にコルク粒を1?10重量%含めたものであることを特徴とする請求項1?9のいずれかに記載のレールの据付方法。
【請求項11】上記ポリウレタンを凹部に注入する直前に、当該凹部に、プライマーとして溶剤に溶解させたポリイソシアネートを散布することを特徴とする請求項1?10のいずれかに記載のレールの据付方法。
【請求項12】上記振動吸収板は、合成ゴムまたは天然ゴムであり、上記接着剤は硬化剤が加えられたエポキシ樹脂接着剤であることを特徴とする請求項1?11のいずれかに記載のレールの据付方法。
【請求項13】上記調整板の高さ寸法の調整は、敷設された振動吸収板上面のレベルを測定し、当該測定値に基づいて、複数の調整板を積み重ねて当該測定値に対応した高さ寸法に調整することを特徴とする請求項1?12のいずれかに記載のレールの据付方法。
【請求項14】上記振動吸収板が、コルク粒を1?20重量%含有し、上記調整板がコルク板であることを特徴とする請求項1?13のいずれかに記載のレールの据付方法。
【請求項15】走行レールと、当該レールに所定間隔をおいて設けられた脱線防止レールとの据付構造であって、
軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に、上記走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と、
上記走行レールと脱線防止レールの敷設位置に沿って間隔をおいて、それぞれ振動吸収板上に設けられ、当該走行レールと脱線防止レールの各レベルを所定のレベルにする調整板と、
上記調整板上に位置決めされ、スペーサによって互いの間隔が保持された上記走行レールと脱線防止レールと、
これらが上記凹部に収納された状態で注入して硬化させたポリウレタン層と
を備えたことを特徴とするレールの据付構造。
【請求項16】上記ポリウレタン層の表面レベルは、上記走行レールと上記凹部側壁との間および上記脱線防止レールと上記凹部側壁との間の上記ポリウレタン層の表面レベルが、上記軌道の基礎部上面レベルと略同じであり、上記走行レールと上記脱線防止レールとの間の上記ポリウレタン層の表面レベルは、走行レール頭部の下端部に位置することを特徴とする請求項15に記載のレールの据付け構造。
【請求項17】走行レールの据付構造であって、
軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に、上記走行レールの敷設方向に連続して接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と、
上記走行レールの敷設位置に沿って間隔をおいて、それぞれ振動吸収板上に設けられ、上記走行レールのレベルを所定のレベルにする調整板と、
上記調整板上に位置決めされた上記走行レールと、
これらが上記凹部に収納された状態で注入して硬化させたポリウレタン層と
を備えたことを特徴とするレールの据付構造。
【請求項18】上記ポリウレタンは、ポリイソシアネート プレポリマーと、アミンとの混合物にコルク粒を1?10重量%含めたものであることを特徴とする請求項15?17のいずれかに記載のレールの据付構造。
【請求項19】上記振動吸収板は、合成ゴムまたは天然ゴムであり、上記接着剤は硬化剤が加えられたエポキシ樹脂接着剤であることを特徴とする請求項15?18のいずれかに記載のレールの据付構造。
【請求項20】上記振動吸収板は、コルク粒を1?20重量%含有し、上記調整板は、複数のコルク板を積み重ねて所定の高さに調整したものであることを特徴とする請求項15?19のいずれかに記載のレールの据付構造。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、犬くぎやボルトで固定する必要のないレールの据付方法および据付構造に係わり、特に走行レールに沿って脱線防止レールを敷設する場合に好適なレールの据付方法および据付構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、鉄道の軌道を敷設する際に、当該軌道が所定の半径以内の曲線をなす区間においては、2本の走行レールのうちの曲率半径が小さい側(内軌側)の走行レールの軌道中心線の側(軌道内側)に沿って、当該走行レールの摩耗や脱輪を防ぐために、脱線防止レールを敷設することが義務付けられている。また、このような脱線防止レールは、上記曲線区画の他、特に必要と認められた橋梁、築堤あるいは踏切等の箇所においても敷設する必要がある。
【0003】
図19は、従来のこの種の脱線防止レールを敷設した区間におけるレールの据付構造を示すもので、図中符号1が一方の走行レールである。
この走行レール1は、枕木2上の軌道パッド3に載置されるとともに、下部フランジ1bを押える犬釘4やスクリュースパイキ7によって枕木2に固定されたものである。そして、この走行レール1に沿って、脱線防止レール5が敷設される場合は、その脱線防止レール5は、上面5aが走行レール1の上面1aよりも所定寸法高くなるように、枕木2に隣接して配置された高さ調整部材6上に載置され、同様に下部フランジ5bを押えるように締め込まれた犬釘4やスクリュースパイキ7によって枕木2に固定されている。
また、走行レール1と脱線防止レール5とは、所定間隔毎に互いのウエブ1c、5c間に挿通されたチョックボルト8や、スペーサ(図示を略す)とボルト、ナット等によって、一定間隔を保持するように一体化され、アスファルトコンクリート等の舗装面9上にレール頭部だけが出るように埋設されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来のレールの据付構造においては、車両通過時における重力による下方への沈み込み、レールに横方向の力(横圧)が作用してレールが内外に傾く小返り、軌道全体の振動等の破壊作用を受けるので、アスファルトコンクリートでは、レールとの接着性や弾力性に乏しく、亀裂をすぐ生じ、レール保持力がない。したがって、これら走行レール1や脱線防止レール5は、ともに下部フランジ1a、5aにおいて犬釘4やスクリュースパイキ7によって枕木2に固定されているのみの状態と実質的に同じである。
【0005】
さらに係る状態において、上記従来のレールの据付構造においては、車両通過時には、走行レール1と一体化された脱線防止レール5も車輪からの遠心力を受けることになる。
この結果、長期間にわたる使用によって、チョックボルト8やボルト等に伸びが生じたり、あるいはボルト、ナット間の緩みが生じて、徐々に脱線防止レール5に走行レール1から離れる方向に傾きが生じるという欠点があり、このためレールの点検およびチョックボルト8等の増し締めや交換といった定期的な保守管理作業に多くの手間を要するという問題点があった。
また、走行レール1および脱線防止レール5は、共に間欠的に配設された枕木2上に点で固定されているために、比較的大きな振動を発生し、特に舗装材がコンクリートの場合には、該コンクリートに騒音が反響してさらに騒がしいという問題点があった。さらに、長期間の使用によりレール1、5に偏摩耗が生じ易く、よってこれらレール1、5の使用寿命も短くなるという問題点もあった。
【0006】
本発明は、上記従来のレールの据付構造が有する課題を解決すべくなされたもので、長期間の使用によっても、脱線防止レールに傾きが生じることが無く、保守管理が容易になるとともに、走行レールや脱線防止レールの使用寿命の長期化も図ることができ、かつ乗り心地が良く安全性に優れ、犬くぎやスクリュースパイキで固定する必要のないレールの据付構造を効率よく形成するレールの据付方法およひそのレールの据付構造を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1?3に記載の発明は、いずれも走行レールと脱線防止レールに係るレールの据付け方法であって、先ず請求項1に記載の本発明は、軌道の基礎部上面に、走行レールと、当該走行レールに所定間隔をおいて設けられる脱線防止レールとを収納するための凹部を形成するレール溝形成工程と、上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を上記走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して接着固定する振動吸収板の敷設工程と、上記走行レールおよび上記脱線防止レールの各レベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールおよび上記脱線防止レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行・脱線防止レールの調整板設置工程と、上記調整板上に、スペーサによって互いに間隔が保持された上記走行レールおよび脱線防止レールを置き位置決めをする走行・脱線防止レール設置工程と、上記走行レールおよび脱線防止レールが位置決めされた上記凹部に、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行・脱線防止レールの樹脂注入硬化工程とを含むことを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、軌道の基礎部上面に、走行レールと、当該走行レールより短く形成され、かつ当該走行レールに所定間隔をおいて並列に設けられる脱線防止レールとを、上記走行レールの接続端部が上記脱線防止レールの端部よりも敷設方向に突き出る状態で収納するための凹部を形成する走行・脱線防止レールの溝形成工程と、上記走行レールと上記脱線防止レールとが並列する上記凹部の底面に、接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する走行・脱線防止レールの振動吸収板敷設工程と、上記走行レールおよび上記脱線防止レールの各レベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールおよび上記脱線防止レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行・脱線防止レールの調整板設置工程と、上記調整板上に、スペーサによって互いに間隔が保持された上記走行レールおよび脱線防止レールを、上記走行レールの接続端部が上記脱線防止レールの端部よりも敷設方向に突き出る状態で置き、位置決めをする走行・脱線防止レール設置工程と、上記走行レールおよび上記脱線防止レールが位置決めされた状態で、当該走行レールと脱線防止レールとが並列する箇所の上記凹部に、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行・脱線防止レール並列部分の樹脂注入硬化工程と、軌道の基礎部上面に、上記走行レールの接続端部に接続される接続走行レールを収納するための凹部を形成する接続走行レール溝形成工程と、上記接続走行レールの接続端部を除く、当該接続走行レール用の上記凹部の底面に、接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する接続走行レールの振動吸収板の敷設工程と、上記接続走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記接続走行レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く接続走行レールの調整板設置工程と、上記調整板上に、上記接続走行レールを置き位置決めをする接続走行レール設置工程と、上記接続走行レールが位置決めされた上記凹部に、少なくとも上記走行レールとの接続端部を除いて、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる接続走行レールの樹脂注入硬化工程と、上記ポリウレタンで固定された上記走行レールおよび上記接続走行レールの上記接続端部同士を接続した後に、接続された上記接続端部のある箇所の上記凹部にセルