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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1217170
審判番号 不服2008-16159  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-26 
確定日 2010-05-20 
事件の表示 平成10年特許願第196794号「印刷装置および印刷方法並びに記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月11日出願公開、特開2000- 6445〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成10年6月26日の出願であって、平成17年8月16日及び平成18年11月2日付けで手続補正がなされ、平成20年5月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月26日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年7月24日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成20年7月24日付け手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成20年7月24日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)平成20年7月24日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするもので、その請求項1について、
本件補正前に、
「印刷媒体上に複数のドットを形成することにより画像を印刷し得る印刷装置であって、
少なくとも一の色相について、互いにインクの濃度が異なるドットおよび互いにドット径が異なるドットを含み単位面積当たりの濃度を表す濃度評価値が段階的に異なる3種類以上のドットを形成可能なヘッドと、
画像を構成する各画素ごとに、階調データを入力する入力手段と、
前記階調データに応じて前記濃度の異なる各ドットにより実現すべき記録濃度を、前記濃度評価値が高い側のドットよりも濃度評価値が2段階以上低いドットの記録濃度が、前記階調値データの最大値と最小値を除いた領域において特定の条件下で0とならないように、決定する記録濃度決定手段と、
前記階調データに応じて決定された前記記録濃度が特定の条件下で0とならない複数種類のドットのうち濃度評価値が最も低いものを除くドットについて、ドットの形成の有無を判定する第1のドット形成判定手段と、
前記濃度評価値が最も低いドットについて、他の種類のドットの形成の有無により実現すべき記録濃度との間に生じた誤差の少なくとも一部を解消するようにドットの形成の有無を判定する第2のドット形成判定手段と、
前記判定結果に基づいて、前記ヘッドを駆動して、前記多種類のドットをそれぞれ形成するドット形成手段とを備える印刷装置。」とあったものを、

「印刷媒体上に複数のドットを形成することにより画像を印刷し得る印刷装置であって、
少なくとも一の色相について、互いにインクの濃度が異なるドットおよび互いにドット径が異なるドットを含み単位面積当たりの濃度を表す濃度評価値が段階的に異なる3種類以上のドットを形成可能なヘッドと、
画像を構成する各画素ごとに、階調データを入力する入力手段と、
前記階調データの階調の領域であって前記濃度評価値が最も高いドットが記録される領域内においても、前記濃度評価値が2段階以上低いドットの記録濃度が0とならない領域が存在する、という特定の条件下で、前記階調データの最大値と最小値を除いた領域において、前記濃度評価値が2段階以上低いドットの記録濃度が0とならないように、前記階調データに応じて前記濃度の異なる各ドットおよび前記ドット径が異なる各ドットにより実現すべき記録濃度を決定する記録濃度決定手段と、
前記階調データに応じて決定された前記記録濃度が特定の条件下で0とならない複数種類のドットのうち濃度評価値が最も低いものを除くドットについて、ドットの形成の有無を判定する第1のドット形成判定手段と、
前記濃度評価値が最も低いドットについて、他の種類のドットの形成の有無により実現すべき記録濃度との間に生じた誤差の少なくとも一部を解消するようにドットの形成の有無を判定する第2のドット形成判定手段と、
前記判定結果に基づいて、前記ヘッドを駆動して、前記多種類のドットをそれぞれ形成するドット形成手段とを備える印刷装置。」と補正する内容を含むものである。(下線は審決で付した。以下同じ。)

(2)本件補正後の請求項1に係る発明についての上記(1)の補正内容は、次のアないしエからなる。
ア 本件補正前の請求項1の明らかな誤記「階調値データ」を「階調データ」に訂正する。
イ 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「特定の条件下で」について、「前記階調データの階調の領域であって前記濃度評価値が最も高いドットが記録される領域内においても、前記濃度評価値が2段階以上低いドットの記録濃度が0とならない領域が存在する、という特定の条件下で、」として「前記階調データの階調の領域であって前記濃度評価値が最も高いドットが記録される領域内においても、前記濃度評価値が2段階以上低いドットの記録濃度が0とならない領域が存在する、という」との限定を付加するとともに、最後に「、」を付加し、かつ、その記載箇所を段落の前半に移動する。
ウ 本件補正前の請求項1の「前記濃度評価値が高い側のドットよりも濃度評価値が2段階以上低いドットの記録濃度が、」の記載を、上記イの限定により「前記階調データの階調の領域であって前記濃度評価値が最も高いドットが記録される領域内においても、前記濃度評価値が2段階以上低いドットの記録濃度」との記載が追加されたのに伴い、「濃度評価値が高い側のドット」との記載の重複を避け、「前記濃度評価値が2段階以上低いドットの記録濃度が」との記載にして、「低い」基準を示す「濃度評価値が高い側のドットよりも」との明記を省略するとともに、その記載箇所を「0とならないように、」の直前に移動し、最初に「、」を付加し、かつ最後の「、」を削除する。
エ 本件補正前の請求項1の「前記階調データに応じて前記濃度の異なる各ドットにより実現すべき記録濃度を、」の記載を、「前記階調データに応じて前記濃度の異なる各ドットおよび前記ドット径が異なる各ドットにより実現すべき記録濃度を」との記載にして、記録濃度の実現が、濃度の異なる各ドットのみでなく「前記ドット径が異なる各ドット」によってもなされることを明記するとともに、上記イの限定に伴い、その記載箇所を「0とならないように、」の直後に移動し、最後の「、」を削除する。

2 補正の目的
(1)上記1(2)のアの補正内容は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第3号の「誤記の訂正」を目的とするものである。

(2)一方、上記1(2)のウ及びエの補正内容は、上記1(2)のイの限定に伴うものであり、上記1(2)のイの補正内容は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
したがって、上記1(2)のイないしエの補正内容は、全体として、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3 刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である欧州特許出願公開第0817464号明細書(以下「引用例」という。)」には、次の事項が図とともに記載されている。(日本語への翻訳は、引用例に係る欧州特許出願97304670号における優先権主張の基礎出願である特願平8-188233号及び特願平8-297608号を国内優先権主張の基礎出願とする特願平9-187511号の公開公報:特開平10-175318号公報の記載に基づいて行った。また、同公開公報の参照箇所を【 】で示して付加した。)
(1)「1. A printing system having a head, from which at least two inks of different densities are dischargeable, and recording a multi-tone image by a distribution of dots by said at least two inks of different densities, said printing system comprising:
input means for inputting tone signals of said original image to be printed;
definition means for defining a recording characteristic that starts the formation of dots by a higher-density ink in a range of said tone signals lower than a specific tone signal which gives a maximum recording density of dots by a lower-density ink;
specifying means for specifying the existence and non-existence of dots by said at least two inks of different densities according to said tone signals, based on said recording characteristic; and
regulating means for regulating discharge of each ink from said head, so as to realize a tone expression according to said existence and non-existence of dots by said at least two inks of different densities. 」(12頁左欄30?53行)
(日本語訳)
「【請求項1】 濃度の異なる濃淡2種類以上のインクをそれぞれ吐出可能なヘッドを備え、該濃淡2種類以上のインクのドットの分布により多階調の画像を記録可能な印刷装置であって、
印刷すべき画像の階調信号を入力する入力手段と、
低濃度のインクによるドットの記録密度が最大値になる階調信号よりも低い階調信号で、高濃度のインクによるドットが出現する特性に基づいて、前記入力した階調信号から、前記濃淡2種類以上のインクの各ドットの記録密度を求め、前記ヘッドからのインクの吐出を制御して、該濃淡2種類以上のインクのドットの有無により階調表現を行なうドット生成手段とを備えた濃淡インクを用いた印刷装置。」

