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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1217914
審判番号 不服2007-33934  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-17 
確定日 2010-06-10 
事件の表示 特願2003- 40783「直売所システム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月22日出願公開、特開2004-206657〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、平成15年2月19日(国内優先権主張平成14年11月6日)の出願であって、平成19年7月24日付けで拒絶理由通知がなされ、同年9月26日付けで手続補正がなされたが、同年11月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成20年1月9日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成20年1月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」と呼ぶ。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成20年1月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正内容

本件補正は、特許請求の範囲の補正を含むものであって、請求項1を、

「【請求項1】 少なくとも生産者を特定するための生産者コードと生産物の名称及びその単位価格を含む情報をバーコードで記したラベルが貼られた生産物に対して、該バーコードを読み取り精算処理するPOSシステムと、
該POSシステムから定期的に送られてくる販売情報を受信し、それらの受信した販売情報を集計処理する集計サーバと、
該集計サーバから定期的に送られてくる集計データを商品管理テーブルに受信保持し、交換機能を持ち、電話がかかってきた時、同時に送られてくる生産者コードにより前記商品管理テーブルを検索し、該商品管理テーブルに記憶されれている指定される生産者の販売情報を音声で通知する販売情報提供サーバと、
を含んで構成される直売所システム。」

から、

「【請求項1】 生産物に付されたバーコードを読み取る読取手段と、読み取ったバーコードから当該生産物の価格の精算を行なう精算処理手段と、販売した販売情報を記憶する販売情報記憶手段と、販売情報記憶手段に記憶されている販売情報を編集処理して定期的に集計サーバに送る販売情報送信手段とから構成され、生産物に付されたバーコードを読み取り精算処理するPOSシステムと、
該POSシステムから送られてくる販売情報を受信する販売情報受信手段と、販売情報の集計処理を行なう集計処理手段と、該集計処理手段で集計された集計情報を記憶する集計情報記憶手段と、該集計情報記憶手段に記憶されている情報を読み出して販売情報提供サーバに送る集計情報送信手段とから構成され、前記POSシステムから定期的に送られてくる販売情報を受信し、それらの受信した販売情報を集計処理する集計サーバと、
前記集計サーバから送られてくる集計情報を受信する集計情報受信手段と、受信した集計情報を記憶する集計情報記憶手段と、販売情報を提供する販売情報提供手段と、販売情報の提供を音声で行なう音声合成手段と、販売情報提供サーバと生産者端末とを接続する電話交換手段と、商品の管理情報を記憶すると共に生産物が残り少なくなったことを生産者に通知するための警告値を記憶する商品管理テーブルと、生産者に関する情報を記憶する生産者テーブルとから構成され、前記集計サーバから定期的に送られてくる集計データを前記商品管理テーブルに受信保持し、交換機能を持ち、電話がかかってきた時、同時に送られてくる生産者コードにより前記商品管理テーブルを検索し、該商品管理テーブルに記憶されている指定される生産者の販売情報を音声で通知する販売情報提供サーバと、
を含んで構成されることを特徴とする直売所システム。」

に変更する補正事項(以下、「補正事項1」と呼ぶ。)と、請求項9を、

「【請求項9】 少なくとも生産者を特定するための生産者コードと生産物の名称及びその単位価格を含む情報を記したラベルが貼られた生産物に対して、該ラベルから情報を読み取り精算処理する精算処理システムと、
該精算処理システムから送られてくる販売情報を受信し、それらの受信した販売情報を集計処理する集計サーバと、
該集計サーバから送られてくる集計データを受信保持し、生産者を特定するIDを入力することにより、生産者が直売所に展示した生産物の数量を入力する入力手段を有し、且つ販売数量とあわせて展示品の残りの個数をWEB上で表示する手段を有する販売情報提供サーバと、
を含んで構成される直売所システム。」

