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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1216833
審判番号 不服2009-18288  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-09-29 
確定日 2010-05-10 
事件の表示 特願2006-289227「各種遊技情報データ処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 6月 7日出願公開、特開2007-136166〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は,平成9年12月26日に出願された特願平9-360772号(以下,「原原優先元出願」という。)に基づく優先権を主張して,平成10年8月31日に出願された特願平10-246163号(以下,「原原出願」という。)について,平成14年4月26日にその一部を新たな特許出願とした特願2002-163579号(以下,「原出願」という。)について,さらに,平成18年9月25日にその一部を新たな特許出願として,出願がされたものである。本件審判は,原審において平成21年9月8日付けで拒絶の査定がされたため,これを不服として同年9月29日付けで審判請求がされたものである。
当審においてこれを審理した結果,平成22年1月5日付けで新たな拒絶の理由を通知したところ,請求人は平成22年3月4日付けで,意見書及び手続補正書を提出した。


第2 当審の判断

1.本願発明の認定

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成22年3月4日付けで補正された特許請求の範囲における,【請求項1】に記載された事項によって特定されるべきものであり,その記載は次のとおりである。

「賞球遊技場に複数台設置される複数の異なる製造メーカーが提供する賞球遊技台(2)と,
前記各賞球遊技台(2)に夫々設けられてなる信号変換装置(4)と,
前記各信号変換装置(4)に一体的又は接続手段を介して夫々設けられてなる各種遊技情報データ処理装置(5)と,
前記賞球遊技場に設置され,且つ,前記各賞球遊技台(2)を提供する複数の異なる製造メーカーのうち一つの製造メーカー,あるいは,前記複数の異なる製造メーカーとは異なる他の製造メーカーが提供する店舗管理コンピュータ(7b)等を用いた遊技情報データ管理装置(7)と,を有する各種遊技情報処理データ伝達システムを用いた各種遊技情報データ処理方法であって,
前記賞球遊技台(2)からは各種遊技情報データが出力され,その出力された各種遊技情報データは,前記信号変換装置(4)によってデジタル信号に変換され,その変換されたデジタル信号は,前記各種遊技情報データ処理装置(5)によって読み取られ,その読み取られたデータは,前記各種遊技情報データ処理装置(5)によって,前記遊技情報データ管理装置(7)で管理可能なように変換され,その変換された処理データは,前記各種遊技情報データ処理装置(5)によって前記遊技情報データ管理装置(7)に出力されてなることを特徴とする各種遊技情報データ処理方法。」


2.引用刊行物の記載事項

当審の拒絶理由に引用した特開平8-66536号公報(以下「引用例1」という。)には,以下の記載が図示とともにある。

ア.産業上の利用分野
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,例えば,遊技場内の複数個所に配置された各機器に内蔵された複数のコンピュータを一括管理するホールコンピュータ装置に関する。」

イ.従来の技術
「【0002】
【従来の技術】遊技場内には,各島毎に遊技機が配置されると共に,遊技機に応じて金銭を投入してパチンコ球やメダル等を貸し出すサンド貸機,サンド貸機から搬送される金銭を一時貯留する金庫及びパチンコ球やメダル等の価値媒体の獲得数を計数する計数機等の各機器が配置されており,これらの各機器のデータを収集して一括管理するためのホストコンピュータが設置されている。」

ウ.発明が解決しようとする課題
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は,ホストコンピュータを小形化でき,ホストコンピュータが故障した時にも,各機器からのデータ入力及び記憶されているデータの呼び出し等が可能であって,記憶されているデータの復旧が可能であり,ホストコンピュータに接続可能な機器の台数に制限がない分散処理型ホールコンピュータ装置を提供することにある。」

エ.課題を解決するための手段
「【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の分散処理型ホールコンピュータ装置は,上記課題を解決するために,各遊技機毎に設置されると共に,遊技機,サンド貸機,金庫及び計数機のデータを各個別に収集する台コンピュータと,各島毎に設置され,島内の各台コンピュータが収集したデータを収集する島コンピュータと,データを表示するための表示部,印字を行うための印字部及び島コンピュータ及び台コンピュータに指示する内容を入力するためのキー入力操作部を有すると共に,前記島コンピュータが収集したデータを収集するホストコンピュータとを備え,前記島コンピュータと各台コンピュータとの間がバス方式の通信を行うためのツイストペアー線で接続され,前記ホストコンピュータと各島コンピュータとの間がバス型LANで接続されていることを特徴とする。
【0008】また,前記各台コンピュータは,遊技機,サンド貸機,金庫及び計数機から入力したデータを一定期間記憶保持する第1のデータ記憶エリアを備え,前記各島コンピュータは前記各台コンピュータから収集したデータを一定期間記憶保持する第2のデータ記憶エリアを備える。
【0009】さらに,前記ホストコンピュータは,前記バス型LAN上で通信を行うために,前記バス型LANを介して前記ホストコンピュータに接続された各機器毎に必要となるアドレスを設定するための記憶装置よりなるアドレス設定手段を備え,前記各機器は,自己のアドレス設定を前記ホストコンピュータに要求するためのアドレス設定要求スイッチを備えると共に,前記アドレス設定要求スイッチの作動後に自己に対して送られた自己アドレスを記憶するためのアドレス記憶手段及び自己アドレスが記憶されるアドレス記憶領域を備える。
【0010】またさらに,前記ホストコンピュータは,前記島コンピュータまたは台コンピュータに格納されている各データ収集のためのデータ収集プログラムを新規データ収集プログラムに入れ替える記憶装置よりなるダウンロード手段を備えると共に,前記新規データ収集プログラムに対応させて,前記島コンピュータの第1のデータ記憶エリア及び前記台コンピュータの第2のデータ記憶エリアに記憶されている全データの記憶形式や記憶アドレスの整合性をとるデータ変換保存手段を備える。」

