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審決分類 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する B29C
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する B29C
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する B29C
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する B29C
管理番号 1216543
審判番号 訂正2010-390028  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2010-03-18 
確定日 2010-05-11 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2133467号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2133467号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯

1.本件特許の手続の経緯
特許第2133467号(以下、「本件特許」という。)の手続の経緯は次のとおりである。

特許出願(特願昭63-180330号) :昭和63年7月21日
出願公告(特公平6-41164号) :平成6年6月1日
特許異議申立(異議番号1) :平成6年9月1日(受付日)
特許異議申立(異議番号2) :平成6年9月2日(受付日)
特許異議申立(異議番号3) :平成6年9月2日(受付日)
特許異議申立(異議番号4) :平成6年9月2日(受付日)
特許異議答弁(異議番号1) :平成7年8月14日
特許異議答弁(異議番号2) :平成7年8月14日
特許異議答弁(異議番号3) :平成7年8月14日
特許異議答弁(異議番号4) :平成7年8月14日
特許異議決定(異議番号1) :平成9年10月14日
特許異議決定(異議番号2) :平成9年10月14日
特許異議決定(異議番号3) :平成9年10月14日
特許異議決定(異議番号4) :平成9年10月14日
登録 :平成9年11月21日(請求項の数2)

2.本件審判の手続の経緯
本件審判事件の手続の経緯は次のとおりである。

審判請求 :平成22年3月19日


第2 請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、特許第2133467号の明細書(以下、「本件特許明細書」という。)を本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるというものであって、平成22年3月19日提出の本件訂正審判請求書には、本件審判請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の訂正事項が、次のとおり記載されている。

「訂正事項1:請求項1において、『容器』とあるのを『ポリエステル中空容器』と訂正する。

訂正事項2:請求項1において、『環状三量体の含有量が0.55重量%以下』とあるのを『環状三量体の含有量が0.45重量%以下』と訂正する。

訂正事項3:請求項1において『該固有粘度は、容器パネル部より採取したサンプルをフェノール・テトラクロロエタン混合溶媒(重量比1:1)に溶解した溶液のウベローデ型粘度計により測定した溶液粘度から算出されたものであり』を追加する。

訂正事項4:請求項1において、『該環状三量体の含有量は、容器パネル部より採取したサンプルをヘキサフルオロイソプロパノールに溶解し、テトラヒドロフランによりポリマー分を再沈させ、濾過し、濾過液を、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)測定して得られたものであること』を追加する。

訂正事項5:特公平6-41164号公報(以下「本件明細書」という)4欄4?14行の『本発明によれば、・・・が提供される。』とあるのを『本発明によれば、エチレンテレフタレート単位を主体とする熱可塑性ポリエステルのプリフォームを延伸吹込成形し且つ配向を熱固定することにより得られた首部、肩部、胴部、及び閉塞底部から成るポリエステル中空容器において、
該容器は、固有粘度が0.70乃至0.85dl/gで且つ環状三量体の含有量が0.45重量%以下のポリエステルから形成され、該胴部の面状の部分は、内面側の厚み方向の屈折率が1.5200以下となるように分子配向されると共に、密度法による結晶化度が30%以上となるように熱固定され且つ90%以上の光沢度(gloss)を有すること、
該固有粘度は、容器パネル部より採取したサンプルをフェノール・テトラクロロエタン混合溶媒(重量比1:1)に溶解した溶液のウベローデ型粘度計により測定した溶液粘度から算出されたものであり、
該環状三量体の含有量は、容器パネル部より採取したサンプルをヘキサフルオロイソプロパノールに溶解し、テトラヒドロフランによりポリマー分を再沈させ、濾過し、濾過液を、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)測定して得られたものであることを特徴とするポリエステル中空容器が提供される。』と訂正する。

訂正事項6:本件明細書13欄2行に『フェノール・テトラクルエタン混合溶媒』とあるのを『フェノール・テトラクロロエタン混合溶媒』と訂正する。

訂正事項7:本件明細書15欄3行に『用いてペレット』とあるのを『用いたペレット』と訂正する。」


第3 当審の判断

1.本件訂正の訂正事項について

本件訂正に係る審判については、本件特許に係る特許出願が昭和63年7月21日に出願されたものであるから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下、「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年改正法による改正前の特許法(以下、単に「特許法」という。)が適用になる。
特許法第126条第1項は、「願書に添付した明細書又は図面の訂正をすることについて審判を請求することができる」と規定しているところ、上記第2.のとおり、本件審判請求書に記載された訂正事項5?7にあっては、訂正箇所について、願書に添付した明細書ではなく、本件特許出願に対応する公告公報である特公平6-41164号公報により示している。そして、上記第2.のとおり、本件審判の請求の要旨が、「特許第2133467号の明細書を本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求める」ことであり、通常、願書に添付した明細書の記載内容と対応する公告公報との記載内容は一致するものであることを踏まえれば、訂正事項5?7は、便宜上、訂正箇所を本件特許出願に対応する公告公報で示して記載したものと解される。
してみれば、訂正事項5に係る訂正箇所とする特公平6-41164号公報4欄4?14行の「本発明によれば、・・・が提供される。」は、願書に添付した明細書第5ページ9行?末行の「本発明によれば、・・・が提供される。」が相当するものと認められる。
また、訂正事項6に係る訂正箇所とする特公平6-41164号公報13欄2行の「フェノール・テトラクルエタン混合溶媒」については、願書に添付した明細書にはかかる訂正箇所に対応する記載箇所はみられないが、かかる訂正箇所の前後の関係から見て、願書に添付した明細書第26ページ11?12行の「フェノール・テトラクロルエタン混合溶媒」が相当するものと認められる。願書に添付した明細書の記載と公告公報の記載との齟齬は、公告公報編纂上の誤りに基づくものと解される。
しかしながら、訂正事項7に係る訂正箇所とする特公平6-41164号公報15欄3行の「用いてペレット」については、かかる訂正箇所の前後の関係からみて、願書に添付した明細書第32ページ3行の「用いたペレット」なる記載が相当するものと認められるが、かかる記載は訂正事項7により訂正を求める内容そのものであることから、訂正事項7は訂正する必要のない事項である。この点についても、上記訂正事項6と同様に、公告公報の記載内容には公告公報編纂上の誤りがあると解される。
したがって、本件訂正の訂正事項は、実質的に、本件訂正審判請求書に記載された訂正事項1?6であると認められる。