から、

「【請求項9】 生産物に付されたラベル情報を読み取るラベル読取手段と、読み取ったラベル情報から当該生産物の価格の精算を行なう精算処理手段と、販売した販売情報を記憶する販売情報記憶手段と、該販売情報記憶手段に記憶されている販売情報を編集処理して集計サーバに送信する販売情報送信手段とから構成され、生産物に付されたラベルから情報を読み取り精算処理する精算処理システムと、
前記演算処理システムからの販売情報を受信する販売情報受信手段と、販売情報の集計処理を行なう集計処理手段と、該集計処理手段で集計した集計情報を記憶する集計情報記憶手段と、該集計情報記憶手段に記憶されている情報を読み出して販売情報提供サーバに送信する集計情報送信手段とから構成され、前記精算処理システムから定期的に送られてくる販売情報を受信し、それらの受信した販売情報を集計処理する集計サーバと、
前記集計サーバから送信された集計情報を受信する集計情報受信手段と、受信した集計情報を記憶する集計情報記憶手段と、販売情報を提供する販売情報提供手段と、生産者情報を入力する生産者情報入力手段と、生産者に電子メールにより情報を通知するメール手段と、各種のテーブルを記憶するデータベースとから構成され、前記集計サーバから定期的に送られてくる集計データを受信保持し、生産者を特定するIDを入力することにより、生産者が直売所に展示した生産物の数量を入力する入力手段を有し、且つ販売数量とあわせて展示品の残りの個数をWEB上で表示する手段を有する販売情報提供サーバと、
を含んで構成されることを特徴とする直売所システム。」

に変更する補正事項(以下、「補正事項2」と呼ぶ。)とを含むものである。

2.補正の目的の適否について

本件補正の目的が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に適合するか否かを検討するに、当審は、以下の理由で、本件補正の目的は、同改正前の特許法第17条の2第4項の規定に適合するものではないと判断する。

(1)補正事項1について
補正前の請求項1の「少なくとも生産者を特定するための生産者コードと生産物の名称及びその単位価格を含む情報をバーコードで記したラベルが貼られた生産物に対して、該バーコードを読み取り精算処理するPOSシステム」なる記載と、補正後の請求項1の「生産物に付されたバーコードを読み取る読取手段と、読み取ったバーコードから当該生産物の価格の精算を行なう精算処理手段と、販売した販売情報を記憶する販売情報記憶手段と、販売情報記憶手段に記憶されている販売情報を編集処理して定期的に集計サーバに送る販売情報送信手段とから構成され、生産物に付されたバーコードを読み取り精算処理するPOSシステム」なる記載を比較して明らかなように、補正事項1は、「バーコード」に含まれる情報についての限定事項である、「少なくとも生産者を特定するための生産者コードと生産物の名称及びその単位価格を含む情報」という限定事項を解除する補正内容を含んでいる。そして、そのような限定事項を解除する補正が、上記改正前の特許法第17条の2第4項でいう「請求項の削除」(第1号)、「特許請求の範囲の減縮」(第2号)、「誤記の訂正」(第3号)、「明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」(第4号)、のいずれにも該当しないことは明らかである。

(2)補正事項2について
補正前の請求項9の「少なくとも生産者を特定するための生産者コードと生産物の名称及びその単位価格を含む情報を記したラベルが貼られた生産物に対して、該ラベルから情報を読み取り精算処理する精算処理システム」なる記載と、補正後の請求項9の「生産物に付されたラベル情報を読み取るラベル読取手段と、読み取ったラベル情報から当該生産物の価格の精算を行なう精算処理手段と、販売した販売情報を記憶する販売情報記憶手段と、該販売情報記憶手段に記憶されている販売情報を編集処理して集計サーバに送信する販売情報送信手段とから構成され、生産物に付されたラベルから情報を読み取り精算処理する精算処理システム」なる記載を比較して明らかなように、補正事項2は、「ラベル」に含まれる情報についての限定事項である、「少なくとも生産者を特定するための生産者コードと生産物の名称及びその単位価格を含む情報」という限定事項を解除する補正内容を含んでいる。そして、そのような限定事項を解除する補正が、上記改正前の特許法第17条の2第4項でいう「請求項の削除」(第1号)、「特許請求の範囲の減縮」(第2号)、「誤記の訂正」(第3号)、「明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」(第4号)、のいずれにも該当しないことは明らかである。

3.むすび
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


第3.本願について

1.本願発明
平成20年1月9日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」と呼ぶ。)と請求項9に係る発明(以下、「本願発明2」と呼ぶ。)は、平成19年9月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1と9の記載からみて、それぞれ、以下のとおりのものである。
(1)本願発明1
「少なくとも生産者を特定するための生産者コードと生産物の名称及びその単位価格を含む情報をバーコードで記したラベルが貼られた生産物に対して、該バーコードを読み取り精算処理するPOSシステムと、
該POSシステムから定期的に送られてくる販売情報を受信し、それらの受信した販売情報を集計処理する集計サーバと、
該集計サーバから定期的に送られてくる集計データを商品管理テーブルに受信保持し、交換機能を持ち、電話がかかってきた時、同時に送られてくる生産者コードにより前記商品管理テーブルを検索し、該商品管理テーブルに記憶されている指定される生産者の販売情報を音声で通知する販売情報提供サーバと、
を含んで構成される直売所システム。」

