• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08B
管理番号 1216988
審判番号 不服2008-15078  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-16 
確定日 2010-05-18 
事件の表示 特願2003-566798「隠蔽検出機能を有するセンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月14日国際公開、WO03/67522、平成17年 6月 9日国内公表、特表2005-517250〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2003年1月31日(パリ条約による優先権主張2002年2月2日、英国)を国際出願日とする出願であって、平成20年3月13日付けで拒絶査定され、同年6月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年1月23日付け手続補正書により補正された明細書及び図面によれば、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。
「検出器素子(4a)の熱検出器アレイ(4)と、
非遮蔽状態における前記検出器アレイ(4)からの画像におけるエッジ領域のマップ(42)を記憶するためのメモリ(6)と、
前記検出器素子からの実画像を前記記憶されたマップと周期的に比較して、前記実画像が前記記憶されたマップと有意に異なる場合に遮蔽警報(10)を発生する処理手段(8)と、
を備えるセンサであって、
プロセッサが前記記憶されたマップと前記実画像とにおけるエッジ強度を比較するように適合されていることを特徴とするセンサ。」
(なお、本願の請求項1には、「前記プロセッサ」との記載があるが、これは「プロセッサ」の誤記であると解されるので、本願発明を上記のように認定した。)

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-348264号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は複合型検出器及びそれを備えた監視装置に関し、特に赤外線センサ及び画像センサによって監視を行う装置に関する。」

・「【0003】
【発明が解決しようとする課題】従って、赤外線センサの近傍に(特にセンサカバー上に)赤外線を遮断する特殊カバーを設ける画策行為がなされたり、あるいはセンサカバーに赤外線を遮断する部材を塗布する画策行為がなされたりすると、上記従来装置においては、適正な監視を行えないという問題がある。すなわち、赤外線受光に対する妨害工作によって、人体検出を正確に行えないという問題が生じる。」

・「【0006】また、本発明の他の目的は、画策が行われた場合にそれを判定できるようにすることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、監視領域からの赤外線を検出する赤外線センサと、前記監視領域を撮像する画像センサと、前記赤外線センサ及び前記画像センサを収容するセンサカバーと、を含み、前記センサカバー上における前記赤外線センサに対応する第1透光領域と前記センサカバー上における前記画像センサに対応する第2透光領域とが全体的又は部分的に重複することを特徴とする。
【0008】上記構成によれば、センサカバー上において第1透光領域と第2透光領域が少なくとも一部分重複しているので、センサカバーに対して施される赤外線遮蔽などの画策を、画像情報の変化として捉えることができる。つまり、2つの透光領域の重複によって、検出器を小型化できるとともに、赤外線の検出妨害工作などがあってもそれを検知可能である。」

・「【0017】上記構成によれば、各センサ共通の窓部材が設けられているので、例えば、その窓部材に赤外線検出の妨害工作が行われた場合、それを画像情報の変化として検出可能である。ここで、望ましくは、前記監視手段は、前記検出信号及び前記画像情報に基づいて画策判定を行う機能を有する。」

・「【0020】監視装置10は、この実施形態において、大別して、検出部13と監視部15とで構成される。この監視装置10は、例えば、天井の隅など配置されるものであり、防犯用として利用される。検出部13は、撮像部14及び焦電素子16によって構成される。それらは後述のように窓部材12を有するセンサカバー内に収容されている。また、必要に応じて、夜間照明用の光源が設けられる。
【0021】撮像部14は、CCDやCMOSなどの撮像素子及びレンズで構成される。例えば、撮像部14として可視光ではなく近赤外線を受光する素子を利用してもよい。赤外線センサとしては、焦電素子16が利用される。この焦電素子16は、人体が発する10μm近傍の波長を持つ赤外線を検出するものであり、人体の動きに応じてその出力電圧の値が変化する。この出力電圧の変化を検出することにより、監視領域内への侵入者を検知することができる。もちろん、他のタイプの赤外線受光素子を利用してもよい。それらの具体的な配置関係については後に図2などを用いて説明する。
【0022】撮像部14からの画像情報は制御部22に入力されている。また、焦電素子16からの受光信号は増幅部18で増幅され、その増幅後の受光信号がA/D変換器20でデジタル信号に変換され、その変換後の信号が制御部22に入力される。制御部22は例えばMPUで構成され、画像情報及び受光信号に基づいて、目的物体としての人体の有無及び画策の有無を判定する機能を有する。特に、本実施形態においては、制御部22が画像情報に基づいて画策判定を行う機能を有している。
【0023】記憶部24には、制御部22における演算において必要な情報が格納される。出力部26は通信回線などに接続され、制御部22における判定結果などを外部に出力する。なお、この監視装置10には商用電源から電力が供給され、あるいは、内蔵のバッテリを介して電力が供給される。」

