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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1216908
審判番号 不服2007-34745  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-26 
確定日 2010-05-21 
事件の表示 特願2001-271056号「空気処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年7月10日出願公開、特開2002-195617号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成13年9月6日(国内優先権主張 平成12年9月6日に出願した特願2000-269480)の特許出願であって、平成19年11月16日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年11月27日)、これに対し、同年12月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成20年1月15日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成20年1月15日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年1月15日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前に
「一方の開口端部が空気吸引口に接続されると共に、他方の開口端部が空気吐出口に接続された、非磁性材で形成された空気流通路と、
該空気流通路を通じて空気を強制的に流通させて、前記空気吸引口から吸引した空気を前記空気吐出口から吐出させる送気手段と、
前記空気流通路の周壁部に配設される磁極を備えた永久磁石と、
前記空気流通路の内部であって、前記永久磁石の下流側に配設された炭材又は珪酸の少なくとも一方とを、
備え、室内に配設されることによって室内空気を前記空気流通路に循環的に流通させるようにしたことを特徴とする空気処理装置。」
とあったものを
「中空の箱型形状を有し、下側に空気吸引口を有すると共に、上側に空気吐出口を有する筐体と、
前記筐体の内部に形成された空気流通路であって、一方の開口端部が前記空気吸引口に接続されると共に、他方の開口端部が前記空気吐出口に接続された前記空気流通路と、
前記一方の開口端部に収容配置されて、該空気流通路を通じて空気を強制的に流通させて、前記空気吸引口から吸引した空気を前記空気吐出口から吐出させる送気手段と、
前記空気流通路の周壁部に配設される磁極を備えた永久磁石と、
前記空気流通路の内部であって、前記永久磁石の下流側に、通気性の支持部材によって支持される状態で、配設された炭材又は珪酸の少なくとも一方と、
備え、室内に配設されることによって室内空気を前記空気流通路に循環的に流通させるようにしたことを特徴とする空気処理装置。」(下線は当審にて付与。以下、同様。)と補正することを含むものである。

2.補正の目的について
上記補正について検討する。
本件補正後の請求項1に記載された発明は、本件補正前の請求項1に「非磁性材で形成された空気流通路」とあったものを「空気流通路」とする、空気流通路の材料についての限定を解除する補正事項を含むものである。
したがって、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を限定的に減縮するものではない補正事項を含むので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しないことが明らかであり、また、同条第4項第1号(請求項の削除)、第3号(誤記の訂正)、第4号(明りょうでない記載の釈明)のいずれにも該当しない。
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反する。

3.独立特許要件について
(1)本件補正発明
本件補正については、上記2で述べたとおりであるが、上記で指摘した補正事項以外についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1における空気流通路について、「中空の箱型形状を有し、下側に空気吸引口を有すると共に、上側に空気吐出口を有する筐体と、前記筐体の内部に形成された空気流通路であって」と限定し、送気手段について、「一方の開口端部に収容配置され」と限定し、炭材又は珪酸の少なくとも一方について、「通気性の支持部材によって支持される状態で」配設されたことを限定するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正のうちのこれらの補正事項は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
よって、さらに本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて検討する。