なお、平成19年9月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1中の「該商品管理テーブルに記憶されれている」は「該商品管理テーブルに記憶されている」の誤記と判断した。
また、同請求項1でいう「交換機能」は、その意味するところが必ずしも明確でないが、明細書の段落27の記載等を参酌し、「販売情報提供サーバと生産者の電話機とを接続する機能」といった程度の意味に解釈した。

(2)本願発明2
「少なくとも生産者を特定するための生産者コードと生産物の名称及びその単位価格を含む情報を記したラベルが貼られた生産物に対して、該ラベルから情報を読み取り精算処理する精算処理システムと、
該精算処理システムから送られてくる販売情報を受信し、それらの受信した販売情報を集計処理する集計サーバと、
該集計サーバから送られてくる集計データを受信保持し、生産者を特定するIDを入力することにより、生産者が直売所に展示した生産物の数量を入力する入力手段を有し、且つ販売数量とあわせて展示品の残りの個数をWEB上で表示する手段を有する販売情報提供サーバと、
を含んで構成される直売所システム。」

2.引用例

(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-157315号公報(以下、「引用例1」と呼ぶ。)には、次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、商品管理システムの技術分野に関し、より詳しくは、商品販売者が仕入先から購入した仕入品及び委託者から受託した委託品を含む商品を管理する商品管理システムの技術分野に関する。
【0002】
【従来の技術】商業の分野において、小売業者等の商品の販売者は、仕入先から購入し、店頭に陳列又は保管場所に管理している商品の在庫数の過不足をいかにしてなくすかは、大きい問題である。それは、急な受注にも対応するため、最低限の在庫数を常に確保しておく必要がある一方、在庫数が多ければそれにつれてコストが増大するからである。また、商品を販売者に納入する仕入先にとっても、急な販売者からの仕入のための受注にも対応するために一定の在庫数を保有する必要があり、同様な問題を抱えている。これらの、販売者及び仕入先が有する問題を緩和する商取引方法として、「委託品」という概念が作られた。「委託品」とは、「委託者が商品の所有権を留保したままで商品販売者の保管場所で保管される商品であって、商品販売者は、当該商品が必要になるとそれの所有権を自己に移転して販売・使用することができる、そのような商品」と定義されるものである。「委託品」は、古くより存在しており、委託品に関する取引が行われてきた。この委託品取引は、主に薬品関連の業種で古くから行われており、例えば、江戸時代を起源とする「富山の置き薬」などが知られている。
【0003】一般的な委託品取引の流れは、以下の通りである。すなわち、商品販売者は、委託者から商品を購入することなく、当該商品を委託品として預かって(受託し)、それを店頭に陳列又は保管場所に保管する。商品販売者は、販売等により当該商品が必要になると、その商品の所有権を自己に移転(その商品を購入)して自由に使用・販売する。委託者は、商品販売者への委託品の使用数を継続的にモニターし、委託品を適宜補充することによって、委託品の保管数を一定の水準に保ち続ける。このように、商品販売者は、仕入品の在庫の一部又は全部を委託品に置き換えることによって、自己の在庫数を減少させることができ、かつ、仕入品が底をついたときは直ちに委託品を購入し、すなわち委託品を仕入品に転用することによって、急な受注にも対応することができるという利益を受けることができる。委託品を委託する委託者にとっても、商品の在庫の保管場所が販売者によって提供されるため、商品の在庫保管のコストを削減することができ、また、商品販売者からの受注により必要になれば、商品販売者が保管している委託品を直ちに販売し、すなわち委託品から仕入品に転用させることによって、販売者からの急な仕入のための受注に対しても対応することができるという利益がもたらされる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、商品販売者が保管する委託品を委託者が補充するためには、委託者は、自己の社員等に商品販売者の会社又は商店等を巡回させて委託品の使用量を商品販売者サイドで確認させ、それを台帳等に記入・集計させることによって、補充量を決定する必要があった。これは、委託者にとって、相当の時間、人件費がかかるという不利益をもたらしていた。また、委託者の社員の商品販売者への巡回が何らかの原因により遅れると、委託品の補充が遅れることによって、商品販売者及び委託者の双方が、商品を販売して利益を得る機会を逃すおそれがあるなど、保管量の管理が不十分となって損失が発生する可能性が大きいものであった。近年、従来の委託品取引の上述のような不利益を少しでも解消するために、保管時の数量を定期的に数えることによって委託品の保管数を管理するのではなく、例えば、商品に委託品を識別することができるバーコードラベル等の識別ラベルを貼付して、当該商品の使用(販売)時に識別ラベルを読み取り、使用される数量を把握することによって、委託品の保管数を管理する方法が用いられるようになってきた。この方法によると、委託品の保管数の推移を手作業により台帳に記帳する必要がなくなる」