・「【0034】図4に示す実施形態では、撮像部14の後方に焦電素子16が背中合わせに設置されている。また、ミラー40も撮像部14の後方に配置される。このような構成の場合、窓部材12から焦電素子16が遠ざかるので、撮像部14の視野領域(符号110A,110B参照)と焦電素子16の視野(符号112A,112B,112C,112D参照)とを全体として一致させるのが難しくなる場合があるが、少なくとも部分的な一致が行えれば、上記と同様の利点を得られる。例えば、撮像部14を焦電素子16に対する画策行為の検知にのみ用いるのであれば、このような構成を採用するのが望ましく、デッドスペースを有効利用し、あるいは装置全体の規模を小さくできる。」

・「【0037】次に、図1に示した制御部22の動作例について図6を用いて説明する。
【0038】監視装置10が動作を開始した後、S101で、画策行為を検知するために用いるカウンタAを0に初期化する。次に、S102において、制御部22は焦電素子16にて受光する赤外線が所定値以上変化したか否かを判断する。ここで、所定値以上の変化とは、人体が監視範囲に入った時に生じる程度の変化量に相当するものである。赤外線受光量の変化がしきい値以下である場合には、S104において、画像を取り込み、S105で入力画像に基づいて画策行為の可能性があるか否かを判定する。
【0039】ここで、入力画像を用いた画策可能性の判断基準(パラメータ)としては、入力画像のエッジ強度や輝度分布が利用可能である。撮像部14は、床面等の監視対象に焦点を合わせて設置されている為、窓部材12に赤外線を透過しない画策カバー等を取り付けられた場合には、入力画像上のエッジがぼけたり、あるいは画策カバー自体の色(通常単色が多い)に応じて輝度の分布が変化したりする。前者の場合、エッジの強度の変化に基づいて画策を判定可能であり、後者の場合、輝度分布上においていずれかの位置にピークが発生したことをもって画策行為を判定可能である。ちなみに、カバー内部に写真や絵等の模様があるカバーを取り付けられた場合にはピークとして検出困難であっても、焦点距離との関係からエッジがぼける。
【0040】よって、例えば監視装置10の動作開始時に正常状態の画像の平均エッジ強度を記憶しておき、これと現在の入力画像を比較することにより、画策行為がなされた画像であるか否かを容易に判断することができる。また、基準となる輝度分布からの変化を利用して画策判定を行ってもよい。更に、それらを組み合わせてもよい。
【0041】S105において、画策行為の可能性があると判定された場合、S106でカウンタAに1を加える。S107では、そのカウンタAの値が所定値(例えば10)を越えたかどうかを判断し、越えていない場合には処理がS102に戻る。一方、S107において、カウンタAの値が所定値を越えていると判断された場合、S108において、画策検出信号が外部に出力される。その後、S109において、カウンタAが0にリセットされる。このようにカウンタAの値を判定基準にするのは、ある程度定常的に異常状態が継続した場合に画策行為を判定するためであり、例えば瞬間的なノイズの影響や清掃などによる遮断による誤検知を防止するためである。
【0042】なお、画策検出信号を出力する前にランプやブザー等により監視員に通知し、監視員が視覚にて入力された画像を確認するようにすることも可能である。また、侵入異常時あるいは機器異常時の画像を記録しておくことも可能である。
【0043】なお、S102において、赤外線センサの出力値が所定のしきい値以上である場合には、S103で侵入異常信号が出力される。その後、S109が実行される。
【0044】上記の方法によれば、赤外線検知に対する妨害工作を画像情報を利用して判定可能であり、防犯性を高められる。上記の処理例は一例であって、上記以外にも各種の人物判定法、画策判定法を適用することが可能である。例えば、画像情報だけで人物の存在が確実視された場合、赤外線受光信号の値にかかわらず、人体判定を行ってもよい。また、画像情報及び赤外線受光信号の値の両方について、中間的な判断が行われる場合にはそれらを総合考慮して人体判定、画策判定を行うようにしてもよい。
【0045】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、赤外線センサと画像センサとが利用される複合型検出器において、信頼性の高い目的物体の検出を行える。また、本発明によれば、画策に対処することが可能となる。」

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「近赤外線を受光する素子を利用した撮像部と、
撮像部の正常状態の画像における正常状態の画像の平均エッジ強度を記憶する手段と、
前記撮像部からの現在の入力画像を前記正常状態の画像と比較して、前記現在の入力画像が赤外線センサに赤外線を遮断する特殊カバーを設ける画策行為がなされた画像であるか否かを判断してランプやブザーにより監視員に通知する制御部と、
を備えるセンサであって、
前記制御部が前記正常状態の画像と前記現在の入力画像とにおけるエッジ強度を比較することにより、画策行為がなされた画像であるか否かを容易に判断することができるセンサ。」