オ.作用
「【0011】
【作用】台コンピュータは,接続されている遊技機,サンド貸機,金庫及び計数機のデータを各個別に収集して記憶する。各島に配設された島コンピュータは,傘下の台コンピュータとツイストペアー線を介してバス方式のデータ通信を行うことにより,島内の各台コンピュータが収集したデータを収集し記憶する。ホストコンピュータは,キー入力操作部から入力されるコマンドに従って,バス型LANを介して接続された各島コンピュータとの間でデータ通信を行い,各島コンピュータが収集した各台コンピュータの収集データを収集して記憶すると共に,表示部において収集データを画面表示すると共に,印字部において収集データを印字する。
【0012】ホストコンピュータとデータを収集し記憶する機器とをバス型LANによって接続することにより,新たに島コンピュータを増設したり,島コンピュータ以外の機器を無制限にホストコンピュータに接続することを可能とする。
【0013】各台コンピュータは,第1のデータ記憶エリアに遊技機,サンド貸機,金庫及び計数機から入力したデータを記憶し,記憶されたデータを一定期間保持する。
【0014】各島コンピュータは,第2のデータ記憶エリアに各台コンピュータから収集したデータを記憶すると共に,一定期間保持する。
【0015】ホストコンピュータは,各島コンピュータが収集したデータを収集して記憶し,収集したデータを表示部に表示すると共に印字部によって印字し,キー入力操作部からの操作入力によって入力された内容を島コンピュータ及び台コンピュータに指示する。
・・・・・・・・
【0018】また,台コンピュータに格納されている各データ収集のためのデータ収集プログラムを新規データ収集プログラムに入れ替える時には,台コンピュータが第2のデータ記憶エリアに記憶されている全データを台コンピュータのアドレスと一緒に送信し,島コンピュータは,これらを受信するとホストコンピュータのアドレスと一緒に台コンピュータから受信した全データをバス型LAN上に送信し,これを受信したホストコンピュータは,データ変換保存手段により,ダウンロードする新規データ収集プログラムに対応させて,受信した台コンピュータの全データの記憶形式や記憶アドレスの整合性をとり,ダウンロード手段によって,整合性をとったデータと新規データ収集プログラムを台コンピュータのアドレスと一緒にバス型LAN上に送信し,これらを受信した島コンピュータは,台コンピュータにホストコンピュータから受信した整合性がとられたデータと新規データ収集プログラムを台コンピュータに送信し,これらを受信した台コンピュータは,整合性がとられたデータと新規データ収集プログラムとをそれぞれ記憶する。」

カ.分散型ホールコンピュータ装置の概要
「【0019】
【実施例】以下,本発明の実施例を図面を参照して説明する。図1は,本発明の分散型ホールコンピュータ装置の要部ブロック図である。遊技場内において,各島内に設置された各遊技機毎に台コンピュータ1が設置され,各島毎に島コンピュータ2が設置されると共に,遊技場内に設置された各機器を一括管理するためのホストコンピュータ3が設置されている。
【0020】島コンピュータ2と該島コンピュータ2が設置された島内の複数の台コンピュータ1とは,バス方式の通信を行うためのツイストペアー線4によって接続されている。
・・・・・・・
【0023】ホストコンピュータ3は,図2に示すように,処理実行手段であるホストCPU11,アドレス設定手段やプログラムのダウンロード手段及びダウンロード手段の実行時に合わせて実行するデータ変換保存手段等が格納記憶された書き換え可能なメモリ及びこれらの手段を実行するときに使用されるワーキングエリアとしてのRAMにより構成されたメモリ12,収集データを専用に一定期間記憶保持するための収集データメモリ13及びバス型LAN5を介して送受信を行うための通信インタフェース14を備え,ホストCPU11には,データ等を表示するためのCRT装置等からなる表示部15,印字を行うための印字部16及び島コンピュータ及び台コンピュータに指示する内容を入力するためのキー入力操作部17がそれぞれ接続されている。
【0024】島コンピュータ2は,図3に示すように,処理実行手段である島CPU18,島CPU18の実行プログラムが格納記憶された書き換え可能なメモリ及びこれらの手段を実行するときに使用されるワーキングエリアとしてのRAMにより構成されたメモリ19,各台コンピュータ1からの収集データを専用に一定期間記憶保持するための第2のデータ記憶エリアとしての収集データメモリ20を備えると共に,バス型LAN5を介して送受信を行うための通信インタフェース21,台コンピュータ1との送受信を行うための通信インタフェース22,23を備え,自己のアドレス設定をホストコンピュータ3に要求するためのアドレス設定要求スイッチSW1が島CPU18の入出力部24を介して島CPU18に接続されている。
・・・・・・・
【0026】台コンピュータ1は,図4に示すように,処理実行手段である台CPU25,台CPU25の実行プログラムが格納記憶された書き換え可能なメモリ及びこれらの手段を実行するときに使用されるワーキングエリアとしてのRAMにより構成されたメモリ26,台CPU25が収集するデータを専用に一定期間記憶保持するための第1のデータ記憶エリアとしての収集データメモリ27を備えると共に,島コンピュータ2との通信を行うための通信インタフェース28と,台CPU25の処理動作に必要な各種信号を入出力するための入出力部29とを備え,台CPU25には,該入出力部29を介して,自己のアドレス設定をホストコンピュータ3に要求するためのアドレス設定要求スイッチSW2,遊技機30,サンド貸機31,金庫32及び計数機33が接続されている。」

キ.台コンピュータ1のデータ収集処理
「【0063】次に,台コンピュータ1の台CPU25が行うデータ収集処理について説明する。図31及び図32は,台CPU25が行う処理のメインルーチンを示すフローチャートである。台CPU25は,まず,アドレス設定要求スイッチSW2のオン操作によるアドレス要求信号が入力されているか否かの判別処理を行い(ステップc1),アドレス要求信号が入力されていなければ,次に,島CPU18からの通信コマンドがあるか否かの判別処理を行い(ステップc2),島CPU18からの通信コマンドがなければ,閉店処理終了フラグF1の値が1であるか否かにより閉店処理が終了しているか否かの判別処理を行い(ステップc3),閉店処理終了フラグF1の値が終了を規定する値1でなければ,所定の処理周期でステップc4乃至ステップc11の各処理を繰り返し実行することにより,図4に示すように,台コンピュータ1に接続されている遊技機30,サンド貸機31,金庫32及び計数機33から各種データを周期的に収集して収集データメモリ27に更新記憶する。
【0064】ステップc4乃至ステップc7に示す処理は,遊技機30からの各種データを収集する処理であり,台CPU25は,例えば,遊技機30がパチンコ遊技機であればアウト球の個数を示すアウトデータの入力処理(ステップc4),セーフ球の個数を示すセーフデータの入力処理(ステップc5),大当たり発生を示す特賞信号入力処理(ステップc6),始動口入賞による図柄変動中を示す始動信号入力処理(ステップc7)を順次行って遊技機データとしてメモリ26に一時記憶する。
【0065】次に,台CPU25は,サンド貸機信号入力処理を行ってサンド貸機31から入力したサンド貸機データをメモリ26に一時記憶し(ステップc8),金庫信号入力処理を行って金庫32から入力した金庫データをメモリ26に一時記憶し(ステップc9),計数機信号入力処理を行って計数機33から入力した計数機データをメモリ26に一時記憶し(ステップc10),メモリ26に一時記憶しておいた遊技機データ,サンド貸機データ,金庫データ及び計数機データのそれぞれを収集データメモリ27に記憶する(ステップc11)。」