また、上記記載を各種常識に照らせば、以下のことがいえる。
ア.上記段落【0003】にあるように、商品販売者が委託品として預かった商品は、店頭に陳列される場合もあること、同段落【0003】にあるように、委託品の使用数の継続的モニターや、委託品の補充は、委託者が行うこととされていること、等を勘案すると、引用例1でいう「店頭」は、委託品についての「直売所」ともいえるものである。
イ.上記段落【0004】でいう「商品に委託品を識別することができるバーコードラベル等の識別ラベルを貼付して、当該商品の使用(販売)時に識別ラベルを読み取り、使用される数量を把握することによって、委託品の保管数を管理する方法」を実現するシステムは、当然に、「識別ラベルから読み取った情報を基に委託品の販売数を把握する手段」を有している。
ウ.上記ア.で指摘したように、委託品の使用数の継続的モニターや、委託品の補充は、委託者が行うべきこととされていること、上記段落【0004】でいう「商品に委託品を識別することができるバーコードラベル等の識別ラベルを貼付して、当該商品の使用(販売)時に識別ラベルを読み取り、使用される数量を把握することによって、委託品の保管数を管理する方法」は、委託品の保管数を管理する方法であること、等を勘案すると、上記「識別ラベルから読み取った情報を基に委託品の販売数を把握する手段」が把握した委託品の販売数は、当然に委託者に通知されるものと考えられ、上記記載箇所で想定されているシステムは、該「委託品の販売数を把握する手段」が把握した委託品の販売数を委託者へ通知する何らかの手段を当然に有している。

以上を総合すると、引用例1の上記摘記箇所には、以下の発明(以下、「引用例1記載発明」と呼ぶ。)が記載されているといえる。

「バーコードラベルが貼られた委託品に対して、該バーコードラベルから情報を読み取り、該バーコードラベルから読み取った情報を基に委託品の販売数を把握する手段と、該委託品の販売数を把握する手段が把握した委託品の販売数を委託者へ通知する手段と、を含んで構成される直売所システム。」

(2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-160782号公報(以下、「引用例2」と呼ぶ。)には、次の事項が記載されている。
ア.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電話回線を利用して商品の在庫数量の情報を提供したり、商品の受注を行なったりすることの出来るシステムに関するものである。」
イ.「【0013】(1) 営業所から電話をかけると工場側がオフフック状態(受話器を上げた状態)になる(図2参照)。
(2) そして工場側より営業所へ商品コード要求の音声メッセージを送る。例えば「ツヅイテショウヒンコードヲニュウリョクシテクダサイ」
(3) 営業所側は商品コード3桁をプッシュし、該商品コード内に0?9以外のボタンを押した場合には、工場側から音声メッセージを送って再入力を要求する(図3参照)。例えば「モウイチドニュウリョクシテクダサイ」
(4) 工場側は営業所から送られてきた商品コードを冷蔵庫に問い合わせ、受注管理ファイル内の該当商品の受注数量を減算して在庫数量を知る。
(5) そして、この在庫数量を営業所へ音声でもって知らせる。例えば「ショウヒンコード〇〇〇ノザイコハ〇〇〇〇〇デス」」

上記記載事項によれば、引用例2には、以下の発明(以下、「引用例2記載発明」と呼ぶ。)が記載されているといえる。

「システムと情報の通知先の電話機とを接続する機能(本願発明1でいう「交換機能」に相当する機能)を有し、電話がかかってきた時、同時に送られてくるコード情報により所要の問い合わせを行い、回答を音声で通知するシステム。」