(2)刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平10-15052号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
a)「【請求項1】空気搬送装置を用い、空気を搬送し、対象の空気にマイナスイオン、遠赤外線作用の還元力、分解力の相乗効果を加えた空気清浄化装置」(【特許請求の範囲】)
b)「【発明の属する技術分野】車内、庫内などの狭い空間の空気などを電場、磁場の層に導き、発生する電子イオン(マイナスイオン)をその空気内に取り込み、遠赤外線の作用も同時に持たせる。これにより、酸化された空気は還元され、還元された空気は触れる物の酸化作用を防ぎ、混在している排気ガス、タバコ臭、各種の有機臭などを分解し、脱臭し、無害化する。このことは、分解能、還元能による脱臭、浄化効果であり、さらに活性化された空気が他の空気にもその作用を伝播していくため、装置そのもののコンパクト化を可能とし、稼動に要するエネルギーも少なく、自動車、電車、航空機などの車内およびトイレなどの空気浄化、冷蔵庫、倉庫などの脱臭と鮮度保持、空調設備に加えることによる大規模施設の空気浄化などに大きな効果が期待できる。」(段落【0001】)
c)「【発明が解決しようとする課題】コンパクトで高効率、経済的な空気清浄化装置による排気ガス、悪臭の解消と酸化した空気の還元化による鮮度保持、マイナスイオンによる健康生活の回復を図る。」(段落【0003】)
d)「【課題を解決するための手段】上記課題を達成するため、浄化対象空気をマイナスイオン化し、遠赤外線の分解能を付与し、活性化した活性エアーをエアーポンプ、送風できるモーターなどで循環させ浄化する。そのため活性エアー発生装置は、送風する駆動部と、電場を生じる強力な磁石層(図1-4)と、電位をもつ帯電層(図1-7)、遠赤外線放射物質層(図1-2,図1-7-4)により構成される。永久磁石が放射する磁力線を浄化対象空気が切断するように通過することによって、電場が生じ、空気を構成する分子は、電子を受け取る。さらに帯電層から放出される電子を受け、マイナスイオン化し、蘇生化される。また金属イオンを含んだ不織布は4?14ミクロンの遠赤外線を放射し、通過する空気に作用し、その分子に分子内振動を引き起こし、空気中の汚染物質を分解する。また活性化した空気は他の空気に触れることによりその還元力と分解力を伝播してゆく。
【発明実施の形態】車内空気、および庫内(冷蔵庫等)などの浄化対象とする空気(図1-1)は図1の空気搬送装置(図1-3)に吸い込まれる際、遠赤外線作用を持った不織布等で構成されるエアークリーナ(図1-2)を通過し、粗い塵埃を排除すると同時に、通過する空気に遠赤外線の作用が加わる。この空気が空気搬送装置により二つの磁石の間に送られ強い磁場の作用を受けマイナスイオン化し、さらに高い電位を持った帯電層(図1-7-1,図1-7-2,図1-7-3)と遠赤外線層(図1-7-4)により構成された活性化装置の間を通過する。このことにより、電場と磁場によるマイナスイオン化とともに遠赤外線の作用も加わり活性化(蘇生化)し、活性エアー(図1-10)として吐出する。この活性エアーは電子と遠赤外線の作用によりクーロンの働きと遠赤外線の分解力を持ち、空気中のアンモニアなどでは水素と窒素を分離し、リン、塩素などの有機化合物を分解することとなる。この両作用により空気中の有害物質が浄化され、無害化する。また電子を多量に送り出すことにより対象物の酸化作用を抑え、鮮度の保持にも役立つこととなる。また遠赤外線の作用としてアルファー波の発生を促し集中力の向上、および疲労感の緩和にも役立つ。
【実施例】本発明は狭い空間のみならず、大規模な空調設備に組み込むことにより、家全体、ビル、マンションなどの大規模な空気浄化、および食品保管倉庫の鮮度保持、図書室などのカビ発生防止にも応用できる。特にタクシー、自家用自動車のタバコ臭、その他の不快臭の脱臭、運転中の精神集中力の向上に効果があり、疲労感も解消する。冷蔵庫などの脱臭と鮮度保持にも顕著な効果を発揮する。」(段落【0004】ないし【0006】)
e)「【発明の効果】本発明は、以上説明したように構成されているので、
1.装置のコンパクト化
2.タバコ臭、有機臭、腐敗臭、などの不快臭の脱臭。
3.鮮度保持。
4.集中力の向上
5.疲労感の緩和
に顕著な効果を発揮するものと推察される。」(段落【0007】)
f)「【図1】本図は最も簡単なコンパクト型空気清浄化装置の断面図である。」(【図面の簡単な説明】)
g)「1 対象空気
2 フィルター(遠赤外線不織布)
3 空気搬送装置(エアーポンプまたはモーター等)
4 磁場層(永久磁石二枚)
5 変圧器(直流プラスのみに変換)
6 プラス電流
7 帯電層
7-1 絶縁ゴム
7-2 銅線
7-3 アルミ箔、
7-4 遠赤外線不織布
8 ハウジング
9 吐出口
10 活性エアー」(【符号の説明】)
h)上記摘記事項d、gおよび【図1】の記載によると、コンパクト型空気清浄化装置が、箱形状を有し、中間部に対象空気1吸込口を有すると共に、下部に活性エアー10吐出口を有するハウジング8を備えること、ハウジング8の内部に形成された空気管であって、一方の開口端部が対象空気1吸込口に連通するように配置されると共に、他方の開口端部が活性エアー10吐出口に連通するように配置された空気管を備えること、空気管の一方の開口端部に隣接して接続されて、空気管を通じて対象空気1を通過させる、対象空気1吸込口から吸い込まれた対象空気1を活性エアー10吐出口から吐出するエアーポンプ、送風できるモーターなどの空気搬送装置3を備えること、対象空気1が通過させられる空気管の両側に配設される二つの永久磁石4を備えること、が示されている。