ク.島コンピュータ2のデータ収集処理
「【0072】島CPU18は,ステップb4乃至ステップb10によって形成される処理ループにより傘下にある各台CPU25からのデータを収集するデータ収集処理を行う。」

ケ.遊技機30毎の設定
「【0085】なお,設定入力処理モードである場合には,ホストCPU11は,ステップa2の判別処理を真と判定してステップa10の設定入力処理を行う。設定入力処理で行われる設定は,初期設定として,遊技機30,サンド貸機31,金庫32及び計数機33の台数設定,球,コインの単価と交換率,遊技機30の所属(遊技機一台毎が所属する島,機種,遊技種の設定),サンド貸機31の入力信号に関する設定,サンド貸機31以外の貸機や計数機の島コンピュータ2における配線接続の設定,サンド貸機31と遊技機30の対応関係の設定,ホール名や機種名等の名称入力を行い,営業設定として,打ち止め設定及び打ち止め予告設定,注意台,異常台及び終了台の設定,自動クリア設定,データのオン・オフ時間設定,補給形式の設定を行い,放送設定としてキー入力操作部17におけるファンクションキーの設定を行う。」

コ.データの保持記憶
「【0135】以上のように,閉店処理が終了した時点で,各島のそれぞれの台コンピュータ1には,開店処理を行った時点から更新記憶した遊技機データ,サンド貸機データ,金庫データ及び計数機データの最終データが記憶保持され,各島毎に配属された各島コンピュータ2には,各島コンピュータ2の傘下にある各台コンピュータ1の最終データが遊技機データ,サンド貸機データ,金庫データ及び計数機データの別に記憶保持され,さらに,ホストコンピュータ3には,各島コンピュータ2が記憶保持している最終データが遊技機データ,サンド貸機データ,金庫データ及び計数機データの別に記憶保持される。
【0136】このため,万一,ホストコンピュータ3が故障等により機能しなかった場合であっても,各島コンピュータ2と各台コンピュータ1に最終データがそれぞれ記憶保持されているため,各島コンピュータ2と各台コンピュータ1からのデータ入力及び記憶されているデータの呼び出し等が可能であり,記憶されているデータが全て無効となるという欠点を回避することができる。
【0137】また,ホストコンピュータ3が故障から復帰した時点で,最終データを収集させれば,各島コンピュータ2と各台コンピュータ1からのそれぞれ記憶されている最終データが入力されて記憶させることができるため,必要となる最終データの復旧が可能である。」

