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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1217911
審判番号 不服2007-31528  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-22 
確定日 2010-06-10 
事件の表示 特願2002-15025「電気二重層キャパシタ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月31日出願公開,特開2003-217988〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成14年1月24日の出願であって,平成19年6月25日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年10月19日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年11月22日に審判請求がされたものである。

2 本願発明
(1)本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(平成19年6月25日に提出された手続補正書による。以下,請求項1に係る発明を,「本願発明」という。)。

「セパレーターと当該セパレーターを介して対向する二つの分極性電極とからなるセルを集電板を介して複数積層させ,積層されたセルの両端を集電板で挟み込み,前記セルを前記集電板の間にパッキンにより密封した電気二重層キャパシタであって,前記パッキンの厚さのばらつきが前記厚さの平均値に対して±2.2%以内であることを特徴とする電気二重層キャパシタ。」

(2)本願明細書には,発明が解決しようとする課題について,次の記載がある。

「【0007】【発明が解決しようとする課題】
当該キャパシタの一般的な使用においては,環境温度の変化や充放電電流の条件などにより,キャパシタの温度がマイナス20℃から70℃まで変化する。また前述したようにキャパシタ101は内部に電解液を有しているため,前記温度変化に伴いキャパシタ101の内部圧力が変化する。この使用時の内部圧力の変化により,パッキン107の部分に緩みが生じシール機能が低化する結果,内部の電解液が漏漏するという問題があった。
【0008】 本発明は上記状況に鑑みてなされたものであり,電解液の漏漏を防止したキャパシタを提供することを目的とする。」

3 引用例の記載内容と引用発明
(1)引用例の記載内容
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000-58387号公報(以下「引用例」という。)には,電気二重層コンデンサ(発明の名称)の従来技術に関し,図14?17とともに,次の記載がある(下線は当審で付加,以下同じ。)。

・「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,電気二重層コンデンサに関し,特に,固体状の分極性電極が用いられた大容量の電気二重層コンデンサに関する。
【0002】【従来の技術】従来の電気二重層コンデンサについて図14?図15を参照して説明する。図14は,従来の電気二重層コンデンサの一例を示す斜視図である。図15は,図14に示される基本セルを示す断面図である。
【0003】従来の電気二重層コンデンサは,図14に示されるように,複数の基本セル106を積層してなるセル積層体109,加圧板107および端子電極107から構成されている。
【0004】図15に示されるように基本セル106では,非導電性およびイオン透過性を有する多孔質のセパレータ104を介して対向配置された一対の分極性電極101が中空のガスケット105の内部に収容されている。枠状のガスケット105の上面および下面には開口部が形成されている。ガスケット105の上面および下面のそれぞれに集電体102が接合されて,ガスケット105の上面および下面のそれぞれの開口部が集電体102によって封止されている。これにより,ガスケット105の内部にセパレータ104および一対の分極性電極101が封入されている。分極性電極101の,セパレータ104側と反対側の面には集電体102が接している。また,ガスケット105の内部には,セパレータ104および分極性電極101と共に電解質溶液103が封入されており,この電解質溶液103がセパレータ104にしみ込んでいる。
【0005】図16は,図15に示される分極性電極101の平面図および側面図である。図16(a)が分極性電極101の平面図であり,図16(b)が,図16(a)に示される矢印Aの方向からみた分極性電極101の側面図である。また,図16(c)が,図16(a)に示される矢印Bの方向からみた分極性電極101の側面図である。
【0006】図16(a),図16(b)および図16(c)に示されるように,分極性電極101は矩形の板状のものである。分極性電極101の材質としては,特開平4-288361号公報に開示されているような,活性炭粉末または活性炭繊維と,ポリアセン系材料との複合体などを主成分とした固体状の活性炭が用いられる。
【0007】集電体102の材質としては,導電性カーボンを含有するゴムまたは,プラスチックが用いられている。この集電体102は,分極性電極101と圧着されている。
【0008】図17は,図14および図15に示されるガスケット105の平面図および側面図である。図17(a)がガスケット105の平面図であり,図17(b)が,図17(a)に示される矢印Aの方向からみたガスケット105の側面図である。また,図17(c)が,図17(a)に示される矢印Bの方向からみたガスケット105の側面図である。
【0009】図17(a),図17(b)および図17(c)に示されるように,中空のガスケット105は枠状になっており,ガスケット105の上面および下面に開口部が形成されている。
【0010】電気二重層コンデンサの耐電圧は,電解質溶液103の電気分解電圧によって制限される。従って,電気二重層コンデンサに要求される耐電圧に応じて所定の数の基本セル106が直列に接続されてセル積層体109が構成されている。セル積層体109の積層方向におけるセル積層体109の両端には端子電極108が取り付けられている。それぞれの端子電極108の,セル積層体109側と反対側の面には加圧板107が取り付けられている。セル積層体109の両端の加圧板107同士の距離が狭くなる方向にそれぞれの加圧板107に圧力がかけられて,その状態が保持されている。このように加圧板107によって一定の圧力が保持されることにより,隣り合う基本セル106同士の間や,基本セル106と端子電極108との間に圧力がかけられて,電気二重層コンデンサのそれぞれの構成部品同士の接触面での接触抵抗が下げられている。」
・「【0012】電気二重層コンデンサのどの用途の場合でも,電気二重層コンデンサが高温の環境に設置される可能性が大きいので,高温の環境下における電気二重層コンデンサの信頼性を確保する必要がある。しかし,図14に示した従来の電気二重層コンデンサの信頼性を評価するための試験を高温下で実施すると,電解質溶液103が熱により膨張することや,電圧の印加によりセル積層体109内部からガスが発生することなどが原因で基本セル106が膨張する。このような,それぞれの基本セル106の膨張がセル積層体109の集電体に及ぼす影響は,セル積層体109の中央部の集電体よりもセル積層体109の端部に近い集電体ほど大きくなる。特に,セル積層体109の最外側の集電体が一番負荷を受ける。よって,長時間にわたり高温の環境下に電気二重層コンデンサが置かれると,セル積層体109の最外側の集電体102に亀裂や破れが生じる。その結果,セル積層体109の最外側の基本セル106の内部から電解質溶液103が漏れるという問題点があった。
【0013】また,自動車のスタータモータを駆動するために電気二重層コンデンサが用いられる場合など,電気二重層コンデンサにパワーが求められる用途では,電気二重層コンデンサの等価直列抵抗が低い必要がある。本電気二重層コンデンサの等価直列抵抗を低くするには,分極性電極101と集電体102との電気的な接続を良くすればよい。従って,電気二重層コンデンサでは,セル積層体109の最外側の集電体102の上から,変形が少なく,剛性の高い金属板によりセル積層体109に圧力がかけられる構造になっている。
【0014】ところが,集電体102の材質としては導電性ゴムなどが用いられており,集電体102は剛性を持たない。従って,セル積層体109に圧力をかけた際に,集電体102に局部的に強い力がかかってしまうことがある。また,分極性電極101の材料としては活性炭の焼結体が用いられており,分極性電極101は硬く,高い剛性を有している。さらに,ガスケット105の材質として,ガスケット105の寸法精度を高くするためにABS樹脂などの硬いものを用いる場合が多い。これらのことにより,セル積層体109の両端から金属板などでセル積層体109に圧力をかけると,これらの部材の縁などの角張った箇所によってセル積層体109の最外側の集電体102に亀裂が生じることがある。その結果,電気二重層コンデンサを製造する際に,不良品が発生する確率が高くなり,電気二重層コンデンサの生産性が低くなるという問題点があった。」