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行レール接続部分の樹脂注入硬化工程とを含むことを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、軌道の基礎部上面に、走行レールと、当該走行レールより短く形成され、かつ当該走行レールに所定間隔をおいて並列に設けられる脱線防止レールとを、上記走行レールの接続端部が上記脱線防止レールの端部よりも敷設方向に突き出る状態で収納するための凹部を形成する走行・脱線防止レールの溝形成工程と、上記走行レールと上記脱線防止レールとが並列する上記凹部の底面に、接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する走行・脱線防止レールの振動吸収板敷設工程と、上記走行レールおよび上記脱線防止レールの各レベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールおよび上記脱線防止レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行・脱線防止レールの調整板設置工程と、上記調整板上に、スペーサによって互いに間隔が保持された上記走行レールおよび脱線防止レールを、当該走行レールの接続端部が当該脱線防止レールの端部よりも敷設方向に突き出る状態で置く走行・脱線防止レール設置工程と、軌道の基礎部上面に、上記走行レールの接続端部に接続される接続走行レールを収納するための凹部を形成する接続走行レール溝形成工程と、上記接続走行レールの接続端部を除く、当該接続走行レール用の上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する接続走行レールの振動吸収板敷設工程と、上記接続走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記接続走行レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く接続走行レールの調整板設置工程と、上記調整板上に、上記接続走行レールを置く接続走行レール設置工程と、上記調整板上に置かれた上記走行レールと、上記調整板上に置かれた上記接続走行レールとの接続端部同士を接続する走行レールの接続工程と、上記走行レール、上記脱線防止レールおよび上記接続走行レールが位置決めされた状態で、上記走行レールと上記脱線防止レールとが並列する箇所の上記凹部と接続された上記接続端部がある箇所の上記凹部とに、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる接続走行レールの樹脂注入硬化工程とを含むことを特徴とするものである。
【0010】
次いで、請求項4?6に記載の発明は、いずれも走行レールに係るレールの据付け方法であって、先ず請求項4に記載の発明は、軌道の基礎部上面に、走行レールを収納するための凹部を形成する走行レールの溝形成工程と、上記凹部の底面に接着剤を塗布して上記走行レールの敷設方向に連続して振動吸収板を接着固定する振動吸収板の敷設工程と、上記走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行レールの調整板設置工程と、上記調整板上に上記走行レールを置き位置決めをする走行レール設置工程と、上記走行レールが位置決めされた上記凹部に、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行レールの樹脂注入硬化工程とを含むことを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、軌道の基礎部上面に、走行レールを収納するための凹部を形成する走行レールの溝形成工程と、上記走行レールの接続端部を除く当該走行レール用の上記凹部の底面に、接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する走行レールの振動吸収板敷設工程と、上記走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行レールの調整板設置工程と、上記調整板上に上記走行レールを置き位置決めをする走行レール設置工程と、上記走行レールが位置決めされた状態で、少なくとも当該走行レールの上記接続端部を除く上記凹部に、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行レールの樹脂注入硬化工程と、軌道の基礎部上面に、上記走行レールの接続端部に接続される接続走行レールを収納するための凹部を形成する接続走行レール溝形成工程と、上記接続走行レールの接続端部を除く、当該接続走行レール用の上記凹部の底面に、接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する接続走行レールの振動吸収板敷設工程と、上記接続走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記接続走行レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く接続走行レールの調整板設置工程と、上記調整板上に、上記接続走行レールを置き位置決めをする接続走行レール設置工程と、上記接続走行レールが位置決めされた上記凹部に、少なくとも上記走行レールとの接続端部を除いて、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる接続走行レールの樹脂注入硬化工程と、上記ポリウレタンで固定された上記走行レールおよび上記接続走行レールの上記接続端部同士を接続した後に、接続された上記接続端部のある箇所の上記凹部にセルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる走行レール接続部分の樹脂注入硬化工程とを含むことを特徴とするものである。
【0012】
さらに、請求項6に記載の発明は、軌道の基礎部上面に、走行レールを収納するための凹部を形成する走行レールの溝形成工程と、上記走行レールの接続端部を除く当該走行レール用の上記凹部の底面に、接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する走行レールの振動吸収板敷設工程と、上記走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く走行レールの調整板設置工程と、上記調整板上に上記走行レールを置く走行レール設置工程と、軌道の基礎部上面に、上記走行レールの接続端部に接続される接続走行レールを収納するための凹部を形成する接続走行レール溝形成工程と、上記接続走行レールの接続端部を除く、当該接続走行レール用の上記凹部の底面に、接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定する接続走行レールの振動吸収板敷設工程と、上記接続走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記接続走行レールの敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置く接続走行レールの調整板設置工程と、上記調整板上に、上記接続走行レールを置く接続走行レール設置工程と、上記調整板上に置かれた上記走行レールと、上記調整板上に置かれた上記接続走行レールとの接続端部同士を接続する走行レールの接続工程と、上記走行レールおよび上記接続走行レールが位置決めされた状態で、接続された上記接続端部を含めた上記走行レールがある箇所の上記凹部に、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる接続走行レールの樹脂注入硬化工程とを含むことを特徴とするものである。
【0013】
なお、請求項2、3、5および6のいずれかに記載の発明においては、接続走行レールの接続端部とは、走行レールと接続される側の端部のみならず、当該端部に対して他端部となる接続端部も含む。
さらに、請求項7に記載の発明は、これら請求項2、3、5および6のいずれかに記載の発明において、上記走行レールと上記接続走行レールとの接続端部同士を溶接によって接続するとともに、溶接された上記接続端部のある箇所の上記凹部に上記ポリウレタンを注入する前に、当該凹部の底面の上記振動吸収板の未敷設箇所に接着剤を塗布して上記振動吸収板を接着固定することを特徴とするものである。
【0014】
請求項8に記載の本発明に係るレールの据付方法は、請求項1?3のいずれかに記載の発明において、上記走行レールと上記脱線防止レールとを収納する上記凹部部分への上記ポリウレタンの注入は、まず上記走行レールと上記凹部側壁との間および上記脱線防止レールと上記凹部側壁との間に上記ポリウレタンを注入して、上記走行レールと上記凹部側壁との間および上記脱線防止レールと上記凹部側壁との間の上記ポリウレタンの表面レベルが、上記軌道の基礎部上面レベルと略同じにした後に、上記走行レールと上記脱線防止レールとの間にポリウレタンを注入して、上記走行レールと上記脱線防止レールとの間の上記ポリウレタンの表面レベルが、走行レール頭部の下端部に位置するようにすることを特徴とするものである。
【0015】
請求項9に記載の本発明に係るレールの据付方法は、請求項2?7のいずれかに記載の発明において、上記走行レールのみを収納する上記凹部部分への上記ポリウレタンの注入は、まずレール軌道の外側に位置する上記凹部側壁と上記走行レールとの間に上記ポリウレタンを注入して、当該凹部側壁と上記走行レールとの間の上記ポリウレタンの表面レベルが、上記軌道の基礎部上面レベルと略同じにした後に、レール軌道の内側に位置する上記凹部側壁と上記走行レールとの間に上記ポリウレタンを注入して、当該凹部側壁と上記走行レールとの間の上記ポリウレタンの表面レベルが、レール頭部の下端部に位置するようにすることを特徴とするものである。
【0016】
請求項10に記載の本発明に係るレールの据付方法は、請求項1?9のいずれかに記載の発明において、上記ポリウレタンは、ポリイソシアネート プレポリマーと、アミンとの混合物にコルク粒を1?10重量%含めたものであることを特徴とするものである。
【0017】
請求項11に記載の本発明に係るレールの据付方法は、請求項1?10のいずれかに記載の発明において、上記ポリウレタンを凹部に注入する直前に、当該凹部に、プライマーとして溶剤に溶解させたポリイソシアネートを散布することを特徴とするものである。
具体的には、例えば塩化メチレン、二塩化メチレン等に溶解させた4,4’-ジフェニルメタン ジイソシアネート(20重量%)が好ましく使用できる。上記ポリウレタンを上記凹部に注入する直前とは、プライマーを散布した後には、他の工程を入れないで上記ポリウレタンを注入する工程を施す意味であり、時間的に数分を隔てないでポリウレタンを注入する意味ではない。通常、プライマーを塗布した後、1時間以内に上記ポリウレタンを注入すればよい。
【0018】
請求項12に記載の本発明に係るレールの据付方法は、請求項1?11のいずれかに記載の発明において、上記振動吸収板は、合成ゴムまたは天然ゴムであり、上記接着剤は硬化剤が加えられたエポキシ樹脂接着剤であることを特徴とするものである。
【0019】
請求項13に記載の本発明に係るレールの据付方法は、請求項1?12のいずれかに記載の発明において、上記調整板の高さ寸法の調整は、敷設された振動吸収板上面のレベルを測定し、当該測定値に基づいて、複数の調整板を積み重ねて当該測定値に対応した高さ寸法に調整することを特徴とするものである。
【0020】
請求項14に記載の本発明に係るレールの据付方法は、請求項1?13のいずれかに記載の発明において、上記振動吸収板が、コルク粒を1?20重量%含有し、上記調整板がコルク板であることを特徴とするものである。