サ.台コンピュータ1のデータ収集プログラムの変更
「【0150】次に,台コンピュータ1のダウンロードが選択された場合に処理について説明する。この場合には,キー入力操作部17からスタート台番号及びエンド台番号が入力されることとなり,スタート台番号及びエンド台番号が入力されると,ホストCPU11は,図15に示すように,キー入力されたスタート台番号を台番号記憶レジスタDN1に記憶し(ステップa90),エンド台番号をエンド台番号記憶レジスタDN2に記憶し(ステップa91),台番号記憶レジスタDN1に格納されているスタート台番号に対応した台コンピュータ1の台CPU25の台CPU用アドレスと一緒に台コンピュータダウンロード用データ要求コマンドをバス型LAN5上に送信する(ステップa92)。
【0151】送信相手に指定された台コンピュータ1を傘下に持つ島コンピュータ2の島CPU18は,前述のように,台CPU用アドレスの先頭部分により自己の島の傘下にある台コンピュータ1に対する通信コマンドがあると判定して台コンピュータダウンロード用データ要求コマンドをバス型LAN5上から受信すると,ステップb1,ステップb2,ステップb15乃至ステップb20の判別後,ステップb21の判別処理によって受信した通信コマンドがダウンロード用データ要求コマンドであると判定し,図29のステップb55に移行し,このダウンロード用データ要求コマンドが島コンピュータ用であるか否かを判別し(ステップb55),この場合には偽と判定して図30のステップb61に移行する。
【0152】島CPU18は,受信した台コンピュータの台CPU用アドレスに対応する台コンピュータ1の台CPU25に,ダウンロード用データ要求コマンドを送信する(ステップb61)。
【0153】送信相手に指定された台コンピュータ1の台CPU25は,ステップc1,ステップc2,ステップc16乃至ステップc19の判別後,ステップc20の判別処理によって受信した通信コマンドがダウンロード用データ要求コマンドであると判定し,図39のステップc31に移行し,収集データメモリ27に記憶保持している現在の全データを島CPU18に送信する(ステップc31)。
【0154】島CPU18は,台CPU25が送信した全データを受信し(ステップb62),ホストCPU11のアドレスと一緒に受信した台コンピュータ1の全データをバス型LAN5上に送信する(ステップb63)。
【0155】ホストCPU11は,図16のステップa93の処理により,送信相手に指定した台コンピュータ1から送信された全データをバス型LAN5上から受信し(ステップa93),該データをメモリ12上に設定された作業用エリアに一時記憶し,次いで,ダウンロードする新規プログラムに対応させてデータの記憶フォーマットや相対的なデータの記憶アドレス等の整合性をとるデータ変換を行って整合性処理された変換データをメモリ12上に設定された変換データエリアに一時記憶する(ステップa94)。
【0156】ステップa94の処理後,ホストCPU11は,台番号記憶レジスタDN1に格納されている台番号に対応する台コンピュータ1の台CPU用アドレスと一緒にメモリ12上の変換データエリアに記憶している整合性処理された変換データと新規プログラムとをバス型LAN5上に送信する(ステップa95)。
【0157】送信相手に指定された台コンピュータ1を傘下に持つ島コンピュータ2の島CPU18は,図30のステップb64の処理によりホストCPU11が送信した整合性処理された変換データと新規プログラムとをバス型LAN5上から受信し(ステップb64),受信した台コンピュータの台CPU用アドレスに対応する台コンピュータ1の台CPU25に,受信した整合性処理された変換データと新規プログラムとを送信する(ステップb65)。
【0158】送信相手に指定された台コンピュータ1の台CPU25は,島CPU18から整合性処理された変換データと新規プログラムとを受信し(ステップc32),受信した変換データを収集データメモリ27に記憶し(ステップc33),受信した新規プログラムをメモリ26の所定エリアに格納し(ステップc34),島CPU18に記憶終了の回答を送信する(ステップc35)。
【0159】島CPU18は,台CPU25からの終了回答を受信し(ステップb66),ホストCPU11のアドレスと一緒に終了回答をバス型LAN5上に送信する(ステップb67)。
【0160】ホストCPU11は,送信相手に指定した台コンピュータ1の終了回答をバス型LAN5上から受信すると(ステップa96),次の台コンピュータ1を指定するために台番号記憶レジスタDN1に格納されている台番号の値を1つインクリメントし(ステップa97),台番号記憶レジスタDN1の値がエンド台番号記憶レジスタDN2に設定されている値を超えているか否かを判別することにより(ステップa98),全ての台コンピュータ1のダウンロード処理が終了したか否かを判別する。
【0161】ステップa98の判別処理によって,台番号記憶レジスタDN1の値がエンド台番号記憶レジスタDN2に設定されている値を超えていなければ,台コンピュータ1のダウンロード処理が終了していないと判定され,この場合には,ホストCPU11は,ステップa92に戻って,バス型LAN5上に台番号記憶レジスタDN1に格納されている台番号に対応する次の台コンピュータ1(i)の台CPU用アドレスと台コンピュータダウンロード用データ要求コマンドを送信する。
【0162】ホストCPU11は,ステップa92乃至ステップa98によって形成される処理ループを実行することによって台番号記憶レジスタDN1の値を更新して順次台コンピュータを指定して台コンピュータダウンロード用データ要求コマンドを送信し,送信相手の台コンピュータから送信されるデータをバス型LAN5上から受けとって新規プログラムに対応させて整合性をとって変換データを作成し,送信相手に指定した台コンピュータ2に新規プログラムをダウンロードすると共に変換データを送信していく。
【0163】そして,台番号記憶レジスタDN1の値がエンド台番号記憶レジスタDN2に設定されている値を超えると,ホストCPU11は,ステップa98の判別処理によって台コンピュータ1に関するプログラムのダウンロード処理が終了したと判定してリターンする。
【0164】以上のように,島コンピュータ2及び台コンピュータ1にそれぞれ格納されているデータ収集等を行うのための動作プログラムを新規の動作プログラムに変更する際には,ホストコンピュータ3から島コンピュータ2及び台コンピュータ1のそれぞれにダウンロードして新規の動作プログラムに変更することができると共に,島コンピュータ2及び台コンピュータ1のそれぞれに記憶されている収集データを新規のプログラムをダウンロードする前に,新規のプログラムに対応させて整合性をとって再び島コンピュータ2及び台コンピュータ1のそれぞれに記憶するので,記憶されていた収集データがプログラムの変更に伴って失われることがなく,引き続いて新規のプログラムに対応して受け継ぐことができる。」


3.引用例1記載の発明の認定

前記記載事項ア.?サ.の全体から,引用例1には,遊技場内に複数台設置される機器が出力するデータを扱う方法に関する発明事項が開示されていることが明らかである。
前記記載事項キ.及びケ.によれば,対象となる機器には「遊技機30」が含まれるとともに,「遊技機30」には「機種」及び「遊技種」等の設定を要することが明らかである。また,前記記載事項イ.及びキ.によれば,「遊技機30」はパチンコ球を用いる「パチンコ遊技機」である場合もあり,「メダル」を用いる遊技機である場合もある。
前記記載事項カ.によれば,各「遊技機30」毎に「台コンピュータ1」が設置され,「台コンピュータ1」には「サンド貸機31」,「金庫32」及び「計数機33」も接続される。また,「遊技場内に設置された各機器を一括管理するためのホストコンピュータ3」,及び「各島毎」に設置された「島コンピュータ2」が存在し,「分散型ホールコンピュータ装置」が構成されている。前記記載事項キ.によれば,「遊技機30」が「各種データ」を出力する。この「各種データ」が,前述した「分散型ホールコンピュータ装置」により,伝達されて処理されること,すなわち,分散処理型のデータ処理方法が開示されていることは,引用例1の全体から明らかである。
前記記載事項カ.及びキ.によると,「遊技機30」が出力する「各種データ」は,「台コンピュータ1」の「入出力部29」を介して「台コンピュータ1」に入力され,「台コンピュータ1」の「台CPU25」によって,「台コンピュータ1」の「収集データメモリ27」に記憶される。前記記載事項ク.及びコ.も勘案すれば,「台コンピュータ1」の「収集データメモリ27」に記憶されたデータは,「島コンピュータ2」を介して「ホストコンピュータ3」に送信され,「台コンピュータ1」及び「ホストコンピュータ3」の両方に記憶保持されることが明らかである。
前記記載事項オ.の段落【0018】によれば,「台コンピュータ1」の「データ収集プログラム」は,新規プログラムに更新可能である。
当該プログラム更新時の動作についてみると,前記記載事項サ.によれば,当該プログラム更新の際には,対象となる「台コンピュータ1」が,「スタート台番号」及び「エンド台番号」で指定される。ここで指定された「台コンピュータ1」については,「収集データメモリ27」に記憶された「現在の全データ」が,一度「ホストコンピュータ3」に送信される。そして「ホストコンピュータ3」では,対象となる「台コンピュータ1」から受信した「現在の全データ」に対して,台コンピュータ1の新規プログラムに対応させて「データの記憶フォーマットや相対的なデータの記憶アドレス等の整合性をとるデータ変換」を行っている。そのうえで,「ホストコンピュータ3」は,「整合性処理された変換データ」と「新規プログラム」とを,「台コンピュータ1」に送信する。「台コンピュータ1」では,こうして送られた新規プログラムをダウンロードするとともに,該新規プログラムに対応して「整合性処理されたデータ」を,「収集データメモリ27」に記憶している。
「台コンピュータ1」のプログラム更新時に,上述のような手順をとる効果としては,前記記載事項サ.によれば,プログラム更新に際して「データの記憶フォーマット及び相対的なデータの記憶アドレス等」に変更があっても,「収集データメモリ27」に記憶されていた「現在の全データ」を,引き続いて新規のプログラムに対応して整合性変換されたデータとして,受け継ぐことが可能であることが示されている。