2.本件訂正の新規事項の追加の有無、訂正の目的及び特許請求の範囲の拡張・変更について

(1)請求項1に係る訂正事項について
(1)-1 訂正事項1について
訂正事項1は、本件特許明細書の発明の名称及び特許請求の範囲の請求項2の記載に基いて、請求項1に係る発明の対象である「容器」が「ポリエステル中空容器」であることを明りょうにするために、「ポリエステル中空」なる記載を加えたものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

(1)-2 訂正事項2について
訂正事項2は、本願特許明細書の表4における実施例3Hの記載に基いて、環状三量体の含有量を「0.55重量%以下」から「0.45重量%以下」へと限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(1)-3 訂正事項3について
訂正事項3は、本件特許明細書第26ページ10?16行の「プリフォームまたはボトルより採取したサンプル200mgをフェノール・テトラクロルエタン混合溶媒(重量比1:1)20mlに105℃で20分間撹拌下で溶解する。溶液を30℃の恒温水槽中でウベローデ型粘度計により溶液粘度を測定し、これにより、固有粘度を算出する。」なる記載、及び同第35ページ1?3行の「実施例3及び比較例2 数種類のポリエステル中空容器のパネル部について、明細書記載の方法で評価を行った。」なる記載に基いて、請求項1記載の固有粘度についての測定対象及び測定方法を明確にするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
なお、本件特許明細書における上記「フェノール・テトラクロルエタン溶液」なる記載は、本件特許出願時の当該技術分野における技術常識からみて、「フェノール・テトラクロロエタン溶液」の誤記であると認められる。(下記、「(3)訂正事項6について」参照)
また、訂正事項3は、形式的には、訂正事項3の前後において「読点」を付加することも含む訂正であるが、かかる事項により上記判断が異なるものではない。

(1)-4 訂正事項4について
訂正事項4は、本件特許明細書第27ページ5?11行の「(2)環状三量体(CT)の含有量 サンプル約0.10gを精秤し、ヘキサフルオロイソプロパノール約1.0mlに溶解する(室温×16時間)。テトラヒドロフランを少しづつ混合してゆき、ポリマー分を再沈させ、濾過して全量を25mlに希釈後、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を行う。」なる記載、及び同第35ページ1?3行の「実施例3及び比較例2 数種類のポリエステル中空容器のパネル部について、明細書記載の方法で評価を行った。」なる記載に基いて、請求項1記載の環状三量体についての測定対象及び測定方法を明確にするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

(1)-5 小括
上記のとおり、訂正事項1?4からなる請求項1に係る訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものである。

(2)訂正事項5について
訂正事項5は、発明の詳細な説明の記載を訂正事項1?4に基いた訂正後の請求項1の記載に整合させるためのものである。そして、上記(1)で検討したとおり、請求項1に係る訂正事項1?4は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであるから、訂正事項5も、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、かつ、明りょうでない記載の釈明を目的とする明細書の訂正に該当する。
したがって、訂正事項5は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。

(3)訂正事項6について
訂正事項6は、本件特許出願時の当該技術分野における技術常識に基いて、本件特許明細書第26ページ11?12行の「フェノール・テトラクロルエタン混合溶媒」なる記載を「フェノール・テトラクロロエタン混合溶媒」と訂正するものであって、誤記の訂正を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。
したがって、訂正事項6は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものである。

(4)まとめ
以上のとおり、訂正事項1?6は、いずれも、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ、特許法第126条第1項ただし書第1号乃至3号に掲げる事項を目的とする。
そして、いずれの訂正事項も、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項1?6に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書、及び第2項の規定に適合する。


3.独立特許要件

上記のとおり、訂正事項1?4からなる請求項1に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする訂正事項を含むものであるから、訂正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件訂正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものかどうかについて検討する。