【0021】
請求項15に記載の本発明に係るレールの据付構造は、走行レールと、当該レールに所定間隔をおいて設けられた脱線防止レールとの据付構造であって、軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に、上記走行レールおよび脱線防止レールの敷設方向に連続して接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と、上記走行レールと脱線防止レールの敷設位置に沿って間隔をおいて、それぞれ振動吸収板上に設けられ、当該走行レールと脱線防止レールの各レベルを所定のレベルにする調整板と、上記調整板上に位置決めされ、スペーサによって互いの間隔が保持された上記走行レールと脱線防止レールと、これらが上記凹部に収納された状態で注入して硬化させたポリウレタン層とを備えたことを特徴とするものである。
【0022】
請求項16に記載の本発明に係るレールの据付構造は、請求項15に記載のは発明において、上記ポリウレタン層の表面レベルは、上記走行レールと上記凹部側壁との間および上記脱線防止レールと上記凹部側壁との間の上記ポリウレタン層の表面レベルが、上記軌道の基礎部上面レベルと略同じであり、上記走行レールと上記脱線防止レールとの間の上記ポリウレタン層の表面レベルは、走行レール頭部の下端部に位置することを特徴とするものである。
【0023】
請求項17に記載の本発明に係るレールの据付構造は、走行レールの据付構造であって、軌道の基礎部上面に形成された凹部の底面に、上記走行レールの敷設方向に連続して接着剤層を介して接着固定された振動吸収板と、上記走行レールの下面敷設位置に沿って間隔をおいて、それぞれ振動吸収板上に設けられ、上記走行レールのレベルを所定のレベルにする調整板と、上記調整板上に位置決めされた上記走行レールと、これらが上記凹部に収納された状態で注入して硬化させたポリウレタン層とを備えたことを特徴とするものである。
【0024】
請求項18に記載の本発明に係るレールの据付構造は、請求項15?17のいずれかに記載の発明において、上記ポリウレタンは、ポリイソシアネート プレポリマーと、アミンとの混合物にコルク粒を1?10重量%含めたものであることを特徴とするものである。
【0025】
請求項19に記載の本発明に係るレールの据付構造は、請求項15?18のいずれかに記載の発明において、上記振動吸収板は、合成ゴムまたは天然ゴムであり、上記接着剤は硬化剤が加えられたエポキシ樹脂接着剤であることを特徴とするものである。
【0026】
請求項20に記載の本発明に係るレールの据付構造は、請求項15?19のいずれかに記載の発明において、上記振動吸収板は、コルク粒を1?20重量%含有し、上記調整板は、複数のコルク板を積み重ねて所定の高さに調整したものであることを特徴とするものである。
【0027】
上記請求項1?3に記載のレールの据付方法および請求項15のレールの据付構造においては、上記凹部の底面に振動吸収板を敷設するので、列車通過時に当該振動吸収板が収縮して走行レールが適切に沈むので、列車の乗り心地がよくなると共によく振動を吸収する。特に、上記振動吸収板の敷設に際しては、上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定するようにしたので、凹部の底面と振動吸収板との接合がなされ、ポリウレタンによる凹部側面からのレール拘束に加えて、凹部底面からのレール拘束がなされ、レールの温度収縮によって発生するレール軸力に対する拘束力が増して、レールの熱収縮によるレール分岐部等への応力集中が確実に回避され、これらの破損が防止されるという作用を奏する。
【0028】
また、上記走行レールおよび上記脱線防止レールの各レベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールと上記脱線防止レールのそれぞれの下面敷設位置に沿って、上記振動吸収板上に置くので、凹部底面の高さに不均一があっても、上記調整板により高い走行面の精度を確保することが可能になり、高さ調整の自由度が増大する。しかも、調整板を、各レールそれぞれの下面敷設位置に沿って、間隔をおいて置く(例えば1?2m間隔で置く)ので、これら調整板によって上記走行レールと上記脱線防止レールのそれぞれの底部下面と振動吸収板との間に空間が形成され、後でポリウレタンを凹部に注入することにより該空間にポリウレタンの充填層が形成され、調整板が上記振動吸収板に固定されると共に上記走行レール自体および上記脱線防止レール自体も強固に固定される。
【0029】
したがって、上記調整板は単に上記振動吸収板上に置くだけでよく、施工が簡単であり、ボルト、ナット、犬釘、タイプレート等の締結金具や枕木を調整しながら実施していた従来の高さ調整と比べ、位置決めを1mm単位で正確かつ容易に実施できる。
しかも、凹部へポリウレタンを注入するに際し、セルフレベリング性を有するポリウレタンを使用しているために、別途上面を均すことなく水平面を得ることができ、よって総じて作業が容易である。
【0030】
加えて、得られたレールの据付構造は、スペーサによって互いの間隔が保持された走行レールと脱線防止レールとが、軌道の基礎部上面に形成された凹部内において、当該凹部の全長にわたってウエブおよび下部フランジの全面がそれぞれポリウレタンにより拘束されているために、長期間の使用によっても走行レールと脱線防止レールとの間隔保持に影響が無く、脱線防止レールに傾きが生じることがない。また、従来の枕木や犬釘を用いたレールの据付構造においては、レールが間欠的に点で支持されるために、比較的大きな振動が発生するとともにレールに偏摩耗が生じ易いのに対して、本発明においては、レールが凹部内に充填されたポリウレタンによって連続的に面で支持されるために、当該振動の発生を抑えることができ、かつレールの偏摩耗も生じる虞がない。
【0031】
さらに、走行レールおよび脱線防止レールを、基礎部上面に形成された凹部内において支持している結果、従来のように犬釘やスクリュースパイキ等の締結金具を使用する必要が無いために、これらレールの保守点検作業を大幅に軽減することが可能になるとともに、これらのレールとして種々の形状のものを使用することができる。
【0032】
また、上記凹部の底面に振動吸収板を敷設するので、列車通過時に当該振動吸収板が収縮して走行レールが適切に沈むので、列車の乗り心地がよくなると共に振動を吸収する。さらに、ポリウレタンで上記走行レールの下部フランジおよびウエブの全面が拘束されているために、この点からも相乗的に振動を吸収し、騒音も極めて少なく、走行レールや脱線防止レールの使用寿命の長期化も図ることができ、かつ乗り心地が良く安全性に優れている。
【0033】
特に、請求項2に記載の発明においては、上記走行レールの接続端部を残して上記ポリウレタンで固定し、この接続端部と、同様にポリウレタンで固定された接続走行レールの接続端部とを凹部内で接続するようにしたので、レール位置が固定されている結果接続が容易であり、かつ接続後のレール位置調整も不要になる。
【0034】
また、請求項3に記載の発明においては、上記調整板上に上記走行レールと脱線防止レールとが置かれた状態で、上記走行レールと接続走行レールとの接続端部同士を接続した後に、接続された当該接続端部を含めて上記走行レールを上記ポリウレタンで固定するようにしたので、ポリウレタンの注入を、当該接続端部と走行レール本体や脱線防止レール本体とに分ける必要がなく、一度に行うことができる。したがって、ポリウレタンの注入に係わる施工手順が錯交することがない。
【0035】
次いで、上記請求項4?6に記載のレールの据付方法および請求項17のレールの据付構造においては、上記凹部の底面に振動吸収板を敷設するので、列車通過時に当該振動吸収板が収縮して走行レールが適切に沈むので、列車の乗り心地がよくなると共によく振動を吸収する。特に、上記振動吸収板の敷設に際しては、上記凹部の底面に接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定するようにしたので、凹部の底面と振動吸収板との接合がなされ、ポリウレタンによる凹部側面からのレール拘束に加えて、凹部底面からのレール拘束がなされ、レールの温度収縮によって発生するレール軸力に対する拘束力が増して、レールの熱収縮によるレール分岐部等への応力集中が確実に回避され、これらの破損が防止されるという作用を奏する。
【0036】
また、上記走行レールのレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールの下面敷設位置に沿って、上記振動吸収板上に置くので、凹部底面の高さに不均一があっても、上記調整板により高い走行面の精度を確保することが可能になり、高さ調整の自由度が増大する。しかも、調整板を、走行レールの下面敷設位置に沿って、間隔をおいて置く(例えば1?2m間隔で置く)ので、これら調整板によって上記走行レールの底部下面と振動吸収板との間に空間が形成され、後でポリウレタンを凹部に注入することにより該空間にポリウレタンの充填層が形成され、調整板が上記振動吸収板に固定されると共に上記走行レール自体も強固に固定される。
【0037】
したがって、上記調整板は単に上記振動吸収板上に置くだけでよく、施工が簡単であり、ボルト、ナット、犬釘、タイプレート等の締結金具や枕木を調整しながら実施していた従来の高さ調整と比べ、位置決めを1mm単位で正確かつ容易に実施できる。。
しかも、凹部へポリウレタンの注入においては、セルフレベリング性を有するポリウレタンを使用しているために、別途上面を均すことなく水平面を得ることができ、よって総じて作業が容易である。
【0038】
加えて、得られたレールの据付構造は、走行レールが、軌道の基礎部上面に形成された凹部内において、当該凹部の全長にわたってウエブおよび下部フランジの全面がポリウレタンにより拘束されているために、長期間の使用によっても走行レールの保持に影響がない。また、従来の枕木や犬釘を用いたレールの据付構造においては、レールが間欠的に点で支持されるために、比較的大きな振動が発生するとともにレールに偏摩耗が生じ易いのに対して、本発明においては、レールが凹部内に充填されたポリウレタンによって連続的に面で支持されるために、当該振動の発生を抑えることができ、かつレールの偏摩耗も生じる虞がない。
【0039】
さらに、走行レールを、基礎部上面に形成された凹部内において支持している結果、従来のように犬釘やスクリュースパイキ等の締結金具を使用する必要が無いために、これらレールの保守点検作業を大幅に軽減することが可能になるとともに、これらのレールとして種々の形状のものを使用することができる。
また、上記凹部の底面に振動吸収板を敷設するので、列車通過時に当該振動吸収板が収縮して走行レールが適切に沈むので、列車の乗り心地がよくなると共に振動を吸収する。さらに、ポリウレタンで上記走行レールの下部フランジおよびウエブの全面が拘束されているために、この点からも相乗的に振動を吸収し、騒音も極めて少なく、走行レールの使用寿命の長期化も図ることができ、かつ乗り心地が良く安全性に優れている。
【0040】
さらに、請求項5に記載の発明においては、上記走行レールの接続端部を残して上記ポリウレタンで固定し、この接続端部と、同様にポリウレタンで固定された接続走行レールの接続端部とを凹部内で接続するようにしたので、レール位置が固定されている結果接続が容易であり、かつ接続後のレール位置調整も不要である。
【0041】
また、請求項6に記載の発明においては、上記調整板上に上記走行レールが置かれた状態で、上記走行レールと接続走行レールとの接続端部同士を接続した後に、接続された当該接続端部を含めて上記走行レールを上記ポリウレタンで固定するようにしたので、ポリウレタンの注入を、当該接続端部と走行レール本体に分ける必要がなく、一度に行うことができる。したがって、ポリウレタンの注入に係わる施工手順が錯交することがない。