以上を整理すると,引用例1には,

「遊技場内に複数台設置され,機種及び遊技種の設定を要する,パチンコ遊技機あるいはメダルを用いる遊技機である遊技機30と,
各遊技機30毎に設置され,サンド貸機31,金庫32及び計数機33とも接続される台コンピュータ1と,
遊技場内に設置された各機器を一括管理するためのホストコンピュータ3,及び各島毎に設置された島コンピュータ2を有し,分散型ホールコンピュータ装置により,遊技機30の各種データを伝達して処理する,分散処理型のデータ処理方法であって,
遊技機30からは各種データが出力され,該各種データを,台コンピュータ1の入出力部29を介して台コンピュータ1に入力し,台コンピュータ1の台CPU25によって,台コンピュータ1の収集データメモリ27に記憶し,
台コンピュータ1の収集データメモリ27に記憶したデータを,島コンピュータ2を介してホストコンピュータ3に送信することで,台コンピュータ1及びホストコンピュータ3の両方にデータを記憶保持する,データ処理方法であるとともに,
台コンピュータ1のデータ収集プログラムは新規プログラムに更新可能であって,
当該プログラム更新の際には,対象となる台コンピュータ1を,スタート台番号及びエンド台番号で指定し,指定された台コンピュータ1の収集データメモリ27に記憶された現在の全データを,ホストコンピュータ3に送信し,ホストコンピュータ3では,当該現在の全データに対して,台コンピュータ1の新規プログラムに対応させたデータの記憶フォーマットや相対的なデータの記憶アドレス等の整合性をとるデータ変換を行い,整合性処理された変換データと新規プログラムとを台コンピュータ1に送信し,台コンピュータ1では新規プログラムをダウンロードするとともに,該新規プログラムに対応して整合性処理されたデータを収集データメモリ27に記憶することにより,
台コンピュータ1のデータ収集プログラムの更新に際してデータの記憶フォーマット等に変更があっても,台コンピュータ1の収集データメモリ27に記憶されていた現在の全収集データを,引き続いて新規のプログラムに対応して整合性変換されたデータとして受け継ぐことを可能とした,
遊技機30の各種データのデータ処理方法」

なる発明(以下,「引用発明1」という。)が開示されていると認めることができる。


4.本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定

(1)システム構成部分の対比
引用発明1と本願発明とを対比する。両発明は「方法」であるが,まずはそれぞれの「方法」で用いる,システムの構成要素の部分について,対比することとする。
引用発明1における「遊技場」は,本願発明における「賞球遊技場」に相当する。
引用発明1における「遊技機30」は,本願発明における「賞球遊技台(2)」に相当する。なお,引用発明1における「遊技機30」は,「パチンコ遊技機あるいはメダルを用いる遊技機」であるのに対して,本願発明における「賞球遊技台(2)」は,「賞球」の語からすればパチンコ遊技機のみを指すようにも解し得る。しかしながら,本願明細書の段落【0001】には,「賞球遊技台(主にパチンコ店と呼ばれる賞球遊技場に設置される各種パチンコ台,各種パチスロ台及び各種スロットマシン等)」と記載されているから,明細書の記載を参酌すれば,本願発明における「賞球遊技台(2)」の語は,いわゆるパチンコ店に設置されるパチンコ遊技機及びスロットマシンをいずれも包含する趣旨と解するべきである。また,仮に本願発明における「賞球遊技台(2)」を,いわゆるパチンコ台のみを指す趣旨と解したとしても,引用発明1における「遊技機30」のうち,「パチンコ遊技機」である「遊技機30」はこれに相当するから,結局のところ引用発明1における「遊技機30」と本願発明における「賞球遊技台(2)」とは,互いに相当するというべきである。
引用発明1において,「遊技機30」が遊技場内に「複数台」設置されることは,本願発明において,「賞球遊技台(2)」が賞球遊技場に「複数台」設置されることと一致する。
引用発明1において,「遊技機30」が出力する「各種データ」は,遊技機が出力するのであるから遊技に関する各種データであり,本願発明において「賞球遊技台(2)」が出力する,「各種遊技情報データ」に相当する。また,引用発明1における「台コンピュータ1」は,「遊技機30」が出力する「各種データ」を,「台CPU25」を含むデジタル信号処理部においても扱っていることが明らかである。そのため,引用発明1における「台コンピュータ1」のデジタル信号処理部は,本願発明において「デジタル信号」とされた「各種遊技情報データ」を読み取って処理する,「各種遊技情報データ処理装置(5)」に相当する。
引用発明1における「台コンピュータ1」の「入出力部29」と,本願発明における「信号変換装置(4)」とは,信号のデジタル変換を行うか否かはひとまず措くとして,「外部信号入力部」である点で一致する。
引用発明1における「台コンピュータ1」の「入出力部29」とデジタル信号処理部とは,一体的又は接続手段を介して設けられていることは実際上明らかである。そのため本願発明において,「各種遊技情報データ処理装置(5)」が「前記各信号変換装置(4)」に対して,「一体的又は接続手段を介して夫々設けられてなる」とある点は,引用発明1と本願発明との一致点である。また引用発明1において,「台コンピュータ1」の「入出力部29」とデジタル信号処理部とは,いずれも「各遊技機30毎に設置」されていることが明らかであり,このことは本願発明において,「信号変換装置(4)」と「各種遊技情報データ処理装置(5)」とが,いずれも「各賞球遊技台(2)」に「夫々設けられてなる」ことに相当する。
引用発明1において,「遊技場内に設置された各機器を一括管理するためのホストコンピュータ3」は,本願発明における「店舗管理コンピュータ(7b)」に相当する。また,引用発明1において,「ホストコンピュータ3」を含む「分散型ホールコンピュータ装置」の「台コンピュータ1」を除く部分は,本願発明における「店舗管理コンピュータ(7b)等を用いた遊技情報データ管理装置(7)」に相当する。そして,引用発明1において,「遊技機30」が出力する「各種データ」を伝達して処理する装置の全体は,システムと言い換えることができ,引用発明1における該システムは,本願発明における「各種遊技情報処理データ伝達システム」に相当する。さらに,引用発明1における当該システムの構成要素は,実際上は遊技場内に設置されると言って差し支えない。そのため,本願発明において,「店舗管理コンピュータ7b」又は「遊技情報データ管理装置(7)」あるいは「各種遊技情報処理データ伝達システム」について,「前記賞球遊技場に設置され」とある点は,引用発明と本願発明の一致点である。
引用発明1におけるデータ処理方法の全体は,本願発明における「各種遊技情報データ処理方法」に相当する。