(1)本件訂正発明1

本件訂正発明1は、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
エチレンテレフタレート単位を主体とする熱可塑性ポリエステルのプリフォームを延伸吹込成形し且つ配向を熱固定することにより得られた首部、肩部、胴部、及び閉塞底部から成るポリエステル中空容器において、
該容器は、固有粘度が0.70乃至0.85dl/gで且つ環状三量体の含有量が0.45重量%以下のポリエステルから形成され、該胴部の面状の部分は、内面側の厚み方向の屈折率が1.5200以下となるように分子配向されると共に、密度法による結晶化度が30%以上となるように熱固定され且つ90%以上の光沢度(gloss)を有すること、
該固有粘度は、容器パネル部より採取したサンプルをフェノール・テトラクロロエタン混合溶媒(重量比1:1)に溶解した溶液のウベローデ型粘度計により測定した溶液粘度から算出されたものであり、
該環状三量体の含有量は、容器パネル部より採取したサンプルをヘキサフルオロイソプロパノールに溶解し、テトラヒドロフランによりポリマー分を再沈させ、濾過し、濾過液を、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)測定して得られたものであることを特徴とするポリエステル中空容器。」

(2)独立特許要件について
本件審判請求書には、下記の記載がある。

「[2]公知文献
以下に示す公知文献1?7は、本件審判請求人が、本件特許を侵害すると考える者(以下「相手方」という)に対して送付した警告状に対して、相手方が本件特許の無効理由を示す証拠として提示したものである。なお公知文献1?3は本件特許異議申立手続において提示され、本件発明はこれらの公知文献によりその特許性が否定されないことは特許異議決定において明確に述べられている。

公知文献1:特開昭59-93330号公報
公知文献2:特開昭56-80428号公報
公知文献3:特開昭53-109552号公報
公知文献4:特開昭61-11217号公報
公知文献5:Converting & Packaging / March 1987, P.160-166
公知文献6:Journal of Applied Polymer Science, Vol. 32, p.4719 - 4733 (1986)
公知文献7:MELLIAND TEXTILBERICHTE 2/1979, p. 160-166」
当審注:丸囲み数字が表記できないため[ ]を用いて表記した。