【0042】
なお、請求項1?6の発明における上記各工程は、レール全体について一律に各工程を順次施す場合と、レールの長さ方向のそれぞれの箇所において、隣接する工程とは異なる工程が行われる場合とがある。したがって、上記各工程の時系列的な解釈は、特定なレール全体の工程の場合やそのレールの一部分箇所を据え付ける工程の場合もあるものとし、広義に解するものとする。
また、レールの長さは一般に規格寸法が25mであるが、これらを予め溶接接続して所要の長さにし、それを本発明の走行レールや脱線防止レールとして据付ればよく、上記走行レールや脱線防止レールの長さは、規定寸法に限定されず、任意である。
【0043】
さらに、請求項1?6、15および17に記載の発明において、走行レールおよび脱線防止レールを収納する凹部、または走行レールを収納する凹部としては、例えば軌道の基礎部となる地盤に、鋼鈑や鋳物によって形成したコ字状部材を埋め込むことによって形成することも可能であるが、軌道を形成する2条の凹部が形成された一体型のコンクリートスラブを用いれば、より一層両走行レールの間隔を容易に調節して、高い精度で敷設することが可能になる。このようなコンクリートスラブは、型枠を用いた現場打ち施工によっても構築することができるが、予め工場で製作したプレキャストコンクリート使用することも可能である。この場合、請求項1?3または15のいずれかに記載の据付構造を、コンクリートスラブの上面の一方の上記凹部に形成し、請求項4?6または17のいずれかに記載の据付構造を、他方の凹部に形成するのが好ましい。
また、鋼構造物による橋梁等においては、凹部としては、例えば軌道の基礎部となる橋梁床板部に、鋼鈑や鋳物によって形成したコ字状鋼製溝を設けることによつて形成すればよい。
【0044】
さらに、請求項1?3および15に記載の走行・脱線防止レールの調整板設置工程または据付構造においては、上記走行レール用の調整板と上記脱線防止レール用の調整板とをそれぞれ個別に用意して、上記走行レールおよび上記脱線防止レールの各レベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板を、上記走行レールおよび上記脱線防止レールのそれぞれの下面敷設位置に沿って、間隔をおいて各々の上記振動吸収板上に置いてもよい。また、上記走行レールと上記脱線防止レールとのレベル差は常に一定なので、上記走行レール用の調整板と上記脱線防止レール用の調整板とを一体に形成した調整板を用意して、上記走行レールおよび上記脱線防止レールの各レベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した一体型の調整板を、上記走行レールおよび上記脱線防止レールの下面敷設位置に沿って、間隔をおいて上記振動吸収板上に置くようにしてもよい。
【0045】
また、請求項3および請求項6に記載の上記調整板上に置かれた上記走行レールの上記接続端部と、上記凹部に設置され当該走行レールに接続される接続走行レールとを接続する走行レールの接続工程においては、接続走行レールが、既にその接続端部を除いてポリウレタンで固定されているのが好ましい。接続走行レールがポリウレタンで固定されていない場合は、上記振動吸収板の敷設工程と、調整板設置工程と、レール設置工程が完了して、少なくとも接続のための位置決めがなされていなければならない。
【0046】
また、請求項7に記載の本発明においては、走行レールと接続走行レールとの接続端部同士を、凹部内で溶接により接続するようにしたので、従来のレールの継ぎ目を無くし、振動の少ない良好な乗り心地を得ることができると共に、従来のレール継ぎ目部における衝撃の発生が無くなり、レールおよび軌道構造が延命される。
しかも、上記溶接接続された上記接続端部のある凹部に上記ポリウレタンを注入する前に、当該接続端部のある凹部底面の上記振動吸収板の未敷設箇所に、接着剤を塗布して上記振動吸収板を接着固定するので、他のポリウレタン固定箇所と類似構造となり、レール溶接部における構造上の特異性が除去でき、走行レールどこを取っても列車通過時に当該振動吸収板が収縮して走行レールが適切に沈むので、列車の乗り心地がさらによくなると共によく振動を吸収してレールの耐久性を向上する。
【0047】
さらに、請求項8および請求項16に記載の本発明においては、まず上記走行レールと上記凹部側壁との間および上記脱線防止レールと上記凹部側壁との間に上記ポリウレタンを注入して、上記走行レールと上記凹部側壁との間および上記脱線防止レールと上記凹部側壁との間の上記ポリウレタンの表面レベルが、上記軌道の基礎部上面レベルと略同じにする。これにより、注入された上記ポリウレタンは、上記走行レールおよび上記脱線防止レールのそれぞれの底部下面と振動吸収板との間に上記調整板によって形成された空間を介して、上記走行レールと上記脱線防止レールとの間にまで少々回り込む。この場合、上記走行レールと上記脱線防止レールとの間の上記ポリウレタンの表面レベルは、ポリウレタンの粘性と硬化進行によって、上記走行レールと上記凹部側壁との間および上記脱線防止レールと上記凹部側壁との間の上記ポリウレタンの表面レベルと同じレベルにまで上昇せず、かなり低い位置で停止状態になる。
かかる状態で、上記走行レールと上記脱線防止レールとの間にポリウレタンを継ぎ足すので、それぞれのポリウレタンの表面レベルを、所定の位置にきちんと位置づけることができる。
【0048】
しかも、上記調整板によって上記走行レールと上記脱線防止レールのそれぞれの底部下面と振動吸収板との間に形成される空間を通過するポリウレタンのポリウレタンの流れが一方向側からとなるので、ポリウレタン内に空気が混入する虞もない。
加えて、得られたレールの据付構造は、上記走行レールと上記脱線防止レールとの間の上記ポリウレタン層の表面レベルは、車輪のフランジウエイとして必要な深さを確実に確保できると共に、上記走行レールと上記凹部側壁との間および上記脱線防止レールと上記凹部側壁との間の上記ポリウレタン層の表面レベルが、上記軌道の基礎部上面レベルと略同じになるようにしたので、例えばコンクリートスラブ形成された凹部側壁の保護にもなる。
【0049】
また、請求項9に記載の本発明においては、まずレール軌道の外側に位置する上記凹部側壁と上記走行レールとの間に上記ポリウレタンを注入して、当該凹部側壁と上記走行レールとの間の上記ポリウレタンの表面レベルが、上記軌道の基礎部上面レベルと略同じにする。これにより、注入された上記ポリウレタンは、上記走行レールの底部下面と振動吸収板との間に上記調整板によって形成された空間を介して、上記走行レールの反対側にまで少々回り込む。この場合、反対側に位置するレール軌道の内側の上記凹部側壁と上記走行レールとの間の上記ポリウレタンの表面レベルは、ポリウレタンの粘性と硬化進行によって、レール軌道の外側に位置する上記凹部側壁と上記走行レールとの間の上記ポリウレタンの表面レベルと同じレベルにまで上昇せずに、かなり低い位置で停止状態になる。
かかる状態で、レール軌道の内側にある上記凹部側壁と上記走行レールとの間にポリウレタンを継ぎ足すので、それぞれのポリウレタンの表面レベルを、所定の位置にきちんと位置づけることができる。
【0050】
しかも、上記調整板によって上記走行レールの底部下面と振動吸収板との間に形成される空間を通過するポリウレタンの流れが一方向側からとなるので、ポリウレタン内に空気が混入する虞もない。
加えて、得られたレールの据付構造は、レール軌道の内側の上記凹部側壁と上記走行レールとの間の上記ポリウレタンの表面レベルは、車輪のフランジウエイとして必要な深さを確実に確保できる。
【0051】
さらに、請求項10および請求項18に記載の本発明においては、上記ポリウレタンとしては、ポリイソシアネート プレポリマーと、これにアミンとを混合処理して最終製品を得るようにしたウレタンエラストマーであり、コルク粒を1?10重量%含めたので、車両の走行中に発生する振動や騒音をより効果的に抑制することができて好適である。
【0052】
また、請求項11に記載の本発明においては、上記ポリウレタンを凹部に注入する前に散布するプライマーとして、溶剤に溶解させたポリイソシアネートを採用することにより、ポリウレタンの当該凹部内壁面、振動吸収板、調整板およびレールへの接着強度をよりよく増すことができる。
【0053】
さらに、請求項12および請求項19に記載の本発明においては、上記振動吸収板として、合成ゴムまたは天然ゴムを採用したので、ポリウレタンとのなじみもよく、車両の走行中に発生する振動や騒音をより効果的に抑制することができて好適である。
また、上記接着剤として硬化剤が加えられたエポキシ樹脂接着剤(epoxy resin adhesives)を採用したので、上記凹部底面に確実に接着させることが出来る。
【0054】
また、請求項13に記載の本発明においては、上記調整板は、複数の同じ厚さのまたは異なる厚さの調整板を積み重ねて、所定の高さに調整するようにするので、調整板の組み合わせで調整が可能であり、その都度調整板の厚さ加工をする必要がなく、レールの位置決めを従来に比して正確かつ容易に調整することができる。
【0055】
さらに、請求項14および請求項20に記載の本発明においては、上記振動吸収板にコルク粒を1?20重量%含有させ、上記調整板をコルク板としたので、互いにほぼ同程度の弾性特性を有してなじみが良く、かつポリウレタンとのなじみも良く、また、調整板自体も、振動吸収性と吸音性とを併せ持ち、かつ加工性が容易で高さ調整が容易となる。
【0056】
【発明の実施の形態】
まず、第一実施形態として、本発明の請求項1および請求項15に関連する脱線防止レールが敷設されている側のレールの据付方法および据付構造について説明する。
図1および図2は、脱線防止レールが敷設されている側の一部分を示すもので、図中符号10が軌道の基礎部となるコンクリートスラブ、符号11が走行レール、符号12が脱線防止レールである。このコンクリートスラブ10は、走行レール11の軌道幅よりも幅広で、かつ少なくとも脱線防止レール12を敷設する区間において連続する板状に形成されており、その上面には一方の走行レール11および脱線防止レール12が収納される凹部13と、右方において他方の走行レールが収納される凹部33(図9参照)とが形成されている。
【0057】
この凹部13の底面には、合成ゴム板または天然ゴム板からなる振動吸収板14が、走行レール11および脱線防止レール12の敷設方向に連続して接着剤層22を介して接着固定されている。この振動吸収板14は、合成ゴム板または天然ゴム板のみでもよいが、軌道を走る列車荷重や乗り心地を考慮して、コルク粉等の充填剤の組成や厚さを変えて所定の弾性係数になったものが選定されるのが好ましい。コルク粒は、1?20重量%の範囲で含有されるのが好ましい。
さらに、この振動吸収板14上には、敷設方向に間隔をおいてコルク板からなる高さ調整板15、16が載置されている。ここで、脱線防止レール12の下部に配設された調整板16は、脱線防止レール12の上面12aが、走行レール11の上面11aよりも所定寸法高くなるように、調整板15よりも厚肉に形成されている。そして、これら複数の調整板15、16上に、それぞれ上記走行レール11および脱線防止レール12が敷設されている。
【0058】
ここで、走行レール11および脱線防止レール12は、所定間隔をおいてウエブ11b、12b間にスペーサ17が介装されており、さらにウエブ11b、12bおよびスペーサ17を貫通するボルト18と、当該ボルト18に螺合されたナット19とによって、互いの間隔が保持された状態で一体化されている。また、走行レール11および脱線防止レール12の外側方には、それぞれ塩化ビニル製のパイプ20が付設されている。
【0059】