(2)「The present invention relates to a printing technique utilizing inks of different densities, that is, high-density ink and low-density ink. More particularly the present invention pertains to a printing system for regulating a distribution of dots formed by at least two inks of different densities based on tone signals representing an image, so as to print a multi-tone image, a cartridge used for such a printing system, and a method of printing images.
Color printers, in which a plurality of color inks are discharged from a head, are widely used as an output device of a computer that records a multi-color, multi-tone image processed by the computer. A multi-color image is, for example, printed with three color inks, cyan, magenta, and yellow (CMY). In such a color printer, the size of dots formed on a sheet of paper by a discharge of ink is fixed, and the tone of an image to be printed is expressed by the density of dots (that is, the recording density of dots per unit area). While the density of dots formable per predetermined length has been increasing year after year, the resolution is limited to only 300 through 720 dpi in printers. The resolution of printers is significantly lower than the resolution of silver photography, which has reached several thousand dpi.
In a printer that expresses an image by the existence or non-existence of dots (the on/off state of dots), dots are sparsely formed in an area of low image density, that is, in an area of low density of dots to be printed. This increases the degree of granularity and makes the dots conspicuous. A printing system and a method utilizing inks of different densities have been proposed to improve the printing quality. The proposed technique utilizes a high-density ink and a low-density ink for a certain color and regulates discharge of these inks, thereby realizing print with an excellent tone expression. By way of example, a method of and an apparatus for recording a multi-tone image are disclosed in JAPANESE PATENT LAYING-OPEN GAZETTE No. 61-108254.The disclosed technique provides a head for forming deep dots and light dots for a certain color and regulates the number and overlap of deep dots and light dots formed in a predetermined dot matrix according to input density information of an image, so as to record a multi-tone image. 」(2頁左欄3?45行)
(日本語訳)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、濃淡インクを用いた印刷の技術に関し、詳しくは画像を表わす階調信号に基づいて濃淡2種類以上のインクの各ドットの分布を制御して多階調の画像を印刷する印刷装置,これに用いるカートリッジ,画像記録方法ならびにこの方法を実現するコンピュータプログラム製品に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、コンピュータの出力装置として、数色のインクをヘッドから吐出するタイプのカラープリンタが広く普及し、コンピュータ等が処理した画像を多色多階調で印刷するのに広く用いられている。シアン、マゼンタ、イエロー(CMY)の三色のインクにより多色の画像を印刷する場合、こうしたプリンタでは、一度に吐出するインクにより用紙上に形成されるドットの大きさは一定であり、印刷される画像の階調は、ドットの密度(単位面積当たりの記録密度)により表現される。所定長さ当たりに形成できるドットの密度は、年々高まっているが、プリンタの場合には、300dpiないし720dpi程度に留まっており、銀塩写真の表現力との間では未だ隔たりは大きい。銀円フィルムにおける解像度は、数千dpiと言われている。
【0003】ドットがあるかないか(ドットのオン・オフとも呼ぶ)により画像を表現するプリンタでは、画像濃度の低い領域、即ち印刷されるドット密度の低い領域では、ドットがまばらに形成され、いわゆる粒状化が起きることから、ドットが目に付いてしまう。そこで、印刷品位の更なる向上を目的とし、濃淡インクを用いた印刷装置および印刷方法が提案されている。これは、同一色について濃度の高いインクと低いインクを用意し、両インクの吐出を制御することにより、階調表現に優れた印刷を実現しようとするものである。例えば、特開昭61-108254号公報には、同一色について濃淡2種類のドットを形成するヘッドを備え、入力された画像の濃度情報に応じて、所定のドットマトリックス内に形成する濃淡ドットの数およびその重なりを制御することで、多階調の画像を記録する記録方法およびその装置が開示されている。」

(3)「The proposed printing system utilizing inks of different densities, however, does not give any specific idea on the allocation of high-density ink and low-density ink to the input tone signals of an original image. Inks of different densities are simply allocated in the order of densities to the input tone signals of the image (for example, Fig. 9 in JAPANESE PATENT LAYING-OPEN GAZETTE No. 2-215541).
One object of the present invention is thus to enable a high-density ink and a low-density ink to be adequately allocated to input tone signals of an original image in a printing system that allows discharge of inks of different densities for a certain color, thereby improving the quality of a printed image.
Another object of the present invention is to improve a tone expression, especially in a low-density area included in an original image or at a joint between a low-density area and a high-density area.
Still another object of the present invention is to provide a cartridge suitable for such a printing system.
At least part of the above and the other related objects is realized by a first printing system of the present invention. The printing system comprises:
input means for inputting tone signals of the original image to be printed;
definition means for defining a recording characteristic that starts formation of dots by a higher-density ink in a range of the tone signals lower than a specific tone signal which gives a maximum recording density of dots by a lower-density ink;
specifying means for specifying the existence and non-existence of dots by the two inks of different densities according to the tone signals, based on the recording characteristic; and
regulating means for regulating discharge of each ink from the head, so as to realize a tone expression according to the existence and non-existence of dots by the two inks of different densities. 」(2頁左欄46行?同頁右欄26行)

(日本語訳)
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の濃淡インクを用いた印刷装置では、濃度の高いインクと低いインクとを、元の画像の階調信号に対してどのように対応させるかという点については、特に配慮されておらず、画像の階調信号に対して単純に濃度の低いインクから順に割り当てているに過ぎなかった(例えば、特開平2-215541号公報、第9図)。
【0005】本発明の一つの目的は、同一色について濃淡2種類以上のインクを吐出可能な印刷装置において、濃度の高いインクと低いインクとを、元の画像の階調信号に対して適切に対応させ、記録される画像の品位を向上することを目的とする。特に、原画像における低濃度領域の表現あるいは低濃度領域から高濃度領域に移行する領域での表現を、改善することを目的の一つとする。更に、本発明はこうした印刷装置に適したカートリッジを提案することを、他の目的の一つとする。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】かかる目的の少なくとも一つを達成するため、本願発明の第1の印刷装置では、入力手段により印刷しようとする画像の階調信号を入力し、この階調信号に基づいて、ドット生成手段が、濃淡2種類以上のインクのドットの記録密度を求める。かかるドットの記録密度を求める際、ドット生成手段は、低濃度のインクによるドットの記録密度が最大値になる階調信号よりも低い階調信号で、高濃度のインクによるドットが出現する特性に基づいて、処理を行なう。この結果、低い濃度の側のインクのドットの記録密度が最大値となる以前から濃度が高い側のインクのドットが混在し始め、よりスムースな階調表現が実現される。」

(4)「In the color ink cartridge, two inks having an identical hue but different densities are arranged adjacent to each other. In accordance with a concrete structure, cyan ink, ink having a lower dye density than the cyan ink, magenta ink, ink having a lower dye density than the magenta ink, and yellow ink are arranged in this sequence in the color ink cartridge. 」(3頁右欄37?43行)
(日本語訳)
「【0017】こうしたインクカートリッジでは、色相を同じくし濃度の異なる濃淡2種以上のインクを、互いに隣接する位置に配設することができ、具体的には、濃度の異なる濃淡2種以上のインクが、一端から順に、シアンインク、該シアンインクより染料濃度の低いインク、マゼンタインク、該マゼンタインクより染料濃度の低いインク、イエロインクの順に配設することが可能である。」