上記公知文献1は、上記「第1 手続の経緯 1.本件特許の手続の経緯」に記載した特許異議申立(異議番号2)における甲第1号証に相当し、上記公知文献2は、同特許異議申立(異議番号1)及び(異議番号4)における甲第1号証に相当し、上記公知文献3は、同特許異議申立(異議番号1)における甲第2号証、特許異議申立(異議番号2)における甲第3号証及び特許異議申立(異議番号4)における甲第3号証に相当する。
そして、本件訂正発明1の備える発明特定事項、とりわけ、「環状三量体の含有量が0.45重量%以下のポリエステルから形成される90%以上の光沢度(gloss)を有するポリエステル中空容器」なる事項は、特許異議申立において検討された上記公知文献1?3はもとより、上記公知文献4?7のいずれの公知文献にも記載されていないことから、本件訂正発明1は上記公知文献に記載された発明とはいえず、また、上記公知文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
さらに、その他に、本件訂正発明1が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は発見しない。
よって、訂正事項1?6に係る訂正は、特許法第126条第3項の規定に適合する。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
熱固定された延伸ポリエステル中空容器及びその製法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】エチレンテレフタレート単位を主体とする熱可塑性ポリエステルのプリフォームを延伸吹込成形し且つ配向を熱固定することにより得られた首部、肩部、胴部、及び閉塞底部から成るポリエステル中空容器において、
該容器は、固有粘度が0.70乃至0.85dl/gで且つ環状三量体の含有量が0.45重量%以下のポリエステルから形成され、該胴部の面状の部分は、内面側の厚み方向の屈折率が1.5200以下となるように分子配向されると共に、密度法による結晶化度が30%以上となるように熱固定され且つ90%以上の光沢度(gloss)を有すること、
該固有粘度は、容器パネル部より採取したサンプルをフェノール・テトラクロロエタン混合溶媒(重量比1:1)に溶解した溶液のウベローデ型粘度計により測定した溶液粘度から算出されたものであり、
該環状三量体の含有量は、容器パネル部より採取したサンプルをヘキサフルオロイソプロパノールに溶解し、テトラヒドロフランによりポリマー分を再沈させ、濾過し、濾過液を、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)測定して得られたものであることを特徴とするポリエステル中空容器。
【請求項2】エチレンテレフタレート単位を主体とする熱可塑性ポリエステルから成り、固有粘度が0.70乃至0.85dl/g、環状三量体の含有量が0.55重量%以下、及び密度法による結晶化度が40%以上の結晶化ペレットを、実質上非晶質状態にある有底プリフォームに溶融射出成形する工程と、該有底プリフォームを延伸温度において、ブロー型中で中空体に延伸ブロー成形する工程と、形成される中空体を前記ブロー型中或はこれとは別の熱処理型中で緊張下に加熱して熱固定する工程とから成ることを特徴とする表面光沢性に優れた熱固定延伸ポリエステル中空容器の製法。
【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は、ポリエステル中空容器及びその製法に関し、より詳細には、容器表面の肌荒れが防止され、表面光沢に優れた分子配向熱固定ポリエステル中空容器及びその製法に関する。
(従来の技術)
ポリエチレンテレフタレート(PET)の如き熱可塑性ポリエステルの二軸延伸ブロー成形容器は、優れた透明性や表面光沢を有すると共に、瓶に必要な耐衝撃性、剛性、ガスバリヤー性をも有しており、各種液体の瓶詰容器として利用されている。
しかしながら、ポリエステル容器は、耐熱性に劣るという欠点があり、内容物を熱間充填する用途に対しては、熱変形や容積の収縮変形を生じるため、二軸延伸ブロー容器を成形後に熱固定(ヒート・セット)することが要求される。
熱固定の方法には、特公昭60-56606号公報に見られる通り、延伸ブロー成形により得られる成形品を成形ブロー型から取り出した後、熱固定用の金型内に保持して熱固定を行う方法や、特公昭59-6216号公報に見られる通り、ブロー成形型中で延伸ブロー成形と同時に熱固定を行う方法が知られている。また、特開昭57-53326号公報には、一時金型中で延伸ブロー成形と同時に熱処理を行い、成形品を取り出してこれを冷却することなく、二次処理金型中でブロー成形する方法が記載されている。
(発明が解決しようとする問題点)
ポリエステル中空容器においては、前述した諸物性の向上の見地からは器壁を構成するポリエステルが高度に二軸分子配向されていることが要求され、また耐熱性を高度に向上させるという見地からは、熱固定をより高温で確実に行うことが要求されている。
ところが、熱固定延伸ポリエステル中空容器は、未熱固定の延伸ポリエステル中空容器に比して表面光沢が低下しており、特に熱固定の程度を高くするために、金型の温度を高くしまたプリフォームの温度を高くした場合に顕著であること及びこの表面光沢の低下、即ち肌荒れや曇りの発生は金型の平滑な部分に対応する容器胴部において特に顕著に現われることが見出された。
従って、本発明の目的は、熱固定延伸ポリエステル中空容器における表面光沢の低下、即ち肌荒れや曇りの発生を防止するにある。
本発明の他の目的は、高度の二軸分子配向と耐熱性とを有しながら表面光沢性にも優れているポリエチレンテレフタレートの中空容器及びその製法を提供するにある。
本発明の更に他の目的は、頻煩で面倒な金型清掃等の操作の必要なしに、上記特性を有する熱固定延伸ポリエステル容器を高生産性をもって製造し得る方法を提供するにある。
(問題点を解決するための手段)
本発明によれば、エチレンテレフタレート単位を主体とする熱可塑性ポリエステルのプリフォームを延伸吹込成形し且つ配向を熱固定することにより得られた首部、肩部、胴部、及び閉塞底部から成るポリエステル中空容器において、
該容器は、固有粘度が0.70乃至0.85dl/gで且つ環状三量体の含有量が0.45重量%以下のポリエステルから形成され、該胴部の面状の部分は、内面側の厚み方向の屈折率が1.5200以下となるように分子配向されると共に、密度法による結晶化度が30%以上となるように熱固定され且つ90%以上の光沢度(gloss)を有すること、
該固有粘度は、容器パネル部より採取したサンプルをフェノール・テトラクロロエタン混合溶媒(重量比1:1)に溶解した溶液のウベローデ型粘度計により測定した溶液粘度から算出されたものであり、
該環状三量体の含有量は、容器パネル部より採取したサンプルをヘキサフルオロイソプロパノールに溶解し、テトラヒドロフランによりポリマー分を再沈させ、濾過し、濾過液を、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)測定して得られたものであることを特徴とするポリエステル中空容器が提供される。本発明によればまた、エチレンテレフタレート単位を主体とする熱可塑性ポリエステルから成り、固有粘度が0.70乃至0.85dl/g、環状三量体の含有量が0.55重量%以下、及び密度法による結晶化度が40%以上の結晶化ペレットを、実質上非晶質状態にある有底プリフォームに溶融射出成形する工程と、該有底プリフォームを延伸温度において、ブロー型中で中空体に延伸ブロー成形する工程と、形成される中空体を前記ブロー型中或はこれとは別の熱処理型中で緊張下に加熱して熱固定する工程とから成ることを特徴とする表面光沢性に優れた熱固定延伸ポリエステル中空容器の製法が提供される。
(作 用)
本発明者等は、熱固定延伸ポリエステル中空容器における表面光沢の低下は、中空体の熱固定処理時に中空体中に含まれる或る種の成分が金型表面に移行、蓄積し、この蓄積物の模様が中空体の表面に転写されることにより、表面光沢の低下、即ち肌荒れや曇りの発生につながること;この金型表面に移行、蓄積される成分は、ポリエチレンテレフタレート中に比較的多量に含まれる単量体乃至オリゴマー成分の中で高融点の特定の成分で或ること;及びかくして用いるポリエチレンテレフタレート中の環状三量体成分(CT)を一定の基準以下に抑制すれば、熱固定延伸ポリエステル容器の表面光沢の低下を有効に抑制し得ること;を見出した。
一般に、ポリエチレンテレフタレート(PET)は、ジメチルテレフタレート(DMT)とエチレングリコール(EG)とを原料として、下記式

に示されるエステル交換反応で、ビス-β-ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)を生成させ、このBHET或はその低重縮合体を下記式

に示すように重縮合させることにより得られる。
この重縮合反応は、溶融重合或は溶融重合と固相重合との組合せで行われる。
かくして、ポリエチレンテレフタレートには、下記に示すような各種単量体及びオリゴマーが含有されることになる。
エチレングリコール(以下EGという)
HOCH_(2)CH_(2)OH
テレフタル酸(以下TPAという)

ビスヒドロキシエチルテレフタレート(以下BHETという)

モノヒドロキシエチルテレフタレート(以下MHETという)

ジメチルテレフタレート(以下DMTという)

モノメチルヒドロキシエチルテレフタレート(以下MMMHETという)

環状三量体(以下CTという)