そして、上記凹部13内に、コルク粉末が1?10重量%混入されるとともに、硬化剤が加えられたポリウレタン21が注入して硬化されることにより、走行レール11および脱線防止レール12が固定されている。この場合、上記ポリウレタン(ウレタン樹脂)として、例えば、ポリイソシアネート プレポリマーと、アミンとの混合物にコルク粒を1?10重量%含めたものが好ましく使用でき、この混合物は所定の場所に注入して一定時間経過すると硬化するもので、車両の走行中に発生する振動や騒音をより効果的に抑制する。
【0060】
次に、図3?図8に基づいて、以上の構成からなるレールの据付構造を得るための第一実施形態に係るレールの据付方法について説明する。
先ず、図3に示すように、上記コンクリートスラブ10の凹部13の底部に、接着剤22を塗布した後に、振動吸収板14を接着固定する。この接着剤22としては、硬化剤が加えられたエポキシ樹脂接着剤(epoxy resin adhesives)が好ましく使用できる。例えば、エポキシ基を2個以上含む液状のプレポリマーに硬化剤としてポリアミンなどを加えると常温で硬化し強い接着力を発揮するものであれば、硬化後もほとんど収縮せず、接着層の膜厚が大きくても亀裂が入らず接着力の低下しない特性を有し、凹部13底面と振動吸収板14とを確実に接着させることが出来るために好適である。
【0061】
なお、振動吸収板14の幅は、凹部13の底部の幅より小さく形成されている。これは、凹部13の底部に振動吸収板14を接着固定した状態で、振動吸収板14の両側に凹部13の底部が露出するようにするためであり、これによりポリウレタン21を注入して固化させる際に、ポリウレタン21が凹部13の底部の一部に接して、振動吸収板14を包み込み強固に固定すると共に、ポリウレタン21自身も凹部13の底部に接して全体的に強度を上げる。
【0062】
次いで、この振動吸収板14の上面から走行レール11および脱線防止レール12の上面11a、12aとなるべきレベルまでの高さ寸法を、レール11、12の敷設方向に適宜間隔をおいて測定して、図4に示すように、それぞれの測定箇所の高さ寸法に対応した厚さ寸法を有する上記調整板15、16を、振動吸収板14上に載置する。
すなわち、走行レール11および脱線防止レール12の各レベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板15、16を、走行レール11と脱線防止レール12のそれぞれの下面敷設位置に沿って、間隔をおいて各々の上記振動吸収板14上に置く。
【0063】
この調整板15、16の高さ寸法の調整は、複数の同じ厚さまたは異なる厚さの調整板、例えば厚さが1mm、2mm、3mmおよび5mmの調整板を複数用意しておき、これら調整板を組み合わせて、所定の高さに積み重ねる。これにより、その都度調整板の厚さ加工をする必要がなく、レールの位置決めを従来に比して正確かつ容易に調整することができる。また、調整板としては、振動吸収性と吸音性とを併せ持ち、かつポリウレタンと同程度の弾性特性を有してなじみが良く、加工性が容易なコルク板が好適である。
【0064】
また、走行レール11と脱線防止レール12とのレベル差は常に一定なので、走行レール11用の調整板15と脱線防止レール12用の調整板16とを一体に形成した調整板を用意して、走行レール11および脱線防止レール12の各レベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した一体型の調整板を、走行レール11および脱線防止レール12の下面敷設位置に沿って、間隔をおいて振動吸収板14上に置くようにしてもよい。
【0065】
また、これと並行して、走行レール11と脱線防止レール12とを上記スペーサ17およびボルト18、ナット19によって、互いの間隔が保持された状態に一体化する。レールの長さは一般に規格寸法が25mであるが、これらを予め溶接接続して所要の長さにした後、互いの間隔が保持された状態に一体化するとよい。一体化した走行レール11および脱線防止レール12の外側方に、塩化ビニル製のパイプ20を、スペーサ兼水平位置調節用リング23および適宜間隔をおいて巻回された針金やプラスチックバンド(図6参照)24によって付設しておく。
そして、図5に示すように、調整板15、16上に、これらパイプ20も一体化された走行レール11および脱線防止レール12を置く。
【0066】
次いで、図6に示すように、パイプ20に装着した水平位置調節用リング23と凹部13の側壁との間にコルク製のくさび部材25を打ちこんで、走行レール11および脱線防止レール12の水平方向の位置を調節する。そして、このようにして走行レール11および脱線防止レール12等の位置決めが完了した後に、針金やプラスチックバンド24を取り去る。
【0067】
次に、図7に示すように、凹部13内の全体に後工程で注入されるポリウレタン21との接着強度を増すためのプライマー26を散布する。このプライマー26としては、例えば塩化メチレン、二塩化メチレン等に、4,4´-ジフェニルメタン ジイソシアネートを20重量%程度溶解させたものが好ましく使用できる。
【0068】
次に、走行レール11と凹部13の側壁との間および脱線防止レール12と凹部13の側壁との間に、上記ポリウレタン21を注入する。走行レール11と凹部13の側壁との間および脱線防止レール12と凹部13の側壁との間のポリウレタン21の表面レベルが、コンクリートスラブ10の上面レベルと同じになるようにポリウレタン21を注入する。これにより、注入されたポリウレタン21は、走行レール11および脱線防止レール12のそれぞれの底部下面と振動吸収板14との間に調整板15、16によって形成された隙間を介して、走行レール11と脱線防止レール12との間にまで少々回り込む。この場合、走行レール11と脱線防止レール12との間のポリウレタン21の表面レベルは、ポリウレタン21の粘性と硬化進行によって、走行レール11と凹部13の側壁との間および脱線防止レール12と凹部13の側壁との間のポリウレタン21の表面レベルと同じレベルにまで上昇せずに、かなり低い位置で停止状態になる。
【0069】
かかる状態で、走行レール11と脱線防止レール12との間に、ポリウレタン21を継ぎ足し、その走行レール11と脱線防止レール12との間のポリウレタン21の表面レベルを、走行レール11の頭部の下端部に位置するようにする。
これにより、ポリウレタン21の各表面レベルを所定の位置にきちんと位置づけて、凹部13内にポリウレタン21を充填できるとともに、当該ポリウレタン21はセルフレベリング性を有するために、上面に滑らかな水平面が自然に形成される。
そして、一定時間経過して、上記ポリウレタン21が硬化することにより、図1および図2に示した、走行レール11および脱線防止レール12の据付構造が完了する。
【0070】
このような上記構成からなるレールの据付構造および据付方法によれば、スペーサ17によって互いの間隔が保持された走行レール11と脱線防止レール12とが、軌道の基礎部となるコンクリートスラブ10の上面に形成された凹部13内において、全長にわたってウエブ11b、12bおよび下部フランジ全面がポリウレタン21により拘束されているために、長期間の使用によっても脱線防止レール12に傾きが生じることがない。また、両レール11、12の全面がポリウレタン21により拘束されているために、従来の枕木や犬釘を用いたレールの据付構造のように、レールが間欠的な点で支持されている場合と比較して、振動の発生やレール11、12における偏摩耗の発生を大幅に低減化させることができる。
【0071】
さらに、走行レール11および脱線防止レール12を、コンクリートスラブ10の上面に形成された凹部13内において支持している結果、従来のように枕木や犬釘を使用する必要が無いために、これらレール11、12の保守点検作業を大幅に軽減することができるとともに、これらのレール11、12として種々の形状のものを使用することが可能になる。
【0072】
また、ポリウレタン21としてコルク粉末が混入されたポリウレタンを使用するとともに、凹部13の底部に振動吸収板となる振動吸収板14を敷設し、この振動吸収板14上に、さらにコルク製の調整板15、16を介して走行レール11と脱線防止レール12とを載置しているので、車両の走行中に発生する振動や騒音を効果的に抑制することができる。
【0073】
また、上記レールの据付方法によれば、凹部13の底面と走行レール11および脱線防止レール12の上面レベルとの高さを測定し、その測定値に対応した厚さ寸法を有する複数の調整板15、16を、それぞれ走行レール11と脱線防止レール12との下面位置に沿って載置しているので、凹部13底面の高さに不均一があっても、調整板15、16によってこれを吸収することにより、高い走行面の精度を確保することができる。
【0074】
加えて、複数の調整板15、16を、レール11、12の敷設方向に所定間隔(例えば1?2m)をおいて載置している結果、調整板間に位置するレール11、12と振動吸収板14との間に空間が形成され、後でポリウレタン21を凹部13に注入することにより該空間にポリウレタン21の充填層が形成され、調整板15、16が振動吸収板14に固定されると共に走行レール11自体および脱線防止レール12自体も強固に固定される。したがって、調整板15、16は単に振動吸収板14上に置くだけでよく、施工が簡単であり、ボルト、ナット、犬釘、タイプレート等の締結金具や枕木を調整しながら実施していた従来の高さ調整と比べ、位置決めを1mm単位で正確かつ容易に実施できる。
【0075】
さらに、調整板間に位置するレール11、12と振動吸収板14との間の空間がポリウレタンの流路になるために、上述した走行レール11と凹部13の側壁との間および脱線防止レール12と凹部13の側壁との間に、まず上記ポリウレタン21を注入して、走行レール11と凹部13の側壁との間および脱線防止レール12と凹部13の側壁との間のポリウレタン21の表面レベルが、コンクリートスラブ10の上面レベルと同じになるようにした後に、走行レール11と脱線防止レール12との間に、ポリウレタン21を継ぎ足し、その走行レール11と脱線防止レール12との間のポリウレタン21の表面レベルが、走行レール11の頭部の下端部に位置するようにしたので、ポリウレタン21の各表面レベルを所定の位置にきちんと位置づけて、凹部13内にポリウレタン21を充填できる。加えて、調整板15、16によって走行レール11と脱線防止レール12のそれぞれ底部下面と振動吸収板14との間に形成される空間を通過するポリウレタンの流れが一方向側からとなるので、ポリウレタン内に空気が混入して大きな空隙が生ずる虞もない。
【0076】
また、上記ポリウレタン21は、セルフレベリング性を有しているために、別途コテ等を使用して上面を均すことなく、水平面を得ることができる。この結果、総じて作業が容易である。加えて、得られたレールの据付構造は、走行レール11と脱線防止レール12との間のポリウレタン層21の表面レベルが、車輪のフランジウエイとしての必要な深さを確保することができるとともに、走行レール11と凹部13側壁との間および脱線防止レール12と凹部13側壁との間のポリウレタン層21の表面レベルが、コンクリートスラブ10上面レベルと略同じになるようにしたので、凹部13の側壁の保護にもなる。
【0077】
さらに、振動吸収板14の敷設に際しては、凹部13の底面に接着剤22を塗布した後、振動吸収板14を置いて凹部13の底面に接着固定するようにしたので、凹部13の底面と振動吸収板14との接合がなされ、ポリウレタン21による凹部13側面からのレール拘束に加えて、凹部13底面からのレール拘束がなされ、走行レール11の温度収縮によって発生するレール軸力に対する拘束力が増して、レールの熱収縮によるレール分岐部等への応力集中が確実に回避され、これらの破損が防止されるという作用も奏する。
【0078】
さらに、走行レール11および脱線防止レール12と凹部13の側壁との間に、それぞれパイプ20を配設しているので、凹部13内に注入すべきポリウレタン21の容量を低減化させることができて経済性に優れるとともに、当該パイプ20内を、車両運行等に必要な電線や光ファイバ等の収納管として利用することもできる。
【0079】