3.対比

(1)本願発明1と引用例1記載発明との対比

本願発明1と引用例1記載発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア.引用例1記載発明の「委託品」と本願発明1の「生産物」とは、直売所で販売される「商品」である点で共通し、引用例1記載発明の「委託者」と本願発明1の「生産者」とは、直売所で販売される商品の「出品者」である点で共通する。
イ.引用例1記載発明の「販売数」は、本願発明1の「販売情報」に含まれる。
ウ.引用例1記載発明の「バーコードラベルが貼られた委託品に対して、該バーコードラベルから情報を読み取り、該バーコードラベルから読み取った情報を基に委託品の販売数を把握する手段」と「該委託品の販売数を把握する手段が把握した委託品の販売数を委託者へ通知する手段」とを併せたものは、本願発明1の「POSシステム」と「集計サーバ」と「販売情報提供サーバ」を併せたものと、「バーコードラベルが貼られた商品に対して、該バーコードラベルから情報を読み取り、該バーコードラベルから読み取った情報を基に商品の販売情報を把握する機能と、該販売情報を出品者へ通知する機能とを有する手段」である点で共通する。

上記ア.?ウ.の事情を踏まえると、本願発明1と引用例1記載発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「バーコードラベルが貼られた商品に対して、該バーコードを読み取り、該バーコードラベルから読み取った情報を基に商品の販売情報を把握する機能と、該販売情報を出品者へ通知する機能とを有する手段を含んで構成される直売所システム。」である点。

(相違点1)
本願発明1の「バーコードラベル」は、「少なくとも生産者を特定するための生産者コードと生産物の名称及びその単位価格を含む情報をバーコードで記したラベル」であるのに対し、引用例1記載発明の「バーコードラベル」は、「少なくとも生産者を特定するための生産者コードと生産物の名称及びその単位価格を含む情報をバーコードで記したラベル」であるとは限らない点。

(相違点2)
本願発明1の「バーコードラベルが貼られた商品に対して、該バーコードを読み取り、該バーコードラベルから読み取った情報を基に商品の販売情報を把握する機能と、該販売情報を出品者へ通知する機能とを有する手段」は、「バーコードを読み取り精算処理するPOSシステム」と、「該POSシステムから定期的に送られてくる販売情報を受信し、それらの受信した販売情報を集計処理する集計サーバ」と、「該集計サーバから定期的に送られてくる集計データを商品管理テーブルに受信保持し、交換機能を持ち、電話がかかってきた時、同時に送られてくる生産者コードにより前記商品管理テーブルを検索し、該商品管理テーブルに記憶されている指定される生産者の販売情報を音声で通知する販売情報提供サーバ」を含むものであるのに対し、引用例1記載発明の「バーコードラベルが貼られた商品に対して、該バーコードを読み取り、該バーコードラベルから読み取った情報を基に商品の販売情報を把握する機能と、該販売情報を出品者へ通知する機能とを有する手段」は、「バーコードを読み取り精算処理するPOSシステム」と、「該POSシステムから定期的に送られてくる販売情報を受信し、それらの受信した販売情報を集計処理する集計サーバ」と、「該集計サーバから定期的に送られてくる集計データを商品管理テーブルに受信保持し、交換機能を持ち、電話がかかってきた時、同時に送られてくる生産者コードにより前記商品管理テーブルを検索し、該商品管理テーブルに記憶されれている指定される生産者の販売情報を音声で通知する販売情報提供サーバ」を含むものではない点。

(2)本願発明2と引用例1記載発明との対比

本願発明2と引用例1記載発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア.引用例1記載発明の「委託品」と本願発明2の「生産物」とは、直売所で販売される「商品」である点で共通し、引用例1記載発明の「委託者」と本願発明2の「生産者」とは、直売所で販売される商品の「出品者」である点で共通する。
イ.引用例1記載発明の「販売数」は、本願発明2の「販売情報」に含まれる。
ウ.引用例1記載発明の「バーコードラベルが貼られた委託品に対して、該バーコードラベルから情報を読み取り、該バーコードラベルから読み取った情報を基に委託品の販売数を把握する手段」と「該委託品の販売数を把握する手段が把握した委託品の販売数を委託者へ通知する手段」とを併せたものは、本願発明2の「精算処理システム」と「集計サーバ」と「販売情報提供サーバ」を併せたものと、「ラベルが貼られた商品に対して、該ラベルを読み取り、該ラベルから読み取った情報を基に商品の販売情報を把握する機能と、該販売情報を出品者へ通知する機能とを有する手段」である点で共通する。