環状四量体

環状五量体

これらの単量体乃至オリゴマーのPET中の含有量は、その重縮合条件や生成PETの分子量によっても相違するが、一例としてMHET及びBHETが5乃至100ppmのオーダーであり、EGが1乃至20ppm、TPAが0.5乃至5ppmであるのに対して、CTは0.1乃至2.0重量%と著しく多い量である。しかしながら、上記モノマー類は、概して低い(TPA以外)融点を有するのに対して、CTは320℃と高い融点を有する。
ところが、本発明者等の研究によると、熱固定処理時に金型表面に付着、蓄積されるのは、PET中に多量に含有される単量体成分ではなく、環状三量体成分であることが化学分析の結果判明した。またPETを溶融状態において、単量体乃至オリゴマーの表面への移行を調べると、前述した含有量の相違にもかかわらず、単量体類が約半分、環状三量体が約半分の組成で移行を生じていることがわかった。以上のことから、熱固定処理時においても、環状三量体は、単量体類と共に、金型表面に移行するが、単量体類が揮散して、金型表面に高融点の環状三量体(CT)が付着残留するものであることが確かめられた。
本発明は、上記知見に基づき、用いるPET中のCT含有量を低減させることにより熱固定処理時における金型表面への異物の移行、蓄積を著しく低減させ、中空体表面における肌荒れ、曇りの発生を抑制して、表面光沢性を顕著に抑制し得るものである。
用いるPETの環状三量体(CT)の含有量は、0.55重量%以下、特に0.51重量%以下、最も好適には0.47重量%以下であるべきであり、こうすることにより高度に二軸分子配向され且つ高度に熱固定されたPET中空容器の胴部における表面光沢度を90%以上、特に130%以上に維持することが可能となる。中空容器の器壁を構成するPETのCT含有量はプリフォームの溶融射出成形段階で若干増大するが、一般に0.55重量%以下、特に0.51重量%以下である。
用いるPETの固有粘度[η]は、0.70乃至0.85dl/g、特に0.75乃至0.82dl/gの範囲にあるべきである。即ち、粘度がこの範囲よりも低いと、容器の機械的強度や耐衝撃性が不十分であり、一方上記範囲よりも高いと、有底プリフォームへの射出成形が困難となりやすい。
本発明によるポリエステル中空容器は、高度の分子配向と高度の熱固定とが行われていながら、表面光沢性に優れているものであるが、胴部の面状の部分が、内面側の厚み方向の屈折率が1.5200以下、特に1.5100以下となるように分子配向されていることが重要であり、さもないと熱固定時に白化を生じたり、或は耐衝撃性、ガスバリヤー性、機械的強度、透明性等が低下することになる。また、胴部の面状の部分は、密度法による結晶化度が30%以上、特に33%以上となるように熱固定されていることも重要であり、これにより容器の耐熱性が顕著に向上し、内容物を熱間充填し或は瓶詰品とパストライザー滅菌に付する場合の熱変形や熱収縮を改善し得るものである。
本発明のポリエステル容器は、上記PETを使用し従来公知の成形法、例えば、射出成形によりプリフォームを形成した後、所謂ワン・モールド法やツー・モールド法によって、二軸延伸ブロー成形した後、熱固定することによって成形することができる。
(発明の好適態様)
ポリエステル中空容器
本発明の容器の一例を示す第1図(側面図)、第2図(底面図)及び第3図(断面図)において、この熱固定二軸延伸ポリエステル容器1は、未延伸のノズル(首部)2、円錐台状の肩部3、筒状の胴部4及び閉ざされた底部5から成っている。この胴部4の主たる部分には、相対的に径が大で且つ周長の短いピラー状凸部7と、相対的に径が小で且つ周長の長いパネル状凹部6とが短い連結部8を介して周方向に交互に多数個設けられている。ピラー状凸部7は容器軸方向(高さ方向)に延びており、従ってパネル状凹部6はこのピラー状凸部7で仕切られた容器軸方向に長い角が丸められた長方形の形状を有している。
第3図の断面図から了解されるように、パネル状凹部6は内圧の増大により径外方に膨張する(突出する)こと及び内圧の減少により内方に収縮する(凹む)ことが可能であり、これにより内圧変化を緩和させる作用を有している。
図面に示す具体例では、このパネル状凹部設置部分の上方に、相対的に径の大きい膨出リング部9とこれに隣り合った径の相対的に小さい溝状リング部10とが設けられていて、容器軸方向への若干の変形をも許容するようになっている。また、底部5の中央部には、星形の内方への凹み部11があり、底部5の圧力や熱変形による外方へのバックリングを防止し得るようになっている。
本発明の熱固定延伸ポリエステル容器において、胴部の厚みは0.20乃至1.00mm、特に0.25乃至0.80mmの範囲にあるのがよく、一方パネル状凹部の寸法は、容器の大きさによっても変化するが、一般に周方向寸法が10乃至50mm、軸方向(高さ方向)寸法が40乃至160mmの範囲内にあることが望ましい。また、径の大きいピラー状凸部と径の小さいパネル状凹部との段差、即ち径の差は1乃至8mmの範囲内にあることが望ましい。
この熱固定延伸容器において、表面光沢の低下が最も顕著に生じやすいのは、胴部4、特にピラー状凸部7及びパネル状凹部6であるが、本発明によれば、以下に述べる特定のPETを用いることにより、この問題を解消し得る。
原料ポリエステル
本発明によれば、CT含有量が前述した範囲に抑制されたPETを原料に用いる。ポリエチレンテレフタレートの合成には、一般に飽和ポリエステルの合成に用いられている殆どの方法を適用し得るが、溶融法による合成が原料も得やすく、他の方法に比べて操作が簡単なばかりでなく、任意の分子量のものが容易に得られるうえ、ポリマーの純度も高く、そのため熱安定性にも優れているので、今日ではほとんど溶融法によって合成されている。
溶融法によるポリエチレンテレフタレートの合成は、通常二つの工程に分けられており、(A)ビス-β-ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)またはその低重縮合体を合成する工程、(B)これを更に重縮合させて任意の重合度のポリエチレンテレフタレートに合成する工程から成っている。しかしながら、通常の溶融重合法では、重合の程度、即ち粘度を高めると、この粘度の増大に伴って環状三量体の含有量も増大するという不都合がある。
本発明に好適に使用される原料PETは、勿論これに限定されないが、一般に溶融重合により得られたPETを結晶化させ、結晶化されたPETを固相重合させて最終PETの固有粘度が0.70乃至0.85dl/g、環状三量体の含有量が0.55重量%以下、及び密度法による結晶化度が40%以上とすることにより得られる。以下、この方法について説明する。
溶融重合においては、ジメチルテレフタレート及びエチレングリコールを出発物質とし、アンチモン、亜鉛、カルシウム、セリウム、カドミウム、鉛、リチウム、ジルコニウム、アルミニウム、スズ、チタン等の金属の酸化物、炭酸塩、硫化物、水酸化物、カルボン酸塩等の触媒の存在下で加熱してエステル交換させることにより、ビス-β-ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)が合成される。この際、触媒の濃度は、約1?1000ppm、好ましくは約100?1000ppm、更に好ましくは約500ppm以下が適当である。これらの量は反応に供給するエステル原料を基準にしている。