次に、第二実施形態として、本発明の請求項4および請求項17に関連する上記コンクリートスラブ10の他方の走行レール11のみが収納される他方の凹部33(図9参照)におけるレールの据付方法および据付構造について説明する。
この凹部33の底面にも、合成ゴム板または天然ゴム板からなる振動吸収板14が走行レール11の敷設方向に連続して接着剤層22を介して接着固定されている。この振動吸収板14も、合成ゴム板または天然ゴム板のみでもよいが、軌道を走る列車荷重や乗り心地を考慮して、コルク粉等の充填剤の組成や厚さを変えて所定の弾性係数になったものが選定される。コルク粒は、1?20重量%の範囲で含有されるのが好ましい。
【0080】
さらに、この振動吸収板14上には、間隔をおいてコルク板からなる高さ調整板15が載置されている。そして、これら複数の調整板15上に、走行レール11が敷設されている。
ここで、走行レール11の外側方には、それぞれ塩化ビニル製のパイプ20が付設されている。そして、上記凹部33内に、前述の実施形態と同じポリウレタン21を注入して硬化することにより、走行レール11が固定されている。
【0081】
次に、図10?図15に基づいて、以上の構成からなる走行レールの据付構造を得るための第二実施形態に係るレールの据付方法について説明する。
先ず、図10に示すように、上記コンクリートスラブ10の凹部33の底部に、接着剤22を塗布した後に、振動吸収板14を接着固定する。この接着剤22としては、前述の実施形態と同様に硬化剤が加えられたエポキシ樹脂接着剤が好ましく使用でき、凹部33底面と振動吸収板14とを確実に接着させることが出来る。なお、振動吸収板14の幅は、凹部33の底部の幅より小さく形成されている。これは前述と同様、凹部33の底部に振動吸収板14を接着固定した状態で、振動吸収板14の両側に凹部33の底部が露出するようにするためであり、これによりポリウレタン21を注入して固化させる際に、ポリウレタン21が凹部33の底部の一部に接して、振動吸収板14を包み込み強固に固定すると共に、ポリウレタン21自身も凹部33の底部に接して全体的に強度を上げる。
【0082】
次いで、この振動吸収板14の上面と走行レール11の上面11aとが所定のレベルになるまでの高さ寸法を、レール11の敷設方向に適宜間隔をおいて測定して、図11に示すように、それぞれの測定箇所の高さ寸法に対応した厚さ寸法を有する上記調整板15を、振動吸収板14上に載置する。この調整板15の高さ寸法の調整は、複数の同じ厚さまたは異なる厚さの調整板、例えば厚さが1mm、2mm、3mmおよび5mmの調整板を複数用意しておき、これら調整板を組み合わせて、所定の高さに積み重ねる。これにより、その都度調整板の厚さ加工をする必要がなく、レールの位置決めを従来に比して正確かつ容易に調整することができる。また、調整板としては、振動吸収性と吸音性とを併せ持ち、かつポリウレタンと同程度の弾性特性を有してなじみが良く、加工性が容易なコルク板が好適である。
【0083】
また、これと並行して、走行レール11を所要の長さにする。すなわち、レールの長さは一般に規格寸法が25mであるが、これらを予め溶接接続して所要の長さにした後、走行レール11両側に、塩化ビニル製のパイプ20を、スペーサ兼水平位置調節用リング23および適宜間隔をおいて巻回された針金やプラスチックバンド(図13参照)24によって付設しておく。そして、図12に示すように、調整板15上に、これらパイプ20が一体化された走行レール11を置く。
【0084】
次いで、図13に示すように、パイプ20に装着した水平位置調節用リング23と凹部33の側壁との間にコルク製のくさび部材25を打ちこんで、走行レール11の水平方向の位置を調節する。そして、このようにして走行レール11の位置決めが完了した後に、針金やプラスチックバンド24を取り去る。
次に、図14に示すように、凹部33内の全体に後工程で注入されるポリウレタン21との接着強度を増すための第一実施形態と同様のプライマー26を散布する。
【0085】
次に、図15に示すように凹部33のレール軌道の外側に位置する側壁33a(図において右側の側壁)と走行レール11との間に、上記ポリウレタン21を注入する。その凹部33の側壁33aと走行レール11の間のポリウレタン21の表面レベルが、コンクリートスラブ10の上面レベルと同じになるように、ポリウレタン21を注入する。これにより、注入されたポリウレタン21は、走行レール11の底部下面と振動吸収板14との間に調整板15によって形成された隙間を介して、走行レール11の反対側にまで少々回り込む。この場合、走行レール11の反対側に位置する、凹部33のレール軌道の内側の側壁33bと走行レール11との間のポリウレタン21の表面レベルは、ポリウレタン21の粘性と硬化進行によって、レール軌道の外側に位置する凹部33の側壁33a側のポリウレタン21の表面レベルと同じレベルにまで上昇せずに、かなり低い位置で停止状態になる。
【0086】
かかる状態で、レール軌道の内側に位置する凹部33の側壁33bと走行レール11との間に、ポリウレタン21を継ぎ足し、そのポリウレタン21の表面レベルを、走行レール11の頭部の下端部に位置するようにする。
これにより、ポリウレタン21の各表面レベルを所定の位置にきちんと位置づけて、凹部33内にポリウレタン21を充填できるとともに、当該ポリウレタン21はセルフレベリング性を有するために、上面に滑らかな水平面が自然に形成される。
【0087】
このような上記第二実施形態の構成からなるレールの据付構造および据付方法によれば、走行レール11が、軌道の基礎部となるコンクリートスラブ10の上面に形成された凹部33内において、全長にわたってウエブ11bおよび下部フランジ全面がポリウレタン21により拘束されているために、長期間の使用によっても走行レール11の保持に影響がない。また、従来の枕木や犬釘を用いたレールの据付構造においては、レールが間欠的な点で支持されていために、比較的大きな振動が発生すると共に、偏摩耗が生じ易いのに対して、この実施形態においては、走行レール11が凹部33内に充填されたポリウレタン21によって連続的に面で支持されるために、当該振動の発生を抑えることができ、かつレールの偏摩耗も生じる虞がない。
【0088】
さらに、走行レール11を、コンクリートスラブ10上面に形成された凹部33内において支持している結果、従来のように犬釘やスクリュースパイキ等の締結金具を使用する必要が無いために、これらレールの保守点検作業を大幅に軽減することが可能になるとともに、これらのレールとして種々の形状のものを使用することができる。
また、凹部33の底面に振動吸収板14を敷設するので、列車通過時に当該振動吸収板14が収縮して走行レールが適切に沈むので、列車の乗り心地がよくなると共に振動を吸収する。さらに、ポリウレタン21で走行レール11の下部フランジおよびウエブの全面が拘束されているために、この点からも相乗的に振動を吸収し、騒音も極めて少なく、走行レールの使用寿命の長期化も図ることができ、かつ乗り心地が良く安全性に優れている。
【0089】
また、走行レール11のレベルが所定のレベルとなるように、高さ寸法を調整した調整板15を、走行レール11の下面敷設位置に沿って、振動吸収板14上に置くので、凹部33底面の高さに不均一があっても、調整板15により高い走行面の精度を確保することが可能になり、高さ調整の自由度が増大する。しかも、調整板15を、走行レールの下面敷設位置に沿って、所定間隔(例えば1?2m)をおいて置くので、これら調整板15によって走行レール11の底部下面と振動吸収板14との間に空間が形成され、後でポリウレタン21を凹部に注入することにより該空間にポリウレタン21の充填層が形成され、調整板15が振動吸収板14に固定されると共に走行レール11自体も強固に固定される。したがって、調整板15は単に振動吸収板14上に置くだけでよく、施工が簡単であり、ボルト、ナット、犬釘、タイプレート等の締結金具や枕木を調整しながら実施していた従来の高さ調整と比べ、位置決めを1mm単位で正確かつ容易に実施できる。。
しかも、凹部へポリウレタンを注入するに際して、セルフレベリング性を有するポリウレタンを使用しているために、別途上面を均すことなく水平面を得ることができ、よって総じて作業が容易である。
【0090】
また、この第二実施形態においては、まずレール軌道の外側に位置する凹部33側壁33aと走行レール11との間にポリウレタン21を注入して、この凹部33の側壁33aと走行レール11との間のポリウレタン21の表面レベルが、コンクリートスラブ10上面レベルと同じにした後に、レール軌道の内側にある凹部33の側壁33bと走行レール11との間にポリウレタン21を継ぎ足すので、それぞれのポリウレタン21の表面レベルを、所定の位置にきちんと位置づけることができる。
【0091】
しかも、調整板15によって走行レール11の底部下面と振動吸収板14との間に形成される空間を通過するポリウレタン21の流れが一方向側からとなるので、ポリウレタン21内に空気が混入する虞もない。
加えて、得られたレールの据付構造は、レール軌道の内側の凹部33の側壁33bと走行レール11との間のポリウレタン21の表面レベルは、車輪のフランジウエイに必要な深さを確実に確保できる。
【0092】
さらに、振動吸収板14の敷設に際しては、凹部33の底面に接着剤22を塗布した後、振動吸収板14を置いて凹部33の底面に接着固定するようにしたので、凹部33の底面と振動吸収板14との接合がなされ、ポリウレタン21による凹部33側面からのレール拘束に加えて、凹部33底面からのレール拘束がなされ、走行レール11の温度収縮によって発生するレール軸力に対する拘束力が増して、走行レール11の熱収縮によるレール分岐部等への応力集中が確実に回避され、これらの破損が防止されるという作用も奏する。
【0093】
また、ポリウレタン21としてコルク粉末が混入されたポリウレタンを使用するとともに、凹部13の底部に振動吸収板となる振動吸収板14を敷設し、この振動吸収板14上に、さらにコルク製の調整板15を介して走行レール11を載置しているので、車両の走行中に発生する振動や騒音を効果的に抑制することができる。
さらに、走行レール11と凹部33の側壁との間に、それぞれパイプ20を配設しているので、凹部33内に注入すべきポリウレタン21の容量を低減化させることができて経済性に優れるとともに、当該パイプ20内を、車両運行等に必要な電線や光ファイバ等の収納管として利用することもできる。
【0094】
なお、軌道の基礎部として、第一実施形態の走行レール11と脱線防止レール12を支持するためのレール支持構造と第二実施形態の走行レール11を支持するためのレール支持構造とを形成する2条の凹部が形成された一体型のコンクリートスラブ10を用いると、両走行レール11の間隔や高さ精度を容易に調節することができる。
【0095】
以上の実施形態においては、本発明を、一方の走行レール11に沿って脱線防止レール12が必要とされる曲線区間に適用した場合について説明したが、以下に踏切や橋梁等に適用した第三実施形態を示す。なお、第一および第二実施形態と同一構成部分に付いては、同一符号を付してその説明を簡略化する。
図16に示すように、この実施形態においては、コンクリートスラブ40に2条の凹部が形成され、それぞれの凹部に、前述の第一実施形態の走行レール11と脱線防止レール12を支持するためのレール支持構造が共に形成されている。ここで、走行レール11および脱線防止レール12等の配置は、軌道中心線を中心として左右対称となっており、軌道の内側に脱線防止レール12がそれぞれ設けられている。それぞれの走行レール11は、脱線防止レール12が沿っていない凹部区画を抜けた部分においては、従来の枕木2に犬釘やスクリュースパイキによって固定されている。本実施形態においても、前述の第一実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0096】