(5)「In the printer 20 of the embodiment having the hardware structure discussed above, while the sheet feed motor 22 rotates the platen 26 and the other rollers to feed the sheet of paper P, the carriage 30 is driven and reciprocated by the carriage motor 24 and the piezoelectric elements PE on the respective color heads 61 through 66 of the print head 28 are driven simultaneously. The printer 20 accordingly discharges the respective color inks and transfers multi-color images onto the sheet of paper P. Referring to Fig. 9, the printer 20 prints multi-color images based on signals output from an image production apparatus, such as the computer 90, via the connector 56. In this embodiment, an applications program 95 working in the computer 90 processes images and displays the processed images on a CRT display 93 via a video driver 91.When the applications program 95 outputs a printing instruction, a printer driver 96 in the computer 90 receives image information from the applications program 95 and the printer 20 converts the image information to printable signals. In the example of Fig. 9, the printer driver 96 includes a rasterizer 97 for converting the image information processed by the applications program 95 to dot-based color information, a color correction module 98 for making the image information that has been converted to the dot-based color information (tone data) undergo color correction according to the colorimetric characteristics of an image output apparatus, such as the printer 20, and a halftone module 99 for generating halftone image information, which expresses densities in a specified area by the existence or non-existence of ink in each dot unit, from the color-corrected image information.Operations of these modules are known to the skilled in the art and are thus not specifically described here in principle. The contents of the halftone module 99 may, however, be described according to the requirements. 」(6頁左欄50行?同頁右欄27行)
(日本語訳)
「【0034】以上説明したハードウェア構成を有する本実施例のプリンタ20は、紙送りモータ22によりプラテン26その他のローラを回転して用紙Pを搬送しつつ、キャリッジ30をキャリッジモータ24により往復動させ、同時に印字ヘッド28の各色ヘッド61ないし66のピエゾ素子PEを駆動して、各色インクの吐出を行ない、用紙P上に多色の画像を形成する。なお、プリンタ20は、図9に示すように、コンピュータ90などの画像形成装置からコネクタ56を介して受け取った信号に基づいて、多色の画像を形成する。この例では、コンピュータ90内部で動作しているアプリケーションプログラムは、画像の処理を行ないつつビデオドライバ91を介してCRTディスプレイ93に画像を表示している。このアプリケーションプログラム95が、印字命令を発行すると、コンピュータ90のプリンタドライバ96が、画像情報をアプリケーションプログラムから受け取り、これをプリンタ20が印字可能な信号に変換している。図9に示した例では、プリンタドライバ96の内部には、アプリケーションプログラム95が扱っている画像情報をドット単位の色情報に変換するラスタライザ97、ドット単位の色情報に変換された画像情報(階調データ)に対して画像出力装置(ここではプリンタ20)の発色の特性に応じた色補正を行なう色補正モジュール98、色補正された後の画像情報からドット単位でのインクの有無によりある面積での濃度を表現するいわゆるハーフトーンの画像情報を生成するハーフトーンモジュール99が備えられている。これらの各モジュールの動作は、周知のものなので、説明は原則として省略し、ハーフトーンモジュール99の内容については、必要に応じて説明する。」

(6)「As a printing process starts, pixels are successively scanned from the upper left corner of one image set as the origin. The halftone module 99 receives color-corrected tone data DS (8 bits respectively for C, M, Y, and BK) of one pixel in the order along the scanning direction of the carriage 30 from the color correction module 98 at step S100. 」(7頁左欄33?39行)
(日本語訳)
「【0039】図示するように、印刷の処理が開始されると、一つの画像の左上隅を原点として各画素を順にスキャンし、まず色補正モジュール98から、キャリッジ30のスキャン方向に沿った順に、一つの画素の色補正済みの階調データDS(CMYK各8ビット)を入力する(ステップS100)。」

(7)「The program then proceeds to step S120 to determine the on/off state of deep dots, based on the input tone data DS. The process of determining the on/off state of deep dots follows a routine of determining the formation of deep dots shown in the flowchart of Fig. 13. When the program enters the routine of Fig. 13, deep level data Dth is read from a table shown in Fig. 14, based on the input tone data DS at step S122. Fig. 14 is a table showing the recording ratios of light ink and deep ink plotted against the tone data of the original image. The tone data DS take the values of 0 to 255 for each color (8 bit-data for each color), and the magnitude of the tone data is accordingly expressed as 16/256 in the following description.The table of Fig. 14 shows the mean ratio of deep ink to light ink in a resulting print and gives mean recording ratios of deep ink and light ink to be realized for a specific piece of tone data DS. This does not unequivocally determine the on/off state of dots by deep ink or light ink in the respective pixels.
At step S122, deep level data Dth (right ordinate in Fig. 14) corresponding to a predetermined recording ratio of deep ink is read from the table of Fig. 14, based on the input tone data DS. For example, in the case that the input tone data of cyan represents a solid area of 50/256, the recording ratio of the deep cyan ink C1 is equal to 0%, so that the value of deep level data Dth is equal to zero. In the case that the input tone data represents a solid area of 95/256, the recording ratio of the deep cyan ink C1 is equal to 7%, so that the value of deep level data Dth is equal to 18. In the case that the input tone data represents a solid area of 191/256, the recording ratio of the deep cyan ink C1 is equal to 75%, so that the value of deep level data Dth is equal to 191.The corresponding recording ratios of the light cyan ink C2 are 36%, 58%, and 0%, respectively, and light level data Dtn are 92/255, 148/255, and 0/255. 」(7頁左欄53行?同頁右欄30行)
(日本語訳)
「【0041】次に、入力した階調データDSに基づき、濃ドットのオン・オフを決定する処理を行なう(ステップS120)。この濃ドットのオン・オフを決定する処理の詳細を、図13の濃ドット形成判断処理ルーチンにしたがって説明する。この処理ルーチンでは、まず、階調データDSに基づいて、図14に示したテーブルを参照して、濃レベルデータDthを生成する処理を行なう(ステップS122)。図14は、元の画像の階調データに対して、淡インクと濃インクの記録率をどの程度にするかを設定するテーブルを示す。階調データは、各色について0?255までの値をとるものしているから(各色8ビット)、以下階調データの大きさを16/256等のように表現する。図14のテーブルは、得られる印刷物における濃インクと淡インクの平均的な割合を示すものであり、ある階調データDSが与えられたときに実現すべき濃インクと淡インクの平均的な記録率を与える。したがって、個々の画素の濃インクまたは淡インクによるドットのオン・オフを、一意に定めるものではない。
【0042】入力した階調データDSに基づいて、図14のテーブルを参照することにより、予め定めた濃インクの記録率に対応した濃レベルデータDthを得る(図14右側縦軸)。例えば、入力したシアンの階調データが50/256のベタの領域を印刷する場合には、濃インクであるシアンインクC1の記録率は0パーセントであり、濃レベルデータも値0となる。階調データが95/256のベタの領域を印刷する場合には、濃インクであるシアンインクC1の記録率は7パーセントであり、濃レベルデータDthは値18となる。更に、階調データが191/256のベタ領域を印刷する場合にはシアンインクC1の記録率は75パーセントであって、濃レベルデータは値191となる。なお、これらの場合の対応するライトシアンインクC2の記録率は36パーセント、58パーセント、0パーセントとなっており、淡レベルデータDtnは、それぞれ92/255,148/255,0/255となる。」