これらの物質をエステル交換反応槽中で、常圧で、160乃至230℃、特に180乃至210℃の温度で反応を行う。容器表面及び熱固定金型に付着しやすい低重縮合体、特に環状三量体は、融点が320℃と高いが、この環状三量体の融点以上の反応温度で重合すると、熱劣化が顕著になり、これに付随して着色物が生成するので好ましくない。反応時間は、これら反応温度と圧力により従属的に決定されるが、一般に1乃至5時間、特に2乃至4時間反応させる。この反応生成物をフィルターを通したものを溶融重縮合反応槽中で、10乃至0.1mmHg、特に1乃至0.1mmHgの真空度で、260乃至300℃、特に270乃至280℃の温度で重縮合反応を行う。この場合の反応時間も、これら反応温度と圧力により従属的に決定されるが、一般に1乃至4時間、特に2乃至3時間反応させることによって重縮合させる。
この溶融重合で得られたPETは、一般に0.5乃至0.8dl/gの固有粘度を有する。このPETをペレタイズし、このペレットをPETの結晶化温度に加熱して、PETの結晶化を行わせる。PETの結晶化に伴い内部に含有されるCTは外部にはみだし、CT含有量は減少する。この結晶化温度は、CT含有量の減少に関して最適範囲があり、一般に100乃至140℃、特に115乃至125℃の範囲が適当であり、また処理時間は100乃至180分間、特に120乃至150分間が適当である。PETペレットの結晶化のための熱処理は、例えば加熱窒素ガス等の加熱不活性ガスを用いて、流動床または固定床で行うことができ、また真空加熱炉内で行うこともできる。
次いで、この結晶化されたPETのペレットを固相重合させる。この固相重合に際しては、溶融重合の場合とは異なり、固有粘度の増大に伴って、CT含有量の低下を生じる。また、一般に固相重合温度の上昇に伴ってCT含有量が低下し、重合時間の増大に伴ってCT含有量が低下する。固相重合は、一般に160乃至260℃の温度、特に180乃至200℃の温度で2乃至10時間、特に4乃至6時間行うことが望ましい。固相重合時の加熱は、温度を変更する以外は結晶化の場合と同様であってよい。この固相重合時にもPETの結晶化はある程度進行する。
PETとしては、PETホモポリマーの他に、グリコール成分としてヘキサヒドロキシリレングリコール等の他のグリコール類の少量を含有せしめ或は二塩基酸成分としてイソフタル酸やヘキサヒドロテレフタル酸等の他の二塩基酸成分の少量を含有せしめたいわゆる改質PET等が使用される。これらのポリエステルは、単独でも或はナイロン類、ポリカーボネート或いはポリアリレート等の他の樹脂とのブレンド物の形でも使用し得る。
成形法
本発明において、延伸ブロー成形法に使用するプリフォームは、射出成形法で製造することができる。射出条件等は、特に限定されたものではないが、一般に、260乃至300℃の射出温度、30乃至60kg/cm^(2)の射出圧力で、有底プリフォームを成形することができる。
かくして得られたプリフォームに耐熱性を与えるためプリフォームの段階で螺合部、嵌合部、支持リング等を有する口頚部を熱処理により結晶化し白化せしめる場合があり、一方後述の2軸延伸ブローを完了したるものをボトル成形完了後、未延伸部分の口頚部を結晶化し、白化する場合もある。
準備されたプリフォームを延伸成形温度にする。プリフォーム射出機のプリフォームに与えた熱即ち余熱を利用しその温度範囲が85?125℃の延伸温度に調整するか或はコールドパリソンにあっては再加熱し同じく85?125℃の延伸温度範囲に予熱する。
延伸ブロー成形及び熱固定は、ワンモールド法でもツーモールド法でも行い得る。これらの何れの場合にも、延伸操作はプリフォーム内に加圧流体を吹き込み、延伸棒による軸方向引張延伸と周方向膨張延伸とを行い、軸方向延伸倍率を1.3乃至3.5倍、特に1.5乃至3倍とし、周方向延伸倍率を2乃至5.5倍、特に3乃至5倍とするのがよい。
ワンモールド法の場合、ブロー金型で2軸延伸するに当たりブロー金型を110?230℃、好ましくは120?210℃の加熱金型とし、延伸ブローされたプリフォームの器壁の外側が金型内面で接触と同時に熱処理(ヒートセット)が開始される。所定の熱処理時間後、ブロー用流体を内部冷却用流体に切換えて、内側の冷却を開始する。熱処理時間は、ブロー成形体の厚みや温度によっても相違するが、PETに前述した結晶化度をもたらすものであり、一般に言っても0.5乃至30秒、特に1.0乃至20秒のオーダーである。一方冷却時間も、熱処理温度や冷却用流体の種類により異なるが一般に1乃至30秒、特に2乃至20秒のオーダーである。
本発明は、ワンモールド法で、比較的高温のプリフォーム及び高温のブロー金型を用いて、高倍率延伸及び高温熱固定を行う際に、改善の効果が特に顕著であり、この場合軸方向の延伸速度が3.0倍/秒以上、特に4.0倍/秒以上、及び周方向の延伸速度が5.0倍/秒以上、特に6.0倍/秒以上となるような高速延伸が有利に用いられる。また、延伸ブロー成形時に吹き込む加圧流体としては、プリフォーム温度よりも少なくとも10℃高い温度の高温流体を用いるのがよい。
冷却用流体としては、冷却された各種気体、例えば-40℃乃至室温の窒素、空気、炭酸ガス等の他に、化学的に不活性な液化ガス、例えば液化窒素ガス、液化炭酸ガス、液化トリクロロフルオロメタンガス、液化ジクロロジフルオロメタンガス、他の液化脂肪族炭化水素ガス等も使用される。この冷却用流体には、水等の気化熱の大きい液体ミストを共存させることもできる。上述した冷却用流体を使用することにより、著しく大きい冷却速度を得ることができる。
ツーモールド法の場合、高温に加熱されたブロー金型を用いて、延伸ブロー成形された中空体を冷却することなく、外部に取出し、この中空体を第二の金型に入れ、この金型内で形状を整えるためにブローする方法等が使用される。延伸ブロー条件や熱処理条件はワンモールド法に準ずることができる。
(発明の効果)
本発明によれば、用いるPET中にCT含有量を低減させることにより、熱固定処理時における金型表面への異物の移行、蓄積を著しく低減させ、中空体表面における肌荒れ、曇りの発生を抑制して、表面光沢性を顕著に抑制し得るものである。
PET容器の表面光沢性の低下は、延伸の程度及び熱固定の程度が高くなればなる程顕著となるが、本発明によれば、高度の二軸分子配向と耐熱性とを有しながら表面光沢性にも優れているポリエチレンテレフタレートの中空容器及びその製法を提供することが可能となり、また、頻煩で面倒な金型清掃等の操作の必要なしに、上記特性を有する熱固定延伸ポリエステル容器を高生産性をもって製造し得る。
(実施例)
本発明の容器の特性値の評価、測定方法は次の方法による。
(1)固有粘度
プリフォームまたはボトルより採取したサンプル200mgをフェノール・テトラクロロエタン混合溶媒(重量比1:1)20mlに105℃で20分間攪拌下で溶解する。溶液を30℃の恒温水槽中でウベローデ型粘度計により溶液粘度を測定し、これにより、固有粘度を算出する。