上記記載事項及び図面の記載内容を総合勘案すると、刊行物には、次の発明が記載されている。
「箱形状を有し、中間部に対象空気1吸込口を有すると共に、下部に活性エアー10吐出口を有するハウジング8と、
ハウジング8の内部に形成された空気管であって、一方の開口端部が対象空気1吸込口に連通するように配置されると共に、他方の開口端部が活性エアー10吐出口に連通するように配置された空気管と、
空気管の一方の開口端部に隣接して接続されて、空気管内に対象空気1を通過させる、対象空気1吸込口から吸い込まれた対象空気1を活性エアー10吐出口から吐出するエアーポンプ、送風できるモーターなどの空気搬送装置3と、
対象空気1が通過させられる空気管の両側に配設される二つの永久磁石4と、
を備え、車内に組み込まれて車内空間の対象空気1を空気管内に搬送して、活性エアー10を循環させ、空気中の有害物質を浄化するコンパクト型空気清浄化装置。」

(3)対比
本件補正発明と刊行物に記載された発明とを対比する。
刊行物に記載された発明の「箱形状を有し、中間部に対象空気1吸込口を有すると共に、下部に活性エアー10吐出口を有するハウジング8」と本件補正発明の「中空の箱型形状を有し、下側に空気吸引口を有すると共に、上側に空気吐出口を有する筐体」とは、「中空の箱型形状を有し、空気吸引口を有すると共に、空気吐出口を有する筐体」である点で共通する。
そして、刊行物に記載された発明の「空気管」は、その構成および機能からみて、本件補正発明の「空気流通路」に相当し、以下、同様に、
「一方の開口端部が対象空気1吸込口に連通するように配置される」ことは、空気管の一方の開口端部が空気搬送装置3を介して対象空気1吸込口に連通して接続されていることから、「一方の開口端部が空気吸引口に接続され」ることに、
「他方の開口端部が活性エアー10吐出口に連通するように配置され」ることは「他方の開口端部が空気吐出口に接続され」ることに、
「対象空気1が通過させられる空気管の両側に配設される二つの永久磁石4」は「空気流通路の周壁部に配設される磁極を備えた永久磁石」に、
「車内に組み込まれて車内空間の対象空気1を空気管内に搬送」することは「室内に配設されることによって室内空気を空気流通路に循環的に流通させるようにしたこと」に、
「コンパクト型空気清浄化装置」は「空気処理装置」に、
それぞれ、相当する。
また、刊行物に記載された発明の「空気管の一方の開口端部に隣接して接続されて、空気管内に対象空気1を通過させる、対象空気1吸込口から吸い込まれた対象空気1を活性エアー10吐出口から吐出するエアーポンプ、送風できるモーターなどの空気搬送装置3」と本件補正発明の「一方の開口端部に収容配置されて、該空気流通路を通じて空気を強制的に流通させて、空気吸引口から吸引した空気を空気吐出口から吐出させる送気手段」とは、前者の「空気搬送装置3」が、エアーポンプ、送風できるモーターなどにより強制的に空気管内に対象空気1を通過させるものであることから、両者は、「一方の開口端部近傍に配置されて、該空気流通路を通じて空気を強制的に流通させて、空気吸引口から吸引した空気を空気吐出口から吐出させる送気手段」である点で共通する。

したがって、上記両者の一致点および相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「中空の箱型形状を有し、空気吸引口を有すると共に、空気吐出口を有する筐体と、
前記筐体の内部に形成された空気流通路であって、一方の開口端部が前記空気吸引口に接続されると共に、他方の開口端部が前記空気吐出口に接続された前記空気流通路と、
前記一方の開口端部近傍に配置されて、該空気流通路を通じて空気を強制的に流通させて、前記空気吸引口から吸引した空気を前記空気吐出口から吐出させる送気手段と、
前記空気流通路の周壁部に配設される磁極を備えた永久磁石と、
備え、室内に配設されることによって室内空気を前記空気流通路に循環的に流通させるようにした空気処理装置。」

[相違点1]
空気吸引口、空気吐出口の筐体への設置位置が、本件補正発明では、空気吸引口を筐体の下側に設置し、空気吐出口を筐体の上側に設置するが、刊行物に記載された発明では、空気吸引口を筐体の中間部に設置し、空気吐出口を筐体の下部に設置する点。

[相違点2]
送気手段の配置について、本件補正発明では、空気流通路の一方の開口端部に収容配置されるのに対して、刊行物に記載された発明では、空気流通路の一方に隣接して接続されている点。

[相違点3]
本件補正発明は、空気流通路の内部であって、永久磁石の下流側に、通気性の支持部材によって支持される状態で、配設された炭材又は珪酸の少なくとも一方を備えるのに対して、刊行物に記載された発明は、当該発明特定事項を備えていない点。