ここまでを小括すると、引用発明1と本願発明とは、
「賞球遊技場に複数台設置される賞球遊技台と,
前記各賞球遊技台に夫々設けられてなる外部信号入力部と,
前記外部信号入力部に一体的又は接続手段を介して夫々設けられてなる各種遊技情報データ処理装置と,
前記賞球遊技場に設置される店舗管理コンピュータ等を用いた遊技情報データ管理装置と,を有する各種遊技情報処理データ伝達システムを用いた各種遊技情報データ処理方法」
である点で、一致すると言い得る(当審注,本願発明における「(2)」等の括弧付きの参照番号は,一致点の小括箇所以降では,省略した。以下,本審決中において同様の扱いとする。)。

(2)製造メーカーに関する対比と留保
本願発明において,「賞球遊技台(2)」について,「複数の異なる製造メーカーが提供する」とある点について検討する。
一般的に,いわゆるパチンコ店といった遊技場には,複数の異なる製造メーカーが提供する遊技機が設置してあることが通常である。そのことからすれば,引用発明1における「遊技場」内にも,複数の異なる製造メーカーが提供する「遊技機30」が設置されると考えるべき蓋然性が高い。
しかしながら,たとえば特定の製造メーカーが直営するパチンコ店などを仮定すれば,ただ一つの製造メーカーの遊技機しか設置しない遊技場もありえない訳ではないとともに,複数の異なる製造メーカーが提供する遊技機を扱うか否かという点は,請求人が主張するところの本願発明の特徴とも関係する事項である。
そのため,本願発明に「複数の異なる製造メーカーが提供する」とある点は,直ちに引用発明1と本願発明との一致点と扱うことを控え,この点については一応の相違点として,後に改めて検討することとする。
次に,本願発明において,「店舗管理コンピュータ(7b)」あるいは「遊技情報データ管理装置(7)」に関して,「前記各賞球遊技台(2)を提供する複数の異なる製造メーカーのうち一つの製造メーカー,あるいは,前記複数の異なる製造メーカーとは異なる他の製造メーカーが提供する」とある点について検討する。
引用発明1においても,「ホストコンピュータ3」あるいはこれを含む「分散型ホールコンピュータ装置」は,どこかの製造メーカーによって提供されることが明らかである。そして,当該提供メーカーは,「遊技機30」を提供する一の製造メーカーと同じ製造メーカーであるか,あるいは異なる製造メーカーであるかの,いずれかでしかあり得ない。
その点からすれば,本願発明において,「前記各賞球遊技台(2)を提供する複数の異なる製造メーカーのうち一つの製造メーカー,あるいは,前記複数の異なる製造メーカーとは異なる他の製造メーカーが提供する店舗管理コンピュータ(7b)等・・・」とある点は,単独でみれば有意義な限定とも思量されない側面を含んでいる。
しかしながら,先に本願発明の「賞球遊技台(2)」について「複数の異なる製造メーカーが提供する」とある点を一応の相違点としたことと併せれば,「店舗管理コンピュータ(7b)」等が,「前記各賞球遊技台(2)を提供する複数の異なる製造メーカーのうち一つの製造メーカー,あるいは,前記複数の異なる製造メーカーとは異なる他の製造メーカーが提供する」ものである場合には,少なくとも「店舗管理コンピュータ(7b)」等は,別の製造メーカーによって提供された「賞球遊技台(2)」の出力するデータについても,最終的には管理の対象に含めていることとなる。そして,引用発明1では,必ずしもそうなっているか否かは明らかでない。
そのため,本願発明において,「店舗管理コンピュータ(7b)」等について,「前記各賞球遊技台(2)を提供する複数の異なる製造メーカーのうち一つの製造メーカー,あるいは,前記複数の異なる製造メーカーとは異なる他の製造メーカーが提供する」とある点も,一応の相違点として,後の検討に回すこととする。