t :溶液の落下時間(sec)
t_(0):溶媒の落下時間(sec)
比粘度 η_(SP)=η_(rel)-1

k′:ハギンズの恒数(0.33)
c :溶液濃度[g/100ml]
(2)環状三量体(CT)の含有量
サンプル約0.10gを精秤し、ヘキサフルオロイソプロパノール約1.0mlに溶解する(室温×16時間)。テトラヒドロフランを少しづつ混合してゆき、ポリマー分を再沈させ、濾過して全量を25mlに希釈後、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を行う。(CT100%の時のピーク面積値を基準として、含有量を算出する。)
GPC測定条件
装置:東洋曹達工業(株)、HLC-8020
カラム:東洋曹達工業(株)、
G2000H8+G1000H8
検出器:示差屈折計
溶出液:テトラヒドロフラン
(3)屈折率
光源としてNaD線、屈折計としてアッベの屈折計及び偏向板を使用し、R.J.SAMUELS(Journal of Applied Polymer Science.Vol.26.1383(1981))の方法により、ボトルより切出したサンプルの、ボトル軸方向、円周方向、厚さ方向の屈折率n_(z),n_(y),n_(x)を測定した。
尚、この場合の、試料の内、主プリズムに接する側の屈折率が選択的に測定でき、そのようにして測定した二軸延伸ポリエチレンテレフタレートボトルの結果は、M.CAKMAKら(ANTEC′ 84,P920)によって報告されている。
(4)結晶化度
n-ヘプタン-四塩化炭素系密度勾配管(株式会社 池田理化)を作成し、20℃の条件下でサンプルの密度を求めた。これにより、以下の式に従い、結晶化度を算出した。