(8)「The procedure of this embodiment obtains the deep level data Dth according to the relationship shown in the table of Fig. 14 and carries out the following process to determine the on/off state of a deep ink dot. Referring back to the flowchart of Fig. 13, the deep level data Dth thus obtained is compared with a threshold value Drefl at step S124. The threshold value Drefl is a reference value for determining whether or not dots of deep ink should be formed in a target pixel. In this embodiment, a systematic dither method using a threshold matrix of discrete dither is applied to set the threshold value. The threshold matrix of discrete dither used here is, for example, a wide-range matrix of 64 x 64 in size (blue noise matrix). Different threshold values Drefl used for determining the on/off state of deep dots are accordingly set for the respective target pixels.Fig. 15 shows the principle of the systematic dither method. Although the matrix shown in Fig. 15 has the size of 4 x 4 as a matter of convenience of illustration, the matrix actually used has the size of 64 x 64. Threshold values (0 to 255) are specified to have no bias in appearance of threshold values in any areas included in the 64 x 64 matrix. The wide-range matrix effectively prevents occurrence of pseudo-contours. The discrete dither ensures high spatial frequencies of dots determined by the threshold matrix and makes dots sufficiently scattered in the specified area. A concrete example of the discrete dither is a Beyer's threshold matrix. Application of the discrete dither causes deep dots to be sufficiently scattered and realizes a non-biased distribution of deep dots and light dots, thereby improving the picture quality.Another technique, for example, a density pattern method or pixel distribution method, may be applied to determine the on/off state of deep dots.
In the case that the deep level data Dth is greater than the threshold value Drefl at step S124 in the flowchart of Fig. 13, the program determines the on state of deep dots in the pixel and calculates a resulting value RV at step S126. The resulting value RV corresponds to the density of the pixel (deep dot evaluation value). In the on state of deep dots, that is, when it is determined that dots of high-density ink are to be formed in the pixel, the value corresponding to the density of the pixel (for example, the value 255) is set as the resulting value RV. The resulting value RV may be a fixed value or set as a function of deep level data Dth.
In the case that the deep level data Dth is not greater than the threshold value Drefl at step S124, on the contrary, the program determines the off state of deep dots, that is, no formation of dots by high-density ink in the pixel, and sets the value '0' to the resulting value RV at step S128. Since the white background of the sheet of paper P remains in the place where no dots of high-density ink are formed, the resulting value RV is set equal to zero.
Referring back to the flowchart of Fig. 12, after determining the on/off state of deep dots and calculating the resulting value RV at step S120, the program proceeds to step S130 to calculate light dot data Dx used for determining the on/off state of light dots. At the subsequent step S135, corrected data DC is obtained by adding a diffusion error DELTA Du from the processed pixel to the light dot data Dx. The light dot data Dx is calculated at step S130 according to the following equation:
Dx = Dth.ZZ/255 + Dtn.z/255
wherein Dtn denotes light level data read from the table of Fig. 14, based on the tone data DS, and ZZ represents an evaluation value in the case of the formation of deep dots and is equal to 255 as mentioned above.The above equation is accordingly rewritten to:
Dx = Dth + Dtn.z/255
wherein z denotes an evaluation value in the case of the formation of light dots. The evaluation value in the case of the formation of light dots is smaller than the same in the case of the formation of deep dots and is set equal to 160 in this embodiment.
The corrected data DC is obtained by adding the diffusion error DELTA Du to the light dot data Dx, because error diffusion is carried out for light dots. In the printing process by error diffusion, a density error occurring for a processed pixel is distributed in advance to peripheral pixels around the processed pixel with predetermined weights. The processing of step S135 accordingly reads the corresponding error and causes the error to affect the target pixel to be printed next. Fig. 16 illustrates a process of distributing the error occurring for a processed pixel PP, in which the on/off state of light dots has been determined, into peripheral pixels with specified weights.The density error is distributed to several pixels after the processed pixel PP with the determined on/off state in the scanning direction of the carriage and in the feeding direction of the sheet of paper P with predetermined weights (1/4, 1/8, 1/16).
Referring back to the flowchart of Fig. 12, after the calculation of the corrected data DC, it is determined whether or not the pixel is in the on state of deep dots (that is, dots of the cyan ink C1 are formed in the pixel) at step S138. In case of no formation of deep dots, the program proceeds to step S140 to determine the on/off state of low-density dots, that is, dots by the light cyan ink C2 (hereinafter referred to as light dots). The process of determining the on/off state of light dots follows a routine for determining the formation of light dots shown in the flowchart of Fig. 17. The error diffusion method is applied to determine the on/off state of light dots (dots by the light cyan ink C2) in this embodiment.When the program enters the routine of Fig. 17, the corrected tone data DC according to the principle of error diffusion is compared with a threshold value Dref2 for light dots at step S144. The threshold value Dref2 is a reference value for determining whether or not dots of light ink should be formed in a target pixel and is fixed to the value 127 in this embodiment. The threshold value Dref2 may be a variable varying with the corrected data DC. By way of example, the threshold value Dref2 may be set as a function of corrected data DC, which has a minimum value and a maximum value in the vicinity of the minimum value and the maximum value of the corrected data DC, respectively.This effectively prevents delay of dot formation in the vicinity of the lower limit or upper limit of the tone or turbulence of dot formation (leaving a trail) observed in a certain range in the scanning direction in case of an abrupt change in tone in a specified area.
In the case that the corrected data DC is greater than the threshold value Dref2 at step S144, the program determines the on state of light dots and calculates a resulting value RV (light dot evaluation value) at step S146. The resulting value RV here has a reference value 122 and is corrected by the corrected data DC, although it may be a fixed value. In the case that the corrected data DC is not greater than the threshold value Dref2 at step S144, on the contrary, the program determines the off state of light dots and sets the value '0' to the resulting value RV at step S148.
Referring back to the flowchart of Fig. 12, after determining the on/off state of light dots and calculating the resulting value RV at step S140, the program proceeds to step S150 to calculate an error ERR. The error ERR is obtained by subtracting the resulting value RV from the corrected data DC. In the case that neither deep dots nor light dots are formed, the resulting value RV is equal to zero and the corrected data DC is set to the error ERR. In this case, no density to be realized in the target pixel is obtained, so that the density is specified as the error ERR. In the case that either deep dots or light dots are formed, on the other hand, the resulting value RV has a value corresponding to the dots, so that the difference between the corrected data DC and the resulting value RV is specified as the error ERR.
At the subsequent step S160, the program carries out an error diffusion process. The error ERR obtained at step S150 is distributed into peripheral pixels around the processed pixel with predetermined weights (see Fig. 16). After the error diffusion process, the program moves to a next pixel and repeats the processing of steps S100 through S160 for the next pixel.
Figs. 18a through 18h show examples of printing states of light dots and deep dots, with respect to the cyan ink C1 and the light cyan ink C2. In the range of low tone data (in the range of tone data = 0/256 to 63/256 in this example), dots of only the light cyan ink C2 are formed as shown in Figs. 18a and 18b. The proportion of light dots existing in a predetermined area increases with an increase in tone data. 」(8頁左欄12行?9頁右欄7行)
(日本語訳)
「【0045】本実施例では、図14に示したこの関係を用いて濃レベルデータDthを得て、濃インクのオン・オフを決定する以下の処理を行なっている。まず、こうして得られた濃レベルデータDthが閾値Dref1より大きいか否かの判断を行なう(図13、ステップS124)。この閾値Dref1は、着目した画素に濃インクによるドットを形成するか否かの判定値である。この例では、この閾値の設定に分散型ディザの閾値マトリックスを採用し、特に64×64程度の大域的マトリックス(ブルーノイズマトリックス)を利用し、組織的ディザ法を適用した。従って、濃ドットのオンオフを定める閾値Dref1は、着目する画素毎に異なった値となる。図15に、組織的ディザ法における閾値の考え方を示す。図15では、マトリックスの大きさは図示の都合上4×4としたが、実際には、64×64の大きさのマトリックスを用い、その内部のいずれの16×16の領域をとっても閾値(0?255)の出現に偏りがないように閾値を決めている。こうした大域的なマトリックスを用いると、疑似輪郭などの発生が抑制される。分散型ディザとは、その閾値マトリックスにより決定されるドットの空間周波数が高いものであり、ドットが領域内でバラバラに発生するタイプを言う。具体的には、Beyer型の閾値マトリックスなどが知られている。分散型のディザを採用すると、濃ドットの発生がバラバラに行なわれるので、濃淡ドットの分布が偏らず、画質が向上する。なお、濃ドットのオンオフを決定するには、その他の手法、例えば濃度パターン法や画素配分法などを採用しても差し支えない。
【0046】濃ドットデータDthが閾値Dref1より大きい場合には、その画素の濃ドットをオンにするものと判断し、更に結果値RVを演算する処理を行なう(図13、ステップS126)。結果値RVは、その画素の濃度に相当する値(濃ドット評価値)であり、濃ドットがオン、即ちその画素に濃度の高いインクによるドットを形成すると判断した場合には、その画素の濃度の対応した値(例えば値255)が設定される。この結果値RVは、固定値でも良いが、濃レベルデータDthの関数として設定しても良い。
【0047】他方、濃レベルデータDthが閾値Dref1以下の場合には、濃ドットをオフ、即ち形成しないと判断し、更に結果値RVに値0を代入する処理を行なう(ステップS128)。濃度の高いインクによるドットが形成されない箇所は、用紙の白地が残ることから、結果値RVを値0とするのである。
【0048】こうして濃ドットのオン・オフを決定し、結果値RVを演算する処理(図12ステップS120)を行なった後、次に、淡ドットのオン・オフを決定するための淡ドット用データDxを求める処理を行ない(ステップS130)、これに処理済みの画素からの拡散誤差△Duを加えて補正データDCを求める処理を行なう(ステップS135)。淡ドット用データDxは、次式により求める。
Dx=Dth・Z/255+Dtn・z/255
ここで、Dtnは、図14のグラフに基づいて階調データDSから求めた淡ドットデータである。また、Zは、濃ドットが形成された場合の評価値であり、ここでは上述した通り、値255である。したがって、上記式は、
Dx=Dth+Dtn・z/255
となる。また、zは、淡ドットが形成された場合の評価値である。淡ドットの場合には、ドットが形成された場合でも、濃ドットと比べれば、その評価は小さい。本実施例では、z=160とした。
【0049】また、これに拡散誤差△Duを加えて補正データDCを求めるのは、淡ドットについては、誤差拡散の処理を行なっているからである。誤差拡散で印刷を行なう場合、処理済みの画素について生じた濃淡の誤差を予めその画素の周りの画素に所定の重みを付けて予め配分しておく。そこで、該当する誤差分を読み出し、これを今から印刷しようとする画素に反映させるのである。淡ドットについてのオン・オフを決定した処理済みの画素PPに対して、周辺のどの画素にどの程度の重み付けで、この誤差を配分するかを、図16に例示した。オン・オフを決定した画素PPに対して、キャリッジ30の走査方向で数画素、および用紙Pの搬送方向後ろ側の隣接する数画素に対して、濃度誤差が所定の重み(1/4,1/8、1/16)を付けて配分される。
【0050】補正データDCを求めた後、濃ドットをオン(シアンインクC1によるドット形成)としたか否かを判断し(ステップS138)、濃ドットを形成していない場合には、濃度の低いドット、即ちライトシアンインクC2によるドット(以下、淡ドットと呼ぶ)のオン・オフを決定する処理を行なう(ステップS140)。淡ドットのオン・オフを決定する処理について、図17に示した淡ドット形成判断処理ルーチンに拠って説明する。淡ドットのオン・オフを決定する処理では、ライトシアンインクC2によるドットの形成は、この例では、誤差拡散法を適用し、誤差拡散の考え方で補正した階調データDCが淡ドット用の閾値Dref2より大きいか否かの判断を行なう(ステップS144)。この閾値Dref2は、着目した画素に濃度の低い淡インクによるドットを形成するか否かの判定値であって、本実施例では、固定値127とした。この閾値Dref2を、補正済みのデータDCに応じて可変される値として設定することも可能である。例えば、閾値Dref2を、判断の対象である補正データDCの関数とし、補正データDCの最小値付近および最大値付近で、それぞれ閾値Dref2を最小値および最大値になるようにすれば、階調の下限または上限近くのドット形成の遅延や、領域の階調が急変した場合の走査方向に一定の範囲で生じるドット形成の乱れ(いわゆる尾引き)などを抑制することができる。
【0051】補正データDCが閾値Dref2より大きければ淡ドットをオンすると判断し、結果値RV(淡ドット評価値)を演算する(ステップS146)。結果値RVは、ここでは、値122を基準値とし、補正データDCにより補正される値としたが、固定値とすることも可能である。他方、補正データDCが閾値Dref2以下と判断された場合には、淡ドットをオフにすると判断し、結果値RVに値0を算入する処理を行なう(ステップS148)。
【0052】こうして淡ドットのオン・オフと結果値RVの演算とを行なった後(図12、ステップS140)、次に誤差計算を行なう(ステップS150)。誤差計算は、補正データDCから結果値RVを減算することにより求める。濃淡いずれのドットも形成されなかった場合には結果値RVは値0に設定されているから、誤差ERRには、補正値DCが算入される。即ち、その画素において実現されるべき濃度が全く得られなかったので、その濃度が誤差として計算されるのである。他方、濃ドットもしくは淡ドットが形成された場合には、各ドットに対応した結果値RVが代入されているから、判断の元になったデータDCとの差分が、誤差ERRとなる。
【0053】次に、誤差拡散の処理を行なう(ステップS160)。ステップS150で得られた誤差に対して所定の重み(図16参照)を付け、処理を行なっている画素の周辺画素に、この誤差を拡散する。以上の処理の後、次の画素に移動して、上述したステップS100以下の処理を繰り返す。
【0054】こうして淡ドットと濃ドットによる記録が行なわれることになるが、この様子をシアンインクC1とライトシアンインクC2とについて模式的に示したのが、図18である。入力された階調データが低い領域(実施例では、階調データが0/256?63/256の領域)では、図18(a),(b)に示すように、ライトシアンインクC2によるドットだけが形成され、かつ階調データが高くなるにつれて、所定の領域内に存在する淡ドットの割合は増加して行く。」