(3)データ処理部分の対比
最後に,引用発明1と本願発明との,データ処理の流れについて対比する。
引用発明1において,「遊技機30」から「各種データ」が出力されることは,本願発明において「賞球遊技台(2)」から「各種遊技情報データ」が出力されることに相当する。
また,引用発明1において,「遊技機30」から出力された「各種データ」は,「台コンピュータ1」の「入出力部29」でデジタル信号に変換されるか否かはひとまず措くとして,「台CPU25」によって「台コンピュータ1の収集データメモリ27に記憶」される等の処理を受けている。そうである以上,引用発明1において,該「各種データ」のデジタル信号が,「台コンピュータ1」のデジタル信号処理部において読み取られることが明らかである。このことを,本願発明に「前記賞球遊技台(2)からは各種遊技情報データが出力され,その出力された各種遊技情報データは,前記信号変換装置(4)によってデジタル信号に変換され,その変換されたデジタル信号は,前記各種遊技情報データ処理装置(5)によって読み取られ」とある点と比較すると,引用発明1と本願発明とは,「前記賞球遊技台(2)からは各種遊技情報データが出力され,そのデジタル信号は,前記各種遊技情報データ処理装置(5)によって読み取られ」という点で一致する。
次に,引用発明1では,「台コンピュータ1」は「データ収集プログラム」に従って動作している。そして「台コンピュータ1」は,「遊技機30」からの「各種データ」を「収集データメモリ27」に記憶したうえで,該「収集データメモリ27」に記憶したデータを「ホストコンピュータ3」にも送信して,記憶保持させている。
ここで,引用発明1において「台コンピュータ1」の「データ収集プログラム」を更新する際に,「データ収集プログラム」の変更に対応した「台コンピュータ1」内に記憶済みのデータの整合性変換処理が行われることからすれば,「台コンピュータ1」による「収集データメモリ27」へのデータ記憶に,「データ収集プログラム」に応じて変わり得る「データの記憶フォーマットや相対的なデータの記憶アドレス等」が存在することが明らかである。そしてまた,引用発明1における「台コンピュータ1」は,「データ収集プログラム」の更新時を除く通常動作時には,「遊技機30」が出力する「各種遊技データ」を,当該「データの記憶フォーマットや相対的なデータの記憶アドレス等」へと処理したうえで,「収集データメモリ27」へと記憶し,また同処理後のデータを「ホストコンピュータ3」へと送信していることが明らかである。引用発明1の「台コンピュータ1」が通常時に行う前述の処理が,「変換」と言い得るか否かについては,ひとまず措いておく。しかしながら,引用発明1における「台コンピュータ1」の上述の処理と,本願発明における「前記各種遊技情報データ処理装置(5)」が行う「変換」とは,「処理」である点で少なくとも一致する。
さらに,引用発明1において,「台コンピュータ1」によって,動作中の「データ収集プログラム」に従った「データの記憶フォーマットや相対的なデータの記憶アドレス等」に処理されたデータは,「変換された」と言い得るかという点をひとまず措くとして,本願発明における「処理データ」に相当する。そして,引用発明1において,「台コンピュータ1」が記憶処理したデータが「ホストコンピュータ3」にも送信されて記憶保持されることは,本願発明において,「処理データは,前記各種遊技情報データ処理装置(5)によって前記遊技情報データ管理装置(7)に出力されてなる」ことに相当する。
加えて,引用発明1において「台コンピュータ1」による上述処理がなされた後のデータは,通常時においては「ホストコンピュータ3」にも記憶保持され,またプログラム更新時には「ホストコンピュータ3」によって新旧「データ収集プログラム」に対応した整合性処理が行われるものである。そのため,引用発明1において,「遊技機30」が出力する「各種遊技データ」が,そのまま「ホストコンピュータ3」によって管理可能か否かは不明であるものの,少なくとも「台コンピュータ1」による上述処理後のデータについては,「ホストコンピュータ3」で管理可能なデータ形式となっていることが明らかである。このことを,本願発明に「前記遊技情報データ管理装置で管理可能なように変換され,」とあることと対比すると,引用発明1と本願発明とは,少なくとも「処理後のデータは,前記遊技情報データ管理装置で管理可能である」という点で一致する。

小括すると,引用発明1と本願発明とは,データ処理の部分について,
「前記賞球遊技台からは各種遊技情報データが出力され,そのデジタル信号は,前記各種遊技情報データ処理装置によって読み取られ,その読み取られたデータは,前記各種遊技情報データ処理装置によって処理され,該処理後のデータは,前記遊技情報データ管理装置で管理可能であり,その処理データは,前記各種遊技情報データ処理装置によって前記遊技情報データ管理装置に出力されてなる」
という点で一致する。

(4)引用発明1と本願発明との一致点
以上を整理すると,本願発明と引用発明1との一致点は,次のとおりである。

<一致点>
「賞球遊技場に複数台設置される賞球遊技台と,
前記各賞球遊技台に夫々設けられてなる外部信号入力部と,
前記外部信号入力部に一体的又は接続手段を介して夫々設けられてなる各種遊技情報データ処理装置と,
前記賞球遊技場に設置される店舗管理コンピュータ等を用いた遊技情報データ管理装置と,を有する各種遊技情報処理データ伝達システムを用いた各種遊技情報データ処理方法であって,
前記賞球遊技台からは各種遊技情報データが出力され,そのデジタル信号は,前記各種遊技情報データ処理装置によって読み取られ,その読み取られたデータは,前記各種遊技情報データ処理装置によって処理され,該処理後のデータは,前記遊技情報データ管理装置で管理可能であり,その処理データは,前記各種遊技情報データ処理装置によって前記遊技情報データ管理装置に出力されてなる,各種遊技情報データ処理方法。」

(5)引用発明1と本願発明との相違点
そして,本願発明と引用発明1との相違点あるいは一応の相違点は,以下のとおりとなる。

<相違点1>
本願発明では,「賞球遊技場」の「賞球遊技台(2)」が,「複数の異なる製造メーカーが提供する」ものであるのに対して,引用発明1ではそうなっているか否かが不明な点。

<相違点2>
本願発明では,「店舗管理コンピュータ(7b)」あるいは「遊技情報管理装置(7)」が,「前記各賞球遊技台(2)を提供する複数の異なる製造メーカーのうち一つの製造メーカー,あるいは,前記複数の異なる製造メーカーとは異なる他の製造メーカーが提供する」ものであるのに対して,引用発明1ではそうなっているか否か不明な点。

<相違点3>
本願発明では,「信号変換装置(4)」が「各種遊技情報データ処理装置(5)」の前段に設けられており,「賞球遊技台(2)」から出力された「各種遊技情報データ」が,「前記信号変換装置(4)によってデジタル信号に変換され」るのに対して,引用発明1における「台コンピュータ1」では,「入出力部29」にAD変換器を備えて入力信号をデジタル信号に変換するか否かが不明な点。

<相違点4>
本願発明では,「各種遊技情報データ処理装置(5)」が,読み取ったデータを「前記遊技情報データ管理装置(7)で管理可能なように変換」し,またそのことが,製造メーカー毎に異なり得る「賞球遊技台(2)」の出力データの整合処理を,「各種遊技情報データ処理装置(5)」に分担させる趣旨を有するのに対して,引用発明1では,台コンピュータ1のデジタル処理部が,遊技機30が出力するデータをデータ収集プログラムに対応したデータ形式とする処理を行い,同処理後のデータが「ホストコンピュータ3」によって管理可能ではあるものの,当該処理が,製造メーカー毎に異なり得る遊技機の出力データの整合処理を「台コンピュータ1」に分担させる趣旨を有する「変換」処理とはされていない点。