(2)引用発明
上記(1)によれば,引用例には,次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されている。

「セパレータ104と,当該セパレータ104を介して対向する2つの分極性電極101とからなる基本セル106を集電体102を介して複数積層させ,積層された基本セル106の両端を集電体102で挟み,この基本セル106を集電体の間のガスケット105の内部に収容した電気二重層コンデンサ。」

4 本願発明の想到容易性の検討
(1)本願発明と引用発明の一致点と相違点
ア 引用発明の「集電体」,「ガスケット」は,それぞれ,本願発明の「集電板」,「パッキン」に相当する。引用発明においても,電気二重層コンデンサを構成するセルは,集電体の間にガスケットにより「密封」されていることが明らかである。「電気二重層コンデンサ」と「電気二重層キャパシタ」は,同じものである。

イ そうすると,本願発明と引用発明の一致点と相違点は,次のとおりとなる。
〈一致点〉
「セパレーターと当該セパレーターを介して対向する二つの分極性電極とからなるセルを集電板を介して複数積層させ,積層されたセルの両端を集電板で挟み込み,前記セルを前記集電板の間にパッキンにより密封した電気二重層キャパシタ。」
〈相違点〉
本願発明は,「パッキンの厚さのばらつきが前記厚さの平均値に対して±2.2%以内であることを特徴とする」のに対し,引用発明では,パッキンの厚さのバラツキについての教示がない点。