(9)「The relationship between the magnitude of tone data and the recording ratios of dots by light ink and deep ink is not limited to the table of Fig. 14. By way of example, the value of tone data at which the formation of dots by deep ink starts may be set to be significantly lower than the value of the embodiment as shown by curves of solid line Jcl and Jc2 in the table of Fig. 19. Alternatively the value of tone data at which the recording ratio of dots by light ink reaches substantially zero may be set to be significantly larger than the value of the embodiment as shown by curves of broken line Bcl and Bc2 in the table of Fig. 19. The recording ratio of dots by light ink may decrease by an extremely large rate in the range of tone data larger than the specific value of tone data that gives the maximum recording ratio of dots by light ink as shown in Fig. 20. 」(10頁左欄8?23行)
(日本語訳)
「【0060】なお、階調データの大きさと淡インクおよび濃インクによる記録率との関係は、図14に限定されるものではなく、例えば図19に直線Jc1,Jc2として示したように、濃インクによるドットの形成が開始される階調データを上記実施例よりもかなり低い値とした特性や、同図に破線Bc1,Bc2として示したように、淡インクによる記録率がほぼ0まで低下する階調データの値を、上記実施例よりもかなり大きな値とした特性を採用することも可能である。また、図20に示したように、淡インクの記録率が最大値となる階調データ以上の領域における淡インクの記録率を極めて大きな割合で低減する特性とすることも可能である。」