ρ :測定密度(g/cm^(3))
ρ_(am):非晶密度(1.335g/cm^(3))
ρ_(c) :結晶密度(1.455g/cm^(3))
(5)光沢度
第1図における容器胴部パネル部を切り出し、外表面の光沢度を60度鏡面で測定する(JIS Z 8741)。
装置:スガ試験(株)
デジタル変角光沢計
(UGV-5K)
(6)表面粗さ
パネル部を切り出し、外表面について、中心線平均粗さRa(JIS B0601)の測定を行う。
装置:(株)東京精密
表面粗さ測定機
(サーフコム400A)
測定条件:カットオフ値0.8mm
実施例 1
ポリエチレンテレフタレートの結晶化ペレットを用いて射出成形されたプリフォーム(重量59g)を遠赤外線ヒーターで加熱後延伸ブローし、熱固定(ヒート・セット)して内容量約1.5lの第1図に示された形状の容器(胴部平均肉厚0.35mm)を作成した。用いたペレットを明細書記載の方法にて測定すると、固有粘度0.77dl/g、環状三量体の含有量0.51重量%(第4図)、結晶化度60%であった。
金型清掃後、300本目及び3万本目に延伸ブロー成形された容器についての胴部パネル状凹部の外面側の光沢度と表面粗さの測定結果を表1、及び第6図(a),(b)に示す。

A,Bの容器とも光沢度が良好であることがわかる。これは第6図にも明らかなように、表面粗さが非常に小さいため、すなわち肌あれをおこしていないためである。A,B成形時に、ブロー金型上に特に付着物が観察されていなかったことからも、環状三量体含有量の少ないペレットの使用は、ペレット中の単量体類、及び環状三量体の金型表面への移行を防止、もしくは低減させ、その結果として、光沢度の優れた容器を得ることがわかる。
比較例 1
実施例1と同様な方法で、金型清掃後600本目と2000本面に成形された容器について評価を行った。ただし、用いたペレットの固有粘度は0.77dl/g、環状三量体の含有量は0.59重量%(第5図)、結晶化度は57%であった。結果を表2、及び第7図(a),(b)に示す。

ここで、600本目の容器で、既に光沢度は76%と悪くなっており、2000本目に至っては著しく劣ってきている。これは、金型上に付着物が蓄積し、その跡がボトルに転写し、表面粗さが大きくなったためである。このようにペレットを使用した場合、光沢性に優れた容器を得るためには、金型清掃等の操作を頻煩に行わなければならず、必要とする熱固定延伸ポリエステル容器を高生産性をもって製造することはできない。
実施例 2
実施例1と同じペレットを使用し、熱固定金型温度を変えて得た容器について、結晶化度、及び光沢度の測定結果を表3に示す。容器は、実施例1と同様の方法で、金型清掃後の3万本目に採取したものである。

より耐熱性を高めるためには、金型温度を高めて熱固定することが必要であるが、この際、容器材料中から単量体類や環状三量体が、金型へ移行して付着物を生成する可能性が高くなる。
しかし、表3より明らかなように、金型温度を高温にしても光沢度は良好であった。従って、環状三量体の含有量の低いペレットの使用は、高耐熱性、高光沢性の容器を製造する上で重要である。
実施例3及び比較例2
数種類のポリエステル中空容器のパネル部について、明細書記載の方法で評価を行った。結果を表4に示す。容器は実施例1の方法で、金型清掃後2000本目に採取したものである。

実施例3は、高度の分子配向と高度の熱固定が行われていながら、表面光沢性に優れているポリエステル中空容器であり、これは環状三量体の含有量が少ないことによる効果の現われである。環状三量体の含有量低下のためには、固相重合時の固有粘度の増大も必要であることから、固有粘度の値も比較的高い範囲となる。比較例2のIでは、環状三量体の含有量が多いにもかかわらず、優れた光沢度を示している。しかしながら、結晶化度が低いことから、この容器は、耐熱性が小さい。すなわち金型容器が低温であるため、環状三量体、及び単量体類の金型への移行、蓄積が起こらず良好な光沢度を示すのである。
J,D,Kに関しては、高度な分子配向をもち、耐熱性を持ち得る結晶化度を示しているが、環状三量体の含有量が多いために光沢度が悪くなっていることが理解できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の容器の一例の側面図、
第2図は、第1図の容器の底面図、
第3図は、第1図の容器の線A-Aにおける断面図、
第4及び5図は、ペレット中のCT含有量を示すGPC図、
第6図(a),(b)及び第7図(a),(b)は、容器パネル部の表面粗さを示す図である。1は二軸延伸ポリエステル容器、2はノズル部、3は肩部、4は胴部、5は底部、6はパネル状凹部、7はピラー状凸部である。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2010-04-26 
出願番号 特願昭63-180330
審決分類 P 1 41・ 853- Y (B29C)
P 1 41・ 856- Y (B29C)
P 1 41・ 852- Y (B29C)
P 1 41・ 851- Y (B29C)
最終処分 成立  
特許庁審判長 渡辺 仁
特許庁審判官 松浦 新司
▲吉▼澤 英一
登録日 1997-11-21 
登録番号 特許第2133467号(P2133467)
発明の名称 熱固定された延伸ポリエステル中空容器及びその製法  
代理人 小川 信夫  
代理人 小川 信夫  
代理人 中村 稔  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 中村 稔  

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