上記ア.?ウ.の事情を踏まえると、本願発明2と引用例1記載発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「ラベルが貼られた商品に対して、該ラベルを読み取り、該ラベルから読み取った情報を基に商品の販売情報を把握する機能と、該販売情報を出品者へ通知する機能とを有する手段を含んで構成される直売所システム。」である点。

(相違点1)
本願発明2の「ラベル」は、「少なくとも生産者を特定するための生産者コードと生産物の名称及びその単位価格を含む情報を記したラベル」であるのに対し、引用例1記載発明の「ラベル」は、「少なくとも生産者を特定するための生産者コードと生産物の名称及びその単位価格を含む情報を記したラベル」であるとは限らない点。

(相違点2)
本願発明2の「ラベルが貼られた商品に対して、該ラベルを読み取り、該ラベルから読み取った情報を基に商品の販売情報を把握する機能と、該販売情報を出品者へ通知する機能とを有する手段」は、「ラベルから情報を読み取り精算処理する精算処理システム」と、「該精算処理システムから送られてくる販売情報を受信し、それらの受信した販売情報を集計処理する集計サーバ」と、「該集計サーバから送られてくる集計データを受信保持し、生産者を特定するIDを入力することにより、生産者が直売所に展示した生産物の数量を入力する入力手段を有し、且つ販売数量とあわせて展示品の残りの個数をWEB上で表示する手段を有する販売情報提供サーバ」を含むものであるのに対し、引用例1記載発明の「ラベルが貼られた商品に対して、該ラベルを読み取り、該ラベルから読み取った情報を基に商品の販売情報を把握する機能と、該販売情報を出品者へ通知する機能とを有する手段」は、「ラベルから情報を読み取り精算処理する精算処理システム」と、「該精算処理システムから送られてくる販売情報を受信し、それらの受信した販売情報を集計処理する集計サーバ」と、「該集計サーバから送られてくる集計データを受信保持し、生産者を特定するIDを入力することにより、生産者が直売所に展示した生産物の数量を入力する入力手段を有し、且つ販売数量とあわせて展示品の残りの個数をWEB上で表示する手段を有する販売情報提供サーバ」を含むものではない点。

4.判断

(1)本願発明1について

ア.(相違点1)について
「バーコード」にどのような情報を含ませるかは、そのバーコードの利用目的に応じて当業者が適宜決定すべき事項であること、生産者が生産物を委託品として直売所で販売してもらうことはごく普通のことであり、引用例1記載発明の「委託品」と「委託者」は、それぞれ「生産物」と「生産者」である場合も当然にあり得ること、本願発明1のバーコードに含まれる「生産者を特定するための生産者コード」、「生産物の名称」、「単位価格」は、いずれも、引用例1記載発明において想定し得ないような格別の情報ではないこと、等の事情にかんがみれば、引用例1記載発明の「バーコードラベル」を「少なくとも生産者を特定するための生産者コードと生産物の名称及びその単位価格を含む情報をバーコードで記したラベル」とすることは、当業者が容易に想到し得たことというべきである。