(2)相違点についての検討
ア 一般に,液体等を封入するのに用いられるパッキン(ガスケット)に,厚さのバラツキの少ない高精度のものが求められることは,次の(ア)?(ウ)の周知例からも分かるように,当業者における技術常識である。
(ア)特開昭61-197665号公報(原審の拒絶査定において当業者の技術常識を示すものとして例示)には,次の記載がある。
・「〔産業上の利用分野〕本発明は,配管のフランジ部分,ケーシングの締結部分等に用いられ,液体,気体のシール或いは衝撃吸収等の目的で使用されるシート状ガスケット材の製造方法に関するものである。」(1頁左下欄12?16行)
・「ロール混練の場合には,これに続く成形ロール群を通過させることにより連続してシートができるため生産性は上がるが,圧力が線圧でしかかからないため,必ずしもち密なシートが得られず,シート内の厚さのバラツキも大きい。」(1頁右下欄6?10行)
・「〔発明の目的〕従って本発明の目的とするところは,厚さ及び密度のバラツキの小さいガスケット材を,歩留良く,しかも効率的に製造する方法を提供するにある。」(2頁左上欄下から4行?右上欄1行)
(イ)特開平7-130584号公報には,電気二重層コンデンサに関し,次の記載がある。
・「【0002】【従来の技術】図7に従来の電気二重層コンデンサの基本セル11を示す。・・・(中略)・・・ガスケット20は,基本セル11の形状を維持し,電解液の漏れを防ぐとともに,上下の集電体9同士による短絡を防ぐ役割がある。ガスケット20には絶縁性ゴムが用いられている。」
・「【0004】ところで,近年・・・(中略)・・・ガスケット18は,分極性電極に圧力を掛ける必要がないことから,絶縁系ゴムより形状や寸法精度を維持しやすいようプラスチック樹脂が用いられる。・・・」
・【0007】【発明が解決しようとする課題】従来の電気二重層コンデンサでは分極性電極の面積が100cm^(2)程度以上になると,プラスチックの射出成形時にソリやヒケが生じ,寸法精度の高いガスケットを作ることができず,電極の大面積化が困難である。・・・」
(ウ)特開2000-216066号公報には,電気二重層コンデンサに関し,次の記載がある。
・「【0005】【発明が解決しようとする課題】上記した従来の方法では,封止性が悪く,電解液ドライアップによりESRの上昇が生じるものが発生するという問題がある。その理由は,特許公報第2722021号公報にも記されているように,近年,電子機器の小型化の進展に伴い,電気二重層コンデンサにも小型化が要求されているが,このような技術動向の中でガスケットの厚さが薄くなってきたために,ガスケットとセパレータとの厚さの比率が小さくなってきている。元来,2つ以上のシート状のものを接合し,封止を行なう時には,その接合界面に均一な圧力を掛けて行なうことが望ましい。ところが,前述したようにガスケットとセパレータとの厚さの比率が小さくなってくると,ガスケット上に重なったセパレータの厚さ分が無視できなくなり,接合界面である分極性電極外周部のガスケット並びに集電体に均一な圧力をかけることができない。・・・」
・「【0006】また,図6に示す製造方法においても,加圧板の替わりに用いたゴム材18が加硫により変形してくるため,この変形が無視できなくなり,完成品状態で分極性電極面とガスケット面を上記理由により均一に加圧保持できないという欠点がある。従って本発明の目的は,上記欠点を解決する電気二重層コンデンサおよびその製造方法を提供することにある。」

イ 特に,電気二重層キャパシタが,高温等の苛酷な環境下で使用される場合は,漏液等を防ぐために,より高精度の加工が要求されることは当然のことである。このことは,上記3(1)で摘示した引用例の段落【0012】でも言及されていることからも明らかである。
そして,他の条件が同じである限り,パッキン(ガスケット)の厚さのバラツキが小さいほど,均一な圧力がかかり,漏液が生じにくくなることは,当業者に自明な経験則である。
そうすると,引用発明の電気二重層キャパシタ(コンデンサ)において,使用条件で漏液が生じないような精度で均一な厚さのパッキン(ガスケット)を用いることは,当業者が当然に配慮する設計事項といえる。

ウ 本願発明は,パッキンの厚さの均一さの程度を「厚さの平均値に対して±2.2%以内」と限定したものであるが,本願の請求項1の記載をみても,明細書の記載をみても,このような数値範囲のパッキンを得るために特に適した手段を開示するものではなく,単に,使用条件下で漏液が生じない範囲の数値を選択したという以上の技術的意義を認めることができない。

エ したがって,引用発明において,パッキン(ガスケット)の厚さの均一さの程度(バラツキの範囲)を上記相違点に係る数値範囲のものとすることは,当業者が容易になし得たことである。

オ なお,本願明細書及び図面によれば,本願発明の「実施例」ではいずれも漏液の発生率が0%であったのに対し,「比較例」では80%であったとされているが,ここでいう「比較例」がどのような基準で選択されたものなのか明らかでない。出願時の技術水準にあるものと比較したものでなければ,本願発明の効果を示すものとはいえない。本願明細書の「比較例」が出願当時の技術水準を代表するものだとすれば,当時使われていた本願発明と同じタイプの電気二重層キャパシタは,液漏の発生率が80%であったことになるから,電気二重層キャパシタとして,使用に耐える「比較例」が本願出願前には存在していなかったことを意味するものである。しかし,このようなことは考えにくい。更にいえば,パッキンの形状や材質により,漏液が生じないための厚さの均一さの程度は異なってくるものと考えられるところ,本願の明細書には,このような点についての考察もなされていない。
そうすると,「厚さの平均値に対して±2.2%以内」との数値限定は,そもそも,本願発明を従来技術と区別する特徴とはならないともいえる。

(3)したがって,本願発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 結言
以上のとおり,本願発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができず,本願は拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-04-06 
結審通知日 2010-04-13 
審決日 2010-04-28 
出願番号 特願2002-15025(P2002-15025)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 晃洋  
特許庁審判長 相田 義明
特許庁審判官 安田 雅彦
廣瀬 文雄
発明の名称 電気二重層キャパシタ  
代理人 松元 洋  
代理人 光石 忠敬  
代理人 田中 康幸  
代理人 光石 俊郎  
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