(10)「The present invention is not restricted to the above embodiment, but there may be many modifications, changes, and alterations without departing from the scope or spirit of the main characteristics of the present invention. By way of example, three or more inks of the same color but different densities may be applied to the structure of the above embodiment. In this case, the ratio of dye densities of these inks may be specified like a geometric series (1:n:2xn:....) or as a relationship of like powers (1:n2:n4:....), wherein n = 2,3.... 」(10頁左欄39?48行)
(日本語訳)
「【0062】以上本発明の一実施例について説明したが、本発明はこの様な実施例になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、濃度の異なる三種類以上のインクを用いることも可能である。この場合は、インクの染料濃度の比を、等比級数的(1:n:2×n・・)としてもよいし、累乗的な関係(1:n2 :n4 ・・)としてもよい。なお、ここでn=2,3・・・である。」

(11)淡インクと濃インクとによる記録率と階調データとの関係の他の例を示すグラフであるFig.19(Fig. 19 is another table showing the relationship between tone data and recording ratios of light ink and deep ink; )の記載から、「淡インクBC2による記録率は、階調データの値が0のときほぼ0で、階調データの値が0から約95まで増加するに従って上昇し階調データの値が約95のとき約58%の最大値になり、階調データの値がさらに増加するに従って低下して階調データの値が225のときにほぼ0になる淡インクによる記録率と階調データとの関係と、濃インクBC1による記録率は、階調データの値が約63未満のときほぼ0で、階調データの値が約63から増加するに従って上昇して階調データの値が225のときにほぼ100%の最大値になる濃インクによる記録率と階調データとの関係とからなる特性」が見てとれる。

(12)上記(1)ないし(11)の記載から、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「色相を同じくし濃度の異なる濃淡2種以上のインクをそれぞれ吐出可能な印字ヘッドと、
印刷すべき画像の階調信号を入力する入力手段とを備え、
用紙を搬送しつつ、キャリッジを往復動させ、同時に印字ヘッドの各色ヘッドのピエゾ素子を駆動して、各色インクの吐出を行ない、ドットがあるかないかによる前記濃淡2種類以上のインクのドットの分布により用紙上に画像を表現する多階調の画像を記録可能な印刷装置において、
淡インクによる記録率は、階調データの値が0のときほぼ0で、階調データの値が0から約95まで増加するに従って上昇し階調データの値が約95のとき約58%の最大値になり、階調データの値がさらに増加するに従って低下して階調データの値が225のときにほぼ0になる淡インクによる記録率と階調データとの関係と、濃インクによる記録率は、階調データの値が約63未満のときほぼ0で、階調データの値が約63から増加するに従って上昇して階調データの値が225のときにほぼ100%の最大値になる濃インクによる記録率と階調データとの関係とからなる特性を示したテーブルと、
ドット生成手段とを更に備え、
前記ドット生成手段は、
前記入力手段により、一つの画像の左上隅を原点として各画素を順にスキャンし、
一つの画素の色補正済みの階調データDSを入力し、
まず、入力した階調データDSに基づき、前記テーブルを参照して、予め定めた濃インクの記録率(記録密度)に対応した濃レベルデータDthを得て、得られた濃レベルデータDthが、分散型ディザの閾値マトリックスを採用して設定した閾値Dref1より大きいか否かの判断を行ない、濃ドットデータDthが閾値Dref1より大きい場合には、その画素の濃ドットをオンにするものと判断し、更に結果値RVを演算する処理を行ない、他方、濃レベルデータDthが閾値Dref1以下の場合には、濃ドットをオフ、即ち形成しないと判断し、更に結果値RVに値0を代入する処理を行なって、濃ドットのオン・オフを決定する処理を行ない、
次に、上記テーブルに基づいて、前記階調データDSから、予め定めた淡インクの記録率(記録密度)に対応した淡ドットデータDtnを求め、該淡ドットデータDtn、濃ドットが形成された場合の評価値Z(例えばZ=255)、淡ドットが形成された場合の評価値z(例えばz=160)及び上記濃レベルデータDthから、次式:
Dx=Dth・Z/255+Dtn・z/255
により、淡ドットのオン・オフを決定するための淡ドット用データDxを求め、このDxに拡散誤差△Duを加えて補正データDCを求め、その後、濃ドットをオンとしたか否かを判断し、濃ドットを形成していない場合には、前記階調データDCが、着目した画素に濃度の低い淡インクによるドットを形成するか否かの判定値である淡ドット用の閾値Dref2より、大きいか否かの判断を行ない、補正データDCが閾値Dref2より大きければ淡ドットをオンすると判断し、結果値RV(淡ドット評価値)を演算し、他方、補正データDCが閾値Dref2以下と判断された場合には、淡ドットをオフにすると判断し、結果値RVに値0を算入する処理を行なうことにより、淡ドットのオン・オフを決定する処理を行ない、
次に補正データDCから結果値RVを減算することにより誤差計算を行ない、得られた誤差に対して所定の重みを付け、処理を行なっている画素の周辺画素にこの誤差を拡散する誤差拡散の処理を行ない、
次の画素に移動して、次の画素の色補正済みの階調データDSを入力し、上記各処理を繰り返して行って、上記画像の各画素について、濃ドットのオン・オフと淡ドットのオン・オフとを決定し、決定された各画素についての濃淡ドットのオン・オフにより、前記ヘッドからのインクの吐出を制御して、該濃淡2種類以上のインクのドットの有無により階調表現を行なうものであり、
前記濃度の異なるインクは三種類以上用いることも可能である濃淡インクを用いた印刷装置。」

4 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「用紙」、「ドット」、「各色インクの吐出を行ない、ドットがあるかないかによる該濃淡2種類以上のインクのドットの分布により用紙上に画像を表現する」、「画像」、「多階調の画像を記録可能な」、「印刷装置」、「『色相を同じくし濃度の異なる濃淡2種以上のインク』のドット」、「『各色インクの吐出を行ない、ドットがあるかないかによる前記濃淡2種類以上のインクのドットの分布により用紙上に画像を表現』する『濃淡2種以上のインクをそれぞれ吐出可能な印字ヘッド』の『各色ヘッド』」、「『一つの画像の左上隅を原点として各画素を順にスキャン』し、『印刷すべき画像の階調信号を入力する入力手段』」、「『淡インクによる記録率は、階調データの値が0のときほぼ0で、階調データの値が0から約95まで増加するに従って上昇し階調データの値が約95のとき約58%の最大値になり、階調データの値がさらに増加するに従って低下して階調データの値が225のときにほぼ0になる淡インクによる記録率と階調データとの関係と、濃インクによる記録率は、階調データの値が約63未満のときほぼ0で、階調データの値が約63から増加するに従って上昇して階調データの値が225のときにほぼ100%の最大値になる濃インクによる記録率と階調データとの関係とからなる特性を示したテーブル』、『入力した階調データDSに基づき、前記テーブルを参照して、予め定めた濃インクの記録率(記録密度)に対応した濃レベルデータDthを得』るドット生成手段及び『上記テーブルに基づいて、前記階調データDSから、予め定めた淡インクの記録率(記録密度)に対応した淡ドットデータDtnを求め』るドット生成手段」、「『入力した階調データDSに基づき、前記テーブルを参照して、予め定めた濃インクの記録率(記録密度)に対応した濃レベルデータDthを得て、得られた濃レベルデータDthが、分散型ディザの閾値マトリックスを採用して設定した閾値Dref1より大きいか否かの判断を行ない、濃ドットデータDthが閾値Dref1より大きい場合には、その画素の濃ドットをオンにするものと判断し、更に結果値RVを演算する処理を行ない、他方、濃レベルデータDthが閾値Dref1以下の場合には、濃ドットをオフ、即ち形成しないと判断し、更に結果値RVに値0を代入する処理を行なって、濃ドットのオン・オフを決定する処理を行な』うドット生成手段」、「『上記テーブルに基づいて、前記階調データDSから、予め定めた淡インクの記録率(記録密度)に対応した淡ドットデータDtnを求め、該淡ドットデータDtn、濃ドットが形成された場合の評価値Z(例えばZ=255)、淡ドットが形成された場合の評価値z(例えばz=160)及び上記濃レベルデータDthから、次式:
Dx=Dth・Z/255+Dtn・z/255
により、淡ドットのオン・オフを決定するための淡ドット用データDxを求め、このDxに拡散誤差△Duを加えて補正データDCを求め、その後、濃ドットをオンとしたか否かを判断し、濃ドットを形成していない場合には、前記階調データDCが、着目した画素に濃度の低い淡インクによるドットを形成するか否かの判定値である淡ドット用の閾値Dref2より、大きいか否かの判断を行ない、補正データDCが閾値Dref2より大きければ淡ドットをオンすると判断し、結果値RV(淡ドット評価値)を演算し、他方、補正データDCが閾値Dref2以下と判断された場合には、淡ドットをオフにすると判断し、結果値RVに値0を算入する処理を行なうことにより、淡ドットのオン・オフを決定する処理を行な』うドット生成手段」及び「『決定された各画素についての濃淡ドットのオン・オフにより、前記ヘッドからのインクの吐出を制御して、該濃淡2種類以上のインクのドットの有無により階調表現を行なう』ドット生成手段」は、それぞれ、本願補正発明の「印刷媒体」、「ドット」、「ドットを形成する」、「画像」、「印刷し得る」、「印刷装置」、「少なくとも一の色相について、互いにインクの濃度が異なるドット」、「ドットを形成可能なヘッド」、「画像を構成する各画素ごとに、階調データを入力する入力手段」、「記録濃度決定手段」、「前記階調データに応じて決定された前記記録濃度が特定の条件下で0とならない複数種類のドットのうち濃度評価値が最も低いものを除くドットについて、ドットの形成の有無を判定する第1のドット形成判定手段」、「前記濃度評価値が最も低いドットについて、他の種類のドットの形成の有無により実現すべき記録濃度との間に生じた誤差の少なくとも一部を解消するようにドットの形成の有無を判定する第2のドット形成判定手段」及び「前記判定結果に基づいて、前記ヘッドを駆動して、前記多種類のドットをそれぞれ形成するドット形成手段」に相当する。