次に、図17および図18に基づいて、軌道の基礎部上面に設けた凹部内で走行レールを溶接してロングレール化を行うことができる、本発明に係るレールの据付方法の第四実施形態?第七実施形態について説明する。
なお、以下の各実施形態は、もっぱら走行レール11と、これに接続される接続走行レールとの接続に係るものであり、走行レール11および脱線防止レール12自体の据付方法に関しては、第一および第二実施形態に示したものと同様であるために、以下同一符号を付してその説明を省略する。
【0097】
先ず、上記各実施形態によって得られたレールの据付け構造について説明すると、コンクリートスラブ(基礎部)50には、2条の凹部13、33が形成され、内軌側(図17において下側)の凹部13に、走行レール11と脱線防止レール12が敷設され、外軌側(図17において上側)の凹部33に、走行レール11が敷設されている。ここで、凹部13内においては、走行レール11の接続端部11eが脱線防止レール12の端部よりも敷設方向に突き出る状態で収納されている。
【0098】
そして、凹部13、33には、それぞれ走行レール11の接続端部11eの近傍位置に、溶接用凹部13e、33eが形成されている。これら溶接用凹部13e、33eは、レール溶接スペースを確保するために幅広に、かつより深く形成されたものである。ちなみに、これら溶接用凹部13e、33eの大きさとしては、走行レール11同士を溶接できるスペースがあればよく、例えば、深さ20?30cm、幅35?45cm程度で充分である。そして、各溶接用凹部13e、33e内において、敷設方向に隣接する走行レール11の接続端部11e同士が溶接されることにより、ロングレール化が図られている。
なお、図18のコンクリートスラブ50の中央には、窪みが形成され、その窪みにの下層に、砂、アスファルト等の路床材が設けられ、上層に舗装用敷石が設けられている。
【0099】
次に、内軌側の凹部13に形成されるレールの据付構造を得るための、本発明の請求項2に関連するレールの据付方法の第四実施形態について説明する。
先ず、コンクリートスラブ50に、上記凹部13および溶接用凹部13eを形成し、第一実施形態に示したものと同様に、一体化された走行レール11および脱線防止レール12を据付ける。この際に、走行レール11の両接続端部11eが脱線防止レール12の両接続端部より突出する状態で凹部13内に敷設し、上記接続端部11eを溶接用凹部13e内に位置させる。また、振動吸収板14は、上記凹部13における走行レール11と脱線防止レール12とが並列している部分の底面に接着固定するが、レール溶接スペースの溶接用凹部13eの近くまで敷設して差し支えない。なお、走行レール11の接続端部11eの両側部には、レール溶接接続の邪魔になるので、この時点では塩化ビニル製のパイプ20およびスペーサ兼水平位置調節用リング23を付設しておかない。
【0100】
次に、凹部13内において、コルク製のくさび部材25を打ち込むことにより走行レール11および脱線防止レール12を位置決めした後に、走行レール11と脱線防止レール12とが並列する凹部13部分、すなわち凹部13における走行レール11の脱線防止レール12が沿っていない接続端部11eに対応する部分(溶接用凹部13e近傍)を除く凹部13部分に、第一実施形態や第二実施形態と同様に、セルフレベリング性を有するポリウレタン21を注入して硬化させる。
【0101】
この際、このポリウレタン21の注入は、走行レール11末端から1?2mの範囲は、溶接熱の影響を避けるために注入しない。これに対して、前述の振動吸収板14は、溶接される走行レール11と接触しておらず溶接熱が伝わらないので、溶接の火花が当たらなければ、レール溶接スペースの溶接用凹部13e近くまで敷設して差し支えない。すなわち、上述の接続端部11eに対応する部分(溶接用凹部13e近傍)の外延は、各素材に溶接の熱が伝わって当該素材に悪影響を及ぼす範囲によりそれぞれ決定される。
【0102】
また、走行レール11および脱線防止レール12の外側方にそれぞれ付設した塩化ビニル製のパイプ20、20の末端は、接続延長する場合には、ポリウレタン21に埋め込まれないように、パイプ20、20を貫通させた仕切壁をポリウレタン注入箇所の端部に設けてポリウレタン21を注入するのがよい。この仕切壁はポリウレタン21が硬化したあと除く。
また、接続延長しない場合には、パイプ20、20の端部を粘着テープ等により閉塞してから、ポリウレタン21を注入して埋め込むようにする。
【0103】
次に、ポリウレタン21で固定された走行レール11の接続端部11eと、当該走行レール11に接続される接続端部を除きポリウレタン21で固定された接続走行レールとを溶接接続する。すなわち、走行レール11に接続されるべき接続走行レールが、既にポリウレタン21で接続端部を除き凹部13内に固定されていれば、直ちに接続端部11e同士を溶接接続する。一方、走行レール11に接続されるべき接続走行レールが、未だポリウレタン21で固定されていなければ、その接続走行レールを第二実施形態と同様の手順によってポリウレタン21で接続端部を除き固定した後に、当該接続端部11e同士を溶接接続する。
【0104】
このようにして接続端部11e同士の溶接接続が完了した後に、先ず溶接用凹部13e近傍の未敷設箇所に振動吸収板14を接着固定して敷設する。なお、この振動吸収板14の敷設は、距離が短いので省略することもできる。また、接続端部11eのある溶接用凹部13e近傍において、走行レール11および脱線防止レール12の外側方にそれぞれ付設されポリウレタン21で固定されている塩化ビニル製のパイプ20、20の各末端と、接続走行レールの両外側にそれぞれ付設されポリウレタン21で固定されている塩化ビニル製のパイプ20、20の各末端とを、新たな塩化ビニル製のパイプ20、20を継ぎ足して連結する。さらに必要により、溶接接続された当該接続端部のある溶接用凹部13e近傍において、スペーサ兼水平位置調節用リング23を付設する。
【0105】
なお、走行レール11や脱線防止レール12の外側方にそれぞれ付設した塩化ビニル製のパイプ20の末端を、接続延長しない場合は、塩化ビニル製のパイプ20、20の継ぎ足し接続やスペーサ兼水平位置調節用リング23の付設を省略する。
そして次に、溶接用凹部13e近傍に、プライマーを散布した後、セルフレベリング性を有するポリウレタン21を注入して硬化させる。これにより、コンクリートスラブ50に設けた凹部13内で走行レール11を溶接し、ロングレール化行った走行レール11および脱線防止レール12の据付構造が完了する。
【0106】
かかる第四実施形態においても、前述の第一および第二実施形態と同様の作用効果が得れるとともに、さらに走行レール11の接続端部11eを残してポリウレタン21で固定し、この接続端部11eと、同様にポリウレタン21で固定された隣接する接続走行レールの接続端部とを凹部13内で溶接接続するようにしたので、レール位置が固定されている結果、溶接が容易であり、かつ溶接後のレール位置調整も不要であるという効果も得られる。しかも、走行レール11を凹部13内で溶接接続するようにしたので、従来のレールの継ぎ目を無くし、振動の少ない良好な乗り心地を得ることができると共に、従来のレール継ぎ目部における衝撃の発生が無くなり、レールおよび軌道構造が延命される。
【0107】
また、溶接接続された接続端部11eのある凹部13にポリウレタン21を注入する前に、接続端部11eのある凹部13底面の振動吸収板14の未敷設箇所に、接着剤を塗布して振動吸収板14を接着固定する場合は、他のポリウレタン21固定箇所と類似構造となり、レール溶接部における構造上の特異性が除去でき、走行レール11の全長にわたって列車通過時に振動吸収板14が収縮して走行レールが適切に沈むので、列車の乗り心地がさらによくなると共によく振動を吸収してレールの耐久性を向上する。
【0108】
次に、上記内軌側の凹部13に形成されるレールの据付構造を得るための他のレールの据付方法である第五実施形態(本発明の請求項3に関連する)について説明する。
本実施形態においても、上記第四実施形態と同様に、コンクリートスラブ50に凹部13および溶接凹部13eを形成し、底面の所定箇所に振動吸収板14を接着固定した後に、調整板15、16を載置し、これら調整板15、16上に、スペーサ17によって互いに間隔が保持された走行レール11および脱線防止レール12を置いて、コルク製のくさび部材25を打ち込み、位置決めをする。
【0109】
次に、本実施形態においては、走行レール11の接続端部11eと、凹部13に設置された接続走行レールとを溶接接続する。その際、接続走行レールが、既に第二実施形態の手順によって、当該走行レール11に接続される接続端部を除きポリウレタン21で固定されているのが好ましい。接続走行レールがポリウレタン21で固定されていない場合は、振動吸収板14の接着固定と、調整板15の設置と、調整板15への載置が完了して、少なくとも溶接のための位置決めがなされていなければならない。
【0110】
そして、接続端部11e同士の溶接接続が完了したら、溶接による熱歪み等により走行レール11や脱線防止レール12の位置が狂っている場合もあるので、パイプ20に装着した水平位置調節用リング23と凹部13の側壁との間にコルク製のくさび部材25を調整して、再度位置決めを行う。
次に、接続端部11eのある溶接用凹部13e近傍の底面の振動吸収板14の未敷設箇所に、同様に振動吸収板14を接着固定して敷設する。なお、この振動吸収板14の敷設は、距離が短いので省略することもできる。
【0111】
さらに、溶接接続された当該接続端部のある溶接用凹部13e近傍において、走行レール11および接続走行レールの外側方にそれぞれ付設された塩化ビニル製のパイプ20、20の各末端同士を、新たな塩化ビニル製のパイプ20、20を継ぎ足して連結する。さらに必要により、溶接接続された当該接続端部のある溶接用凹部13e近傍において、スペーサ兼水平位置調節用リング23を付設する。なお、上記塩化ビニル製のパイプ20の末端を接続延長しない場合は、第四実施形態と同様に、塩化ビニル製のパイプ20、20の継ぎ足し接続やスペーサ兼水平位置調節用リング23の付設を省略し、各パイプ20、20の端部を粘着テープ等により塞ぐ。
【0112】
このようにして走行レール11および脱線防止レール12が位置決めされた状態で、走行レール11と脱線防止レール12とが並列した部分と、溶接接続された接続端部11eとがある凹部13および溶接用凹部13eに、プライマーを散布した後、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させる。
また、走行レール11に溶接接続された接続走行レールが、ポリウレタン21で固定されていない場合は、その接続走行レールの接続端部だけでなく、その全長に渡ってセルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させるようにするとよい。
【0113】
なお、走行レール11の図示されない他方の接続端部が未溶接の場合は、当該未溶接接続端部に対応する部分を除いた凹部13部分に対して、プライマー散布とポリウレタン注入とを行う。この場合、このポリウレタン21の注入は、走行レール11末端から1?2mの範囲を、後工程でのレール接続溶接による溶接熱の影響を避けるために注入しないようにする。
これに対して、前述の振動吸収板14は、溶接される走行レール11と接触しておらず溶接熱が伝わらないので、溶接の火花が当たらなければ、レール溶接スペースの溶接用凹部13e近くまで敷設して差し支えない。
【0114】
また、上記未溶接接続端部の近傍における走行レール11および脱線防止レール12の外側方にそれぞれ付設した塩化ビニル製のパイプ20、20の末端は、接続延長する場合には、ポリウレタン21に埋め込まれないように、パイプ20、20を貫通させた仕切壁をポリウレタン注入箇所の端部に設けてポリウレタン21を注入するのがよい。この仕切壁はポリウレタン21が硬化したあと除く。また、接続延長しない場合には、パイプ20、20の端部を粘着テープ等により閉塞してから、ポリウレタン21を注入して埋め込むようにする。これにより、コンクリートスラブ50に設けた凹部13内で走行レール11を溶接し、ロングレール化行った走行レール11および脱線防止レール12の据付構造が完了する。