5.判断

(1)相違点1について
引用発明1においても,遊技場内には,「遊技機30」として「機種及び遊技種の設定を要する」複数種類の遊技機を備えることが想定されているとともに,一般的なパチンコ店等の遊技場においては,ただ一つの製造メーカーが提供する遊技機のみではなく,複数の異なる製造メーカーが提供する遊技機を設置することが通常である。
そうであれば,引用発明1においても,遊技場内に複数の異なる製造メーカーが提供する遊技機を設置することは,実際上明らかである。また,仮にそうでないとしても,そのようにすることは設計事項と言わざるを得ない。
したがって,相違点1は実際上の相違点ではなく,仮に実際上の相違点と扱ったとしても設計事項程度である。

(2)相違点2について
相違点1について述べたとおり,引用発明1において,実際上は複数の異なる製造メーカーが提供する遊技機が設置されると考えるべきであり,仮にそうでないとしても,そのようにすることは設計事項程度である。
そうであれば,引用発明1における「ホストコンピュータ3」または「分散型ホールコンピュータ装置」は,「遊技機30」を提供する複数の異なる製造メーカーのうち一つの製造メーカーが提供したか,あるいは,いずれの「遊技機30」の製造メーカーとも異なる製造メーカーが提供したものとならざるを得ない。
したがって,相違点2も実際上の相違点ではなく,仮に実際上の相違点と扱ったとしても,設計事項程度である。

(3)相違点3について
引用発明1における「台コンピュータ1」は,遊技種や機種の設定を要する複数種類の「遊技機30」のみならず,「サンド貸機31」,「金庫32」,「計数機33」といった遊技場内の様々な「各機器」を「入出力部29」に接続して,これに対応するものである。
また,上記相違点1及び2に関して述べたように,遊技場内に設置する機器として,複数の異なる製造メーカーが提供する機器に対応することは,実際の遊技店において当然の要求であり,遊技店のコンピュータ装置の技術分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)であれば当然に考慮すべき事項である。
そうであれば,「台コンピュータ1」を,複数の異なる製造メーカーが提供する各種の機器に対応可能とする観点から,その「入出力部29」にAD変換器を設けるとともに,アナログ信号を出力する型の遊技機については,その出力信号を当該AD変換器でデジタル信号に変換したうえで,後続するデジタル信号処理部に読み取らせるようにすることは,設計事項程度というべきである。
したがって,相違点3は設計事項程度である。

(4)相違点4について
上記相違点1及び2について述べたとおり,引用発明1においても,遊技場内に複数の異なる製造メーカーが提供する遊技機を設置するとともに,これら遊技機の全てに対応することは,当業者であれば当然に考慮すべき事項である。
それだけでなく,引用例1の前記記載事項ウ.にも「ホストコンピュータを小型化」と記載があるとおり,引用発明1では「分散処理型」のシステム構成により,「ホストコンピュータ3」の負担を軽くすることは,もともと意図されている。
そうであれば,引用発明1において,実際上は複数の異なる製造メーカーが提供する「遊技機30」が遊技場に設置されることを考慮するに際して,「遊技機30」のデータ出力形式が異なり得ることに対応して,「ホストコンピュータ3」で「一括管理」するうえでは不必要な「遊技機30」毎のデータ出力形式の相違については,各「台コンピュータ1」が「データ収集プログラム」により所定の「データの記憶フォーマット」等で記憶処理する時点で,「台コンピュータ1」のデジタル信号処理部において整合変換し,「ホストコンピュータ3」での一括管理負担が軽減されるようにすることは,当業者であれば容易に想到し得た事項というほかはない。
なお,請求人は,引用発明1では全ての「台コンピュータ1」で同じ「データ収集プログラム」しか用いることができないかのような主張をしている。しかしながら,引用発明1では「パチンコ遊技機」や「メダルを用いる遊技機」を含み,様々な「機種」の「遊技機30」を扱うのであるから,分散処理用の各「台コンピュータ1」で,接続する「遊技機30」の遊技種や機種に対して,それぞれ適合した「データ収集プログラム」を動作させて,「ホストコンピュータ3」の一括管理に好都合なデータを得ることは当然であり,仮にそうでないとしても設計事項程度である。また請求人は,引用発明1では,「台コンピュータ1」の「データ収集プログラム」の変更を,遊技場内の一部の「台コンピュータ1」についてのみ行うことはできない旨も主張している。しかしながら,引用発明1では,「データ収集プログラム」を変更すべき「台コンピュータ1」の範囲を,「スタート台番号」及び「エンド台番号」によって指定するのであるから,請求人の主張はこの点についても失当である。
さらに,請求人は,引用発明1では「台コンピュータ1」の「データ収集プログラム」を更新する際に,「台コンピュータ1」の記憶済みデータを「ホストコンピュータ3」で整合性処理して送り返す負担が大きい旨も主張している。しかしながら,引用発明1が,「データ収集プログラム」の変更に応じて「データ記憶フォーマット」等が変わる場合にも,「台コンピュータ1」と「ホストコンピュータ3」の両者で遊技機のデータを連続的に保持するための保全策を講じていること,またその保全策のために,ある特別な一時期については「ホストコンピュータ3」に若干の負担がかかることを許容していることは,相違点4に係る本願発明の構成とは全く無関係である。そのため,この点に関する請求人の主張も,特許請求の範囲を離れたものであり,失当である。
したがって,相違点4に係る本願発明の構成を得ることは,当業者にとって想到容易である。また,請求人の主張をどのように考慮しても,当該判断を変更すべき事情は見い出せない。


(5)進歩性のまとめ
以上のとおり,相違点1?4は,いずれも実際上の相違点ではないか,相違点としても設計事項程度,あるいは,当該相異点に係る本願発明の構成を得ることが当業者にとって容易な事項である。そして,当該構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって,本願発明は,引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。


第3 むすび

本願発明が特許を受けることができない以上,その余の請求項に係る発明について検討することを要さず,本願は拒絶せざるを得ない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-16 
結審通知日 2010-03-17 
審決日 2010-03-30 
出願番号 特願2006-289227(P2006-289227)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬津 太朗  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 有家 秀郎
伊藤 陽
発明の名称 各種遊技情報データ処理方法  
代理人 藤川 忠司  

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