(2)引用例の「一度に吐出するインクにより用紙上に形成されるドットの大きさは一定であり、」(上記3(2)日本語訳の【0002】参照。)との記載からみて、引用発明は、「互いにインクの濃度が異なるドット(色相を同じくし濃度の異なる濃淡2種以上のインクのドット)」の大きさが一定であることを前提にしていることが明らかである。
してみると、引用発明の「互いにインクの濃度が異なるドット(色相を同じくし濃度の異なる濃淡2種以上のインクのドット)」の「単位面積当たりの濃度を表す濃度評価値が段階的に異なる2種類以上のドット」であるといえる。
よって、引用発明の「少なくとも一の色相について、互いにインクの濃度が異なるドット(色相を同じくし濃度の異なる濃淡2種以上のインクのドット)」と本願補正発明の「少なくとも一の色相について、互いにインクの濃度が異なるドットおよび互いにドット径が異なるドットを含み単位面積当たりの濃度を表す濃度評価値が段階的に異なる3種類以上のドット」とは、「少なくとも一の色相について、互いにインクの濃度が異なるドットを含み単位面積当たりの濃度を表す濃度評価値が段階的に異なる2種類以上のドット」である点で一致する。

(3)引用発明において、ドット生成手段が用いているテーブルの特性は「淡インクによる記録率は、階調データの値が0のときほぼ0で、階調データの値が0から約95まで増加するに従って上昇し階調データの値が約95のとき約58%の最大値になり、階調データの値がさらに増加するに従って低下して階調データの値が225のときにほぼ0になる淡インクによる記録率と階調データとの関係と、濃インクによる記録率は、階調データの値が約63未満のときほぼ0で、階調データの値が約63から増加するに従って上昇して階調データの値が225のときにほぼ100%の最大値になる濃インクによる記録率と階調データとの関係とからなる」特性であるところ、この特性における「階調データの階調の領域」は「0から255」であり、「濃度評価値が最も高いドット」は「濃インク」のドットであり、「淡インク」のドットは「濃度評価値が最も高いドット(濃インクのドット)」よりも、濃度評価値が「1段階低いドット」であり、「淡インクによる記録率」は「0より大きく255より小さい」階調データの範囲において0にはならず、かつ、「濃インクによる記録率」は「約63以上225以下」の階調データの範囲が0でない範囲であるから、引用発明の「記録濃度決定手段」と本願補正発明の「前記階調データの階調の領域であって前記濃度評価値が最も高いドットが記録される領域内においても、前記濃度評価値が2段階以上低いドットの記録濃度が0とならない領域が存在する、という特定の条件下で、前記階調データの最大値と最小値を除いた領域において、前記濃度評価値が2段階以上低いドットの記録濃度が0とならないように、前記階調データに応じて前記濃度の異なる各ドットおよび前記ドット径が異なる各ドットにより実現すべき記録濃度を決定する記録濃度決定手段」とは「前記階調データの階調の領域であって前記濃度評価値が最も高いドットが記録される領域内においても、前記濃度評価値が1段階以上低いドットの記録濃度が0とならない領域が存在する、という特定の条件下で、前記階調データの最大値と最小値を除いた領域において、前記濃度評価値が1段階以上低いドットの記録濃度が0とならないように、前記階調データに応じて前記濃度の異なる各ドットにより実現すべき記録濃度を決定する記録濃度決定手段」の点で一致するといえる。

(4)上記(1)ないし(3)からみて、本願補正発明と引用発明とは、
「印刷媒体上に複数のドットを形成することにより画像を印刷し得る印刷装置であって、
少なくとも一の色相について、互いにインクの濃度が異なるドットを含み単位面積当たりの濃度を表す濃度評価値が段階的に異なる2種類以上のドットを形成可能なヘッドと、
画像を構成する各画素ごとに、階調データを入力する入力手段と、
前記階調データの階調の領域であって前記濃度評価値が最も高いドットが記録される領域内においても、前記濃度評価値が1段階以上低いドットの記録濃度が0とならない領域が存在する、という特定の条件下で、前記階調データの最大値と最小値を除いた領域において、前記濃度評価値が1段階以上低いドットの記録濃度が0とならないように、前記階調データに応じて前記濃度の異なる各ドットにより実現すべき記録濃度を決定する記録濃度決定手段と、
前記階調データに応じて決定された前記記録濃度が特定の条件下で0とならない複数種類のドットのうち濃度評価値が最も低いものを除くドットについて、ドットの形成の有無を判定する第1のドット形成判定手段と、
前記濃度評価値が最も低いドットについて、他の種類のドットの形成の有無により実現すべき記録濃度との間に生じた誤差の少なくとも一部を解消するようにドットの形成の有無を判定する第2のドット形成判定手段と、
前記判定結果に基づいて、前記ヘッドを駆動して、前記多種類のドットをそれぞれ形成するドット形成手段とを備える印刷装置。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
本願補正発明では、前記ヘッドが形成可能なドットで、かつ、前記階調データに応じて前記記録濃度を実現する各ドットが、濃度の異なる各ドットに加えて、「互いにドット径が異なるドット」である「各ドット」を含んでおり、前記濃度評価値が段階的に異なるドットの種類が「3種類以上」であるのに対して、
引用発明では、前記ヘッドが形成可能なドットで、かつ、前記階調データに応じて前記記録濃度を実現する各ドットが、「互いにドット径が異なるドット」を含んでおらず、前記濃度評価値が段階的に異なるドットの種類が「2種類」である点。