【0115】
以上の構成からなる第五実施形態も、第一および第二実施形態と同様の作用効果を奏すると共に、このようなレールの据付方法によれば、調整板15、16上に走行レール11と脱線防止レール12とが置かれた状態で、走行レール11の接続端部11eを接続走行レールの接続端部と溶接した後に、溶接された接続端部11eを含めて走行レール11をポリウレタン21で固定するようにしたので、ポリウレタン21の注入を、接続端部11eと走行レール11本体や脱線防止レール12本体とに分ける必要がなく、一度に行うことができる。したがって、ポリウレタン21の注入に係わる施工手順が錯交することがない。しかも、レールを凹部13内で溶接接続するようにしたので、従来のレールの継ぎ目を無くし、振動の少ない良好な乗り心地を得ることができると共に、従来のレール継ぎ目部における衝撃の発生が無くなり、レールおよび軌道構造が延命される。
【0116】
次に、外軌側(図17において上側)の凹部33に形成される走行レールの据付構造を得るための、本発明のレールの据付方法の第六実施形態(本発明の請求項5に関連)について説明する。
先ず、コンクリートスラブ50に、走行レール11を収納可能な上記凹部33および溶接用凹部33eを形成し、第二実施形態と同様に、凹部33内にパイプ20が一体化された走行レール11を敷設し、各接続端部11eがそれぞれの溶接用凹部33eに位置するように配置する。この際に、振動吸収板14は、走行レール11の接続端部11eの近傍を除いた凹部33の底面に接着固定するが、レール溶接スペースの溶接用凹部33eの近くまで敷設して差し支えない。なお、走行レール11の接続端部11eの両側部には、レール溶接接続の邪魔になるので、この時点では塩化ビニル製のパイプ20およびスペーサ兼水平位置調節用リング23を付設しない。
【0117】
次いで、第二実施形態と同様に、パイプ20に装着した水平位置調節用リング23と凹部33の側壁との間にコルク製のくさび部材25を打ちこんで位置決めを行なった後に、走行レール11の接続端部11eを除く敷設位置部分に対応する凹部33部分に、すなわち凹部33における走行レール11の接続端部11eに対応する部分(溶接用凹部33e近傍)を除く敷設位置の凹部33部分に、セルフレベリング性を有するポリウレタン21を注入して硬化させる。
【0118】
この際、このポリウレタン21の注入は、走行レール11末端から1?2mの範囲は、溶接熱の影響を避けるために注入しない。これに対して、前述の振動吸収板14は、溶接される走行レール11と接触しておらず溶接熱が伝わらないので、溶接の火花が当たらなければ、レール溶接スペースの溶接用凹部33e近くまで敷設して差し支えない。すなわち、上述の接続端部11eに対応する部分(溶接用凹部33e近傍)の外延は、各素材に溶接の熱が伝わって当該素材に悪影響を及ぼす範囲により、それぞれ決定される。
また、塩化ビニル製のパイプ20、20の末端処理は、第四実施形態に示した場合同様である。
【0119】
次に、ポリウレタン21で固定された走行レール11の接続端部11eと、接続端部を除きポリウレタン21で固定された接続走行レールとを溶接接続する。すなわち、走行レール11に接続されるべき接続走行レールが、既にポリウレタン21で接続端部を除き固定されていれば、直ちに接続端部11e同士を溶接接続する。一方、走行レール11に接続されるべき接続走行レールが、未だポリウレタン21で固定されていなければ、その接続走行レールをポリウレタン21で接続端部を除き固定した後に、当該接続端部同士を溶接接続する。
【0120】
そして、以降第四実施形態に示した場合と同様に、接続端部11eのある溶接用凹部33e近傍の未敷設箇所への振動吸収板14の敷設、塩化ビニル製のパイプ20の各末端同士の連結等を行ない、最終的に接続端部11eのある溶接用凹部33e近傍に、プライマーを散布してセルフレベリング性を有するポリウレタン21を注入して硬化させることにより、コンクリートスラブ50に設けた凹部33内で走行レール11を溶接し、ロングレール化行った走行レール11の据付構造が完了する。
したがって、本第六実施形態によれば、前述の第二実施形態および第四実施形態に示したものと同様の作用効果を得ることができる。
【0121】
次いで、外軌側の凹部33に形成されるレールの据付構造を得るための他のレールの据付方法である第七実施形態(本発明の請求項6に関連する)について説明する。
本実施形態においても、上記第六実施形態と同様に、コンクリートスラブ50に凹部33および溶接凹部33eを形成し、底面の所定箇所に振動吸収板14を接着固定した後に、調整板15、16を載置し、これら調整板15、16上に、スペーサ17によって互いに間隔が保持された走行レール11を置いて、コルク製のくさび部材25を打ち込み、位置決めをする。
【0122】
次に、本実施形態においては、第五実施形態と同様にして、走行レール11の接続端部11eと、凹部33に設置された接続走行レールとを溶接接続する。その際、同様に接続走行レールは、接続端部を除きポリウレタン21で固定されているのが好ましいが、接続走行レールがポリウレタン21で固定されていない場合は、振動吸収板14の接着固定と、調整板15の設置と、調整板15への載置が完了して、少なくとも溶接のための位置決めがなされていなければならない。
【0123】
そして、接続端部同士の溶接接続が完了したたら、走行レール11の再度位置決めを行い、未敷設箇所に振動吸収板14を接着固定して敷設するとともに、塩化ビニル製のパイプ20の連結等を行ない、最終的に位置決めされた走行レール11と、溶接接続された接続端部11eとがある凹部33および溶接用凹部33eに、プライマーを散布した後、セルフレベリング性を有するポリウレタンを注入して硬化させることにより、コンクリートスラブ50に設けた凹部33内で走行レール11を溶接し、ロングレール化行った走行レール11の据付構造が完了する。
したがって、本第七実施形態によれば、前述の第二実施形態および第五実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0124】
【発明の効果】
以上説明したように、走行レールと脱線防止レールとに係わるレールの据付方法およびレールの据付構造の本発明(請求項1?3、15に関連する本発明)、並びに走行レールに係わるレールの据付方法およびレールの据付構造の本発明(請求項4?6、17に関連する本発明)によれば、上記凹部の底面に、接着剤を塗布して振動吸収板を接着固定するようにしたので、ポリウレタンによる凹部側面からのレール拘束に加えて、凹部底面からのレール拘束がなされ、レールの温度収縮によって発生するレール軸力に対する拘束力が増して、レールの熱収縮によるレール分岐部等への応力集中が確実に回避され、これらの破損が防止されるという作用を奏する。
【0125】
加えて、互いの間隔が保持された走行レールと脱線防止レールとが、凹部内においてポリウレタンにより全面が拘束された状態で固定されているために、長期間の使用によっても、走行レールと脱線防止レールとの間隔保持に影響が無く、脱線防止レールに傾きが生じることが無く、保守管理が容易になるとともに、走行レールや脱線防止レールの使用寿命の長期化も図ることができる。
また、振動吸収板、調整板およびポリウレタンの相乗的作用により、車両の走行中に発生する振動や騒音をより効果的に抑制することができ、乗り心地が良く安全性に優れ、犬くぎやスクリュースバイキ等の締結金具で固定する必要がなく、レールの保守点検作業を大幅に軽減することが可能になる。
【0126】
さらに、上記振動吸収板上に調整板置くので、凹部底面の高さに不均一があっても、その調整板置により高い走行面の精度を確保することが可能になり、高さ調整の自由度が増大する。しかも、凹部へポリウレタンの注入においては、セルフレベリング性を有するポリウレタンを使用しているために、別途上面を均すことなく水平面を得ることができ、よって総じて作業が容易で、効率よく簡単にレールの据付施工を行うことができる。
【0127】
また、レールを凹部内で溶接接続するようにした本発明(請求項2、3、5、6に関連する本発明)によれば、上記に加えて次の効果を奏する。すなわち、従来のレールの継ぎ目を無くし、振動の少ない良好な乗り心地を得ることができると共に、従来のレール継ぎ目部における衝撃の発生が無くなり、レールおよびレールおよび軌道構造を延命することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第一実施形態のレールの据付構造を示す横断面図である。
【図2】
図1の実施形態の調整板載置部における横断面図である。
【図3】
本発明の第一実施形態のレールの据付方法の一実施形態を示す図で、凹部の底部に振動吸収板を設置した状態を示す横断面図である。
【図4】
図3の振動吸収板上に調整板を載置した状態を示す横断面図である。
【図5】
図4の調整板上にレールを敷設した状態を示す横断面図である。
【図6】
図5のレールの水平方向に位置調整の状態を示す横断面図である。
【図7】
凹部内にプライマーを噴霧している状態を示す横断面図である。
【図8】
凹部内にポリウレタンを注入している状態を示す横断面図である。
【図9】
本発明の第二実施形態のレールの据付構造を示す横断面図である。
【図10】
本発明の第二実施形態のレールの据付方法の一実施形態を示す図で、凹部の底部に振動吸収板を設置した状態を示す横断面図である。
【図11】
図10の振動吸収板上に調整板を載置した状態を示す横断面図である。
【図12】
図11の調整板上に走行レールを敷設した状態を示す横断面図である。
【図13】
図12のレールの水平方向に位置調整の状態を示す横断面図である。
【図14】
凹部内にプライマーを噴霧している状態を示す横断面図である。
【図15】
凹部内にポリウレタンを注入している状態を示す横断面図である。
【図16】
本発明を踏切等に適用した第三実施形態を示す斜視概略図である。
【図17】
本発明の第四?第七実施形態によって得られたレールの据付構造を示す平面図である。
【図18】
図17のA-A線視断面図である。
【図19】
従来のレールの据付構造を示す横断面図である。
【符号の説明】
10、50 コンクリートスラブ(軌道の基礎部)
11 走行レール
11e 接続端部
12 脱線防止レール
13、33 凹部
13e、33e 溶接用凹部
14 振動吸収板
15、16 高さ調整板
17 スペーサ
18 ボルト
19 ナット
21 ポリウレタン
22 接着剤層
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-03-12 
結審通知日 2008-03-18 
審決日 2008-04-25 
出願番号 特願2002-61383(P2002-61383)
審決分類 P 1 113・ 537- YB (E01B)
P 1 113・ 121- YB (E01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深田 高義  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 池谷 香次郎
吉村 尚
登録日 2006-07-07 
登録番号 特許第3824948号(P3824948)
発明の名称 レールの据付方法および据付構造  
代理人 清水 千春  
代理人 堀内 正優  
代理人 佐伯 義文  
代理人 清水 千春  
代理人 清水 千春  
代理人 鈴木 慎吾  

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