(4)当審の判断
(4-1)相違点1および2について検討する。
中空の箱型形状を有する筐体の下側に空気吸引口を設置し、上側に空気吐出口を設置するとともに、送気手段を空気流通路の一方の開口端部に収容配置した室内空気を循環させるサーキュレーターは、本願の優先権主張の日前に周知の技術事項である(例えば、特開昭57-124642号公報や、実願昭56-10004号(実開昭57-124039号)のマイクロフィルム参照。以下、「周知の技術事項1」という。)。
そして、刊行物に記載された発明の空気清浄化装置は、活性エアー10を車内に循環させつつ、空気中の物質を浄化する装置であるから、刊行物に記載された発明に、同じく室内空気を循環させるサーキュレータについての、上記周知の技術事項1を適用して上記相違点1、2における本件補正発明が具備する発明特定事項に到達することは、当業者が容易になし得たものである。

(4-2)相違点3について検討する。
空気処理の技術分野において、空気流通路の内部に通気性の支持部材によって支持される状態で配設された、活性炭等の空気清浄化手段を備えることは、本願の優先権主張の日前に周知の技術事項である(例えば、特開2000-5565号公報段落【0101】ないし【0103】、【図23】や、特開2000-15045号の段落【0028】参照。以下、「周知の技術事項2」という。)。
そして、刊行物に記載された発明の空気清浄化装置に上記周知の技術事項2を適用するに際して、具体的な空気清浄化手段としてどのような物質を採用するのかは、当業者が適宜決定し得る事項である。
また、複数の空気清浄化手段の配置に際して、例えば、登録実用新案第3063524号公報に、イオン発生装置が内部に組み込まれたイオン発生ユニット4と活性炭を利用した空気清浄機ユニット3とを流れる空気の向きが冬季と夏季とで逆方向になることが記載されているように、イオン発生部と活性炭部とのどちらを上流側に設置するかについても、当業者が適宜決定し得るものである。
したがって、刊行物に記載された発明において、上記周知の技術事項2を適用するに際して、活性炭等の空気清浄化手段を永久磁石の下流側に設けることは、当業者が容易になし得たものである。

(4-3)小括
本件補正発明の奏する効果についてみても、刊行物に記載された発明および周知の技術事項から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。
したがって、本件補正発明は、刊行物に記載された発明および周知の技術事項に基いて当業者が容易に想到し得たものである。
ゆえに、本件補正発明は、刊行物に記載された発明および周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第5項の規定に違反する。

4.まとめ
上記2、3において述べたとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
(1)本願発明
平成20年1月15日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年8月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである(前記第2[理由]1における本件補正前の特許請求の範囲の請求項1を参照。)。

(2)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物、刊行物の記載事項、及び、刊行物に記載された発明は、前記「第2[理由]3(2)」に記載したとおりである。

(3)対比および判断
本願発明は、前記「第2[理由]」で検討した本件補正発明において、空気流通路について、「中空の箱型形状を有し、下側に空気吸引口を有すると共に、上側に空気吐出口を有する筐体と、前記筐体の内部に形成された空気流通路であって」との限定を省き、送気手段について、「一方の開口端部に収容配置され」との限定を省き、炭材又は珪酸の少なくとも一方の配設について、「通気性の支持部材によって支持される状態で」配設されたとの限定を省き、さらに、空気流通路について、「非磁性材で形成された」との限定を付加するものである。
そして、上記付加された発明特定事項である、周壁部に永久磁石を配置した空気流通路を非磁性材で形成することは、周壁部に永久磁石を配置した流体通路を通過する流体に磁力の効果を流体に有効に作用させるために、周壁を非磁性材料で形成することが、本願の優先権主張の日前に周知の技術事項である(特開平9-271782号公報の段落【0010】や、特開昭61-211619号公報参照。以下、「周知の技術事項3」という。)ことから、刊行物に記載された発明に上記周知の技術事項3を適用することは、当業者が容易になし得たものである。
そうすると、上記で検討した、空気流通路について「非磁性材で形成された」との限定を省いた点を除いて、本願発明に、他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2[理由]3(3)対比および(4)当審の判断」に記載したとおり、刊行物に記載された発明および周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、刊行物に記載された発明および周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物に記載された発明および周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-01 
結審通知日 2010-03-03 
審決日 2010-03-16 
出願番号 特願2001-271056(P2001-271056)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24F)
P 1 8・ 572- Z (F24F)
P 1 8・ 575- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武内 俊之  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 渋谷 知子
長崎 洋一
発明の名称 空気処理装置  
代理人 東野 博文  
代理人 東野 博文  

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