イ.(相違点2)について
以下の点を勘案すると、引用例1記載発明の「バーコードラベルが貼られた商品に対して、該バーコードを読み取り、該バーコードラベルから読み取った情報を基に商品の販売情報を把握する機能と、該販売情報を出品者へ通知する機能とを有する手段」を、「バーコードを読み取り精算処理するPOSシステム」と、「該POSシステムから定期的に送られてくる販売情報を受信し、それらの受信した販売情報を集計処理する集計サーバ」と、「該集計サーバから定期的に送られてくる集計データを商品管理テーブルに受信保持し、交換機能を持ち、電話がかかってきた時、同時に送られてくる生産者コードにより前記商品管理テーブルを検索し、該商品管理テーブルに記憶されている指定される生産者の販売情報を音声で通知する販売情報提供サーバ」を含むものとすることも、当業者が容易に推考し得たことというべきである。
(ア)バーコードを利用して販売情報の管理を行うPOSシステムにおいて、精算処理をも行うようにすることは、ごく普通のことであるし、引用例1記載発明の「バーコードラベルが貼られた商品に対して、該バーコードを読み取り、該バーコードラベルから読み取った情報を基に商品の販売情報を把握する機能と、該販売情報を出品者へ通知する機能とを有する手段」を、「バーコードを読み取り精算処理するPOSシステム」を含むものとすることができない理由もないから、引用例1記載発明の「バーコードラベルが貼られた商品に対して、該バーコードを読み取り、該バーコードラベルから読み取った情報を基に商品の販売情報を把握する機能と、該販売情報を出品者へ通知する機能とを有する手段」を、「バーコードを読み取り精算処理するPOSシステム」を含むものとすることは、当業者が容易に推考し得たことである。
(イ)以下の事項を勘案すると、引用例1記載発明の「バーコードラベルが貼られた商品に対して、該バーコードを読み取り、該バーコードラベルから読み取った情報を基に商品の販売情報を把握する機能と、該販売情報を出品者へ通知する機能とを有する手段」を、「POSシステムから定期的に送られてくる販売情報を受信し、それらの受信した販売情報を集計処理する集計サーバ」と、「該集計サーバから定期的に送られてくる集計データを商品管理テーブルに受信保持し、交換機能を持ち、電話がかかってきた時、同時に送られてくる生産者コードにより前記商品管理テーブルを検索し、該商品管理テーブルに記憶されている指定される生産者の販売情報を音声で通知する販売情報提供サーバ」を含むものとすることも、当業者が容易に推考し得たことというべきである。
a.引用例2には、上記「2.」の「(2)」に抽出した引用例2記載発明が記載されているところ、該引用例2記載発明と引用例1記載発明とは、商品に関する情報を人に通知する機能を有するシステムであるという意味において、共通の技術分野に属していること、該引用例2記載発明を引用例1記載発明に適用できない理由はないこと、等を勘案すると、引用例1記載発明に引用例2記載発明を適用することは当業者が容易に推考し得たことである。
b.複数の機能を有するシステムを複数のシステムないしサーバで実現することや、そうする場合に、各システムやサーバ間の機能の切り分けをどうするか、各システムやサーバ間における情報授受のルートやタイミングをどうするか、各種データや情報をどのような形態で保持するか、といった事項は、いずれも、システムを具現化する際に、当業者が適宜決定すべき事項である。
c.引用例1記載発明に引用例2記載発明を適用して所望の機能を有するシステムを具現化するにあたり、「POSシステムから定期的に送られてくる販売情報を受信し、それらの受信した販売情報を集計処理する集計サーバ」と、「該集計サーバから定期的に送られてくる集計データを商品管理テーブルに受信保持し、交換機能を持ち、電話がかかってきた時、同時に送られてくる生産者コードにより前記商品管理テーブルを検索し、該商品管理テーブルに記憶されている指定される生産者の販売情報を音声で通知する販売情報提供サーバ」を含む構成とすることを困難とする事情は、何ら見当たらない。

ウ.本願発明1の効果について
本願発明1の構成によってもたらされる効果は、引用例1記載発明、引用例2記載発明、及び周知の事項から当業者が容易に予測し得る程度のものであって、本願発明1の進歩性を肯定する根拠となり得るものではない。

エ.小括
以上のとおりであるから、本願発明1は、引用例1記載の発明、引用例2記載発明、及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(2)本願発明2について

ア.(相違点1)について
「ラベル」にどのような情報を含ませるかは、そのラベルの利用目的に応じて当業者が適宜決定すべき事項であること、生産者が生産物を委託品として直売所で販売してもらうことはごく普通のことであり、引用例1記載発明の「委託品」と「委託者」は、それぞれ「生産物」と「生産者」である場合も当然にあり得ること、本願発明2のラベルに含まれる「生産者を特定するための生産者コード」、「生産物の名称」、「単位価格」は、いずれも、引用例1記載発明において想定し得ないような格別の情報ではないこと、等の事情にかんがみれば、引用例1記載発明の「バーコードラベル」を「少なくとも生産者を特定するための生産者コードと生産物の名称及びその単位価格を含む情報を記したラベル」とすることは、当業者が容易に想到し得たことというべきである。