相違点2:
前記記録濃度決定手段が、階調データの階調の領域であって、階調データの最大値と最小値を除いた領域において、濃度評価値が低いドットの記録濃度が0とならないように、実現すべき記録濃度を決定するところの濃度評価値が低いドットが、
本願補正発明では、濃度評価値が最も高いドットより「2段階以上低いドット」であるのに対して、
引用発明では、濃度評価値が最も高いドットより「1段階低いドット」である点。

5 判断
上記相違点1及び2について検討する。
(1)カラーインクジェット記録装置において、インクの濃度が異なる複数のドットを形成可能であり、かつ、ドット径が異なる複数のドットを形成可能である記録ヘッドを用いて、単位面積当たりの濃度が段階的に異なる3種類以上のドットを形成できるものは、本願出願前に周知である(例.特開平6-226998号公報(【0139】?【0143】、図24参照。)、特開平1-285359号公報(2頁左上欄1?2行、2頁右上欄15行?同頁左下欄7行、第5図参照。)、特開平1-208142号公報(1頁左下欄最下行?同頁右下欄17行、第8図参照。)、特開昭64-64886号公報(2頁左上欄3行?同頁右上欄14行、第4図参照。)、特開昭63-102949号公報(3頁右下欄4?10行、6頁左上欄1?5行、第2図参照。)、特開昭59-201864号公報(2頁右上欄3行?同頁左下欄8行、第2図、第3図参照。))。

(2)引用発明は「色相を同じくし濃度の異なる濃淡2種以上のインクをそれぞれ吐出可能な印字ヘッド」を備た印刷装置であるところ、「低記録濃度部と高濃度記録部とのつなぎ部は高濃度ドットすなわち濃ドットを小ドットとすること」も本願出願前周知である(例.上記特開平1-285359号公報(2頁右上欄15行?同頁左下欄7行参照。)、上記特開昭59-201864号公報(2頁右上欄3?14行参照。))。

(3)また、濃度の異なるドットを形成する手法として、濃度の異なるインクを用いることと、同じ濃度のインクによるドットのドット径を変えることとは、どちらも採用可能な手法であることは、本願出願前に周知である(例.国際公開第97/48558号(17頁2?8行参照。)、国際公開98/03341号(請求の範囲第1項、第12項及び第22項、10頁3?11行参照。))。

(4)引用発明は「色相を同じくし濃度の異なる濃淡2種以上のインクをそれぞれ吐出可能な印字ヘッド」を備た印刷装置であって、「前記濃度の異なるインクは三種類以上用いることも可能」なものであるところ、「濃淡インクに加えて中濃度インクを用いると、印刷装置が大型化するというサイズに関する問題を助長すること」は本願出願前に当業者に自明である(上記特開平6-226998号公報の【0016】及び【0019】の記載参照。)。

(5)上記(1)ないし(4)からして、「ドットがあるかないかによる濃淡2種類以上のインクのドットの分布により用紙上に画像を表現する」引用発明において、濃度の異なるインクを三種類以上用いると印刷装置が大型化するというサイズに関する問題を助長するので、濃度の異なるドットを形成する手法として周知のドット径を変える手法を追加的に採用し、低記録濃度部と高濃度記録部とのつなぎ部において濃ドットを小ドットにできるようにするため、引用発明の「ヘッド」を、インクの濃度が異なる複数のドットを形成可能であり、かつ、ドット径が異なる複数のドットを形成可能である記録ヘッドを用い、単位面積当たりの濃度が段階的に異なる3種類のドットを形成できるものとし、濃インクによるドットの径を大小2種類形成できるようにすることは、当業者が、上記(1)及び(2)の周知技術、上記(3)の周知事項、上記(4)の当業者に自明の課題に基づいて容易になし得た程度のことである。

(6)引用発明において、濃インクによるドットの径を大小2種類形成できるようにし、低記録濃度部と高濃度記録部とのつなぎ部における濃ドットはドット径が小の濃小ドットにすると、引用発明の「淡インク」のドットは、「濃度評価値が最も高いドット(濃インクの大ドット)」よりも、濃度評価値が「2段階低いドット」ということになる。
そうすると、上記の「濃インクの大ドット及び濃インクの小ドット」、「淡インクのドット、濃インクの大ドット及び濃インクの小ドット」及び「淡インクのドット」は、それぞれ、本願補正発明の「互いにドット径が異なるドット」、「濃度評価値が段階的に異なる3種類以上のドット」及び「2段階以上低いドット」に相当することになる。
したがって、上記(5)から、引用発明において、上記相違点1及び2に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が、上記(1)及び(2)の周知技術、上記(3)の周知事項、上記(4)の当業者に自明の課題に基づいて容易になし得た程度のことである。

(7)本願補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び上記(1)及び(2)の周知技術の奏する効果、上記(3)の周知事項、上記(4)の当業者に自明の課題から、当業者が予測できた程度のものである。

(8)したがって、本願補正発明は、当業者が、引用例に記載された発明、上記(1)及び(2)の周知技術、上記(3)の周知事項、上記(4)の当業者に自明の課題に基づいて容易に発明をすることができたものである。

(9)まとめ
本願補正発明は、以上のとおり、当業者が、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができないものである。

6 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成18年11月2日付け手続補正によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項によって特定されるものであるところ、その明細書及び図面の記載並びに上記「第2〔理由〕1(2)ア」からみて、その請求項1に係る発明は、その請求項1に記載されている明らかな誤記「階調値データ」を「階調データ」に訂正した次のとおりのものと認める。

「印刷媒体上に複数のドットを形成することにより画像を印刷し得る印刷装置であって、
少なくとも一の色相について、互いにインクの濃度が異なるドットおよび互いにドット径が異なるドットを含み単位面積当たりの濃度を表す濃度評価値が段階的に異なる3種類以上のドットを形成可能なヘッドと、
画像を構成する各画素ごとに、階調データを入力する入力手段と、
前記階調データに応じて前記濃度の異なる各ドットにより実現すべき記録濃度を、前記濃度評価値が高い側のドットよりも濃度評価値が2段階以上低いドットの記録濃度が、前記階調データの最大値と最小値を除いた領域において特定の条件下で0とならないように、決定する記録濃度決定手段と、
前記階調データに応じて決定された前記記録濃度が特定の条件下で0とならない複数種類のドットのうち濃度評価値が最も低いものを除くドットについて、ドットの形成の有無を判定する第1のドット形成判定手段と、
前記濃度評価値が最も低いドットについて、他の種類のドットの形成の有無により実現すべき記録濃度との間に生じた誤差の少なくとも一部を解消するようにドットの形成の有無を判定する第2のドット形成判定手段と、
前記判定結果に基づいて、前記ヘッドを駆動して、前記多種類のドットをそれぞれ形成するドット形成手段とを備える印刷装置。」(以下「本願発明」という。)

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2〔理由〕3」に記載したとおりである。

3 対比・判断
上記「第2〔理由〕2(2)」で述べたとおり、本願補正発明は、本願発明を特定するために必要な事項について限定を付加したものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2〔理由〕5」に記載したとおり、当業者が、引用例に記載された発明、上記周知技術(「第2 5」(1)及び(2)参照。)、上記周知事項(「第2 5」(3)参照。)、上記当業者に自明の課題(「第2 5」(4)参照。)に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が、引用例に記載された発明、上記周知技術、上記周知事項、上記当業者に自明の課題に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が、引用例に記載された発明、周知技術、周知事項、当業者に自明の課題に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-17 
結審通知日 2010-03-23 
審決日 2010-04-05 
出願番号 特願平10-196794
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
P 1 8・ 575- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小松 徹三  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 野村 伸雄
星野 浩一
発明の名称 印刷装置および印刷方法並びに記録媒体  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  

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