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)後者の「近赤外線を受光する素子を利用した撮像部」と
前者の「検出器素子(4a)の熱検出器アレイ(4)」とは、
「熱検出器」なる概念で共通する。

(イ)後者の「正常状態の画像」は前者の「記憶されたマップ」、及び、「非遮蔽状態における検出器アレイ(4)からの画像」に相当する。
後者の撮像部からの現在の入力画像」が前者の「検出器素子からの実画像」に相当し、以下同様に、
「正常状態の画像」が「記憶されたマップ」に、
「前記撮像部からの現在の入力画像」が「実画像」に、それぞれ相当し、
後者の「撮像部からの現在の入力画像を正常状態の画像と比較して、前記現在の入力画像が赤外線センサに赤外線を遮断する特殊カバーを設ける画策行為がなされた画像であるか否かを判断してランプやブザーにより監視員に通知する制御部」と
前者の「検出器素子からの実画像を記憶されたマップと周期的に比較して、実画像が記憶されたマップと有意に異なる場合に遮蔽警報(10)を発生する処理手段(8)」とは、
「検出器素子からの実画像を記憶されたマップと比較して、実画像が記憶されたマップと有意に異なる場合に遮蔽警報を発生する処理手段」なる概念で共通する。

(ウ)後者の「制御部」が前者の「プロセッサ」に相当し、同様に、
「エッジ強度を比較することにより、画策行為がなされた画像であるか否かを容易に判断することができる」態様が「エッジ強度を比較するように適合されている」態様に相当する。

したがって、両者は、
「熱検出器と、
非遮蔽状態における前記検出器アレイからの画像におけるエッジ領域のマップを記憶するためのメモリと、
前記検出器素子からの実画像を前記記憶されたマップと比較して、前記実画像が前記記憶されたマップと有意に異なる場合に遮蔽警報を発生する処理手段と、
を備えるセンサであって、
前記プロセッサが前記記憶されたマップと前記実画像とにおけるエッジ強度を比較するように適合されているセンサ。」
の点で一致し、以下の各点で相違している。

[相違点1]
「熱検出器」に関し、本願発明では「検出器素子の熱検出器アレイ」であるのに対し、引用発明では「近赤外線を受光する素子を利用した撮像部」である点。

[相違点2]
比較に関し、本願発明では「周期的」に行うことを特定しているのに対し、引用発明では係る特定はなされていない点。

5.判断
[相違点1]について
原審の査定の理由に「セキュリティ及び安全用途において使用されるセンサとして、熱検出アレイ(赤外線画像センサ)を使用することは例示するまでもなく周知である」と記載されているように、セキュリティ及び安全のために、検出器素子の熱検出器アレイを使用することは周知慣用技術にすぎない(例えば、特開平4-355331号公報の【0002】に【従来の技術】として「最近、赤外センサは製品の熱管理工程、夜間監視、防災、防犯等で利用されるようになってきた。これらのセンサは、1点のみを測定するポイント型から、1次元分布を一度に測定できる1次元アレイ型、さらに2次元アレイ型と発展してきた。」と記載されているので参照されたい。)。
そうすると、セキュリティ及び安全という一般的な課題を解決するために、引用発明に上記周知慣用技術の熱検出器アレイを採用することにより相違点1に係る本願発明の構成とすることも任意であり、また、そのために格別の技術的困難性が伴うものとも認められない。

[相違点2]について
セキュリティ及び安全用途において、周期的に監視及び警報を行うセンサは通常使用されている程度の周知の技術にすぎない(必要があれば、原審の拒絶の理由に引用された特開2001-186511号公報の【0003】に「電力,ガス,または、水道等の公共施設の監視システムでは,屋内だけでなく,屋外にも複数の監視カメラが設置されている。これによって,監視員は監視センタのモニタテレビで現場の状況をリアルタイムで把握できる。しかし,複数の監視カメラの映像を長時間に渡って見続ける作業は,疲労によって「見落とし」などを引き起こす。そこで、必要な時のみモニタテレビで確認できる監視システムとして,侵入物体や異常を検出した場合のみ警報音を鳴らして通知する方法が一般的に採用されている。」とあるので参照されたい。)。
そうすると、引用発明に上記周知の技術である周期的に監視及び警報を行うセンサを採用することにより相違点2に係る本願発明の構成とすることも任意であり、また、そのために格別の技術的困難性が伴うものとも認められない。

そして、本願発明の全体構成により奏される作用効果も引用発明、上記周知慣用技術、及び、上記周知の技術から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用発明、上記周知慣用技術、及び、上記周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-15 
結審通知日 2009-12-21 
審決日 2010-01-05 
出願番号 特願2003-566798(P2003-566798)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 恭司  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 大河原 裕
片岡 弘之
発明の名称 隠蔽検出機能を有するセンサ  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 西島 孝喜  
代理人 大塚 文昭  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