イ.(相違点2)について
以下の点を勘案すると、引用例1記載発明の「ラベルが貼られた商品に対して、該ラベルを読み取り、該ラベルから読み取った情報を基に商品の販売情報を把握する機能と、該販売情報を出品者へ通知する機能とを有する手段」を、「ラベルから情報を読み取り精算処理する精算処理システム」と、「該精算処理システムから送られてくる販売情報を受信し、それらの受信した販売情報を集計処理する集計サーバ」と、「該集計サーバから送られてくる集計データを受信保持し、生産者を特定するIDを入力することにより、生産者が直売所に展示した生産物の数量を入力する入力手段を有し、且つ販売数量とあわせて展示品の残りの個数をWEB上で表示する手段を有する販売情報提供サーバ」を含むものとすることも、当業者が容易に推考し得たことというべきである。
(ア)バーコードを利用して販売情報の管理を行うPOSシステムにおいて、精算処理をも行うようにすることは、ごく普通のことであるし、引用例1記載発明の「ラベルが貼られた商品に対して、該ラベルを読み取り、該ラベルから読み取った情報を基に商品の販売情報を把握する機能と、該販売情報を出品者へ通知する機能とを有する手段」を、「ラベルから情報を読み取り精算処理する精算処理システム」を含むものとすることができない理由もないから、引用例1記載発明の「ラベルが貼られた商品に対して、該ラベルを読み取り、該ラベルから読み取った情報を基に商品の販売情報を把握する機能と、該販売情報を出品者へ通知する機能とを有する手段」を、「ラベルから情報を読み取り精算処理する精算処理システム」を含むものとすることは、当業者が容易に推考し得たことである。
(イ)以下の事項を勘案すると、引用例1記載発明の「ラベルが貼られた商品に対して、該ラベルを読み取り、該ラベルから読み取った情報を基に商品の販売情報を把握する機能と、該販売情報を出品者へ通知する機能とを有する手段」を、「該精算処理システムから送られてくる販売情報を受信し、それらの受信した販売情報を集計処理する集計サーバ」と、「該集計サーバから送られてくる集計データを受信保持し、生産者を特定するIDを入力することにより、生産者が直売所に展示した生産物の数量を入力する入力手段を有し、且つ販売数量とあわせて展示品の残りの個数をWEB上で表示する手段を有する販売情報提供サーバ」を含むものとすることも、当業者が容易に推考し得たことというべきである。
a.引用例1の段落【0003】の記載からも明らかなように、引用例1記載発明は、委託品の保管数を一定の水準に保つために利用されるシステムであるから、引用例1記載発明においても、システムに委託品の保管数の情報が保持されているのが望ましいことは明らかであり、該情報をシステムに入力する入力手段を設けたり、販売数とともに残りの保管数をも委託者に通知するようにすることは、当業者が容易に推考し得たことである。
b.情報の通知手段として、「WEB上で表示する手段」は周知であり、引用例1記載発明に該周知の手段を採用できない理由はない。
c.複数の機能を有するシステムを複数のシステムないしサーバで実現することや、そうする場合に、各システムやサーバ間の機能の切り分けをどうするか、各システムやサーバ間における情報授受のルートをどうするか、といった事項は、いずれも、システムを具現化する際に、当業者が適宜決定すべき事項である。
d.引用例1記載発明に上記周知の技術を適用して所望の機能を有するシステムを具現化するにあたり、「精算処理システムから送られてくる販売情報を受信し、それらの受信した販売情報を集計処理する集計サーバ」と、「該集計サーバから送られてくる集計データを受信保持し、生産者を特定するIDを入力することにより、生産者が直売所に展示した生産物の数量を入力する入力手段を有し、且つ販売数量とあわせて展示品の残りの個数をWEB上で表示する手段を有する販売情報提供サーバ」を含む構成とすることを困難とする事情は、何ら見当たらない。

ウ.本願発明2の効果について
本願発明2の構成によってもたらされる効果は、引用例1記載発明、及び周知の事項から当業者が容易に予測し得る程度のものであって、本願発明2の進歩性を肯定する根拠となり得るものではない。

エ.小括
以上のとおりであるから、本願発明2は、引用例1記載の発明、及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明1と本願発明2は、いずれも、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-04-07 
結審通知日 2010-04-13 
審決日 2010-04-26 
出願番号 特願2003-40783(P2003-40783)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
P 1 8・ 57- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 裕子  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 長島 孝志
真木 健彦
発明の名称 直売所システム  
代理人 井島 藤治  
代理人 鮫島 信重  

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